TOP > 国内特許検索 > 抽出装置及び抽出方法 > 明細書

明細書 :抽出装置及び抽出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-032346 (P2020-032346A)
公開日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 抽出装置及び抽出方法
国際特許分類 B01D  11/04        (2006.01)
C22B   3/02        (2006.01)
C22B   3/26        (2006.01)
FI B01D 11/04 B
C22B 3/02
C22B 3/26
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2018-160379 (P2018-160379)
出願日 平成30年8月29日(2018.8.29)
発明者または考案者 【氏名】武藤 明徳
出願人 【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
審査請求 未請求
テーマコード 4D056
4K001
Fターム 4D056AB06
4D056AB07
4D056AC15
4D056AC22
4D056AC30
4D056BA20
4D056CA02
4D056CA03
4D056CA06
4D056CA13
4D056CA17
4D056CA27
4D056CA33
4D056CA39
4D056CA40
4D056DA10
4K001AA07
4K001AA19
4K001AA34
4K001AA39
4K001BA22
4K001DB04
4K001DB26
4K001DB31
4K001DB34
要約 【課題】本発明は、水相及び有機相のうち一方に含まれる対象成分を他方に短時間で効率よく移行させることができ、対象成分を移行させた後水相と有機相とを連続的で迅速に分離することができる抽出装置を提供する。
【解決手段】本発明の抽出装置は、第1流路と、第1液体を第1流路に供給するように設けられた第1供給部と、第2液体を第1流路に供給するように設けられた第2供給部とを備え、第1流路は、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に第1流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下の場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下の場合、第1流路の内壁面は親水性である。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
水又は水溶液である第1液体に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置又は第2液体に含まれる対象成分を第1液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置であって、
前記抽出装置は、細長い第1流路と、第1液体を第1流路に供給するように設けられた第1供給部と、第2液体を第1流路に供給するように設けられた第2供給部とを備え、
第1流路は、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に第1流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、
第1供給部が第1流路に供給する第1液体の体積流量と第2供給部が第1流路に供給する第2液体の体積流量の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下であり、
第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、
第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は親水性であることを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記抽出装置は、第1液体に含まれる対象成分を第2液体へ移行させるように設けられた装置であり、
第1及び第2供給部は、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下となるように設けられ、
第1流路の内壁面は、疎水性である請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記抽出装置は、前記液液スラグ流を第1液体の流れと第2液体の流れとに分岐させるように設けられた分岐部と、細長い第2流路と、水又は水溶液である第3液体を第2流路に供給するように設けられた第3供給部とをさらに備え、
前記分岐部と第2流路は、前記分岐部を流れた後の第2液体が第2流路に供給されるように接続し、
第2流路は、第3液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に第2流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、
前記抽出装置は、第1液体から第2液体へ移行させた対象成分をさらに第2液体から第3液体へ移行させるように設けられた請求項2に記載の抽出装置。
【請求項4】
第3供給部は、第2流路へ供給する第2液体の体積流量が第2流路へ供給する第3液体の体積流量の2倍以上40倍以下となるように設けられ、
第2流路の内壁面は、親水性である請求項3に記載の抽出装置。
【請求項5】
第2液体は、抽出剤を含む請求項1~4のいずれか1つに記載の抽出装置。
【請求項6】
第2液体は、疎水性のイオン液体である請求項1~5のいずれか1つに記載の抽出装置。
【請求項7】
前記抽出装置は、第2液体に含まれる対象成分を第1液体へ移行させるように設けられた装置であり、
第1及び第2供給部は、第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下となるように設けられ、
第1流路の内壁面は、親水性である請求項1に記載の抽出装置。
【請求項8】
前記抽出装置は、第2液体に含まれる対象成分を第1液体へ移行させるように設けられた装置であり、
第1及び第2供給部は、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下となるように設けられ、
第1流路の内壁面は、疎水性である請求項1に記載の抽出装置。
【請求項9】
前記抽出装置は、制御部を備え、
第1供給部は、第1液体を第1流路へ送液する第1ポンプを備え、
第2供給部は、第2液体を第1流路へ送液する第2ポンプを備え、
前記制御部は、第1ポンプの吐出量及び第2ポンプの吐出量を変化させることにより第1流路の液液スラグ流の水相の長さ及び有機相の長さを制御するように設けられた請求項1~8のいずれか1つに記載の抽出装置。
【請求項10】
有機液体である第4液体に含まれる対象成分を、前記有機液体と混ざり合わないイオン液体である第5液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置であって、
前記抽出装置は、細長い第3流路と、第4液体を第3流路に供給するように設けられた第4供給部と、第5液体を第3流路に供給するように設けられた第5供給部とを備え、
第3流路は、第4液体からなる有機相と第5液体からなるイオン液体相とが交互に第3流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、
第4供給部が第3流路に供給する第4液体の体積流量は、第5供給部が第3流路に供給する第5液体の体積流量の2倍以上40倍以下であり、
第3流路の内壁面は、親水性であることを特徴とする抽出装置。
【請求項11】
細長い第1流路に水又は水溶液である第1液体を供給し、第1流路に疎水性の有機液体である第2液体を供給することにより、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に流れる液液スラグ流を第1流路に形成する工程を備え、
第1供給部が第1流路に供給する第1液体の体積流量と第2供給部が第1流路に供給する第2液体の体積流量の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下であり、
第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、
第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は親水性であることを特徴とする抽出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置及び抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混じり合わない2つの液体(例えば水溶液と疎水性有機溶液)を用いてそれぞれの液体に対する溶解度の差を利用する液-液抽出法(ミキサセトラ法、パルスカラム法、遠心抽出法、エマルジョンフロー法など)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、2つの液体を混合してエマルション状態(水溶液と有機溶液などが混じりあって白濁した状態、乳濁液)を形成する。このことにより、液-液界面の面積を広くすることができ、水溶液中の対象成分を効率的に有機溶液に移行させることができる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-289975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の液-液抽出法では、エマルション状態を形成するため、エマルジョン状態を解消し水溶液と有機溶液とを分離するのに長時間を必要とする。また、抽出装置が大型化するという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水相及び有機相のうち一方に含まれる対象成分を他方に短時間で効率よく移行させることができ、対象成分を移行させた後水相と有機相とを連続的で迅速に分離することができる抽出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水又は水溶液である第1液体に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置又は第2液体に含まれる対象成分を第1液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置であって、前記抽出装置は、細長い第1流路と、第1液体を第1流路に供給するように設けられた第1供給部と、第2液体を第1流路に供給するように設けられた第2供給部とを備え、第1流路は、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に第1流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、第1供給部が第1流路に供給する第1液体の体積流量と第2供給部が第1流路に供給する第2液体の体積流量の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下であり、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は親水性であることを特徴とする抽出装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
第1流路は、第1液体(水又は水溶液)からなる水相と第2液体(疎水性の有機液体)からなる有機相とが交互に第1流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。このため、水相(第1液体)及び有機相(第2液体)にそれぞれ内部循環流を生じさせることができる。この内部循環流により水相と有機相との界面を連続的に更新することができ、水相(第1液体)に含まれる対象成分の有機相(第2液体)への移行、又は有機相(第2液体)に含まれる対象成分の水相(第1液体)への移行を促進することができる。
また、水相(第1液体)と有機相(第2液体)とが交互に第1流路を流れるため、第1及び第2液体はエマルション状態になりにくく比較的大きな粒子として第1流路を流れる。このため、第1流路を通り抜けた後の第1液体と第2液体は、連続的で迅速に分離する。
【0007】
本発明において、第1供給部が第1流路へ第1液体を供給する体積流量(供給量)と、第2供給部が第1流路へ第2液体を供給する体積流量(供給量)の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下となるように設定されている。そして、第1液体の供給量と第2液体の供給量のいずれが多いかによって、第1流路の内壁面を疎水性/親水性のいずれに設定するかが決められている。
すなわち本発明では、(1)第1流路への第1液体の供給量が第1流路への第2液体の供給量の2倍以上40倍以下の場合には、第1流路の内壁面を疎水性に設定することとし、(2)第1流路への第2液体の供給量が第1流路への第1液体の供給量の2倍以上40倍以下の場合には、第1流路の内壁面を親水性に設定することとした。
このように(1)、(2)いずれの場合も、第1流路への第1液体と第2液体の流量比率と、第1流路の内壁面の性質(疎水性/親水性)とを組み合わせることによって、以下に説明するように、第1液体と2液体の中、量が少ない方の液体が第1流路の内壁面に沿って広がるので、第1液体と第2液体の界面積が広く確保された状態でスラグ流が流れ、第1液体と第2液体との間で対象成分の移行が促進されることになる。
【0008】
(1)では第1流路の内壁面が疎水性である。この場合、第2液体(有機相)の方が内壁面に対する濡れ性がよく(接触角が小さい)、第1液体(水相)の濡れ性が悪い(接触角が大きい)。従って、液液スラグ流において、流量の少ない第2液体(有機相)が内壁面に沿って連続相となり、流量の多い第1液体(水相)が液滴スラグとなった状態で流れる。言い換えると、第1流路の内壁面に沿って第2液体(有機相)の薄膜が広がり、液滴スラグとなった第1液体(水相)と内壁面との間にこの第2液体(有機相)の薄い膜が介在した状態となって流れる。
よって、第1液体(水相)と第2液体(有機相)との界面積が広く確保された状態でスラグ流が流れることになり、第1液体と第2液体との間で対象成分の移行が促進されることになる。
また(1)の場合、第2液体の流量が第1液体の流量よりも少ないので、第1液体に含まれる対象成分を体積流量の少ない第2液体へ移行させる抽出工程に適用して対象成分を濃縮抽出するのに利用することができる。逆に第2液体に含まれる対象成分を流量の多い第1液体へ移行させる抽出工程に適用すれば第2液体に含まれる対象成分の濃度を十分に低減するのに利用することもできる。
【0009】
一方、(2)では第1流路の内壁面が親水性である。この場合、内壁面に対する第1液体(水相)の濡れ性がよく(接触角が小さい)、内壁面に対する第2液体(有機相)の濡れ性が悪い(接触角が大きい)。従って、液液スラグ流において、流量の少ない第1液体(水相)が内壁面に沿って連続相となり、流量の多い第2液体(有機相)は液滴スラグとなった状態で流れる。言い換えると、第1流路の内壁面に沿って第1液体(水相)の薄膜が広がり、液滴スラグとなった第2液体(有機相)と内壁面との間にこの第2液体(水相)の薄い膜が介在した状態となって流れる。
【0010】
よって、第1液体(水相)と第2液体(有機相)との界面積が広く確保された状態でスラグ流が流れることになり、第1液体と第2液体との間で対象成分の移行が促進されることになる。
また(2)の場合、第1液体の量が第2液体の量よりも少ないので、第2液体に含まれる対象成分を量の少ない第1液体へ移行させる抽出工程に適用して対象成分を濃縮抽出するのに利用することができる。逆に第1液体に含まれる対象成分を流量の多い第2液体へ移行させる抽出工程に適用すれば第1液体に含まれる対象成分の濃度を十分に低減するのに利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の抽出装置の概略断面図である。
【図2】液液スラグ流の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態の抽出装置の概略断面図である。
【図4】液液スラグ流の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態の抽出装置の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の抽出装置の概略断面図である。
【図7】Coの濃縮抽出実験(正抽出)の測定結果を示すグラフである。
【図8】Coの濃縮抽出実験(逆抽出)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抽出装置は、水又は水溶液である第1液体に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置又は第2液体に含まれる対象成分を第1液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置であって、前記抽出装置は、細長い第1流路と、第1液体を第1流路に供給するように設けられた第1供給部と、第2液体を第1流路に供給するように設けられた第2供給部とを備え、第1流路は、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に第1流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、第1供給部が第1流路に供給する第1液体の体積流量と第2供給部が第1流路に供給する第2液体の体積流量の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下であり、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は親水性であることを特徴とする。

【0013】
本発明の抽出方法は、細長い第1流路に水又は水溶液である第1液体を供給し、第1流路に疎水性の有機液体である第2液体を供給することにより、第1液体からなる水相と第2液体からなる有機相とが交互に流れる液液スラグ流を第1流路に形成する工程を備え、第1供給部が第1流路に供給する第1液体の体積流量と第2供給部が第1流路に供給する第2液体の体積流量の比率は、一方が他方の2倍以上40倍以下であり、第1流路へ供給する第1液体の体積流量が第1流路へ供給する第2液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は疎水性であり、第1流路へ供給する第2液体の体積流量が第1流路へ供給する第1液体の体積流量の2倍以上40倍以下である場合、第1流路の内壁面は親水性であることを特徴とする。

【0014】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。

【0015】
第1実施形態
第1実施形態は、水又は水溶液である第1液体に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体(抽出液)を用いて濃縮抽出する実施形態である。
図1は本実施形態の抽出装置の概略断面図であり、図2は成分移行用流路に形成される液液スラグ流の説明図である。
本実施形態の抽出装置30は、水又は水溶液である第1液体2に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体3へ移行させるように設けられた抽出装置であり、抽出装置30は、細長い成分移行用流路4aと、第1液体2を流路4aに供給するように設けられた第1供給部5と、第2液体3を流路4aに供給するように設けられた第2供給部6とを備え、流路4aは、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流路4aを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、流路4aの内壁面16は疎水性であり、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように設けられたことを特徴とする。

【0016】
本実施形態の抽出方法は、細長い成分移行用流路4aに水又は水溶液である第1液体2を供給し、成分移行用流路4aに疎水性の有機液体である第2液体3を供給することにより、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流れる液液スラグ流を成分移行用流路4aに形成する工程を備え、成分移行用流路4aの内壁面は疎水性であり、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように第1液体2及び第2液体3を成分移行用流路4aへ供給することを特徴とする。

【0017】
第1液体2は水又は水溶液であり、成分移行用流路4aに供給される前において抽出対象である対象成分を含む。対象成分は、例えば、リチウム、コバルト、ニッケル、希土類金属などのレアメタルである。対象成分は、金属イオンとして第1液体2に含まれていてもよい。例えば、本実施形態の抽出装置30により、廃リチウムイオン電池などに含まれるレアメタルの高効率の分離回収を実現することが可能になる。
第1液体2は、例えば、廃リチウムイオン電池を解体、分別し、正極活物質を取り出し、この正極活物質を塩酸などに溶かすことにより得ることができる。また、第1液体2は、正極活物質が溶解した塩酸を中和又は希釈したものであってもよい。

【0018】
第1供給部5は、第1液体2を成分移行用流路4aに供給するように設けられる。第1供給部5は、ポンプを用いて第1液体2を流路4aへ供給してもよく、重力を利用して第1液体2を流路4aに供給してもよい。第1供給部5は、例えば、シリンジポンプ11a、ダイヤフラムポンプ、ピエゾマイクロポンプなどの送液ポンプを含むことができる。

【0019】
第2液体3は、疎水性の有機液体であり、抽出液として機能する。第2液体3は、抽出剤を有機溶媒で希釈した液体であってもよい。また、第2液体3は疎水性のイオン液体であってもよい。
抽出剤は、金属イオンに対する選択性が大きい化学物質である。抽出剤には、例えば、PC-88A、D2EHPAなどのリン酸エステルを用いることができる。例えば、抽出剤としてD2EHPAを用いた場合、抽出序列は、H>Co>Ni>Li>Naとなる。また、希釈剤には、シクロヘキサンなどの有機溶媒を用いることができる。
イオン液体は、カチオンとアニオンからなる液体である。例えば、イオン液体として[C2mim][Tf2N]を用いることができる。第2液体3にイオン液体を用いることにより金属イオンの抽出率を向上させることができる。
第2供給部6は、第2液体3を成分移行用流路4aに供給するように設けられる。第2供給部6は、ポンプを用いて第2液体3を流路4aへ供給してもよく、重力を利用して第2液体3を流路4aに供給してもよい。第2供給部6は、例えば、シリンジポンプ11b、ダイヤフラムポンプ、ピエゾマイクロポンプなどの送液ポンプを含むことができる。
図1では、第1供給部5と第2供給部6にシリンジポンプを用いる例を示しているが、いずれの送液ポンプを用いる場合でも、制御装置(図示省略)は、2つのポンプに交番でON信号を送り、且つ一方のポンプにON信号を送る間は他方のポンプにはOFF信号を送る。なお、制御装置(不図示)から、2つのポンプに送るON時間の長さの比率は操作者が指定できるものとする。
第1供給部5、第2供給部6は、制御装置から送られてくるON/OFF信号に基づいて、各ポンプは、制御装置からON信号が送られてくる間は送液を行い、OFF信号が送られてくる間は送液を停止する動作を行う。
これによって、操作者が指定したON信号の時間比率に相当する割合の供給量で、第1液体2と第2液体3が合流部13aに交互に供給される。

【0020】
第1供給部5から送液された第1液体2と第2供給部6から送液された第2液体3は、合流部13aで合流し、成分移行用流路4aに流入する。合流部13aは、例えばT字管である。
第1液体2は水又は水溶液であり、第2液体3は疎水性の有機液体であるため、第1液体2は第2液体3に溶け合わない。このため、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとから構成される混相流が流路4aを流れる。

【0021】
成分移行用流路4aは、第1液体2に含まれる対象成分を第2液体3に移行させるための流路である。第1液体2と第2液体3の界面における界面反応により、第1液体2に含まれる対象成分は第2液体3へと移行する。このため、第1液体2と第2液体3との界面積が広いほど、第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行は促進される。また、第1液体2と第2液体3との間の界面を更新する流れが第1液体2及び第2液体3にあると、第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行は促進される。

【0022】
成分移行用流路4aは、管の内部の流路であってもよい。この場合、管が流路壁15aとなる。管の材料は、ガラスであってもよく、高分子材料であってもよく、金属であってもよい。また、成分移行用流路4aは、2つの部材(少なくとも一方は流路4aとなる溝を有する)の間に形成された流路であってもよい。これらの部材の材料は、ガラスであってもよく、高分子材料であってもよく、金属であってもよい。
成分移行用流路4aの流路断面は、円形であってもよく、矩形であってもよい。
成分移行用流路4aの直径2rは、例えば、0.05mm以上2mm以下とすることができる。
成分移行用流路4aの長さは、例えば、20cm以上10m以下である。
また、抽出装置30は、並行に伸びる複数の成分移行用流路4aを有してもよい。このことにより抽出装置30の処理能力を大きくすることができる。

【0023】
成分移行用流路4aは、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に成分移行用流路4aを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。
液液スラグ流は、溶け合わない2つの液体の混相流の形態の1つであり、流路4aを水相7aと有機相8aが交互に流れる流れである。液液スラグ流では、流路4aの内壁面16と流路4aを流れる水相7a及び有機相8aとの相互作用が大きいため、水相7a及び有機相8aのそれぞれの内部で循環流9が生じる。この循環流9により、水相7aと有機相8aの界面を連続的に更新することができ、第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行を促進することができる。
流路4aを流れる液液スラグ流の流速は、例えば、1cm/s以上10cm/s以下とすることができる。

【0024】
成分移行用流路4aの内壁面16は、疎水性である。例えば、成分移行用流路4aの内壁面の接触角は、90度以上180度以下とすることができる。また、例えば、流路壁15aの材料を疎水性材料(例えば、PTFE、PFA、PVDFなどのフッ素樹脂)とすることができる。また、流路4aの内壁面16は、表面処理により疎水性となっていてもよい。また、流路4aの内壁面16を疎水性とすることにより、流路4aの内壁面16と、流路4aを流れる水相7a及び有機相8aとの相互作用を大きくすることができ、液液スラグ流が形成されやすくなる。また、流路4aの内壁面16を疎水性とすることにより、水相7aを液滴スラグとすることができ、有機相8aを連続相とすることができる。
流路4aを流れる液液スラグ流は、例えば図2に示すような流れとなる。図2に例示される例では、流路4aの内壁面16と水相7a(液滴スラグ)との間に有機相8aの薄膜が介在した状態でスラグ流が流れている。
このようなスラグ流において、有機相8aに対する水相7aの割合が大きいほど、すなわち(第1液体2の体積流量VA)/(第2液体3の体積流量VO)の割合が大きいほど、水相7aのスラグ長さhAは長くなり水相7aの外周面積は広くなる。
ここで、液滴となっている水相7aの外周表面が、水相7aと有機相8aとの界面に相当するので、有機相8aに対する水相7aの割合が大きいほど、第1液体2(水相7a)と第2液体3(有機相8a)との界面積が広くなり、第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行が促進されることになる。
なお、水相7aに対する有機相8aの割合を大きくした場合に、仮に流路4aの内壁面を疎水性に設定したとすると、体積流量の割合が小さい有機相8aが液滴となり、水相7aと有機相8aとの界面積が狭くなるので、上記のような第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行促進作用は得られない。

【0025】
第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへの第1液体2の供給量が流路4aへの第2液体3の供給量の2倍以上40倍以下となるように設けられる。好ましくは、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへの第1液体2の供給量が流路4aへの第2液体3の供給量の5倍以上40倍以下となるように設けられる。この場合、流路4aに形成される液液スラグ流において、有機相8aに対する水相7aの割合が大きくなり、流路4aの内壁面16と水相7a(液滴スラグ)との間に形成される有機相8aの薄い膜を広くすることができる。このため、水相7aと有機相8aとの界面積が広くなり、第1液体2に含まれる対象成分の第2液体3への移行を促進することができる。
また、流路4aに形成される液液スラグ流において、第2液体3の体積流量は第1液体2の体積流量よりも少なくなり、有機相8a(第2液体3)のスラグ長さは、水相7a(第1液体2)のスラグ長さよりも短くなる。このため、体積流量の多い第1液体2に含まれる対象成分を体積流量の少ない第2液体3へ移行させることができ、第2液体3(抽出液)を用いて対象成分を濃縮抽出することができる。

【0026】
抽出装置30は、成分移行用流路4aを流れた後の液液スラグ流を第1液体2の流れと第2液体3の流れとに分岐させるように設けられた分岐部12aを備えることができる。この分岐部12aにより、液液スラグ流を第1液体2と第2液体3とに分離することができ、対象成分を選択的に抽出した抽出液(第2液体3)を得ることができる。
分岐部12aは、第1液体2と第2液体3の密度差を利用して第1液体2と第2液体3とを分離するものであってもよい。液液スラグ流は、交互に流れる水相7aのサイズ及び有機相8aのサイズが比較的大きいため、第1液体2と第2液体3は、密度差により連続的かつ迅速に分離する。

【0027】
分岐部12aは、液液スラグ流が流路4aを流れた後流入するチャンバーを備えることができる。また、分岐部12aは、チャンバーの上部及び下部のうちどちらか一方に第1液体2の排出口を備えることができ、他方に第2液体3の排出口を備えることができる。例えば、第2液体3の密度が第1液体2の密度よりも大きい場合、液液スラグ流はチャンバーに流入すると、密度差により第2液体3は下層となり第1液体2は上層となるように分離する。上層となった第1液体2は上部の排出口から排出され、下層となった第2液体3は下部の排出口から排出される。分岐部12aから排出された第1液体2は貯留部14bに溜めることができ、分岐部12aから排出された第2液体3は貯留部14aに溜めることができる。

【0028】
次に、第1液体2がCoCl2水溶液(対象成分:Co)であり、第2液体3がD2EHPA-Na(抽出剤)が溶解したシクロヘキサンである場合について説明する。第1供給部5により第1液体2を成分移行用流路4aに供給し、第2供給部6により第2液体3を成分移行用流路4aに供給すると、流路4aに水相7a(第1液体2)と有機相8a(第2液体3)とが交互に流れる液液スラグ流が形成される。この液液スラグ流の水相7aと有機相8aとの界面において、対象成分であるCoは水相7a(第1液体2)から有機相8a(第2液体3)へ移行しD2EHPA-Coとなり、Naが有機相8a(第2液体3)から水相7a(第1液体2)へ移行しNaClとなる。水相7aと有機相8aの界面においてCoイオン及びNaイオンが移行するのは、D2EHPAの抽出序列がH>Co>Ni>Li>Naであるためである。
その後、分岐部12aにより第1液体2と第2液体3とを分離することにより、対象成分であるCoを含む抽出液(第2液体3)を得ることができる。

【0029】
第2実施形態
第2実施形態は、水又は水溶液である第1液体2に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体3(抽出液)を用いて濃縮抽出(正抽出)し、さらに、第2液体3に移行させた対象成分を水又は水溶液である第3液体17(逆抽出液)を用いて濃縮抽出(逆抽出)する実施形態である。
図3は本実施形態の抽出装置の概略断面図であり、図4は成分移行用流路に形成される液液スラグ流の説明図である。
本実施形態の抽出装置30は、水又は水溶液である第1液体2に含まれる対象成分を疎水性の有機液体である第2液体3へ移行させ、対象成分をさらに第2液体3から第3液体17へ移行させるように設けられた抽出装置であり、抽出装置30は、細長い成分移行用流路4aと、第1液体2を流路4aに供給するように設けられた第1供給部5と、第2液体3を流路4aに供給するように設けられた第2供給部6と、分岐部12aと、細長い成分移行用流路4bと、水又は水溶液である第3液体17を成分移行用流路4bに供給するように設けられた第3供給部20とを備え、流路4aは、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流路4aを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように設けられ、流路4aの内壁面16は疎水性であり、分岐部12aは、流路4aを流れた後の液液スラグ流を第1液体2の流れと第2液体3の流れとに分岐させるように設けられ、分岐部12aと成分移行用流路4bは、分岐部12aを流れた後の第2液体3が流路4bに供給されるように接続し、流路4bは、第3液体17からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に流路4bを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられたことを特徴とする。

【0030】
本実施形態の抽出方法は、細長い成分移行用流路4aに水又は水溶液である第1液体2を供給し、成分移行用流路4aに疎水性の有機液体である第2液体3を供給することにより、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流れる液液スラグ流を成分移行用流路4aに形成する工程と、流路4aを流れた後の第2液体3を細長い成分移行用流路4bに供給し、成分移行用流路4bに水又は水溶液である第3液体17を供給することにより、第3液体17からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に流れる液液スラグ流を成分移行用流路4bに形成する工程とを備え、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように第1液体2及び第2液体3を成分移行用流路4aへ供給し、成分移行用流路4aの内壁面は疎水性であることを特徴とする。

【0031】
第1実施形態に記載した第1液体2、第1供給部5、第2液体3、第2供給部6、合流部13a、成分移行用流路4a、分岐部12aについての説明は、第2実施形態でも同じであるため、ここでは省略し、第2液体3を用いて正抽出した対象成分をさらに第3液体17を用いて逆抽出する方法及び関連する構成要素などについて説明する。
また、図1では、シリンジポンプ11aを含む第1供給部5を示し、シリンジポンプ11bを含む第2供給部6を示したが、図4では、貯留部14cに溜めた第1液体2をポンプ22aを用いて流路4aに供給する第1供給部5を示し、貯留部14dに溜めた第2液体3をポンプ22bを用いて流路4aに供給する第2供給部6を示している。

【0032】
分岐部12aと成分移行用流路4bは、分岐部12aを流れた後の第2液体3が流路4bに供給されるように接続する。分岐部12aと成分移行用流路4bは、分岐部12aにおいて分岐させた第2液体3の流れが直接成分移行用流路4bに流入するように接続してもよい。また、分岐部12aと成分移行用流路4bは、分岐部12aにおいて分岐させた第2液体3を貯留部14aに溜めて、貯留部14aに溜めた第2液体3をポンプ22d又は重力を利用して成分移行用流路4bに供給するように接続してもよい(第4供給部21)。
また、流路4bに供給される第2液体3には、第1液体2から第2液体3へと移行させた抽出対象である対象成分が含まれる。

【0033】
第3液体17は水又は水溶液であり、逆抽出液として機能する。第3液体17は、例えば、塩酸、硫酸などの酸性水溶液である。
第3供給部20は、第3液体17を成分移行用流路4bに供給するように設けられる。第3供給部20は、ポンプ22cを用いて第3液体17を流路4bへ供給してもよく、重力を利用して第3液体17を流路4bに供給してもよい。第3供給部20は、例えば、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピエゾマイクロポンプなどの送液ポンプを含むことができる。

【0034】
第2液体3の流れと第3供給部20から送液された第3液体17は、合流部13bで合流し、成分移行用流路4bに流入する。合流部13bは、例えばT字管である。
第3液体17は水又は水溶液であり、第2液体3は疎水性の有機液体であるため、第3液体17は第2液体3に溶け合わない。このため、第3液体17からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとから構成される混相流が流路4bを流れる。

【0035】
成分移行用流路4bは、第2液体3に含まれる対象成分を第3液体17に移行させるための流路である。第2液体3と第3液体17の界面における界面反応により、第2液体3に含まれる対象成分は第3液体17へと移行する。
成分移行用流路4bは、管の内部の流路であってもよい。この場合、管が流路壁15bとなる。管の材料は、ガラスであってもよく、高分子材料であってもよく、金属であってもよい。また、成分移行用流路4bは、2つの部材(少なくとも一方は流路4bとなる溝を有する)の間に形成された流路であってもよい。これらの部材の材料は、ガラスであってもよく、高分子材料であってもよく、金属であってもよい。
成分移行用流路4bの流路断面は、円形であってもよく、矩形であってもよい。
成分移行用流路4bの直径2rは、例えば、0.05mm以上2mm以下とすることができる。

【0036】
成分移行用流路4bは、第3液体17からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に成分移行用流路4bを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。
液液スラグ流は、溶け合わない2つの液体の混相流の形態の1つであり、流路4bを水相7bと有機相8bが交互に流れる流れである。液液スラグ流では、流路4bの内壁面と流路4bを流れる水相7b及び有機相8bとの相互作用が大きいため、水相7b及び有機相8bのそれぞれの内部で循環流9が生じる。この循環流9により、水相7bと有機相8bの界面を連続的に更新することができ、第2液体3に含まれる対象成分の第3液体17への移行を促進することができる。
流路4bを流れる液液スラグ流の流速は、例えば、1cm/s以上10cm/s以下とすることができる。

【0037】
成分移行用流路4bの内壁面は、親水性である。例えば、成分移行用流路4bの内壁面16の接触角は、0度以上40度以下とすることができる。例えば、流路壁15bの材料を親水性材料(例えば、ガラス)とすることができる。また、流路4bの内壁面16は、表面処理により親水性となっていてもよい。また、流路4bの内壁面16を親水性とすることにより、流路4bの内壁面16と、流路4bを流れる水相7b及び有機相8bとの相互作用を大きくすることができ、液液スラグ流が形成されやすくなる。また、流路4bの内壁面16を親水性とすることにより、有機相8bを液滴スラグとすることができ、水相7bを連続相とすることができる。また、流路4bの内壁面16と有機相8b(液滴スラグ)との間に水相7bの薄い膜を形成することができる。この水相7bの薄い膜は、水相7bに対する有機相8bの割合が大きくなるほど広くなるため、(第2液体3の体積流量VO)/(第3液体17の体積流量VA)が大きくなるほど、水相7bと有機相8bとの界面積が広くなり、第2液体3に含まれる対象成分の第3液体17への移行が促進される。
なお、流路4bの内壁面が親水性の場合、有機相8bに対する水相7bの割合が大きくなると、水相7bの薄い膜は狭くなり、水相7bと有機相8bとの界面積は狭くなる。
例えば、流路4bを流れる液液スラグ流は、図4に示したような流れとなる。

【0038】
第3供給部20及び第4供給部21は、成分移行用流路4bへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)が成分移行用流路4bへ供給する第3液体17の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように設けられる。好ましくは、第3供給部20及び第4供給部21は、成分移行用流路4bへの第2液体3の供給量が成分移行用流路4bへの第3液体17の供給量の5倍以上40倍以下となるように設けられる。
この場合、流路4bに形成される液液スラグ流において、水相7bに対する有機相8bの割合が大きくなり、流路4bの内壁面16と有機相8b(液滴スラグ)との間に形成される水相7bの薄い膜を広くすることができる。このため、水相7aと有機相8aとの界面積が広くなり、第2液体3に含まれる対象成分の第3液体17への移行を促進することができる。
また、流路4bに形成される液液スラグ流において、第3液体17の体積流量は第2液体3の体積流量よりも少なくなり、水相7b(第3液体17)のスラグ長さhAは、有機相8b(第2液体3)のスラグ長さhOよりも短くなる。このため、体積流量の多い第2液体3に含まれる対象成分を体積流量の少ない第3液体17へ移行させることができ、第3液体17(逆抽出液)を用いて対象成分を濃縮抽出することができる。

【0039】
抽出装置30は、成分移行用流路4bを流れた後の液液スラグ流を第2液体3の流れと第3液体17の流れとに分岐させるように設けられた分岐部12bを備えることができる。この分岐部12bにより、液液スラグ流を第2液体3と第3液体17とに分離することができ、対象成分を逆抽出した抽出液(第3液体17)を得ることができる。
分岐部12bは、第2液体3と第3液体17の密度差を利用して第2液体3と第3液体17とを分離するものであってもよい。分岐部12bは、液液スラグ流が流路4bを流れた後流入するチャンバーを備えることができる。また、分岐部12bは、チャンバーの上部及び下部のうちどちらか一方に第2液体3の排出口を備えることができ、他方に第3液体17の排出口を備えることができる。例えば、第2液体3の密度が第3液体17の密度よりも大きい場合、液液スラグ流はチャンバーに流入すると、密度差により第2液体3は下層となり第3液体17は上層となるように分離する。上層となった第3液体17は上部の排出口から排出され、下層となった第2液体3は下部の排出口から排出される。分岐部12bから排出された第2液体3は貯留部14fに溜めることができ、分岐部12bから排出された第3液体17は貯留部14gに溜めることができる。

【0040】
次に、第1液体2がCoCl2水溶液(対象成分:Co)であり、第2液体3がD2EHPA-Na(抽出剤)が溶解したシクロヘキサンであり、第3液体17が塩酸である場合について説明する。第1供給部5により第1液体2を成分移行用流路4aに供給し、第2供給部6により第2液体3を成分移行用流路4aに供給すると、流路4aに水相7a(第1液体2)と有機相8a(第2液体3)とが交互に流れる液液スラグ流が形成される。この液液スラグ流の水相7aと有機相8aとの界面において、対象成分であるCoは水相7a(第1液体2)から有機相8a(第2液体3)へ移行しD2EHPA-Coとなり、Naが有機相8a(第2液体3)から水相7a(第1液体2)へ移行しNaClとなる。水相7aと有機相8aの界面においてCoイオン及びNaイオンが移行するのは、D2EHPAの抽出序列がH>Co>Ni>Li>Naであるためである。
そして、流路4aを流れた後の液液スラグ流を、分岐部12aを用いて第1液体2と第2液体3とを分離する。

【0041】
その後、得られた第2液体3(D2EHPA-Coを含む)を第4供給部21により成分移行用流路4bに供給し、第3供給部20により第3液体17を成分移行用流路4bに供給すると、流路4bに水相7b(第3液体17)と有機相8b(第2液体3)とが交互に流れる液液スラグ流が形成される。この液液スラグ流の水相7bと有機相8bとの界面において、対象成分であるCoは有機相8b(第2液体3)から水相7b(第3液体17)へ移行しCoCl2となり、Hが水相7b(第3液体17)から有機相8b(第2液体3)へ移行しD2EHPA-Hとなる。水相7bと有機相8bの界面においてCoイオン及びHイオンが移行するのは、D2EHPAの抽出序列がH>Co>Ni>Li>Naであるためである。
そして、流路4bを流れた後の液液スラグ流を、分岐部12bを用いて第2液体3と第3液体17とを分離し、対象成分であるCoを含む逆抽出液(第3液体17)を得ることができる。
なお、第1実施形態についての記載は、矛盾がない限り第2実施形態について当てはまる。また、流路4aについての記載は、矛盾がない限り流路4bについて当てはまる。

【0042】
第3実施形態
第3実施形態は、疎水性の有機液体である第2液体に含まれる対象成分(水溶性物質)を水又は水溶液である第1液体(抽出液)を用いて濃縮抽出する実施形態である。
図5は本実施形態の抽出装置の概略断面図である。
本実施形態の抽出装置30は、疎水性の有機液体である第2液体3に含まれる対象成分を水又は水溶液である第1液体2へ移行させるように設けられた抽出装置であって、抽出装置30は、細長い成分移行用流路4bと、第1液体2を成分移行用流路4bに供給するように設けられた第1供給部5と、第2液体3を成分移行用流路4bに供給するように設けられた第2供給部6とを備え、成分移行用流路4bは、第1液体2からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に成分移行用流路4bを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、成分移行用流路4bの内壁面は親水性であり、第1供給部5及び第2供給部6は、成分移行用流路4bへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)が成分移行用流路4bへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように設けられたことを特徴とする。

【0043】
本実施形態の抽出方法は、細長い成分移行用流路4bに水又は水溶液である第1液体2を供給し、成分移行用流路4bに疎水性の有機液体である第2液体3を供給することにより、第1液体2からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に流れる液液スラグ流を成分移行用流路4bに形成する工程を備え、成分移行用流路4bの内壁面は親水性であり、流路4bへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)が流路4bへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように第1液体2及び第2液体3を成分移行用流路4bへ供給することを特徴とする。

【0044】
第1液体2は水又は水溶液であり、抽出液として機能する。第1液体2は、例えば、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液などである。
第1供給部5は、第1液体2を成分移行用流路4bに供給するように設けられる。第1供給部5は、ポンプを用いて第1液体2を流路4bへ供給してもよく、重力を利用して第1液体2を流路4bに供給してもよい。

【0045】
第2液体3は、疎水性の有機液体であり、成分移行用流路4bに供給される前において抽出対象である成分(対象成分)を含む。対象成分は、有機液体中の水溶性物質である。また、対象成分は、有機液体を用いた化学反応により生成された物質であってもよい。
第2供給部6は、第2液体3を成分移行用流路4bに供給するように設けられる。第2供給部6は、ポンプを用いて第2液体3を流路4bへ供給してもよく、重力を利用して第2液体3を流路4bに供給してもよい。

【0046】
第1供給部5から送液された第1液体2と第2供給部6から送液された第2液体3は、合流部13aで合流し、成分移行用流路4bに流入する。第1液体2は水又は水溶液であり、第2液体3は疎水性の有機液体であるため、第1液体2は第2液体3に溶け合わない。このため、第1液体2からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとから構成される混相流が流路4bを流れる。

【0047】
成分移行用流路4bは、第2液体3に含まれる対象成分(水溶性物質)を第1液体2に移行させるための流路である。成分移行用流路4bは、第1液体2からなる水相7bと第2液体3からなる有機相8bとが交互に成分移行用流路4bを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。
液液スラグ流では、水相7b及び有機相8bのそれぞれの内部で循環流9が生じる。この循環流9により、水相7bと有機相8bの界面を連続的に更新することができ、第2液体3に含まれる水溶性物質の第1液体2への移行を促進することができる。

【0048】
成分移行用流路4bの内壁面16は、親水性である。流路4bの内壁面16を親水性とすることにより、有機相8bを液滴スラグとすることができ、水相7bを連続相とすることができる。また、流路4bの内壁面16と有機相8b(液滴スラグ)との間に水相7bの薄い膜を形成することができる。この水相7bの薄い膜は、水相7bに対する有機相8bの割合が大きくなるほど広くなるため、(第2液体3の体積流量VO)/(第1液体2の体積流量VA)が大きくなるほど、水相7bと有機相8bとの界面積が広くなり、第2液体3に含まれる対象成分の第1液体2への移行が促進される。
例えば、流路4bを流れる液液スラグ流は、図4に示したような流れとなる。

【0049】
第1供給部5及び第2供給部6は、流路4bへの第2液体3の供給量が流路4bへの第1液体2の供給量の2倍以上40倍以下となるように設けられる。好ましくは、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4bへの第2液体3の供給量が流路4bへの第1液体2の供給量の5倍以上40倍以下となるように設けられる。
この場合、流路4bに形成される液液スラグ流において、水相7bに対する有機相8bの割合が大きくなり、流路4bの内壁面16と有機相8b(液滴スラグ)との間に形成される水相7bの薄い膜を広くすることができる。このため、水相7bと有機相8bとの界面積が広くなり、第2液体3に含まれる対象成分の第1液体2への移行を促進することができる。
また、流路4bに形成される液液スラグ流において、第1液体2の体積流量は第2液体3の体積流量よりも少なくなり、水相7b(第1液体2)のスラグ長さは、有機相8b(第2液体3)のスラグ長さよりも短くなる。このため、体積流量の多い第2液体3に含まれる水溶性物質(対象成分)を体積流量の少ない第1液体2へ移行させることができ、第1液体2(抽出液)を用いて対象成分を濃縮抽出することができる。

【0050】
また、抽出装置30は、成分移行用流路4bを流れた後の液液スラグ流を第1液体2の流れと第2液体3の流れとに分岐させるように設けられた分岐部12aを備えることができる。
なお、第1及び第2実施形態についての記載は、矛盾がない限り第3実施形態について当てはまる。また、流路4aについての記載は、矛盾がない限り流路4bについて当てはまる。

【0051】
第4実施形態
第4実施形態は、疎水性の有機液体である第2液体に含まれる対象成分(水溶性物質又は水)を水又は水溶液である第1液体(抽出液)を用いて除去(洗浄)する実施形態である。
第4実施形態の抽出装置は、第1実施形態と同様に図1のような概略断面を有する。
本実施形態の抽出装置30は、疎水性の有機液体である第2液体3に含まれる対象成分を水又は水溶液である第1液体2へ移行させるように設けられた抽出装置であり、抽出装置30は、細長い成分移行用流路4aと、第1液体2を流路4aに供給するように設けられた第1供給部5と、第2液体3を流路4aに供給するように設けられた第2供給部6とを備え、流路4aは、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流路4aを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、流路4aの内壁面16は疎水性であり、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量の2倍以上40倍以下となるように設けられたことを特徴とする。

【0052】
本実施形態の抽出方法は、細長い成分移行用流路4aに水又は水溶液である第1液体2を供給し、成分移行用流路4aに疎水性の有機液体である第2液体3を供給することにより、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に流れる液液スラグ流を成分移行用流路4aに形成する工程を備え、成分移行用流路4aの内壁面は疎水性であり、流路4aへ供給する第1液体2の体積流量(供給量)が流路4aへ供給する第2液体3の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下となるように第1液体2及び第2液体3を成分移行用流路4aへ供給することを特徴とする。

【0053】
第1液体2は水又は水溶液であり、抽出液として機能する。第1液体2は、例えば、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液などである。第1供給部5は、第1液体2を成分移行用流路4aに供給するように設けられる。
第2液体3は、疎水性の有機液体であり、成分移行用流路4aに供給される前において抽出対象である成分(対象成分)を含む。対象成分は、有機液体中の水溶性物質又は水である。また、対象成分は、有機液体を用いた化学反応により生成された物質(例えば、酢酸)であってもよい。
第2供給部6は、第2液体3を成分移行用流路4aに供給するように設けられる。

【0054】
第1供給部5から送液された第1液体2と第2供給部6から送液された第2液体3は、合流部13aで合流し、成分移行用流路4aに流入する。このため、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとから構成される混相流が流路4aを流れる。

【0055】
成分移行用流路4aは、第2液体3に含まれる対象成分(水溶性物質又は水)を第1液体2に移行させるための流路である。成分移行用流路4aは、第1液体2からなる水相7aと第2液体3からなる有機相8aとが交互に成分移行用流路4aを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。
液液スラグ流では、水相7a及び有機相8aのそれぞれの内部で循環流9が生じる。この循環流9により、水相7aと有機相8aの界面を連続的に更新することができ、第2液体3に含まれる水溶性物質又は水の第1液体2への移行を促進することができる。

【0056】
成分移行用流路4aの内壁面16は、疎水性である。流路4aの内壁面16を疎水性とすることにより、水相7aを液滴スラグとすることができ、有機相8aを連続相とすることができる。また、流路4bの内壁面16と水相7a(液滴スラグ)との間に有機相8aの薄い膜を形成することができる。
例えば、流路4aを流れる液液スラグ流は、図2に示したような流れとなる。

【0057】
第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへの第1液体2の供給量が流路4aへの第2液体3の供給量の2倍以上40倍以下となるように設けられる。好ましくは、第1供給部5及び第2供給部6は、流路4aへの第1液体2の供給量が流路4aへの第2液体3の供給量の5倍以上40倍以下となるように設けられる。
この場合、流路4aに形成される液液スラグ流において、有機相8aに対する水相7aの割合が大きくなり、流路4aの内壁面16と水相7a(液滴スラグ)との間に形成される有機相8aの薄い膜を広くすることができる。このため、水相7aと有機相8aとの界面積が広くなり、第2液体3に含まれる対象成分の第1液体2への移行を促進することができる。
また、流路4aに形成される液液スラグ流において、第2液体3の体積流量は第1液体2の体積流量よりも少なくなり、有機相8a(第2液体3)のスラグ長さは、水相7a(第1液体2)のスラグ長さよりも短くなる。このため、体積流量の少ない第2液体3に含まれる水溶性物質又は水(対象成分)を体積流量の多い第1液体2へ移行させ除去することができ、第2液体を十分に洗浄することができる。

【0058】
また、抽出装置30は、成分移行用流路4aを流れた後の液液スラグ流を第1液体2の流れと第2液体3の流れとに分岐させるように設けられた分岐部12aを備えることができる。
なお、第1~第3実施形態についての記載は、矛盾がない限り第4実施形態について当てはまる。

【0059】
第5実施形態
本実施形態では、第1供給部5は第1液体2を成分移行用流路4a、4bへ送液するポンプ22a、11aを備え、第2供給部6は第2液体3を成分移行用流路4a、4bへ送液するポンプ22b、11bを備える。ポンプは、例えば、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピエゾマイクロポンプなどである。
ポンプ22a、11a及びポンプ22b、11bは、第1実施形態で説明したように、制御装置によって制御され、ポンプ22a、11aの吐出時間及びポンプ22b、11bの吐出時間を調整することによって、成分移行用流路4a、4bの液液スラグ流の水相7a、7bの長さ及び有機相8a、8bの長さを制御する。このことにより、成分移行用流路4a、4bに形成される液液スラグ流の水相7a、7bのスラグ長さhA及び有機相8a、8bのスラグ長さhOを制御することができる。
なお、制御装置は、各ポンプが吐出する時間によって吐出量を調整してスラグ長さを制御する他に、各ポンプの回転数を制御することによって吐出量を調整してスラグ長さを制御してもよい。
なお、第1~第4実施形態についての記載は、矛盾がない限り第5実施形態について当てはまる。

【0060】
第6実施形態
第6実施形態は、疎水性の有機液体である第4液体に含まれる対象成分を、前記有機液体と混ざり合わないイオン液体である第5液体(抽出液)を用いて濃縮抽出する実施形態である。
図6は本実施形態の抽出装置の概略断面図である。
本実施形態の抽出装置30は、有機液体である第4液体に含まれる対象成分を、前記有機液体と混ざり合わないイオン液体である第5液体へ移行させ抽出するように設けられた抽出装置であって、前記抽出装置は、細長い第3流路と、第4液体を第3流路に供給するように設けられた第4供給部と、第5液体を第3流路に供給するように設けられた第5供給部とを備え、第3流路は、第4液体からなる有機相と第5液体からなるイオン液体相とが交互に第3流路を流れる液液スラグ流が形成されるように設けられ、第4供給部が第3流路に供給する第4液体の体積流量(供給量)は、第5供給部が第3流路に供給する第5液体の体積流量(供給量)の2倍以上40倍以下であり、第3流路の内壁面は、親水性であることを特徴とする。

【0061】
第4液体23は、有機液体であり、成分移行用流路4cに供給される前において抽出対象である成分(対象成分)を含む。対象成分は、有機液体を用いた化学反応により生成された物質であってもよい。
第4供給部25は、第4液体23を成分移行用流路4cに供給するように設けられる。第4供給部25は、ポンプを用いて第4液体23を流路4cへ供給してもよく、重力を利用して第4液体23を流路4cに供給してもよい。

【0062】
第5液体24はイオン液体であり、抽出液として機能する。イオン液体は、カチオンとアニオンからなる液体である。第5液体24は、第4液体23と混じりあわない性質を有する。第5液体24は、例えば高極性イオン液体である。
第5供給部26は、第5液体24を成分移行用流路4cに供給するように設けられる。第5供給部26は、ポンプを用いて第5液体24を流路4cへ供給してもよく、重力を利用して第5液体2を流路24に供給してもよい。

【0063】
第4供給部25から送液された第4液体23と第5供給部26から送液された第5液体24は、合流部13cで合流し、成分移行用流路4cに流入する。第4液体23と第5液体24は混じりあわないため、第5液体24からなるイオン液体相27と第4液体23からなる有機相8cとから構成される混相流が流路4cを流れる。

【0064】
成分移行用流路4cは、第4液体23に含まれる対象成分を第5液体24に移行させるための流路である。成分移行用流路4cは、第5液体24からなるイオン液体相27と第4液体23からなる有機相8cとが交互に成分移行用流路4cを流れる液液スラグ流が形成されるように設けられる。
液液スラグ流では、イオン液体相27及び有機相8cのそれぞれの内部で循環流9が生じる。この循環流9により、イオン液体相27と有機相8cの界面を連続的に更新することができ、第4液体23に含まれる対象成分の第5液体24への移行を促進することができる。

【0065】
成分移行用流路4cの内壁面16は、親水性である。流路4cの内壁面16を親水性とすることにより、有機相8cを液滴スラグとすることができ、イオン液体相27を連続相とすることができる。また、流路4cの内壁面16と有機相8c(液滴スラグ)との間にイオン液体相27の薄い膜を形成することができる。このイオン液体相27の薄い膜は、イオン液体相27に対する有機相8cの割合が大きくなるほど広くなるため、(第4液体23の体積流量VO)/(第5液体24の体積流量VI)が大きくなるほど、イオン液体相27と有機相8cとの界面積が広くなり、第4液体23に含まれる対象成分の第5液体24への移行が促進される。

【0066】
第4供給部25及び第5供給部26は、流路4cへの第4液体23の供給量が流路4cへの第5液体24の供給量の2倍以上40倍以下となるように設けられる。好ましくは、第4供給部25及び第5供給部26は、流路4cへの第4液体23の供給量が流路4cへの第5液体24の供給量の5倍以上40倍以下となるように設けられる。
この場合、流路4cに形成される液液スラグ流において、イオン液体相27に対する有機相8cの割合が大きくなり、流路4cの内壁面16と有機相8c(液滴スラグ)との間に形成されるイオン液体相27の薄い膜を広くすることができる。このため、イオン液体相27と有機相8cとの界面積が広くなり、第4液体23に含まれる対象成分の第5液体24への移行を促進することができる。
また、流路4cに形成される液液スラグ流において、第5液体24の体積流量は第4液体23の体積流量よりも少なくなり、イオン液体相27(第5液体24)のスラグ長さは、有機相8c(第4液体23)のスラグ長さよりも短くなる。このため、体積流量の多い第4液体23に含まれる対象成分を体積流量の少ない第5液体24へ移行させることができ、第5液体24(抽出液)を用いて対象成分を濃縮抽出することができる。
なお、第1~第5実施形態についての記載は、矛盾がない限り第6実施形態について当てはまる。また、流路4a、4bについての記載は、矛盾がない限り流路4cについて当てはまる。

【0067】
Coの濃縮抽出実験(正抽出)
図1に示したような抽出装置を用いて、1mM CoCl2水溶液(第1液体)に含まれるCo(対象成分)を110mM D2EHPA-Na/シクロヘキサン(第2液体)を抽出液として用いて抽出した。
第1供給部5及び第2供給部6にはそれぞれシリンジポンプを用い、合流部13aには、内径1.5mmのT字管を用いた。また、成分移行用流路4aには、内径1mmのPTFEチューブ(長さ:30cm, 60cm, 90cm, 120cm, 150cm)を用いた。異なる長さのPTFEチューブを用いることにより接触時間を調整した。なお、PTFEチューブの内壁面は疎水性である。また、第1液体の体積流量VAは、60mL/h~117.6mL/hとし、第2液体の体積流量VOは、2.4mL/h~60mL/hとした。また、第1液体の体積流量VAと第2液体の体積流量VOの合計は、120mL/hとした。また、第1液体の体積流量VAは、第2液体の体積流量VOの1倍~49倍とした(VA/VO=1~49)。
実験条件、実験結果を表1、2、図7に示す。表2のCo濃度は、接触時間(成分移行用流路4aを流れる時間)を38秒としたときの抽出後の第2液体のCo濃度である。

【0068】
【表1】
JP2020032346A_000003t.gif

【0069】
【表2】
JP2020032346A_000004t.gif

【0070】
A/VOを1~9として抽出実験を行った場合、成分移行用流路4aの入口又は入口付近からスラグ流が形成された。これらの実験では、図7に示したように、第2液体による第1液体からのCoの抽出率は、90%を超えた。これは、スラグ流により水相及び有機相に内部循環流が生じるため、及び、PTFEチューブの内壁面が疎水性であり水相と有機相との界面積が広くなったためと考えられる。

【0071】
A/VOを19~39として抽出実験を行った場合、成分移行用流路4aの途中において平行流からスラグ流に変化した。これらの実験では、接触時間が38秒間で抽出率が85%以上に達し、第2液体のCo濃度は17.3mM~33.9mMとなった。特に、VA/VOを39とし、接触時間を38秒とした場合、抽出率87%、33.9倍濃縮を達成することができた。
A/VOを49として抽出実験を行った場合、第1液体及び第2液体は、成分移行用流路4aをほぼ平行流として流れた。この実験では、抽出率は80%に達しなかった。

【0072】
Coの濃縮抽出実験(逆抽出)
図5に示したような抽出装置を用いて、53.8mM D2EHPA-Co/シクロヘキサン(第2液体)に含まれるCoを5M 塩酸(HCl水溶液)(第1液体)を抽出液として用いて逆抽出した。
第1供給部5及び第2供給部6にはそれぞれシリンジポンプを用い、合流部13aには、内径1.5mmのT字管を用いた。また、成分移行用流路4bには、内径1mmのガラス管(長さ:30cm, 45cm, 65cm, 77.5cm,150cm)を用いた。なお、ガラス管の内壁面は親水性である。また、第1液体の体積流量VAは、3mL/h~60mL/hとし、第2液体の体積流量VOは、60mL/h~117mL/hとした。また、第1液体の体積流量VAと第2液体の体積流量VOの合計は、120mL/hとした。
実験条件、実験結果を表3、4、図8に示す。表4のCo濃度は、接触時間(成分移行用流路4bを流れる時間)を38秒としたときの抽出後の第1液体のCo濃度である。

【0073】
【表3】
JP2020032346A_000005t.gif

【0074】
【表4】
JP2020032346A_000006t.gif

【0075】
逆抽出実験では、成分移行用流路4bの入口からスラグ流が形成された。これらの実験では、図8に示したように、第1液体による第2液体からのCoの抽出率は、接触時間が38秒間で85%以上に達し、第1液体のCo濃度は47.4mM~1940mMとなった。特に、VO/VAを39とし、接触時間を38秒とした場合、抽出率88%、36倍濃縮を達成することができた。
【符号の説明】
【0076】
2: 第1液体(水又は水溶液) 3:第2液体(疎水性の有機液体) 4a、4b、4c:成分移行用流路 5:第1供給部 6:第2供給部 7a、7b:水相 8a、8b、8c:有機相 9:内部循環流 11a、11b:シリンジポンプ 12a、12b、12c:分岐部 13a、13b、13c:合流部 14a~14i:貯留部 15a、15b、15c:流路壁 16:流路の内壁面 17:第3液体(水又は水溶液) 20:第3供給部 21:第4供給部 22a~22d:ポンプ 23:第4液体(有機液体) 24:第5液体(イオン液体) 25:第4供給部 26:第5供給部 27:イオン液体相 30:抽出装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7