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明細書 :親水性コーティング剤およびそのコーティング膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-105274 (P2020-105274A)
公開日 令和2年7月9日(2020.7.9)
発明の名称または考案の名称 親水性コーティング剤およびそのコーティング膜
国際特許分類 C09D   1/00        (2006.01)
C09D   7/65        (2018.01)
C09D   7/61        (2018.01)
C09D   5/00        (2006.01)
FI C09D 1/00
C09D 7/65
C09D 7/61
C09D 5/00 D
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-243255 (P2018-243255)
出願日 平成30年12月26日(2018.12.26)
発明者または考案者 【氏名】永谷 聡
【氏名】佐々木 克幸
【氏名】大日方 陽一
【氏名】長洲 慶典
出願人 【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
審査請求 未請求
テーマコード 4J038
Fターム 4J038AA011
4J038BA022
4J038HA216
4J038KA04
4J038MA08
4J038NA06
4J038NA12
4J038NA27
4J038PA07
4J038PC03
4J038PC08
要約 【課題】安定性に優れた親水性コーティング剤と、それを被塗布部材にコートすることで、被塗布部材表面を長期にわたって親水性に改質し、光透過性に優れたコーティング膜を提供する。
【解決手段】酸化スズを含む酸化スズゾルと、親水化剤を含む親水性ゾルが混合した混合ゾルであり、主溶媒が水であることを特徴とする親水性コーティング剤を提供する。親水化剤は酸化チタンもしくはセルロースナノファイバーを使用する。親水性コーティング剤から形成されたコーティング膜は、高い光透過性および親水性を有する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルを備え、酸化スズゾルと親水性ゾルを混合または重合させて塗布する親水性コーティング剤であって、主溶媒が水であることを特徴とする親水性コーティング剤。
【請求項2】
前記親水化剤が酸化チタンである請求項1に記載の親水性コーティング剤。
【請求項3】
前記親水化剤がセルロースナノファイバーである請求項1に記載の親水性コーティング剤。
【請求項4】
前記親水化剤が、酸化チタンとセルロースナノファイバーを混合したものである請求項1に記載の親水性コーティング剤。
【請求項5】
前記スズ濃度が0.0001~1.0mol/Lの範囲である請求項1から請求項4に記載の親水性コーティング剤。
【請求項6】
前記酸化チタン濃度が0.001~5.0wt%の範囲である請求項2および請求項4に記載の親水性コーティング剤。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバー濃度が0.0001~5.0wt%の範囲である請求項3および請求項4に記載の親水性コーティング剤。
【請求項8】
前記pHが2~10の範囲である請求項1から請求項7に記載の親水性コーティング剤。
【請求項9】
被塗布部材に、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルが混合した親水性コーティング剤による被膜を形成してなるコーティング膜。
【請求項10】
被塗布部材に、酸化スズを含む酸化スズゾルからなる被膜を形成し、これをプライマーとした上に、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルが混合した親水性コーティング剤による被膜を形成するコーティング膜。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れた親水性コーティング剤と、それを被塗布部材にコートすることで、被塗布部材表面を長期にわたって親水性に改質し、光透過性に優れたコーティング膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスやプラスチックなどの表面に有機・無機の薄いコーティング膜を施し、新たな機能を付与することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、水酸化フッ化マグネシウムと金属酸化物の複合膜をコートすることで、光透過性を維持したまま親水性や帯電防止性といった機能を付与する方法が提案されている。特許文献2では、無機コーティング組成物としてオルガノポリシロキサンと酸化チタンを添加した塗料をコートすることで、酸化チタンの光触媒作用を利用した汚染防止効果を有する塗膜について提案している。特許文献3では、太陽光パネルの汚れ防止コーティング剤として、親水性シリカおよび有機バインダー、セルロースナノファイバーを用いる方法が提案されている。
【0004】
その中でも、酸化チタンを利用する手法は、様々な分野ですでに実用化されている。酸化チタンは、光を吸収することで光誘起作用や光触媒作用を生じ、親水性や光分解特性を生じる。この性質を利用して、トイレタイルの汚れ防止や、高層ビルの窓ガラスへの防曇コーティングへ応用されている。
【0005】
セルロースナノファイバーは、植物繊維をナノオーダーまで細かく解きほぐした材料である。セルロースナノファイバーは保水性、チクソ性、増粘性などの特性があり、これらを利用して紙おむつやインクなどへ応用検討されている。
【0006】
これらの材料の応用方法の一つとして、被塗布部材に親水特性を付与するという用途がある。多くの場合、これらは単体で用いられることはなく、塗料の原料の一部として添加したり、溶媒に分散させてコーティング剤という形態で提供される。
【0007】
コーティング剤として利用する場合、これらを溶媒に完全に分散させる必要がある。良好な分散性を確保するため、分散溶媒としては一般的に有機溶剤が用いられている。特許文献1によると、水酸化マグネシウムと金属酸化物の混合物のコーティング剤として、金属酸化物の原料には金属アルコキシド、分散溶媒にアルコール類が用いられている。特許文献2でも金属アルコキシドや金属キレート化合物をアルコール系溶媒に溶解したものを原料として用いている。特許文献3でも同様にアルコール系溶媒が使用されている。
【0008】
アルコールや金属アルコキシドを使用するコーティング剤では、使用する有機溶媒が高価なことや、蒸発する有機溶剤に臭気や毒性を有するものが含まれている場合が多く、作業環境への影響が大きいといった問題点がある。また被塗布部材の種類によっては有機溶媒に侵されてしまうものもあり、このような被塗布部材に利用することはできない。
【0009】
また、ガラスなど透明性を重要視する材料を被塗布部材とする場合、コートによる透過率の低減をできる限り抑える必要がある。
【0010】
かかる課題を解決すべく、本出願人は先に、酸化スズ又はその水和物が水に安定に分散した機能性酸化スズゾルについて提案している。(特許文献4)
【0011】
この機能性酸化スズゾルは、酸化スズもしくはその水和物が水に分散したゾルであり、これを被塗布部材へコートすることで、被塗布部材に対して帯電防止性、光透過性、耐薬品性、密着性、親水性、イオン吸着性を付与する効果が得られた。
【0012】
この機能性酸化スズゾルを被塗布部材にコートすることで、部材表面の親水化については一定の向上は確認されたが、その効果はわずかなものであった。また、このコーティング膜では、膜上に付着した汚れに対する除去能力が不十分なため、長期にわたる親水効果の持続性についても課題があった。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2011-028185号
【特許文献2】特開2000-186250号
【特許文献3】特開2018-119066号
【特許文献4】特願2017-173103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
親水化処理を目的とした被塗布部材へのコート処理において、その作業環境安全性や価格面を考慮すると、水性のコーティング剤が望ましく、特に溶媒に水を用いることが望ましい。さらに、コーティング膜が長期間に渡って親水性効果を維持する必要がある。
【0015】
コーティング剤の材料に酸化チタンを用いる場合、酸化チタンの光誘起作用は光照射時のみに生じるため、夜など暗所での親水効果は期待できない。また、雨天や曇りの場合でも紫外線の量が大幅に減少するので、酸化チタンの親水効果が発揮しにくいと考えられる。実用化を考えると、光の有無に関わらず親水性を維持できることが望ましい。さらに、被塗布部材がプラスチックなどの有機材料の場合、酸化チタンの触媒作用により部材そのものが劣化する恐れがあるため、耐久性の問題が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルを混合した親水性コーティング剤である。親水性コーティング剤の主溶媒は水であり、この親水性コーティング剤から被塗布部材に形成されるコーティング膜は、光透過性を損なうことなく、長期間に渡り親水性機能を付与させることが可能である。
【0017】
前記光透過性とは、コーティング膜の可視光領域での光の透過性が良好であることを示す。親水性とは水に対する接触角が被塗布部材よりも小さくなることを示す。なお、接触角が5°以下の場合、超親水性と考えられている。
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水に対して極めて高い分散性をもつ酸化スズゾルと、親水化剤を含む親水性ゾルを混合することにより、被塗布部材にコートすることで親水効果を与える親水性コーティング剤を開発した。ここで、親水化剤とは親水特性を有する物質のことを意味し、特に酸化チタンおよびセルロースナノファイバーのことを示す。通常の酸化スズゾルは水中で凝集しやすく不安定な為、酸化チタンやセルロースナノファイバーなどの親水化剤を添加すれば直ちに凝集沈殿してしまう。本発明者は、酸化スズを含む酸化スズゾルが溶液中の不純物の影響を受けやすいことに注目した。酸化スズゾルを合成する段階で溶液中の不純物を大幅に減少させることで、水中においても安定な状態で分散する酸化スズゾルを開発した。この酸化スズゾルを用いることで、親水化剤を含む親水性ゾルを添加しても水中で凝集沈殿しない、安定した親水性コーティング剤が作製できることを見出した。
【0019】
さらに、本発明者は、親水性コーティング剤から作製したコーティング膜は、酸化スズゾルから作製したコーティング膜に比べ、親水性が大幅に向上することを見出した。
【0020】
親水化剤に酸化チタンを用いた親水性コーティング剤の場合、そのコーティング膜は、光照射による酸化チタンの光誘起反応によって、酸化チタンを添加しない場合に比べより親水性を示す。さらに、酸化チタンの光触媒作用により、コーティング膜上に付着した汚れの分解作用が期待できる。一方、セルロースナノファイバーは、その分子構造に多くのヒドロキシル基をもつため、添加することで光の有無によらず親水性効果を向上させることができる。また、セルロースナノファイバーは原料が植物由来のため、安全性が高いうえに環境負荷が低い。本発明者は、これらの効果を混合することで、光の有無によらず長期間の親水性効果が維持されることを見出した。なお、1回のコートで形成される膜厚はナノメートルオーダーのため、光の透過性も損なうことがない。コーティング膜中の酸化チタンの濃度を高くすれば、反射防止の効果も得られるため、透過性を向上させることも可能である。この親水性コーティング剤を用いて、被塗布部材にコーティング膜を形成させ、部材表面を改質することにより上記課題を解決するに至った。
【0021】
本発明は以下の通りである。
(1)酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルを備え、酸化スズゾルと親水性ゾルを混合または重合させて塗布する親水性コーティング剤であって、主溶媒が水であることを特徴とする親水性コーティング剤。
(2)親水化剤が酸化チタンである親水性コーティング剤。
(3)親水化剤がセルロースナノファイバーである親水性コーティング剤。
(4)親水化剤が、酸化チタンとセルロースナノファイバーを混合したものである親水性コーティング剤。
(5)スズ濃度が0.0001~1.0mol/Lの範囲である親水性コーティング剤。
(6)酸化チタン濃度が0.001~5.0wt%の範囲である親水性コーティング剤。
(7)セルロースナノファイバー濃度が0.0001~5.0wt%の範囲である親水性コーティング剤。
(8)pHが2~10の範囲である親水性コーティング剤。
(9)被塗布部材に、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルが混合した親水性コーティング剤による被膜を形成してなるコーティング膜。
(10)被塗布部材に、酸化スズを含む酸化スズゾルからなる被膜を形成し、これをプライマーとした上に、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルが混合した親水性コーティング剤による被膜を形成するコーティング膜。
【発明の効果】
【0022】
本発明の親水性コーティング剤を用いれば、被塗布部材にコートすることで、光透過性を損なうことなく、親水性を付与させることができる。親水性コーティング剤から形成されるコーティング膜は、ナノメートルオーダーの極めて薄い膜が被塗布部材表面の凹凸に沿って形成されるため、十分な密着性をもつ。さらに長期にわたって親水性を維持することができるとともに、暗所でも親水効果を維持することが可能である。
【0023】
本発明の親水性コーティング剤は、主溶媒が水のため、コーティング環境において作業者が受ける身体的影響は小さく、経済性に優れ、かつ大気中への有機溶媒の揮発による環境負荷が少ない。親水性コーティング剤は長期間保管した場合であっても沈殿物など生じず、安定性に優れている。
【0024】
本発明の親水性コーティング剤は、親水性以外の効果として、反射防止、帯電防止、防汚効果、耐薬品性の向上なども期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は実施例3により作製した膜の透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の親水性コーティング剤は、酸化スズを含む酸化スズゾルと親水化剤を含む親水性ゾルが混合した混合ゾルである。なお、本発明における親水化剤としては酸化チタンとセルロースナノファイバーのことを示す。

【0027】
本発明の親水性コーティング剤に被塗布部材を浸漬し、引き上げることで被塗布部材表面にコーティング膜が形成される。その後、乾燥させることで被塗布部材表面にはナノメートルオーダー膜厚のコーティング膜が形成される。被塗布部材へのコート方法としては、上記手法に限定されるものではなく、ハケによる塗布、スプレー塗布、印刷、スピンコートなどの方法でもコート可能である。

【0028】
被塗布部材と本発明のコーティング膜との密着性が不十分なとき、酸化スズゾルからなるコーティング膜をあらかじめ被塗布部材上に形成させた後、これをプライマーとした上に本発明の親水性コーティング剤によるコーティング膜を形成することで、密着性が向上する。酸化スズゾルの濡れ性が不十分な時は、被塗布部材をシランカップリング処理によってあらかじめ表面改質させた後コートしてもよい。

【0029】
本発明の親水性コーティング剤において、酸化チタンの光触媒効果を利用する場合、酸化チタンの光触媒作用は非常に強力なため、被塗布部材がプラスチックなどの有機物の場合劣化する可能性がある。それを避けるため、酸化スズゾルからなるコーティング膜をあらかじめ形成させた後、これをプライマーとした上に親水性コーティング剤によるコーティング膜を形成することで、1層目の酸化スズ層がバリヤー層となり被塗布部材への酸化チタンの光触媒による影響を低減させることができる。

【0030】
親水化剤に酸化チタンとセルロースナノファイバーを混合して使用する場合、コーティング膜中において酸化チタンの光触媒作用によるセルロースナノファイバーの劣化が考えられる。しかしながら本発明の親水性コーティング剤には酸化スズが含まれている。酸化チタンと酸化スズは無機化合物であり、有機化合物のセルロースナノファイバーよりも親和性が高い。そのため、コーティング膜中において酸化チタンは主に酸化スズに吸着し、セルロースナノファイバーとの接触は少なくなるため、結果、劣化は抑えられる。

【0031】
親水性コーティング剤に使用する溶媒は、主に水単独であるが、分散性向上を目的としてアルコールなどの水溶性有機溶媒を水に混合して使用することもできる。

【0032】
親水性コーティング剤中の酸化スズの価数は、2価(SnO)、4価(SnO2)と特に限定されるものではないが、液の安定性の面から4価の酸化スズ(SnO2)であることが望ましい。なお、酸化スズゾルには酸化スズだけでなくその水和物SnO2・nH2O、水酸化スズSn(OH)2、Sn(OH)4も含まれる。

【0033】
親水性コーティング剤中の酸化スズの結晶性は、非晶質、結晶とくに限定されないが、分散性の観点から非晶質であることが望ましい。

【0034】
親水性コーティング剤のpHは2~10の範囲であり、好ましくは3~10、より好ましくは4~9の範囲である。それ以外の範囲だと凝集沈殿をおこす恐れがある。

【0035】
親水性コーティング剤中のスズ濃度は0.0001~1.0mol/Lであり、好ましくは0.001~0.5mol/L、より好ましくは0.001~0.1mol/Lである。それ以外の範囲だと、濃度が大きい場合はスズの凝集により膜が不均一になり、濃度が小さい場合は膜の特性が得られないなどの恐れがある。

【0036】
親水性コーティング剤中の酸化チタンの濃度は、0.001~5.0wt%の範囲であり、好ましくは0.01~1.0wt%、より好ましくは0.01~0.5wt%である。それ以外の範囲だと、濃度が大きい場合は凝集によりゲル化し、濃度が小さい場合は膜の特性が十分に得られないなどの恐れがある。

【0037】
親水性コーティング剤中のセルロースナノファイバーの濃度は、0.0001~5.0wt%の範囲であり、好ましくは0.001~1.0wt%、より好ましくは0.01~0.5wt%である。それ以外の範囲だと、濃度が大きい場合は凝集によりゲル化し、濃度が小さい場合は膜の特性が十分に得られないなどの恐れがある。また繊維長は300nm以下、好ましくは100nm以下である。それ以外だとコーティング膜の光透過性が低下する。

【0038】
親水性コーティング剤中の酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブッカイト型など特に限定されるものではないが、親水性および光触媒作用を考慮するとアナターゼ型の結晶が好ましい。

【0039】
本発明において利用されるセルロースナノファイバーの種類は特に限定されないが、例えば、セルロース材料に様々な化学処理した後、解繊処理により得られたセルロースナノファイバー(化学変性タイプ)、セルロース材料に解繊処理のみ行っているセルロースナノファイバー等が挙げられる。

【0040】
本発明の親水性コーティング剤に用いる親水化剤は、酸化チタン、セルロースナノファイバーであるが、その他の親水化剤、例えばシリカ、酸化亜鉛、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなども適用可能である。

【0041】
親水性コーティング剤の粘度調整や被塗布部材への濡れ性の改善、乾燥制御のため、エチレングリコール等の増粘剤、乾燥補助剤や界面活性剤を混合することもできる。

【0042】
親水性コーティング剤のコート時の温度は特に限定されないが、室温~40℃の範囲で使用することが好ましい。

【0043】
コーティング膜の膜厚は特に限定されないが、光透過性を維持するため100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。

【0044】
コーティング膜中の酸化スズは非晶質、結晶と特に限定せずに使用できる。

【0045】
コート後、室温乾燥で十分だが、乾燥を早めるため被塗布部材の耐熱温度以下の制限のもと、加熱処理をおこなっても良い。なお、コート後の熱処理により、コーティング膜中の酸化スズを非晶質から結晶とすることで、密着性を向上させることができる。このときの熱処理温度は特に限定されないが、300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。この処理によりコーティング膜中に残存する水が完全に脱水するとともに酸化スズが結晶化するため、被塗布部材とより強固な密着力を確保することができる。

【0046】
本発明の親水性コーティング剤に適用可能な被塗布部材は、プラスチック、ガラス、セラミックスなど絶縁材料が主であるが、導電性材料にも適用可能である。
【実施例】
【0047】
次に、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)親水性コーティング剤の作製
塩化第二スズ0.1mol/Lを蒸留水に溶解し、pHを4~9へ調整した。生じた沈殿物を取り出し、2回以上洗浄後蒸留水中に分散させ、酸化スズを含む酸化スズゾルを作製した。スターラーで攪拌しながら酸化スズゾル中に、親水性ゾルとしてアナターゼ型酸化チタン分散水溶液(結晶子径10nm以下)又はセルロースナノファイバー(CNF)分散水溶液(繊維幅約3nm)を表1に示す組み合わせで添加し、親水性コーティング剤を作製した。
【実施例】
【0049】
【表1】
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【実施例】
【0050】
(実施例2)安定性の確認
表1の組成で作製した親水性コーティング剤を20日間保管した後、目視にて分散状態を観察した。すべてのサンプルにおいて沈殿物は認められなかった。コーティング剤の安定性が高いことが示された。
【実施例】
【0051】
(実施例3)光透過性
表1の組成で作製した親水性コーティング剤にガラス板を浸漬、引き上げ、室温乾燥しコーティング膜を作製した。分光光度計を用いて測定した透過スペクトルを図1に示す。すべてのサンプルにおいて、ガラスと同等もしくはガラスよりも光透過性の高いスペクトルが得られた。
【実施例】
【0052】
(実施例4)親水性
表1の組成で作製した親水性コーティング剤にガラスを浸漬、引き上げ、室温乾燥しコーティング膜を作製した。5μLの蒸留水を滴下し、2秒後の接触角を測定した。結果を表2に示す。すべてのサンプルで親水性向上が認められた。
【実施例】
【0053】
【表2】
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【実施例】
【0054】
(実施例5)密着性
(A)表1サンプル2の組成の親水性コーティング剤にガラスを浸漬、引き上げて表面にコーティング膜を作製した。(B)ガラスにバリヤー層として酸化スズゾルのコーティング膜を施した後、表1サンプル2の組成の親水性コーティング剤をコートして膜を作製した。それぞれの膜について加熱温度を変えて熱処理した後、5μLの蒸留水を滴下し、目視にて濡れ性を確認した。その後、綿棒で表面を強く擦って、コーティング膜剥がれの有無を目視にて確認した。結果を表3に示す。バリヤー層の有無および加熱温度を上げることによって密着性が改善することが確認された。
【実施例】
【0055】
【表3】
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【実施例】
【0056】
(実施例6)メチレンブルー退色性試験
表1で作製した親水性コーティング剤にガラスを浸漬、引き上げて表面にコーティング膜を作製した。乾燥後、メチレンブルー水溶液に浸漬し、メチレンブルーを吸着させた。その後、高圧水銀ランプを用いてコーティング膜を15分照射した。照射前後のコーティング膜中のメチレンブルーの変化について、分光光度計で測定した。結果を表4に示す。コーティング膜の酸化チタンによる分解特性が確認された。
【実施例】
【0057】
【表4】
JP2020105274A_000006t.gif
【実施例】
【0058】
(実施例7)
表1で作製した親水性コーティング剤にガラスを浸漬、引き上げて表面にコーティング膜を作製した。高圧水銀ランプを用いて膜を1時間照射した。照射前後のコーティング膜に3μLのメチレンブルー水溶液を滴下し、濡れ広がり部の直径を測定した。結果を表5に示す。コーティング膜中の酸化チタンの光誘起作用とセルロースナノファイバーの親水性が確認された。
【実施例】
【0059】
【表5】
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図面
【図1】
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