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明細書 :新生血管に対する標的化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5721140号 (P5721140)
登録日 平成27年4月3日(2015.4.3)
発行日 平成27年5月20日(2015.5.20)
発明の名称または考案の名称 新生血管に対する標的化剤
国際特許分類 A61K  47/42        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61K  38/17        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  27/16        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
C07K  14/78        (2006.01)
FI A61K 47/42
A61K 47/48
A61K 37/12
A61K 49/00 A
A61P 9/00
A61P 35/00
A61P 43/00 101
A61P 43/00 105
A61P 27/16
A61P 9/10 101
A61P 9/10
A61K 49/02 A
A61K 49/00 C
A61K 49/02 B
A61K 49/02 C
C07K 14/78 ZNA
請求項の数または発明の数 18
全頁数 22
出願番号 特願2011-518581 (P2011-518581)
出願日 平成22年6月11日(2010.6.11)
国際出願番号 PCT/JP2010/059917
国際公開番号 WO2010/143708
国際公開日 平成22年12月16日(2010.12.16)
優先権出願番号 2009140757
優先日 平成21年6月12日(2009.6.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年11月29日(2012.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】中村 健太郎
【氏名】田畑 泰彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】牧野 晃久
参考文献・文献 特表2002-522504(JP,A)
国際公開第2008/103041(WO,A1)
特表2002-520044(JP,A)
Zheng-Rong Lu,Radiolabeled Multimeric Cyclic RGD Peptides as Integrin αvβ3 Targeted Radiotracers for Tumor Imagi,Molecular Pharmaceutics,2006年,Volume 3, Issue 5,pp.472-487
Maeshima, Y. et al,Extracellular Matrix-derived Peptide Binds to αvβ3 Integrin and Inhibits Angiogenesis,The Journal of Biological Chemistry,2001年,Vol.276,No.34,pp.31959-31968
Pedchenko, V. et al,αvβ3 and αvβ5 Integrins Bind Both the Proximal RGD Site and Non-RGD Motifs within Noncollagenous,The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol.279, No.4,pp.2772-2780
Emsley, J. et al,Structure of the Integrin α2β1-binding Collagen Peptide,Journal of Molecular Biology,2004年,Vol.335,pp.1019-1028
調査した分野 A61K 47/00- 47/48
A61K 37/00- 37/66
A61K 49/00- 49/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを含む、新生血管部位に対する標的化剤。
【請求項2】
新生血管部位を標的としたイメージング剤である、請求項1に記載の標的化剤。
【請求項3】
新生血管部位を標的としたドラッグデリバリー剤である、請求項1に記載の標的化剤。
【請求項4】
細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む、請求項1から3の何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項5】
細胞接着シグナルがArg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列である、請求項4に記載の標的化剤。
【請求項6】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン及びスレオニンを含まない、請求項1から5の何れかの何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項7】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、及びシステインを含まない、請求項1から6の何れかの何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項8】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない、請求項1から7の何れかの何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項9】
遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている、請求項1から8の何れかの何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項10】
架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、請求項9に記載の標的化剤。
【請求項11】
さらに標識プローブまたは薬剤を含有する、請求項1から10の何れかの何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項12】
標識プローブが、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、又は磁性体である請求項11に記載の標的化剤。
【請求項13】
蛍光色素が、量子ドット、インドシアニングリーン又は近赤外蛍光色素であり、放射性同位体、PET用核種及びSPECT用核種が、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせであり、MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体、あるいは又はそれらの組み合せである、請求項12に記載の標的化剤。
【請求項14】
遺伝子組み換えゼラチンと標識プローブとが、直接又はリンカーを介すことにより物理的又は化学的に結合されている、請求項11から13の何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項15】
該結合が、配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、又は物理吸着である、請求項14に記載の標的化剤。
【請求項16】
遺伝子組み換えゼラチンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1から15の何れか一項に記載の標的化剤。
【請求項17】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを対象(ヒトを除く)に投与することを含む、新生血管部位に対して物質を標的化する方法。
【請求項18】
新生血管部位に対する標的化剤の製造のための、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンの使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン様タンパク質を用いた新生血管に対する標的化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生とは、主に、既存の血管から新しい血管を形成する現象のことを表している。正常な生理的血管新生としては、胎生期における血管形成や、子宮内膜や黄体形成、創傷治癒等に関与する血管新生が存在する。一方、病的な血管新生は、固形腫瘍の増殖や転移、糖尿病性網膜症、関節リウマチ等の慢性炎症などに深く関与していることが知られている。特に腫瘍血管新生に関する研究は、治療・診断の両側面から精力的に行われている。腫瘍径が1~2mmの腫瘍では既存血管からの拡散で酸素や栄養素を得られると考えられているが、それ以上の増殖には血管新生が必須となる。成人の健常人においては、血管新生というイベントは限られた部位、限られた場合でしか存在しないため、腫瘍血管新生を標的にした治療薬やイメージング剤は、腫瘍特異的かつ普遍的な薬剤・診断剤になることが期待されている。
【0003】
現状、腫瘍の診断においては、FDG(フルオロデオキシグルコース)を用いた腫瘍部位のPET(positron emission tomography)診断が実施されているが、FDGはグルコース代謝活性の高い細胞・組織部位を標的としているに過ぎず、腫瘍特異性は十分なものではない。FDGは生理的集積により、脳・心臓・肝臓などにも高い集積を示す為、腫瘍の診断が困難な場合が問題となっている。又、腎臓、尿管、膀胱など尿路系では、尿中に排出される大量のFDGによってバックグランドが上がり、診断が困難である。その為、糖代謝によるターゲティングとは別の機構によるターゲティング、主に血管新生を標的としたターゲティング剤(標的化剤)の開発が行われている。
【0004】
一方、血管新生のイベントを治療へ利用することが、血管新生療法等として実施されている。創傷治癒、虚血性疾患等の治療法として、又、臓器再生や細胞移植、自然治癒効果の増強など、広く再生医療といわれる治療においても、血管新生の重要性が明らかとなっている。血管新生そのものが治療効果を示す、あるいは血管新生が治療効果を増強する。 その為、血管新生を標的とした治療薬やターゲティング剤・イメージング剤は、様々な治療、再生医療における薬剤・診断剤・治療効果評価手段になることが期待されている。
【0005】
特に再生医療分野においては、その治療効果を詳細に検討する術が乏しく、その治療効果の真偽については、従来存在する診断法の組合せにより、非直接的な評価を行うに止まっている。特に前述の如く、血管新生は再生医療における重要な役割を有しているが、既存血管と新生血管を区別して評価する手法は乏しい。とりわけ新生した血管のみを可視化するイメージング手段が求められているが、イメージング剤の新生血管特異性の欠如、あるいはその持続性の欠如等、種々の問題によって未だ充分な結果を提供するに至らない。
【0006】
血管新生を標的とする手段としては、血管新生中の内皮細胞(及び一部の腫瘍細胞)で高発現することが報告されているαVβ3インテグリンを標的としたターゲティング剤・イメージング剤の開発が実施されている。αvβ3 インテグリンは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸の配列からなるペプチド(RGD)を認識する。そのため、RGD 配列を基として、特に種々の環状RGD 類似化合物や環状RGD 含有ペプチドが開発されており、例えばミュンヘン工科大学のKessler らによって開発された環状ペンタペプチドc-RGDfVをリード化合物とするcyclo-RGDfK、cyclo-RGDyV、cyclo-RGDfY、cyclo-RGDyK等の多数の化合物が存在する(非特許文献1)。
【0007】
しかし、前述環状RGD化合物は、主に腎排泄によって投与後迅速に体外へ排出される為、生体内での滞在時間が短い。従って、ドラッグデリバリー剤やイメージング剤などのターゲティング剤として用いる際、そのターゲティング能を利用し得る時間が短く、標的部位への到達以前に、そのほとんどが体外へ排出されてしまうことが問題である。一方、新生血管イメージング、画像化や診断においては、ターゲティング剤に蛍光色素や放射性同位元素のプローブで標識するため、安全性の観点から、当該部位の検出・診断後には可能な限り早期にシグナルがなくなる、つまり診断後には、当該部位から早期に消失することも要求される。しかし、環状RGDペプチドは、標的部位へ到達したとしても、新生血管に発現しているIntegrinへ強固な結合を形成することから、新生血管部位からのシグナル消失が長引くケースが存在し、問題となっている。これらから、「生体内での滞在時間が長く」かつ「新生血管部位からのシグナル消失が迅速な」イメージング材料が求められている。
【0008】
一方、ゼラチンをはじめとする生体高分子はこれまで広く医療材料として用いられてきたが、新生血管のイメージングに利用できることはこれまで知られていなかった。また、近年の遺伝子工学手法の進歩により、大腸菌や酵母に遺伝子を導入することによるタンパク質の合成が行われている。該手法により、種々の遺伝子組み換えコラーゲン様タンパク質が合成(例えば特許文献1及び2)されており天然のゼラチンと比較して、非感染性には優れ、均一であり、配列が決定されているので強度、分解性を精密に設計することが可能であるなどの優位点を有する。しかし、提案されているこれらの用途は天然ゼラチンの代替の域を超えるものではなく、当然ながら新生血管イメージング剤としての用途も知られていなかった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】米国特許6992172号明細書
【特許文献2】WO2008/103041号明細書
【0010】

【非特許文献1】MA Dechantsreiter et al. N-Methylated Cyclic RGD Peptides as Highly Active and Selective αVβ3 Integrin Antagonists. J. Med. Chem. 1999.42:3033-3040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、新生血管部位への集積効果を利用して新生血管部位に対する薬物送達やイメージングを可能とする標的化剤を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、一般に研究されている環状RGD化合物よりも血中滞在性が高く、かつ新生血管部位への滞在が短いことを特徴とする上記標的化剤を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンなどのゼラチン様タンパク質が、血管新生部位に集積することを見出すことにより、この新生血管部位への集積効果を利用して新生血管部位に対する薬物送達やイメージングを可能とする標的化剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明によれば、ゼラチン様タンパク質を含む、新生血管部位に対する標的化剤が提供される。
好ましくは、本発明の標的化剤は、新生血管部位を標的としたイメージング剤である。
好ましくは、本発明の標的化剤は、新生血管部位を標的としたドラッグデリバリー剤である。
【0014】
好ましくは、ゼラチン様タンパク質は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、プロネクチン、ビトロネクチン、又はそれらの組み合わせである。
好ましくは、ゼラチン様タンパク質は、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンである。
【0015】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が2 KDa以上100 KDa以下である。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が10 KDa以上90 KDa以下である。
【0016】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む。
好ましくは、細胞接着シグナルがArg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列である。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン及びスレオニンを含まない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、及びシステインを含まない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない。
【0017】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、
式:A-[(Gly-X-Y)nm-B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3~100の整数を示し、mは2~10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される。
【0018】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly-X-Y)633-Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で示される。
【0019】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、新生血管に集積する作用を有するアミノ酸配列を有する。
【0020】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている。
好ましくは、架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される。
【0021】
好ましくは、本発明の標的化剤は、さらに標識プローブまたは薬剤を含有する。
好ましくは、標識プローブが、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、又は磁性体である。
【0022】
好ましくは、蛍光色素が、量子ドット、インドシアニングリーン又は近赤外蛍光色素であり、放射性同位体、PET用核種及びSPECT(Single photon emission computed tomography)用核種が、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせであり、MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体、あるいは又はそれらの組み合せである。
【0023】
好ましくは、ゼラチン様タンパク質と標識プローブとが、直接又はリンカーを介すことにより物理的又は化学的に結合されている。
好ましくは、該結合が、配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、又は物理吸着である。
【0024】
本発明によればさらに、ゼラチン様タンパク質を対象者に投与することを含む、新生血管部位に対して物質を標的化する方法が提供される。好ましくは、ゼラチン様タンパク質を対象者に投与することを含む、新生血管部位をイメージングする方法が提供される。好ましくは、ゼラチン様タンパク質を対象者に投与することを含む、新生血管部位を標的として薬物を送達する方法が提供される。
【0025】
本発明によればさらに、新生血管部位に対する標的化剤の製造のための、ゼラチン様タンパク質の使用が提供される。好ましくは、新生血管部位を標的としたイメージング剤の製造のための、ゼラチン様タンパク質の使用が提供される。好ましくは、新生血管部位を標的としたドラッグデリバリー剤の製造のための、ゼラチン様タンパク質の使用が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の新生血管部位に対する標的化剤は、新生血管部位への集積効果を利用して新生血管部位に対する薬物送達やイメージングが可能である。さらに本発明の新生血管部位に対する標的化剤は、一般に研究されている環状RGD化合物よりも血中滞在性が高く、かつ新生血管部位への滞在が短いことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、レーザードップラー血流計による「下肢虚血→新生血管」モデルの評価を示す。
【図2】図2は、処置肢/未処置肢の血流比を示す。
【図3】図3は、R-Gelの125Iラベルを示す。
【図4】図4は、R-Gelの体内残存率を示す。
【図5】図5は、R-Gelの血中クリアランスを示す。
【図6】図6は、 bFGF誘導新生血管モデルにおける新生血管部位イメージングを示す。
【図7】図7は、新生血管部位からの消失速度を示す。
【図8】図8は、R-Gelの新生血管集積のcyclo-RGDfKによる阻害を示す。
【図9】図9は、担癌動物における腫瘍部位・腫瘍性新生血管部位のイメージングを示す。
【図10】図10は、 腫瘍・腫瘍性新生血管部位の集積を示す。
【図11】図11は、HUVEC細胞接着性試験の結果を示す。
【図12】図12は、HUVEC細胞接着性試験の結果を示す。
【図13】図13は、各種蛋白質でコーティングしたプレート上のHUVEC細胞写真を示す。
【図14】図14は。各種蛋白質でコーティングしたプレート上のHUVEC細胞一つの面積比較を示す。
【図15】図15は、抗αV抗体によるHUVEC細胞接着阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で用いるゼラチン様タンパク質は本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくはゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、プロネクチン、ビトロネクチンの何れか、又はその組み合わせである。ゼラチン様タンパク質の由来は特に限定されない。ゼラチン様タンパク質は、好ましくはゼラチンであり、特に好ましくは遺伝子組み換えゼラチンである。

【0029】
本発明で用いることができる遺伝子組み換えゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを用いることができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして好ましいものは、以下の態様の遺伝子組み換えゼラチンである。

【0030】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のゼラチン本来の性能から、生体適合性に優れ、且つ天然由来ではないことでBSEなどの懸念がなく、非感染性に優れている。また、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のものに比して均一であり、配列が決定されているので、強度、分解性においても後述の架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。

【0031】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの分子量は2 KDa以上100 KDa以下であることが好ましい。より好ましくは2.5 KDa以上95KDa以下である。より好ましくは5 KDa以上90 KDa以下である。最も好ましくは、10 KDa以上90KDa以下である。

【0032】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、好ましくはコラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列の繰り返しを有する。ここで、複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly-X-Yにおいて、Glyはグリシン、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGXY配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成および配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X,Yであらわされるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%~45%を占めることが好ましい。好ましくはその配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸がGXYの繰り返し構造であることが好ましい。

【0033】
一般的なゼラチンは極性アミノ酸のうち、電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、アルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンを指す。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10~40%であり、好ましくは20~30%である。且つ該極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、システインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。

【0034】
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましく、さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。

【0035】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおけるRGD配列の配置として、RGD間のアミノ酸数が0~100の間、好ましくは25~60の間で均一でないことが好ましい。

【0036】
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3~50個が好ましく、さらに好ましくは4~30個、特に好ましくは5~20個である。最も好ましくは12個である。

【0037】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましく、遺伝子組み換えゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合に、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。遺伝子組み換えゼラチン内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明の遺伝子組み換えゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明の遺伝子組み換えゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
また、遺伝子組み換えゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。

【0038】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、A[(Gly-X-Y)n]mB の繰り返し構造を有することが好ましい。mとして好ましくは2~10、好ましくは3~5である。nは3~100が好ましく、15~70がさらに好ましく、50~65が最も好ましい。

【0039】
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれであっても構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、およびV型である。より好ましくは、I型、II型、III型である。別の形態によると、該コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラットである。より好ましくはヒトである。

【0040】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの等電点は、好ましくは5~10であり、より好ましくは6~10であり、さらに好ましくは7~9.5である。

【0041】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは脱アミン化されていない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはプロコラーゲンおよびプロコラーゲンを有さない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。

【0042】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)の相同性を有し、新生血管に集積する作用を有するアミノ酸配列;
を有する遺伝子組換えゼラチンである。

【0043】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定の遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組み換えゼラチンが産生されるので、培養物から産生された遺伝子組み換えゼラチンを回収することにより、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンを調製することができる。

【0044】
遺伝子組み換えゼラチン単独では性能が不十分である場合は、他の材料と混合や複合化を行っても構わない。例えば、種類の異なる遺伝子組み換えゼラチンや他の生体高分子や合成高分子と混合しても構わない。生体高分子としては、多糖、ポリペプチド、タンパク質、核酸、抗体等があげられる。好ましくは、多糖、ポリペプチド、タンパク質である。多糖、ポリペプチド、タンパク質としては例えば、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブロイン、カゼインが挙げられる。さらにこれらは必要に応じて部分的に化学修飾を施されていても構わない。例えば、ヒアルロン酸エチルエステルを用いてもよい。多糖としては、例えば、ヒアルロン酸やヘパリンに代表されるグリコサミノグリカン、キチン、キトサンが挙げられる。さらに、ポリアミノ酸の例としては、ポリーγ—グルタミン酸が挙げられる。

【0045】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは用途に応じて、化学的に修飾することができる。化学的な修飾としては、遺伝子組み換えゼラチンの側鎖のカルボキシル基やアミノ基への低分子化合物あるいは各種高分子(生体高分子(糖、タンパク質)、合成高分子、ポリアミド)の導入や、遺伝子組み換えゼラチン間の架橋が挙げられる。該遺伝子組み換えゼラチンへの低分子化合物の導入としては、例えばカルボジイミド系の縮合剤が挙げられる。

【0046】
本発明で用いる架橋剤は本発明を実施可能である限りは特に限定はなく、化学架橋剤でも酵素でもよい。化学架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、シアナミドなどが挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドである。さらに、遺伝子組み換えゼラチンの架橋としては、光反応性基を導入したゼラチンへの光照射、あるいは光増感剤の存在化での光照射によるものが挙げられる。光反応性基としては、例えば、シンナミル基、クマリン基、ジチオカルバミル基、キサンテン色素、カンファキノンが挙げられる。

【0047】
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、遺伝子組み換えゼラチン鎖間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼおよびラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。

【0048】
遺伝子組み換えゼラチンの架橋には、遺伝子組み換えゼラチンの溶液と架橋剤を混合する過程とそれらの均一溶液の反応する過程の2つの過程を有する。

【0049】
本発明において遺伝子組み換えゼラチンを架橋剤で処理する際の混合温度は、溶液を均一に攪拌できる限り特に限定されないが、好ましくは0℃~40℃であり、より好ましくは0℃~30℃であり、より好ましくは3℃~25℃であり、より好ましくは3℃~15℃であり、さらに好ましくは3℃~10℃であり、特に好ましくは3℃~7℃である。

【0050】
遺伝子組み換えゼラチンと架橋剤を攪拌した後は温度を上昇させることができる。反応温度としては架橋が進行する限りは特に限定はないが、遺伝子組み換えゼラチンの変性や分解を考慮すると実質的には0℃~60℃であり、より好ましくは0℃~40℃であり、より好ましくは3℃~25℃であり、より好ましくは3℃から15℃であり、さらに好ましくは3℃~10℃であり、特に好ましくは3℃~7℃である。

【0051】
本発明においては、上記したゼラチン様タンパク質(特に好ましくは、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチン)を、対象者(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することによって、物質を新生血管部位に標的化することができる。即ち、本発明においては、ゼラチン様タンパク質は、新生血管部位を標的として集積することから、所望の物質を新生血管部位を標的として送達することができる。従って、本発明の新生血管部位に対する標的化剤は、例えば、新生血管部位を標的としたイメージング剤として使用することができ、また新生血管部位を標的としたドラッグデリバリー剤として使用することができる。

【0052】
本発明の新生血管部位に対する標的化剤を、新生血管部位を標的としたイメージング剤として使用する場合には、標的化剤は、ゼラチン様タンパク質と一緒に標識プローブを含むことができる。また、本発明の新生血管部位に対する標的化剤を、新生血管部位を標的としたドラッグデリバリー剤として使用する場合には、標的化剤は、ゼラチン様タンパク質と一緒に薬剤(治療有効成分)を含むことができる。また、必要な場合には、標的化剤は、ゼラチン様タンパク質と一緒に、標識プローブ及び薬剤(治療有効成分)の両方を含むことができる。

【0053】
本発明の標的化剤をイメージング剤として用いる場合の標識プローブの例としては、蛍光色素、放射性同位体、PET用核種、SPECT用核種、MRI造影剤、CT造影剤、磁性体などが挙げられる。放射線同位体、PET用核種、SPECT(Single photon emission computed tomography)用核種として好ましくは、11C、13N、15O、18F、66Ga、 67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、 64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、あるいはそれらの組み合わせである。MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体が、ガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体・キレート錯体が挙げられる。また、蛍光色素としては、公知の量子ドット、インドシアニングリーン、近赤外蛍光色素(Cy5.5、Cy7、AlexaFluoro等)が挙げられる。

【0054】
ゼラチン様組成物と標識プローブは、直接あるいはリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていることが好ましく、具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であることが好ましく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0055】
本発明の標的化剤をドラックデリバリー剤として使用する場合は、本発明の標的化剤には、ゼラチン様タンパク質と一緒に薬剤(治療有効成分)を封入することもできる。薬剤は生理活性成分である。具体的には経皮吸収剤、局所治療剤、経口治療剤、化粧品成分、サプリメント成分が挙げられる。薬剤の具体例としては、抗炎症剤、抗菌剤、抗生剤、免疫抑制剤、抗酸化剤、抗癌剤、ビタミン、核酸、抗体が挙げられる。特に好ましくは抗炎症剤である。抗炎症剤としては、ステロイド系、非ステロイド系のいずれを用いても構わない。抗炎症剤の例としては、例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、フェナチセン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、フェノプロフェンカルシウム、イブプロフェン、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフルニサル、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、トポテンシン、シスプラチン、ラパマイシン、タクロリムス、シクロスポリンが挙げられる。ビタミンとしては水溶性、脂溶性ともに用いられる。該ビタミンの具体例としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC,ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンKが挙げられる。以上、具体的な薬剤を列挙したが、上記に挙げる薬剤に限定されることはない。

【0056】
本発明の標的化剤(イメージング剤、ドラックデリバリー剤など)は、疾患診断、治療効果診断、病態解析、又は治療、血管新生を伴う疾患の診断・病態解析、及びその治療、又、血管新生による治療法、血管新生による治療効果増強法、及びその治療効果判定のために用いることができる。

【0057】
対象疾患・対象治療法としては例えば、悪性腫瘍、虚血性疾患、血管新生療法、細胞・組織再生療法、細胞移植治療、糖尿病性壊死、潰瘍、難聴、心疾患、動脈硬化、急性冠症候群、急性心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死などが挙げられる。診断方法としては、PET、SPECT、CT、MRI、内視鏡、蛍光検出器を用いることができる。

【0058】
本発明の標的化剤は、その使用目的に合わせて用量、用法、剤型を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の標的化剤は、生体内の目的部位に直接投与してもよいし、あるいは注射用蒸留水、注射用生理食塩水、pH5~8の緩衝液(リン酸系、クエン酸系等)等の水性溶媒等の液状賦形剤に懸濁して、例えば注射、塗布等により投与してもよい。また、適当な賦形剤と混合し、軟膏状、ゲル状、クリーム状等にしてから塗布してもよい。即ち、本発明の標的化剤の投与形態は、経口でもよいし、非経口(例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与等)でもよい。剤型としては、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、又は注射剤(例えば静脈内注射剤、筋肉内注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤等)等の非経口投与剤を挙げることができる。

【0059】
本発明の標的化剤の製剤化は、当業者に公知の方法に従って行うことができる。例えば、製剤用担体が液体の場合は、溶解又は分散させ、また、製剤用担体が粉末の場合は、混合又は吸着させることができる。さらに必要に応じて、薬学的に許容される添加物(例えば、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、芳香剤、矯味剤、剤皮、懸濁化剤、乳化剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、塑性剤、界面活性剤又は無痛化剤等)を含有させることもできる。

【0060】
遺伝子組み換えゼラチンの投与量は、特に限定されないが、例えば、投与される生体の体重1kg当たり.10μg/kgから100mg/kgであり、好ましくは100μg/kgから10mg/kgである。

【0061】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
遺伝子組み換えゼラチンとして以下記載のCBE3を用意した(WO2008-103041に記載)。
CBE3
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。
CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。
CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
【実施例】
【0063】
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
【実施例】
【0064】
以下の実施例では、特に断りのない限り、上記CBE3として表される遺伝子組み換えゼラチンをR-Gelと記載している。
【実施例】
【0065】
(1)下肢虚血→新生血管モデル:動物モデルの作製
虚血部位に、自然治癒によって再生される新生血管、再生新生血管が作製される動物モデルを作製した。
C57BL6マウス(オス、6週令:日本SLC)に体重の1/10重量の10%ネンブタール(生理食塩水で希釈済み)を腹腔投与し、麻酔下で処置を行った。左右下肢を毛剃り、その後、右下肢のみ血管の除去・焼灼・止血を行った。
【実施例】
【0066】
血管の除去は、焼灼メス((有)田川電気研究所)を用い、筋肉からの剥離・血管の止血・血管の除去を行いながら大腿動脈を大きく除去した。処置部位の止血を確認した後、生理食塩水にて処置部位を洗浄し、処置部位を縫合した。
作製した下肢虚血モデルについて、レーザードップラー血流計を用い、処置肢(右肢)と未処置肢(左肢)の血流状態を測定することにより、下肢虚血処置が成功しているか、又その後の血管新生(血流回復)が進行しているかどうかの確認を行った。
【実施例】
【0067】
用いたレーザードップラー血流計はMoorLDI(Moor社)を用い、測定時にはマウスをネンブタールで麻酔、同時に肢裏面を37℃の保温プレート上で保温し、血流測定を行った。測定した血流データの解析にはmoor LDI Software Version 5.1を用いた。処置肢(右肢)の血流の状態を、正常肢である未処置肢(左肢)の血流と比較することで、下肢虚血処置が成功しているか、又血流回復(血管新生)が生じているか、を判断した。
【実施例】
【0068】
N=21匹の結果として、処置後2日目では、[1]:「処置肢の血流Mean/未処置肢の血流Mean×100」であらわされる血流回復具合が、10%程度であり、下肢虚血処置が成功していることが分かった。 一方、処置後7日目では[1] であらわされる血流回復が25%程度に進行しており、下肢虚血後に自然治癒による血管の再生、つまり再生新生血管が生じていることが分かった(図1及び図2参照)。これにより、処置後7日目以降の動物を、以後「下肢虚血→新生血管」モデル動物として利用した。
【実施例】
【0069】
(2)R-Gelのヨードラベル(125I)
R-GelをクロラミンT法により125I標識した。
1mgのR-Gelを1mLのbuffer.A(0.5M リン酸緩衝液, 0.5M NaCl, pH7.5)に溶解させた。内200μLに5μLのNaI / NaOH溶液を添加し、更に100μLの0.2mg/mLクロラミンT / buffer. Aを添加して(クロラミンT:ナカライテスク)、ボルテックスで2分間混合した。その後、100μLの4mg/mL SMS(二亜硫酸ナトリウム)水溶液を添加し、ボルテックスで2分間混合した(混合液B)。
【実施例】
【0070】
予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化したPD-10カラム(GEヘルスケア社)へ混合液Bをアプライし、PBSで溶出した。溶出駅は500μLずつフラクションで回収した。回収したフラクション毎のγ線放射能量をオートウェルガンマシステム(ARC-380:Aloka社)にて測定することで、フラクション中の125Iを計測し、125IラベルされたR-Gelと遊離の125Iを分離した(図3)。
【実施例】
【0071】
これによって、R-Gelの125Iラベル化物を得た。(以後、これを125I-R-Gelと記す) 又、蛋白質の定量にはBCA法を用いている(BCA Protein Assay Reagent:ピアス社)。0.1mg/mL, 1,500万cpm/mLの125I-R-Gel / PBS溶液として得た。
【実施例】
【0072】
(3)125I-R-GelによるR-Gelの体内分布
DDYマウス(オス6週令:日本SLC)に、上記(2)で作製した125I-R-Gelを200μL尾静脈投与し、投与後、1時間、3時間、6時間、24時間の組織分布を、各臓器・組織毎のγ線放射能量、及び排泄された尿のγ線放射能量をオートウェルガンマシステム(ARC-380:Aloka社)で測定することで決定した。臓器・組織中のγ線放射能量は解剖によって直接に、又、血中γ線放射能量は心採血した200μL中のγ線放射能量から計算により、決定した。
【実施例】
【0073】
投与に当たっては、『125I-R-Gelをシリンジに採取した状態でのγ線放射能量』から『尾静脈投与後シリンジに残留したγ線放射能量』を引いた分を投与された125I-R-Gel量・γ線放射能量、とした。 尚、全血量は体重の8%重量であるとし、計算した。甲状腺に蓄積した125I-R-Gelは投与量の1%以下であり、遊離の125Iはほぼ存在せず、125IとR-Gelの結合は外れていなかった。
【実施例】
【0074】
排泄尿中のγ線放射能量を除いた、全ての臓器・組織のγ線放射能量を加算した物を『125I-R-Gelの体内残存量』とし、それを投与されたγ線放射能量で除算した物を『125I-R-Gelの体内残存率』とした。
【実施例】
【0075】
その結果、125I-R-Gelは投与後24時間後でも40%以上が生体内に残存していることが分かった(図4)。PM Van Hagenらは、『Evaluation of a radiolabelled cyclic DTPA-RGD analogue for tumor imaging and radionuclide therapy. Int. Journal of Cancer 2000;90:186-198』において、環状RGDペプチド(cyclic-RGDyK)が投与24時間後には、85%以上が尿排泄で回収される、つまり体内残存量は15%以下であることを示しており、R-Gelが高い体内滞在性を有していることが分かった。
【実施例】
【0076】
また、125I-R-Gelの血中クリアランスを%ID(percentage of the Injected Dose)で表す血中量で測定すると、投与後一定時間における血中量(%ID)は、1時間で17.5±1.5%、3時間で7.9±0.6%、6時間で5.6±1.0%、24時間で1.7±0.3%(Average±S.D.で表示)であった(図5)。RGDペプチドや環状RGDペプチド、そのアナログは体内からの急速に排泄され、迅速な血中クリアランスを示すことに比べ、R-Gelが高い血中滞在性を示すことが分かった。環状RGDの血中クリアランスとしては、例えば環状RGD(cylclic-RGDfK)のtetramericなペプチド構成物である64Cu-DOTA-E{E[cyclic-(RGDfK)]2}2では、血中量が、投与30分後で0.61±0.01%、4時間後で0.21±0.01%であり、血中クリアランスが非常に早いことがWu Y, Zhang X, Xiong Z, et al.らによって、『microPET imaging of glioma αVβ3-integrin expression using 64Cu-labeled tetrameric RGD eptide. J Nucl Med 2005;46:1707-18.』で示されている。上記結果により、ドラックデリバリー剤として有用な「良好な血中滞在性」が先行技術と比較して優れていることが分かる。
【実施例】
【0077】
(4)「下肢虚血→新生血管モデル」で新生血管部位への集積
上記(1)で作製した「下肢虚血→新生血管モデル」について、上記(2)で作製した125I-R-Gelを200μL尾静脈投与し、投与後、3時間、24時間の組織分布を、各臓器・組織毎のγ線放射能量、及び排泄された尿のγ線放射能量をオートウェルガンマシステムで測定することで決定した。臓器・組織中のγ線放射能量は解剖によって直接に、又、血中γ線放射能量は心採血した200μL中のγ線放射能量から計算により、決定した。
【実施例】
【0078】
投与に当たっては、『125I-R-Gelをシリンジに採取した状態でのγ線放射能量』から『尾静脈投与後シリンジに残留したγ線放射能量』を引いた分を投与された125I-R-Gel量・γ線放射能量、とした。 尚、全血量は体重の8%重量であるとし、計算した。甲状腺に蓄積した125I-R-Gelは投与量の1%以下であり、遊離の125Iはほぼ存在せず、125IとR-Gelの結合は外れていなかった。
【実施例】
【0079】
また、個体における血流回復をレーザードップラー血流計で測定することにより、血流回復の程度と、「新生血管部位」への125I-R-Gel集積程度を比較した。
【実施例】
【0080】
更に、比較検討の為、牛骨由来のアルカリ処理ゼラチン(以後、動物ゼラチンと呼称する)を、R-Gelと同重量濃度で上記(2)と同様の処理をすることで、125I-動物ゼラチンを用意した。これを125I-R-Gelと同様に、「下肢虚血→新生血管モデル」に投与、125I-R-Gelと同様にして、その体内分布を測定した。
【実施例】
【0081】
「下肢虚血→新生血管モデル」において、“肢”と標記する場合、肢の付け根から爪先までの大腿部を含む、主に下肢虚血モデルで大腿動脈除去処置を施す部分に相当する領域を指すものとする。『処置肢である右肢への蓄積量』÷『未処置肢である左肢の蓄積量』×100で表す、左肢(正常肢)蓄積量に対する右肢(新生血管肢)蓄積量の割合で、新生血管部位への蓄積を評価した(以後、この値を“新生血管部位への蓄積比”と呼称する)。
【実施例】
【0082】
血流回復の未熟な状態では、動物ゼラチン、R-Gelともに、左肢(正常肢)に対して右肢(新生血管肢)に有意な蓄積が認められた。一方、血流回復がより進行した状態、つまり、より血管新生の進行した状態においては、動物ゼラチンの右肢蓄積は正常な左肢蓄積と同程度で有意差がなかった。しかし、R-Gelの右肢蓄積は正常な左肢蓄積よりも有意に高かった。 より具体的には、血流回復15%の個体群では、動物ゼラチン、R-Gelともに“新生血管部位への蓄積比”が160%程度であった。又、血流回復33%の個体群では、R-Gelの“新生血管部位への蓄積比”は125%、動物ゼラチンの“新生血管部位への蓄積比”は119%であり、ともに新生血管部位への蓄積が認められた。血流回復50%の個体群では、R-Gelの“新生血管部位への蓄積比”が125%、動物ゼラチンの“新生血管部位への蓄積比”が97%であった。
上記結果により、動物ゼラチン及びR-gelの新生血管部位への蓄積が確認された。
【実施例】
【0083】
(5)bFGF誘導皮下新生血管モデルの作製
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有したゼラチンゲルを、マウス背部皮下に埋め込み、皮下新生血管モデルを作製した。ゼラチンゲルはメドジェルpI5(メドジェル社)を使用し、EOG滅菌処理を施した2mgのメドジェルpI5に、50μgのbFGFを水溶液にして無菌化で添加、4℃で一晩膨潤したものをbFGFゲルとして用いた。
【実施例】
【0084】
作製したbFGFゲルをC57BL6マウス(オス、6週令:日本SLC)の背部、皮下に埋め込んだ。埋め込み位置はマウスの背部、正中線上の尻尾から1.5cm程度の位置とした。これにより、埋め込み後、1週間後にマウスの背部皮下で新生血管が誘導されたことを確認した。以後、この埋め込み後1週間程度で皮下に新生血管が誘導されたモデルを「bFGF誘導皮下新生血管モデル」と呼称する。実験法は『Y Tabata, Y Ikada. Vascularization effect of basic fibroblast growth factor released from gelatin hydrogels with different biodegradabilities. Biomaterials. 1999;20:2169-2175』に準拠した手法で行った。
【実施例】
【0085】
(6)R-Gel、cyclo-RGDfK、PSK、動物ゼラチンのCy7ラベル
R-Gel、豚皮膚由来のゼラチン(以後、PSKと呼称する)、動物ゼラチン、及びcyclo-RGDfK(AnaSpec, Inc.)について、蛍光色素Cy7ラベルを施した物を作製した。
Cy7としては、GEヘルスケア社のCy7 mono-reactive NHS esterを使用した。Cy7 NHS esterは10mg/mL濃度でDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解した。 10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、等モル量のR-Gelを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。又、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと1mgのR-Gelを同様に反応させた物も作製した。得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルしたR-Gel(以後、Cy7-R-Gelと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-R-Gelを得た。
【実施例】
【0086】
同様にして、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、等モル量のPSKを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。又、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと1mgのPSKを同様に反応させた物も作成した。 得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルしたPSK(以後、Cy7-PSKと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-PSKを得た。
【実施例】
【0087】
同様にして、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、等モル量の動物ゼラチンを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。又、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと1mgのPSKを同様に反応させた物も作成した。 得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルした動物ゼラチン(以後、Cy7-動物ゼラチンと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7-動物ゼラチンを得た。
【実施例】
【0088】
同様にして、10μLのCy7 NHS ester / DMSOと、等モル量のcyclo-RGDfKを0.1M Sodium Carbonate buffer, pH 9.3中で混合し、遮光状態、室温で1時間反応させた。得られた反応物は、予めPBS(リン酸緩衝液)で平衡化しておいたPD-10カラムにアプライし、十分量のPBSで溶出を行った。溶出液の蛍光量を測定しながら、Cy7ラベルしたcyclo-RGDfK (以後、Cy7- cyclo-RGDfKと記す)とCy7の未反応物を分離し、Cy7- cyclo-RGDfKを得た。
【実施例】
【0089】
(7)bFGF誘導皮下新生血管モデルで新生血管イメージング
上記(5)で作製したbFGF誘導皮下新生血管モデルに対し、Cy7-R-Gel、あるいはCy7-PSK、あるいはCy7-cyclo-RGDfKを投与し、マウス体外からの蛍光イメージング実験を行った。投与量は200μL、投与経路は尾静脈投与で行った。
【実施例】
【0090】
蛍光シグナル検出及び測定・画像化にはルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)を使用した。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。 画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。
【実施例】
【0091】
その結果、Cy7-R-Gel、Cy7-PSK、Cy7-cyclo-RGDfKを用いて、bFGF誘導皮下新生血管モデルの新生血管部位を体外からイメージングすることに成功した(図6:なお、可視光画像と蛍光画像は重ね合わせて表示し、蛍光強度をカラーで色分けすることが可能であるが、本明細書においては、白黒画像で認識可能とするため、あえて可視光画像と蛍光画像を分けて記載した)。
【実施例】
【0092】
同時に、新生血管部位の蛍光強度を経時的に測定し、その推移を示した。投与後1時間の際の集積蛍光強度を100とした時、その値が経時的にどのように変化するかを表した(図7)。その結果、Cy7-cyclo-RGDfKよりもCy7-R-Gelは新生血管部位からの消失が早いことを示し、シグナル検出後には新生血管部位からの迅速なシグナル消失が求められるイメージング剤としての利用に適していることも示した。
【実施例】
【0093】
(8)cyclo-RGDfK事前投与による、新生血管部位へのR-Gel集積阻害
R-Gelによる新生血管部位集積が環状RGDペプチドcyclo-RGDfKと同様のメカニズムによるターゲティングであるかを評価する為、cyclo-RGDfKの事前大量投与によりR-Gelの集積阻害が生じるか、検討を実施した。ラベル化していないcyclo-RGDfKを超純水に1mg/mL濃度で溶解し、それを尾静脈投与によって100μL投与した後、30分後にCy7-R-Gelを尾静脈投与によって100μL投与した。比較としてcyclo-RGDfKの代わりにPBS(リン酸緩衝液)を尾静脈投与によって100μL投与した後、30分後にCy7-R-Gelを尾静脈投与によって100μL投与した。
【実施例】
【0094】
投与後、経時的に新生血管部位の蛍光強度を測定した。投与後、1時間で測定した結果、PBSを投与した群では、蛍光強度が98063583±1200251(平均±S.D.)であったのに対して、cyclo-RGDfKを投与した群では、蛍光強度が81431011±1373625(平均±S.D.)であり、その蛍光強度は有意に低かった。又、同様に投与3時間後では、PBSを投与した群の蛍光強度が88124139±3438695(平均±S.D.)、cyclo-RGDfKを投与した群の蛍光強度が60269975±1267782(平均±S.D.)、投与から24時間後では、PBSを投与した群の蛍光強度が22196881±2549892(平均±S.D.)、cyclo-RGDfKを投与した群の蛍光強度が12763810±1927458(平均±S.D.)であり、いずれの時間においても、cyclo-RGDfKを投与しておいた群の蛍光強度は、PBSを投与しておいた群に比べて、有意に低かった(t<0.05)(図8)。【0095】
これにより、cyclo-RGDfKの事前大量投与がR-Gelの血管集積効果を阻害することが示され、R-Gelの血管集積メカニズムはcyclo-RGDfKなどと同様のメカニズムによるものであることを示した。
【実施例】
【0096】
(9)担癌動物モデルの作製
使用動物: BALB/cマウス メス 6週令
移植癌細胞: Colon-26(BALB/cマウス結腸癌由来細胞)
Homograftモデルである。
【実施例】
【0097】
腫瘍保持動物モデルとして、担癌動物を作製した。使用動物はBALB/cマウス(メス・6週令:日本SLC)を用いた。腫瘍は癌細胞の同種移植Homograftモデルによって作製した。使用した癌細胞はColon-26(BALB/cマウス結腸癌由来の細胞)を用い、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地中で大量培養を実施した。培養にはT-225フラスコを用いた。増殖した癌細胞をEDTA含有0.25%trypsinを用いてフラスコ底面から剥離した後、遠心によって、培地上清を除去、PBS(リン酸緩衝液)へと溶液置換を行い、その後、細胞計数盤によって細胞濃度を計測した。最終的に、Colon-26細胞がPBS中に1×106cells/mL存在するように希釈した。
【実施例】
【0098】
得られたColon-26細胞液をBALB/cマウス(メス6週令)の左肢皮下へ皮下投与の要領でシリンジを用いて100μL(=1×105cells)埋め込み移植を行った。 移植後、約12日程度で~100mm3サイズの腫瘍が形成された。これを腫瘍動物、担癌動物として、以後の実験に使用した。以後、この動物を担癌動物と表記する。
【実施例】
【0099】
(10)R-Gelによる担癌動物の腫瘍部位ならびに腫瘍性新生血管部位のイメージング
上記(6)で作製したCy7-R-Gel、又はCy7-動物ゼラチンを、上記(9)で作製した担癌動物へ、尾静脈投与により200μL投与し、その体外からの蛍光イメージング実験を行った。
【実施例】
【0100】
蛍光シグナル検出及び測定・画像化にはルミノ・イメージアナライザーLAS5000(富士フイルム試作品)を使用した。可視光画像と蛍光画像を同時に撮像し、両画像の重ねあわせを行うことで蛍光を発する部位を同定した。蛍光画像の撮像に当たっては、光源に落射IR光源を使用し、フィルタには785nmのバンドパスフィルタを使用した。 画像解析・シグナル強度の定量にはソフトウェアMultiGauge(富士フイルム)を使用した。
【実施例】
【0101】
その結果、Cy7-R-Gel、Cy7-動物ゼラチンを用いて、担癌動物の腫瘍性新生血管部位、及び腫瘍部位を体外からイメージングすることに成功した(図9:なお、可視光画像と蛍光画像は重ね合わせて表示し、蛍光強度をカラーで色分けすることが可能であるが、本明細書においては、白黒画像で認識可能とする為、あえて可視光画像と蛍光画像を分けて記載した)。 また、Cy7-R-GelはCy7-動物ゼラチンよりも有意に腫瘍部位・腫瘍性新生血管部位への集積が高かった。
【実施例】
【0102】
同時に、上記(8)で行った実施例と同様にして、本担癌動物においても、Cy7-R-Gel投与前に十分量のcyclo-RGDfKを事前投与し、30分後にCy7-R-Gelを投与してイメージング実験を行った。その結果、図9及び図10に示すように、R-Gelの腫瘍性新生血管部位・腫瘍部位への集積が減少した。
【実施例】
【0103】
(11)細胞接着性試験(αVβ3インテグリンとの相互作用)
R-Gelの新生血管集積メカニズムの詳細を得る為、R-Gelの血管内皮細胞への細胞接着性試験、及びαVβ3インテグリンとの相互作用を調べる為の実験を行った。
使用した血管内皮細胞としては、HUVEC(正常ヒト臍帯静脈内皮細胞:タカラバイオ社)を用いた。該細胞はその細胞表面に多数のαVβ3インテグリンを恒常的に発現していることが知られており、該細胞との細胞接着性を試験することは、新生血管で活性化される血管内皮細胞への結合性を明らかにするとともに、新生血管部位で高発現されることが報告されているαVβ3インテグリンへの結合性を明らかにすることにもなる。
【実施例】
【0104】
HUVECの培養には、内皮細胞基本培地-2(無血清)(EBMTM-2)及び内皮細胞培地キット-2(2% FBS)(EGMTM-2 BulletKitTM)を用いた(タカラバイオ社)。継代時、及び細胞剥離時には、EDTA含有0.25%trypsin溶液を使用した。T-75フラスコにて十分量まで増殖させたHUVECをフラスコ底面から剥離し、遠心によって上清を除去した。その後、上記内皮細胞培地キット-2入りの内皮細胞基本培地-2で洗浄し、再度遠心によって上清を除去、内皮細胞培地キット-2を含まない内皮細胞基本培地-2に0.1%BSAを加えた溶液を添加・懸濁し、細胞計数盤にて生細胞の数をカウント、最終細胞濃度を50万cells/mLに調整した。
【実施例】
【0105】
一方、細胞接着性試験の為、各種蛋白質(R-Gel、フィブロネクチン、Fibrogen社製コラーゲン(以後Fibrogenと記載する)、豚皮由来ゼラチン(以後、PSKと記載する)、牛骨由来ゼラチン(以後、G1917Pと記載する))でコーティングしたプレートの準備を行った。PBS(リン酸緩衝液)に1mg/mL濃度でR-Gelを溶解させ、R-Gel溶解液を作製した。PBS(リン酸緩衝液)に1mg/mL濃度でフィブロネクチンを溶解させ、フィブロネクチン溶解液を作製した。PBS(リン酸緩衝液)に1mg/mL濃度でFibrogenを溶解させ、Fibrogen溶解液を作製した。PBS(リン酸緩衝液)に1mg/mL濃度でPSKを溶解させ、PSK溶解液を作製した。PBS(リン酸緩衝液)に1mg/mL濃度でG1917Pを溶解させ、G1917P溶解液を作製した。上記、溶解液は随時PBSで希釈しプレート添加に使用した。
【実施例】
【0106】
プレートには、Non-treated 96穴プレート(IWAKI)を使用した。Non-treated 96穴プレートに蛋白質濃度が0.02, 0.1, 0.2, 2.0μg/wellとなるように、PBSで上記溶解液を希釈した溶液を50μL/wellで添加した。その後、37℃で2時間インキュベート、溶液を除去した後に全てのwellに100μLのPBSを添加・洗浄し、PBSを除去(洗浄工程)した。該洗浄工程を3回行った。 これによって、コーティング蛋白質及びコーティング濃度の異なるコーティングプレートを得た。
【実施例】
【0107】
本コーティングプレートに、上記で用意したHUVEC懸濁液(50万cells/mL)を100μLずつ播種した。37℃で1時間インキュベートした後、培地を吸引除去、100μLのPBSを添加して洗浄、PBSは吸引により除去した(PBS洗浄)。本PBS洗浄を3回行い、PBSを除去した状態のプレートを得た。
【実施例】
【0108】
得られたプレート上の細胞数定量には、DNA assayを使用した。得られたプレートのwellにそれぞれ100μLのSDS溶液(20mgのSDSを100mLの1×SSC溶液に溶解したもの:1×SSC溶液とは17.999gのNaClと8.823gのNa3Citrateを2Lの超純粋に溶解したものである)を加え、37℃で1時間静置する。 得られた個々の溶液全量をそれぞれ96穴ブラックプレート(Non-treated)へ移し、100μLのHoechst溶液(Hoechst 33258を20μLと1×SSC溶液20mLを混合したもの)を全てのwellに添加し、プレートリーダーにて蛍光強度を測定した。用いたプレートリーダーはGemini EM(モレキュラーデバイス社)、励起波長355nm、測定波長460nmで蛍光強度を測定した。検量線は、細胞数を調整したHUVEC細胞の懸濁液で作成した。
【実施例】
【0109】
得られた細胞接着性試験(DNA assay)の結果を図11・図12に示した。これによって、R-Gelはフィブロネクチン、Fibrogen、PSK、G1917Pと比較してHUVECへの細胞接着が良いことを示した。又、R-Gelコーティングプレート上での細胞接着、Fibrogenコーティングプレート上での細胞接着、PSKコーティングプレート上での細胞接着、G1917Pコーティングプレート上での細胞接着の様子を図13に写真で示した。R-Gelでコーティングされたプレートでは、接着細胞数が多いことが視覚的にも確認出来る。同時に、本写真から、個々接着した細胞一つの面積をソフトウェアImageJで求めた。その結果を、図14に示す。これにより、R-GelはFibrogen、PSK、G1917Pと比較して、有意に細胞一つの面積が大きいことが示されたため、R-GelとHUVECの間には他の物よりも強い結合が生じていることが分かった。
【実施例】
【0110】
(12)HUVEC接着でαVβ3インテグリン阻害実験
R-GelとHUVECの結合が、αVβ3インテグリンを介した結合であることを確認するため、上記(7)で行ったR-Gelの細胞接着性試験について、αVβ3インテグリンを抗αV抗体によってブロックすることで、当該接着が抑制されるかの実験を行った。
【実施例】
【0111】
細胞接着実験の詳細は、上記(7)と同様にして行った。コーティング濃度は0.2μg/well、R-Gelコーティングプレートとフィブロネクチンコーティングプレートで実験を行った。調整したHUVEC細胞に対して、十分濃度の抗ヒトαVモノクローナル抗体(MAB1980:CHEMICON)と37℃で30分インキュベートしたものと、同量のPBSを添加し37℃で30分インキュベートしたもの、をそれぞれ抗体処理HUVEC、未処理HUVECと表記した。細胞播種は上記、抗体処理HUVECあるいは未処理HUVECが100万cells/mLとなるように調整した液を100μL/wellでプレートへ添加することで実施した。 細胞接着時間は上記(7)と同様に37℃で1時間とした。 細胞数の定量も上記(7)と同様にして、DNA assayで行った。
【実施例】
【0112】
得られた結果を、図15に示した。これによって、抗ヒトαV抗体によって、R-Gel及びフィブロネクチンのHUVECへの細胞接着が有意に抑制されることが分かった。フィブロネクチンについては、HUVECへ対して、αVβ3インテグリンを介して結合することが知られており、本実施例において、R-Gelでもフィブロネクチンと同様にαVβ3インテグリンを介してHUVECへ結合することが示された。
【実施例】
【0113】
これは、R-GelがαVβ3インテグリンと結合することを示しており、上記(7)と(8)の結果は、R-GelがαVβ3インテグリンと良い結合を示すこと、その結合が他のコラーゲン・ゼラチンよりも強いこと、及びR-Gelが血管内皮細胞へ良い結合を示すこと、その結合が他のコラーゲン・ゼラチンよりも強いことを示しており、新生血管への高い結合力・特異性を細胞・分子レベルで示した結果である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14