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明細書 :判定装置、光照射装置、及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-023689 (P2021-023689A)
公開日 令和3年2月22日(2021.2.22)
発明の名称または考案の名称 判定装置、光照射装置、及びプログラム
国際特許分類 A61B   5/16        (2006.01)
A61B   5/372       (2021.01)
A61B  10/00        (2006.01)
FI A61B 5/16 130
A61B 5/04 322
A61B 10/00 E
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2019-145967 (P2019-145967)
出願日 令和元年8月8日(2019.8.8)
発明者または考案者 【氏名】手塚 太郎
【氏名】坂口 昌徳
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100169764、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 雄一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
4C127
Fターム 4C038PP05
4C038PS03
4C127AA03
4C127DD01
4C127DD02
4C127GG10
4C127GG15
要約 【課題】利便性を向上させることができる判定装置を提供すること。
【解決手段】判定装置は、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて被験体の脳の睡眠状態を判定する判定装置であって、当該モデルは、第1脳波形情報と第1時刻情報とを含む第1入力情報と、第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、第2脳波形情報と第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された第2入力情報に対応付けられる当該睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、判定装置は、第2入力情報を当該モデルに入力し、第2入力情報が入力された当該モデルから出力された出力情報に応じて、当該睡眠状態を判定する。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて被験体の脳の睡眠状態を判定する判定装置であって、
前記モデルは、
前記被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と前記第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む第1入力情報と、前記第1入力情報に対応付けられた前記睡眠状態である第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、前記被験体の第2脳波の波形を示す第2脳波形情報と前記第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、
前記判定装置は、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記第2入力情報を前記モデルに入力し、前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、
判定装置。
【請求項2】
前記睡眠状態は、前記被験体の脳の状態のうちの睡眠時における前記被験体の脳波により分類される複数の状態のいずれかのことであり、
前記制御部は、
前記出力情報に応じて、
前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態が前記複数の状態のうちのいずれの状態であるかを判定する、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記複数の状態には、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態が含まれている、
請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記モデルは、
前記第2入力情報が入力された場合、前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度を前記複数の状態のそれぞれについて推定し、前記複数の状態のそれぞれについて推定した前記尤度のそれぞれを含む情報を前記出力情報として出力し、
前記制御部は、前記出力情報に基づいて、前記複数の状態のうち前記モデルにより推定された尤度が最も高い状態を、前記睡眠状態として判定する、
請求項2又は3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記第1入力情報には、周波数領域における前記第1脳波の波形を示す第1周波数領域情報が含まれており、
前記第2入力情報には、周波数領域における前記第2脳波の波形を示す第2周波数領域情報が含まれている、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項6】
前記モデルは、前記第2入力情報に含まれる前記第2脳波形情報が入力される畳み込みニューラルネットワークと、前記畳み込みニューラルネットワークからの出力と前記第2入力情報に含まれる情報のうち前記第2脳波形情報以外の情報とが入力される全結合型ニューラルネットワークとが組み合わされた前記ニューラルネットワークを含み、
前記全結合型ニューラルネットワークは、前記出力情報を出力し、
前記制御部は、前記第2入力情報に含まれる前記第2脳波形情報を前記畳み込みニューラルネットワークに入力し、前記畳み込みニューラルネットワークからの出力と前記第2入力情報に含まれる情報のうち前記第2脳波形情報以外の情報とを前記全結合型ニューラルネットワークに入力し、前記全結合型ニューラルネットワークから出力された前記出力情報に応じて前記睡眠状態を判定する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項7】
前記制御部は、過去の前記睡眠状態と、過去から現在に至るまでの前記睡眠状態についての状態遷移確率とに基づいて、前記モデルから出力された前記出力情報を補正し、補正された後の前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項8】
前記ニューラルネットワークのカーネルサイズは、所定の周波数帯に応じて決定された値である、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の判定装置と、内視鏡とを備えた光照射装置であって、
前記内視鏡は、
前記被験体の脳に所定の波長の光を照射する照射部と、
前記被験体の脳を撮像する撮像部と、
光照射制御部と、
を備え、
前記光照射制御部は、
前記判定装置による判定結果に応じて前記照射部に前記光を照射させる、
光照射装置。
【請求項10】
コンピュータに、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて被験体の脳の睡眠状態を判定させるプログラムであって、
前記モデルは、
前記被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と前記第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む第1入力情報と、前記第1入力情報に対応付けられた前記睡眠状態である第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、前記被験体の第2脳波の波形を示す第2脳波形情報と前記第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、
前記プログラムは、
前記第2入力情報を前記モデルに入力し、
前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、
プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、判定装置、光照射装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被験体の脳の睡眠状態を判定する技術についての研究や開発が行われている。
【0003】
ここで、被験体の脳の状態は、被験体の脳波の波形により特徴付けられる状態のことである。被験体の脳の状態は、所定の条件下における被験体の脳波の波形によって複数の状態に分類することができる。例えば、被験体の脳の状態は、睡眠時における被験体の脳波の波形によって複数の状態に分類することができる。前述の被験体の脳の睡眠状態は、睡眠時における被験体の脳波の波形によって被験体の脳の状態が複数の状態に分類された場合における当該複数の状態のいずれかのことである。以下では、説明の便宜上、当該複数の状態のそれぞれを、睡眠時分類状態と称して説明する。すなわち、被験体の脳の睡眠状態を判定することは、被験体の脳の状態が、複数の睡眠時分類状態のうちのいずれであるかを判定することを意味する。なお、被験体の脳波は、被験体の脳から検出された電位の時間的な変化を示す波のことである。
【0004】
ここで、特許文献1には、被験体の脳の睡眠状態を判定する方法として、複数のチャネルの脳波センサを用いる方法、1以上のチャネルの脳波センサとともに1以上の筋電センサを用いる方法が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0126033号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された2つの方法(すなわち、複数のチャネルの脳波センサを用いる方法、及び、1以上のチャネルの脳波センサとともに1以上の筋電センサを用いる方法)は、チャネルの数を複数にすること、脳波センサとともに筋電センサを用いること(すなわち、複数のセンサを用いること)等によってノイズを低減することにより、被験体の脳の睡眠状態を高い精度で判定することができる。しかしながら、当該2つの方法は、チャネルの数が複数であること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等のために被験体へのセンサの取り付けが煩雑となり、利便性が悪い場合があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、利便性を向上させることができる判定装置、光照射装置、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様に係る判定装置は、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて被験体の脳の睡眠状態を判定する判定装置であって、前記モデルは、前記被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と前記第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む第1入力情報と、前記第1入力情報に対応付けられた前記睡眠状態である第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、前記被験体の第2脳波の波形を示す第2脳波形情報と前記第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、前記判定装置は、制御部を備え、前記制御部は、前記第2入力情報を前記モデルに入力し、前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、判定装置である。
【0009】
(2)上記(1)に記載の判定装置において、前記睡眠状態は、前記被験体の脳の状態のうちの睡眠時における前記被験体の脳波により分類される複数の状態のいずれかのことであり、前記制御部は、前記出力情報に応じて、前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態が前記複数の状態のうちのいずれの状態であるかを判定する、構成を有してもよい。
【0010】
(3)上記(2)に記載の判定装置において、前記複数の状態には、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態が含まれている、構成を有してもよい。
【0011】
(4)上記(2)又は(3)に記載の判定装置において、前記モデルは、前記第2入力情報が入力された場合、前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度を前記複数の状態のそれぞれについて推定し、前記複数の状態のそれぞれについて推定した前記尤度のそれぞれを含む情報を前記出力情報として出力し、前記制御部は、前記出力情報に基づいて、前記複数の状態のうち前記モデルにより推定された尤度が最も高い状態を、前記睡眠状態として判定する、構成を有してもよい。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか一項に記載の判定装置において、前記第1入力情報には、周波数領域における前記第1脳波の波形を示す第1周波数領域情報が含まれており、前記第2入力情報には、周波数領域における前記第2脳波の波形を示す第2周波数領域情報が含まれている、構成を有してもよい。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のうちいずれか一項に記載の判定装置において、前記モデルは、前記第2入力情報に含まれる前記第2脳波形情報が入力される畳み込みニューラルネットワークと、前記畳み込みニューラルネットワークからの出力と前記第2入力情報に含まれる情報のうち前記第2脳波形情報以外の情報とが入力される全結合型ニューラルネットワークとが組み合わされた前記ニューラルネットワークを含み、前記全結合型ニューラルネットワークは、前記出力情報を出力し、前記制御部は、前記第2入力情報に含まれる前記第2脳波形情報を前記畳み込みニューラルネットワークに入力し、前記畳み込みニューラルネットワークからの出力と前記第2入力情報に含まれる情報のうち前記第2脳波形情報以外の情報とを前記全結合型ニューラルネットワークに入力し、前記全結合型ニューラルネットワークから出力された前記出力情報に応じて前記睡眠状態を判定する、構成を有してもよい。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のうちいずれか一項に記載の判定装置において、前記制御部は、過去の前記睡眠状態と、過去から現在に至るまでの前記睡眠状態についての状態遷移確率とに基づいて、前記モデルから出力された前記出力情報を補正し、補正された後の前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、構成を有してもよい。
【0015】
(8)上記(1)から(7)のうちいずれか一項に記載の判定装置において、前記ニューラルネットワークのカーネルサイズは、所定の周波数帯に応じて決定された値である、構成を有してもよい。
【0016】
(9)本発明の一態様に係る光照射装置は、上記(1)から(8)のうちいずれか一項に記載の判定装置と、内視鏡とを備えた光照射装置であって、前記内視鏡は、前記被験体の脳に所定の波長の光を照射する照射部と、前記被験体の脳を撮像する撮像部と、光照射制御部と、を備え、前記光照射制御部は、前記判定装置による判定結果に応じて前記照射部に前記光を照射させる、光照射装置である。
【0017】
(10)本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて被験体の脳の睡眠状態を判定させるプログラムであって、前記モデルは、前記被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と前記第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む第1入力情報と、前記第1入力情報に対応付けられた前記睡眠状態である第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、前記被験体の第2脳波の波形を示す第2脳波形情報と前記第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された前記第2入力情報に対応付けられる前記睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、前記プログラムは、前記第2入力情報を前記モデルに入力し、前記第2入力情報が入力された前記モデルから出力された前記出力情報に応じて、前記睡眠状態を判定する、プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る判定装置、光照射装置、及びプログラムは、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】判定装置1の構成の一例を示す図である。
【図2】判定装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】判定装置1の機能構成の一例を示す図である。
【図4】判定装置1が行う処理のうち睡眠状態を判定する処理の流れの一例を示す図である。
【図5】判定部164が有する機械学習のモデルの一例を示す図である。
【図6】時間の経過とともに睡眠状態が遷移していく様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。

【0021】
<判定装置の概要>
まず、実施形態に係る判定装置の概要について説明する。当該判定装置は、被験体の脳の睡眠状態を判定する。

【0022】
被験体は、脳を有する動物であれば如何なる動物であってもよく、例えば、人である。なお、被験体は、マウス等の人以外の動物であってもよい。以下では、一例として、被験体が、人である場合について説明する。

【0023】
また、本実施形態において、被験体の脳の状態は、被験体の脳波の波形により特徴付けられる状態のことである。被験体の脳の状態は、所定の条件下における被験体の脳波の波形によって複数の状態に分類することができる。例えば、被験体の脳の状態は、睡眠時における被験体の脳波の波形によって複数の状態に分類することができる。前述の被験体の脳の睡眠状態は、睡眠時における被験体の脳波の波形によって被験体の脳の状態が複数の状態に分類された場合における当該複数の状態のいずれかのことである。以下では、説明の便宜上、当該複数の状態のそれぞれを、睡眠時分類状態と称して説明する。すなわち、被験体の脳の睡眠状態を判定することは、被験体の脳の状態が、複数の睡眠時分類状態のうちのいずれであるかを判定することを意味する。また、以下では、説明の便宜上、睡眠時における被験体の脳波を、単に睡眠時脳波と称して説明する。なお、被験体の脳波は、被験体の脳から検出された電位の時間的な変化を示す波のことである。

【0024】
より具体的には、被験体の脳の状態は、睡眠時脳波の波形に応じて、睡眠時における被験体の脳の状態と、覚醒時における被験体の脳の状態とに分類されることが知られている。更に、睡眠時における被験体の脳の状態は、当該波形に応じて、複数の状態に分類されることが知られている。例えば、睡眠時における被験体の脳の状態は、当該波形に応じて、レム(REM;Rapid Eye Movement)睡眠状態と、ノンレム(NREM;Non Rapid Eye Movement)状態との2つの状態のいずれかに分類される。この場合、被験体の脳の睡眠状態は、レム睡眠状態と、ノンレム睡眠状態と、覚醒状態との3つの睡眠時分類状態のうちのいずれかである。そこで、実施形態では、一例として、被験体の脳の睡眠状態が、レム(REM;Rapid Eye Movement)睡眠状態、ノンレム(NREM;Non Rapid Eye Movement)状態、覚醒(Wake)状態の3つの睡眠時分類状態のうちのいずれかである場合について説明する。このため、実施形態では、被験体の脳の睡眠状態を判定することは、睡眠時脳波の波形に応じて、被験体の脳の状態が、当該3つの睡眠時分類状態のうちのいずれであるかを判定することを意味する。なお、以下では、説明の便宜上、レム睡眠状態、ノンレム状態、覚醒状態の3つの睡眠時分類状態を、単に3つの睡眠時分類状態と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、被験体の脳の睡眠状態を、単に睡眠状態と称して説明する。

【0025】
ここで、睡眠状態を判定する従来の装置として、複数のチャネルの脳波センサを用いる装置、1以上のチャネルの脳波センサとともに1以上の筋電センサを用いる装置等が知られている。これらの装置は、チャネルの数を複数にすること、脳波センサとともに筋電センサを用いること(すなわち、複数のセンサを用いること)等によってノイズを低減することにより、睡眠状態を高い精度で判定することができる。しかしながら、これらの装置は、チャネルの数が複数であること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等のために被験体へのセンサの取り付け、装置の設定、装置のキャリブレーション等が煩雑となり、利便性が悪い場合があった。また、これらの装置は、チャネルの数が複数であること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等のために、製造コストの増大を抑制することが困難な場合があった。これは、睡眠状態の判定に要するコストの増大に繋がり、望ましいことではない。

【0026】
そこで、実施形態に係る判定装置は、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデルに基づいて睡眠状態を判定する。当該モデルは、第1入力情報と、第1睡眠状態情報との対応関係が学習済みである。第1入力情報は、第1脳波形情報と第1時刻情報とを含む情報のことである。第1脳波形情報は、被験体の第1脳波の波形を示す情報のことである。第1時刻情報は、第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す情報のことである。第1睡眠状態情報は、第1睡眠状態を示す情報のことである。第1睡眠状態は、第1入力情報に対応付けられた睡眠状態のことである。また、当該モデルは、第2入力情報が入力された場合、入力された第2入力情報に対応付けられる睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力する。第2入力情報は、第2脳波形情報と第2時刻情報とを含む情報のことである。第2脳波形情報は、被験体の第2脳波の波形を示す情報のことである。第2時刻情報は、第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す情報のことである。また、当該判定装置は、制御部を備える。そして、制御部は、第2入力情報を当該モデルに入力し、第2入力情報が入力された当該モデルから出力された当該出力情報に応じて、睡眠状態を判定する。

【0027】
これにより、実施形態に係る判定装置は、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じた睡眠状態の判定を行うことができる。その結果、当該判定装置は、チャネルの数を複数にすること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等を行うことなく、睡眠状態を精度よく判定することができる。換言すると、当該判定装置は、1チャネルの脳波センサにより検出された被験体の脳波に基づいて、睡眠状態を精度よく判定することができる。これはすなわち、当該判定装置が、利便性を向上させることができることを意味する。また、これは、当該判定装置が、製造コストの増大を抑制することができ、その結果、睡眠状態の判定に要するコストを低減することができることを意味する。以下では、このような当該判定装置の構成と、当該判定装置が行う処理とについて詳しく説明する。

【0028】
<判定装置の構成>
以下、実施形態に係る判定装置の構成について説明する。また、以下では、当該判定装置の一例として、判定装置1を例に挙げて説明する。

【0029】
図1は、判定装置1の構成の一例を示す図である。判定装置1は、被験体の頭部に取り付けられた脳波検出部Sと接続される。図1に示した例では、脳波検出部Sは、被験体Hの頭部に取り付けられている。なお、被験体Hは、脳波を検出可能な人であれば、如何なる人であってもよい。

【0030】
ここで、脳波検出部Sは、被験体の脳の電位を検出可能な装置である。例えば、脳波検出部Sは、1チャネルの脳波センサ(脳波計)である。脳波検出部Sは、検出した電位を示す脳電位情報を判定装置1に出力する。なお、脳波検出部Sは、1チャネルの脳波センサに代えて、複数のチャネルの脳波センサであってもよい。また、脳波検出部Sは、脳波センサに代えて、脳波検出部Sが取り付けられた被験体の脳の電位を検出可能な如何なる装置であってもよい。

【0031】
判定装置1は、有線又は無線によって脳波検出部Sと通信可能に接続される。図1に示した例では、判定装置1は、有線によって脳波検出部Sと通信可能に接続されている。ここで、判定装置1は、脳波検出部Sと判定装置1との間を繋ぐ何らかのインターフェースを介して脳波検出部Sと接続される構成であってもよく、脳波検出部Sと直接接続される構成であってもよい。以下では、説明を簡略化するため、判定装置1が脳波検出部Sと直接接続されている場合について説明する。また、判定装置1は、脳波検出部Sに接続されるとともに、筋電センサ等の他のセンサにも接続される構成であってもよい。この場合、当該他のセンサも、被験体に取り付けられる。

【0032】
判定装置1は、睡眠状態を機械学習のモデルに基づいて判定する。判定装置1は、例えば、ノートPC(Personal Computer)である。なお、判定装置1は、ノートPCに代えて、デスクトップPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、PDA(Personal Digital Assistant)等の他の情報処理装置であってもよい。

【0033】
判定装置1が用いる機械学習のモデルは、第1入力情報と第1睡眠状態情報との対応関係が学習済みである。ここで、第1入力情報は、当該モデルに学習を行わせる段階において当該モデルに入力される入力情報のことである。第1入力情報は、被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と、第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む情報のことである。第1脳波は、睡眠状態を判定する前段階のあるタイミングにおいて睡眠状態が判明している被験体の脳から検出された脳波のことである。第1時刻は、例えば、第1脳波が検出され始めた時刻である。なお、第1時刻は、第1脳波が検出され始めた時刻に代えて、第1脳波が検出され終わった時刻であってもよく、第1脳波が検出された期間における他の時刻であってもよい。第1睡眠状態情報は、第1睡眠状態を示す情報のことである。第1睡眠状態は、当該タイミングにおいて判明している当該被験体の脳の睡眠状態のことである。すなわち、第1睡眠状態は、第1入力情報に対応付けられていることが既知である睡眠状態のことである。

【0034】
換言すると、判定装置1が用いる機械学習のモデルは、第1入力情報が入力された場合に、第1入力情報に対応付けられた睡眠状態として、第1睡眠状態情報が示す第1睡眠状態が最も尤もらしいと推定するように、第1入力情報と第1睡眠状態情報との対応関係が学習されている。更に換言すると、当該モデルは、当該場合に、第1入力情報に対応付けられた睡眠状態として、第1睡眠状態情報が示す第1睡眠状態が最も尤もらしいと推定するように、当該モデルに含まれるニューラルネットワークの各重みをバックプロパゲーションによって更新する。すなわち、第1入力情報は、当該モデルにおける訓練データである。また、第1睡眠状態情報は、当該モデルにおける教師データである。当該モデルは、このような対応関係を、被験体の複数の脳波のそれぞれについて学習する。なお、第1入力情報に対する第1睡眠状態の対応付けは、事前に人により行われる。すなわち、あるタイミングにおいて第1脳波が検出された場合において、当該タイミングにおける睡眠状態の判定は、人により行われる。換言すると、第1脳波に対応付けられる睡眠状態は、第1脳波に基づいて人により判定される。そして、人による判定された睡眠状態と当該睡眠状態に対応付けられた脳波との組み合わせは、過去に行われた多数の実験により既に得られている。このようにして既に得られている当該組み合わせを利用することにより、第1入力情報と第1睡眠状態情報との対応関係は、容易に複数生成することができる。判定装置1による睡眠状態の判定におけるノイズは、当該モデルに対して多数の当該対応関係を学習させることにより、統計的に小さくすることができる。なお、第1入力情報に対する第1睡眠状態の対応付けは、如何なる方法で行われてもよい。

【0035】
ここで、第1入力情報に第1時刻情報が含まれている理由は、被験体の脳波が日周変動を起こすことが知られているからである。すなわち、第1入力情報が第1時刻情報を含むことにより、判定装置1は、機械学習のモデルを用いて、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じた被験体の脳の睡眠状態の判定を行うことができるようになる。

【0036】
また、判定装置1が用いる機械学習のモデルは、第2入力情報が入力された場合、入力された第2入力情報に対応付けられる被験体の脳の睡眠状態を推定する。そして、当該モデルは、推定した結果を示す情報を出力情報として出力する。当該モデルは、このような推定を、オンライン推定によって行う構成であってもよく、オフライン推定によって行う構成であってもよい。以下では、一例として、当該モデルが、このような推定をオンライン推定によって行う場合について説明する。ここで、第2入力情報は、当該モデルに推定を行わせる段階において当該モデルに入力される入力情報のことである。第2入力情報は、第2脳波形情報と、第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む情報のことである。第2脳波形情報は、被験体の第2脳波の波形を示す情報のことである。この一例では当該モデルがオンライン推定を行うため、第2脳波は、被験体の脳波のうち睡眠状態を判定する処理を行っている最中に検出された脳波のことである。なお、当該モデルがオフライン推定を行う場合、第2脳波は、睡眠状態を判定する前段階のあるタイミングにおいて被験体の脳から検出された脳波のことである。第2時刻は、例えば、第2脳波が検出され始めた時刻である。なお、第2時刻は、第2脳波が検出され始めた時刻に代えて、第2脳波が検出され終わった時刻であってもよく、第2脳波が検出された期間における他の時刻であってもよい。ただし、第2時刻の決め方は、第1時刻の決め方と同様の決め方である。すなわち、第1脳波が検出され始めた時刻が第1時刻として決められる場合、第2時刻は、第2脳波が検出され始めた時刻として決められる。

【0037】
判定装置1は、睡眠状態の判定を開始する操作を受け付けた場合、当該操作を受け付けたタイミングから予め決められた測定時間が経過するまで、脳波検出部Sが検出した電位を示す脳電位情報を所定のサンプリング周期で取得し続ける。所定のサンプリング周期は、例えば、128[Hz]である。なお、所定のサンプリング周期は、128[Hz]より短い周期であってもよく、128[Hz]より長い周期であってもよい。

【0038】
判定装置1は、睡眠状態の判定を開始する操作を受け付けたタイミングから所定の時間が経過する毎に、経過した所定の時間を対象時間とし、対象時間内に脳波検出部Sから取得した脳電位情報に基づく脳波形情報を、対象時間内における第2脳波形情報として生成する。ここで、ある対象時間内における第2脳波形情報は、対象時間内に脳波検出部Sにより取得された複数の脳電位情報により構成される情報である。より具体的には、当該対象時間内における第2脳波形情報は、当該複数の脳電位情報のそれぞれが示す電位を時系列順に並べた場合における電位の時間的な変化を示す波の波形を、当該対象時間内における被験体の第2脳波の波形として示す情報のことである。また、当該対象時間内における第2脳波形情報には、当該対象時間内において脳波検出部Sにより脳電位情報が最初に取得された時刻を第2時刻として示す第2時刻情報が対応付けられる。判定装置1は、ある対象時間内における第2脳波形情報を生成した後、当該対象時間内における第2脳波形情報と当該第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻情報とを含む情報を、当該対象時間内における第2入力情報として生成する。判定装置1は、当該対象時間内における第2入力情報として生成した後、生成した第2入力情報を、機械学習のモデルに入力する。

【0039】
判定装置1は、ある対象時間内における第2入力情報を機械学習のモデルに入力した後、当該第2入力情報が入力された機械学習のモデルから出力された出力情報に応じて、当該対象時間内における被験体の脳の睡眠状態を判定する。より具体的には、判定装置1は、当該出力情報に応じて、当該対象時間内における被験体の脳の睡眠状態が、3つの睡眠時分類状態のうちのいずれであるかを判定する。ここで、当該出力情報には、3つの睡眠時分類状態のそれぞれについて推定された3つの尤度を示す情報が含まれている。当該3つの尤度は、3つの睡眠時分類状態それぞれについての、当該対象時間内における被験体の脳の睡眠状態であることの尤もらしさを示す。すなわち、判定装置1は、当該出力情報に含まれる情報が示す3つの尤度のうち最も高い尤度の睡眠時分類状態を、当該対象時間内における被験体の脳の睡眠状態として判定する。

【0040】
このような機械学習のモデルを用いた判定を行うことにより、判定装置1は、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じて、睡眠状態の判定を行うことができる。その結果、判定装置1は、チャネルの数を複数にすること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等を行うことなく、睡眠状態を精度よく判定することができる。換言すると、判定装置1は、1チャネルの脳波センサである脳波検出部Sにより検出された被験体の脳波に基づいて、睡眠状態を精度よく判定することができる。つまり、判定装置1は、利便性を向上させることができる。また、判定装置1は、製造コストの増大を抑制することができ、被験体の脳の睡眠状態の判定に要するコストを低減することができる。

【0041】
なお、判定装置1は、脳波検出部Sを備える構成であってもよく、脳波検出部Sを備えない構成であってもよい。また、判定装置1は、脳波検出部Sを備える場合、脳波検出部Sと一体に構成されてもよく、脳波検出部Sと別体に構成されてもよい。以下では、一例として、判定装置1が脳波検出部Sを備えない場合について説明する。

【0042】
<判定装置のハードウェア構成>
以下、図2を参照し、判定装置1のハードウェア構成について説明する。図2は、判定装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。

【0043】
判定装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11と、記憶部12と、入力受付部13と、通信部14と、表示部15を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、判定装置1は、通信部14を介して、脳波検出部Sや他の装置と通信を行う。

【0044】
CPU11は、記憶部12に記憶された各種のプログラムを実行することにより、各種の処理を実行する。CPU11は、入力受付部13を介して、ユーザからの操作を受け付ける。CPU11は、受け付けた操作に応じた処理を実行する。

【0045】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部12は、判定装置1に内蔵されるものに代えて、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部12は、判定装置1が処理する各種の情報、各種のプログラム等を格納する。

【0046】
入力受付部13は、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置である。なお、入力受付部13は、表示部15と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。

【0047】
通信部14は、例えば、USB等のデジタル入出力ポートやイーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。

【0048】
表示部15は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルである。

【0049】
<判定装置の機能構成>
以下、図3を参照し、判定装置1の機能構成について説明する。図3は、判定装置1の機能構成の一例を示す図である。

【0050】
判定装置1は、例えば、記憶部12と、入力受付部13と、通信部14と、表示部15と、制御部16を備える。

【0051】
制御部16は、判定装置1の全体を制御する。制御部16は、取得部161と、生成部162と、計時部163と、判定部164と、表示制御部165を備える。制御部16が備えるこれらの機能部は、例えば、CPU11が、記憶部22に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。

【0052】
取得部161は、脳波検出部Sが検出した電位を示す脳電位情報を、脳波検出部Sから取得する。

【0053】
生成部162は、判定装置1が用いる各種の情報を生成する。例えば、生成部162は、前述の所定の時間内において取得部161により取得された脳電位情報に基づいて、第2脳波形情報を生成する。また、例えば、生成部162は、第2入力情報を生成する。

【0054】
計時部163は、各種の時刻を計時する。

【0055】
判定部164は、生成部162により生成された第2入力情報と、機械学習のモデルとに基づいて、睡眠状態を判定する。

【0056】
表示制御部165は、入力受付部13を介してユーザから受け付けた操作に応じて、各種の画像を生成する。表示制御部165は、生成した画像を、表示部15に表示させる。

【0057】
<睡眠状態を判定する処理>
以下、図4を参照し、判定装置1が行う処理のうち睡眠状態を判定する処理について説明する。図4は、判定装置1が行う処理のうち睡眠状態を判定する処理の流れの一例を示す図である。なお、以下では、一例として、図4に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、睡眠状態を判定する処理を開始させる操作を判定装置1が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、第2脳波形情報及び第2時刻情報とともに、第2周波数領域情報が第2入力情報に含まれている場合について説明する。第2周波数領域情報は、周波数領域における第2脳波の波形を示す情報のことである。周波数領域における第2脳波の波形は、第2脳波形情報が示す波形に周波数領域変換を行うことによって得られる波形のことである。周波数領域変換は、実施形態において、フーリエ変換、離散コサイン変換、ヒルベルト変換、ウェーブレット変換等のように、時間領域の波形の信号を、周波数領域の波形の信号に変換する処理のことである。これにより、判定装置1は、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、周波数領域における被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じて、睡眠状態の判定を行うことができる。第2入力情報が第2周波数領域情報を含む場合、第1入力情報は、第1周波数領域情報を含む。第1周波数領域情報は、周波数領域における第1脳波の波形を示す情報のことである。周波数領域における第1脳波の波形は、第1脳波形情報が示す波形に周波数領域変換を行うことによって得られる波形のことである。以下では、第2周波数領域情報が、第2スペクトル情報である場合について説明する。この場合、第2スペクトル情報は、第2脳波形情報が示す波形をフーリエ変換した後に得られる周波数スペクトルを示す情報、すなわち、第2脳波についての周波数スペクトルを示す情報である。これにより、判定装置1は、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波の周波数スペクトルの違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じて、睡眠状態の判定を行うことができる。第2入力情報が第2周波数スペクトル情報を含む場合、第1入力情報は、第1周波数スペクトル情報を含む。第1周波数スペクトル情報は、第1周波数スペクトルを示す情報のことである。第1周波数スペクトルは、第1脳波についての周波数スペクトルのことである。

【0058】
取得部161は、脳波検出部Sからの脳電位情報の取得を開始する(ステップS110)。ここで、取得部161は、前述した通り、128[Hz]のサンプリング周波数にて、脳波検出部Sからの脳電位情報を取得する。

【0059】
次に、制御部16は、ステップS110の処理が行われたタイミングから所定の時間が経過する毎に、経過した所定の時間を対象時間とし、ステップS130~ステップS180の処理を繰り返し実行する(ステップS120)。ここで、所定の時間は、例えば、10秒である。なお、所定の時間は、10秒より短い時間であってもよく、10秒より長い時間であってもよい。

【0060】
生成部162は、対象時間内において取得部161により取得されたすべての脳電位情報に基づいて、対象時間内における第2入力情報を生成する(ステップS130)。ここで、ステップS130の処理について説明する。

【0061】
生成部162は、対象時間内において脳波検出部Sから取得部161が取得した脳電位情報に基づく脳波形情報を、対象時間内における第2脳波形情報として生成する。なお、所定の時間が10秒であり、且つ、所定のサンプリング周波数が128[Hz]である場合、第2脳波形情報は、被験体の脳の電位のうち対象時間内における各時刻の電位を成分として有する1280次元のベクトルである。また、生成部162は、対象時間内において脳波検出部Sから取得部161により脳電位情報が最初に取得された時刻を第2時刻として示す第2時刻情報を生成する。生成部162は、生成した第2時刻情報を、生成した第2脳波形情報に対応付ける。また、生成部162は、フーリエ変換に基づいて、生成した第2脳波形情報が示す波形の第2脳波についての周波数スペクトルを第2周波数スペクトルとして算出する。生成部162による当該周波数スペクトルの算出方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。このため、当該算出方法についての詳細な説明を省略する。生成部162は、生成した第2脳波形情報と、生成した第2時刻情報と、算出した第2周波数スペクトルを示す第2周波数スペクトル情報とを含む情報を、対象時間内における第2入力情報として生成する。このようにして、生成部162は、ステップS130において、対象時間内における第2入力情報を生成する。なお、第2入力情報には、第2脳波形情報と、第2時刻情報と、第2周波数スペクトル情報とに加えて、他の情報が含まれる構成であってもよい。

【0062】
次に、判定部164は、ステップS130において生成した第2入力情報と、機械学習のモデルとに基づいて、睡眠状態を推定する(ステップS140)。ここで、図5を参照し、ステップS140の処理について説明する。

【0063】
図5は、判定部164が有する機械学習のモデルの一例を示す図である。図5に示したモデルMは、判定部164が有する機械学習のモデルの一例を示す。また、図5に示した第2入力情報Dは、判定部164が機械学習のモデルに対して入力する第2入力情報の一例を示す。第2入力情報Dには、第2脳波形情報D1と、第2周波数スペクトル情報D2と、第2時刻情報D3とが含まれている。第2脳波形情報D1は、第2脳波形情報の一例を示す。第2周波数スペクトル情報D2は、第2周波数スペクトル情報の一例を示す。第2時刻情報D3は、第2時刻情報の一例を示す。すなわち、図5に示した例では、判定部164は、第2脳波形情報D1と、第2周波数スペクトル情報D2と、第2時刻情報D3との3つの情報を、第2入力情報DとしてモデルMへ入力する。これにより、判定部164は、モデルMから出力される出力情報を取得する。図5に示した出力情報D4は、このような出力情報の一例を示す。なお、前述した通り、出力情報D4は、対象時間内における睡眠状態がレム睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度と、当該睡眠状態がノンレム睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度と、当該睡眠状態が覚醒状態であることの尤もらしさを示す尤度との3つの尤度を示す情報を含んでいる。

【0064】
ここで、図5に示した例では、モデルMは、第2入力情報Dに含まれる第2脳波形情報D1が入力される畳み込みニューラルネットワーク(CNN;Convolutional Neural Network)N1と、畳み込みニューラルネットワークN1からの出力と第2入力情報Dに含まれる情報のうち第2脳波形情報D1以外の情報(図5に示した例では、第2周波数スペクトル情報D2及び第2時刻情報D3)とが入力される全結合型ニューラルネットワーク(FCN;Fully Connected Neural Network)N2とが組み合わされたニューラルネットワークを含んでいる。なお、モデルMの構成は、図5に示した構成に代えて、他の構成であってもよい。例えば、モデルMは、畳み込みニューラルネットワークN1と、全結合型ニューラルネットワークN2とに加えて、他のニューラルネットワーク、他の関数等を含む構成であってもよい。

【0065】
判定部164によりモデルMへ入力された第2入力情報Dに含まれる第2脳波形情報D1は、畳み込みニューラルネットワークN1へと入力される。畳み込みニューラルネットワークN1は、入力された第2脳波形情報D1に基づいて、所定の数の特徴量を生成する。所定の数は、事前のトライアンドエラーによって判定精度が高くなるように決定される。所定の数は、例えば、8である。なお、所定の数は、8より少ない数であってもよく、8より多い数であってもよい。畳み込みニューラルネットワークN1により所定の数の特徴量を生成する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。また、畳み込みニューラルネットワークN1のレイヤー数、ノード数、フィルタ数、カーネルサイズ等については、如何なる数であってもよい。ここで、実施形態では、フィルタ数は、用いられるフィルタ(すなわち、カーネル)の数を示す。また、実施形態では、カーネルサイズは、畳み込みに使用されるベクトルである各フィルタ(すなわち、カーネル)の次元を示す。

【0066】
このようにして畳み込みニューラルネットワークN1から出力される所定の数の特徴量は、第2入力情報Dに含まれる第2周波数スペクトル情報D2及び第2時刻情報D3とともに、全結合型ニューラルネットワークN2へ入力される。そして、全結合型ニューラルネットワークN2は、入力された所定の数の特徴量、第2周波数スペクトル情報D2、第2時刻情報D3に基づいて、前述の出力情報D4を出力する。ここで、全結合型ニューラルネットワークN2のレイヤー数、ノード数等については、如何なる数であってもよい。

【0067】
判定部164は、このような構成のモデルMへと第2入力情報Dを入力することにより、出力情報D4をモデルMから取得する。ここで、出力情報D4は、機械学習のモデルが睡眠状態を推定した結果を示す出力情報の一例である。

【0068】
ステップS140の処理が行われた後、判定部164は、過去の睡眠状態と、過去から現在に至るまでの睡眠状態についての状態遷移確率とに基づいて、ステップS140において機械学習のモデルから取得した出力情報を補正する(ステップS150)。ここで、ステップS150の処理について説明する。

【0069】
睡眠状態は、時間の経過に伴い、3つの睡眠時分類状態のいずれかへと遷移する。ここで、図6は、時間の経過とともに睡眠状態が遷移していく様子を示すイメージ図である。図6に示した時間tは、対象時間の一例を示す。図6に示した時間t-1は、対象時間よりも1つ前に経過したと判定された所定の時間を示す。図6に示した時間t-2は、対象時間よりも2つ前に経過したと判定された所定の時間を示す。また、図6に示した状態Stは、時間tにおける睡眠状態を示す。図6に示した状態St-1は、時間t-1における睡眠状態を示す。図6に示した状態St-2は、時間t-2における睡眠状態を示す。なお、図6では、図を簡略化するため、時間t-2よりも前の時間については、省略している。

【0070】
例えば、状態St-2から状態St-1への状態遷移において起こり得る状態遷移の数は、9である。すなわち、状態St-2がレム睡眠状態である場合、状態St-1は、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。また、状態St-2がノンレム睡眠状態である場合も、状態St-1は、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。状態St-2が覚醒状態である場合も、状態St-1は、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。

【0071】
また、例えば、状態St-1から状態Stへの状態遷移において起こり得る状態遷移の数も、9である。すなわち、状態St-1がレム睡眠状態である場合、状態Stは、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。また、状態St-1がノンレム睡眠状態である場合も、状態Stは、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。状態St-1が覚醒状態である場合も、状態Stは、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のいずれかに状態遷移する。

【0072】
そして、このような状態遷移は、時間t-2よりも前の時間においても同様に起こっている。すなわち、時間t-nにおける睡眠状態である状態St-nから、状態Stへの状態遷移において起こり得る状態遷移の数は、3である。ここで、nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。

【0073】
ここで、状態St-nから状態Stへの状態遷移において起こり得る3の状態遷移それぞれが起こる状態遷移確率は、マルコフ連鎖に基づくベイズ推定によって条件付き確率として算出することができる。マルコフ連鎖に基づくベイズ推定によって条件付き確率を算出する際に必要となるサンプルデータとしては、前述の第1入力情報を用いることができる。判定部164は、図4に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、複数の第1入力情報に基づいて、当該状態遷移確率を予め算出する。以下では、説明の便宜上、判定部164が予め算出した当該状態遷移確率を、事前状態遷移確率と称して説明する。

【0074】
そして、判定部164は、ステップS150において、過去の判定履歴を参照し、対象時間よりもn回前に経過したと判定された所定の時間から、対象時間よりも1回前に経過したと判定された所定の時間までの範囲内において判定部164により判定されたn個の睡眠状態についての判定結果を特定する。判定部164は、対象時間内における睡眠状態が、特定したこれらn個の判定結果(すなわち、n個の睡眠状態)を介してレム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態のそれぞれに遷移する状態遷移確率を、事前状態遷移確率に基づいて対象状態遷移確率として特定する。判定部164は、特定した対象状態遷移確率に基づいて、ステップS140において機械学習のモデルから出力された出力情報に含まれる情報が示す3つの尤度の値を補正する。すなわち、判定部164は、対象時間内における睡眠状態についての確率分布に対し、対象時間よりも前に経過したn個の所定の時間のそれぞれにおいて判定された睡眠状態についての確率分布と、特定した対象状態遷移確率とを乗算し、規格化(すなわち、尤度を確率に変換するための規格化)を行うことで、対象時間内における睡眠状態についての確率分布を補正する。ここで、睡眠状態についての確率分布は、ステップS140において推定された3つの尤度の値のことである。ただし、過去に判定された睡眠状態についての確率分布に含まれる3つの尤度の値の合算値は、1となるように規格化が行われている。このため、これら3つの尤度の値を、睡眠状態についての確率分布と称している。また、ステップS150において補正された確率分布であって対象時間内における睡眠状態についての確率分布は、次回のステップS150の処理において、対象時間よりも前に経過したn個の所定の時間のそれぞれにおいて判定された睡眠状態についての確率分布の1つとして用いられる。このような意味においても、実施形態では、これら3つの尤度の値を、睡眠状態についての確率分布と称している。

【0075】
ステップS150について、より具体的には、判定部164は、対象時間内における睡眠状態がレム睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度に対し、対象時間よりも前に経過したn個の所定の時間のそれぞれにおいて判定された睡眠状態についての確率分布と、特定した対象状態遷移確率のうち対象時間内における睡眠状態がレム睡眠状態へと遷移する状態遷移確率とを乗算し、当該尤度を補正する。また、判定部164は、対象時間内における睡眠状態がノンレム睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度に対し、対象時間よりも前に経過したn個の所定の時間のそれぞれにおいて判定された睡眠状態についての確率分布と、特定した対象状態遷移確率のうち対象時間内における睡眠状態がノンレム睡眠状態へと遷移する状態遷移確率とを乗算し、当該尤度を補正する。また、判定部164は、対象時間内における睡眠状態が覚醒状態であることの尤もらしさを示す尤度に対し、対象時間よりも前に経過したn個の所定の時間のそれぞれにおいて判定された睡眠状態についての確率分布と、特定した対象状態遷移確率のうち対象時間内における睡眠状態が覚醒状態へと遷移する状態遷移確率とを乗算し、当該尤度を補正する。そして、判定部164は、補正を行った後のこれら3つの尤度を示す情報を、補正された後の出力情報(換言すると、対象時間内における睡眠状態の確率分布)として特定する。このようにして、判定部164は、ステップS150において、過去の睡眠状態と、過去から現在に至るまでの睡眠状態についての状態遷移確率とに基づいて、機械学習のモデルから出力された出力情報を補正する。なお、対象状態遷移確率に基づいて尤度を補正する方法は、上記において説明した方法に代えて、対象状態遷移確率に基づく他の方法であってもよい。

【0076】
なお、判定部164は、過去の判定履歴がない場合におけるステップS150の処理(例えば、初回のステップS150の処理)において、過去の判定履歴の代わりとなる情報を用いて、ステップS150の処理を行う。当該情報は、例えば、3つの睡眠時分類状態のうち第2入力情報に含まれる第2時刻情報が示す時刻において実現している確率が最も高い睡眠時分類状態を示す情報である。判定部164は、このような情報を、対象状態遷移確率を用いて算出する。このような情報の算出方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。なお、判定部164は、学習段階において用いられた第1入力情報を用いてこのような情報を算出する構成であってもよい。

【0077】
ステップS150の処理が行われた後、判定部164は、ステップS150において補正された出力情報に基づいて、対象時間内における睡眠状態を判定する(ステップS160)。具体的には、判定部164は、当該出力情報に基づいて、対象状態遷移確率が乗算された後の3つの尤度のうち最も高い尤度の睡眠時分類状態を、対象時間内における睡眠状態として判定する。

【0078】
次に、表示制御部165は、ステップS160における判定結果を示す情報を、表示部15に表示させる(ステップS170)。すなわち、表示制御部165は、対象状態遷移確率が乗算された後の3つの尤度のうち最も高い尤度の睡眠時分類状態を示す情報を、対象時間内における睡眠状態を示す情報として表示部15に表示させる。

【0079】
次に、制御部16は、ステップS110の処理が行われたタイミングから所定の測定時間が経過したか否かを判定する(ステップS180)。所定の測定時間は、例えば、1時間である。なお、所定の測定時間は、1時間より短い時間であってもよく、1時間より長い時間であってもよい。

【0080】
制御部16は、ステップS110の処理が行われたタイミングから所定の測定時間が経過していないと判定した場合(ステップS180-NO)、ステップS120に遷移し、対象時間に含まれる最新の時刻から所定の時間が経過するまで待機する。

【0081】
一方、制御部16は、ステップS110の処理が行われたタイミングから所定の測定時間が経過したと判定した場合(ステップS180-YES)、処理を終了する。

【0082】
なお、上記において説明した例では、ステップS150の処理は、省略されてもよい。この場合、判定装置1は、ステップS160において、対象状態遷移確率によって補正されていない3つの尤度のうち最も高い尤度の睡眠時分類状態を、対象時間内における睡眠状態として判定する。

【0083】
<畳み込みニューラルネットワークの構造を決める指針>
以下、上記において説明した畳み込みニューラルネットワークN1の構造を決める指針について説明する。ここで、畳み込みニューラルネットワークN1の構造は、畳み込みニューラルネットワークN1の層の数、ノード数、フィルタ数、カーネルサイズ等によって表される。すなわち、当該指針は、畳み込みニューラルネットワークN1のレイヤー数、ノード数、フィルタ数、カーネルサイズ等を決める指針のことである。以下では、畳み込みニューラルネットワークN1の層の数、ノード数、フィルタ数、カーネルサイズ等のうちのカーネルサイズを決める指針について説明する。

【0084】
畳み込みニューラルネットワークN1におけるカーネルサイズは、換言すると、畳み込みニューラルネットワークN1へと入力する信号(図5に示した例では、第2脳波形情報D1)において1つの数値にまとめる範囲を示すパラメータである。畳み込みニューラルネットワークN1へと入力する信号における所望の範囲を1つの数値にまとめることは、当該範囲に含まれている特徴を畳み込みニューラルネットワークN1の1つの層により抽出することに相当する。すなわち、畳み込みニューラルネットワークN1のカーネルサイズを調整することにより、機械学習のモデルMは、畳み込みニューラルネットワークN1が抽出した特徴としての当該1つの数値に基づいて睡眠状態を推定することができ、その結果、睡眠状態の推定精度を向上させることができる。

【0085】
ここで、第2脳波形情報D1が有する範囲のうち睡眠状態の識別に有効であることが知られている周波数帯の波の半波長を含む範囲を、畳み込みニューラルネットワークN1へと入力する第2脳波形情報D1における所望の範囲として選択することにより、機械学習のモデルMは、睡眠状態の推定精度を向上させることができる。睡眠状態の識別に有効であることが知られている周波数帯は、例えば、θ波の波長帯(すなわち、4~8Hz)である。なお、当該波の波長を含む範囲ではなく、当該波の波長を2つの半波長に分割した場合における一方の半波長を含む範囲を当該所望の範囲として選択する理由は、畳み込みニューラルネットワークN1において、当該2つの半波長のうちの他方の半波長を含む範囲は、畳み込みニューラルネットワークN1における最も入力に近い層の次の層において符号反転を行うことによって得られるからである。これにより、判定装置1は、畳み込みニューラルネットワークN1のカーネルサイズを小さくすることができる。その結果、判定装置1は、オーバーフィッティング(過剰適合、すなわち訓練データに適合しすぎることで実際の予測時の精度が減少する現象)が起きてしまうことを抑制することができる。

【0086】
具体的には、第2脳波形情報D1が有する範囲のうち睡眠状態の識別に有効であることが知られている周波数帯をΩ、周波数帯Ωに含まれる個々の周波数をf、サンプリング周波数をr、カーネルサイズをsとすると、当該周波数帯の波の半波長が(1/(2f))であるため、カーネルサイズsは、以下の式(1)によって算出される。

【0087】
【数1】
JP2021023689A_000003t.gif

【0088】
前述した通り、サンプリング周波数rは、この一例において、128[Hz]である。この場合、周波数帯Ωがθ波の周波数帯であるとすると、カーネルサイズsは、上記の式(1)に基づいて、16と算出される。すなわち、機械学習のモデルMは、カーネルサイズsを16とすることにより、睡眠状態の推定精度を向上させることができる。その結果、判定装置1は、睡眠状態の判定精度を向上させることができる。

【0089】
ここで、畳み込みニューラルネットワークN1の重みのおおよその数は、カーネルサイズと、フィルタ数と、畳み込みニューラルネットワークN1の層の数とを乗算することによって得られる。すなわち、カーネルサイズが増大した場合、畳み込みニューラルネットワークN1のパラメータ数も増大してしまう。この場合、オーバーフィッティングが起きる可能性が高くなる。

【0090】
しかしながら、我々が行った実験では、機械学習のモデルMによる睡眠状態の推定精度は、フィルタ数を減らしてもほぼ変化しないという結果が得られている。そこで、このようにオーバーフィッティングが起きる可能性が高くなることを避けるため、機械学習のモデルMでは、畳み込みニューラルネットワークN1のフィルタ数を減らすことにより、畳み込みニューラルネットワークN1の重みの数の増大を抑制する。その結果、判定装置1は、オーバーフィッティングが起きてしまうことを抑制しながら、睡眠状態の判定精度を向上させることができる。

【0091】
以上のように、判定装置1は、機械学習のモデルを用いて、睡眠状態を判定する。これにより、判定装置1は、人の肉眼では弁別不可能な程度の被験体の脳波の波形の違いと、被験体の脳波についての周波数スペクトルの違いと、被験体の脳波の波形の日周変動とに応じて、睡眠状態の判定を行うことができる。その結果、判定装置1は、チャネルの数を複数にすること、脳波センサとともに筋電センサを用いること等を行うことなく、睡眠状態を精度よく判定することができる。換言すると、判定装置1は、1チャネルの脳波センサである脳波検出部Sにより検出された被験体の脳波に基づいて、睡眠状態を精度よく判定することができる。つまり、判定装置1は、利便性を向上させることができる。また、判定装置1は、製造コストの増大を抑制することができ、睡眠状態の判定に要するコストを低減することができる。

【0092】
ここで、人が睡眠状態を判定する場合、人は、意識的か無意識的かを問わず、被験体の脳波の時間的な変化に基づいて判定している。すなわち、人による睡眠状態の判定は、被験体の脳波の時間的な変化に応じた判定となっている。上記において説明したステップS150の処理を行うことにより、判定装置1は、人による睡眠状態の判定に近い判定を行っている。これにより、判定装置1は、利便性を向上させながら、睡眠状態をより高い精度で判定することができる。

【0093】
なお、上記において説明した機械学習のモデルは、畳み込みニューラルネットワークN1を含んでいたが、畳み込みニューラルネットワークN1に代えて、再帰型ニューラルネットワークを含む構成であってもよい。ただし、第2入力情報のデータ長は、時間の経過とともに変化するわけではない。このため、当該モデルは、再帰型ニューラルネットワークよりも畳み込みニューラルネットワークN1を含む方が好ましい。

【0094】
また、上記において説明した判定装置1による脳の睡眠状態の判定は、脳の睡眠状態の判定基準が未知の動物に対しても適用可能である。これは、被験体が当該動物である場合であっても、判定装置1は、人が当該動物の脳波を見て当該動物の脳の睡眠状態を判定することができる限り、判定装置1が用いる機械学習のモデルに対して第1入力情報と第1睡眠状態情報との対応関係を学習することができるからである。

【0095】
ここで、判定装置1は、人における睡眠状態の判定に有効であることが知られている波形(例えば、睡眠紡錘波、徐波等)を示す情報を第2脳波形情報D1から抽出し、抽出した情報に基づいて睡眠状態を判定する、ということを行っていない。仮に判定装置1が当該情報に基づいて睡眠状態を判定する場合、判定装置1は、人以外の動物の睡眠状態を判定することができなくなってしまう。何故なら、人以外の動物において、睡眠状態の判定に有効であるような波形が見つかるとは限らないからである。しかしながら、上記において説明したように、判定装置1は、睡眠状態の判定において、当該情報を使わない。これは、前述したように、上記において説明した判定装置1による脳の睡眠状態の判定が、脳の睡眠状態の判定基準が未知の動物に対しても適用可能であることを意味している。

【0096】
<判定装置の応用例>
以下、判定装置1の応用例について説明する。判定装置1は、例えば、内視鏡とともに光照射装置に備えられる構成であってもよい。ここで、本実施形態では、内視鏡と称した場合、被験体の脳に所定の波長の光を照射する照射部と、被験体の脳を撮像する撮像部と、光照射制御部とを備える内視鏡を示す。光照射制御部は、判定装置1による判定結果に応じて照射部に当該光を照射させる。これにより、光照射装置は、例えば、光遺伝学に基づいて、被験体の脳の活動の少なくとも一部を制御することができる。その結果、光照射装置は、例えば、被験体の脳の睡眠状態に応じた光遺伝学に基づく何らかの治療を行うことができる。

【0097】
ここで、光照射制御部は、光照射装置が受け付けた操作に応じた波長の光を照射する光源を備える。そして、光照射制御部は、照射部と光ファイバーによって接続されている。照射部は、この光ファイバーから導光された光を照射口から照射する。これにより、光照射装置は、ユーザが所望する波長の光を照射部から照射することができる。その結果、光照射装置は、ユーザが所望する波長の光を、ユーザが所望する睡眠状態の脳に対して容易に照射することができる。

【0098】
また、判定装置1は、このような光照射装置に代えて、音を出力する音出力装置、においを出力する匂い出力装置、被験体の呼吸をアシストする呼吸アシスト装置等の他の医療装置に備えられる構成であってもよい。この場合、判定装置1は、何らかの処理を開始するトリガーをこれらの医療装置に対して与える装置となる。すなわち、例えば、判定装置1が音出力装置に備えられる場合、音出力装置は、判定装置1が判定した被験体の脳の睡眠状態に応じて、所定の音を出力する。より具体的には、音出力装置は、例えば、被験体の脳の睡眠状態がレム睡眠状態であると判定した場合、所定の音を出力する。また、例えば、判定装置1が匂い出力装置に備えられる場合、匂い出力装置は、判定装置1が判定した被験体の脳の睡眠状態に応じて、所定の匂いを出力する。より具体的には、匂い出力装置は、例えば、被験体の脳の睡眠状態がレム睡眠状態であると判定した場合、所定の匂いを出力する。また、例えば、判定装置1が呼吸アシスト装置に備えられる場合、呼吸アシスト装置は、判定装置1が判定した被験体の脳の睡眠状態に応じて、被験体の呼吸をアシストする。より具体的には、呼吸アシスト装置は、例えば、被験体の脳の睡眠状態がレム睡眠状態であると判定した場合、被験体の呼吸をアシストする。

【0099】
以上のように、判定装置(上記において説明した例では、判定装置1)は、ニューラルネットワークを含む機械学習のモデル(上記において説明した例では、モデルM)に基づいて被験体(上記において説明した例では、被験体H)の脳の睡眠状態を判定する判定装置であって、当該モデルは、被験体の第1脳波の波形を示す第1脳波形情報と第1脳波形情報に対応付けられた第1時刻を示す第1時刻情報とを含む第1入力情報と、第1入力情報に対応付けられた当該睡眠状態である第1睡眠状態を示す第1睡眠状態情報との対応関係を学習済みであり、被験体の第2脳波の波形を示す第2脳波形情報と第2脳波形情報に対応付けられた第2時刻を示す第2時刻情報とを含む第2入力情報が入力された場合、入力された第2入力情報に対応付けられる当該睡眠状態を推定し、推定した結果を示す情報を出力情報として出力し、判定装置は、制御部(上記において説明した例では、制御部16)を備え、制御部は、第2入力情報を当該モデルに入力し、第2入力情報が入力された当該モデルから出力された出力情報に応じて、当該睡眠状態を判定する。これにより、判定装置は、利便性を向上させることができる。

【0100】
また、判定装置では、被験体の脳の睡眠状態は、被験体の脳の状態のうちの睡眠時における被験体の脳波により分類される複数の状態のいずれかのことであり、制御部は、出力情報に応じて、第2入力情報が入力された機械学習のモデルから出力された出力情報に応じて、当該睡眠状態が複数の状態のうちのいずれの状態であるかを判定する、構成が用いられてもよい。

【0101】
また、判定装置では、複数の状態には、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態、覚醒状態が含まれている、構成が用いられてもよい。

【0102】
また、判定装置では、機械学習のモデルは、第2入力情報が入力された場合、第2入力情報に対応付けられる被験体の脳の睡眠状態であることの尤もらしさを示す尤度を複数の状態のそれぞれについて推定し、複数の状態のそれぞれについて推定した尤度のそれぞれを含む情報を出力情報として出力し、制御部は、出力情報に基づいて、複数の状態のうち当該モデルにより推定された尤度が最も高い状態を、当該睡眠状態として判定する、構成が用いられてもよい。

【0103】
また、判定装置では、第1入力情報には、周波数領域における第1脳波の波形を示す第1周波数領域情報が含まれており、第2入力情報には、周波数領域における第2脳波の波形を示す第2周波数領域情報が含まれている、構成が用いられてもよい。

【0104】
また、判定装置では、機械学習のモデルは、第2入力情報に含まれる第2脳波形情報が入力される畳み込みニューラルネットワーク(上記において説明した例では、畳み込みニューラルネットワークN1)と、畳み込みニューラルネットワークからの出力と第2入力情報に含まれる情報のうち第2脳波形情報以外の情報とが入力される全結合型ニューラルネットワーク(上記において説明した例では、全結合型ニューラルネットワークN2)とが組み合わされたニューラルネットワークを含み、全結合型ニューラルネットワークは、出力情報を出力し、制御部は、第2入力情報に含まれる第2脳波形情報を畳み込みニューラルネットワークに入力し、畳み込みニューラルネットワークからの出力と第2入力情報に含まれる情報のうち第2脳波形情報以外の情報とを全結合型ニューラルネットワークに入力し、全結合型ニューラルネットワークから出力された出力情報に応じて被験体の脳の睡眠状態を判定する、構成が用いられてもよい。

【0105】
また、判定装置では、制御部は、過去の被験体の脳の睡眠状態と、過去から現在に至るまでの被験体の脳の睡眠状態についての状態遷移確率とに基づいて、機械学習のモデルから出力された出力情報を補正し、補正された後の出力情報に応じて、被験体の脳の睡眠状態を判定する、構成が用いられてもよい。

【0106】
また、判定装置では、ニューラルネットワークのカーネルサイズは、所定の周波数帯に応じて決定された値である、構成が用いられてもよい。

【0107】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。

【0108】
また、以上に説明した装置(例えば、判定装置1)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータが読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。

【0109】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…判定装置、12…記憶部、13…入力受付部、14…通信部、15…表示部、16…制御部、22…記憶部、161…取得部、162…生成部、163…計時部、164…判定部、165…表示制御部、D…第2入力情報、D1…第2脳波形情報、D2…第2周波数スペクトル情報、D3…第2時刻情報、D4…出力情報、H…被験体、M…モデル、N1…畳み込みニューラルネットワーク、N2…全結合型ニューラルネットワーク、S…脳波検出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5