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明細書 :認識信号生成素子及び素子認識システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-032676 (P2021-032676A)
公開日 令和3年3月1日(2021.3.1)
発明の名称または考案の名称 認識信号生成素子及び素子認識システム
国際特許分類 G01N  29/02        (2006.01)
G01N  29/07        (2006.01)
FI G01N 29/02 501
G01N 29/07
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2019-152625 (P2019-152625)
出願日 令和元年8月23日(2019.8.23)
発明者または考案者 【氏名】近藤 淳
出願人 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査請求 未請求
テーマコード 2G047
Fターム 2G047AA01
2G047AA05
2G047BC02
2G047CB03
2G047GB17
2G047GB21
2G047GF05
2G047GG29
2G047GG30
要約 【課題】構成を複雑化させることなく複数の素子間の精度の高い識別を可能にすること。
【解決手段】SAWセンサ2は、平面形状を有する圧電基板3と、圧電基板3の表面3a上に形成され、所定周波数の交流信号に応じて表面3a上に弾性表面波を励振させるための励振電極4と、励振電極4に電気的に接続され、交流信号を受信し、弾性表面波に対する反射信号を外部に送信するアンテナ8と、表面3a上に励振電極4から分離して形成され、弾性表面波を励振電極4に向けて反射させる第1反射電極5と、表面3a上において励振電極4と第1反射電極5との間に形成された質量負荷効果を発生させる質量負荷膜7と、センサ素子10に電気的に接続され、表面3a上に励振電極4から分離して形成され、弾性表面波を励振電極4に向けて反射させる第2反射電極6と、を備える。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
平面形状を有する圧電体と、
前記圧電体の表面上に形成され、外部から受信した所定周波数の交流信号に応じて前記表面上に弾性表面波を励振させるための励振電極と、
少なくとも前記励振電極に電気的に接続され、前記交流信号を受信して前記弾性表面波を生じさせ、前記弾性表面波に応じて生じる信号を外部に送信する少なくとも1つのアンテナと、
前記表面上に励振電極から分離して形成され、前記弾性表面波を受けて前記信号を生じさせる第1の電極と、
前記表面上において前記励振電極と前記第1の電極との間に形成された薄膜と、
センサに電気的に接続された電極であって、前記表面上に励振電極から分離して形成され、前記弾性表面波を前記励振電極から受けて前記信号を生じさせる第2の電極と、
を備える認識信号生成素子。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記弾性表面波を前記励振電極に向けて反射させ、
前記少なくとも1つのアンテナは、反射された前記弾性表面波によって前記励振電極で生じる反射信号を外部に送信する、
請求項1記載の認識信号生成素子。
【請求項3】
前記薄膜は、前記励振電極と前記第1の電極との配列方向に沿って矩形状をなしている、
請求項1又は2記載の認識信号生成素子。
【請求項4】
前記励振電極は、噛み合わせて配置された2つの櫛型の電極を有し、
前記薄膜は、前記励振電極と前記第1の電極との配列方向に垂直な方向において、前記2つの櫛型の電極の噛み合わせ部分より広くなるように形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の認識信号生成素子。
【請求項5】
前記薄膜は、金属あるいは誘電体材料を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の認識信号生成素子。
【請求項6】
前記薄膜は、金、銀、銅、アルミニウム、白金、あるいは、金、銀、銅、アルミニウム、及び白金のうちのいずれかの合金を含む、
請求項5に記載の認識信号生成素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の認識信号生成素子と、
前記認識信号生成素子に向けて前記交流信号を送信し、前記弾性表面波に応じて前記第1の電極及び前記第2の電極によって生じる第1の信号及び第2の信号のそれぞれを前記少なくとも1つのアンテナを経由して受信し、前記交流信号と前記第1の信号との間の位相差あるいは時間差を基に前記認識信号生成素子を識別し、前記第2の信号を用いてセンシングする送受信装置と、
を備える素子認識システム。
【請求項8】
前記送受信装置は、前記位相差あるいは前記時間差とに基づいて、前記薄膜の材料、前記励振電極と前記第1の電極との配列方向における前記薄膜の長さ、前記薄膜の厚さ、及び前記弾性表面波の励振周波数のいずれかを判定することにより、前記認識信号生成素子を識別する、
請求項7記載の素子認識システム。
【請求項9】
前記認識信号生成素子を複数備え、複数の前記認識信号生成素子の間で、前記薄膜の材料、前記薄膜の前記長さ、前記薄膜の厚さ、及び励振周波数のいずれかの値が異なっている、
請求項8記載の素子認識システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
実施形態は、弾性表面波を利用した認識信号生成素子及び素子認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用したセンシング技術が開発されており、その技術を利用したデバイスとして電源不要のパッシブSAWセンサが知られている。このパッシブSAWセンサは、半導体デバイスとは違ってDCバイアスは必要とせず、所望の周波数の高周波信号のみで駆動できる。一方で、複数のパッシブSAWセンサを用いて同時にセンシングを行う場合には、個々のセンサをいかに識別するかが問題となる。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載のSAWセンサでは、圧電基板上に検出用弾性表面波に加えて識別用弾性表面波を励起する識別用弾性表面波素子を有している。この識別用弾性表面波素子は、識別周波数に対する識別用弾性表面波の反射の周波数特性を変えたり、識別用弾性表面波の伝搬距離を変えたりすることでSAWセンサの識別を可能にしている。
【0004】
また、下記非特許文献1に記載のSAWセンサでは、圧電基板上に設けられ、アンテナを経由して受信した高周波信号を基に弾性表面波を励起する励起電極と、圧電基板上にその励起電極から特定の距離で分離して配置された複数の反射電極とが用いられている。このような構成により、複数の反射電極の配置パターンに応じた反射信号がアンテナを経由して受信されるため、SAWセンサの識別が可能となる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2019-66206号公報
【0006】

【非特許文献1】LeonhardReindl et al., “Theory and Application of Passive SAW Radio Transponders as Sensors”, IEEE TRANSACTIONS ON ULTRASONICS, FERROELECTRICS, AND FREQUENCY CONTROL,1998年9月, Vol.45,No.5,p.1281-1292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、SAWセンサにアンテナを設け、外部の送受信装置から複数のSAWセンサに向けて無線で高周波信号を送信し、送受信装置において複数のSAWセンサからの信号を無線で受信することも行われている。しかしながら、上述した非特許文献1に記載のSAWセンサの構成では、複数の反射電極間の多重反射が生じてしまうため実際の反射信号には多重反射によるダミー信号も含まれてしまう結果、SAWセンサの識別の精度が低下してしまう場合がある。
【0008】
また、上述した特許文献1に記載のSAWセンサの構成においても、多くのSAWセンサ間の識別を可能にするためには、識別用弾性表面波素子に設ける反射電極の周波数特性を様々設定したり、識別用弾性表面波素子における反射電極の位置あるいは反射電極に接続するインピーダンスを様々に設定する必要がある。その結果、多くのSAWセンサを識別可能にするためには、識別用の素子構造が複雑化する傾向にある。
【0009】
そこで、実施形態は、上記課題に鑑みて為されたものであり、構成を複雑化させることなく複数の素子間の精度の高い識別を可能にする認識信号生成素子及び素子認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一側面にかかる認識信号生成素子は、平面形状を有する圧電体と、圧電体の表面上に形成され、外部から受信した所定周波数の交流信号に応じて表面上に弾性表面波を励振させるための励振電極と、少なくとも励振電極に電気的に接続され、交流信号を受信して弾性表面波を生じさせ、弾性表面波に応じて生じる信号を外部に送信する少なくとも1つのアンテナと、表面上に励振電極から分離して形成され、弾性表面波を受けて信号を生じさせる第1の電極と、表面上において励振電極と第1の電極との間に形成された薄膜と、センサに電気的に接続された電極であって、表面上に励振電極から分離して形成され、弾性表面波を励振電極から受けて信号を生じさせる第2の電極と、を備える。
【0011】
上記形態の認識信号生成素子によれば、圧電体上の励振電極に外部からアンテナを介して所定周波数の交流信号が印加されることにより、圧電体上において励振電極から弾性表面波が励起され、その弾性表面波が第1の電極及び第2の電極に向けて圧電体上を伝搬される。そして、弾性表面波を第1の電極が受けることで第1の信号が生成され、第1の信号がアンテナを経由して外部に送信される一方、弾性表面波を第2の電極が受けることで第2の信号が生成され、第2の信号が励振電極及びアンテナを経由して外部に送信される。第2の電極にはセンサが電気的に接続されているので、第2の信号を受信した外部の送受信装置により、第2の信号を用いた所望の測定変数のセンシングが可能にされる。それに加えて、励振電極と第1の電極との間の圧電体上に薄膜が設けられているので、外部の送受信装置が薄膜の特性に応じた遅延時間の第1の信号を受信することができ、外部の送受信装置におけるその遅延時間に基づいたセンサ素子の識別が可能となる。これにより、識別用の弾性表面波を発生させるための構成を複雑化させることなく、複数のセンサ素子間の精度の高い識別を実現できる。
【0012】
ここで、第1の電極は、弾性表面波を励振電極に向けて反射させ、少なくとも1つのアンテナは、反射された弾性表面波によって励振電極で生じる反射信号を外部に送信する、こととしてもよい。このような構成とすれば、弾性表面波が第1の電極で反射されて反射信号が生成され、反射信号が励振電極及びアンテナを経由して第1の信号として外部に送信される。この場合も外部の送受信装置における第1の信号の遅延時間に基づいたセンサ素子の識別が可能となり、アンテナの個数を削減できて構成の簡素化が可能となる。
【0013】
また、薄膜は、励振電極と第1の電極との配列方向に沿って矩形状をなしている、こととしてもよい。こうすれば、励振電極から発生し第1の電極に向けて伝搬する弾性表面波に対して、質量負荷効果を安定して与えることができ、外部装置によるセンサ素子の識別が安定化される。
【0014】
また、励振電極は、噛み合わせて配置された2つの櫛型の電極を有し、薄膜は、励振電極と第1の電極との配列方向に垂直な方向において、2つの櫛型の電極の噛み合わせ部分より広くなるように形成されている、こととしてもよい。この場合、励振電極から発生し第1の電極に向けて伝搬する弾性表面波に対して、質量負荷効果を効率的に与えることができ、外部装置によるセンサ素子の識別の精度をより高めることができる。
【0015】
また、薄膜は、金属あるいは誘電体材料を含むものであってもよい。この場合には、薄膜による質量負荷効果を安定化することができ、外部装置によるセンサ素子の識別を安定化することができる。
【0016】
また、薄膜は、金、銀、銅、アルミニウム、白金、あるいは、金、銀、銅、アルミニウム、及び白金のうちのいずれかの合金を含むものであってもよい。この場合、圧電体上に薄膜を容易に形成することができる。
【0017】
あるいは、本発明の他の側面の素子認識システムは、上述した認識信号生成素子と、認識信号生成素子に向けて交流信号を送信し、弾性表面波に応じて第1の電極及び第2の電極によって生じる第1の信号及び第2の信号のそれぞれを少なくとも1つのアンテナを経由して受信し、交流信号と第1の信号との間の位相差あるいは時間差を基に認識信号生成素子を識別し、第2の信号を用いてセンシングする送受信装置と、を備える。
【0018】
上記形態の素子認識システムによれば、第2の信号を受信した外部の送受信装置により、第2の信号を用いた所望の測定変数のセンシングが可能にされる。それに加えて、外部の送受信装置が薄膜の特性に応じた遅延時間の第1の信号を受信することができ、外部の送受信装置が交流信号と第1の信号との間の位相差あるいは時間差を基に、第1の信号の遅延時間を評価することができる。そして、外部の送受信装置において、遅延時間の評価結果を基に個々の認識信号生成素子の識別が可能となる。その結果、識別用の弾性表面波を発生させるための構成を複雑化させることなく、複数のセンサ素子間の精度の高い識別を実現できる。
【0019】
ここで、送受信装置は、位相差あるいは時間差とに基づいて、薄膜の材料、励振電極と第1の電極との配列方向における薄膜の長さ、薄膜の厚さ、及び弾性表面波の励振周波数のいずれかを判定することにより、認識信号生成素子を識別する、ことが好ましい。かかる構成によれば、薄膜の材料、長さ、厚さ、あるいは、認識信号生成素子における励振周波数のいずれかを様々に設定した複数の認識信号生成素子を用いてセンシングを行う場合に、複数の認識信号生成素子を精度よく識別することができる。加えて、認識信号生成素子において所望の特性の薄膜を容易に加工することができる。
【0020】
また、上記形態の素子認識システムは、認識信号生成素子を複数備え、複数の認識信号生成素子の間で、薄膜の材料、薄膜の長さ、薄膜の厚さ、及び励振周波数のいずれかの値が異なっている、ことも好ましい。このように、様々な弾性表面波の伝搬特性を有する認識信号生成素子を複数備える構成によれば、複数の認識信号生成素子をより精度よく識別することができる。
【発明の効果】
【0021】
実施形態によれば、構成を複雑化させることなく複数の素子間の精度の高い識別を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】好適な実施形態にかかるセンシングシステム100の概略構成を示す図である。
【図2】図1のSAWセンサ2を圧電基板の表面側から見た平面図である。
【図3】図2のSAWセンサ2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図1の送受信装置1が検出する基準信号及び反射信号の時間波形WF0,WF1のイメージを示すグラフである。
【図5】変形例に係るSAWセンサ2Aを圧電基板の表面側から見た平面図である。
【図6】変形例に係るSAWセンサ2Bを圧電基板の表面側から見た平面図である。
【図7】変形例に係るSAWセンサ2Cを圧電基板の表面側から見た平面図である。
【図8】図7のSAWセンサ2Cから検出される反射信号の時間波形WF2,WF3のイメージを示すグラフである。
【図9】変形例に係るSAWセンサ2Dを圧電基板の表面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る認識信号生成素子及び素子認識システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。

【0024】
実施形態にかかるセンシングシステム100に含まれる弾性波デバイスであるSAWセンサ2は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave: SAW)を利用して所定の測定パラメータ(測定変数)を検出するための装置である。この測定パラメータは、傾斜状態を示す数値、振動状態を示す数値、温度、湿度、圧力等であるが、特定のパラメータには限定されない。ここで、弾性表面波とは、弾性体の表面を伝搬する縦波と横波からなる波動である。

【0025】
図1には、本実施形態にかかる素子認識システムであるセンシングシステム100の概略構成を示している。同図に示すように、センシングシステム100は、無線で所定周波数の交流信号をSAWセンサ2との間で送受信可能に構成される送受信装置1と、送受信装置1から送信された交流信号を受信し、その交流信号に応じて反射信号を生成してその反射信号を送受信装置1に送信可能に構成される複数のSAWセンサ2を含んで構成される。反射信号は送受信装置1から送信された交流信号と同一周波数の交流信号である。送受信装置1とSAWセンサ2との間で送受信する交流信号の周波数は、特定の周波数には限定されないが、例えば、特定小電力帯の920MHz帯の周波数に設定される。これらの複数のSAWセンサ2のそれぞれは、本実施形態に係る認識信号生成素子を構成する。このようなセンシングシステム100によれば、送受信装置1と複数のSAWセンサ2との間が無線で接続されるので、有線で接続することが困難な複数の箇所を対象としたセンシングが可能とされる。センシングシステム100の用途としては、橋梁、トンネル、高速道路法面、建造物等の各種状態のセンシングが必要とされる建築・土木・防災分野のほか、車内、室内の環境センサの分野での利用が挙げられる。

【0026】
次に、SAWセンサ2の構成について説明する。図2は、SAWセンサ2を圧電基板の表面側から見た平面図、図3は、図2のSAWセンサ2のIII-III線に沿った断面図である。SAWセンサ2は、矩形平板状(平面形状)に形成された圧電基板(圧電体)3と、圧電基板3の表面3a上に形成された励振電極4、第1反射電極(第1の電極)5、第2反射電極(第2の電極)6、及び質量負荷膜(薄膜)7と、アンテナ8と、を備える。なお、ここで圧電基板3の表面3aは、弾性表面波が伝搬する伝搬面を示す。

【0027】
圧電基板3は、圧電効果によって弾性表面波を発生させる結晶体、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、水晶、ランガサイト系材料、等により構成されている。なお、圧電基板3は、縦波を含む弾性波を発生する基板、例えば、PZTなどの圧電セラミックス、又は、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等からなる圧電薄膜をガラス、シリコン等からなる基板の表面に全体的或いは部分的に積層したものでものであってもよい。また、圧電基板3は、圧電効果を生じる高分子基板であってもよい。なお、圧電効果とは、水晶等の結晶に力又は電場を加えた場合に、その力又は電場に応じた電圧又は歪が生じる現象である。

【0028】
励振電極4は、圧電基板3の表面3a上の一方の端部(図2における左端部)と他方の端部(図2における右端部)の間の中央部に設けられた一対の電極部材である。励振電極4は、圧電基板3に弾性表面波を励振するための電極であり、2つの櫛型のすだれ状電極(IDT:Interdigital Transducer)4a,4bによって構成されている。具体的には、2つのすだれ状電極4a,4bは、それぞれ、圧電基板3の一方の端部に垂直な方向に沿って直線状に延びる基部と、その基部から直交する方向に互いに平行に延びる複数の電極指とを有しており、2つのすだれ状電極4a,4bは、一方の電極指と他方の電極指とが圧電基板3の一方の端部に垂直な方向に交互に並ぶように配置されている。言い換えれば、2つのすだれ状電極4a,4bが噛み合った状態で形成されている。この励振電極4は、Al,Au,Cu,Cr,Ti,Pt等の金属単体、又はこれらの合金によって構成されており、フォトリソグラフィー、スパッタ法などにより圧電基板3の表面3aに形成される。また、励振電極4の一方のすだれ状電極4aは、アンテナ8に電気的に接続され、他方のすだれ状電極4bは接地されている。このような構成の励振電極4は、アンテナ8によって印加された交流信号に応じて、表面3a上に弾性表面波を励振する。励振電極4が励振可能な交流信号の周波数(励振周波数)は、2つのすだれ状電極4a,4bの形状によって所定の周波数範囲に限定される。すなわち、励振電極4は、表面3aの中央部から一方の端部に向かう方向と、表面3aの中央部からの他方の端部に向かう方向との二つの方向に伝搬する弾性表面波を生成する。

【0029】
アンテナ8は、励振電極4の一方のすだれ状電極4aに電気的に接続され、送受信装置1から交流信号を無線で受信し、その交流信号を電気信号に変換して励振電極4に印加する。また、アンテナ8は、交流信号を基に生成された弾性表面波に対する反射信号を、励振電極4を経由して電気信号として受け、その反射信号を無線信号に変換して送受信装置1に送信する。

【0030】
第1反射電極5は、圧電基板3の表面3a上の他方の端部(図2における右端部)において、励振電極4に対向するように励振電極4から分離して形成された導電部材であり、励振電極4によって生成された弾性表面波を受けてそれに対する反射波を生成するための反射器の役割を有する。具体的には、第1反射電極5は、表面3a上の他方の端部に沿って並列に延び、互いに一体化された複数の直線部5aを有する短絡型電極である。これらの直線部5aは、励振電極4を構成する2つのすだれ状電極4a,4bの電極指に対して、表面3a上の他方の端部に沿った方向における形成範囲が重なるように形成されている。なお、第1反射電極5は、励振電極4と同様に2つのすだれ状電極によって構成されていてもよい。第1反射電極5は、励振電極4と同様な金属単体あるいは合金によって構成され、励振電極4と同様な形成方法によって形成される。

【0031】
質量負荷膜7は、表面3a上において励振電極4と第1反射電極5との間に、励振電極4及び第1反射電極5から分離されて形成される矩形状の膜部材(薄膜)である。詳細には、質量負荷膜7は、励振電極4と第1反射電極5との配列方向(表面3a上の他方の端部に垂直な方向)に沿って延びており、その配列方向に垂直な方向における形成範囲が、励振電極4の2つのすだれ状電極4a、4bの電極指の噛み合わせ部分(電極指の重複部分)R1よりも広くなるように形成されている。この質量負荷膜7は、圧電基板3に質量負荷効果を発生させうる材料によって形成されており、金(Au)、銀(Ag)、銅(Au)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)等の金属、それらの金属のうちのいずれかを含む合金、あるいは、二酸化ケイ素(SiO)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を代表とする高分子系材料等の誘電体材料によって構成される。ここでいう「質量負荷効果」とは、圧電基板3上に付着する物質の質量に比例して圧電基板3における固有振動周波数を減少させる性質のことを示す。

【0032】
第2反射電極6は、圧電基板3の表面3a上の一方の端部(図2における左端部)において、励振電極4に対向するように励振電極4から分離して形成された電極部材であり、励振電極4によって生成された弾性表面波に対する反射波を生成するための反射器の役割を有する。具体的には、第2反射電極6は、励振電極4と同様な構成を有し、2つすだれ状電極6a,6bを有する。これらのすだれ状電極6a,6bは、励振電極4を構成する2つのすだれ状電極4a,4bの電極指と同一方向に伸びる電極指を有し、表面3a上の一方の端部に沿った方向における電極指の形成範囲が、励振電極4と重なるように形成されている。第2反射電極6は、励振電極4と同様な金属単体あるいは合金によって構成され、励振電極4と同様な形成方法によって形成される。

【0033】
さらに、これらのすだれ状電極6a,6bには、インピーダンス変化型のセンサ素子10の両端が電気的に接続されている。センサ素子10は、傾斜量、振動量、湿度、温度、圧力等の所定の測定パラメータを検出する素子であり、測定パラメータの変化に応じてインピーダンスが変化する性質を有する。例えば、振動量を検出するセンサ素子10は、振動発電素子とその振動発電素子の出力に応じてインピーダンスを変化させるバリアブルダイオード等を含んで構成される。なお、センサ素子10は、インピーダンス変化型のセンサに限定されるものではなく、電圧変化型、電流変化型、磁気変化型の他のタイプのセンサであってもよい。

【0034】
上記のような構成のSAWセンサ2においては、複数のSAWセンサ2の中から1つのSAWセンサ2を識別するための認識用伝搬路MP1と、測定パラメータの測定するための計測用伝搬路MP2とが構成される。すなわち、圧電基板3の表面3a上の励振電極4と第1反射電極5との間に認識用伝搬路MP1が形成され、圧電基板3の表面3a上の励振電極4と第2反射電極6との間に計測用伝搬路MP2が形成される。

【0035】
次に、センシングシステム100におけるSAWセンサ2の識別機能及び測定パラメータの検出機能について説明する。送受信装置1は、SAWセンサ2から送信された反射信号を基にした、SAWセンサ2の識別機能及び測定パラメータの検出機能を有している。

【0036】
まず、送受信装置1によるSAWセンサ2の識別機能について説明する。

【0037】
送受信装置1は、ユーザの指示等を契機とした所定のタイミングで、送受信装置1からSAWセンサ2に向けて交流信号が送信する。その結果、SAWセンサ2の励振電極4によって認識用伝搬路MP1と計測用伝搬路MP2の両方に弾性表面波が励起される。これに対して、第1反射電極5から励振電極4に向けて反射波(第1の信号)が発生するが、認識用伝搬路MP1における弾性表面波およびその反射波の伝搬速度は、質量負荷膜7によって生じる質量負荷効果の違いによって変化する。

【0038】
ここで、圧電基板3の材料をタンタル酸リチウム(128YX-LiTaO)と仮定した場合の弾性表面波の伝搬速度の質量負荷効果による変化量は、下記の式(1)によって与えられる。

【0039】
【数1】
JP2021032676A_000003t.gif


上記式(1)中、ΔV/Vは速度変化率、Vは非摂動時の弾性表面波の伝搬速度、hは質量負荷膜の厚さ、Pは圧電結晶の単位幅当たりのパワーフロー、ρ’は質量負荷膜の密度、λ’、μ’はラメの定数、νは弾性表面波の伝搬方向の粒子速度、νは弾性表面波の伝搬方向と伝搬面に垂直な方向の粒子速度である。圧電基板3の材料がタンタル酸リチウム(128YX-LiTaO)であり、励振の角周波数がωの場合には、
V=3884.4m/s、
ν/sqrt(P)=2.2065E-06×sqrt(ω)、
ν/sqrt(P)=2.9468E-06×sqrt(ω)
で与えられるので、質量負荷膜の材料定数に対して速度変化ΔVを計算することができる。さらに、その速度変化ΔVを基に、質量負荷膜7の伝搬方向(励振電極4と第1反射電極5の配列方向)の長さLを考慮すれば、励振電極4と第1反射電極5との間を往復する反射波の伝搬時間差Δtを計算することができる。

【0040】
例えば、質量負荷膜7の長さL=100μm、質量負荷膜7の材料をAuとし、質量負荷膜7の厚さhを様々に変更した場合、各励振周波数に対する伝搬時間差Δtは、下記の表1のように計算できる。

【0041】
【表1】
JP2021032676A_000004t.gif


また、上記の場合に対して質量負荷膜7の長さL=500μmに変更した場合には、各励振周波数に対する伝搬時間差Δtは、下記の表2のように計算できる。

【0042】
【表2】
JP2021032676A_000005t.gif


さらに、表1の場合に対して質量負荷膜7の材料をAlに変更した場合、各励振周波数に対する伝搬時間差Δtは、下記の表3のように計算でき、表2の場合に対して質量負荷膜7の材料をAlに変更した場合、各励振周波数に対する伝搬時間差Δtは、下記の表4のように計算できる。

【0043】
【表3】
JP2021032676A_000006t.gif



【0044】
【表4】
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表1~表4の計算結果に示すように、同じ励振周波数であっても質量負荷膜7の膜厚hあるいは材料を変えると伝搬時間差Δtが異なる。

【0045】
上記の理論式(1)の計算結果を利用して、送受信装置1は複数のSAWセンサ2の中からそれぞれのSAWセンサ2を識別することができる。すなわち、同じ厚さh、長さLで材料の異なる質量負荷膜7が形成され、弾性表面波の励振周波数が同一の複数のSAWセンサ2を用意しておけば、それぞれのSAWセンサ2を対象に検出した伝搬時間差Δtから質量負荷膜7の材料が判定でき、その判定結果からそれぞれのSAWセンサを識別することができる。具体的には、膜なし、材料A、及び材料Bの質量負荷膜7が形成された3つのSAWセンサ2を用意しておけば、3つのSAWセンサ2を識別できる。また、同じ厚さh、材料で長さLの異なる質量負荷膜7が形成され、励振周波数が同一の複数のSAWセンサ2を用意しておいても、長さLを判定することによりそれぞれのSAWセンサ2を識別することができる。また、同じ長さL、材料で厚さhの異なる質量負荷膜7が形成され、励振周波数が同一の複数のSAWセンサ2を用意しておいても、厚さhを判定することによりそれぞれのSAWセンサ2を識別することができる。また、同じ長さL、同じ材料、同じ厚さhの質量負荷膜7が形成され、励振周波数が異なる複数のSAWセンサ2を用意しておいても、交流信号の周波数を変更しながらそれぞれの励振周波数を判定することによりそれぞれのSAWセンサ2を識別することができる。さらに、これらの材料、長さL、厚さh、励振周波数の複数のパラメータを組み合わせて、センサ間でいずれかのパラメータの値が異なるように構成された複数のSAWセンサ2を用いれば、さらに多くの数のSAWセンサ2を識別することができる。

【0046】
具体的には、送受信装置1がSAWセンサ2を識別する際には、SAWセンサ2に向けて送信した交流信号の基となった基準信号の時間波形と、そのSAWセンサ2から認識用伝搬路MP1を経由して受信した反射信号の時間波形との位相差を検出する。図4には、送受信装置1が検出する基準信号及び反射信号の時間波形WF0,WF1のイメージを示す。送受信装置1は、理論式(1)で計算される伝搬時間差Δtの値を参照しながら、複数のSAWセンサ2を対象に検出された基準信号と反射信号の位相差から計算される伝搬時間差を相対的に比較することにより、それぞれのSAWセンサ2を識別することができる。

【0047】
次に、送受信装置1による測定パラメータの検出機能の処理手順について説明する。送受信装置1においては、上述のようにして識別されたSAWセンサ2からの計測用伝搬路MP2を経由した反射信号(第2の信号)が受信される。この反射信号においては、センサ素子10の測定パラメータの変化によるインピーダンス変化に応じて反射率が変化している。このような性質を使用して、送受信装置1は、反射信号の振幅の変化を検出することにより、測定パラメータを検出することができる。

【0048】
本実施形態による作用効果について説明する。

【0049】
本実施形態のセンシングシステム100によれば、SAWセンサ2から反射信号を受信した送受信装置1により、計測用伝搬路MP2を経由した反射信号を用いた所望の測定パラメータのセンシングが可能にされる。それに加えて、送受信装置1が質量負荷膜7の特性に応じた伝搬時間差Δtを持つ認識用伝搬路MP1を経由した反射信号を受信することができ、送受信装置1が交流信号の基となった基準信号とその反射信号との間の位相差を基に、反射信号の遅延時間を評価することができる。そして、送受信装置1において、遅延時間の評価結果を相対的に比較することにより個々のSAWセンサ2の識別が可能となる。その結果、識別用の弾性表面波を発生させるための構成を複雑化させることなく、複数のSAWセンサ2間の精度の高い識別を実現できる。

【0050】
ここで、送受信装置1は、質量負荷膜7の材料、励振電極4と第1反射電極5との配列方向における質量負荷膜7の長さL、及び質量負荷膜7の厚さhを基に計算される伝搬時間差Δtの計算値と、基準信号と反射信号との位相差とに基づいてSAWセンサ2を識別している。このような機能により、質量負荷膜7の材料、長さL、あるいは、厚さhのいずれかを様々に設定した複数のSAWセンサ2を用いてセンシングを行う場合に、複数のSAWセンサ2を精度よく識別することができる。加えて、SAWセンサ2において所望の特性の質量負荷膜7を容易に加工することができる。

【0051】
本実施形態のSAWセンサ2の構成によれば、圧電基板3上の励振電極4に外部からアンテナ8を介して所定周波数の交流信号が印加されることにより、圧電基板3上において励振電極4から弾性表面波が励起され、その弾性表面波が第1反射電極5及び第2反射電極6に向けて圧電基板3上を伝搬される。そして、弾性表面波が第1反射電極5で反射されて反射信号が生成され、その反射信号が励振電極4及びアンテナ8を経由して無線信号として外部に送信される一方、弾性表面波が第2反射電極6で反射されて反射信号が生成され、その反射信号が励振電極4及びアンテナ8を経由して無線信号として外部に送信される。第2反射電極6にはインピーダンス変化型のセンサ素子10が電気的に接続されているので、反射信号を受信した送受信装置1により、反射信号を用いた所望の測定パラメータのセンシングが可能にされる。それに加えて、励振電極4と第1反射電極5との間の圧電基板3上に質量負荷膜7が設けられているので、送受信装置1が質量負荷膜7の特性に応じた遅延時間の反射信号を受信することができ、送受信装置1におけるその遅延時間に基づいたSAWセンサ2の識別が可能となる。これにより、識別用の弾性表面波を発生させるための構成を複雑化させることなく、複数のSAWセンサ2間の精度の高い識別を実現できる。

【0052】
ここで、質量負荷膜7は、弾性表面波の伝搬方向に沿って矩形状をなしているので、励振電極4から発生し第1反射電極5に向けて伝搬する弾性表面波に対して、質量負荷効果を安定して与えることができ、外部装置によるSAWセンサ2の識別が安定化される。また、質量負荷膜7は、金属あるいは誘電体材料によって形成されているので、質量負荷膜7による質量負荷効果を安定化することができる。特に、質量負荷膜7を金、銀、銅、アルミニウム、あるいは白金等の金属によって形成する場合には、圧電基板3上に質量負荷膜7を容易に形成することができる。

【0053】
また、励振電極4は、噛み合わせて配置された2つの櫛型のすだれ状電極4a,4bを有し、質量負荷膜7は、励振電極4と第1反射電極5との配列方向に垂直な方向において、2つのすだれ状電極4a,4bの噛み合わせ部分R1より広くなるように形成されている。このような構成により、励振電極4から発生し第1反射電極5に向けて伝搬する弾性表面波に対して、質量負荷効果を効率的に与えることができ、外部装置によるセンサ素子の識別の精度をより高めることができる。

【0054】
識別を可能にするセンサ素子の従来構成としては、反射電極の本数が変更された構成、反射電極の励振電極からの距離が変更された構成が用いられていた。しかし、この従来構成では、識別用として反射信号の振幅が検出されている。そのため、送受信装置とセンサ素子との距離が変化すると電波の伝搬距離が変化する結果反射信号の振幅が変化するため、識別の精度が低下する。また、反射電極間の多重反射も含まれてしまうため識別の精度が低下する。これに対して、本実施形態では位相差を用いており、多重反射も生じないため、識別の精度が落ちることもない。その他の従来の認識方法としては、直交周波数法の利用も提案されている。この場合、広帯域の信号をチャープ型すだれ状電極に入力し、反射電極の周波数特性を利用することにより、反射電極の位置と周波数とで識別が可能となる。しかし、直交周波数法では、広帯域の信号の利用が必要であり、帯域幅の狭い特定小電力帯の利用によっては実現できない。また、送受信装置の機能が複雑となり、消費電力も増大する。これに対して、本実施形態においては、広帯域の信号の利用は必要なく特定小電力帯での利用も可能であり、簡易かつ消費電力の少ない構成によって実現できる。例えば、特定小電力帯(920MHz)のように帯域幅が狭い信号しか利用できず、1つの励振周波数しか使用できない場合でも、多数の素子の識別が可能となる。

【0055】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。

【0056】
上記実施形態にかかるSAWセンサ2は、質量負荷膜7が圧電基板3上に励振電極4と第1反射電極5から分離して形成されていたが、質量負荷膜7が誘電体材料で形成されている場合には、励振電極4あるいは第1反射電極5と接触して形成されてもよい。図5は、変形例にかかるSAWセンサ2Aを圧電基板3の表面3a側から見た平面図である。このように、質量負荷膜7が励振電極4に接して第1反射電極5を覆うように形成されていてもよい。この変形例においては、伝搬時間差Δtを評価する際には、質量負荷膜7の長さLとしては、励振電極4と第1反射電極5との間の距離が用いられる。

【0057】
また、図6に示す変形例にかかるSAWセンサ2Bのように、認識用伝搬路MP1と計測用伝搬路MP2とが並列に配置されていてもよい。詳細には、励振電極24が、圧電基板3の表面3a上の一方の端部(図6における左端部)に形成され、アンテナ8に接続された2組のすだれ状電極対24a,24bが表面3aの中央側で一体化された構成を有する。第2反射電極6は、一方のすだれ状電極対24aと対向するように表面3a上の他方の端部(図6における右端部)に形成され、一方のすだれ状電極対24aと第2反射電極6との間に計測用伝搬路MP2が形成される。第1反射電極5は、他方のすだれ状電極対24bと対向するように表面3a上の他方の端部に形成され、他方のすだれ状電極対24bと第1反射電極5との間に計測用伝搬路MP2と並列に認識用伝搬路MP1が形成される。

【0058】
また、上記実施形態にかかるSAWセンサ2においては、励振電極4、第1反射電極5、及び第2反射電極6の位置は入れ替えてもよい。例えば、図7に示す変形例にかかるSAWセンサ2Cのように、励振電極4と第2反射電極6の位置とを入れ替えてもよい。このような構成の場合には、表面3a上において計測用伝搬路MP2と認識用伝搬路MP1とが一部で同じ範囲に形成される。図8には、SAWセンサ2Cを用いて検出される反射信号の時間波形WF2,WF3のイメージを示す。送受信装置1からバースト波である交流信号が送信された場合には、計測用伝搬路MP2を経由した反射信号の時間波形WF2が検出された後に、認識用伝搬路MP1を経由した反射信号の時間波形WF3が検出される。本変形例においても、送受信装置1は、基準信号の時間波形WF0と反射信号の時間波形WF3とを用いてSAWセンサを識別することができる。ただし、交流信号としてバースト信号が用いられる場合には、反射信号の時間波形WF0と反射信号の時間波形WF3の立ち上がりの時間差を相対的に比較することにより、それぞれのSAWセンサ2を識別することができる。

【0059】
また、上記実施形態及び上記変形例における第1反射電極5及び第2反射電極6の形状は、すだれ状電極の形状、あるいは、短絡型の形状のほか、複数の線状電極が平行に配列された平行線タイプの形状(開放型電極の形状)であってもよい。

【0060】
また、上記実施形態及び上記変形例における質量負荷膜7の形状は、矩形状には限定されず弾性表面波が伝わる範囲で様々な形状であってよい。さらに、質量負荷膜7は、弾性表面波が伝搬する範囲内で厚さが均一でなくてもよく、厚さに変化を持たせて伝搬速度が変化するような構成であってもよい。また、質量負荷膜7は、複数層を重ねて構成されていてもよく、その場合はそれぞれの層の材料が異なった構成(誘電体層と金属層を有する構成、2種類の金属層を有する構成等)であってもよい。

【0061】
また、上記実施形態及び上記変形例においては、計測用の信号周波数と認識用の信号周波数とは異なっていてもよい。この場合には、計測用信号の送受信用のアンテナと、認識用信号の送受信用のアンテナとを別々に設けられる場合がある。

【0062】
上記実施形態及び上記変形例で利用されるセンサ素子10として、様々なセンシングが可能なセンサが利用できる。例えば、圧力センサ、歪センサ、温度センサ、湿度センサ、ねじれセンサ、化学センサ、バイオセンサ等が利用できる。

【0063】
また、上記実施形態及び上記変形例においては、認識用伝搬路MP1において励振電極4から圧電基板3上を伝搬した弾性表面波に応じて第1反射電極5で反射波を生成し、計測用伝搬路MP2において弾性表面波に応じて第2反射電極6で反射波を生成する構成とされていた。その一方で、認識用伝搬路MP1において弾性表面波を電極で直接受けて電気信号に変換してアンテナを経由して外部に無線信号を送信する構成であってもよいし、計測用伝搬路MP2において弾性表面波を電極で直接受けて電気信号に変換してアンテナを経由して外部に無線信号を送信する構成であってもよい。認識用伝搬路MP1及び計測用伝搬路MP2の両方の構成が外部に無線信号を直接送信する構成にされてもよいし、どちらか一方のみがそのような構成とされてもよい。図9は、変形例にかかるSAWセンサ2Dの構成を示している。このSAWセンサ2Dにおいては、第1反射電極5の代わりに、認識用伝搬路MP1上において励振電極4によって励起された弾性表面波を直接受けて電気信号を生成させる電極(第1の電極)105が設けられ、その電極105には、その電気信号を無線信号に変換して送受信装置1に送信するアンテナ108aが電気的に接続されている。この電極105は、例えば、励振電極4と同様な構成を有する。さらに、SAWセンサ2Dにおいては、電極(第2の電極)6が弾性表面波を直接受けて電気信号を生成させる構成とされ、その電極6には、その電気信号を無線信号に変換して送受信装置1に送信するアンテナ108bが電気的に接続されている。

【0064】
上記変形例のSAWセンサ2Dを複数含むセンシングシステム100においては、次のようなSAWセンサ2の識別機能を有する。すなわち、質量負荷膜7の各設計値および各励振周波数に対する伝搬時間差Δtが、励振電極4と電極105との間の片道の伝搬時間差として予め計算されて送受信装置1内でデータとして保持されている。そして、送受信装置1は、その伝搬時間差Δtを基にSAWセンサ2Dの質量負荷膜7の材料等の特性あるいはSAWセンサ2Dの励振周波数を判定することにより、SAWセンサ2Dを識別することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…送受信装置、2,2A,2B,2C,2D…SAWセンサ(認識信号生成素子)、3…圧電基板(圧電体)、3a…表面、4,24…励振電極、4a,4b…すだれ状電極、5…第1反射電極(第1の電極)、105…電極(第1の電極)6…第2反射電極(第2の電極)、7…質量負荷膜(薄膜)、8…アンテナ、10…センサ素子(センサ)、100…センシングシステム(素子認識システム)、R1…噛み合わせ部分。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
7
【図9】
8