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明細書 :分光装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-034501 (P2020-034501A)
公開日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 分光装置
国際特許分類 G01N  21/25        (2006.01)
FI G01N 21/25 ZNM
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2018-163206 (P2018-163206)
出願日 平成30年8月31日(2018.8.31)
発明者または考案者 【氏名】笹木 敬司
【氏名】藤原 英樹
【氏名】石原 一
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100183438、【弁理士】、【氏名又は名称】内藤 泰史
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA05
2G059BB04
2G059CC19
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059EE15
2G059FF03
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG09
2G059JJ17
2G059JJ20
2G059JJ25
2G059KK04
2G059MM01
要約 【課題】ナノサイズの粒子について吸収・共鳴情報を得ること。
【解決手段】光圧分光装置1は、光の入射部分である入力部11a,11bを有するテーパファイバ11と、入力部11aに対して共鳴光を出力するレーザー12と、入力部11bに対して非共鳴光を出力するレーザー13と、ナノ粒子の位置を検出する位置検出部(CCDカメラ15、対物レンズ14、及びレーザー30)と、レーザー12,13の光出力を制御し、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出するPC16と、を備え、PC16は、共鳴光の強度を一定とすると共に波長が変化するようにレーザー12を制御することにより、ナノ粒子における光吸収に応じた光圧を変化させて粒子運動を誘起し、粒子運動を誘起した後における、上記位置検出部によって検出されたナノ粒子の位置を考慮して、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
光の入射部分である第1の入力部及び第2の入力部と、該第1及び第2の入力部間において他の領域よりも小径に形成されたくびれ部と、を有する光ファイバと、
前記第1の入力部に対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴する波長の光である共鳴光を出力する第1の光源モジュールと、
前記第2の入力部に対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴しない波長の光である非共鳴光を出力する第2の光源モジュールと、
ナノ粒子分散溶液に浸漬した前記光ファイバに対するナノ粒子の位置を検出する位置検出部と、
前記第1の光源モジュール及び前記第2の光源モジュールの光出力を制御し、前記ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する制御部と、を備え、
前記第2の光源モジュールは、前記第1の光源モジュールから出力されて前記第1の入力部に入射する前記共鳴光に対向して前記第2の入力部に入射するように、前記非共鳴光を出力し、
前記制御部は、
前記共鳴光の強度を一定とすると共に波長が変化するように前記第1の光源モジュールを制御することにより、前記ナノ粒子における光吸収に応じた光圧を変化させて粒子運動を誘起し、
前記粒子運動を誘起した後における、前記位置検出部によって検出された前記ナノ粒子の位置を考慮して、前記ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する、分光装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記共鳴光の波長を変化させて前記粒子運動を誘起した後において、前記位置検出部によって検出された前記ナノ粒子の位置に基づき、前記ナノ粒子の運動が停止するように、前記第2の光源モジュールから出力される前記非共鳴光の強度を調整することを、前記共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、
前記共鳴光の波長の変化に応じた前記非共鳴光の強度の変化に基づいて、前記ナノ粒子における光の吸収力を導出し、前記共鳴光の各波長と、対応する前記吸収力とに基づき、前記ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する、請求項1記載の分光装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記粒子運動を誘起した後における、前記位置検出部によって検出された前記ナノ粒子の位置に基づき、前記粒子運動に係る前記ナノ粒子の速度を導出することを、前記共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、
前記ナノ粒子の速度及び前記ナノ粒子分散溶液の粘度に基づき、前記ナノ粒子における光の吸収力を導出し、前記共鳴光の各波長と、対応する前記吸収力とに基づき、前記ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する、請求項1記載の分光装置。
【請求項4】
前記位置検出部は、
前記ナノ粒子に対してプローブ光を出力する第3の光源モジュールと、
前記プローブ光が照射された前記ナノ粒子からの散乱光を捕集し前記ナノ粒子の位置を画像で検出する受光部と、を有する、請求項1~3のいずれか一項記載の分光装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光測定法として、吸収分光法が知られている(例えば特許文献1参照)。吸収分光法では、例えば、光を被測定物に照射し、照射強度及び透過強度の比に基づき評価を行う。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2000-131228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノサイズの粒子の場合、微弱な光吸収しか起きないため、透過強度の変化を高精度に検出する必要があるが、単一粒子レベルでの当該検出は極めて困難である。このため、単一粒子の分光測定法としては、単一分子分光などの発光を光子統計的に計測する方法が用いられる。しかしながら、このような手法は、励起過程を観察するのではなく、励起準位からの緩和過程を測定するものであるため、電子準位などの吸収・共鳴情報を得ることができない。このように、従来、ナノサイズの粒子について吸収・共鳴情報を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ナノサイズの粒子について吸収・共鳴情報を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る分光装置は、光の入射部分である第1の入力部及び第2の入力部と、該第1及び第2の入力部間において他の領域よりも小径に形成されたくびれ部と、を有する光ファイバと、第1の入力部に対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴する波長の光である共鳴光を出力する第1の光源モジュールと、第2の入力部に対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴しない波長の光である非共鳴光を出力する第2の光源モジュールと、ナノ粒子分散溶液に浸漬した光ファイバに対するナノ粒子の位置を検出する位置検出部と、第1の光源モジュール及び第2の光源モジュールの光出力を制御し、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する制御部と、を備え、第2の光源モジュールは、第1の光源モジュールから出力されて第1の入力部に入射する共鳴光に対向して第2の入力部に入射するように、非共鳴光を出力し、制御部は、共鳴光の強度を一定とすると共に波長が変化するように第1の光源モジュールを制御することにより、ナノ粒子における光吸収に応じた光圧を変化させて粒子運動を誘起し、粒子運動を誘起した後における、位置検出部によって検出されたナノ粒子の位置を考慮して、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。
【0007】
本発明の一態様に係る分光装置では、ナノ粒子分散溶液に浸漬した光ファイバの第1の入力部に対して共鳴光が入射し、第2の入力部に対して共鳴光に対向するように非共鳴光が入射している。このような状態で、共鳴光について強度が一定とされると共に波長が変化させられると、ナノ粒子における光吸収が変化することに応じてナノ粒子の粒子運動が誘起される。このため、本分光装置のように、ナノ粒子の位置が検出されることにより、ナノ粒子の粒子運動の状態を適切に把握し、ナノ粒子における光吸収の状態(吸収スペクトル)を適切に推定することができる。このような手法によれば、透過強度の変化を高精度に検出する必要等がなく、従来の吸収分光法では吸収・共鳴情報を得ることが困難であったナノサイズの粒子についても、吸収・共鳴情報を適切に得ることができる。
【0008】
制御部は、共鳴光の波長を変化させて粒子運動を誘起した後において、位置検出部によって検出されたナノ粒子の位置に基づき、ナノ粒子の運動が停止するように、第2の光源モジュールから出力される非共鳴光の強度を調整することを、共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、共鳴光の波長の変化に応じた非共鳴光の強度の変化に基づいて、ナノ粒子における光の吸収力を導出し、共鳴光の各波長と、対応する吸収力とに基づき、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出してもよい。上述したように、共鳴光の波長を変化させることによってナノ粒子の粒子運動が誘起される。これに対して、ナノ粒子の運動が停止する(波長を変化させる前の停止した状態にする)ように非共鳴光の強度が調整されることにより、共鳴光の波長の変化に応じた非共鳴光の強度の変化を適切に導出することができる。そして、非共鳴光の強度の変化量は、吸収力の変化量に応じた値となるため、非共鳴光の強度の変化に基づいてナノ粒子における光の吸収力を高精度に導出することができる。これにより、共鳴光の各波長と対応する吸収力とが適切に導出され、ナノ粒子の吸収スペクトルを高精度に導出することが可能となる。
【0009】
制御部は、粒子運動を誘起した後における、位置検出部によって検出されたナノ粒子の位置に基づき、粒子運動に係るナノ粒子の速度を導出することを、共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液の粘度に基づき、ナノ粒子における光の吸収力を導出し、共鳴光の各波長と、対応する吸収力とに基づき、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出してもよい。このように、ナノ粒子の位置からは、粒子運動を行うナノ粒子の速度を適切に導出することができる。そして、ナノ粒子における光の吸収力は、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液の粘度等と相関があるため、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液の粘度から吸収力を高精度に導出することができる。これにより、共鳴光の各波長と対応する吸収力とが適切に導出され、ナノ粒子の吸収スペクトルを高精度に導出することが可能となる。
【0010】
位置検出部は、ナノ粒子に対してプローブ光を出力する第3の光源モジュールと、プローブ光が照射されたナノ粒子からの散乱光を捕集しナノ粒子の位置を画像で検出する受光部と、を有していてもよい。これにより、ナノ粒子の位置検出を容易且つ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ナノサイズの粒子について吸収・共鳴情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光圧分光装置を模式的に示す図である。
【図2】光学モジュールの詳細な構成を模式的に示す図である。
【図3】第1実施形態に係る測定方法のフローチャートである。
【図4】レーザー光(非共鳴光)の強度を変化させることによってナノ粒子の動きを制御する例について示す図である。
【図5】吸収特性が互いに異なる粒子について個別に動きを制御する例について示す図である。
【図6】波長を変化させた場合における、ポリスチレンナノ粒子及び金ナノ粒子の動きの一例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0014】
[第1実施形態]
まず、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る光圧分光装置1を説明する。図1は、第1実施形態に係る光圧分光装置1を模式的に示す図である。図1に示されるように、光圧分光装置1は、テーパファイバ11(光ファイバ)と、レーザー12(第1の光源モジュール),13(第2の光源モジュール)と、対物レンズ14(位置検出部,受光部)と、CCDカメラ15(位置検出部,受光部)と、PC16(制御部)と、を備える。なお、図1においては、光圧分光装置1の一部の構成のみを示しており、光学モジュールの詳細な構成については、図2に示している。

【0015】
テーパファイバ11は、光ファイバを高温で溶融させながら、その一部の直径が光の波長よりも小さくなるまで引き延ばしたデバイスである。より詳細には、テーパファイバ11は以下の手順により作成される。すなわち、まず、一般的なシングルモードファイバの被覆を剥ぎ、ファイバ両端をそれぞれ電動ステージ上に固定する。つづいて、電動ステージ間に配置したセラミックヒーターによりファイバを加熱しながら電動ステージによりファイバを伸長させることにより、他の領域よりも小径に形成されたテーパ部11c(くびれ部)を形成する。ヒーター温度、ステージ移動速度、及び伸長時間を調整することにより、例えば、波長532nmにおいて高透過率で単一モード伝搬が可能なテーパファイバ11が生成される。当該テーパファイバ11のテーパ部11cの直径は、例えば400nm以下とされる。テーパファイバ11は、図2に示されるように、例えばスライドガラス25上にUV硬化性樹脂22により固定される。

【0016】
テーパファイバ11は、光の入射部分である入力部11a(第1の入力部),入力部11b(第2の入力部)を有する。入力部11a,11bは、テーパファイバ11の軸方向両端部分に形成されている。また、テーパファイバ11は、入力部11a,11b間において、他の領域よりも小径に形成されたテーパ部11cを有する。テーパファイバ11では、テーパ部11cにおいてのみエバネッセント場が発生する。テーパファイバ11におけるテーパ部11c以外の通常のファイバ内では、コアとクラッド界面での全反射により光がコア内を伝搬するのに対して、テーパ部11cでは、コアを伝搬した光がテーパ部11cと周辺溶液の界面で全反射する。これにより、テーパ部11c周辺の溶液側にエバネッセント場が染み出し、粒子と作用することが可能となっている。

【0017】
テーパファイバ11は、溶液保持用チャンバー20に設けられている。溶液保持用チャンバー20は、ナノ粒子分散溶液21を満たすためのセルである。溶液保持用チャンバー20には、テーパファイバ11を固定したスライドガラス25上にテーパファイバ11と平行に延びる直径1mmのガラス棒(不図示)が設けられている。なお、溶液保持用チャンバー20の構成はこれに限定されず、テーパファイバ11を固定すると共にナノ粒子分散溶液21を保持できるチャンバーであればよい。溶液保持用チャンバー20では、テーパファイバ11が水中に浸漬するまでナノ粒子分散溶液21が滴下された後、カバーガラスで蓋がされる。ナノ粒子分散溶液21は、例えばダイヤモンドナノ粒子を水中に適量分散させた水溶液である。ナノ粒子分散溶液21には、テーパファイバ11を水中に浸漬するために少量の界面活性剤が添加されている。溶液保持用チャンバー20は、例えばCCDカメラ15の直下に配置される。そして、溶液保持用チャンバー20に設けられたテーパファイバ11の両端の入力部11a,11bには、レーザー12,13から出力されたレーザー光(ナノ粒子を捕捉するための2つのレーザー光)が入射する。

【0018】
レーザー12は、テーパファイバ11の入力部11aに対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴する波長(蛍光性ダイヤモンドに吸収のある波長)のレーザー光である共鳴光を出力する。レーザー12は、波長可変レーザーである。レーザー12は、例えば波長が532nmの共鳴光を最初に出力し、その後、波長を変化させながら連続的に共鳴光を出力する。レーザー12は、PC16からの制御信号に応じて共鳴光を出力する。

【0019】
レーザー13は、テーパファイバ11の入力部11bに対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴しない波長(蛍光性ダイヤモンドに吸収のない波長)のレーザー光である非共鳴光を出力する。レーザー13は、波長固定レーザーである。レーザー13は、例えば波長が1064nmの非共鳴光を、レーザー12によって出力されて入力部11aに入射する共鳴光に対向して入力部11bに入射するように出力する。

【0020】
入力部11aに対する入射光の状態(強度及びテーパ部11cでの偏光状態)をコントロールするため、レーザー12の出射口からテーパファイバ11の端面(入力部11a側端面)の間には、強度コントロール用のNDフィルター43(図2参照)、偏光状態コントロール用のλ/2、λ/4波長板(不図示)、及び、特定の波長の光のみを反射しその他の波長の光を透過するダイクロイックミラー45がそれぞれ配置されている。なお、レーザー13の出射口からテーパファイバ11の入力部11b側端面の間にも、同様に、NDフィルター43等が設けられていてもよい。

【0021】
図2に示されるように、光圧分光装置1は、さらにレーザー30(位置検出部,第3の光源モジュール)を備えている。レーザー30は、ナノ粒子に対してプローブ光を出力する。当該プローブ光は、ナノ粒子の位置をCCDカメラ15で検出するためのレーザー光であり、レーザー12,13から出力されるレーザー光とは別波長の微弱なレーザー光であり、例えば入力部11aに入射する。

【0022】
対物レンズ14は、溶液保持用チャンバー20内のテーパファイバ11のテーパ部11cの直上に位置するように配置されており、レーザー30から出力されるプローブ光の散乱光を捕集する。CCDカメラ15は、対物レンズ14が捕集した散乱光のイメージを記録する。このように、CCDカメラ15、対物レンズ14、及びレーザー30は、ナノ粒子分散溶液に浸漬したテーパファイバ11に対するナノ粒子の位置を検出する位置検出部として機能する。また、CCDカメラ15及び対物レンズ14は、プローブ光が照射されたナノ粒子からの散乱光を捕集しナノ粒子の位置を画像で検出する受光部として機能する。なお、ナノ粒子を捕捉するためのレーザー光(すなわちレーザー12から出力される共鳴光及びレーザー13から出力される非共鳴光)の散乱については、フィルター51(図2参照)によりカットされる。また、プローブ光がカットされることにより、蛍光の確認を行い、蛍光・非蛍光性粒子の確認を行うことができる。

【0023】
PC16は、レーザー12,13の光出力を制御し、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。PC16は、共鳴光の強度を一定とすると共に波長が変化するようにレーザー12を制御することにより、ナノ粒子における光吸収に応じた光圧を変化させて粒子運動を誘起する。PC16は、粒子運動を誘起した後における、CCDカメラ15で検出されたナノ粒子の位置を考慮して、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。具体的には、PC16は、共鳴光の波長を変化させて粒子運動を誘起した後において、CCDカメラ15によって検出されたナノ粒子の位置に基づき、ナノ粒子の運動が停止するように、レーザー13から出力される非共鳴光の強度を調整することを、共鳴光の波長を変えながら繰り返し行う。そして、PC16は、共鳴光の波長の変化に応じた非共鳴光の強度の変化に基づいて、ナノ粒子における光の吸収力を導出し、共鳴光の各波長と、対応する吸収力とに基づき、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する(詳細は後述)。

【0024】
次に、図3を参照して、光圧分光装置1を用いた測定方法を説明する。図3は、第1実施形態に係る測定方法のフローチャートである。

【0025】
図3に示されるように、まず、PC16が、レーザー12,13を制御することにより、レーザー12から共鳴光が出力され、レーザー13から該共鳴光に対向する非共鳴光が出力される(ステップS1)。共鳴光はテーパファイバ11の入力部11aに入射し、非共鳴光はテーパファイバ11の入力部11bに入射する。

【0026】
つづいて、PC16は、共鳴光について、強度一定のまま波長が変化するように、レーザー12を制御する(ステップS2)。波長が変化することによって、ナノ粒子における吸収が変化し、レーザー12からの共鳴光によってナノ粒子にかかる光圧が変化する。これにより、ナノ粒子における光圧のバランスが崩れ、ナノ粒子に係る粒子運動が誘起される。

【0027】
つづいて、PC16は、再度ナノ粒子の運動が停止するように、レーザー13から出力される非共鳴光の強度(パワー)を調整する(ステップS3)。具体的には、PC16は、CCDカメラ15によって検出されたナノ粒子の位置を取得し、ナノ粒子の運動が停止するように非共鳴光の強度を調整する。図4においては、横軸が領域、縦軸が時間を示しており、図中の輝点(白い点)が、検出したナノ粒子の位置を示している。図4に示される例では、ナノ粒子に対して共鳴・非共鳴光を対向入射し、その入射パワーのバランスを変化させることにより、粒子運動を対向ビームで自在にコントロールできることを示している。図4に示されるように、0s~8sの期間において図中右方向に遷移していたナノ粒子は、PC16の制御によってレーザー13から出力される非共鳴光の強度が大きくされることにより、8s~16sの期間においては図中左方向に遷移している。このように、レーザー13から出力される逆伝搬レーザー光である非共鳴光の入射パワーを変化させることによって、テーパファイバ11上のナノ粒子の動きを制御することができる。

【0028】
PC16は、CCDカメラ15によって検出されるナノ粒子の位置に基づき、ナノ粒子の運動が停止していることを確認すると、レーザー12から出力される共鳴光の現在の波長と、レーザー13から出力される非共鳴光の現在の強度とを対応付けて記録する(ステップS4)。

【0029】
つづいて、PC16は、共鳴光についての波長変更を所定回数だけ行ったか否かを判定する(ステップS5)。所定回数行っている場合には、ステップS6に移行する。一方で、所定回数行っていない場合には、PC16は、再度ステップS2の処理を実行する。

【0030】
ステップS6では、PC16は、非共鳴光の強度の変化量から、吸収により変化した光圧を見積もることにより、吸収断面積を計算し、単一ナノ粒子の吸収スペクトルを得る(ステップS6)。

【0031】
ステップS6の処理について詳細に説明する。まず、ナノ粒子の運動が停止している状態とは、レーザー12から出力される共鳴光によりナノ粒子に作用する力Fと、レーザー13から出力される非共鳴光によりナノ粒子に作用する力Fとが等しくなっている状態をいう。F及びFは以下の(1),(2)式により示される。
【数1】
JP2020034501A_000003t.gif

【数2】
JP2020034501A_000004t.gif

上記(1),(2)式において、Fscaは散乱によりナノ粒子に作用する力(散乱力)を、Fabsは吸収によりナノ粒子に作用する力(吸収力)を、cは光速を、n2は周辺媒質の屈折率を、Iは照射レーザー強度を、σscaは散乱断面積を、σabsは吸収断面積を、それぞれ示している。また、σscaは以下の(3)式により示される。
【数3】
JP2020034501A_000005t.gif

上記(3)式において、k0は真空中の波数(=2π/λ:波長)を、rはナノ粒子の半径を、n1はナノ粒子の屈折率を、それぞれ示している。

【0032】
共鳴光の波長が変化すると、吸収ピーク付近では吸収量が大きく変化しFに係る吸収断面積σabsが変化する。FとFが釣り合うように、Fに係る照射レーザー強度Iが変化させられるため、FとFが釣り合う非共鳴光の照射レーザー強度Iの変化量ΔIに対応する散乱力の変化量ΔFsca=ΔFが、共鳴光により誘起される吸収力の変化量ΔFabsになる。吸収のない波長から共鳴光の走査を行うとすると、吸収ピーク付近でのΔFがそのままσabsによる吸収力Fabsを計測したこととなり、上記(1)~(3)式に基づき、共鳴光の波長及び対応する非共鳴光の強度のセット毎に(すなわち共鳴光の異なる波長毎に)吸収断面積σabsを導出することができる。そして、縦軸を吸収断面積σabs、横軸を共鳴波長として導出結果をプロットすることにより、吸収スペクトルを得ることができる。

【0033】
次に、第1実施形態に係る光圧分光装置1の作用効果について説明する。

【0034】
上述したように、本実施形態に係る光圧分光装置1は、光の入射部分である入力部11a,11bと、入力部11a,11b間において他の領域よりも小径に形成されたテーパ部11cと、を有するテーパファイバ11と、入力部11aに対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴する波長の光である共鳴光を出力するレーザー12と、入力部11bに対して、ナノ粒子がエバネッセント場において共鳴しない波長の光である非共鳴光を出力するレーザー13と、ナノ粒子分散溶液21に浸漬したテーパファイバ11に対するナノ粒子の位置を検出する位置検出部(CCDカメラ15、対物レンズ14、及びレーザー30)と、レーザー12,13の光出力を制御し、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出するPC16と、を備え、レーザー13は、レーザー12から出力されて入力部11aに入射する共鳴光に対向して入力部11bに入射するように、非共鳴光を出力し、PC16は、共鳴光の強度を一定とすると共に波長が変化するようにレーザー12を制御することにより、ナノ粒子における光吸収に応じた光圧を変化させて粒子運動を誘起し、粒子運動を誘起した後における、上記位置検出部によって検出されたナノ粒子の位置を考慮して、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。

【0035】
このように、光圧分光装置1では、ナノ粒子分散溶液21に浸漬したテーパファイバ11の入力部11aに対して共鳴光が入射し、入力部11bに対して共鳴光に対向するように非共鳴光が入射している。このような状態で、共鳴光について強度が一定とされると共に波長が変化させられると、ナノ粒子における光吸収が変化することに応じてナノ粒子の粒子運動が誘起される。このため、本光圧分光装置1のように、ナノ粒子の位置が検出されることにより、ナノ粒子の粒子運動の状態を適切に把握し、ナノ粒子における光吸収の状態(吸収スペクトル)を適切に推定することができる。このような手法によれば、従来の吸収分光法では吸収・共鳴情報を得ることが困難であったナノサイズの粒子についても、吸収・共鳴情報を適切に得ることができる。

【0036】
PC16は、共鳴光の波長を変化させて粒子運動を誘起した後において、CCDカメラ15によって検出されたナノ粒子の位置に基づき、ナノ粒子の運動が停止するように、レーザー13から出力される非共鳴光の強度を調整することを、共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、共鳴光の波長の変化に応じた非共鳴光の強度の変化に基づいて、ナノ粒子における光の吸収力を導出し、共鳴光の各波長と、対応する吸収力とに基づき、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。上述したように、共鳴光の波長を変化させることによってナノ粒子の粒子運動が誘起される。これに対して、ナノ粒子の運動が停止する(波長を変化させる前の停止した状態にする)ように非共鳴光の強度が調整されることにより、共鳴光の波長の変化に応じた非共鳴光の強度の変化を適切に導出することができる。そして、非共鳴光の強度の変化量は、吸収力の変化量に応じた値となるため、非共鳴光の強度の変化に基づいてナノ粒子における光の吸収力を高精度に導出することができる。これにより、共鳴光の各波長と対応する吸収力とが適切に導出され、ナノ粒子の吸収スペクトルを高精度に導出することが可能となる。

【0037】
なお、例えば図5に示されるように、特性(吸収特定)が互いに異なるナノ粒子が存在している場合(図5に示される例では、「1」「4」の〇で囲われた蛍光性ダイヤモンドナノ粒子、及び、「2」「3」の〇で囲われた非蛍光性ダイヤモンドナノ粒子が存在している)、非共鳴光の強度を調整すると、粒子間の吸収特性の違いに応じて、各粒子が異なる動きをしており、具体的には、蛍光性ダイヤモンドナノ粒子と非蛍光性ダイヤモンドナノ粒子とが互いに反対の方向に遷移している。このように、本実施形態の手法によれば、ナノ粒子の機能の違いで選別して、特定のナノ粒子だけ特定の輸送を行う(或いは停止させる、輸送の向きを変える、輸送速度を変える)等が可能になる。このような、異なるナノ粒子を選別する手法を応用して、複数のテーパファイバを並べ、それぞれ特定のナノ粒子を選別して輸送することにより、様々な(複数の)種類のナノ粒子を選別することができるナノ流体デバイスが構成される。

【0038】
そして、ナノ粒子を捕らえて任意の方向にナノ粒子の動きを制御する手法は、生体イメージングに有用である。生体イメージングでは、ナノ粒子の動きを捕らえることが重要である。この点、ダイヤモンドナノ粒子は、安全性が確認された蛍光機能を有しており、プラズモン共鳴を用いることにより微弱な光で高輝度の蛍光を得ることができるため、生体イメージングにおける上述した手法に好適に適用することができる。

【0039】
また、第1実施形態ではダイヤモンドナノ粒子を用いる例を説明したが、例えば図6に示されるように、ポリスチレンナノ粒子を用いた場合や、金ナノ粒子を用いた場合においても、粒子を入射ビームで捕捉し、輸送することができた。

【0040】
位置検出部は、ナノ粒子に対してプローブ光を出力するレーザー30と、プローブ光が照射されたナノ粒子からの散乱光を捕集しナノ粒子の位置を画像で検出するCCDカメラ15と、を有している。これにより、ナノ粒子の位置検出を容易且つ確実に行うことができる。

【0041】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、重複する説明を省略する。

【0042】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、光圧分光装置1が用いられる。第1実施形態では、非共鳴光の強度を調整(バランスパワーの調整)によって分光測定が行われたのに対して、第2実施形態では、粒子運動の速度が解析(運動解析)されることによって分光測定が行われる。

【0043】
具体的には、PC16が、粒子運動を誘起した後における、CCDカメラ15によって検出されたナノ粒子の位置に基づき、粒子運動に係るナノ粒子の速度を導出することを、共鳴光の波長を変えながら繰り返し行い、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液21の粘度に基づき、ナノ粒子における光の吸収力を導出し、共鳴光の各波長と、対応する吸収力とに基づき、ナノ粒子の吸収スペクトルを導出する。このように、ナノ粒子の位置からは、粒子運動を行うナノ粒子の速度を適切に導出することができる。そして、ナノ粒子における光の吸収力は、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液21の粘度等と相関があるため、ナノ粒子の速度及びナノ粒子分散溶液の粘度から吸収力を高精度に導出することができる。これにより、共鳴光の各波長と対応する吸収力とが適切に導出され、ナノ粒子の吸収スペクトルを高精度に導出することが可能となる。

【0044】
以下、図7を参照して、光圧分光装置1を用いた測定方法を説明する。図7は、第2実施形態に係る測定方法のフローチャートである。

【0045】
図7に示されるように、まず、PC16が、レーザー12,13を制御することにより、レーザー12から共鳴光が出力され、レーザー13から該共鳴光に対向する非共鳴光が出力される(ステップS11)。共鳴光はテーパファイバ11の入力部11aに入射し、非共鳴光はテーパファイバ11の入力部11bに入射する。

【0046】
つづいて、PC16は、共鳴光について、強度一定のまま波長が変化するように、レーザー12を制御する(ステップS12)。波長が変化することによって、ナノ粒子における吸収が変化し、レーザー12からの共鳴光によってナノ粒子にかかる光圧が変化する。これにより、ナノ粒子における光圧のバランスが崩れ、ナノ粒子に係る粒子運動が誘起される。

【0047】
つづいて、PC16は、CCDカメラにより検知されたナノ粒子の画像(図4参照)を解析することにより、ナノ粒子に係る粒子運動の速度を導出する(ステップS13)。具体的には、例えば図4に示されるような画像における輝点について、各フレーム毎に、画像解析ソフトによって2次元ガウス関数でフィッティングし、関数の中心位置を得る。該中心位置が粒子の中心位置となる。このような処理を各フレーム毎に行うことによって粒子の位置変化及び速度を得ることができる。

【0048】
つづいて、PC16は、ナノ粒子に係る吸収力を導出する(ステップS14)。まず、元々ナノ粒子に作用している光圧のバランスがとれていた状態から、共鳴波長のシフトによる吸収の差によって粒子運動が誘起されていることから、吸収力の変化量と、溶液中を運動するナノ粒子の粘性抵抗力とは釣り合うこととなる。吸収力の変化量ΔFabsは以下の(4)式により示され、ナノ粒子の粘性抵抗力は6πηrvにより示される。なお、ηは溶液の粘性係数を、rはナノ粒子の半径を、vはナノ粒子の運動速度を、それぞれ示している。

【0049】
【数4】
JP2020034501A_000006t.gif

【0050】
いま、粒子運動の速度が導出できており、上記(4)式で示される吸収力の変化量ΔFabsとナノ粒子の粘性抵抗力6πηrvとが釣り合っていることから、光圧のバランスがとれていた状態から別の共鳴波長にシフトした場合の吸収断面積σabsの変化量を導出することができる。吸収のない波長から共鳴光の走査を行うとすると、変化量がそのまま吸収量の絶対値となる。

【0051】
つづいて、PC16は、共鳴光についての波長変更を所定回数だけ行ったか否かを判定する(ステップS15)。所定回数行っている場合には、ステップS16に移行する。一方で、所定回数行っていない場合には、PC16は、再度ステップS12の処理を実行する。

【0052】
ステップS16では、PC16は、各波長に対応する吸収量から吸収断面積を計算し、縦軸を吸収断面積σabs、横軸を共鳴波長として導出結果をプロットすることにより、吸収スペクトルを得る。以上が、第2実施形態に係る測定方法である。

【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、レーザー30からナノ粒子に対してプローブ光を出力し、CCDカメラ15でナノ粒子の位置を検出するとして説明したがこれに限定されず、他の方法によってナノ粒子の位置が検出されてもよい。また、本手法は、吸収以外の波長依存性を持つ場合にも同様に適用でき、その場合は、単一粒子の吸収スペクトルの測定ではなく、吸光度あるいは消光断面積のスペクトルを測定すればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…光圧分光装置、11…テーパファイバ、11a,11b…入力部、11c…テーパ部、12,13…レーザー、14…対物レンズ、15…CCDカメラ、16…PC、21…ナノ粒子分散溶液、30…レーザー。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6