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明細書 :熱電変換装置、熱電変換方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-098860 (P2020-098860A)
公開日 令和2年6月25日(2020.6.25)
発明の名称または考案の名称 熱電変換装置、熱電変換方法
国際特許分類 H01L  37/00        (2006.01)
FI H01L 37/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2018-236300 (P2018-236300)
出願日 平成30年12月18日(2018.12.18)
発明者または考案者 【氏名】小峰 啓史
【氏名】安藤 亮
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
【識別番号】591106462
【氏名又は名称】茨城県
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
【識別番号】100194283、【弁理士】、【氏名又は名称】村上 大勇
審査請求 未請求
要約 【課題】使用時において小型であり大きな起電力を得ることができる熱電変換装置を得る。
【解決手段】基体20は、熱伝導率が低く絶縁性、かつ可撓性のある有機材料で構成される。基体20の上には、第1強磁性体層21、第1絶縁層22、熱電材料層23、第2絶縁層24、第2強磁性体層25が、順次形成される。第1強磁性体層21、第2強磁性体層25には同一の向きの磁化Mが付与される。電極11、12から起電力を取り出すことができる。Y方向に温度勾配が印加された場合には、X方向に、ネルンスト効果による電界(電圧)が発生する。この熱電変換装置1がX方向において巻き取られてロール状とされた状態においても、電極11、12間で大きな熱起電力を取り出すことができる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
温度勾配より発生した起電力を出力する熱電変換装置であって、
熱電効果をもつ熱電材料で構成された薄膜状の形態とされ、厚さ方向と垂直な第1の方向に沿った幅が前記第1の方向及び前記厚さ方向と垂直な第2の方向に沿った長さよりも短くされ、前記第1の方向に沿って前記温度勾配が付与される熱電材料層と、
前記第1の方向における一つの端部側かつ前記第2の方向における一つの端部側において前記熱電材料層と接する第1の電極と、
前記第1の方向における前記一つの端部と逆の端部側かつ前記第2の方向における前記一つの端部と逆の端部側において前記熱電材料層と接する第2の電極と、
前記厚さ方向に沿った磁場を、前記第1の方向及び前記第2の方向にわたり前記熱電材料層に印加する磁場印加手段と、
を具備することを特徴とする熱電変換装置。
【請求項2】
前記熱電材料層は、可撓性かつ絶縁性であり前記熱電材料層よりも熱伝導率が低い基体上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換装置。
【請求項3】
前記第2の方向に沿って巻き取られたロール状とされたことを特徴とする請求項2に記載の熱電変換装置。
【請求項4】
前記磁場印加手段は、
強磁性体で構成され、前記基体上において前記熱電材料層との間に絶縁層を介して積層して形成され、前記厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された強磁性体層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱電変換装置。
【請求項5】
前記磁場印加手段は、
前記熱電材料層の中に分散され、前記厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された強磁性体で構成された粉末粒子であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の熱電変換装置。
【請求項6】
前記第2の方向に沿って展開された際の長さの前記第1の方向に沿った幅に対する比が1000以上とされたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の熱電変換装置。
【請求項7】
温度勾配より発生した起電力を出力する熱電変換方法であって、
熱電効果をもつ熱電材料で構成された薄膜状の形態とされ、厚さ方向と垂直な第1の方向に沿った幅が前記第1の方向及び前記厚さ方向と垂直な第2の方向に沿った長さよりも短くされ、前記第1の方向に沿って前記温度勾配が付与される熱電材料層に対して、前記厚さ方向に沿った向きの磁場を、前記第1の方向及び前記第2の方向にわたり印加し、
前記熱電材料層における、前記第1の方向における一つの端部側かつ前記第2の方向における一つの端部側と、前記第1の方向における前記一つの端部と逆の端部側かつ前記第2の方向における前記一つの端部と逆の端部側と、の間で電力を取り出すことを特徴とする熱電変換方法。
【請求項8】
前記第2の方向に沿って巻き取られたロール状とすることが可能とされた前記熱電材料層を用いることを特徴とする請求項7に記載の熱電変換方法。
【請求項9】
前記熱電材料層における、前記第2の方向に沿って展開された際の長さの前記第1の方向に沿った幅に対する比が1000以上とされたことを特徴とする請求項8に記載の熱電変換方法。
【請求項10】
前記第1の方向及び前記第2の方向に沿った広がりをもち厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された薄膜状の強磁性体で構成され、前記熱電材料層と別体とされた強磁性体シートを前記熱電材料層と当接させて前記磁場を前記熱電材料層に印加することを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の熱電変換方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱(温度勾配)により発電を行う熱電変換装置の構造、あるいは熱電変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱(温度差)によって起電力を発生するゼーベック効果を利用した熱電変換素子が知られている。また、この際に磁場を併用することによって更に起電力を高めるネルンスト効果を利用した熱電変換素子も知られている。ネルンスト効果においては、温度勾配が存在する方向及び印加された磁場方向と垂直な方向に電界(起電力)が発生する。このような熱電変換装置として、各種の構造のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、ネルンスト効果を発現する磁性体微粒子を、金属材料を含む起電体で被覆した単位構造が集合して形成された熱電変換装置が記載されている。この構造は支持膜上に形成することができるため、長いテープ状に形成することができ、これを巻き取ったロール状とすることもできるため、使用の態様の自由度を高くすることができる。この場合、温度勾配はテープの厚さ方向に、印加される磁場はテープの幅方向(巻き取られる方向と垂直な方向)となるように使用される。
【0004】
特許文献2には、軸方向に磁化が付与された筒状の磁性体にワイヤ状の起電体が巻回された構成を具備する熱電変換装置が記載されている。この場合には、温度勾配が磁性体の軸周りの径方向で付与されることによって起電力が発生し、磁場は磁性体によって軸方向に付与される。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2016-009838号公報
【特許文献2】特開2015-185573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、外部から磁場を印加することが前提とされ、その方向が限定された。このため、この熱電変換装置は不使用時には小型のロール状とすることができるものの、使用時の態様は実際には大きく制限され、小型の形態のまま使用することは困難であった。
【0007】
特許文献2に記載の技術においては、磁場を外部から印加することが不要であるものの、大きな出力(起電力)を得るためには磁性体で構成された大きな筒状の構造が必要となる。このため、この熱電変換装置を小型化することは困難であった。
【0008】
このため、小型の構造で熱電効果により大きな起電力を得ることができる熱電変換装置、熱電変換方法が求められた。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の熱電変化装置は、温度勾配より発生した起電力を出力する熱電変換装置であって、熱電効果をもつ熱電材料で構成された薄膜状の形態とされ、厚さ方向と垂直な第1の方向に沿った幅が前記第1の方向及び前記厚さ方向と垂直な第2の方向に沿った長さよりも短くされ、前記第1の方向に沿って前記温度勾配が付与される熱電材料層と、前記第1の方向における一つの端部側かつ前記第2の方向における一つの端部側において前記熱電材料層と接する第1の電極と、前記第1の方向における前記一つの端部と逆の端部側かつ前記第2の方向における前記一つの端部と逆の端部側において前記熱電材料層と接する第2の電極と、前記厚さ方向に沿った磁場を、前記第1の方向及び前記第2の方向にわたり前記熱電材料層に印加する磁場印加手段と、を具備することを特徴とする。
本発明の熱電変化装置において、前記熱電材料層は、可撓性かつ絶縁性であり前記熱電材料層よりも熱伝導率が低い基体上に形成されたことを特徴とする。
本発明の熱電変化装置は、前記第2の方向に沿って巻き取られたロール状とされたことを特徴とする。
本発明の熱電変化装置において、前記磁場印加手段は、強磁性体で構成され、前記基体上において前記熱電材料層との間に絶縁層を介して積層して形成され、前記厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された強磁性体層であることを特徴とする。
本発明の熱電変化装置において、前記磁場印加手段は、前記熱電材料層の中に分散され、前記厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された強磁性体で構成された粉末粒子であることを特徴とする。
本発明の熱電変化装置は、前記第2の方向に沿って展開された際の長さの前記第1の方向に沿った幅に対する比が1000以上とされたことを特徴とする。
本発明の熱電変換方法は、温度勾配より発生した起電力を出力する熱電変換方法であって、 熱電効果をもつ熱電材料で構成された薄膜状の形態とされ、厚さ方向と垂直な第1の方向に沿った幅が前記第1の方向及び前記厚さ方向と垂直な第2の方向に沿った長さよりも短くされ、前記第1の方向に沿って前記温度勾配が付与される熱電材料層に対して、前記厚さ方向に沿った向きの磁場を、前記第1の方向及び前記第2の方向にわたり印加し、前記熱電材料層における、前記第1の方向における一つの端部側かつ前記第2の方向における一つの端部側と、前記第1の方向における前記一つの端部と逆の端部側かつ前記第2の方向における前記一つの端部と逆の端部側と、の間で電力を取り出すことを特徴とする。
本発明の熱電変換方法は、前記第2の方向に沿って巻き取られたロール状とすることが可能とされた前記熱電材料層を用いることを特徴とする。
本発明の熱電変換方法は、前記熱電材料層における、前記第2の方向に沿って展開された際の長さの前記第1の方向に沿った幅に対する比が1000以上とされたことを特徴とする。
本発明の熱電変換方法は、前記第1の方向及び前記第2の方向に沿った広がりをもち厚さ方向に沿った向きの磁化が付与された薄膜状の強磁性体で構成され、前記熱電材料層と別体とされた強磁性体シートを前記熱電材料層と当接させて前記磁場を前記熱電材料層に印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されているので、小型の構造で熱電効果により大きな起電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置の構成を示す斜視図(a)、展開された際の平面図(b)である。
【図2】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置が展開された際の斜視断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置における、出力のL/W依存性をネルンスト係数/ゼーベック係数の比を変えて算出した結果である。
【図4】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置の第1の変形例の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置の第2の変形例の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る熱電変換装置の第3の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る熱電変換装置あるいは熱電変換方法について説明する。図1は、この熱電変換装置1の構成を示す図である。この熱電変換装置1は長いテープ状であるため、これをロール状に巻き取ることができ、図1(a)においては、このように巻き取られた状態が示され、図1(b)においてはこれが展開された状態が示されている。熱電変換装置1がこのようにロール状に巻き取られた形態とされるという点においては、この熱電変換装置1は特許文献1に記載の熱電変換装置と同様であるが、この熱電変換装置1は、巻き取られた図1(a)の状態でもそのまま使用する(熱起電力を発生させる)ことができる。また、この際に外部から磁場を印加することは不要であるため、特許文献1に記載の熱電変換装置とは異なり、磁場の方向に対する配置の制限もない。

【0014】
ここでは、巻き取られた場合(図1(a))における巻き取りが行われる方向をX方向(第2の方向)とし、これに垂直な幅方向をY方向(第1の方向)とする。上記のような形態のため、図1(b)の状態においては、この熱電変換装置1におけるX方向の長さをL、Y方向における幅をWとすると、L>>Wとなる。図1(b)に示されるように、幅WはX方向にわたり一様であるため、この熱電変換装置1は、図1(b)の形態においては図中上下方向に細長い矩形形状となる。

【0015】
また、この厚さ(図1(b)における紙面垂直方向(X方向及びY方向と垂直な方向に沿った厚さ)は、L、Wよりも十分に小さい。図1(b)の状態において、この熱電変換装置1においては、X方向、Y方向において共に離間するように、両端部側にそれぞれ電極(第1の電極)11、電極(第2の電極)12が形成されている。展開された図1(b)の状態においては、電極11、12は矩形形状の対角に位置する、すなわち、電極11はX方向に沿った一方の端部側かつY方向に沿った一方の端部側に位置し、電極12はX方向に沿った他方の端部側かつY方向に沿った他方の端部側に位置する。この熱電変換装置1においては、温度勾配はY方向において付与され、これによる熱起電力は電極11、12間で取り出される。

【0016】
図2は、この熱電変換装置1の斜視断面図であり、ここでは、長さ方向(X方向)に垂直であり厚さ方向(Z方向及び幅方向(Y方向)に沿った断面が示されている。この熱電変換装置1においては、絶縁性かつ可撓性の基体20の上に、ネルンスト効果(熱電効果)を発現する熱電材料からなる層と、残留磁化を有する強磁性体からなる層とを含む積層構造が形成される。なお、図2においては、説明のために、特にZ方向におけるサイズは実際の場合よりもY方向におけるサイズよりも大幅に大きく表示されており、実際には図2に示された構造全体はZ方向で薄い薄膜状とされている。

【0017】
図2において、基体20は、熱伝導率が低く絶縁性、かつ可撓性のある有機材料、例えば厚さ5μmの高分子フィルム(ポリイミドフィルム)で構成される。基体20はこの上に形成される積層構造と比べて厚いため、テープ状の熱電変換装置1の機械的性質は主に基体20により定まる。このため、この熱電変換装置1が図1(a)(b)のような形態とできることも、主に基体20の特性により可能となる。

【0018】
基体20の上には、第1強磁性体層(強磁性体層)21、第1絶縁層(絶縁層)22、熱電材料層23、第2絶縁層(絶縁層)24、第2強磁性体層(強磁性体層)25が、順次形成される。第1強磁性体層21、第2強磁性体層25は、それぞれ厚さ数100nm程度の強磁性体材料で構成され、保磁力よりも大きな磁場が印加されることにより、これらには同一の向き(厚さ方向)の磁化Mが付与される。これらを構成する強磁性体材料は、例えばCo-Pt合金とすることができ、これらの各層は例えばスパッタリング法等によって成膜することができる。同様に、薄膜とされた状態で厚さ方向の磁化Mを十分に維持できる材料として、他にFe-Pt、Fe-N、Co/Ni、SmCo、NdFeB等を用いることができる。これらの材料における厚さ方向の磁化M(自発磁化)は0.1T以上とすることができる。

【0019】
熱電材料層23は、ネルンスト効果(ゼーベック効果:熱電効果)を発現する材料として、ビスマス(Bi)で構成される。その厚さは例えば1μm程度であり、第1強磁性体層21、第2強磁性体層25と同様に、スパッタリング法等によって熱電材料層23を形成することができる。Bi以外にも、同様に機能することができる他の材料として、Bi-Sb、Bi-Te等のBi化合物、InP、InAs、InSb等のIn化合物(III-V族化合物半導体)、CoSb等のスクッテルダイト化合物等の、移動度の高い半金属、半導体を用いることができる。これらの半金属、半導体はいずれも0.5m/V/s以上の移動度を有し、Biと同様に薄膜状態の熱電材料層23として形成することができる。

【0020】
第1絶縁層22、第2絶縁層24は、熱電材料層23とその下の第1強磁性体層21、その上の第2強磁性体層25との間の絶縁性を確保するために形成される。第1絶縁層22、第2絶縁層24は、このような絶縁性を確保するために設けられるが、第1強磁性体層21、第2強磁性体層25の磁化Mが熱電材料層23に及ぼす効果を高くするためには、これらは絶縁性が確保できる限りにおいて薄いことが好ましい。これらを構成する材料は、例えばシリコン酸化膜(SiO)とすることができ、その厚さは例えば数10nmとすることができる。これらの層は、例えばプラズマCVD法等によって形成することができる。

【0021】
図2に示されるように、電極11、12が形成された周囲では、第2絶縁層24、第2強磁性体層25は局所的に除去され、電極11、12が熱電材料層23と接するように設けられる。このため、電極11、12を介して熱電材料層23中に電流が流れる、あるいは電極11、12から起電力を取り出すことができる。

【0022】
上記の熱電変換装置1は、基体20を構成する材料(ポリイミド等)の大面積のシート上に上記の積層構造、電極11、12を形成した構造を製造した後に、この構造を切断分離することによって得ることができる。このため、同時に多数の熱電変換装置1を製造することができるため、この熱電変換装置1を安価に製造することができる。

【0023】
図2に示されるように、第1強磁性体層21、第2強磁性体層25において厚さ方向に磁化Mが付与された場合には、この磁化Mによる磁場Bが熱電材料層23の厚さ方向に加わる。一方、前記のようにY方向に温度勾配が印加された場合には、磁場の方向及び温度勾配の方向(Y方向)と垂直なX方向に、ネルンスト効果による電界(電圧)が発生する。磁化MがX方向にわたり一様に付与され、かつ温度勾配もX方向にわたり一様に存在する場合には、X方向にわたりこの電界は一様に形成される。このため、Lを長く設定した場合には、電極11、12間で取り出される電圧あるいは電力は大きくなる。

【0024】
ここで、この熱電変換装置1がX方向において巻き取られてロール状とされた図1(a)の状態においても、Y方向において一様に温度勾配が存在する状態とすることが可能である。また、図2に示されたように、熱電材料層23においてその厚さ方向に磁場が印加された状態となることについては、図1(a)(b)のどちらの状態でも同様である。このため、図1(a)(b)のどちらの状態においても、電極11、12間で大きな熱起電力を取り出すことができる。この際、特に図1(a)の状態は、図1(b)の状態と比べて小型である。すなわち、巻き取られて小型となった状態でも、電極11、12間で大きな熱起電力が出力される。

【0025】
この熱電変換装置1における出力のL、W依存性について計算した結果について説明する。熱電材料層23に印加される磁場がない場合には、ゼーベック効果によって温度勾配と同じY方向に電圧が発生する。この際の性能指数Zは(1)式で与えられる。

【0026】
【数1】
JP2020098860A_000003t.gif

【0027】
ここで、ρYYは熱電材料層23の抵抗率、κは熱伝導率であり、SYYはゼーベック係数である。SYY、ρYYは熱電材料層23あるいはこれを構成する材料のみによって定まるが、図2の積層構造においては、実質的な熱伝導率は熱電材料層23以外の層の影響も受けるため、実効的な熱伝導率(実効熱伝導率κeff)は、κ/κeff>1とすることが可能である。

【0028】
ネルンスト効果も考慮する場合においては、(1)式におけるゼーベック係数SYYを、電極11、12間のネルンスト効果も考慮した実効ゼーベック係数Seffと置換することができる。ここで、電極11、12間のネルンスト効果も考慮した実効ゼーベック係数Seffは、ネルンスト効果による電圧がL/Wに比例することを考慮すると、SXYを上記のゼーベック係数SYYに対応したネルンスト係数として定義すると、(2)式のように書ける。

【0029】
【数2】
JP2020098860A_000004t.gif

【0030】
(1)式における抵抗率ρYYについても、(2)式と同様に、ネルンスト効果も考慮した実効抵抗率ρeffと置換することができ、ρeffは、磁場と垂直方向に発生する電圧を定めるホール抵抗率ρXYを導入すると、同様に(3)式のように書ける。

【0031】
【数3】
JP2020098860A_000005t.gif

【0032】
上記の式を用い、電極11、12間の出力(電力)における無次元性能指数(ZT:性能指数に絶対温度を乗じた値)のL/W依存性を計算した結果を図3に示す。ここで、ネルンスト係数SXY/ゼーベック係数SYYの比率をパラメータとしている。ここでは、電力で評価しているために、L/Wが小さな場合から大きくなるに従って、電極11、12間の抵抗が上昇し、出力される電力が低下するために、L/Wが1~10程度までは、L/Wの増大に従ってZtは減少する。ただし、L/Wが更に大きくなると、X方向で積分されたネルンスト効果の影響が大きくなるために、出力は大きく上昇する。この傾向は、ネルンスト効果の影響が大きな場合(SXY/SYYが1/5以上の場合)に特に顕著である。

【0033】
この結果より、L/Wを大きくする、特にL/Wを100以上、更には1000以上とすることによって、特に大きな出力が得られる。このようにL/Wを大きくする際には、図1(a)に示されたようなロール状の形態が特に有効である。また、Y方向で一様に温度勾配を付与するに際して、図1(b)のように展開された状態でX方向における長さLの範囲で一様に温度勾配を付与することが困難な場合もある。図1(a)のようにロール状とした場合には、この形状における直径をLよりも十分に小さくすることができる。図1(a)の形態でこの熱電変換装置1を用いる場合に、温度勾配がこの直径の範囲にわたり付与されていれば、図1(b)の形態でX方向の長さLの範囲で一様に温度勾配が付与されている場合と同様の出力を得ることができる。

【0034】
また、一般的には前記のような第1強磁性体層21、熱電材料層23、第2強磁性体層25を構成する材料の熱伝導率を低くすることは困難である。これらよりも熱伝導率の低い第1絶縁層22、第2絶縁層24は、前記の通りこれらよりも薄く構成される。このため、基体20を熱電材料層23よりも熱伝導率の低い有機材料で構成することが特に好ましく、これによって実効熱伝導率κeffを小さくして大きな出力を得ることができる。このような有機材料を用いた場合、基体20を図1に示されるような形状を実現可能なテープ状とすることも容易である。

【0035】
なお、図2の構造においては、熱電材料層23の上下に強磁性体層(第1強磁性体層21、第2強磁性体層25)がそれぞれ設けられた。しかしながら、熱電材料層の厚さ方向(Z方向)に十分な強度の磁場が印加できる限りにおいて、強磁性体層を一方の側のみに設けてもよい。また、熱電材料層に強磁性体層によって磁場を印加させることができ、かつ熱電材料層から強磁性体層へ電流が流れることがない限りにおいて、基体上の積層構造の構成は任意である。また、上記の例では可撓性の基体20が用いられたが、熱電材料層23等が自身のみで薄膜状に形成される場合には、基体は不要である。

【0036】
また、図1(a)においては、この熱電変換装置1がロール状に巻き取られたことによって小型化されたが、小型化するための他の形態をとってもよい。例えば、熱電変換装置が折り畳まれていてもよい。基体を可撓性とし、その上の熱電材料層、強磁性体層を含む積層構造を薄くすることによって、このような任意の形態とすることによって、全体を小型化することができる。

【0037】
また、上記の例においては、強磁性体層の磁化Mは厚さ方向(Z方向)に沿い、温度勾配は幅方向(Y方向)に沿って設けられるものとした。しかしながら、少なくとも磁化や温度勾配がこれらの方向に沿って存在すれば、上記の効果が得られることは明らかであり、磁化や温度勾配の方向がこれらの方向と一致する必要はない。

【0038】
次に、上記の熱電変換装置1の変形例について説明する。上記の効果を奏するためには、L/Wが大きくされた熱電材料層において、Wの方向(図1におけるY方向)に温度勾配が存在し、Lの方向(図1におけるX方向)に沿った広い範囲で厚さ方向(図2におけるZ方向)に沿った磁場が印加されるようにすればよい。このうち、このように熱電材料層の厚さ方向に磁場を印加するための構成(磁場印加手段)としては、図2の構造以外にも、各種の構造を用いることができる。

【0039】
例えば、上記と同様にL/Wが大きくされて1対の電極が設けられた状態のシート状(ロール状)の熱電材料層と、ヨーク形状とされた強磁性体とが別体とされて製造され、これらを組み合わせて上記と同様に起電力を発生させることもできる。図4は、この構造(第1の変形例)の断面構造を示す図である。この図では、電極の各熱電材料週における位置は前記の場合と同様であり、その記載は省略されている。この構造においては、ヨーク形状とされ図示されるように磁化された2つの強磁性体部(磁場印加手段)31で、2つの熱電材料層32、33が図2におけるY方向の両側で挟持されて固定される。この場合には、上側の熱電材料層32と下側の熱電材料層33では逆向きの磁場Bがそれぞれにおいて一様に印加され、この磁場Bは、図示されるように、図において強磁性体部31と熱電材料層32、33が直接接さない中央の部分においても、同様に磁場Bが厚さ方向で印加されるため、結局、上記と同様に、熱電材料層32、33の各々で電力を取り出すことができる。

【0040】
この構造は、強磁性体部31、熱電材料層32、33をそれぞれ別体として製造し、これらを組み合わせることによって実現することができる。この際、前記と同様に1対の電極が形成された熱電材料層32、33を、図4に示されるように組み合わせて用いることができる。これにより、熱電材料層32、33の出力を積算した大きな出力を取り出すことができる。図4においては、熱電材料層が2層用いられていたが、熱電材料層を3層以上設けることもできる。

【0041】
また、図5は、磁場印加手段として、上記のような特定の構造体とされた強磁性体層、強磁性体部を用いずに、粉末状の強磁性体材料を用いる場合(第2の変形例)の構造を示す断面図である。ここでは、熱電材料で構成された熱電材料層34中に、上記と同様の強磁性体材料で構成された粉末粒子(磁場印加手段)35が分散されている。図2の構造を用いた場合と同様に、この状態でこの構造に一様に磁場を印加した場合には、各粉末粒子35を熱電材料層34の厚さ方向に磁化することができる。図2の構成と同様に、この磁化Mによって前記と同様に熱電材料層34中に磁場を印加することができる。

【0042】
また、図6は、熱電材料層36と強磁性体シート(磁場印加手段)37をそれぞれ別体とし、それぞれをロール状とすることが可能なように形成し、使用する場合において、各々を伸展して重ね合わせて用いる場合の形態(第3の変形例)を示す図である。この場合においても、強磁性体シート37中の磁化Mを厚さ方向に付与しておけば、前記の場合と同様に、熱電材料層36における電極から出力と取り出すことができる。図2の構造の場合には、使用しない場合には熱電変換装置1をロール状のコンパクトな形態とすることができたのに対し、この場合には、熱電材料層36、強磁性体シート37がそれぞれ別個にロール状のコンパクトな形態とされる。このため、携帯する際の態様の自由度が更に高まる。なお、この場合には、熱電材料層36、強磁性体シート37は、それぞれ図2における場合と同様の可撓性の基体の上に形成してもよい。この場合には、熱電材料層36、強磁性体シート37におけるこの基体と反対側が接するようにして使用すれば、熱電材料層36中の磁場の強度を高くすることができる。

【0043】
図2、図4~6の構造は、使用の態様や、熱電材料層に使用する熱電材料や、強磁性体層や強磁性体粉末粒子に使用する強磁性体材料等に応じて、適宜選択して用いることができる。前記のように基体を用いる場合には、基体との組み合わせもこの際に考慮することができる。

【0044】
また、上記のように、本発明の熱電変換装置あるいは熱電変換方法においては、ネルンスト効果を発現させることのできる材料で薄膜状に形成され、厚さ方向と垂直な第1の方向に沿った幅が、第1の方向及び厚さ方向と垂直な第2の方向に沿った長さよりも短くされ、第1の方向に沿って温度勾配が付与される熱電材料層が用いられる。この熱電材料層に対して、厚さ方向に沿った磁場を第1の方向及び第2の方向にわたる2次元の範囲で印加する磁場印加手段としては、上記の例で用いられたもの以外にも各種のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 熱電変換装置
11 電極(第1の電極)
12 電極(第2の電極)
20 基体
21 第1強磁性体層(強磁性体層:磁場印加手段)
22 第1絶縁層(絶縁層)
23、32、33、34、36 熱電材料層
24 第2絶縁層(絶縁層)
25 第2強磁性体層(強磁性体層:磁場印加手段)
31 強磁性体部(磁場印加手段)
35 粉末粒子(磁場印加手段)
37 強磁性体シート(磁場印加手段)
B 磁場
M 磁化
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5