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明細書 :添加物によるPET分解酵素の活性向上方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年2月6日(2020.2.6)
発明の名称または考案の名称 添加物によるPET分解酵素の活性向上方法
国際特許分類 C12N   9/18        (2006.01)
C12N  15/55        (2006.01)
FI C12N 9/18 ZNA
C12N 15/55
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 22
出願番号 特願2019-505963 (P2019-505963)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2018/009170
国際公開番号 WO2018/168679
国際出願日 平成30年3月9日(2018.3.9)
国際公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
優先権出願番号 2017049198
優先日 平成29年3月14日(2017.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】宮本 憲二
【氏名】古川 洵
【氏名】川上 了史
【氏名】小田 耕平
出願人 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B050
Fターム 4B050CC03
4B050CC07
4B050DD02
4B050KK03
4B050LL10
要約 PETaseの活性を向上させる方法及び試薬の提供。
以下の(a)又は(b)のPETaseをPETに作用させPETを分解するときに界面活性剤を添加してPETase活性を向上させる方法:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(b)のPETaseをPETに作用させPETを分解するときに、界面活性剤を添加してPETase活性を向上させる方法:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
【請求項2】
界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤が炭素数5~30のアルキルを有するアルキル硫酸ナトリウム又は炭素数5~30のアルカンを有するアルカンスルホン酸ナトリウムである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
PETに界面活性剤を添加し、一定時間後にPETaseを添加する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
PETに界面活性剤とPETaseを同時に添加する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下の(a)又は(b)のPETaseと界面活性剤を含む、PETase活性を向上させるPET分解用試薬組成物キット:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
【請求項8】
界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される請求項7記載の試薬組成物キット。
【請求項9】
界面活性剤が炭素数5~30のアルキルを有するアルキル硫酸ナトリウム又は炭素数5~30のアルカンを有するアルカンスルホン酸ナトリウムである、請求項8記載の試薬組成物キット。
【請求項10】
界面活性剤がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである、請求項8記載の試薬組成物キット。
【請求項11】
PETaseと界面活性剤を混合して含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の試薬組成物キット。
【請求項12】
PETaseと界面活性剤を別々に含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の試薬組成物キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はPET加水分解酵素(以下、PETaseと称する)を用いたPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の分解に関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PET樹脂は、透明性が高く強度にも優れていることから、ボトル等に幅広く利用されてきた。しかし、安定であるが故に自然界で分解することが無いため、ゴミ問題が起きていた。そこで、リサイクルが行われるようになり、現在ではケミカルリサイクルが広く行われている。
【0003】
一般的な加水分解によるケミカルリサイクルでは、PETを150℃~250℃の高温で触媒と過剰の水で処理するとテレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)に解重合される。加水分解の触媒は硫酸のような酸、又は水酸化ナトリウムのような塩基が使用されている。しかしながら、ケミカルリサイクルでは、廃液の処理等の問題があった。
【0004】
これら使用済みPETを環境に負荷をかけずに処理することを目指して、PET分解菌の探索を行い、PETを二酸化炭素と水まで完全分解する菌株(No.201-F6株)の分離に成功したという報告があり(特許文献1を参照)、さらに該菌株であるNo.201-F6株から、PETaseが単離されている(特許文献2及び非特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、PETase単体で用いた場合は、PETの分解は進行するものの、その効率は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-199957号公報
【特許文献2】国際公開第WO2015/025861号
【0007】

【非特許文献1】Yoshida et al., Science, Vol. 351, Issue 6278, pp.1196-1199 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、PETaseの活性を向上させる方法及びそのための試薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
PETを二酸化炭素と水まで完全分解する菌株(No.201-F6株)から、PETaseが単離されていたが、その酵素のPET分解効率は十分でなかった。そこで、本発明者らは、酵素反応系に添加物を加えることにより、分解効率を向上させることができるか鋭意検討を行った。
【0010】
その結果、酵素反応系に界面活性剤であるSDS等を添加してPETaseを作用させることにより、無添加の場合と比較してPET分解活性が劇的に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下の(a)又は(b)のPETaseをPETに作用させPETを分解するときに、界面活性剤を添加してPETase活性を向上させる方法:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
[2] 界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される[1]の方法。
[3] 界面活性剤が炭素数5~30のアルキルを有するアルキル硫酸ナトリウム又は炭素数5~30のアルカンを有するアルカンスルホン酸ナトリウムである、[2]の方法。
[4] 界面活性剤がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである、[2]の方法。
[5] PETに界面活性剤を添加し、一定時間後にPETaseを添加する、[1]~[4]のいずれかの方法。
[6] PETに界面活性剤とPETaseを同時に添加する、[1]~[4]のいずれかの方法。
[7] 以下の(a)又は(b)のPETaseと界面活性剤を含む、PETase活性を向上させるPET分解用試薬組成物キット:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
[8] 界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルからなる群から選択される[7]の試薬組成物キット。
[9] 界面活性剤が炭素数5~30のアルキルを有するアルキル硫酸ナトリウム又は炭素数5~30のアルカンを有するアルカンスルホン酸ナトリウムである、[8]の試薬組成物キット。
[10] 界面活性剤がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである、[8]の試薬組成物キット。
[11] PETaseと界面活性剤を混合して含む、[7]~[10]のいずれかの試薬組成物キット。
[12] PETaseと界面活性剤を別々に含む、[7]~[10]のいずれかの試薬組成物キット。
【0012】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-049198号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0013】
PETをある種の界面活性剤で処理し、界面活性剤をPET表面に付着させ、PETaseを作用させることにより、PETの分解効率を飛躍的に向上させることができる。
【0014】
本発明の方法により、PETのバイオリサイクルを実用化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】添加剤として使用した界面活性剤の構造を示す図である。
【図2】界面活性剤によるPET加水分解活性への影響を示す図である。
【図3】SDS存在下、非存在下でのPET分解産物量の時間変化を示す図である。
【図4】SDS存在下、非存在下でのpNPB加水分解活性を示す図である。
【図5】プレインキュベート時間での活性変化を示す図である。
【図6】フィルム面積とSDS濃度の関係を示す図である。
【図7】界面活性剤添加によるフィルムへのタンパク質吸着量比較を示す図である。
【図8】アルキル硫酸ナトリウムによるPETase活性の向上を示す図である。
【図9】アルカンスルホン酸ナトリウムによるPETase活性の向上を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0017】
本発明は、酵素反応系に添加物を添加することにより、PET分解酵素(以下、PETaseと称する)の酵素活性を向上させる方法である。

【0018】
本発明で用いるPETaseとしては、以下の酵素が挙げられる。

【0019】
PETaseはPET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂を加水分解する酵素であり、芳香族ポリエステル分解酵素(ポリエチレンテレフタレート(PET)又はその部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を加水分解する酵素である。

【0020】
該PETaseは、土壌から単離されたIdeonella属に属するグラム陰性桿菌であるIdeonella sp. No.201-F6株より単離することができる。Ideonella属微生物の単離は公知の方法で行なうことができる。Ideonella sp. No.201-F6株については、特開2008-199957号公報に記載されている。

【0021】
PETaseをコードするDNAの塩基配列を配列番号1に示す。該酵素のアミノ酸配列を配列番号2に示す。配列番号1に示す塩基配列はシグナル配列をコードするDNAの塩基配列も含み(第1~81番目の塩基からなる配列がシグナル配列をコードする配列)、配列番号2に示すアミノ酸配列はシグナル配列も含む(第1~27番目のアミノ酸からなる配列がシグナル配列)。PETaseはシグナル配列を含むものも、含まないものも包含する。また、PETaseをコードするDNAは、シグナル配列をコードする塩基配列を含むものも、含まないものも包含する。シグナル配列を含まないものとして、配列番号1に示す塩基配列の82番目~873番目の塩基からなるDNAが挙げられる。

【0022】
本発明で用いるPETaseは、上記のIdeonella sp. No.201-F6株を培養し、該株に産生させ精製することもでき、本発明の酵素をコードする遺伝子で宿主微生物を形質転換し、該形質転換微生物を培養することによっても得ることができる。後者の方法で製造する場合、宿主微生物での発現量を上げるためにコドンの利用率を宿主微生物に合わせて最適化することが好ましい。コドンの最適化は公知の方法で行うことができる。例えば、本発明で用いるPETaseを、大腸菌を宿主として組換え酵素として作製するときに、コドンを最適化した塩基配列を配列番号3に示す。該遺伝子がコードするPETaseのアミノ酸配列を配列番号4に示す。配列番号4に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列からシグナル配列を除いたアミノ酸配列と同じである。

【0023】
PETaseは、そのアミノ酸配列からなるタンパク質がPETase活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。

【0024】
例えば、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。

【0025】
このような配列番号2又は4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2又は4のアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。

【0026】
このような配列番号2又は4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は配列番号2又は4のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。

【0027】
また、配列番号1又は3に表される塩基配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと下記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって芳香族ポリエステル分解酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。すなわち、DNAを固定したフィルターを用いて、0.7~1.0 MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。あるいは、サザンブロッティング法によりニトロセルロース膜上にDNAを転写、固定後、ハイブリダイゼーション緩衝液〔50% フォルムアミド、4×SSC、50 mM HEPES(pH7.0)、10×デンハルツ(Denhardt, s)溶液、100μg/mlサケ精子DNA〕中で42℃で一晩反応させることによりハイブリッドを形成することができるDNAである。

【0028】
また、配列番号1又は3に表される塩基配列からなるDNAとBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているDNAであって、PETase活性を有するタンパク質をコードするDNAもPETaseをコードするDNAに包含される。

【0029】
本発明で用いるPETaseは、Ideonella sp. No.201-F6株を培養し、製造することができ、Ideonella sp. No.201-F6株の培養液等の培養物から公知の方法を用いて単離することができる。また、本発明で用いるPETaseは、該PETaseをコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターにPETaseをコードするDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。PETaseをコードするDNAを挿入するためのベクターは、細菌、酵母又は動物細胞等の宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。発現ベクターの構築に用いられるベクターDNAは、広く普及した入手の容易なものが用いられる。例えば、pETベクター、pQEベクター、pColdベクター、pUC19ベクター等が挙げられる。発現ベクターの構築方法は、特に限定されるものではなく常法により行うことができる。発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、PETaseをコードするDNAを発現し得るものであれば特に制限されないが、例えば、細菌としては大腸菌、枯草菌等が、酵母としてはサッカロマイセス・セレビィシエ等が、動物細胞としては、チャイニーズ・ハムスター・卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、マウス線維芽細胞等が挙げられる。

【0030】
宿主細胞により産生されたPETaseは、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、クロマトフォカシング、等電点電気泳動法、ゲル電気泳動法等の公知の精製法を単独又は組み合わせて精製することができる。

【0031】
PETaseの活性を向上させる添加物として、親水性領域と疎水性領域を有する化合物が挙げられる。PETaseの活性を向上させる添加物は、親水性領域でPETaseと結合し、疎水性領域でPET表面に付着し、この結果、PET表面へのPETaseの吸着量が増加し、PETaseとPETを接触させ、酵素反応を促進させるので、PETの分解効率が向上する。親水性領域と疎水性領域を有する化合物の代表として、界面活性剤が挙げられる。

【0032】
PETaseの活性を向上させる界面活性剤として、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキルフェノール系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。

【0033】
この中でも、陰イオン界面活性剤であるアルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、非イオン界面活性剤であるアルキルフェノール系界面活性剤が挙げられる。

【0034】
アルキル硫酸塩には、硫酸の長鎖アルキルエステルのナトリウム塩(アルキル硫酸ナトリウム(アルキル硫酸エステルナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム))が含まれる。アルキル硫酸ナトリウムのアルキルとして、炭素数5~30のアルキル、好ましくは炭素数10~15のアルキル、さらに好ましくは炭素数12~14のアルキルが挙げられる。

【0035】
炭素数5~30のアルキル硫酸ナトリウムは、ペンチル硫酸ナトリウム(C5)、ヘキシル硫酸ナトリウム(C6)、へプチル硫酸ナトリウム(C7)、オクチル硫酸ナトリウム(C8)、ノニル硫酸ナトリウム(C9)、デシル硫酸ナトリウム(C10)、ウンデシル硫酸ナトリウム(C11)、ドデシル硫酸ナトリウム(C12)、トリデシル硫酸ナトリウム(C13)、テトラデシル硫酸ナトリウム(C14)、ペンタデシル硫酸ナトリウム(C15)、ヘキサデシル硫酸ナトリウム(C16)、ヘプタデシル硫酸ナトリウム(C17)、オクタデシル硫酸ナトリウム(C18)、ノナデシル硫酸ナトリウム(C19)、イコシル硫酸ナトリウム(C20)、ヘンイコシル硫酸ナトリウム(C21)、ドコシル硫酸ナトリウム(C22)、トリコシル硫酸ナトリウム(C23)、テトラコシル硫酸ナトリウム(C24)、ペンタコシル硫酸ナトリウム(C25)、ヘキサコシル硫酸ナトリウム(C26)、ヘプタコシル硫酸ナトリウム(C27)、オクタコシル硫酸ナトリウム(C28)、ノナコシル硫酸ナトリウム(C29)、及びトリアコンチル硫酸ナトリウム(C30)である。

【0036】
アルカンスルホン酸塩には、直鎖アルカン-1-スルホン酸ナトリウムが含まれる。アルカンスルホン酸塩ナトリウムのアルカンとして、炭素数5~30のアルカン、好ましくは炭素数10~15のアルカン、さらに好ましくは炭素数12~14のアルカンが挙げられる。

【0037】
炭素数5~30のアルカンスルホン酸塩ナトリウムは、ペンタン-1-スルホン酸ナトリウム(C5)、ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム(C6)、へプタン-1-スルホン酸ナトリウム(C7)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム(C8)、ノナン-1-スルホン酸ナトリウム(C9)、デカン-1-スルホン酸ナトリウム(C10)、ウンデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C11)、ドデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C12)、トリデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C13)、テトラデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C14)、ペンタデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C15)、ヘキサデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C16)、ヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C17)、オクタデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C18)、ノナデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C19)、イコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C20)、ヘンイコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C21)、ドコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C22)、トリコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C23)、テトラコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C24)、ペンタコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C25)、ヘキサコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C26)、ヘプタコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C27)、オクタコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C28)、ノナコサン-1-スルホン酸ナトリウム(C29)、及びトリアコンタン-1-スルホン酸ナトリウム(C30)である。

【0038】
アルキルフェノール系非イオン界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキルフェノールエトキシレート)が含まれる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルは親水性のポリオキシエチレン(POE)鎖と疎水性のアルキルフェノール基がエーテル結合で結びついた構造を有している。具体的には、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。アルキルフェノール系非イオン界面活性剤は、POE鎖長の異なる多数の化合物の混合物として、平均鎖長の異なる製品として入手可能である。そのような製品として、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルについては、Triton X-100、Triton X-114、Triton X-405等のTriton(商標) Xシリーズ(ダウケミカル)が挙げられ、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルについては、Tergitol(登録商標) NPシリーズ(ダウケミカル)、Igepal(登録商標) COシリーズ(ローディア)等が挙げられる。

【0039】
PETaseを用いてPETを分解する場合、分解するPETの形態に限定はなく、例えば、繊維状、粒状、フレーク状、ペレット状、フィルム状、塊状、ボトル状のものが挙げられる。また、これらの混合体を用いることもできる。

【0040】
本発明で用いるPETaseは、イソフタル酸共重合非晶質PET(isoPET)及びテレフタル酸共重合非晶質PET(tere PET)を分解し得る。例えば、フィルム上のiso PETフィルム及びtere PETフィルムを分解し得る。例えば、iso PET及びtere PETを、0.02 mg/cm2・日以上、好ましくは0.05 mg/cm2・日以上、より好ましくは0.1 mg/cm2・日以上、かつ例えば0.3 mg/cm2・日以下、好ましくは0.5 mg/cm2・日以下、より好ましくは1.0 mg/cm2・日以下の速度で分解することができる。本発明のPETaseによりPETが分解されたか否かは、例えば、PETの分解産物である、モノヒドロキシエチルテレフタレート(TA-EG、MHET)、或いはテレフタル酸(TPA)の生成を指標にすることによりわかる。

【0041】
従って、上記の添加物のPETaseの活性を向上させたか否かは、PETとPETaseを反応させ、PETの分解産物を測定すればよい。また、pNPB (p-nitrophenyl-butyrate)加水分解活性を指標にして、PETaseの活性を測定することができる。

【0042】
PETaseによるPETの分解は、PETにPETaseを作用させることにより行うことができる。PETにPETaseを作用させるときに上記の添加物を添加すればよい。ここで、作用とは、PETと酵素を接触させ、酵素反応を起こさせることをいう。

【0043】
添加物の添加の方法は限定されないが、例えば、最初にPETに添加物を添加し、その後にPETaseを作用させてもよい。例えば、容器中に添加物の溶液とPETを入れ、一定時間処理し、その後に容器中にPETaseを添加すればよい。PETに添加物を添加して一定時間置くことにより、添加物がPET表面に付着する。PETに添加物を添加してから、数時間から数日置いてPETaseを添加すればよい。PETに添加物を添加してから酵素を添加するまでは、静置してもよいし撹拌してもよい。

【0044】
また、容器中にPETと添加物とPETaseを同時に入れ、例えば混合溶液として入れ、添加物処理と酵素反応を同時に行わせてもよい。この場合も、静置してもよいし撹拌してもよい。

【0045】
大型の処理容器を用いることにより、一度に大量のPETを分解することができる。

【0046】
さらに、PETの表面に添加物を付着させ、その後酵素溶液中に入れることにより酵素反応を行わせてもよい。

【0047】
PETを添加物で処理し、酵素反応を行わせるときはバッファー中で行わせればよい。用いるバッファーは限定されず、トリスバッファー、グッドバッファー等を適宜用いればよい。PETaseの至適pHは約9.0であるので、バッファーのpHは、8~10、好ましくは8.5~9.5に調整する。溶液の液量に対するPETの量は限定されないが、PETが溶液に完全に浸漬するように、液量とPETの量を調整すればよい。

【0048】
酵素反応によりPETを分解させるときのPETaseの濃度、添加物の量は、分解するPETの量等に応じ適宜設定することができる。

【0049】
PETaseの濃度は、好ましくは10nM~5000nM(0.28~140μg/mL)、さらに好ましくは20nM~1000nM(0.56~28μg/mL)である。また、添加物の濃度は、用いる化合物によって異なるが、好ましくは0.001~0.1(w/v)%、さらに好ましくは0.005~0.05(w/v)%、特に好ましくは0.01~0.05(w/v)%である。溶液中でPETを分解する場合、溶液中のPETase及び添加物の上記濃度に調整すればよい。また、PETの表面に添加物を付着させて処理する場合、付着させる添加物を上記濃度に調整すればよい。

【0050】
また、例えば、処理するPETの表面積を算出できる場合、分解しようとするPETの表面積0.1~100cm2に対して、0.01~0.05(w/v)%の添加物を1mL添加すればよい。好ましくはPETの表面積1~20cm2に対して、0.01~0.05%(w/v)の添加物を1mL添加すればよい。その後、好ましくは0.001~0.1(w/v)%、さらに好ましくは0.005~0.05(w/v)%、特に好ましくは0.01~0.05(w/v)%の酵素を添加すればよい。

【0051】
分解するときの反応温度は、15~50℃、好ましくは20~40℃、特に好ましくは25~30℃である。反応時のpHは、pH9.0付近であり、好ましくは8.0~10.0、さらに好ましくは8.5~9.5である。反応時間は、分解するPETの量等により適宜設定でき、数時間から数か月である。長時間の処理を行う場合は、定期的にPETaseを添加してもよい。

【0052】
本発明は、PETを分解するための試薬組成物を包含する。該試薬組成物はPETaseと添加物を含む。該試薬はPETaseと添加物の混合物でもよいし、PETaseと添加物を別々の容器に入った状態で含んでいてもよい。

【0053】
すなわち、本発明はPETaseと添加物を混合して含むPET分解試薬組成物、又はPETaseと添加物を別々に含むPET分解試薬組成物を包含する。該試薬組成物を試薬組成物キットとも呼ぶ。

【0054】
PETaseと添加物の濃度は限定されないが、例えば、PETaseの濃度は、好ましくは10nM~5000nM(0.28~140μg/mL)、さらに好ましくは20nM~1000nM(0.56~28μg/mL)である。また、添加物の濃度は、好ましくは0.001~0.1(w/v)%、さらに好ましくは0.005~0.05(w/v)%、特に好ましくは0.01~0.05(w/v)%である。PETase又は添加物は、バッファー中に含ませればよい。バッファーは限定されず、トリスバッファー、グッドバッファー等を適宜用いればよい。バッファーのpHは、8~10、好ましくは8.5~9.5である。

【0055】
PETaseと添加物を混合して含む試薬組成物を用いる場合、PET分解試薬組成物容器中にPETを入れ、PETaseと添加物の混合物を添加して反応させればよい。また、PETaseと添加物を別々に含むPET分解試薬キットを用いる場合、PET分解試薬組成物容器中にPETを入れ、最初に添加物を添加して、PET表面を処理し、その後にPETaseを添加し分解反応を進めてもよいし、キット中の添加物とPETaseを同時に添加してもよい。

【0056】
本発明で用いるPETaseにより、PETボトルなどの廃棄物を処理することができる。PETaseにより、PETを分解し、分解物をリサイクルに用いることができる。さらに、本発明で用いるPETaseを用いて、PETフィルム等のPET加工品の表面の修飾、PET繊維の表面修飾、PET繊維を使用した衣類の洗浄、リサイクルに供するPET樹脂の洗浄等を行うこともできる。
【実施例】
【0057】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実験例]
以下の実施例においてPETaseの活性(PET加水分解活性)を、分解産物量及びpNPB (p-nitrophenyl-butyrate)加水分解活性を指標に測定した。以下に、pNPB (p-nitrophenyl-butyrate)加水分解活性の測定方法を示す。
【実施例】
【0058】
人工基質としてエステラーゼ活性測定に用いられるpNPBは加水分解によって1-ブタン酸とp-nitrophenol(pNP)へと分解される。この時、pNPは黄色を呈色するため、吸光度計で濃度を測定が可能である。
【実施例】
【0059】
酵素精製直後のpNPB加水分解活性を測定した。反応液の組成は表1に示した。pNPBはdimethyl sulfoxide(DMSO)に溶かした。酵素とバッファーを混ぜ、30℃で30分間インキュベートしたのち、基質を添加し425 nm、1分間の吸光度変化を3回測定した。測定した吸光度変化の傾き(ΔAbs)を以下の式に当てはめ、触媒回転頻度を求めた。
TOF=ΔAbs ×(ε × c × l × Δt)-1
TOF:触媒回転頻度 ε:モル吸光係数 c:酵素濃度 l:溶液層の厚さ Δt:反応時間
【実施例】
【0060】
pNPB加水分解活性は、酵素の羽後250nM、pNPB濃度100μMで触媒回転頻度は1.80g-1となり、pNPBによる活性測定が可能であることがわかった。
【実施例】
【0061】
[実施例1] PETaseの発現及び精製
PETase の発現
大腸菌BL21 Codon Plus(DE3)RIPL(Agilent)のコンピテントセルに、ORF2645タンパク質発現ベクターpET21-b(+) optORF2645をヒートショック法で導入した。pET21-b(+) optORF2645は、国際公開第WO2015/025861号に記載の方法によって構築した。次に、形質転換体を液体培養し、IPTG による誘導をかけることでタンパク質を発現させた。しかし、本酵素は菌体内で過剰発現させるとその多くが不溶化する。そこで、リフォールディングによって活性型酵素の獲得を検討することにした。まず、不溶化した酵素を、Urea を用いて可溶化した。そして、培養上清、破砕上清、可溶化溶液をSDS-PAGEした結果、可溶化溶液で 28 kDa 付近にPETaseの濃いバンドが観察された。これより酵素の可溶化ができたことがわかった。
【実施例】
【0062】
ニッケルアフィニティークロマトグラフィーによる可溶化溶液の精製
本酵素の可溶化に成功したため、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーで酵素の精製を行った。そしてカラム精製で得られた各溶出液をSDSPAGEした結果、溶出画分にPETaseのバンド(約28 kDa)が確認できた。
【実施例】
【0063】
[実施例2] 界面活性剤を用いたPET加水分解活性の向上(その1)
方法
1. 界面活性剤存在下でのPET加水分解活性
最適条件に加えて界面活性剤を0.001~0.01(w/v)%添加し活性を測定した。界面活性剤は[A]Sodium Cholate (SC)、[B]3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate (CHAPS)、[C]Sodium dodecyl sulfate (SDS)、[D]Octylphenol ethoxylate (Triton X-114)、[E]Polysorbate 80 (Tween 80)、[F] Dodecyltrimethylammoniumu choloride (DTMA-Cl)の6つを用いた(図1)。界面活性剤、バッファー、フィルムを加えて30℃、1時間プレインキュベートしたのち、酵素濃度を50 nM、フィルム面積を3.39 cm2/mLとして3時間反応させた。
【実施例】
【0064】
界面活性剤を添加しない系をコントロールとした。
【実施例】
【0065】
2. SDS存在下での反応活性
フィルム面積を変えて、酵素濃度を50 nM、500 nMとして最適条件に加えて0.01(v/v)% SDS存在下での活性を測定した。また、酵素濃度を50 nMとした場合と、反応時間ごとの分解産物量(モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET))を比較した。
【実施例】
【0066】
分解産物量は、国際公開第WO2015/025861号に記載の方法に従って、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【実施例】
【0067】
3. pNPB加水分解活性
表1の条件に加えて、0.01(w/v)% SDS存在下でのp-nitrophenyl-butyrate(pNPB)加水分解活性を測定した。
【実施例】
【0068】
【表1】
JP2018168679A1_000002t.gif
【実施例】
【0069】
4. プレインキュベート時間による活性変化
SDSを添加してからのプレインキュベート時間を0または1時間、反応時間を1時間、酵素濃度を50 nM、フィルム面積を3.39 cm2/mLとして最適条件での活性を比較した。
【実施例】
【0070】
5. 最適SDS濃度のフィルム面積依存性
酵素濃度を500 nMとしてSDS濃度、フィルム面積を変化させ、最適条件での活性を測定した。
【実施例】
【0071】
6. フィルムへの酵素吸着量
界面活性剤の添加によって活性が変化した条件でフィルムへの酵素吸着量を観察した。酵素濃度500 nM、プレインキュベート1時間、反応時間3時間、フィルム面積1.13 cm2 /mL の条件に加え、0.01(w/v)%~0.04(w/v)%となるようにSDSを添加した。反応後フィルムをピンセットで取り出し、蒸留水で濯いだ。フィルムを1.5 mLチューブの蓋におき、SDS-PAGEサンプルバッファーを10μL加えた。10分間静置した後、遠心して落ちた溶液をSDS-PAGEした。また、添加なしの条件に加え、カチオン性界面活性剤であるDTMA-Clを添加した条件と比較した。
【実施例】
【0072】
結果
1. 界面活性剤存在下でのPET加水分解活性
界面活性剤の添加による酵素活性の影響を検証するため、界面活性剤が少量存在する条件で活性の測定を行った。その結果、どの界面活性剤でも、0.1%(w/v)を超えると、活性は低下した。そこで、濃度を0.01%(w/v)に低下させたところ、Tween80、DTMA-Cl以外の界面活性剤では活性が認められるようになった(図2)。その中でもSDSを添加した条件では、コントロールと比較して約2倍の活性を示したが、親水性領域の電荷が異なるDTMA-Clでは活性が大幅に低下していた。
【実施例】
【0073】
また、界面活性剤は変性剤であることから、酵素の安定性に影響を与えているのではないかと考えられた。そこで、3時間の反応でPET分解産物量の変化を測定したところ、時間依存的にPET分解産物量が増加していたことがわかった。したがって、少なくとも3時間の反応で活性低下はほぼ起こっていないことがわかった(図3)。
【実施例】
【0074】
SDSの添加による、フィルム面積と活性の関係が酵素濃度ごとにどのように変化したか観察した。その結果酵素濃度を50 nMとした場合、コントロールと比較して、フィルム面積が1.13 cm2 /mLの条件では活性が約2.5倍、11.3 cm2 /mLの条件では約1.7倍となった(表2)。フィルム面積によって活性の変化率が異なること、特にフィルム面積が小さい場合に効果を発揮していることがわかった。
【実施例】
【0075】
【表2】
JP2018168679A1_000003t.gif
【実施例】
【0076】
また、酵素濃度を500 nMとした条件でも同様に活性を測定したところ、コントロールではほぼ活性が認められない条件であっても活性を示すようになった(表3)。これは、フィルム上で過密となった酵素が活性を持てるようになったためではないかと考えられる。
【実施例】
【0077】
この結果より、SDSは、フィルムと酵素の相互作用に影響していることが示唆される。そこで以降の実験では、この変化がフィルムとSDSの相互作用に依存した作用か検証することとした。
【実施例】
【0078】
【表3】
JP2018168679A1_000004t.gif
【実施例】
【0079】
2. SDS存在下でのpNPB加水分解活性
もし、SDSが酵素を活性化させているのであれば、どのような基質と作用させた場合でも活性向上が見込めるはずである。そこで、SDSが酵素に与える影響を確認するため、基質をpNPBに変更してSDS添加の前後で活性を測定した。その結果、活性は5%程度低下するという、フィルムとの反応系とは異なる結果が得られた(図4)。これより、SDSは酵素活性を向上しているというよりも、フィルムに作用することで、分解量を増加させているのではないかと考えられた。
【実施例】
【0080】
3. PETフィルムとSDSの相互作用
2.より、SDSがフィルムに対して作用していることが示唆された。そこで、フィルムに吸着するSDSの量が活性にあたえる影響について検討することにした。フィルムへの吸着は時間依存的であると考え、プレインキュベート時間を変更して検証を行ったところ、プレインキュベート時間で分解産物量が変化した(図5)。この結果から、フィルムとSDSが吸着することで酵素による加水分解が進行しやすいことがわかった。
【実施例】
【0081】
また、フィルムとSDSの吸着によって分解量が増加することから、最適なSDS濃度は吸着平衡によってフィルム面積とともに変化すると考えられる。
【実施例】
【0082】
そこで、フィルム面積ごとにSDS濃度を調整することで活性にどのような影響があるのかを調べた。その結果、フィルム面積が5.65 cm2/mLまでの条件では最適SDS濃度が0.02(w/v)%であったことに対して、フィルム面積が11.3 cm2/mLの条件では最適SDS濃度が0.03(w/v)%であった(図6)。これは、SDSとフィルムの間での吸着平衡による変化であると考えられ、SDSとフィルムが吸着していることを示唆している。
【実施例】
【0083】
これらの結果より、SDSは確かにフィルムに対して作用することで分解量を増加させていることがわかった。
【実施例】
【0084】
4. SDSによるフィルムへの酵素吸着量
SDSがフィルムと相互作用し、分解量を増加させていることから、吸着量が変化したことによる分解の効率化ではないかと考えられる。そこで、SDSを添加した条件でフィルムと酵素の吸着量をSDS-PAGEによって可視化して確認した。その結果、SDSを添加した条件で多くのタンパク質の吸着が確認された(図7)。このことから、SDSは吸着量を増加させることで、フィルム分解を効率化していることがわかった。
【実施例】
【0085】
考察
界面活性剤がフィルムへ作用し、酵素の吸着量を増加させた理由として、界面活性剤の疎水性領域がフィルムへ、親水性領域が溶液側へと向くことで、フィルム表面をアニオン化し、酵素のカチオン性領域と静電気的相互作用によって吸着しているのではないかと考えた。特にアニオン性のSDSとカチオン性のDTMA-Clを比較した際、親水性部分の電荷のみの変化で吸着量が大きく変化したことから、酵素の吸着には、界面活性剤の親水性領域の電荷が関与している可能性は高い。このようにして、フィルムへの吸着を仲介するように作用したため、水溶性基質を用いた活性測定で、活性の向上が確認できなかったと考えられる。また、高濃度で活性を有するようになった理由も上記のような静電気的相互作用による吸着へと変化したため、分子間距離に影響されなくなったのではないかと考えられた。
【実施例】
【0086】
[実施例3] 界面活性剤を用いたPET加水分解活性の向上(その2)
界面活性剤として、陰イオン界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム及びアルカンスルホン酸ナトリウムがPETaseのPET加水分解活性を向上させるか確認した。
【実施例】
【0087】
界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(C12)、トリデシル硫酸ナトリウム(C13)、テトラデシル硫酸ナトリウム(C14)、ドデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C12)、トリデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C13)及びテトラデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C14)を用いた。
【実施例】
【0088】
界面活性剤を0.01~0.04(w/v)%(ドデシル硫酸ナトリウム(C12))、0.005~0.0125(w/v)%(トリデシル硫酸ナトリウム(C13))、0.004~0.0075(w/v)%(テトラデシル硫酸ナトリウム(C14))、0.05~0.2(w/v)%(ドデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C12))、0.04~0.07(w/v)%(トリデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C13))、若しくは0.015~0.03(w/v)%(テトラデカン-1-スルホン酸ナトリウム(C14))とバッファー及びフィルムを加えて30℃、1時間プレインキュベートしたのち、酵素濃度を50 nM、フィルム面積を3.39 cm2/mLとして3時間反応させた(反応スケールは500μL)。
【実施例】
【0089】
界面活性剤を添加しない系をコントロールとし分解産物量を比較し、活性をコントロールと比較した分解量(%)で表した。
【実施例】
【0090】
結果を図8(アルキル硫酸ナトリウム)及び図9(アルカンスルホン酸ナトリウム)に示す。
【実施例】
【0091】
図に示すように、いずれの界面活性剤を用いた場合でも、PETaseの活性の向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のPETaseの活性を向上させる方法は、PET樹脂の有効利用に寄与することができる。
【0093】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8