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明細書 :双安定構造を持つ管腔臓器への留置器具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年1月16日(2020.1.16)
発明の名称または考案の名称 双安定構造を持つ管腔臓器への留置器具
国際特許分類 A61F   2/90        (2013.01)
A61F   2/915       (2013.01)
FI A61F 2/90
A61F 2/915
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2019-504651 (P2019-504651)
国際出願番号 PCT/JP2018/008867
国際公開番号 WO2018/164205
国際出願日 平成30年3月7日(2018.3.7)
国際公開日 平成30年9月13日(2018.9.13)
優先権出願番号 2017043453
優先日 平成29年3月8日(2017.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】南 和幸
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査請求 未請求
テーマコード 4C267
Fターム 4C267AA44
4C267AA45
4C267AA49
4C267AA55
4C267BB07
4C267BB26
4C267BB47
4C267CC09
4C267CC12
4C267CC19
4C267DD01
4C267EE03
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH01
4C267HH17
要約 円筒形状の留置器具(1)は、複数のストラット(3)が軸方向のリブ(2)を共有する形で周方向に連結されて環状ないし螺旋状の列とされ、複数のストラット(3)の列を軸方向に要所でリンク(2a)により連結して網目形状を有する円筒形状に構成される。各ストラット(3)は留置器具の縮径方向への作用による荷重を支える双安定構造なす少なくとも一組のストラット辺と、その飛び移り座屈変形を誘起させる部分とを有し、留置器具を縮径させようとする作用は双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺に逆向きの飛び移り座屈変形を妨げる方向の荷重を与える。それにより留置器具は管腔臓器内に導入され拡径して留置された後に逆向きの飛び移り座屈変形が阻止され、留置器具を縮径させる作用に十分に抗し、その拡径状態を確実に保持することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のストラットが連結されて網目構造をなすように配設され全体として円筒形状をなすように形成された管腔臓器への留置器具であって、各ストラットはヒンジを介して複数のストラット辺を一体的に連結して構成されるとともに前記留置器具の拡径に応じて各ストラットが周方向に伸張するように変形するものであり、また、各ストラットは周方向への伸張の過程で一方の安定状態の形状から飛び移り座屈変形により他方の安定状態の形状に変位した状態で前記留置器具を縮径させようとする荷重を支える双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺を有し、他のストラット辺は各ストラットの周方向への伸張の過程で前記双安定構造をなす少なくとも1組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる作用を有するように連結されており、飛び移り座屈変形後に前記留置器具を縮径させようとする荷重は前記双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺に逆向きの飛び移り座屈変形を妨げる作用を与え前記留置器具が縮径状態に戻ることを阻止して拡径状態を保持するものであることを特徴とする管腔臓器への留置器具。
【請求項2】
前記各ストラットにおける双安定構造をなす少なくとも1組のストラット辺は前記留置器具の周方向に隣り合う2本のリブの間にかけ渡されるように連結された2本のストラット辺の間をヒンジで連結したものであり、前記双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺またはこれを連結するヒンジに前記少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる他のストラット辺を含む部分が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の管腔臓器への留置器具。
【請求項3】
前記留置器具を構成するストラットの各々は、前記留置器具の周方向に隣り合う2つのストラットがリブを共有する形で略周方向に連結されてストラットの環状体をなし、複数の前記ストラットの環状体がリブ同士を要所でリンクにより連結することにより円筒形状の留置器具を形成するものであり、前記リンクが前記リブよりも屈曲し易い太さであることにより留置器具が全体として屈撓性を有するようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の管腔臓器への留置器具。
【請求項4】
留置器具の周方向に連結されたストラットの環状体と留置器具の軸方向に隣合う他のストラットの環状体との間でリブ同士を要所でリンクにより連結するに際して、周方向に1本以上のリブをあけて軸方向のリブ同士をリンクで連結し、周方向に間にあるリブ同士は連結されないようにすることにより留置器具における屈撓性が与えられることを特徴とする請求項3に記載の管腔臓器への留置器具。
【請求項5】
前記留置器具を構成するストラットの各々は、前記留置器具の周方向に隣り合う2つのストラットがリブを共有する形で連結されてストラットの列をなし、該ストラットの列が螺旋状に旋回して延びて全体として円筒面を形成し、1ピッチだけ軸方向に前後するストラットの列におけるリブ同士を要所でリンクにより連結することにより円筒形状の留置器具を形成するものであり、前記リンクが前記リブよりも屈曲し易い太さであることにより留置器具が全体として屈撓性を有するようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の管腔臓器への留置器具。
【請求項6】
前記ストラットの列が螺旋方向に延びて形成された留置器具において、1ピッチだけ軸方向に前後するストラットの列におけるリブ同士を要所でリンクにより連結する際に、前記留置器具の周方向に連結されたストラットの列と、該ストラットの列に1ピツチだけ軸方向に前後して隣合うストラットの列との間でリブ同士を要所でリンクにより連結し、周方向に1本以上のリブをあけて軸方向のリブ同士をリンクで連結し、周方向に間にあるリブ同士は連結されないようにすることにより留置器具における屈撓性が与えられることを特徴とする請求項5に記載の管腔臓器への留置器具。
【請求項7】
前記留置器具の縮径方向への作用による荷重を支える双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる前記他のストラットを含む部分が前記留置器具の拡径の際に前記少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させつつ自ら飛び移り座屈変形する性質を有していることにより各ストラットが二重双安定構造を備えるものであることを特徴とする請求項2~6のいずれかに記載の管腔臓器への留置器具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は双安定構造をもつ管腔臓器への留置器具に関し、特に双安定性ストラットにより拡径状態が保持される双安定構造をもつ管腔臓器への留置器具に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や脳梗塞など、血管の疾患による病気の療法として、バルーンカテーテルにより血管を拡張しステントを留置することが行われる。このステントとしては一般的に金属製のものが用いられるが、金属製のステントは永久的に体内に残留するものであるため、体の大きさが変わる若年者への適用は可能でなく、また、長時間にわたる力学的刺激により狭窄を再発する危険がある。金属製のステントは強度的に優れるが柔軟性に劣り、血管等の管腔壁への力学的刺激、ストレスを与えやすく、管腔壁の肥厚を招くことのほかに、金属製の留置器具が体内に残留した状態ではMRI(磁気共鳴イメージング)による画像に影響を及ぼすために診断が困難になるということがある。
【0003】
ポリマー製の留置器具では金属製の留置器具において問題となる管腔壁へのストレスを抑制し、生分解性/生体吸収性ポリマーでステントを作製することにより生体内にステントが永久的に存在することによるストレスを解消でき、MRI画像にも影響を及ぼさない等の点で、金属製ステントの欠点を解消できるという利点があり、最近ではポリマー製ステントも多く用いられている。
【0004】
一方で、ポリマー製ステントは、金属製ステントに比して弾性率、強度が低いために収縮抑制力が小さく、またクリープ変形を起こし易いことから、バルーン拡張型の留置器具では留置後に縮径してしまう可能性があり、さらに、自己拡張性の留置器具では長時間収縮状態に保持したり、収縮の割合を大きくしたりする場合に永久変形が生じて復元拡張、すなわち自己拡張できなくなる可能性があるというような弱点をもっている。
【0005】
ポリマーステントは血管等の管腔臓器内への留置器具として、円筒状に構成され、縮径状態として管腔臓器内に挿入し、拡径して留置した後に、管腔臓器の狭窄を阻止するように作用するものであり、基本的にはポリマー材料のストラットないしリンクによるセルの網目構造が円筒形状の周方向、軸方向に展開して配置形成された構造を有するものとなる。
【0006】
特許文献1には、長手方向軸線回りに螺旋状に延在する波状の螺旋要素を備え、軸方向に隣接する螺旋要素のピーク部からピーク部に延在する支柱により連結されてセルを形成するステントについて記載されているが、このステントは金属製のものであり、金属製であることによる難点を有する。
【0007】
特許文献2には、ストラットの網目構造が波形をなす複数の周方向の環をなし、隣接する波形の環の山部と谷部が結合されてセルを形成するようにした管状ステントについて記載されているが、このような構成のステントにおいては、縮径させようとする作用に抗する能力は材料の特性によるところが大きく、ポリマー製のように剛性が低い材料によるものでは、縮径方向の作用に抗し難くなり、ステントの機能を保持できない可能性がある。
【0008】
特許文献3には、頂点と谷部が軸方向に交互に配置されるように形成されたストラット要素を周方向に丸めて円筒状のステントを形成し、ストラット要素の各頂点に形成された凸部に歯が設けられ、各谷部には凸部が挿入されるスリットが形成複数の頂点が形成されており、各頂点の凸部に設けられた歯は頂点における凸部を谷部のスリットに挿入可能であり、円筒状ステントをなすストラット要素がステントの縮径方向の力に抗するような形状になっているステント装置について記載されており、また、特許文献4には、スリットが形成された頭部と一方の側辺に鈎状突起部が形成された胴部からなるT字形ユニットを複数個並設したものを筒状に丸め、胴部を頭部のスリットに挿入し、胴部において鈎状突起部に対向する側辺に設幅可変部の作用により胴部のスリットへの挿入を円滑にしたポリマーステントについて記載されている。
【0009】
特許文献3、4は爪、鈎部がスリットに係止されるラチェット機構によりステントの拡張状態を保持するものであるが、フィルムを素材として用いるものであって、屈曲に対する柔軟性が得られないという弱点を有する。
【0010】
特許文献5には、薄いストラットと厚いストラットとを組合せて一連の複数のセルを螺旋状に巻回させて筒状のステントとし、各セルが双安定セルをなしブリッジ要素によって連結されているステントについて記載されており、また、特許文献6には、ストラット辺とリンクとを組合せて複数のセルが網目状に配列された円筒形のポリマーステントを構成し、リンクを介しての牽引作用によりこれに連結されたストラット辺が一方の安定状態から他の安定状態に変形可能な双安定性を有するものとしたポリマーステントについて記載されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特表2014-508569号公報
【特許文献2】特表2014-514111号公報
【特許文献3】特表2008-507349号公報
【特許文献4】特許5811580号公報
【特許文献5】特表2009-531135号公報
【特許文献6】特開2016-64047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
テフロン(登録商標)、ポリ乳酸等の材料によるポリマー製ステントは、金属製ステントに比較して、生体適合性、柔軟性が高いとともに生体への追随性がよく、生体への刺激の低減ないし消失により、再狭窄や血栓の発生を防止できると考えられるが、他面、ヤング率が低く、室温付近では金属製のような優れた可塑性がないため、金属製と同じようなストラット構造を用いた場合には、治療に必要な拡張力が確保されず、十分な治療効果が得られないという問題があった。
【0013】
特許文献5あるいは特許文献6においては、ステントを構成するストラットにおいて双安定性の特徴を備えることにより縮径方向への作用に対する保持力を高めることが示されており、特許文献6によるものでは、かなりの拡張力が得られるが、縮径方向への圧力が高まった時にこれに十分に抗するような構造を備えていないことから、縮径する可能性があるものであった。
【0014】
本発明においては、ステント等の管腔臓器への留置器具を構成するストラットとして双安定性の特徴を備えるとともに、留置器具の縮径方向への作用が高まっても十分に抗し得る構造的特性を有するものとして、信頼性の高い留置器具を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであって、本発明による管腔臓器への留置器具は、複数のストラットが連結されて網目構造をなすように配設され全体として円筒形状をなすように形成された管腔臓器への留置器具であって、各ストラットはヒンジを介して複数のストラット辺を一体的に連結して構成されるとともに前記留置器具の拡径に応じて各ストラットが周方向に伸張するように変形するものであり、また、各ストラットは周方向への伸張の過程で一方の安定状態の形状から飛び移り座屈変形により他方の安定状態の形状に変位した状態で前記留置器具を縮径させようとする荷重を支える双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺を有し、他のストラット辺は各ストラットの周方向への伸張の過程で前記双安定構造をなす少なくとも1組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる作用を有するように連結されており、飛び移り座屈変形後に前記留置器具を縮径させようとする荷重は前記双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺に逆向きの飛び移り座屈変形を妨げる作用を与え前記留置器具が縮径状態に戻ることを阻止して拡径状態を保持するものである。
【0016】
前記各ストラットにおける双安定構造をなす少なくとも1組のストラット辺は前記留置器具の周方向に隣り合う2本のリブの間にかけ渡されるように連結された2本のストラット辺の間をヒンジで連結したものであり、前記双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺またはこれを連結するヒンジに前記少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる他のストラット辺を含む部分が連結されているようにしてもよい。
【0017】
前記留置器具を構成するストラットの各々は、前記留置器具の周方向に隣り合う2つのストラットがリブを共有する形で略周方向に連結されてストラットの環状体をなし、複数の前記ストラットの環状体がリブ同士を要所でリンクにより連結することにより円筒形状の留置器具を形成するものであり、前記リンクが前記リブよりも屈曲し易い太さであることにより留置器具が全体として屈撓性を有するようにしてもよい。
【0018】
留置器具の周方向に連結されたストラットの環状体と留置器具の軸方向に隣合う他のストラットの環状体との間でリブ同士を要所でリンクにより連結するに際して、周方向に1本以上のリブをあけて軸方向のリブ同士をリンクで連結し、周方向に間にあるリブ同士は連結されないようにすることにより留置器具における屈撓性が与えられるようにしてもよい。
【0019】
前記留置器具を構成するストラットの各々は、前記留置器具の周方向に隣り合う2つのストラットがリブを共有する形で連結されてストラットの列をなし、該ストラットの列が螺旋状に旋回して延びて全体として円筒面を形成し、1ピッチだけ軸方向に前後するストラットの列におけるリブ同士を要所でリンクにより連結することにより円筒形状の留置器具を形成するものであり、前記リンクが前記リブよりも屈曲し易い太さであることにより留置器具が全体として屈撓性を有するようにしてもよい。
【0020】
前記ストラットの列が螺旋方向に延びて形成された留置器具において、1ピッチだけ軸方向に前後するストラットの列におけるリブ同士を要所でリンクにより連結する際に、前記留置器具の周方向に連結されたストラットの列と、該ストラットの列に1ピツチだけ軸方向に前後して隣合うストラットの列との間でリブ同士を要所でリンクにより連結し、周方向に1本以上のリブをあけて軸方向のリブ同士をリンクで連結し、周方向に間にあるリブ同士は連結されないようにすることにより留置器具における屈撓性が与えられるようにしてもよい。
【0021】
前記留置器具の縮径方向への作用による荷重を支える双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる前記他のストラットを含む部分が前記留置器具の拡径の際に前記少なくとも一組のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させつつ自ら飛び移り座屈変形する性質を有していることにより各ストラットが二重双安定構造を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明による管腔臓器への留置器具は、留置器具を構成するストラットにおける双安定構造をなす少なくとも1組のストラット辺が拡径動作の最終段階で飛び移り座屈変形を生じて安定状態に達し、留置器具を縮径させようとする作用は双安定構造をなす少なくとも一組のストラット辺に逆向きの飛び移り座屈変形を妨げる方向の荷重を与えることより逆向きの飛び移り座屈変形が阻止され、それにより拡径状態が保持されるようにすることにより、留置器具を縮径させる作用に対して十分に抗してその拡径状態を確実に保持することができ、留置器具としての信頼性が高まるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は管腔臓器への留置器具の概観図であり、(b)は円筒形状をなす留置器具の一部を展開し拡大して示した図である。
【図2】本発明による留置器具を構成する第一の実施形態によるストラットの形状構成を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態、(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階にある状態、(c)は留置器具がさらに拡径した段階にある状態をしている状態、(d)は飛び移り座屈後で留置器具の拡径して安定した状態に達した時のストラットの形状をそれぞれ示している。
【図3】本発明による留置器具を構成する第二の実施形態によるストラットの形状構成を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態、(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階にある状態、(c)は飛び移り座屈変形後で留置器具の拡径して安定した状態に達した時のストラットの形状をそれぞれ示している。
【図4】第二の実施形態による別の態様のストラットの形状構成を留置器具の縮径した状態について示す図である。
【図5】本発明による留置器具を構成する第三の実施形態によるストラットの形状構成を示す図であり、(a)は留置器具の縮径した状態、(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階にある状態、(c)は飛び移り座屈変形後で留置器具の拡径して安定した態に達した時のストラットの形状をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による双安定構造を持つ管腔臓器への留置器具の実施形態について説明する。図1(a)は留置器具の概観図であり、留置器具1は概略円筒形状をなすように複数の双安定性構造を有するストラット3を周方向及び軸方向に網目状に配設して弾性を有する材料で構成されている。留置器具の周方向に隣り合う2つのストラット3が軸方向のリブ2を共有する形で連結されてストラットの環状の列をなし、複数のストラットの環状の列を軸方向のリブ2同士を要所でリンク2aにより連結することにより円筒形状の留置器具1を形成するものであり、リンク2aが前記リブ2よりも細く、屈曲し易い太さであることにより留置器具1が全体として屈撓性を有するものである。

【0025】
図1(b)は図1(a)の円筒形状の留置器具における一部を平面状に展開し拡大して示す図であり、図で縦方向(留置器具の周方向)、横方向(留置器具の軸方向)に同等形状のストラット3が配列され、要所で軸方向に並ぶリブ2がリンク2aで連結されて網目構造をなしている。図1(b)では、例えば最も左側に位置している(1列目の)周方向のストラット3の列の右側と、そのストラット2の列の右側(2列目)における周方向のストラット3の列の左側との間で、周方向1本おきのリブ2がそれと軸方向に並ぶリブ2とリンク2aにより連結されている。さらにその右側(3列目)における周方向のストラット3の列との間では、1列目と2列目のストラット列の間でリンク2aにより連結されたリブ2の右側はリンク2aで連結されず、それより1つ周方向に上側または下側の位置のリブ2同士がリンク2aで連結される、というようにして、周方向に1本おきのリブ2,2の間でリンク2aにより連結されるようにしてある。

【0026】
以下、同様にして周方向に隣合うストラット3,3の間で共有されるリブ2,2同士が周方向に1本おきにリンク2aで連結され、リブ同士がリンク2aで連結されない箇所も1本おきになる。このようにして、図1(b)においては、リブ2同士を連結するリンク2aは、各ストラット3について見れば対角方向にあり、ストラット3はリブ2、リンク2aを介して対角方向に(円筒面で見れば螺旋状に)連結されていることになる。

【0027】
ここでは、周方向のストラット3の列の間で周方向に1本おきのリブ2をリンク2aで連結するようにしたストラットの連結形態を示したが、周方向のストラット3の列の間で周方向に2本おきのリブ2をリンク2aで連結するようにしたストラットの連結形態としてもよく、さらに周方向に3本おきのリブ2をリンク2aで連結した形態とすることも考えられる。リブ2同士をリンク2aで連結する箇所と、連結されない箇所とが混在して分布することにより、ストラットの網目構造による円筒形状の留置器具における屈撓性を有する構造体としての強度が与えられるので、そのような面から何本おきにリブ2をリンク2aで連結するかを規定することになる。

【0028】
網目構造をなす円筒体はある程度弾性変形可能で均一なポリマーないし金属の材料で形成され、このような材料による網目構造を持つ円筒状の留置器具として、留置される管腔壁の圧力に十分抗し、形状保持できるような網目構造の太さ、厚さになるようにする。また、リブ2を共有する形で複数のストラットが環状に連結され、リブ2同士が軸方向にリンク2aにより連結されて形成された円筒形状の網目構造を有する留置器具においてリブを共有する形で周方向に連結された複数のストラット3の各々は、それを形成するヒンジで連結されたストラット辺間の屈伸変形により周方向に収縮した状態から伸張した状態に変形可能であり、それにより留置器具の円筒形状の径が拡大した状態になる。それとともに、円筒形状の径が拡大した状態から、留置器具の外方からの力の作用により径が縮小しようとすることに対しては、各ストラットがそれを阻止し、円筒形状の径を保持するように作用する。

【0029】
このようにストラットが留置器具の円筒形状の径の拡大を許容し、縮小を阻止するというのは、留置器具の円筒面を構成する多数のストラットの各々が双安定性を有し、留置器具の径が拡大する方向への各ストラットの変形の際にストラットを構成する一部のストラット辺が飛び移り座屈変形をして一方の安定状態から他方の安定状態に移行し、この他方の安定状態に移行した後に最初の安定状態に、すなわち留置器具の径が縮小する方向に変形することは阻止され、一方向の変形のみが可能であるという双安定性を各ストラットが有することによるものである。

【0030】
このような各ストラットの双安定性を有するために、各ストラットは飛び移り座屈変形をするための特定の形状構造のものとして形成されるのであり、次にそのような双安定性の構造を有するストラットの具体的形状構造についての実施形態について説明する。

【0031】
[第一実施形態]
図2(a)~(d)は第一実施形態による双安定性構造を持つストラットを示すものであり、図2(a)は留置器具が縮径した状態にある時のストラットの形状を示し、図2(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階のストラットの状態を示し、図2(c)は図2(b)の状態から留置器具がさらに若干拡径した段階のストラットの状態を示し、図2(d)は留置器具の拡径後の安定状態に達した時のストラットの状態を示している。図2(a)~(d)は一つのストラットを示しているが、これと同形状のストラットが留置器具の周方向(図で上下方向)にリブを共有する形で環状に列をなすように連結され、さらに他の環状のストラットの列との間でリブ同士が要所でリンクにより連結されるという形で環状のストラットの列が軸方向(図で左右方向)に連結されて円筒形状で網目構造を有する留置器具が形成される。

【0032】
図2(a)~(d)において、実質的に平行な上側のリブ10-1の左側はさらに左方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク10-1aに連結され、リブ10-1の右側はリンクに連結されていない。また、下側のリブ10-2の右側はさらに右方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク10-2aに連結され、リブ10-2の左側はリンクに連結されていない。

【0033】
上側のリブ10-1と下側のリブ10-2の互いに向かい合う側にそれぞれ突出部10-1b、10-2bが一体的に形成され、突出部10-1b、10-2bの中心を結ぶ直線はリブ10-1、10-2に対し実質的に垂直方向になっている。突出部10-1b、10-2bからそれぞれヒンジ14-1、14-2を介して一端で一体的に連結されたストラット辺11A、11Bのそれぞれの他端側はヒンジ14-3、14-4を介してストラット辺11Cのそれぞれの端側に一体的に連結されている。

【0034】
ストラット辺11Cはこれに略垂直なストラット辺12の一端と一体的に連結されて略T字形の部辺をなしており、ストラット辺12の他端側は二股に分かれたヒンジ14-5、14-6、14-7を介してそれぞれストラット辺13A、13Bの一端側と一体的に連結され、ストラット辺13Aの他端側はヒンジ14-8を介してリブ10-1に、またストラット辺13Bの他端側はヒンジ14-9を介してリブ10-2にそれぞれ一体的に連結されている。

【0035】
リブ10-1上で突出部10-1bの中心位置からヒンジ14-8の付け根までの間隔は、リブ10-2上で突出部10-2bの中心位置からヒンジ14-9の付け根までの間隔と実質的に等しく、ストラット辺11Aと11Bとの長さ、ストラット辺13Aと13Bとの長さは、それぞれ実質的に等しい。すなわち、これらのストラット辺で構成されるストラットは図で実質的に上下対称の形状になっている。

【0036】
このように1つのストラットはヒンジを介して、あるいは介さず、ストラット辺を一体的に連結して形成され、複数のストラットが周方向にリブを共有する形で環状に列をなすように連結され、さらに他の環状のストラットの列との間でリブ同士が要所でリンクにより連結されるという形で環状のストラットの列が軸方向に連結されて円筒形状で網目構造を有する留置器具が形成されるのであるが、その材料としてはある程度弾性変形可能なポリマーないし金属の材料を用いて形成する。ただし、均一な材料をもとに図2(a)~(d)に示すような形状に形成した場合に、各部分の変形のし易さはストラット辺、ヒンジ等の太さや長さにより異なってくるのであり、このような変形のし易さの差違を考慮してストラットが双安定性をもつようにするものである。

【0037】
留置器具の縮径した状態の図2(a)に示すストラットの形状構成において、各部片における太さ、屈撓変形し易さには段階があり、突出部10-1bはリブ10-1との間で実質的に屈撓変形しない太さになっており、突出部10-2bも同様にリブ10-2との間で実質的に屈撓変形しない太さである。ヒンジ14-1、14-2、14-3、14-4、14-5、14-6、14-7、14-8、14-9は最も細く屈撓変形し易くなっていて留置器具の拡径変形の際に優先的に屈撓変形することになる。

【0038】
ストラット辺13A、13Bはヒンジ14-1~14-9よりも太く屈撓変形しにくくなっており、ストラット辺11A、11B、11Cはさらに太く屈撓変形しにくくなっている。屈撓変形するかしないか、どのように屈撓変形するかは、このヒンジ、ストラット辺の太さのみによるのではなく、その長さにも関係するほか、ストラットの構成における配設位置とストラットの変形自体との関係にもよる。

【0039】
ストラット辺13A、13Bの変形によって生じるストラット辺12の軸方向移動でストラット辺11A、11Bが飛び移り座屈変形をさせるためには、ストラット辺11A、11Bの変形による移動量より十分に大きくすることが必要であり、この実施形態ではストラット辺11A、11Bよりもストラット辺13A、13Bを長くするとともに、ストラット辺13A、13Bの開き角が大きくなるようにしている。

【0040】
これは、開き角が大きい方が上下方向(周方向)の移動量に対する横方向(軸方向)の割合が大きくなるためであり、突出部10-1b、10-2bはこのようなストラット辺、開き角の関係を与えるために設けたものである。また、ヒンジ14-1~14-9はストラット辺等のより太い部分との連接において急激に太くならず、なめらかに太さが増大する形にして、屈撓変形の際にこの部分の応力集中があまり大きくならないようにする。

【0041】
このようなストラット辺、ヒンジが一体的に連結されて形成されたストラットが留置器具の拡径変形に応じて変形する際の状況について説明する。図2(a)は留置器具の径が最も小さく縮径している時のストラットの状態であり、リブ10-1と10-2との中心間隔はL11になっている。ストラット辺11A、11Bは略直線状であるとともに、留置器具の軸方向に対する角度が最も小さく閉じた状態であり、また、ストラット辺13A、13Bも略直線状で留置器具の軸方向に対する角度が最も小さくなっている。

【0042】
この状態から留置器具の拡径動作によりリブ10-1、10-2の間隔が増大してストラット辺13A、13Bのなす角度が大きくなるに連れて、T字形ストラット辺12、11C、ヒンジ14-3、14-4を介してそれに連結されたストラット辺11A、11Bの側が図で右方に引かれる形で移動するようにストラットが変形する。このストラットの変形は主にヒンジが屈撓することによる。

【0043】
拡径動作によって図2(b)に示す状態になり、リブ10-1、10-2の間隔がL12-1になっている。ストラット辺11A、11Bは略直線状のままそのなす角度が開いた形になる。その時にストラット辺13A、13Bのなす角度も大きく開いており、ストラット辺11A、11Bのなす角度より大きい。これはストラット辺の長さ、連結位置との関係によるものである。

【0044】
その状態からさらにリブ10-1、10-2の間隔がL12-2まで増大して留置器具の最大径近くまで達した際に、図2(c)に示すような状態になる。この過程で、ストラット辺11A、11Bとストラット辺13A、13Bとの長さ、角度の関係により、リブ10-1、10-2の間隔増大とともにストラット辺11A、11Bのそれぞれが略直線状の状態でそのなす角度が広がると同時にストラット辺13A、13Bのなす角も大きくなってヒンジ14-5、14-6が右方向に移動するが、ヒンジ14-5、14-6の移動量はストラット辺11A、11Bが開くことにより右方向に移動するストラット辺11Cの移動量よりも大きいため、ストラット辺12、11C、ヒンジ14-3、14-4を介しストラット辺11A、11Bの端側が図で右方に引かれていくことにより、ストラット辺11A、11Bはもはや略直線状の状態を維持できず、右方からの牽引により屈撓していく。これはすでにストラット辺11A、11Bが飛び移り座屈の段階に移っていることを示す。

【0045】
さらにリブ10-1、10-2の間隔が拡がり、その間隔が飛び移り座屈が生じるL13に達すると、ストラット辺11A、11Bのストラット辺11Cの側が右方に引かれる力により飛び移り座屈が誘起され、ストラット辺11Cはヒンジ14-1、14-2を結ぶ直線上の位置を超えて図2(d)に示される位置に達する。この状態でストラット辺11A、11Bは略直線状に戻り、そのなす角度が180°を超えた状態で安定している。

【0046】
このように、図2(b)はストラット辺11A、11Bが飛び移り座屈変形をする前における双安定性の一方の安定状態にある時を示し、これから飛び移り座屈変形をする直前の図2(c)を経て図2(d)では双安定性の他方の安定状態に移っていることを示し、この飛び移り座屈変形はごく短時間、瞬間的な動作としてなされる。

【0047】
ストラット辺11A、11Bとそれに連なるヒンジ14-1、14-2、14-3、14-4は、図2(a)の初期の形状が変形前の状態であり、留置器具の拡径に応じた各ストラットの変形に伴ってストラット辺11A、11Bをリブ10-1、10-2の間で連結するヒンジの部分が弾性的に変形しつつ、図2(b)の状態、図2(c)の状態を経過して図2(d)の状態となるに至り、その過程で弾性屈曲変形の度合いが高まり、復元力が高まっており、それ以上の拡径方向への変形に対してはストラットの曲げ変形から伸び変形に対する抗力になっており、大きな抵抗力をもつ状態になっている。したがって、留置器具に拡径方向の力が作用してリブ10-1、10—2の間隔がさらに拡がろうとしても、ストラット辺11A、11Bは他方の安定状態に達した図2(d)の状態からさらに屈曲の度を強めるように変形することはできない。

【0048】
また、リブ10-1、10-2がその間隔を狭めようとしてストラット辺11A、11Bを突出部の側から圧縮する作用は、図2(d)の状態に達したストラット辺11A、11Bからすれば復元力により戻ろうとするのを妨げることになる。図で右方にあるストラット辺13A、13Bが角度を狭めようとしても、これらのストラット辺はより細く屈曲し易いので、ストラット辺11A、11Bを左方に押し戻すように押圧する作用は生じない。

【0049】
このように、図2(a)~(d)に示す形状構造のストラットは、ストラット辺11A、11Bが特に飛び移り座屈変形をするようにしたものであるが、ストラット辺13A、13BがこのT字形部辺11C、12を介して飛び移り座屈変形を誘起させる部辺となっている。各ストラットが留置器具の縮径した状態に対応する初期の図2(a)の状態から、留置器具の拡径した状態に対応する図2(d)の状態に達し、ストラット辺の双安定性における他方の安定状態である図2(d)の状態に達して後は、留置器具に縮径方向への作用が加わっても各ストラットの双安定性と蓄積された弾性力によりこれが阻止される。

【0050】
図2(b)から図2(d)に至るストラット辺11A、11Bの飛び移り座屈変形が生じるためには、図2(b)の状態からリブ10-1、10-2が間隔を広げる際に、ストラット辺11A、11Bが角度を拡げてストラット辺11Cが右方に移動するよりも速くストラット辺13A、13Bが角度を拡げていくことによりストラット辺11Cを右方に牽引することになるという状況を生成することが条件となり、この条件を満たすように突出部10-1b、10-2bの高さ、ストラット辺11A、11B及びストラット辺13A、13Bの長さ、ヒンジを介してのリブ10-1、10-2への連結位置というようなストラットの形状要素を設定することが必要となる。

【0051】
各ストラットが図2(a)の状態にある留置器具を細い状態のバルーンカテーテルに装備して所望の管腔臓器内に導入し、バルーンカテーテルを膨張させて留置器具を拡径させて管腔臓器内に留置することにより、管腔臓器の内壁からの圧力に抗して形状を保持するという管腔臓器への留置器具の機能を達することができる。

【0052】
図2(a)~(d)に示した形状構造のストラットを備える留置器具では、留置器具が拡径状態に達した後に縮径する方向に外部からの作用が加わった時に、その作用はストラットが元の形状に戻らないようにする方向に、すなわち飛び移り座屈変形後の変形が進む方向に作用することになり、それは飛び移り座屈変形したストラット辺に蓄積された弾性力により阻止されるので、結局ストラットとしては留置器具を拡径した状態で安定的に保持することができるものである。

【0053】
なお、留置器具はそれぞれヒンジ等で連結されたストラット辺を有するように構成された多数のストラットが網目状の円筒形状をなすように配設され、全体的にある程度弾性変形可能で均一なポリマーないし金属の材料の加工により形成されるものである。その際構成部分としてのストラット辺、ヒンジ、リブ、リンク等は留置器具を変形させる作用が加わった時に、各ストラットがそれに応じて形状変形をするのに適合したストラットを構成するストラット辺、ヒンジ等の部辺の屈撓変形し易さの程度を与える太さ、長さを有するものとして形成されるのであり、このことは以下の実施形態においても同様である。

【0054】
[第二実施形態]
図3(a)~(c)は第二実施形態による双安定性構造を持つストラットを示すものであり、図3(a)は留置器具が縮径した状態にある時のストラットの形状を示し、図3(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階のストラットの状態を示し、図3(c)は留置器具が飛び移り座屈後の拡径して安定した状態に達した時のストラットの状態を示している。図3(a)~(c)では一つのストラットを示しているが、これと同形状のストラットが軸方向のリブを共有する形で周方向に連接されて環状のストラットの列をなし、この環状のストラットの列がリンクで要所を軸方向に連結されて、全体として円筒形状で網目構造の留置器具が形成される。

【0055】
図3(a)~(c)において、実質的に平行な上側のリブ20-1の左側はさらに左方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク20-1aに連結され、リブ20-1の右側はリンクに連結されていない。また、下側のリブ20-2の右側はさらに右方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク20-2aに連結され、リブ10-2の左側はリンクに連結されていない。

【0056】
図3(a)~(c)に示すストラットの形状構造において、上側のリブ20-1の下側に一体的に形成された突出部20-1bが設けられ、突出部20-1bからヒンジ24-1を介してストラット辺21Aの一端側が連結され、向かい合うリブ20-2の側ではヒンジ24-3を介してストラット辺21Bの一端側が連結され、ストラット辺21A、21Bのそれぞれの他端側はヒンジ24-2を介して連結されている。

【0057】
ストラット辺21Aがヒンジ24-2に連結される箇所では枝分かれする形でヒンジ24-4が連結され、これを介してストラット辺22Aの一端が連結され、ストラット辺22Aの他端の側にヒンジ24-5を介してストラット辺22Bの一端が連結され、ストラット辺22Bの他端はヒンジ24-6を介してリブ20-1に連結されている。

【0058】
ストラット辺22Bの中間位置においてヒンジ24-7を介して他のストラット辺23の一端が連結され、ストラット辺23の他端は直接リブ20-2に連結されている。ヒンジ24-7は他のヒンジよりも長く、図3(a)の状態ではなめらかに屈撓した形でストラット辺22Bの中間位置に他端が連結されている。また、突出部20-1bの先端においてヒンジ24-1が連結される位置とヒンジ24-3がリブ20-2に連結される位置とを結ぶ直線はリブ20-1、20-2に対して略垂直な方向になっている。

【0059】
このようにヒンジを介して、あるいは介さず、ストラット辺を一体的に連結して形成されたストラットが軸方向のリブを共有する形で周方向に連接されて環状のストラットの列をなし、この環状のストラットの列がリンクで要所を軸方向に連結されて、全体として円筒形状で網目構造を有する留置器具が形成され、材料としてある程度弾性変形可能なポリマーないし金属の材料を用いて形成すること、各部分の変形のし易さはストラット辺、ヒンジ等の太さと長さによる変形のし易さの差違を考慮してストラットが双安定性をもつようにすることは、第一実施例の場合と同様である。

【0060】
図3(a)~(c)に示すストラットの構成において、突出部20-1bはリブ20-1との間で実施的に屈撓変形しない太さになっており、また、ヒンジ24-1、24-2、24-3、24-4、24-5、24-6、24-7は最も細く屈撓変形し易くなっていて留置器具の拡径変形の際に優先的に屈撓変形することになる。ストラット辺21A、21B、22A、22Bはある程度の太さを有し、ヒンジ24-1~24-7よりも太くなっていて屈撓変形し易さの程度はより低くなっている。

【0061】
屈撓変形するかしないか、どのように屈撓変形するかは、このヒンジ、ストラット辺の太さのみによるのではなく、その長さにも関係するほか、ストラットの構成における配設位置とストラットの変形自体との関係にもよること、ヒンジ24-1~24-7はストラット辺等のより太い部分との連接において急激に太くならず、なめらかに太さが増大する形にして、屈撓変形の際にこの部分の応力集中があまり大きくならないようにすることは、第一実施形態と同様である。

【0062】
留置器具の拡径変形に応じてストラットが変形する状況について説明する。図3(a)は留置器具の径が最も小さく縮径している時のストラットの状態であり、リブ20-1と20-2との中心間隔はL21になっている。ストラット辺21A、21Bは略直線状であって突出部20-1bとリブ20-2との間でヒンジを介して図で右方に小さい角度をなして折曲した状態であり、ストラット辺22A、22Bも略直線状であってストラット辺21Aの端側に連結されるヒンジ24-4とリブ20-1に連結されるヒンジ24-6との間で左方に小さい角度をなして折曲した状態になっている。

【0063】
この状態から留置器具の拡径動作によりリブ20-1、20-2の間隔が増大してL22になり留置器具が最大径近くにまで拡径して、図3(b)に示す状態になる。この時ストラット辺21A、21Bはそのなす角度が大きくなっているが、180°までには至らず、略直線状になっていて、飛び移り座屈変形前の状態である。ストラット辺22A、22Bの方もそのなす角度が大きくなっていくが、ストラット辺22Bに牽引されてその中間位置に一端が連結されているヒンジ24-7が屈曲していた状態から略直線状になってきて、ストラット辺22Bの方がヒンジ24-7、ストラット辺23の側から牽引される状態になり、やや下方側に凸の形状に屈曲している。

【0064】
ストラット辺21A、21Bが図3(b)の状態に達する過程で、ストラット辺22A、22Bがヒンジを介して略直線状に連なる状態での長さがヒンジ24-4とヒンジ24-6の間の距離よりも長いことにより、ストラット辺22A、22Bのなす角度が大きくなる過程で先にヒンジ24-4を左側に押圧するが、ストラット辺21A、21Bの変形抵抗によりヒンジ24-2の左側への移動が制限されるため、ストラット辺22A、22Bは略直線状の形状を保つことができず、ストラット辺22Bがストラット辺23側に牽引されてやや下方に凸状に屈曲し、これとのバランスからストラット辺22Aの方は上方に凸状に屈曲している。

【0065】
図3(b)の状態からさらに留置器具が拡径して図3(c)に示す状態に達し、リブ20-1、20-2の間隔がL22より若干大きくL23となるが、その過程でストラット辺22Bがヒンジ24-7の側からさらに牽引されてヒンジ24-5の側が図3(b)の状態より右下側に移動する形になっていく。ヒンジ24-5を介してこれに連接されているストラット辺22Aの端側もこれに牽引されるためストラット辺22A、22Bが略直線状に並ぶようにヒンジ24-4が左側に移動していくが、ストラット辺21A、21Bの側はその角度が開いていく過程での左側への移動量がヒンジ24-4の移動量に比べて小さいため、ストラット辺22Aの側が屈曲状態になることによりその差を吸収している。したがって、それらの間のヒンジ24-4を介して相互に押し合う状態になっている。

【0066】
そのような状況のもとで、ストラット辺22A、22Bの間のヒンジ24-5の部分が右下方向に移動する作用が継続していくに従って、ある時点でストラット辺22Aが図3(c)に示すように反転した屈曲形状になる。この変形は飛び移り座屈変形として瞬時に生じるが、この変形によりストラット辺22Aがヒンジ24-4を介してストラット辺21A、21Bの端側を急激に押圧することになる。その結果として、ストラット辺21Aと21Bとのヒンジ24-2で連結されている部分には図で左方に瞬時に移動するような変形、すなわち180°より小さい角度をなしていたストラット辺21A、21Bが、直線状に相当する位置を超えて一挙に180°より大きい角度をなす状態への変形、すなわち飛び移り座屈することになる。

【0067】
図3(c)に示す状態に至る過程でストラット辺21A、21Bを連結するヒンジ24-2、24-3においては弾性屈曲変形の度合いが高まり、復元力が増大しており、それ以上の拡径変形に対してはストラットの曲げ変形から伸び変形に対する抗力になっているため、大きな抵抗力をもつ状態になっている。したがって、留置器具に拡径方向の力が作用してリブ10-1、10—2の間隔がさらに拡がろうとしてもそれ以上は変形できない状態になっている。したがって、留置器具に拡径方向の力が作用してリブ20-1、20—2の間隔が拡がろうとしても、ストラット辺21A、21Bは飛び移り座屈変形後の安定状態に達した図3(c)の状態からさらに屈曲の度を強めるように変形することはできない。また、リブ20-1、20-2がその間隔を狭めようとしてストラット辺21A、21Bを両側から圧縮する作用は、図3(c)の状態に達したストラット辺21A、21Bからすれば復元力により初期状態に戻ろうとするのを妨げるものとなる。

【0068】
また、図3(c)の状態で、リブ20-1、20-2がその間隔を狭めようとする動作によりストラット辺21A、21Bの屈曲動作の度合いが増加しようとする際には、ストラット辺22A、22Bが一直線上に並んで引張力を支持できるようになるため、ヒンジ24-2がさらに左方向に移動することをこの張力が妨げ、それによりリブ20-1、20-2がその間隔を狭めようとする動作が妨げられる。

【0069】
また、このような状況では、リブ20-1、ストラット辺22B、22A、21A、突出部20-1bとこれらをつなぐヒンジが略三角形を形成することになる。三角形は形状安定性に優れているため、リブ20-1、20-2がその間隔を狭めようとする方向と直交する方向の外力に対しても変形抵抗を有することになり、第一実施形態よりも優れた形状安定性を実現できる。さらに、外力を支えるストラット辺21A、21Bの飛び移り座屈状態を誘起するストラット辺22A、22Bもまた飛び移り座屈するものであり、双安定構造を二重にすることで確実性を高める効果がある。

【0070】
このように、図3(a)~(c)に示す形状構造のストラットは、ストラット辺21A、21Bが特に飛び移り座屈変形をするようにしたものであり、ストラット辺22A、22Bはストラット辺21A、21Bの飛び移り座屈変形を誘起させる部辺となっている。各ストラットが留置器具の縮径した状態に対応する初期の図3(a)の状態から、留置器具の拡径した状態に対応する図3(b)の状態に達し、ストラット辺の双安定性における他方の安定状態である図3(c)の状態に達して後は、留置器具に縮径方向への作用が加わっても各ストラットの双安定性によりこれが阻止される。

【0071】
図3(b)から3(c)に至るストラット辺21A、21Bの飛び移り座屈変形が生じるためには、図3(b)の状態までリブ20-1、20-2が間隔を広げてストラット辺21A、21Bが角度を拡げた時に、ストラット辺21Aまたはリブ20-1とストラット辺22A、22Bとのそれぞれの連結位置であるヒンジ24-4、24-6の間隔が両ストラット辺22A、22Bの略伸張した状態の長さより短く、図3(b)のような屈曲した状態を強いられる状況にすることが必要とされ、この条件を満たすように突出部20-1bの高さ、ストラット辺21A、21B及びストラット辺22A、22Bの長さ、ヒンジ24-7、ストラット辺23の長さ、リブ20-2への連結位置というようなストラットの形状要素を設定することが必要となる。

【0072】
各ストラットが図3(a)の状態にある留置器具を細い状態のバルーカテーテルに装備して所望の管腔臓器内に導入し、バルーンカテーテルを膨張させて留置器具を拡径させて管腔造機内に留置することにより、管腔臓器の内壁からの圧力に抗して保持するという管腔臓器への留置器具の機能を達することができる。

【0073】
図3(a)~(c)に示した形状構造のストラットを備える留置器具では、留置器具が拡径状態に達した後に縮径する方向に外部からの作用が加わった時に、その作用はストラットが元の形状に戻らないようにする方向に、すなわち飛び移り座屈変形後の変形が進む方向に作用することになり、それは飛び移り座屈変形したストラット辺に蓄積された弾性力と構造上の変形特性により阻止されるので、結局ストラットとしては留置器具を拡径した状態で安定的に保持することができるものである。

【0074】
図4は第二実施形態による別の態様のストラットの形状構成を留置器具の縮径した状態について示す図である。基本的には、図3(a)に示すストラットの形状と同様であるが、図4に示すストラットの形状においては、ストラット辺23がヒンジ24-7を介してストラット辺22Aのヒンジ24-5側(図で左側)の位置に連結されている点において図3(a)に示す例と異なり、それ以外は図3(a)と同様である。

【0075】
留置器具の拡径に応じて各ストラットが周方向に伸張する際に、ストラット辺22Aがヒンジ24-7を介してストラット辺23側に牽引され飛び移り座屈変形を生じて反転した屈曲形状になり、ヒンジ24-2によりストラット辺21Aと21Bとが連結された部分を急激に押圧してストラット辺21A、21Bに飛び移り座屈変形を生じさせることは図3(a)~(c)の場合と同様である。

【0076】
[第三実施形態]
図5(a)~(c)は第三実施形態による双安定性構造を持つストラットを示すものであり、図5(a)は留置器具が縮径した状態にある時のストラットの形状を示し、図5(b)は留置器具が拡径するように変形しつつある中間の段階のストラットの状態を示し、図5(c)は留置器具が拡径して飛び移り座屈後の安定した状態に達した時のストラットの状態を示している。図5(a)~(c)でも一つのストラットを示しているが、これと同形状のストラットが軸方向のリブを共有する形で周方向に連接されて環状のストラットの列をなし、この環状のストラットの列がリンクで要所を軸方向に連結されて、全体として円筒形状で網目構造を有する留置器具が形成される。

【0077】
図5(a)~(c)において、実質的に平行な上側のリブ30-1の左側はさらに左方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク30-1aに連結され、リブ30-1の右側はリンクに連結されていない。また、下側のリブ30-2の右側はさらに右方位置にあるストラット(図示せず)におけるリブとの間で連結するリンク30-2aに連結され、リブ30-2の左側はリンクに連結されていない。

【0078】
図5(a)~(c)に示すストラットの形状において、上側のリブ30-1の下側にヒンジ36-1を介してストラット辺31Aの一端側が連結され、向かい合うリブ30-2の側ではヒンジ36-3を介してストラット辺31Bの一端側が連結され、ストラット辺31A、31Bのそれぞれの他端側はヒンジ36-2を介して連結されている。ヒンジ36-2は中間に突出部を有し他の部辺に連結されるようになっている。

【0079】
図でストラット辺31A、31Bの右方の位置で、上側のリブ30-1の下側にヒンジ36-4を介してストラット辺32Aの一端側が連結され、リブ30-2の側ではヒンジ36-6を介してストラット辺32Bの一端側が連結され、ストラット辺32A、32Bのそれぞれの他端側はヒンジ36-5を介して連結されている。ヒンジ36-5は中間に突出部を有し他の部辺に連結されるようになっている。

【0080】
図5(a)ではストラット辺31A、31Bのそれぞれのリブ30-1、30-2へのヒンジ36-1、36-3の連結位置を結ぶ直線はリブ30-1、30-2に対して略垂直の方向であり、また、ストラット辺32A、32Bのそれぞれのリブ30-1、30-2へのヒンジ36-4、36-6の連結位置を結ぶ直線はリブ30-1、30-2に対して略垂直の方向であり、ストラット辺31A、31B、32A、32Bは同等の長さである。このようにして、ストラット辺31A、31Bとストラット32A、32Bとは実質的に左右対称でそれぞれ「>」形ないし「<」形の形状をなす配置形態であり、また、それぞれ上下対称の配置形態になっている。

【0081】
ストラット辺31A、31Bの間のヒンジ36-2の中間の突出部には枝辺33A、33Bを先端側とする略U字形の太いストラット辺33が連結され、枝辺33Aの先端にはヒンジ36-7を介してストラット辺34Aの一端が連結され、ストラット辺34Aの他端は中間に突出部を有するヒンジ36-8の一端側に連結されている。また、略U字形の太いストラット辺33の枝辺33Bの先端にはヒンジ36-9を介してストラット辺34Bの一端が連結され、ストラット辺34Bの他端はヒンジ36-8の他端側に連結されている。ヒンジ36-8の中間の突部にはストラット辺35の一端が連結され、ストラット辺35の他端はヒンジ36-5の突出部に連結され、それを介してストラット辺32A、32B側に連結されている。

【0082】
ストラット辺33の枝片33A、33Bは同等であり、また、ストラット辺34A、34Bの長さも同等であって、これらによる部辺の形状構成は上下対称になっている。枝辺33A、33Bを含む略U字形のストラット辺33は留置器具の拡径動作時にそれほど大きく変形せずある程度屈撓変形するもので、特に太くなっており、ストラット辺31A、31Bとストラット辺32A、32Bは飛び移り座屈変形をしてリブ間の間隔が狭まるのに抗して支えるものであり、ストラット辺34A、34Bは牽引作用により反転した形状に飛び移り座屈変形し、ストラット辺35はその際の押圧作用を伝えるものとして、略U字形のストラット辺33よりは細い太さになっている。

【0083】
このようにヒンジを介して、あるいは介さず、ストラット辺を一体的に連結して形成されたストラットが軸方向のリブを共有する形で周方向に連接されて環状のストラットの列をなし、この環状のストラットの列がリンクで要所を軸方向に連結されて、全体として円筒形状で網目構造を有する留置器具が形成される。材料としてある程度弾性変形可能なポリマーないし金属の材料を用いて形成すること、各部分の変形のし易さはストラット辺、ヒンジ等の太さによる変形のし易さの差違を考慮してストラットが双安定性をもつようにすることは、第一実施形態の場合と同様である。

【0084】
留置器具の拡径変形に応じてストラットが変形する状況について説明する。図5(a)は留置器具の径が最も小さく縮径している時のストラットの状態であり、リブ30-1と30-2との中心間隔はL31になっている。ストラット辺31A、31Bは略直線状であって、リブ30-1とリブ20-2との間でヒンジを介して図で右方に小さい角度をなして「>」形に折曲した状態であり、ストラット辺32A、32Bも略直線状であってリブ30-1とリブ20-2との間でヒンジを介して図で右方に小さい角度をなして「<」形に折曲した状態になっている。略U字形のストラット辺33の内側に位置するストラット辺34A、34Bはさらに閉じた小さい角度をなす状態である。

【0085】
この状態から留置器具の拡径動作によりリブ30-1、30-2の間隔が増大してL32になり留置器具が拡径して、図5(b)に示す状態になる。この時ストラット辺31A、31Bはそのなす角度が大きくなっているが、180°までには至らず、略直線状になっていて、飛び移り座屈変形前の状態である。

【0086】
ストラット辺32A、32Bの方も対称的にそのなす角度が大きくなっていく。ストラット辺31A、31B、ストラット辺32A、32Bのなす角度が大きくなるに従って、ヒンジ36-2とヒンジ36-5との間隔は広がり、ストラット辺31A、31Bの側はヒンジ36-2を介して略U字形のストラット辺33を左方に牽引し、ストラット辺32A、32Bはストラット辺35、ヒンジ36-8を介して、それに連結されたストラット辺34A、34Bの端側を右方に牽引していく。

【0087】
ストラット辺34A、34Bはヒンジ36-8に連結された端側から牽引されて、ストラット辺35の方に膨らむように屈曲しつつ他の端側でそれぞれヒンジ36-7、36-9を介してストラット辺33の枝片33A、33Bの先端側を上下方向に押し上げて(拡げて)いく。それにより図5(b)に示す状態では、枝片33A、33Bの先端側が上下に若干開くように変形している。

【0088】
図5(b)の状態からさらに留置器具が拡径して図5(c)に示す状態に達し、リブ30-1、30-2の間隔がL32より大きくL33となるが、その過程でストラット辺34A、34Bの端側はさらに牽引されて、図5(b)に示すように屈曲して略U字形のストラット辺33の枝片33A、33Bの間にあった状態を脱し急激に図で右方に飛び出た状態になるまで変位する。このストラット辺34A、34Bの変形は、両ストラット辺の組合わせとしては屈曲の方向が反転し、限定された連結位置の間で屈曲の程度が高まる限度を超えて一気に他の安定状態に変位するものであって、飛び移り座屈変形となっている。

【0089】
このストラット辺34A、34Bの変形の過程で、ストラット辺35のヒンジ36-5の側と略U字形のストラット辺33のヒンジ36-2側との間隔が一気に増大して、ストラット辺31A、31Bのヒンジ36-2側とストラット辺32A、32Bのヒンジ36-5側とをそれぞれ左右方向に急激に押圧し、それによってストラット辺31A、31Bとストラット辺32A、32Bとは図5(c)のように180°を超えて反転するように変形する。このストラット辺31A、31Bとストラット辺32A、32Bとの変形は飛び移り座屈変形であり、図5(c)に示す状態でストラット辺31A、31Bとストラット辺32A、32Bとは安定した状態になり、その時にリブ30-1、30-2の間隔はL33になっている。

【0090】
図5(c)に示す状態に至る過程でストラット辺31A、31Bを連結するヒンジ36-1、36-2、36-3においては弾性屈曲変形の度合いが高まって復元力が増大し、ストラット辺32A、32Bを連結するヒンジ36-4、36-5、36-6においても同様に弾性屈曲変形の度合いが高まり復元力が増大しており、それ以上の拡径変形に対してはストラットの曲げ変形から伸び変形に対する抗力になっているため、大きな抵抗力をもつ状態になっている。

【0091】
したがって、留置器具に拡径方向の力が作用してリブ30-1、30—2の間隔が拡がろうとしても、ストラット辺31A、31Bとストラット辺32A、32Bとは飛び移り座屈変形後の安定状態に達した図5(c)の状態からさらに屈曲の度を強めるように変形することはできない。また、リブ30-1、30-2がその間隔を狭めようとしてストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bを両側から圧縮する作用は、図5(c)の状態に達したストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bからすれば復元力により戻ろうとするのを妨げるものとなる。

【0092】
このように、図5(a)~(c)に示す形状構造のストラットは、ストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bが飛び移り座屈変形をするようにしたものであり、ストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bの間に配設される略U字形のストラット辺33とストラット辺34A、34B及びストラット辺35はストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bの飛び移り座屈変形を誘起させる部辺となっており、ストラット辺31A、31Bに加え、ストラット辺32A、32Bの飛び移り座屈を誘起させる部辺としてのストラット辺34A34Bも飛び移り座屈を行うものであり、双安定構造を二重にすることでその確実性を高める効果がある。

【0093】
各ストラットが留置器具の縮径した状態に対応する初期の図5(a)の状態から、留置器具の拡径した状態に対応する図5(b)の状態を経て、ストラット辺の双安定性における他方の安定状態である図5(c)の状態に達して後は、留置器具に縮径方向への作用が加わっても各ストラットの双安定性と構造の変形特性によりこれが阻止される。

【0094】
図5(b)から5(c)に至るストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bの飛び移り座屈変形が生じるためには、図5(b)の状態を経てストラット辺34A、34Bが飛び移り座屈変形をした図5(c)の状態に一気に達して、ストラット辺31A、31B及びストラット辺32A、32Bを左右に押圧してそれらの飛び移り座屈変形を誘起できるように、ストラット辺31A、31とストラット辺32A、32Bとの位置関係における略U字形のストラット辺33、ストラット辺34A、34B及びストラット辺35の長さ、太さというようなストラットの形状要素を設定することが必要となる。

【0095】
各ストラットが図5(a)の状態にある留置器具を細い状態のバルーンカテーテルに装備して所望の管腔臓器内に導入し、バルーンカテーテルを膨張させて留置器具を拡径させて管腔臓器内に留置することにより、管腔臓器の内壁からの圧力に抗して保持するという管腔臓器の機能を達することができる。

【0096】
以上説明した第一ないし第三実施形態による管腔臓器への留置器具の要素をなすストラットの形状構成において、2本のリブの間で略垂直方向の直線上にある連結位置からヒンジを介して連結された2本1組のストラット辺が少なくとも1組配設され、留置器具が縮径した状態ではこの2本のストラット辺が小さい角度で屈折しており、留置器具の拡径の最終段階近くで2本のストラット辺の角度が180°近くまで大きくなり、拡径の最終段階で2本のストラット辺が飛び移り座屈変形により180°を超えて一挙に反転した形状になり、その状態で安定しており、留置器具が縮径しようとして2本のリブの間隔が狭まろうとしても、その作用は2本のストラット辺が元の状態に反転する方向とは逆方向の変形を生じさせるため、この2本のストラット辺は元の状態に復元することはない。

【0097】
この少なくとも1組の2本のストラット辺が留置器具の拡径状態を維持する主たる部辺となるのであるが、留置器具の最終段階で飛び移り座屈変形を生じるに際し、それを誘起させるように作用する部辺がこのストラット辺に組み合わせられており、実施形態では特にこの飛び移り座屈変形を誘起させる部辺の形態の例を示している。しかしながら、これらは例示によるものであり、留置器具の拡径状態を維持する主たる部辺としての少なくとも1組の2本のストラット辺の飛び移り座屈変形を誘起させる部辺の形状構成はこれらに限られず、他の形態であってもよい。

【0098】
各実施形態において、複数のストラットが留置器具の周方向に軸方向のリブを介して列状に連結されて網目状のストラットが配設された円筒状の留置器具を形成する例について説明したが、リブは特に軸方向に直線状のものに限られず、屈曲ないし湾曲した形状に限られることはなく、また、ストラットが円周面上に展開される形態であれば、特にリブが不可欠であることはなく、複数のストラットを円周面上になるように連結して構成してもよい。また、留置器具の変形の際にヒンジやストラット辺は材質に応じ多少の塑性変形を伴うこともあるが、その場合には元の形状に戻る抵抗力を増大させる効果が生じるということで、さらに好都合になる。

【0099】
図1(a)、(b)においては、このように飛び移り座屈変形を経て拡径状態を維持する少なくとも1組のストラット辺とその飛び移り座屈変形を誘起させる部辺とをそれぞれ併せ持つ複数のストラットを周方向に環状に連結したものを複数列、要所でリブ同士をリンクで軸方向に連結し網目形状を有する円筒形状の留置器具として構成したものとして説明しているが、周方向の環状のストラットの列に関しては必ずしもストラットが円周にぴったり沿っていることはかならずしも必要でなく、交互に軸方向にずれてジグザグ状になってもよい。

【0100】
また、ストラットの周方向のつながりを環状にする、すなわち一周してもとの位置に戻る形でなく、螺旋状にして一周すると1ピッチだけ軸方向に進むという形にし、周方向のストラットの間でのリブを要所でリンクで連結するというようにして円筒形状の留置器具を構成してもよい。この螺旋状にストラットを配置する形は例えば特許文献1によるものと同様である。

【0101】
以上説明した管腔臓器への留置器具は軸方向のリブを共有する形で複数のストラットを周方向に連結したものを、要所でリブ同士をリンクで軸方向に連結し網目形状を有するポリマー材料または金属材料の円筒形状体として構成したものであり、このような管腔臓器への留置器具を作製するには、チューブ状の素材に対してストラット、リブ、リンクの部分を残して他の部分を削除するように加工する必要がある。このようなストラット、リブ、リンクを含む形状の微細加工を行うに際し、平面状の素材を加工する際に用いられるフォトリソグラフィの手法は利用し難いので、他の手法として、レーザー加工により作製することができる。また、本発明者が開発した手法である円筒面反応性イオンエッチングを用いるとさらに微細な加工を行うことができる(Journal of Micromechanics and Microengineering, 24(2014)055022, pp.1-8, doi: 10.1088/0960-1317/24/5/055022)。また、フィルム状の素材を加工後に丸めて円筒形にし、端面を接着や溶接で接合することにより製作することも可能である。フィルム状であれば、レーザー加工はもとより、フォトリソグラフィの手法を利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 留置器具
2 リブ
2a リンク
3 ストラット
10-1,10-2 リブ
10-1a,10-2a リンク
10-1b,10-2b 突出部
11A,11B,11C;12;13A,13B ストラット辺
14-1,14-2,14-3,14-4,14-5,14-6,14-7,14-8, 14-9 ヒンジ
20-1,20-2 リブ
20-1a,20-2a リンク
20-1b 突出部
21A,21B;22A,22B;23 ストラット辺
24-1,24-2,24-3,24-4,24-5,24-6,24-7 ヒンジ
30-1,30-2 リブ
30-1a,30-2a リンク
31A,31B;32A,32B;33;34A,34B;35 ストラット辺
33A,33B 枝片
36-1,36-2,36-3,36-4,36-5,36-6,36-7,36-8, 36-9 ヒンジ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4