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明細書 :重合体の製造方法、及びリビングラジカル重合開始剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6528260号 (P6528260)
公開番号 特開2016-053097 (P2016-053097A)
登録日 令和元年5月24日(2019.5.24)
発行日 令和元年6月12日(2019.6.12)
公開日 平成28年4月14日(2016.4.14)
発明の名称または考案の名称 重合体の製造方法、及びリビングラジカル重合開始剤
国際特許分類 C08F   4/00        (2006.01)
C08F 293/00        (2006.01)
FI C08F 4/00
C08F 293/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 20
出願番号 特願2014-178384 (P2014-178384)
出願日 平成26年9月2日(2014.9.2)
審査請求日 平成29年8月1日(2017.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
発明者または考案者 【氏名】後藤 淳
【氏名】宮本 充彦
【氏名】小松 弘人
【氏名】山口 優
【氏名】實川 拓也
個別代理人の代理人 【識別番号】100120868、【弁理士】、【氏名又は名称】安彦 元
審査官 【審査官】安田 周史
参考文献・文献 特開2010-024263(JP,A)
特開2013-072069(JP,A)
Yaling Zhu et al.,New Dual Initiators To Combine Quasiliving Carbocationic Polymerization and Atom Transfer Radical Po,Macromolecules,2010年,43,p.7048-7055
Yaling Zhu et al.,Effect of Structure on Cationic Initiation Efficiency of a Carbocatonic/ATRP Dual Initiator,Macromolecules,2012年,45,p.1217-1221
Yaling Zhu et al.,New Initiators to Combine Quasiliving Carbocationic Polymerization and Atom Transfer Radical Polymer,Polymer Preprints,2009年,50(2),p.535-536
V. Percec et al.,Metal-Catalyzed Living Radical Graft Copolymerization of Olefins Initiated from the Structural Defec,J. Polym. Sci. Part A,2001年,39,p.1120-1135
後藤 淳,有機触媒を用いたリビングラジカル重合の開発と展開,東海シンポジウム 講演要旨集,2014年,p.1-8
Miho Tanishima et al.,Macromolecular Architectures Designed by Living Radical Polymerization with Organic Catalysts,Polymers,2014年,6,p.311-326
調査した分野 C08F 4/00
C08F 293/00
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(1)からなるリビングラジカル重合開始剤を用いる重合体の製造方法であって、
【化1】
JP0006528260B2_000010t.gif
ここで、R1は2以上の他の有機基と連結可能な有機基であって、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基から選ばれ、
2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基から選ばれる有機基であり、
X、Yはハロゲン原子であり、
m、nは1以上の整数であり、
前記X及びYはモノマーに対し、互いに反応性の異なる状態である;
前記リビングラジカル重合開始剤の前記X又は前記Yの何れか一方のハロゲン原子のみについて、前記リビングラジカル重合反応開始剤と不飽和結合を有するモノマーとを混合し、前記モノマーの種類に応じた反応条件で行うリビングラジカル重合反応を、混合する前記モノマーの種類を順次変えつつ1回以上行い第1生成物を得る第1重合工程と、
前記第1生成物に含まれる前記X及び前記Yの双方のハロゲン原子について、少なくとも1種類以上の前記モノマーを前記モノマーの種類に応じた反応条件で順次リビングラジカル重合反応させ最終生成物を得る第2重合工程と、
を含むことを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン原子はヨウ素、塩素又は臭素であることを特徴とする請求項1記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1重合工程及び前記第2重合工程は触媒を用いて行われ、前記第1重合工程及び前記第2重合工程は反応温度及び前記触媒の種類の少なくとも一方を前記モノマーの種類に応じて異ならせて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記触媒は、原子移動ラジカル重合において用いられる遷移金属錯体系触媒、可逆移動触媒重合において用いられるリン、窒素、炭素、酸素、ゲルマニウム、スズ、及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の中心元素と、前記中心元素に結合したハロゲン原子と、を含む化合物からなる触媒、可逆的錯体形成媒介重合において用いられる有機アミン化合物触媒、又はハロゲン化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、前記非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成している触媒であることを特徴とする請求項3記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
前記第1重合工程及び前記第2重合工程は、180℃以下で行われることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1重合工程及び前記第2重合工程は、30分以上24時間以下の反応時間で行われることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の重合体の製造方法に用いられるリビング重合ラジカル開始剤であって、以下の一般式からなるリビングラジカル重合開始剤:
【化1】
JP0006528260B2_000011t.gif
ここで、R1は2以上の他の有機基と連結可能な有機基であって、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基から選ばれ、
2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基から選ばれる有機基であり、
X、Yはハロゲン原子であり、
m、nは1以上の整数であり、
前記X及びYはモノマーに対し、互いに反応性の異なる状態である。
【請求項8】
前記ハロゲン原子はヨウ素、塩素又は臭素であることを特徴とする請求項7記載のリビングラジカル重合開始剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リビングラジカル重合開始剤を用いる重合体の製造方法、及びリビングラジカル重合開始剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビニルモノマーを重合してビニルポリマーを得る方法として、ラジカル重合法が周知であった。ラジカル重合法は一般的に、得られるビニルポリマーの分子量を制御することが困難であるという欠点があった。
【0003】
また、得られるビニルポリマーが、様々な分子量を有する化合物の混合物になってしまい、分子量分布の狭いビニルポリマーを得ることが困難であるという欠点があった。
【0004】
具体的には、反応を制御しても、重量分子平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として、2~3程度にまでしか減少させることができなかった。
【0005】
このような欠点を解消する方法として、1990年頃から、リビングラジカル重合法が開発されている。すなわち、リビングラジカル重合法によれば、分子量を制御することが可能であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能である。
【0006】
具体的には、Mw/Mnが2以下のものを容易に得ることが可能であることから、ナノテクノロジーなどの最先端分野に用いられるポリマーを製造する方法として脚光を浴びている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-203359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来のリビングラジカル重合法は、重合開始剤の1つの開始基について重合反応が進行していく反応系であったが、複数の開始基についてそれぞれ異なる重合反応を行い得る反応系があればより好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、2つの反応性の異なるハロゲン原子を有し、それぞれを開始基として2方向にそれぞれ異なる重合反応を行うことのできるリビングラジカル重合開始剤、重合体の製造方法及びそれらを用いて製造された重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために、2つの反応性の異なるハロゲン原子を有し、それぞれを開始基として2方向にそれぞれ異なる重合反応を行うことのできるリビングラジカル重合開始剤、重合体の製造方法及びそれらを用いて製造された重合体を発明した。
【0011】
第1発明に係る重合体の製造方法は、以下の一般式(1)からなるリビングラジカル重合開始剤を用いる重合体の製造方法であって、
【化1】
JP0006528260B2_000002t.gif
ここで、R1は2以上の他の有機基と連結可能な有機基であって、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基から選ばれ、
2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基から選ばれる有機基であり、
X、Yはハロゲン原子であり、
m、nは1以上の整数であり、
前記X及びYはモノマーに対し、互いに反応性の異なる状態である
前記リビングラジカル重合開始剤の前記X又は前記Yの何れか一方のハロゲン原子のみについて、前記リビングラジカル重合反応開始剤と不飽和結合を有するモノマーとを混合し、前記モノマーの種類に応じた反応条件で行うリビングラジカル重合反応を、混合する前記モノマーの種類を順次変えつつ1回以上行い第1生成物を得る第1重合工程と、前記第1生成物に含まれる前記X及び前記Yの双方のハロゲン原子について、少なくとも1種類以上の前記モノマーを前記モノマーの種類に応じた反応条件で順次リビングラジカル重合反応させ最終生成物を得る第2重合工程と、を含む。
【0012】
第2発明に係る重合体の製造方法は、第1発明において、前記ハロゲン原子はヨウ素、塩素又は臭素である。
【0014】
第3発明に係る重合体の製造方法は、第1発明又は第2発明において、前記第1重合工程及び前記第2重合工程は触媒を用いて行われ、前記第1重合工程及び前記第2重合工程は反応温度及び前記触媒の種類の少なくとも一方を前記モノマーの種類に応じて異ならせて行われることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る重合体の製造方法は、第3発明において、前記触媒は原子移動ラジカル重合において用いられる遷移金属錯体系触媒、可逆移動触媒重合において用いられるリン、窒素、炭素、酸素、ゲルマニウム、スズ、及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の中心元素と、前記中心元素に結合したハロゲン原子と、を含む化合物からなる触媒、可逆的錯体形成媒介重合において用いられる有機アミン化合物触媒、又はハロゲン化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、前記非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成している触媒であることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る重合体の製造方法は、第1乃至第4発明のうち何れか1つにおいて、前記第1重合工程及び前記第2重合工程は、180℃以下で行われることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る重合体の製造方法は、第1乃至第5発明のうち何れか1つにおいて、前記第1重合工程及び前記第2重合工程は、30分以上24時間以下の反応時間で行われることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係るリビングラジカル重合開始剤は、第1乃至第6発明のうち何れか1つに用いられるリビング重合ラジカル開始剤であって、以下の一般式からなるリビングラジカル重合開始剤:
【化1】
JP0006528260B2_000003t.gif
ここで、R1は2以上の他の有機基と連結可能な有機基であって、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基から選ばれ、R2、R3、R4及びR5は水素原子、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基から選ばれる有機基であり、X、Yはハロゲン原子であり、m、nは1以上の整数であり、前記X及びYはモノマーに対し、互いに反応性の異なる状態である。
第8発明に係るリビングラジカル重合開始剤は、第7発明において、前記ハロゲン原子はヨウ素、塩素又は臭素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した構成からなる本発明によれば、2つの反応性の異なるハロゲン原子を有し、それぞれを開始基として2方向にそれぞれ異なる重合反応を行うことのできるリビングラジカル重合開始剤を用いた重合体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る重合体の製造方法における素反応を示す模式図である。
【図2】実施例に係る重合体の製造方法における重合体の生成過程を示す模式図である。
【図3】実施例に係る重合体の製造方法により得られるリビングラジカル重合開始剤及び各ポリマーの1H-NMRチャートであり、(a)はリビングラジカル重合開始剤としてのヨウ化アルキル開始剤の構造式、(b)はリビングラジカル重合開始剤の1H-NMRチャート、(c)はポリマーPの1H-NMRチャート、(d)はポリマーQの1H-NMRチャート、(e)はポリマーRの1H-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るリビングラジカル重合開始剤及びそれを用いた重合体の製造方法について詳細に説明する。

【0022】
[リビングラジカル重合開始剤]
(1)リビングラジカル重合開始剤の化学式
本実施形態に係るリビングラジカル重合開始剤は、化学式(1)に示す構造を有するものであり、反応性が異なる2つのハロゲン原子を有している。

【0023】
【化1】
JP0006528260B2_000004t.gif

【0024】
上記化学式(1)中、R1は二価以上の有機基すなわち2以上の他の有機基と連結可能な有機基であって、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基が挙げられる。

【0025】
また、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ水素原子、炭素数1~12の脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる有機基であり、X及びYはハロゲン原子、nとmはそれぞれ1以上の整数を示している。化学式(1)の連結基R1の左右の構造は非対称であり、そのためハロゲン原子XとYに異なる反応性が付与されている。

【0026】
(2)連結基
連結基R1は、2以上の他の有機基と連結可能な有機基であれば特に限定されない。具体的には、脂肪族基、芳香族基、炭素数1~12のアルキルカルボニル基、炭素数1~12のアルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、炭素数1~12のアルキルアミノカルボニル基、炭素数1~12のジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基及びこれらの基を2つ以上組み合わせた有機基が挙げられる。

【0027】
この連結基R1は置換基を有していてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限は無く、1又は複数である。

【0028】
この連結基R1について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0029】
脂肪族基としては、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。

【0030】
脂肪族基が置換されている場合には、置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。

【0031】
また、脂肪族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0032】
芳香族基は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、ビナフチリル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。

【0033】
この芳香族基は置換されていてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限は無く、1又は複数である。

【0034】
また、芳香族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0035】
(3)R2~R5
脂肪族基としては、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。

【0036】
脂肪族基が置換されている場合には、置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。

【0037】
また、脂肪族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0038】
芳香族基は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、ビナフチリル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基が挙げられる。

【0039】
この芳香族基は置換されていてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限は無く、1又は複数である。

【0040】
また、芳香族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0041】
またアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基、2-ピリジルカルボニル基、3-ピリジルカルボニル基、4-ピリジルカルボニル基等が挙げられる。

【0042】
またアリールスルホニル基としては、例えば、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。

【0043】
また、化学式(1)中のX及びYはハロゲン原子を示すが、好ましくは塩素、臭素又はヨウ素であり、更に好ましくはヨウ素を示す。

【0044】
上述した本発明に係るリビングラジカル重合開始剤は、反応性が異なる2つのハロゲン原子を反応の開始基として有しているため、反応条件を適宜調整することで、それぞれの開始基について異なるリビングラジカル重合反応を進行させることができる。

【0045】
[重合体の製造方法]
次に、上述したリビングラジカル重合開始剤を用いてリビングラジカル重合を行うことにより得られるラジカル重合性モノマーの重合体の製造方法について説明する。

【0046】
(1)素反応
本実施形態に係る重合体の製造方法は、上述したリビングラジカル重合開始剤を用いて、図1に示す素反応を行うことにより実現される。図1は、本発明の実施形態に係る重合体の製造方法における素反応を示す模式図である。a、b、cはそれぞれ不飽和結合を有するラジカル反応性モノマーを表し、それぞれ違うモノマーであってもよく、又は同じモノマーであってもよい。また、A、B、Cはそれぞれポリマーブロックを表す。

【0047】
図1に示す素反応は、第1段階として、ハロゲン原子の1つを開始基として、ラジカル重合性モノマーの重合反応を混合するモノマーの種類を順次変えつつ1回以上行った後、第2段階として開始剤の骨格に残存した他のハロゲン原子を開始剤として、重合反応を行うことによりポリマーを製造するものである。

【0048】
ここで、図1のリビングラジカル重合開始剤中のハロゲン原子Yは、ハロゲン原子Xよりも反応性が高くなっている。

【0049】
また、反応条件1~4はそれぞれ異なる反応条件となっていて、反応温度、反応時間、触媒の有無や触媒の種類等のうち1つ以上のものがそれぞれ異なっている。

【0050】
図1の反応では、まず、モノマーaとリビングラジカル重合開始剤が、反応条件1で反応する。この反応条件1は、リビングラジカル重合開始剤のうち反応性の高いハロゲン原子Yにのみリビングラジカル重合が進行する条件となっている。

【0051】
こうしてリビングラジカル重合開始剤のハロゲン原子Yにモノマーaが複数重合したポリマーAが生成される。

【0052】
このポリマーAについて、次にモノマーbをリビングラジカル重合反応させるが、このときの反応条件を変えることにより、異なる重合体を得ることができる。

【0053】
具体的には、ポリマーAについて、反応性の高いハロゲン原子Yのみならず、反応性の低いハロゲン原子Xについても反応する反応条件2によりモノマーbを反応させることで、ポリマーAのハロゲン原子X側及びハロゲン原子Y側にそれぞれモノマーbが複数重合したポリマーBABが生成される。

【0054】
一方、ポリマーAについて、反応性の高いハロゲン原子Yのみが反応する反応条件3によりモノマーbを反応させることで、ポリマーAのハロゲン原子Y側にモノマーbが複数重合したポリマーABが生成される。

【0055】
このように、上述した素反応では、反応の第1段階において何れか一方のハロゲン原子が未反応のまま残存し、第2段階、第3段階で反応温度を変えるか、異なる触媒を加えることにより、残存したハロゲン原子が開始基としてモノマーと反応する。

【0056】
このようにして得られたポリマーBABやポリマーABについて、更にリビングラジカル重合反応を進行してもよい。

【0057】
例えば、ポリマーABについて、ハロゲン原子X及びハロゲン原子Yの両方が反応する条件4によりモノマーcを反応させることで、ポリマーABのハロゲン原子X側及びハロゲン原子Y側の両方にモノマーcが複数重合したポリマーCABCが生成される。もちろんポリマーABのハロゲン原子Y側とモノマーcが反応する条件下で反応を行い、ポリマーABCを得ることもできるし、ポリマーCABC又はポリマーABCについて更に異なる重合反応を進行させることもできる。

【0058】
(2)ラジカル重合性モノマー
上述した反応で用いられるラジカル重合性モノマーは、有機ラジカルの存在下でラジカル重合を行い得る不飽和結合を有するモノマーである。このような不飽和結合は二重結合の他、三重結合であってもよい。すなわち、本実施形態に係る重合体の製造方法では、従来からリビングラジカル重合を行い得る公知のモノマーのうち任意のものを用いることができる。

【0059】
こうしたラジカル重合性モノマーは、具体的にはビニルモノマーと呼ばれるモノマーである。ビニルモノマーとは、一般式「CH2=C67」で示されるモノマーの総称である。

【0060】
この一般式において、6がメチルであり、7がカルボキシレートであるモノマーをメタクリレート系モノマーといい、本発明において好適に用いることができる。

【0061】
メタクリレート系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。

【0062】
また、メタクリル酸も用いることができる。

【0063】
また、2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチルメタクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、2-(N-エチル-N-メチル-N-水素化アミノ)エチルメタクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)nF-)塩、N-エチル-N-メチルピロリジニウムメタクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)nF-)塩等のイオン液体性のメタクリレートを用いることができる。

【0064】
上記ビニルモノマーの一般式において6が水素であり、7がカルボキシレートで示されるモノマーは、一般にアクリレート系モノマーといい、本発明において好適に用いることができる。

【0065】
アクリレート系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート等が挙げられる。

【0066】
また、アクリル酸も使用可能である。

【0067】
また、2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチルアクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、2-(N-エチル-N-メチル-N-水素化アミノ)エチルアクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)nF-)塩、N-エチル-N-メチルピロリジニウムアクリレート+/フルオロハイドロジェネーション(FH)nF-)塩等のイオン液体性のアクリレートを用いることができる。

【0068】
アクリレートのリビングラジカル重合の制御は一般に困難であるが、本願発明によれば、その制御を行うことができる。特に、リン系の触媒を使用すれば、アクリレートの重合を好適に制御できる。

【0069】
上記ビニルモノマーの一般式において6が水素であり、7がフェニルで示されるモノマーはスチレンであり、本発明に好適に使用可能である。

【0070】
また、7がフェニル又はフェニル誘導体で示されるモノマーはスチレン誘導体といい、本発明に好適に使用可能である。具体的には、o-、m-、p-メトキシスチレン、o-、m-、p-スチレンスルホン酸等が挙げられる。

【0071】
また、7が芳香族である、ビニルナフタレン等が挙げられる。

【0072】
上記ビニルモノマーの一般式において6が水素であり、7がアルキルであるモノマーはアルキレンであり、本発明に好適に使用可能である。

【0073】
本発明には、2つ以上のビニル基を有するモノマーも使用可能である。具体的には、例えば、ジエン系化合物(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、アリル基を2つ有する化合物(例えば、ジアリルフタレート等)、メタクリルを2つ有するジメタクリレート(例えば、エチレングリコールジメタクリレート)、アクリルを2つ有するジアクリレート(例えばエチレングリコールジアクリレート)等である。

【0074】
本発明には、上述した以外のビニルモノマーも使用可能である。具体的には、例えば、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル)、上記以外のスチレン誘導体(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン)、N-ビニル化合物(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール)、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体(例えば、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド)、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、マレイン酸及びその誘導体(例えば、無水マレイン酸)、ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニル)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1-ヘキセン、シクロヘキセン)等である。

【0075】
これらのモノマーは単独で使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。また、2種以上のモノマーは、第1段階の反応開始時に同時に添加してもよく、又は反応の段階毎に添加してもよい。

【0076】
(3)触媒
任意に選択されたモノマーに対し、必要に応じて任意に選択された本発明の触媒を用いることができる。触媒は無くてもよいが、触媒を加えることにより、反応はより良好に進行する。モノマーの種類と、本発明の触媒の種類との組み合わせは特に限定されない。

【0077】
この触媒としては、例えば原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization、ATRP法)において用いられる遷移金属錯体系触媒、可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyst Polymerization、RTCP法)に於いて用いられるリン、窒素、炭素、酸素、ゲルマニウム、スズ、及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子と、を含む化合物からなる触媒、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)において用いられる有機アミン化合物、及びハロゲン化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、該非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成している触媒を挙げることができる。

【0078】
遷移金属錯体系触媒としては、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族などの低原子価金属と有機配位子とから形成される金属錯体、又は周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族などの低原子価金属と高原子価金属、及び有機配位子の組み合わせからなる金属錯体(特開2002-249505号公報参照)を用いることができる。

【0079】
この低原子価金属の例としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、塩化第一鉄、臭化第一鉄、ヨウ化第一鉄等を、高原子価金属の例としては二塩化鉄、二臭化鉄、二ヨウ化鉄、二塩化ルテニウム、二臭化ルテニウム、二ヨウ化ルテニウム等を挙げることができる。

【0080】
また有機配位子の例としては、ピリジン類、ビピリジン類、ポリアミン類、ホスフィン類等が挙げられ、具体的には2,2’-ビピリジル及びその誘導体、1,10-フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等を挙げることができる。

【0081】
ゲルマニウム、スズ、またはアンチモンから選択される中心元素とする触媒としては、ゲルマニウム、スズ、またはアンチモンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子を含む化合物が挙げられ、具体的にはヨウ化ゲルマニウム(II)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化スズ(IV)等を挙げることができる(特開2007-92014号公報参照)。

【0082】
窒素またはリンを中心元素とする触媒としては、窒素またはリンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物が挙げられ、具体的には、ハロゲン化リン、ハロゲン化ホスフィン、ハロゲン化窒素、ハロゲン化亜リン酸、ハロゲン化アミンあるいはハロゲン化イミド誘導体等を挙げることができる(国際公開WO2008/139980号公報参照)。

【0083】
有機アミン化合物触媒としては、具体的にはトリエチルアミン、トリブチルアミン、1,1,2,2-テトラキス(ジメチルアミノ)エテン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノメタン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-(メチルアミノ)エチル)アミン、及びヘマトポルフィリン等を挙げることができる(国際公開WO2011/016166号公報参照)。

【0084】
ハロゲン化物イオンとのイオン結合を有する非金属化合物であって、該非金属化合物中の非金属原子がカチオンの状態であり、ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成している触媒としては、具体的にはアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられ、より具体的には、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムトリヨーダイド、テトラブチルアンモニウムブロモジヨーダイド、1-メチル-3-メチル-イミダゾリウムヨーダイド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨーダイド、ヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド、メチルトリブチルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド、トリブチルスルホニウムヨーダイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等を挙げることができる(国際公開WO2013/027419号公報参照)。

【0085】
(4)反応温度
反応温度は特に限定されず、0℃~180℃が好ましく、30℃~120℃がより好ましい。

【0086】
(5)反応時間
反応時間は30分~24時間の範囲で各反応に好適なものを適宜選択することができる。

【0087】
(6)反応溶媒
反応は無溶媒下で行うこともできるが、溶媒を用いてもよい。反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限は無いが、アセトニトリル、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ等を用いることが好ましい。
【実施例】
【0088】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例になんら制限されるものではない。
【実施例】
【0089】
<リビングラジカル重合開始剤の製造>
(実施例1)2-ヨード-2-(4‘-(2“-ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチルの製造
【実施例】
【0090】
【化2】
JP0006528260B2_000005t.gif
【実施例】
【0091】
4-ヒドロキシフェニル酢酸メチル25.00g(150.4mmol)、ピリジン47.60g(601.7mmol)、ジエチルエーテル100mLの混合液に、2-ブロモプロピオニルブロミド38.97g(180.5mmol)のジエチルエーテル50mL溶液を0℃で添加した。
【実施例】
【0092】
その後、室温で30分撹拌した後、反応混合物を5%臭化水素酸、飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、2-(4‘-(2“-ブロモプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル42.91g(収率95%)を得た。
【実施例】
【0093】
次に、2-(4‘-(2“-ブロモプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル9.94g(33.00mmol)のジクロロエタン66mL溶液にN-ブロモスクシンイミド7.05g(39.60mmol)を室温で添加し、LEDライト照射下で5時間還流撹拌した。
【実施例】
【0094】
得られた反応混合物を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、2-ブロモ-2-(4‘-(2“-ブロモプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル11.67g(収率93%)を得た。
【実施例】
【0095】
2-ブロモ-2-(4‘-(2“-ブロモプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル10.37g(27.23mmol)のアセトニトリル55mL溶液にヨウ化ナトリウム16.35g(109.11mmol)を0℃で添加し、同温で1.5時間撹拌した。
【実施例】
【0096】
得られた反応混合物にジクロロメタンを加え、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。
【実施例】
【0097】
抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して2-ヨード-2-(4‘-(2“-ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル5.80g(収率45%)を得た。1H NMR (CDCl3): □ = 2.04 (d, 3H
), 3.76 (s, 3H), 4.68 (q, 1H), 5.52 (s, 1H), 7.07(d, 2H), 7.63(d, 2H).
【実施例】
【0098】
(実施例2)2-ヨードイソ酪酸4-ヨードブチルの製造
【実施例】
【0099】
【化3】
JP0006528260B2_000006t.gif
【実施例】
【0100】
2-ブロモイソ酪酸ブロミド4.5g(20mmol)とヨウ化ナトリウム9.0g(60mmol)を遮光下で混合し、テトラヒドロフラン4.8mL(60mmol)を加えて25℃で2時間、次いで50℃で30分撹拌した。
【実施例】
【0101】
次に、得られた反応混合物にジクロロメタンを加え、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、アセトニトリル20mLを加え、ここにヨウ化ナトリウム6.0g(40mmol)を加えて80℃で7時間反応させた後に、ヨウ化ナトリウム9.0g(60mmol)を加えてさらに7時間反応させた。
【実施例】
【0102】
その後、沈殿物を濾別し、減圧濃縮した後、ジクロロメタンを加えて飽和亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。
【実施例】
【0103】
そして、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(4-ヨードブチル)2-ヨードイソ酪酸を4.4g(収率68%)を得た。1H NMR (CDCl3): □ = 4.17 (t, 2H), 3.22 (t, 2H), 2.06 (s, 6H), 1.98-1.90 (m, 2H), 1.83-1.7
7 (m, 2H).
【実施例】
【0104】
(実施例3)2-ヨード-2-(4‘-(4“-ヨードブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチルの製造
【実施例】
【0105】
【化4】
JP0006528260B2_000007t.gif
【実施例】
【0106】
4-ヒドロキシフェニル酢酸メチル20.00g(120.36mmol)、4-ブロモ酪酸22.11g(132.39mmol)、ベンゼン60mLの混合液に、塩化ホスホリル16.69g(108.32mmol)を室温で添加した。
【実施例】
【0107】
その後、80℃で5.5時間撹拌した後、反応混合物を水100mLに添加し有機層を抽出した。抽出液を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、2-(4‘-(4“-ブロモブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル34.37g(収率91%)を得た。
【実施例】
【0108】
2-(4‘-(4“-ブロモブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル26.31g(83.48mmol)のジクロロエタン85mL溶液にN-ブロモスクシンイミド22.29g(125.22mmol)を室温で添加した。
【実施例】
【0109】
次に、LEDライト照射下で6.5時間還流撹拌した。得られた反応混合物を飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。
【実施例】
【0110】
次に、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-ブロモ-2-(4‘-(4“-ブロモブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル7.29g(収率22%)を得た。
【実施例】
【0111】
次に、2-ブロモ-2-(4‘-(4“-ブロモブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル6.92g(17.56mmol)のアセトン20mL溶液にヨウ化ナトリウム6.32g(42.14mmol)を室温で添加し、その後40℃で0.5時間撹拌した。
【実施例】
【0112】
次に、得られた反応混合物にジクロロメタンを加え、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。
【実施例】
【0113】
そして、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-ヨード-2-(4‘-(4“-ヨードブタノイルオキシ)フェニル)酢酸メチル2.50g(収率30%)を得た。1H NMR (CDCl3): □ = 2.17-2.21 (m, 2H), 2.66-2.69 (t, 2H), 3.25-3.28 (t, 2H),
3.73 (s, 3H), 5.53 (s, 1H), 7.02-7.04(m, 2H), 7.59-7.61(m, 2H).
【実施例】
【0114】
(実施例4)2-ヨードフェニル酢酸4-ヨードブチルの製造
【実施例】
【0115】
【化5】
JP0006528260B2_000008t.gif
【実施例】
【0116】
2-ブロモフェニル酢酸6.5g(30mmol)に塩化チオニル4.2mL(60mmol)を混合し、遮光下、80℃で50分間撹拌した。
【実施例】
【0117】
続いて減圧下で揮発成分を除去してからTHF8mL(100mmol)を加え、遮光下でヨウ化ナトリウム18.0g(120mmol)を加えて27℃で2時間撹拌後、ヨウ化ナトリウム4.5g(30mmol)を加えて同条件で5時間撹拌した。
【実施例】
【0118】
次に、反応混合物にジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム水溶液10mLで洗浄し、さらに水相をジクロロメタン20mLで抽出し、有機層を混合した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。
【実施例】
【0119】
そして、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2-ヨードフェニル酢酸4-ヨードブチル4.1g(収率31%)を得た。1H NMR (CDCl3): □ = 7.59-7.57 (m, 2H), 7.33-7.27 (m, 3H), 5.18 (s, 1H), 4.21-4.14 (m, 2H),
3.18 (t, 3H), 1.92-1.86 (m, 2H), 1.81-1.76 (m, 2H).
【実施例】
【0120】
(実施例5)2-ヨード—2—フェニル酢酸2-(ヨードアセトキシ)エチルの製造
【実施例】
【0121】
【化6】
JP0006528260B2_000009t.gif
【実施例】
【0122】
2-ブロモフェニル酢酸25.00g(114.66mmol)に塩化チオニル27.28g(229.32mmol)を加え、1時間還流撹拌した。
【実施例】
【0123】
その後、減圧化で残留塩化チオニルを除去し、エチレングリコール284.67g(4586.32mmol)とピリジン9.52g(120.39mmol)の混合物に室温で添加した。
【実施例】
【0124】
同温で1時間撹拌した後、ジエチルエーテルを加え、1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した。
【実施例】
【0125】
無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、2-ブロモ-2-フェニル酢酸2-ヒドロキシエチル23.61g(収率80%)を得た。
【実施例】
【0126】
2-ブロモ-2-フェニル酢酸2-ヒドロキシエチル5.00g(19.30mmol)、ピリジン1.60g(20.26mmol)、ジエチルエーテル20mLの混合物に、2-ブロモプロピオニルブロミド4.09g(20.26mmol)のジエチルエーテル10mL溶液を室温で添加した。
【実施例】
【0127】
同温で1時間撹拌した後、得られた反応混合物を5%臭化水素酸、飽和炭酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。
【実施例】
【0128】
抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-ブロモ-2-フェニル酢酸2-(ブロモアセトキシ)エチル4.41g(収率60%)を得た。
【実施例】
【0129】
2-ブロモ-2-フェニル酢酸2-(ブロモアセトキシ)エチル4.25g(11.18mmol)のアセトン22mL溶液に0℃でヨウ化ナトリウム4.02g(26.83mmol)を添加し、同温で30分撹拌した。
【実施例】
【0130】
その後、沈殿物を濾別し、減圧濃縮してジクロロメタンを加え飽和亜硫酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、有機層を抽出した。
【実施例】
【0131】
そして、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-ヨード-2-フェニル酢酸2-(ヨードアセトキシ)エチル2.52g(収率48%)を得た。1H NMR (CDCl3): □ = 3.66 (s, 2H), 4.34-4.38 (m, 4H), 5.55 (s, 1H), 7.28-7.33 (m, 3H), 7.58-7.60
(m, 2H).
【実施例】
【0132】
<重合体の製造>
上述した素反応に基づき、以下の具体的な反応条件でリビングラジカル重合体の製造を行った。図2は、実施例に係る重合体の製造方法における重合体の生成過程を示す模式図である。図3は、実施例に係る重合体の製造方法により得られるリビングラジカル重合開始剤及び各ポリマーの1H-NMRチャートであり、(a)はリビングラジカル重合開始剤としてのヨウ化アルキル開始剤の構造式、(b)はリビングラジカル重合開始剤の1H-NMRチャート、(c)はポリマーPの1H-NMRチャート、(d)はポリマーQの1H-NMRチャート、(e)はポリマーRの1H-NMRチャートである。
【実施例】
【0133】
本実施例に係る重合体の製造方法では、全ての重合反応はアルゴンガス雰囲気下にて行った。
【実施例】
【0134】
ブチルメタクリレート(BMA)20mL(8M)に、2-ヨード-2-(4’-(2’’-ヨードプロピオニルオキシ)フェニル)酢酸メチル(160mM)及びトリブチルメチルホスホニウムヨージド(80mM)を加え、60℃で8時間加熱撹拌した。重合率(モノマー転化率)は、55%であった。
【実施例】
【0135】
冷却したヘキサンに反応液を加え、ポリマーを再沈殿させて単離した。単離したポリマーPは、Mn=3,900、PDI=1.15であった。NMR測定により、ヨウ化フェニルアセチル部位は、重合がほぼ100%開始してポリマーが成長したのに対し、ヨウ化プロピオニル部位は96%が開始せず、ヨウ化フェニルアセチル部位からほぼ選択的にBMAのポリマーが成長した。
【実施例】
【0136】
このポリマーP(160mM)に、メチルメタクリレート(MMA)20mL(8M)及びトリブチルメチルホスホニウムアイオダイド(80mM)を加え、60℃で8時間加熱撹拌を行った。MMAの重合率(モノマー転化率)は、30%であった。
【実施例】
【0137】
冷却したヘキサンに反応液を加え、ポリマーを再沈殿させて単離した。単離したポリマーQはMn=5,800、PDI=1.24であった。NMR測定により、ヨウ化プロピオニル部位は90%が開始せず、ヨウ化フェニルアセチル部位からほぼ選択的にブロックポリマー(BMAとMMA)が生成した。
【実施例】
【0138】
更に、この2段階の反応で得られたポリマーQ(160mM)に、n-ブチルアクリレート(BA)20mL(8M)及びテトラブチルアンモニウムヨージド(320mM)を加え、110℃で24時間加熱撹拌を行った。BAの重合率(モノマー転化率)は、32%であった。冷却したヘキサンに反応液を加え、ポリマーを再沈殿させて単離した。
【実施例】
【0139】
単離したポリマーRはMn=8,000、PDI=1.33であった。NMR測定により、ヨウ化プロピオニル部位から、重合がほぼ100%開始してBAのホモポリマーが成長するとともに、ヨウ化フェニルアセチル部位からトリブロックポリマー(BMA、MMA、及びBA)が成長した。
【実施例】
【0140】
これにより、A鎖をBMA、B鎖をMMA、C鎖をBAとする、CABC型の非対称マルチブロックポリマーを合成することができた。
【実施例】
【0141】
各段階で得られたポリマーP、Q、Rの1H-NMRチャートはそれぞれ図3の(c)~(e)に示すとおりである。
【実施例】
【0142】
なお、濃度の「M」は、モノマー1リットルを基準とするモル数を示す。例えば、8Mは、モノマー1リットルに8モルが含まれていることを意味する。なお、MMAの場合、モノマー1リットルが(バルクが)、室温で8モルである。
【実施例】
【0143】
また、濃度の「mM」は、モノマー1リットルを基準とするミリモル数を示す。例えば、80mMは、モノマー1リットルに80ミリモルが含まれていることを意味する。
【実施例】
【0144】
また、「Mn」は、得られたポリマーの数平均分子量である。
【実施例】
【0145】
また、「PDI」はMw/Mnの比を示している。
【実施例】
【0146】
上述した本発明に係る重合体の製造方法によると、反応性が異なる2つのハロゲン原子を反応の開始基として有するリビングラジカル重合開始剤を用いているため、反応条件を適宜調整することで、それぞれの開始基について異なるリビングラジカル重合反応を進行させることができる。
【符号の説明】
【0147】
1 連結基
2 水素原子、芳香族基、脂肪族基及びアシロイル基のうち何れか1つ
X、Y ハロゲン原子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2