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明細書 :分子性有機導体の融解助剤、分子性有機導体含有固体材料及びそれらの利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-033485 (P2020-033485A)
公開日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 分子性有機導体の融解助剤、分子性有機導体含有固体材料及びそれらの利用
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
C09D  11/30        (2014.01)
H01B   1/12        (2006.01)
FI C09K 3/00 ZAAZ
C09D 11/30
C09K 3/00 102
H01B 1/12 Z
請求項の数または発明の数 22
出願形態 OL
全頁数 40
出願番号 特願2018-162355 (P2018-162355)
出願日 平成30年8月31日(2018.8.31)
発明者または考案者 【氏名】中村 貴義
【氏名】白川 祐基
【氏名】高橋 仁徳
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 4J039
Fターム 4J039BC12
4J039BC44
4J039BC50
4J039BC51
4J039BC59
4J039BE29
4J039EA24
4J039GA24
要約 【課題】高融点でインクジェット印刷プロセスに導入が困難であった分子性有機導体について、分子性有機導体の融点より低い温度で溶融できる手段を提供すること。
【解決手段】クラウンエーテル及び有機カチオンを含有する、分子性有機導体の融解助剤。分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルを含有する固体材料。有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンである。クラウンエーテルは、有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
クラウンエーテル及び有機カチオンを含有する、分子性有機導体の融解助剤であって、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、前記融解助剤。
【請求項2】
前記イミダゾリウムカチオンは、一般式(1)で示される請求項1に記載の融解助剤。
【化1】
JP2020033485A_000043t.gif
(一般式(1)中、R1及びR2は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項3】
前記ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンは、それぞれ一般式(2)~(5)で示されるカチオンである請求項1に記載の融解助剤。
【化2】
JP2020033485A_000044t.gif
(一般式(2)~(5)中、R3は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項4】
前記ビピリジニウムカチオンは、一般式(6)で示される請求項1に記載の融解助剤。
【化3】
JP2020033485A_000045t.gif
(一般式(6)中、R4は、水素原子、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項5】
前記クラウンエーテルは、下記一般式(10)で示される請求項1~4のいずれかに記載の融解助剤。
【化4】
JP2020033485A_000046t.gif
(一般式(10)中、nは8~10の整数であり、R5及びR6は独立に水素原子または置換基を示し、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができ、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、式中の酸素原子の少なくとも1つが窒素原子または硫黄原子に置換可能である。)
【請求項6】
前記クラウンエーテルは、[3n]クラウンn-エーテル、モノベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、トリベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、テトラベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、モノシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、トリシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、テトラシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、またはジベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテルであり、いずれも置換基を有しても良く、nは8~10の整数である、請求項5に記載の融解助剤。
【請求項7】
分子性有機導体は、下記一般式(20)で示されるアニオンを含有する化合物である請求項1~6のいずれかに記載の融解助剤。
【化5】
JP2020033485A_000047t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示し、アニオンの価数xは0超、2以下である。)
【請求項8】
分子性有機導体は、下記一般式(21)で示されるアニオンを含有する化合物である請求項1~6のいずれかに記載の融解助剤。
【化6】
JP2020033485A_000048t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
【請求項9】
分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルを含有する固体材料であって、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオンピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機カチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、前記固体材料。
【請求項10】
前記イミダゾリウムカチオンは、一般式(1)で示される請求項9に記載の固体材料。
【化7】
JP2020033485A_000049t.gif
(一般式(1)中、R1及びR2は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項11】
前記ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンは、それぞれ一般式(2)~(5)で示されるカチオンである請求項9に記載の固体材料。
【化8】
JP2020033485A_000050t.gif
(一般式(2)~(5)中、R3は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項12】
前記ビピリジニウムカチオンは、一般式(6)で示される請求項9に記載の固体材料。
【化9】
JP2020033485A_000051t.gif
(一般式(6)中、R4は、水素原子、素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
【請求項13】
前記クラウンエーテルは、下記一般式(10)で示される請求項9~12のいずれかに記載の固体材料。
【化10】
JP2020033485A_000052t.gif
(一般式(10)中、nは8~10の整数であり、R5及びR6 は独立に水素原子または置換基を示し、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができ、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、式中の酸素原子の少なくとも1つ窒素原子または硫黄原子に置換可能である。)
【請求項14】
前記クラウンエーテルは、[3n]クラウンn-エーテル、モノベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、トリベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、テトラベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、モノシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、トリシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、テトラシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、またはジベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテルであり、いずれも置換基を有しても良く、nは8~10の整数である、請求項13に記載の固体材料。
【請求項15】
前記分子性有機導体のアニオンは、下記一般式(20)で示されるアニオンである、請求項9~14のいずれかに記載の固体材料。
【化11】
JP2020033485A_000053t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示し、アニオンの価数xは0超、2以下である。)
【請求項16】
前記分子性有機導体のアニオンは、下記一般式(21)で示されるアニオンである、請求項9~14のいずれかに記載の固体材料。
【化12】
JP2020033485A_000054t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
【請求項17】
25℃で固体であって、80℃~200℃の範囲に融点を有する、請求項9~16のいずれかに記載の固体材料。
【請求項18】
有機溶媒に、分子性有機導体、有機カチオン及びクラウンエーテルを溶解し、次いで、有機溶媒の少なくとも一部を除去して、固体を析出させることを含み、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、
請求項9~17のいずれかに記載の固体材料の製造方法。
【請求項19】
前記分子性有機導体は、下記一般式(20)又は(21)で示されるアニオンを含有する化合物である、請求項18に記載の製造方法。
【化13】
JP2020033485A_000055t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示し、アニオンの価数xは0超、2以下である。)
【化14】
JP2020033485A_000056t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
【請求項20】
析出した固体を加熱溶融し、次いで冷却して結晶化させて、固体材料を得る、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項9~17のいずれかに記載の固体材料を含むインクジェット印刷用インク。
【請求項22】
請求項21に記載のインクを用いるインクジェット印刷物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子性有機導体の融解助剤、分子性有機導体含有固体材料及びそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体・有機金属・有機超伝導体を含め、固体で電気伝導性を有する有機化合物は、その分子設計の多様性や優れた機能性から、物理学的な関心だけでなく材料やデバイスとしての応用を指向した研究を含め、数多くの研究が展開されている。導電性の有機化合物からなる分子集合体は、有機物の柔軟な構造に由来し、比較的小さな電場や機械的刺激、光照射によって電子伝導性を制御することが可能である。この特性を用いることで、従来の電子材料の中心である無機材料より優れた性質を持つ電子デバイスの構築が期待できる。
【0003】
分子性有機電子材料のほとんどが結晶性であるために、例えば、異質な微小液滴を組み合わせることによって結晶化を制御するインクジェット印刷法(非特許文献1)や、結晶の選別後にマイクロオーダーの端子を付ける方法(非特許文献2)など、デバイス製造方法が限定的である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】H. Minemawari; T. Yamada; H. Matsui; J. Tsutsumi; S. Haas; R. Chiba; R. Kumai; T. Hasegawa, Inkjet printing of single-crystal films, Nature, 2011, 475, 364
【非特許文献2】Y. Kawasugi; H. M. Yamamoto; N. Tajima; T. Fukunaga; K. Tsukagoshi; R. Kato, Electric-field-induced Mott transition in an organic molecular crystal, Phys. Rev. B, 2011, 84, 125129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、分子性有機電子材料のほとんどが結晶性であるために、そのデバイス製造方法が限定的であるという問題と共に、分子性有機電子材料のほとんどが、融点よりも先に分解してしまうため、簡便な低温加熱によるデバイス形成ができないという問題もある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、これまでインクジェット印刷プロセスに導入が困難であった高融点の分子性有機導体または溶融前に分解してしまう分子性有機導体について、分子性有機導体の融点または分解点より低い温度で溶融できる手段を提供することであり、この課題を解決することを本発明の目的とする。これにより、融点または分解点より低い温度で加熱して形成した分子性有機導体を含有する液滴を、低温加熱(例えば、100~180℃)した基板にコーティングした後、適切な冷却工程を経て固相薄膜形成することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1]
クラウンエーテル及び有機カチオンを含有する、分子性有機導体の融解助剤であって、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、前記融解助剤。
[2]
前記イミダゾリウムカチオンは、一般式(1)で示される[1]に記載の融解助剤。
【化1】
JP2020033485A_000002t.gif
(一般式(1)中、R1及びR2は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[3]
前記ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンは、それぞれ一般式(2)~(5)で示されるカチオンである[1]に記載の融解助剤。
【化2】
JP2020033485A_000003t.gif
(一般式(2)~(5)中、R3は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[4]
前記ビピリジニウムカチオンは、一般式(6)で示される[1]に記載の融解助剤。
【化3】
JP2020033485A_000004t.gif
(一般式(6)中、R4は、水素原子、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[5]
前記クラウンエーテルは、下記一般式(10)で示される[1]~[4]のいずれかに記載の融解助剤。
【化4】
JP2020033485A_000005t.gif
(一般式(10)中、nは8~10の整数であり、R5及びR6 は独立に水素原子または置換基を示し、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができ、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、式中の酸素原子の少なくとも1つが窒素原子または硫黄原子に置換可能である。)
[6]
前記クラウンエーテルは、[3n]クラウンn-エーテル、モノベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、トリベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、テトラベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、モノシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、トリシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、テトラシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、またはジベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテルであり、いずれも置換基を有しても良く、nは8~10の整数である、[5]に記載の融解助剤。
[7]
分子性有機導体は、下記一般式(20)で示されるアニオンを含有する化合物である[1]~[6]のいずれかに記載の融解助剤。
【化5】
JP2020033485A_000006t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示し、アニオンの価数xは0超、2以下である。)
[8]
分子性有機導体は、下記一般式(21)で示されるアニオンを含有する化合物である[1]~[6]のいずれかに記載の融解助剤。
【化6】
JP2020033485A_000007t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
[9]
分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルを含有する固体材料であって、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオンピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機カチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、前記固体材料。
[10]
前記イミダゾリウムカチオンは、一般式(1)で示される[9]に記載の固体材料。
【化7】
JP2020033485A_000008t.gif
(一般式(1)中、R1及びR2は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[11]
前記ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンは、それぞれ一般式(2)~(5)で示されるカチオンである[9]に記載の固体材料。
【化8】
JP2020033485A_000009t.gif
(一般式(2)~(5)中、R3は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[12]
前記ビピリジニウムカチオンは、一般式(6)で示される[9]に記載の固体材料。
【化9】
JP2020033485A_000010t.gif
(一般式(6)中、R4は、水素原子、素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。)
[13]
前記クラウンエーテルは、下記一般式(10)で示される[9]~[12]のいずれかに記載の固体材料。
【化10】
JP2020033485A_000011t.gif
(一般式(10)中、nは8~10の整数であり、R5及びR6 は独立に水素原子または置換基を示し、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができ、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、式中の酸素原子の少なくとも1つ窒素原子または硫黄原子に置換可能である。)
[14]
前記クラウンエーテルは、[3n]クラウンn-エーテル、モノベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、トリベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、テトラベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、モノシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、トリシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、テトラシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、またはジベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテルであり、いずれも置換基を有しても良く、nは8~10の整数である、[13]に記載の固体材料。
[15]
前記分子性有機導体は、下記一般式(20)で示されるアニオンを含有する化合物である、[9]~[14]のいずれかに記載の固体材料。
【化11】
JP2020033485A_000012t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示し、アニオンの価数xは0超、2以下である。)
[16]
前記分子性有機導体は、下記一般式(21)で示されるアニオンを含有する化合物である、[9]~[14]のいずれかに記載の固体材料。
【化12】
JP2020033485A_000013t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
[17]
25℃で固体であって、80℃~200℃の範囲に融点を有する、[9]~[16]のいずれかに記載の固体材料。
[18]
有機溶媒に、分子性有機導体、有機カチオン及びクラウンエーテルを溶解し、次いで、有機溶媒の少なくとも一部を除去して、固体を析出させることを含み、
前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる、
[9]~[17]のいずれかに記載の固体材料の製造方法。
[19]
前記分子性有機導体は、下記一般式(20)又は(21)で示されるアニオンを含有する化合物である、[18]に記載の製造方法。
【化13】
JP2020033485A_000014t.gif
(一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示す。)
【化14】
JP2020033485A_000015t.gif
(一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良く、アニオンの価数yは0超、2以下である。)
[20]
析出した固体を加熱溶融し、次いで冷却して結晶化させて、固体材料を得る、[19]に記載の製造方法。
[21]
[9]~[17]のいずれかに記載の固体材料を含むインクジェット印刷用インク。
[22]
[21]に記載のインクを用いるインクジェット印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分子性有機導体の融解助剤を提供することができ、さらに分子性有機導体のアニオンを含み、常温で固体であるが、比較的低温(例えば、80~200℃)の加熱で溶融する固体材料を提供することができる。これにより、高融点の分子性有機導体であっても、液滴を基板にコーティングして、基板を低温加熱(例えば、80~200℃)して、適切な冷却工程により固相薄膜形成することが可能になる。これまで高融点でインクジェット印刷プロセスに導入が困難であった分子性有機導体であっても固相薄膜形成が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2] の熱重量-示差熱分析(以下、TG-DTA)結果(a)及び示差走査熱測定結果(b)。
【図2】(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2] の融点測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[融解助剤]
本発明の第一の態様は、クラウンエーテル及び有機カチオンを含有する、分子性有機導体の融解助剤に関する。前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる。分子性有機導体の融解助剤とは、後述する分子性有機導体のアニオンを含む固体材料のように、分子性有機導体の融点または分解点より低い温度で溶融できる材料を生成するために用いる剤を意味する。

【0011】
<有機カチオン>
本発明の融解助剤における有機カチオンは、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンである一価の有機カチオンである。イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種の有機カチオンは、ほとんどの場合、室温(25℃)及び常圧において液体もしくは固体で存在する。

【0012】
本発明において、有機カチオンは、クラウンエーテルに包接されるものの、カチオン—クラウンエーテル間に働く分子間相互作用が比較的弱いカチオンであることが、クラウンエーテル及び分子性有機導体と共に固体材料を形成するという観点で好ましい。

【0013】
カチオン—クラウンエーテル間における分子間相互作用が比較的弱い有機カチオンであるという観点から、前記イミダゾリウムカチオンは、例えば、一般式(1)で示されるカチオンであることができる。
【化15】
JP2020033485A_000016t.gif
(一般式(1)中、R1及びR2は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、アルキル基、またはアルコキシ基である。)

【0014】
炭素数1~6の無置換アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシルである。炭素数1~6の無置換アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、iso-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、iso-ヘキシルオキシである。アリール基は、例えばフェニル基である。ハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、例えば、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。

【0015】
一般式(1)で示されるカチオンの具体例としては、以下に示す、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル3-プロピルイミダゾリウム 及び1-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルイミダゾリウム)を挙げることができる。

【0016】
【化16】
JP2020033485A_000017t.gif

【0017】
実施例で示すように、1-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルイミダゾリウムをカチオンとする結晶 [Ni(dmit)2](ジベンゾ24クラウン8)( 1-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルイミダゾリウム) の融点が112℃であった。このことから、長鎖末端がヒドロキシ化されたアルキルイミダゾリウムもカチオンとして選択できる。また、アルコキシ基のような、長鎖の一部が酸素になった置換基も水素結合のような比較的強い分子間相互作用を形成するには不向きなため、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基で修飾されたイミダゾリウムもカチオンとして選択できる。なお、下記記載のR1 は、前述のメチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチル基等であることができる。

【0018】
【化17】
JP2020033485A_000018t.gif

【0019】
前記ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンは、カチオン-クラウンエーテル間における分子間相互作用が比較的弱い有機カチオンであるという観点から、例えば、それぞれ一般式(2)~(5)で示されるカチオンであることができる。
【化18】
JP2020033485A_000019t.gif

【0020】
一般式(2)~(5)中、R3は独立に、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。これらアルキル基等は、上記で例示したR1及びR2の例と同様である。但し、R3は好ましくは、炭素数1~6の無置換アルキル基であり、より好ましくはメチル、エチル、プロピル基である。

【0021】
ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びピラジニウムカチオンの具体例は、例えば、以下の化合物である。

【0022】
【化19】
JP2020033485A_000020t.gif

【0023】
実施例で示すように、[Ni(dmit)2](ジベンゾ24クラウン8)(アルキルイミダゾリウム)の結晶と同様、[Ni(dmit)2](ジベンゾ24クラウン8)(ピリダジニウム)の結晶では、ピリダジニウムがジベンゾ24クラウン8の内部に包接されていることが明らかになっている。

【0024】
有機カチオンがカチオン—カチオン間で強い相互作用を形成する有機カチオンである場合も、カチオン—クラウンエーテル間の相互作用を弱めることができる。カチオン—カチオン間で強い相互作用を形成する有機カチオンであり、カチオン—クラウンエーテル間における分子間相互作用が比較的弱い有機カチオンであるという観点から、前記ビピリジニウムカチオンは、例えば、一般式(6)で示されるカチオンであることができる。
【化20】
JP2020033485A_000021t.gif

【0025】
一般式(6)中、R4は、水素原子、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。これらアルキル基等は、上記で例示したR1及びR2の例と同様である。但し、カチオン-カチオン間で強い相互作用を形成する有機カチオンであるという観点で、R4は好ましくは水素原子であり、下記の化学式で示される。
【化21】
JP2020033485A_000022t.gif

【0026】
本発明の融解助剤においては、有機カチオンは、適当なカウンターアニオンと共に塩を形成していることができる。カウンターアニオンは、特に制限されるものではなく、例えば、BF4-、Cl-、I-等を挙げることができる。

【0027】
<クラウンエーテル>
本発明の融解助剤におけるクラウンエーテルは、前記イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる。前記カチオンを包接することができるという観点からは、下記一般式(10)で示されるクラウンエーテルであることができる。

【0028】
【化22】
JP2020033485A_000023t.gif

【0029】
一般式(10)中、nは8~10の整数であり、R5及びR6は独立に水素原子または置換基を示し、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができ、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、式中の酸素原子の少なくとも1つ窒素原子または硫黄原子に置換可能である。

【0030】
nは8、9または10のいずれかの整数である。nはクラウンエーテルの包接部分のサイズを規定するものであり、カチオンの種類に応じて、そのカチオンを包接し得るサイズとなるように選択できる。R5及びR6は共に水素原子であるか、いずれか一方が水素原子であり、他方が水素原子以外の置換基であることができる。水素原子以外の置換基としては、例えば、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基であることができる。これらアルキル基等は、上記で例示したR1及びR2の例と同様である。

【0031】
あるいは、置換基は、R5及びR6が共同で形成するベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位であることができる。

【0032】
下記一般式(10)で示されるクラウンエーテルは、より好ましくは、[3n]クラウンn-エーテル、モノベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、トリベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、テトラベンゾ[3n]クラウンn-エーテル、モノシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、トリシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、テトラシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ジベンゾシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、ベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテル、またはジベンゾジシクロヘキサノ[3n]クラウンn-エーテルであることができる。

【0033】
ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位はさらに置換基を有することもでき、ベンゾ部位又はシクロヘキサノ部位が有する置換基は、水素原子以外の置換基として上記で挙げた基を挙げることができる。

【0034】
実施例の結果から、本発明の融解助剤においては、有機カチオン及びクラウンエーテルとしては、以下の2つの条件を満たすことが分子性有機導体のアニオンと共に固体材料を形成するという観点から好ましい。
(1) 有機カチオンがクラウンエーテルに包接され得ること(クラウンエーテルが有機カチオンを包接し得ること)。
(2) 有機カチオンとクラウンエーテル環内部との間に水素結合のような強い分子間相互作用が生じないこと。

【0035】
即ち、クラウンエーテルは有機カチオンを包接する能力を有するが、しかし、有機カチオンとクラウンエーテルの間で強い相互作用を生じない組合せであることが適当である。有機カチオンがクラウンエーテルに包接されても、有機カチオンとクラウンエーテルの間で強い相互作用を生じると、分子性有機導体と共に固体材料を形成できたとしても、融点よりも先に分解してしまう材料になるからである。

【0036】
クラウンエーテルの具体例としては、ジベンゾ24クラウン8の類縁体である24クラウン8、シクロヘキサノ24クラウン8、ジシクロヘキサノ24クラウン8、ベンゾ24クラウン8、シクロベンゾ24クラウン8を挙げることができる。

【0037】
【化23】
JP2020033485A_000024t.gif

【0038】
さらに、環サイズの大きい27クラウン9とその類縁体であるシクロヘキサノ27クラウン9、ジシクロヘキサノ27クラウン9、ベンゾ27クラウン9、シクロベンゾ27クラウン9、ジベンゾ27クラウン9、さらに環サイズの大きい30クラウン10とその類縁体であるシクロヘキサノ30クラウン10、ジシクロヘキサノ30クラウン10、ベンゾ30クラウン10、シクロベンゾ30クラウン10、ジベンゾ30クラウン10も適応可能と考えられる。

【0039】
【化24】
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【0040】
置換基を有するクラウンエーテルは例えば、以下の参考文献1~5に記載されており、これらを参照して合成することができる。但し、参考文献1~6に記載の置換基を有するクラウンエーテルはn=8~10以外の物もあるが、クラウンエーテルのnが変わっても合成方法自体は参照できる。
参考文献
1) M. Kocak, A. Cihan, A. I. Okur, A. Guel, Oe. Bekaroglu, "Novel crown ether-substituted phthalocyanines", Dyes and Pigments, 2000, 45, 9-14.
2) H. Liu, S. Wang, Y. Luo, W. Tang, G. Yu, L. Li, C. Chen, Y. Liu, F. Xi, J. Mater. Chem., 2001, 11, 3063-3067.
3) F. Bai, C. He, G. Chen, J. Wei, J. Wang, G. Ye, "Synthesis of alkyl substituted dicyclohexano-18-crown-6 homologues for strontium extraction in HNO3 media", Energy Procedia, 2013, 39, 396-402.
4) J. Zhou, H. -L. Liang, Q. -D. Chen, X. -H. Shen, "Synthesis of anionic sulphonate-crown ether surfactants", Chinese Chemical Letters, 2013, 24, 1137-1139.
5) B. Gourdet, K. Singh, A. M. Stuart, J. A. Vidal, "Di(1H,1H,2H,2H-perfluorooctyl)-dibenzo-18-crown-6: A "light fluorous" recyclable phase transfer catalyst", J. Fluorine Chem, 2010, 131, 1133-1143.
6) K. Kikukawa, G. X. He, A. Abe, T. Goto, R. Arata, T. Ikeda, F. Wada, T. Matsuda, "New applications of crown ethers. Part 6. Structural effects of bis(benzocrown ether)s and substituted benzocrown ethers on solvent extraction and complexation of alkali-metal cations", J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1987, 2, 135-141.

【0041】
置換基がアリール基の一種であるフェニル基を有する場合は、参考文献1の下記化合物1の合成方法を参照することができる。
【化25】
JP2020033485A_000026t.gif

【0042】
置換基がハロゲン置換アルキル基である場合、参考文献2の化合物4の合成方法を参照することができる。
【化26】
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【0043】
置換基が無置換アルキル基の場合は、下記参考文献3に記載の方法を参照できる。
【化27】
JP2020033485A_000028t.gif

【0044】
置換基が無置換アルコキシ基の場合は、下記参考文献4に記載の方法を参照できる。
【化28】
JP2020033485A_000029t.gif

【0045】
置換基がハロゲン置換アルキル基の場合は、下記参考文献5に記載の方法を参照できる。
【化29】
JP2020033485A_000030t.gif

【0046】
置換基が無置換アルキル基または無置換アルコキシ基の場合は、下記参考文献5に記載の方法を参照できる。
【化30】
JP2020033485A_000031t.gif

【0047】
さらに置換基としてデシル基を有する18クラウン6の合成方法がJ. Zolgharnein et al, Anal. Sci., 2003, 19, 871-875に記載されており、デシル基を有するクラウンエーテルの合成方法として参照できる。
【化31】
JP2020033485A_000032t.gif

【0048】
本発明で用いるクラウンエーテルは、式中の酸素原子の少なくとも1つが窒素原子または硫黄原子に置換可能である。具体的には、式中の酸素原子の1つが窒素原子に置換されたクラウンエーテル、または式中の酸素原子の1つが硫黄原子に置換されたクラウンエーテル、式中の酸素原子の任意の箇所の2つが窒素原子に置換されたクラウンエーテル、式中の酸素原子の任意の箇所の2つが硫黄原子に置換されたクラウンエーテルを挙げることができる。

【0049】
アルキル鎖を含むクラウンエーテル(ラリアットエーテル)ついて
ラリアットエーテルの報告例として、クラウン環の構成部位にNやS原子が入る「アザクラウンエーテル」や「チアクラウンエーテル」を基礎構造として報告されている。例えば、T. Takahashi et al , Tetrahedron Letters, 1992, 33, 3825-3828.を参照することができる。

【0050】
【化32】
JP2020033485A_000033t.gif

【0051】
さらにアルキル修飾チアクラウンエーテルの合成方法の例としては、猪熊精一ら、油化学、1980, 29, 767-770を参照することができる。

【0052】
【化33】
JP2020033485A_000034t.gif

【0053】
さらに、置換基を有するクラウンエーテルの入手方法に関しては、Gokel, G. W.; Dishong, D. M.; Diamond, C. J. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1980, 1053を参照することもできる。この文献には、置換基としてヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、2-メトキシフェノキシメチル基、4-メトキシフェノキシメチル基、ベンジルメチル基、メトキシエトキシメチル基、ブトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエトキシメチル基を有するクラウンエーテルの合成方法が記載されており、クラウンエーテルのnを変更することで本発明で用いるクラウンエーテルの合成方法として利用できる。
【化34】
JP2020033485A_000035t.gif

【0054】
本発明の融解助剤において、有機カチオン及びクラウンエーテルの含有比率(モル比)は、有機カチオンの種類及びクラウンエーテルの種類、さらには本発明の融解助剤が対象とする分子性有機導体の種類により、融解助剤として適切な範囲は変化するが、例えば、有機カチオン:クラウンエーテルが1:0.5~5の範囲であり、好ましくは1:1~3の範囲である。

【0055】
<分子性有機導体>
本発明の融解助剤が対象とする分子性有機導体は、例えば下記一般式(20)又は(21)で示されるアニオンを含有する化合物であることができる。
【化35】
JP2020033485A_000036t.gif

【0056】
一般式(20)中、Lは、1,3-ジチオレン-2-チオン-4,5-ジチオレート(dmit)、1,3-ジチオル-2-セレオン-4,5-ジチオレート(dmise)、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジチオレート(dddt)、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジチオレート(tdas)、ベンゼン-1,2-ジチオレート、5,6-ジヒドロ-1,4-ジオキシン-2,3-ジチオレート(edo)、2-シアノ-1,2-エタンジチオレート(edt-cn)、1,2-ジシアノ-エテン-1,2-ジチオレート(mnt)、またはテトラチアフルバレンジチオレート(TTF-dt)であり、Mは遷移金属原子を示す。アニオンの価数xは0超、2以下である。
dmit = 1,3-dithiole-2-thion-4,5-dithiolete;
dmise = 1,3-dithiole-2-selenon-4,5-dithiolete;
tdas = 1,2,5-thiadiazole-3,4-dithilate;
dddt = 5,6-dihydro-1,4-dithiine-2,3-ditholate;
edo = 5,6-dihydro-1,4-dioxine-2,3-dithiolate,
mnt = maleonitriledithiolateなど)

【0057】
Mで示される遷移金属原子の例としては、例えば、Ni, Pt , Pd, Auなどを挙げることができる。分子性有機導体は、上記アニオンが、対カチオンと共に塩を形成した化合物である。対カチオンは、特に制限はないが、例えば、4級アンモニウムNR4-であることができ(Rは炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基)、4級アンモニウムの具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、及びテトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。アニオンの価数xは0超、2以下であるが、アニオン中の遷移金属イオンの価数及びL(配位子)の種類(価数)等に応じて上記範囲内で適宜変動する。

【0058】
一般式(20)で示される分子性有機導体の例は、例えば、Inorg. Chem. 1996,35,3856-3873等に記載されており、より具体的には例えば一般式(22)で示されるアニオンを含有する化合物であることができる。
【化36】
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(一般式(22)中、Mは、遷移金属原子を示す。アニオンの価数zは0超、2以下である。)

【0059】
【化37】
JP2020033485A_000038t.gif

【0060】
一般式(21)中、R8、R9、R10、R11は、それぞれ独立して、結合位置に炭素原子を有する置換されていても良い有機基、若しくは水素原子を示し、又はR8及びR9、R10及びR11は、それぞれ一体となって環を形成していても良い。アニオンの価数yは0超、2以下である。一体となって形成される環としては、無置換および置換フェニレン環(炭素数1~6の無置換アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシルである。炭素数1~6の無置換アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、iso-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、iso-ヘキシルオキシである。アリール基は、例えばフェニル基である。ハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、例えば、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基である 。)、チアジアゾール環、トリアゾール環、チオフェニル環を挙げることができる。分子性有機導体は、上記アニオンが、対カチオンと共に塩を形成した化合物である。対カチオンは、特に制限はないが、例えば、アルカリ金属カチオンであることができ、具体例としては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、セシウムカチオン、及びルビジウムカチオン等を挙げることができる。アニオンの価数yは0超、2以下であるが、アニオン中のR8、R9、R10、R11の種類等に応じて上記範囲内で適宜変動する。

【0061】
一般式(21)として示されるアニオンを含有する化合物の例は、例えば、以下の文献に記載されている。
i)有機合成化学 第46巻 第7号(1988)638-653
ii)J. Mater. Chem., 1997, 7(9), 1661-1676
iii)Coordination chemistry Review, 110(1991) 115-160
iv)Bulletin of the Chemical Society of Japan, 45(1972), 3321-3328
一般式(21)として示されるアニオンを含有する化合物の具体例は、例えば、7,7,8,8-Tetracyanoquinodimethane(TCNQ)およびTCNQのキノン部位が任意の置換基で置換されたもの、テトラシアノエチレン(TCNE)を挙げることができる。さらに以下に一般式(21)として示されるアニオンを含有する化合物の例を挙げる。尚、これらの例は何れもアニオンであるが、電荷の表示は省略している。

【0062】
【化38】
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【0063】
上記F1TCNQ、F2TCNQ、F3TCNQは、特開 2011-181716号公報に記載されている。この電荷移動錯体が金属的伝導を示すことは1973年にテトラチアフルバレン(TTF)-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)を用いて知られるようになり、その後BDTTF、TSFや、つぎに示されるF1TCNQ、F2TCNQ、F4TCNQ(非特許文献1 のAppl. Phys. Lette., 88, 073504, (2006)、及び非特許文献2のAdv. Matterials, 2007, 19, 3248参照)など新たな材料開発も進んでいる。

【0064】
下記にテトラシアノキノジメタン(TCNQ)のバリエーションと、その文献を記載する [出典:(代表)斎藤軍治、「分子性合性金属・超伝導体の化学と物理(課題番号11894016)」、科学研究補助金(基盤研究(C)企画調査)研究成果報告書、平成12年3月、p. 1-198~1-201]。



【0065】
【化39】
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【0066】
[固体材料]
本発明の第二の態様は、分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルを含有する固体材料に関する。前記有機カチオンはイミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン及びビピリジニウムカチオンから成る群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであり、かつ前記クラウンエーテルは、前記有機カチオンに対する包接能を有するクラウンエーテルから選ばれる。

【0067】
本発明の固体材料に含まれる分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルは、上記本発明の融解助剤で説明したものと同様である。本発明の固体材料は、結晶性材料、アモルファス材料、結晶性及びアモルファスの混在材料であることができる。結晶性又はアモルファスであることは、X線結晶構造解析により確認できる。本発明の固体材料は、好ましくは25℃で固体であって、80℃~200℃の範囲に融点を有する。融点は、好ましくは100~180℃の範囲である。本発明の固体材料は、本発明の融解助剤と共に分子性有機導体のアニオンを含有するため、分子性有機導体の融点又は分解点より低い温度で溶融できる材料である。本発明の固体材料は、有機カチオン及びクラウンエーテルの種類や含有量によるが、含有される分子性有機導体単独の融点または分解点よりは、低い融点を有する。例えば、実施例で用いた分子性有機導体である(テトラ-n-ノルマルブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2]は、融点を示さず加熱していくと分解するが表1に示すように、有機カチオン及びクラウンエーテル(融解助剤)と共に形成した固体材料は融点を示し、100~180℃の範囲であった。

【0068】
本発明の固体材料において、分子性有機導体のアニオン、有機カチオン及びクラウンエーテルの含有比率(モル比)は、有機カチオンの種類、クラウンエーテルの種類、及び分子性有機導体のアニオンの種類により変化し、さらに、固体材料を形成すること、及び好ましい物性である、25℃で固体であって、80℃~200℃の範囲に融点を有することを考慮して、分子性有機導体のアニオン1モルに対して、例えば、有機カチオンが0.5~2モルの範囲、クラウンエーテルが0.25~10モルの範囲であることができる。好ましくは分子性有機導体のアニオン:有機カチオン:クラウンエーテルが、1:0.8~1.2:0.5~4の範囲である。

【0069】
[固体材料の製造方法]
本発明の第三の態様は、本発明の固体材料の製造方法である。本発明の固体材料の製造方法は、有機溶媒に、分子性有機導体、及びクラウンエーテルを溶解し、次いで、有機溶媒の少なくとも一部を除去して、固体を析出させることを含む。分子性有機導体、有機カチオン、及びクラウンエーテルは、上記本発明の融解助剤で説明したものと同様である。

【0070】
有機溶媒は、分子性有機導体、有機カチオン及びクラウンエーテルを溶解し得る溶媒から適宜選択することができる。そのような溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸-2-エトキシエチル、ジメチルスルホキシド、N,N-ホルムアミド、N-メチルピロリドン、ベンジルアルコール、エタノール、メタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合溶媒や重水素化溶媒が有機溶媒を挙げることができる。

【0071】
有機溶媒に対して、例えば、所定のモル比で、分子性有機導体、有機カチオン及びクラウンエーテルを添加、溶解して溶解液を得る。次いで有機溶媒を例えば、揮発させて有機溶媒の少なくとも一部を除去することで、固体を析出させる。析出する固体は、本発明の固体材料である。有機溶媒の揮発は、常温常圧で実施することもできるが、常温減圧や加温常圧などの条件によっても、固体が析出する条件であれば、適宜選択して実施することができる。

【0072】
析出した固体は、常法により固液分離をし、任意に洗浄等の精製を施して、本発明の固体材料を得ることができる。

【0073】
[インクジェット印刷用インク]
本発明は、上記本発明の固体材料を含むインクジェット印刷用インクを包含する。本発明のインクジェット印刷用インクは、本発明の固体材料を含む以外は、公知のインクジェット印刷用インクと同様である。

【0074】
[インクジェット印刷物の製造方法]
本発明は、本発明のインクを用いるインクジェット印刷物の製造方法を包含する。本発明のインクを用いるインクジェット印刷物の製造方法では、本発明のインクに含まれる本発明の固体材料の融点が、80℃~200℃の範囲、好ましくは100~180℃の範囲であることから、これら融点を含む温度域において本発明のインクを印刷することで、インクジェット印刷物を得ることができる。このインクジェット印刷物の製造方法は、プリンタブル・フレキシブルエレクトロニクスの製造方法として応用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【実施例】
【0076】
実施例1
(テトラ-n-ブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2]塩(20 mg, 2.8×10-5 mol)をアセトン(20 mL)に加え、室温下での撹拌により溶解させた。一方で、[Ni(dmit)2]塩のアセトン溶液とは別に、ジベンゾ24クラウン8エーテル(200 mg, 4.5×10-4 mol)、(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(BF4)塩(47 mg, 2.4×10-4 mol)をアセトン(30 mL)に加え、撹拌により溶解させた。両アセトン溶液を室温条件下で混合・撹拌し、2日間室温大気下、開放状態で保持した。アセトンの揮発による濃縮により、32 mgの黒色結晶(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2]が得られた。桐山漏斗を用いたろ過とエタノールによる洗浄で、目的試料を単離した(収率 78.2%)。
【実施例】
【0077】
実施例2
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムの代わりに、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム(これら、イミダゾリウムのN原子にアルキル鎖が共有結合した分子をアルキルイミダゾリウムと総称する)、N-エチルピリジニウム、4,4'-ビピリジニウムを用いたことを除き実施例1と同様に操作して、結晶を製造した。
【実施例】
【0078】
実施例2-1~3
アルキルイミダゾリウムを構成成分に含む物質の製造方法
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(BF4) 塩の代わりに、それぞれ(1,3-ジメチルイミダゾリウム)(ヨージド)塩(57 mg, 2.5×10-4 mol)、(1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム)(BF4)塩(66 mg, 2.5×10-4 mol)、(1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム)(BF4)塩(61.1 g, 2.9×10-4 mol)を用いた他は上記と同様の操作で行い、黒色結晶(1,3-ジメチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)3 [Ni(dmit)2]2、(1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)3 [Ni(dmit)2]2または、(1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル) [Ni(dmit)2]が得られた。
【実施例】
【0079】
実施例2-4
N-エチルピリジニウムを構成成分に含む物質の製造方法:
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(BF4)塩の代わりに、(N-エチルピリジニウム)(BF4)(60 mg, 3.1×10-4 mol)を用いた他は上記と同様の操作で行い、黒色結晶(N-エチルピリジニウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル) [Ni(dmit)2]が得られた(収率1%以下)。
【実施例】
【0080】
実施例2-5
4,4'-ビピリジニウムを構成成分に含む物質の製造方法:
(テトラ-n-ブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2]塩(20 mg, 2.9×10-5 mol)をアセトン(20 mL)に加え、撹拌により溶解させた。一方、ジベンゾ24クラウン8エーテル(200 mg, 4.5×10-3 mol)、(4,4'-ビピリジニウム)(BF4)塩(100 mg, 4.0×10-4 mol)をアセトン(30 mL)に加え、撹拌により溶解させた。両アセトン溶液を混合し、加熱条件、大気雰囲気下で1時間撹拌することで黒色結晶 (4,4'-ビピリジニウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル) [Ni(dmit)2]が得られ、桐山漏斗を用いたろ過とエタノールによる洗浄で、目的試料を単離した(収量 16.5 mg, 収率 55.7%)。
【実施例】
【0081】
合成した結晶の同定
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2]3 の同定
実施例1で得られた結晶の単結晶X線結晶構造解析を行い、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]の組成比が1:2:1であることを確認した。炭素・水素・窒素の元素分析の結果、組成比は炭素:49.40%,水素:5.09%,窒素:1.88%であり、単結晶X線構造解析から見積もられる組成比(炭素:49.38%,水素:5.18%,窒素:1.92%)と比較すると、分析装置に由来する誤差±0.3% 以内で一致していた。またKBrに希釈した試料に対して赤外分光測定を行うと、脂肪族エーテルのC-O-C逆対称伸縮、アリールアルキルエーテルのC-O-C対称・逆対称伸縮振動にそれぞれ帰属できる1130, 1060, 1250 cm-1,の吸収、S-C-SとC=Sの伸縮に帰属できる904 cm-1の吸収、imidazolium環伸縮由来の1570, 841 cm-1の吸収が見られた。以上より、黒色結晶は1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]で構成されていると同定した。
【実施例】
【0082】
(1,3-ジメチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)3[Ni(dmit)2]2結晶の同定:
実施例2-1で得られた結晶に対し単結晶X線結晶構造解析を行い、1,3-ジメチルイミダゾリウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]の組成比が2:3:2であることを確認した。炭素・水素・窒素の元素分析の結果、試料の組成比は炭素:46.20%,水素:4.58%,窒素:2.22%であり、単結晶X線構造解析から見積もられる組成比(炭素:46.22%,水素:4.70%,窒素:2.29%)と比較すると、分析装置に由来する誤差±0.3%以内で一致していた。
【実施例】
【0083】
(1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2]3 結晶の同定
実施例2-2で得られた結晶の単結晶X線結晶構造解析を行い、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]の組成比が2:3:2であることを確認した。炭素・水素・窒素の元素分析の結果、試料の組成比は炭素:45.66%,水素:4.57%,窒素:2.01%であり、単結晶X線構造解析から見積もられる組成比(炭素:46.07%,水素:4.75%,窒素:2.24%)と比較すると、分析装置に由来する誤差±0.3%以内で一致していた。
【実施例】
【0084】
(1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)[Ni(dmit)2]結晶の同定:
実施例2-3で得られた結晶の単結晶X線結晶構造解析を行い、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]の組成比が1:1:1 あることを確認した。
【実施例】
【0085】
(N-エチルピリジニウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル) [Ni(dmit)2]結晶の同定
実施例2-4で得られた結晶の単結晶X線結晶構造解析を行い、N-エチルピリジニウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]が共存する結晶であることを確認した。
【実施例】
【0086】
(4,4'-ビピリジニウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル) [Ni(dmit)2]結晶の同定:
実施例2-5で得られた結晶の単結晶X線結晶構造解析を行い、4,4’-ビピリジニウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]の組成比が1:1:1であることを確認した。炭素・水素・窒素の元素分析の結果、試料の組成比は炭素:45.26%,水素:3.69%,窒素:2.60%であり、単結晶X線構造解析から見積もられる組成比(炭素:45.45%,水素:3.91%,窒素:2.15%)と比較すると、分析装置に由来する誤差±0.3%以内で一致していた。ゆえに黒色結晶は4,4’-ビピリジニウム、ジベンゾ24クラウン8エーテル、[Ni(dmit)2]で構成されていると同定した。
【実施例】
【0087】
結晶の物性
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)2[Ni(dmit)2]の熱的特性
熱重量-示差熱分析(以下、TG-DTA)より約180℃まで重量減少が見られず熱的に安定であることを確認するとともに、107℃に熱異常を観測した(図1)。融点測定により、107℃で結晶が融解することを確認し(図2)、これはTG-DTAにおける熱異常と対応した。示差走査熱量測定(以下、DSC)および顕微鏡観察から、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。尚、融解と固化を繰り返す過程で、結晶性及びアモルファスの混在状態も確認された。また、DSCの昇温側の測定において、吸熱ピークが得られたことから、固化の際にガラス状態を経由して結晶化していたといえる。
【実施例】
【0088】
(1,3-ジメチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)3[Ni(dmit)2]2 の熱的特性
TG-DTAより約180℃まで重量減少が見られず熱的に安定であることを確認するとともに、134℃に熱異常を観測した。融点測定により、134℃で結晶が融解することを確認し、これはTG-DTAにおける熱異常と対応した。DSCおよび顕微鏡観察から、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。
【実施例】
【0089】
(1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム)2(ジベンゾ24クラウン8エーテル)3[Ni(dmit)2]2 の熱的特性
以下、TG-DTAより約130℃まで2 wt%以内の重量減少のみが見られ、熱的に安定であることを確認するとともに、112℃に熱異常を観測した。融点測定により、112 ℃で結晶が融解することを確認し、これはTG-DTAにおける熱異常と対応した。DSCおよび顕微鏡観察から、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。
【実施例】
【0090】
(1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)[Ni(dmit)2]の熱的特性
融点測定により、100℃で結晶が融解することを確認した。顕微鏡観察から、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。
【実施例】
【0091】
アルキルイミダゾリウム塩を出発原料にした場合の要約:
アルキルイミダゾリウム塩を出発原料に用いた結晶はすべて[Ni(dmit)2](ジベンゾ24-クラウン-8-エーテル)(アルキルイミダゾリウム)の3種類を構成成分としていた。
【実施例】
【0092】
熱重量分析から、結晶の分解よりも先に融点が現れることを確認した。融点測定により、作製したすべての結晶が融解し、カチオンによって融点が約100~140℃ の幅で違っていた。カチオンのアルキル鎖長を長くすると融点が低下する傾向が見られた。DSCおよび顕微鏡観察から、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。
【実施例】
【0093】
(4,4'-ビピリジニウム)(ジベンゾ24クラウン8エーテル)[Ni(dmit)2]の熱的特性について
TG-DTAより約200℃まで重量減少が見られず熱的に安定であることを確認するとともに、177℃に熱異常を観測した。DSCおよび顕微鏡観察により、177℃で結晶が融解することを確認し、温度上昇・降下を繰り返しても融解と固化が繰り返されることを確認した。
【実施例】
【0094】
【表1】
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【実施例】
【0095】
クラウンエーテルが結晶の融解に及ぼす効果を検証するため、比較として[Ni(dmit)2]と1-エチル-3-メチルイミダゾリウムの2種類を構成成分とする結晶、[Ni(dmit)2](ジベンゾ18クラウン6)(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)の3種類を構成成分とする結晶、(ピリダジニウム)(ジベンゾ24クラウン8)[Ni(dmit)2]の3種類を構成成分とする結晶を作製した。
【実施例】
【0096】
参考例1
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム) (ジベンゾ18クラウン6) [Ni(dmit)2]H2O結晶の作製
ジベンゾ18クラウン6 (73.6 mg, 2.0×10-4 mol)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(BF4)(55.6 mg, 2.8×10-4 mol)をアセトン 30 mLに加熱撹拌により溶解させた。一方、(テトラ-n-ブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2] (10 mg, 1.5×10-5 mol)をアセトン 10 mLに溶解させた。両アセトン溶液を混合し、数日大気下でアセトンを自然揮発させ溶液を濃縮させることで、(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム) (ジベンゾ18クラウン6) [Ni(dmit)2]H2O 組成の結晶を得た。
【実施例】
【0097】
参考例2
(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム) [Ni(dmit)2]結晶の作製
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(BF4)(83.4 mg, 4.21×10-4 mol)および、(テトラ-n-ブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2] (20 mg, 2.94×10-5 mol)をアセトン 10 mLに溶解させた。数日大気下でアセトンを自然揮発させ溶液を濃縮させることで、(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム) [Ni(dmit)2]組成の結晶を得た。
【実施例】
【0098】
参考例3
(ピリダジニウム)(ジベンゾ24クラウン8)2[Ni(dmit)2]結晶の作製
(ピリダジニウム)(BF4)(55.4 mg, 4.21×10-4 mol)ジベンゾ24クラウン8 (199.6 mg, 4.45×10-4 mol)、アセトン 30 mL に溶解させた。一方で、(テトラ-n-ブチルアンモニウム)[Ni(dmit)2] (20 mg, 3.0×10-5 mol)をアセトン 20 mLに溶解させた。両アセトン溶液を混合し、数日大気下でアセトンを自然揮発させ溶液を濃縮させることで、(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム) [Ni(dmit)2]組成の結晶を得た。桐山漏斗を用いたろ過とエタノールによる洗浄で、目的試料を単離した。
【実施例】
【0099】
単結晶X線構造解析により構造の違いを検討したところ、ジベンゾ24クラウン8を用いた[Ni(dmit)2](ジベンゾ24クラウン8)(アルキルイミダゾリウムカチオン)結晶では、クラウンエーテルの環の中にアルキルイミダゾリウムが包接され、カチオンはクラウンエーテル環内部および隣接するカチオン以外に分子接触が見られなかった。
【実施例】
【0100】
一方で、クラウンエーテルを用いない [Ni(dmit)2](1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)の結晶(参考例2)や、ジベンゾ18クラウン6を用いた[Ni(dmit)2](ジベンゾ18クラウン6)(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)の結晶(参考例1)では、カチオンが[Ni(dmit)2]やクラウンエーテル環外部とも分子接触していることが明らかになった。また、[Ni(dmit)2](ジベンゾ24クラウン8)(ピリダジニウム)の結晶(参考例3)では、クラウンエーテル環内部にカチオンが包接されているものの、ピリダジニウムのN原子とジベンゾ24クラウン8のO原子との最近接距離が2.910Åであり、NH・・・O水素結合を形成していた。そのため結晶化能は有していたが、得られた結晶は融点を示さず、加熱により分解した。
【実施例】
【0101】
これらから、融解する結晶の作製には、下記3点が重要な役割を果たしていると推察される。
(1) クラウンエーテルを構成成分とすること、
(2) クラウンエーテルの環サイズが有機カチオンを包接可能であること、
(3) 有機カチオンの構造にアルキル鎖やアルコキシ鎖など、カチオン—クラウンエーテル間で強い分子間相互作用が生じることを阻害する置換基を含むこと。具体的には、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルキル基、炭素数1~6の無置換もしくは置換アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、置換アルキル基及び置換アルコキシ基の置換基は、独立に水酸基、炭素数1~3のアルキル基、または炭素数1~3のアルコキシ基または炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基である。有機カチオンがこれらの置換基を有することによって、カチオンークラウンエーテル分子間の相互作用がファンデルワールス相互作用であること。もしくは、カチオン-カチオン間で水素結合を形成し、カチオン-クラウンエーテル間で強い分子間相互作用が形成されないこと。具体的には、水素原子がN原子に付加された4,4'-ビピリジニウムカチオンが、カチオン間で水素結合を形成し、カチオン-クラウンエーテル間との相互作用が弱いこと。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、分子性有機電子材料の利用分野に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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