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明細書 :上体運動計測システム及び上体運動計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6288706号 (P6288706)
公開番号 特開2015-186515 (P2015-186515A)
登録日 平成30年2月16日(2018.2.16)
発行日 平成30年3月7日(2018.3.7)
公開日 平成27年10月29日(2015.10.29)
発明の名称または考案の名称 上体運動計測システム及び上体運動計測方法
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
A61B   5/103       (2006.01)
FI A61B 5/10 310A
A61B 5/10 ZDM
請求項の数または発明の数 10
全頁数 37
出願番号 特願2014-064658 (P2014-064658)
出願日 平成26年3月26日(2014.3.26)
審査請求日 平成29年2月22日(2017.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】竹中 透
【氏名】池内 康
【氏名】長田 陽祐
【氏名】大畑 光司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000800、【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
審査官 【審査官】▲高▼ 芳徳
参考文献・文献 米国特許出願公開第2010/0117837(US,A1)
特開2009-186244(JP,A)
特開2009-106390(JP,A)
特表2012-513227(JP,A)
特開2005-114537(JP,A)
米国特許第5919149(US,A)
調査した分野 A61B 5/103 - 5/113
特許請求の範囲 【請求項1】
角速度を検出する角速度センサと加速度を検出する加速度センサとの組が各々搭載されており、被験者の上体の互いに異なる箇所に装着される複数の慣性センサユニットと、
前記被験者の上体に装着された各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力により示される角速度の検出値と加速度の検出値を基に、前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢を推定するセンサユニット姿勢推定手段と、
前記被験者の上体に装着された各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、前記センサユニット姿勢推定手段により推定された各慣性センサユニットの姿勢とを基に、前記被験者の運動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度を推定するセンサユニット加速度推定手段と、
前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度の組を基に、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定する上体角加速度推定手段とを備えることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項2】
請求項1記載の上体運動計測システムにおいて、
前記複数の慣性センサユニットは、前記被験者の体幹軸に沿って該上体の上下方向に間隔を存するように該上体に装着される2つの慣性センサユニットを少なくとも含んでおり、
前記上体角加速度推定手段が推定する角加速度は、前記被験者のロール方向での上体の角加速度と前記被験者のピッチ方向での角加速度とのうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項3】
請求項2記載の上体運動計測システムにおいて、
前記2つの慣性センサユニットのうちの上側の慣性センサユニットは、前記被験者の上体のうち、該被験者の胸椎と腰椎との境目よりも上側の箇所に装着され、前記2つの慣性センサユニットのうちの下側の慣性センサユニットは、前記被験者の上体のうち、該被験者の胸椎と腰椎との境目よりも下側の箇所に装着されることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の上体運動計測システムにおいて、
前記グローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度、又は前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を対象状態量と定義したとき、前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットを上体に装着した前記被験者の歩行動作が行われた場合に、該歩行動作における前記対象状態量の推定値の時系列を生成する基本推定値生成処理と、該歩行動作における2歩分の歩容での前記対象状態量の平均波形データを生成する平均波形データ生成処理とを実行するように構成されており、
前記平均波形データ生成処理は、前記被験者の歩行動作に含まれるn個(n:2以上の整数)の2歩分の歩容のそれぞれに対応して前記基本推定値生成処理により生成された前記対象状態量の推定値の時系列により示される波形データを時間軸方向にスケール変換することにより、2歩分の歩容の期間の時間幅を正規化してなる正規化波形データを生成し、さらに、前記n個の2歩分の歩容のそれぞれに対応するn個の前記正規化波形データの平均の波形データを前記平均波形データとして生成するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項5】
請求項4記載の上体運動計測システムにおいて、
前記平均波形データ生成処理のうちの前記正規化波形データを生成する処理は、該正規化波形データにおける前記被験者の右脚側の1歩の期間の時間幅と左脚側の1歩の期間の時間幅との比率が、前記被験者の歩行動作に含まれるn個の2歩分の歩容における右脚側の1歩の期間の実際の時間幅の平均値と、該n個の2歩分の歩容における左脚側の1歩の期間の実際の時間幅の平均値との比率に一致するように、前記正規化波形データを生成するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項6】
請求項4又は5記載の上体運動計測システムにおいて、
前記平均波形データ生成処理を実行する前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記平均波形データ生成処理により生成した前記平均波形データからオフセット成分を除去するオフセット成分除去処理をさらに実行するように構成されており、該オフセット成分除去処理は、前記オフセット成分を除去した後の平均波形データにより示される前記対象状態量の値の、前記2歩分の歩容の期間における平均値がゼロになるという条件を満たすように前記オフセット成分を除去するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の上体運動計測システムにおいて、
前記平均波形データ生成処理を実行する前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットのうちの少なくとも1つの慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値又は当該少なくとも1つの慣性センサユニットに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度の変化に基づいて、前記被験者の歩行動作における1歩毎の切替わりのタイミングを認識するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載の上体運動計測システムにおいて、
前記センサユニット加速度推定手段は、前記各慣性センサユニットの加速度に関する前記平均波形データを生成するように構成されており、
前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により生成された平均波形データに示される各慣性センサユニットの加速度の推定値を用いて前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角加速度の推定値の時系列により構成される角加速度波形データを生成するように構成されており、
前記上体角加速度推定手段により生成された前記角加速度波形データにより示される角加速度の推定値を積分することにより前記被験者の上体の角速度の推定値を算出する上体角速度推定手段をさらに備えており、
前記上体角速度推定手段は、前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角速度の推定値の平均値がゼロになるという条件を満たすように、前記被験者の上体の角速度の推定値を算出するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載の上体運動計測システムにおいて、
前記上体角加速度推定手段は、前記被験者の上体の角加速度に関する前記平均波形データを生成するように構成されており、
前記上体角加速度推定手段により生成された前記平均波形データにより示される角加速度の推定値を積分することにより前記被験者の上体の角速度の推定値を算出する上体角速度推定手段をさらに備えており、
前記上体角速度推定手段は、前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角速度の推定値の平均値がゼロになるという条件を満たすように、前記被験者の上体の角速度の推定値を算出するように構成されていることを特徴とする上体運動計測システム。
【請求項10】
角速度を検出する角速度センサと加速度を検出する加速度センサとの組が各々搭載された複数の慣性センサユニットを被験者の上体の互いに異なる箇所に装着した状態で各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力を取得する第1工程と、
前記第1工程で取得された各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力により示される角速度の検出値と加速度の検出値とを基に、前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢を推定する第2工程と、
前記第1工程で取得された各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、各慣性センサユニットに関して前記第2工程で推定され各慣性センサユニットの姿勢とを基に、前記被験者の移動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度を推定する第3工程と、
前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記3工程で推定された加速度の組を基に、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定する第4工程とを備えることを特徴とする上体運動計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人(被験者)の上体の姿勢の動きを推定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の歩行状態を把握するために、歩行中の人の所定の部位の姿勢、あるいは、その姿勢の変化等をジャイロセンサ等の角速度センサ用いて計測することが従来より一般に行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、歩行者の腰部と各脚の大腿部、下腿部及び足部とにジャイロセンサを取り付けて、これらのジャイロセンサの検出値を用いて、股関節、膝関節、足首関節の関節角度を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-65723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者の種々様々な実験、検討によれば、歩行中の人の上体の姿勢の動き、特に、ピッチ方向もしくはロール方向での上体の姿勢の動きは、歩行中の人の脚の動きの影響が顕著に反映される。
【0006】
また、特に、上体の角加速度は、歩行中の人に作用する床反力の状態にも密接に関連する。
【0007】
従って、歩行中の人の上体の角加速度等、該上体の姿勢の動きを観測することは、人の歩行状態(例えば、左右の脚の動きのバランス状態、リハビリによる脚の動きの回復状態等)を把握し、もしくは評価する上で必要性の高い事項である。
【0008】
この場合、人の上体にジャイロセンサ等の角速度センサを取り付けて、該角速度センサによる角速度の検出値に基づいて、上体の姿勢の動きを観測することが考えられる。そして、この場合、前記特許文献1に見られる腰部のジャイロセンサと同様に、角速度センサを、幅広のベルト等の固定板を介して人の上体に取り付けることが考えられる。
【0009】
しかしながら、このように角速度センサを、幅広のベルト等の固定板を介して人の上体に取り付ける手法では、比較的大きな接触面で人の上体に固定板が装着されるため、人に不快感、違和感、異物の装着感等を及ぼしやすい。
【0010】
さらに、上記不快感、違和感、異物の装着感等に起因して、あるいは、上記固定板の重量に起因して、人の歩行形態が、上記固定板が装着されていない通常時の歩行形態と異なるものとなってしまう場合もある。そして、このような場合には、人の歩行状態を高い信頼性で適切に評価することができなくなってしまう。
【0011】
かかる不都合を解消するためには、角速度センサを、極力小さい接触面積で人の上体に装着することが考えられる。
【0012】
しかるに、このようにした場合には、角速度センサの姿勢を人の上体の姿勢に精度よく安定に追従させることが難しく、角速度センサの姿勢の動きが、上体の実際の姿勢の動きに対してずれを生じやすい。その結果、人の上体の姿勢の動きを高い信頼性で観測することが困難となる。
【0013】
また、例えば人の上体の角加速度を、該上体に装着した角速度センサを用いて計測しようとする場合には、該角速度センサによる角速度の検出値を微分する演算が必要となる。このため、上体の角加速度の計測値が、角速度の検出値に含まれるノイズ成分の影響を受けやすい。ひいては、上体の角加速度の測定精度が低下しやすいという不都合がある。
【0014】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、人(被験者)の上体の姿勢の動きを適切に測定することができるシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上体運動計測システムは、かかる目的を達成するために、角速度を検出する角速度センサと加速度を検出する加速度センサとの組が各々搭載されており、被験者の上体の互いに異なる箇所に装着される複数の慣性センサユニットと、
前記被験者の上体に装着された各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力により示される角速度の検出値と加速度の検出値を基に、前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢を推定するセンサユニット姿勢推定手段と、
前記被験者の上体に装着された各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、前記センサユニット姿勢推定手段により推定された各慣性センサユニットの姿勢とを基に、前記被験者の運動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度を推定するセンサユニット加速度推定手段と、
前記複数の慣性センサユニットのうちの少なくとも2つの慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度を線形結合することにより、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定する上体角加速度推定手段とを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0016】
なお、本発明において、各慣性センサユニットの角速度センサが検出する角速度は、より詳しくは、空間的な(3次元空間の)角速度ベクトルである。同様に、各慣性センサユニットの加速度センサが検出する加速度は、より詳しくは、空間的な(3次元空間の)加速度ベクトルである。
【0017】
上記第1発明によれば、前記複数の慣性センサユニットが装着された前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢(空間的な姿勢)が、前記センサユニット姿勢推定手段によって推定される。
【0018】
ここで、前記各慣性センサユニットは、前記角速度センサ及び加速度センサの組が搭載されたものである。このため、各慣性センサユニットの姿勢を、該慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力により示される角速度の検出値と加速度の検出値とを基に推定できる。その推定の演算処理としては、例えばストラップダウン演算等の公知の演算処理を採用することができる。
【0019】
そして、被験者の移動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度(並進加速度)が前記センサユニット加速度推定手段により推定される。
【0020】
この場合、各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値、該加速度センサ、又は該慣性センサユニットに対して固定されたローカル座標系で表現され得る並進加速度である。そして、被験者の移動環境における各慣性センサユニットの姿勢は、前記センサユニット姿勢手段手段により推定される。
【0021】
従って、各慣性センサユニット毎に、各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、前記センサユニット姿勢推定手段により推定された該慣性センサユニットの姿勢とを基に、グローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度(並進加速度)を推定できる。
【0022】
そして、前記上体角加速度推定手段により被験者の上体の角加速度が推定される。
【0023】
ここで、上体の姿勢の動きによる角加速度が発生した場合、該角加速度が一定であっても、上体の互いに離れた各部の加速度(並進加速度)は一般には互いに異なる。例えば、上体の姿勢の回転中心付近からより遠い部分の加速度は、該回転中心により近い部分の加速度よりも大きくなる。
【0024】
従って、被験者の歩行時等の上体の動きによって該上体の角加速度が変化すると、被験者の上体の互いに異なる箇所に装着された複数の慣性センサユニットのそれぞれの加速度の値の組が変化する。
【0025】
この場合、各慣性センサユニットの前記被験者の上体への装着箇所が局所的なものであっても、各慣性センサユニットの加速度(並進加速度)が、該慣性センサユニットの装着箇所での上体の部位の加速度に対して高い追従性を有するように各慣性センサユニットを被験者の上体に装着し得る。
【0026】
従って、前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度の組を基に、前記上体角加速度推定手段によって、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定することで、実際の角加速度に対して追従性の高い推定値を得ることができる。
【0027】
また、被験者の上体への各慣性センサユニットの装着箇所を局所的なものとすることができるので、被験者に違和感や不快感等を及ぼすことなく、各慣性センサユニットを被験者の上体に装着することができる。このため、複数の慣性センサユニットを被験者に装着した場合と装着していない場合とで、被験者の動きに違いが生じるのを防止できる。ひいては、複数の慣性センサユニットを装着していない場合の被験者の通常的な動きに対して、上体の角加速度を計測することができる。
【0028】
よって、第1発明によれば、人(被験者)の上体の姿勢の動きを適切に測定することができる。
【0029】
なお、本発明では、前記上体角加速度推定手段は、例えば、前記複数の慣性センサユニットの加速度の推定値を線形結合することよって被験者の上体の角加速度の推定値を算出することができる。この場合、当該線形結合の係数値としては、慣性センサユニット同士の間の距離又は位置関係に応じて設定した値、あるいは、実験的に設定した値等を使用できる。
【0030】
また、前記上体角加速度推定手段が推定する角加速度は、特定の1方向、又は2方向の角加速度であってもよい。
【0031】
上記第1発明では、前記複数の慣性センサユニットは、前記被験者の体幹軸に沿って該上体の上下方向に間隔を存するように該上体に装着される2つの慣性センサユニットを少なくとも含んでおり、前記上体角加速度推定手段が推定する角加速度は、前記被験者のロール方向での上体の角加速度と前記被験者のピッチ方向での角加速度とのうちの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい(第2発明)。
【0032】
この第2発明によれば、前記2つの慣性センサユニットが、前記被験者の上体の体幹軸に沿って該上体の上下方向に間隔を存するように該上体に装着されるので、該2つの慣性センサユニットの加速度(グローバル座標系見た加速度)の組が前記被験者のロール方向での上体の角加速度と前記被験者のピッチ方向での角加速度とに対して高い相関性を有するものとなる。
【0033】
より詳しくは、2つの慣性センサユニットの加速度のうち、主に、被験者のピッチ軸方向(略左右方向)の加速度の値の組が被験者の上体のロール方向の角加速度に対して高い相関性を有するものとなる。
【0034】
また、2つの慣性センサユニットの加速度のうち、主に、被験者のロール軸方向(略前後方向)の加速度の値の組が被験者の上体のピッチ方向の角加速度に対して高い相関性を有するものとなる。
【0035】
従って、第2発明によれば、被験者のピッチ方向及びロール方向の一方又は両方の角加速度を高い信頼性で推定できる。ひいては、被験者の歩行動作等の運動状態を解析もしくは評価する上で有用性の高い計測データ(角加速度の推定値)を得ることができる。
【0036】
上記第2発明では、前記2つの慣性センサユニットのうちの上側の慣性センサユニットは、前記被験者の上体のうち、該被験者の胸椎と腰椎との境目よりも上側の箇所に装着され、前記2つの慣性センサユニットのうちの下側の慣性センサユニットは、前記被験者の上体のうち、該被験者の胸椎と腰椎との境目よりも下側の箇所に装着されることことが好ましい(第3発明)。
【0037】
ここで、前記被験者の上体のうち、該被験者の胸椎と腰椎との境目よりも上側の箇所は、内部に肋骨が配置されている箇所なので該上体において、比較的剛性が高い箇所である。
【0038】
また、上記境目より下側の箇所は、被験者の上体のピッチ方向又はロール方向の姿勢の回転中心近辺の箇所に相当する。
【0039】
従って、第3発明によれば、被験者のピッチ方向及びロール方向の一方又は両方の角加速度を、より一層、高い信頼性で推定できる。
【0040】
また、前記第1~第3発明では、前記グローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度、又は前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を対象状態量と定義したとき、前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットを上体に装着した前記被験者の歩行動作が行われた場合に、該歩行動作における前記対象状態量の推定値の時系列を生成する基本推定値生成処理と、該歩行動作における2歩分の歩容での前記対象状態量の平均波形データを生成する平均波形データ生成処理とを実行するように構成されており、前記平均波形データ生成処理は、前記被験者の歩行動作に含まれるn個(n:2以上の整数)の2歩分の歩容のそれぞれに対応して前記基本推定値生成処理により生成された前記対象状態量の推定値の時系列により示される波形データを時間軸方向にスケール変換することにより、2歩分の歩容の期間の時間幅を正規化してなる正規化波形データを生成し、さらに、前記n個の2歩分の歩容のそれぞれに対応するn個の前記正規化波形データの平均の波形データを前記平均波形データとして生成するように構成されていることが好ましい(第4発明)。
【0041】
なお、第4発明では、前記センサユニット加速度推定手段が、前記対象状態量としての各慣性センサユニットの加速度に関する前記基本推定値生成処理及び前記平均波形データ生成処理を実行する場合、前記基本推定値生成処理では、より詳しくは、各慣性センサユニット毎に、該慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、前記センサユニット姿勢推定手段により推定された該慣性センサユニットの姿勢とを基に、前記歩行動作における前記対象状態量(各慣性センサユニットの加速度)の推定値の時系列が算出される。
【0042】
また、前記上体姿勢角加速度推定手段が、前記対象状態量としての被験者の上体の角か加速度に関する前記基本推定値生成処理及び前記平均波形データ生成処理を実行する場合、前記基本推定値生成処理では、より詳しくは、前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度の組を基に、前記歩行動作における前記対象状態量(上体の角加速度)の推定値の時系列が算出される。
【0043】
ここで、被験者の歩行状態での上体の動きを、解析あるいは評価する上では、被験者の複数歩の歩行動作における2歩分の歩容(換言すれば、歩行動作の繰り返しにおける1周期分の歩容)の期間での、平均的な上体の動き(加速度、各加速度等)の波形データを得ることが望ましいと考えられる。
【0044】
そこで、第4発明では、前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記対象状態量の連続的な波形データを得るための前記基本推定値生成処理に加えて、前記平均波形データ生成処理を実行する。
【0045】
この場合、前記被験者の歩行動作に含まれるn個の(複数の)2歩分の歩容のそれぞれの期間の時間幅は、定常的な歩行動作であっても、一般には、n個の(複数の)2歩分の歩容のそれぞれに関して互いに異なる。
【0046】
そこで、前記平均波形データ生成処理では、n個の(複数の)2歩分の歩容のそれぞれについて、2歩分の歩容の期間の時間幅を正規化してなる前記正規化波形データを生成した上で、前記平均波形データを生成する。
【0047】
なお、2歩分の歩容の期間の時間幅を正規化するということは、n個の2歩分の歩容のそれぞれの時間幅を、互いに同一の所定値(一定値)にすることを意味する。
【0048】
これにより、被験者の歩行動作における2歩分の歩容の期間における前記対象状態量の平均的な波形データとしての前記平均波形データを適切に生成することができる。
【0049】
また、上記の如く生成される平均波形データを使用することで、被験者の歩行状態の解析あるいは評価を高い信頼性で適切に行うことが可能となる。
【0050】
補足すると、本発明では、前記平均波形データにより示される前記対象状態量の値(瞬時値)は、該対象状態量の推定値であるとみなす。
【0051】
従って、前記センサユニット加速度推定手段が、前記対象状態量としての各慣性センサユニットの加速度に関する前記基本推定値生成処理及び前記平均波形データ生成処理を実行する場合においては、各慣性センサユニット毎の前記平均波形データにより示される該慣性センサユニットの加速度の値は、前記センサユニット加速度生成手段が推定した加速度としての意味を持つ。
【0052】
この場合、前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関する前記平均波形データにより示される加速度の値(推定値)を用いて、前記2歩分の歩容の期間における被験者の角加速度(瞬時値又はその時系列)を推定するようにしてもよい。
【0053】
上記第4発明では、前記平均波形データ生成処理のうちの前記正規化波形データを生成する処理は、該正規化波形データにおける前記被験者の右脚側の1歩の期間の時間幅と左脚側の1歩の期間の時間幅との比率が、前記被験者の歩行動作に含まれるn個の2歩分の歩容における右脚側の1歩の期間の実際の時間幅の平均値と、該n個の2歩分の歩容における左脚側の1歩の期間の実際の時間幅の平均値との比率に一致するように、前記正規化波形データを生成するように構成されていることが好ましい(第5発明)。
【0054】
なお、前記被験者の右脚側の1歩の期間というのは、右脚が支持脚(又は遊脚)として動作する期間を意味し、前記被験者の左脚側の1歩の期間というのは、左脚が支持脚(又は遊脚)として動作する期間を意味する。この場合、両脚支持期では便宜上、例えば、該両脚支持期の直後に離床する脚を遊脚、他方の脚を支持脚と定義することができる。あるいは、逆に、両脚支持期の直後に離床する脚を支持脚、他方の脚を遊脚と定義してもよい。
【0055】
上記第5発明よれば、前記n個の2歩分の歩容のそれぞれに対応するn個の正規化波形データのそれぞれにおける右脚側の1歩の期間と左脚側の1歩の期間との切替わりのタイミングは、n個の正規化波形データのいずれについても同じとなる。
【0056】
従って、当該切替わりのタイミングの近辺での対象状態量の平均的な波形データを高い信頼性で適切に得ることができる。また、平均波形データによって、右脚側の1歩の期間での対象状態量の波形と左脚側の1歩の期間での対象状態量の波形との区別又はその比較を適切に行うことも可能となる。
【0057】
前記第4発明又は第5発明では、前記平均波形データ生成処理を実行する前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記平均波形データ生成処理により生成した前記平均波形データからオフセット成分を除去するオフセット成分除去処理をさらに実行するように構成されており、該オフセット成分除去処理は、前記オフセット成分を除去した後の平均波形データにより示される前記対象状態量の値の、前記2歩分の歩容の期間における平均値がゼロになるという条件を満たすように前記オフセット成分を除去するように構成されていることが好ましい(第6発明)。
【0058】
すなわち、各慣性センサユニットの角速度センサ又は加速度センサの検出出力のドリフト等に起因して、一般には、前記平均波形データ(前記n個の2歩分の歩容のそれぞれに対応するn個の前記正規化波形データの平均の波形データ)は、オフセット成分を含む。
【0059】
一方、被験者の定常的な歩行動作もしくはそれに近い歩行動作では、前記2歩分の歩容の期間における前記対象状態量の実際の値の平均値は、ゼロもしくはほぼゼロとなる。
【0060】
従って、前記平均波形データからオフセット成分を適切に除去することができる。その結果、前記平均波形データにおける対象状態量の値の極性と、実際の極性との整合性を高めることができる。従って、平均波形データの信頼性をより一層高めることができる。
【0061】
上記第4~第6発明では、前記平均波形データを好適に生成するためには、2歩分の歩容の期間の時間幅、あるいは、1歩の期間の時間幅を特定するために、前記被験者の歩行動作における1歩毎の切替わりのタイミング(右脚及び左脚の一方側の1歩から他方側の一歩への切替わりのタイミング)を的確に認識する必要がある。
【0062】
この場合、例えば、被験者の両脚のそれぞれの着地又は離床を検知する接地センサを両脚の足底部に備えることで、上記の認識を行うことができる。
【0063】
また、本願発明者の各種実験、検討によれば、前記複数の慣性センサユニットのうちの少なくとも1つの慣性センサユニット(例えば前記第2発明又は第3発明における下側の慣性センサユニット)は、その加速度が、1歩毎の切替わりのタイミング付近で、比較的顕著な変化を呈するように配置できる。
【0064】
そこで、第4~第6発明では、前記平均波形データ生成処理を実行する前記センサユニット加速度推定手段又は前記上体角加速度推定手段は、前記複数の慣性センサユニットのうちの少なくとも1つの慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値又は当該少なくとも1つの慣性センサユニットに関して前記センサユニット加速度推定手段により推定された加速度の変化に基づいて、前記被験者の歩行動作における1歩毎の切替わりのタイミングを認識するように構成されていてもよい(第7発明)。
【0065】
この第7発明によれば、上記接地センサ等を備えずとも、前記被験者の歩行動作における1歩毎の切替わりのタイミングを適切に認識できる。ひいては、信頼性の高い平均波形データを得ることができる。
【0066】
また、前記第4~第7発明では、被験者の上体の角加速度の推定値の時系列を用いて該上体の角速度を推定することもできる。この場合、次のような構成を採用することが望ましい。
【0067】
すなわち、前記センサユニット加速度推定手段が、前記各慣性センサユニットに加速度に関する前記平均波形データを生成するように構成されている場合には、前記上体角加速度推定手段は、前記少なくとも2つの慣性センサユニットのそれぞれに関して前記センサユニット加速度推定手段により生成された平均波形データに示される各慣性センサユニットの加速度の推定値を用いて前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角加速度の推定値の時系列により構成される角加速度波形データを生成するように構成される。
【0068】
そして、この場合、前記上体角加速度推定手段により生成された前記角加速度波形データにより示される角加速度の推定値を積分することにより前記被験者の上体の角速度の推定値を算出する上体角速度推定手段をさらに備えており、前記上体角速度推定手段は、前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角速度の推定値の平均値がゼロになるという条件を満たすように、前記被験者の上体の角速度の推定値を算出するように構成されていることが好ましい(第8発明)。
【0069】
あるいは、前記上体角加速度推定手段が、前記被験者の上体の角加速度に関する前記平均波形データを生成するように構成されている場合には、前記上体角加速度推定手段により生成された前記平均波形データにより示される角加速度の推定値を積分することにより前記被験者の上体の角速度の推定値を算出する上体角速度推定手段をさらに備えており、前記上体角速度推定手段は、前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角速度の推定値の平均値がゼロになるという条件を満たすように、前記被験者の上体の角速度の推定値を算出するように構成されていることが好ましい(第9発明)。
【0070】
ここで、被験者の定常的な歩行動作もしくはそれに近い歩行動作では、前記2歩分の歩容の期間における被験者の上体の角速度の実際の値の平均値は、ゼロもしくはほぼゼロとなる。
【0071】
そこで、第8発明又は第9発明では、前記上体角速度推定手段は、前記2歩分の歩容の期間における前記被験者の上体の角速度の推定値の平均値がゼロになるという条件を満たすように、前記被験者の上体の角速度の推定値を算出する。
【0072】
これにより、前記2歩分の歩容の期間における被験者の平均的な上体の角速度の推定値(瞬時値又は時系列)を高い信頼性で適切に算出することができる。
【0073】
なお、上記第8発明又は第9発明を前記第6発明と組み合わせた場合には、前記平均波形データは、前記オフセット成分を除去した平均波形データを意味する。
【0074】
また、本発明の上体運動計測方法は、角速度を検出する角速度センサと加速度を検出する加速度センサとの組が各々搭載された複数の慣性センサユニットを被験者の上体の互いに異なる箇所に装着した状態で各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力を取得する第1工程と、
前記第1工程で取得された各慣性センサユニットの角速度センサ及び加速度センサのそれぞれの検出出力により示される角速度の検出値と加速度の検出値とを基に、前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢を推定する第2工程と、
前記第1工程で取得された各慣性センサユニットの加速度センサの検出出力により示される加速度の検出値と、各慣性センサユニットに関して前記第2工程で推定され各慣性センサユニットの姿勢とを基に、前記被験者の移動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度を推定する第3工程と、
前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して前記3工程で推定された加速度の組を基に、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定する第4工程とを備えることを特徴とする(第10発明)。
【0075】
上記第10発明によれば、前記複数の慣性センサユニットが装着された前記被験者の運動環境における各慣性センサユニットの姿勢(空間的な姿勢)が前記第2工程で推定される。この指定処理は、第1発明におけるセンサユニット姿勢推定手段の処理の場合と同様に行われる。
【0076】
そして、被験者の移動環境に設定されたグローバル座標系で見た各慣性センサユニットの加速度(並進加速度)が第3工程で推定される。この推定処理は、第1発明におけるセンサユニット加速度推定手段の処理と同様に行わる。
【0077】
そして、前記第4工程で、被験者の上体の角加速度が推定される。この推定処理は、第1発明における上体角加速度推定手段の処理と同様に行われる。
【0078】
従って、前記複数の慣性センサユニットのそれぞれに関して推定された加速度の組を基に、前記グローバル座標系で見た前記被験者の上体の角加速度を推定することで、実際の角加速度に対して追従性の高い推定値を得ることができる。
【0079】
また、第1発明と同様に、l被験者の上体への各慣性センサユニットの装着箇所を局所的なものとすることができるので、複数の慣性センサユニットを被験者に装着した場合と装着していない場合とで、被験者の動きに違いが生じるのを防止できる。ひいては、複数の慣性センサユニットを装着していない場合の被験者の通常的な動きに対して、上体の角加速度を計測することができる。
【0080】
よって、第10発明によれば、人(被験者)の上体の姿勢の動きを適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(a)は第1実施形態の上体運動計測システムの全体構成を示す図、(b)は被験者の上体に対する慣性センサユニットの配置形態を例示する図。
【図2】実施形態の各慣性センサユニットの構成を示す斜視図。
【図3】実施形態の上体運動計測システムの動作に関する構成を示すブロック図。
【図4】図1に示すデータ収集装置の処理を示すフローチャート。
【図5】(a)~(c)は、図4のSTEP5,6の処理に関する説明図。
【図6】実施形態で得られたデータの表示例を示す図。
【図7】(a),(b)は実施形態で得られるデータの評価処理の一例を説明するためのグラフ。
【図8】(a),(b)は、第2実施形態において被験者の上体に装着する慣性センサユニットの配置形態の例を示す図。
【図9】被験者の上体に装着する慣性センサユニットの配置形態の他の例を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る変形態様を説明するためのグラフ。
【図11】本発明の実施形態に係る他の変形態様を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0082】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1~図8を参照して以下に説明する。

【0083】
図1(a),(b)を参照して、本実施形態の上体運動計測システム1は、被験者Pに装着される2つの慣性センサユニット2,2と、これらの慣性センサユニット2,2との通信を行いつつ測定データの収集等を行うデータ収集装置10とを備える。

【0084】
各慣性センサユニット2(以降、単にセンサユニット2という)は、図2に示すように、筐体3内に収容された角速度センサ4及び加速度センサ5と、通信機能等を有する回路ユニット6とを備える。角速度センサ4、加速度センサ5及び回路ユニット6は、筐体3に固定されている。

【0085】
角速度センサ4は、空間的な(3次元空間の)角速度ベクトルを検出するセンサである。この角速度センサ4は、3つの検出軸方向のそれぞれの角速度(角速度ベクトルの各検出軸方向の成分)の検出出力を発生する3軸の角速度センサにより構成される。

【0086】
加速度センサ5は、空間的な(3次元空間の)並進加速度ベクトルを検出するセンサである。この加速度センサ5は、3つの検出軸方向のそれぞれの加速度(並進加速度ベクトルの各検出軸方向の成分)の検出出力を発生する3軸の加速度センサにより構成される。

【0087】
なお、3軸の角速度センサ4は、互いに検出軸方向が異なる各別の3つの1軸角度センサを組み合わせたもの、あるいは、3つの1軸角度センサを一体に構成したもののいずれであってもよい。このことは、3軸の加速度センサ5についても同様である。

【0088】
本実施形態では、各センサユニット2毎の角速度センサ4の3つの検出軸方向と加速度センサ5の3つの検出軸方向とはいずれも互いに直交する方向である。また、角速度センサ4及び加速度センサ5は、それぞれの3つの検出軸方向が角速度センサ4と加速度センサ5とで互いに同じになるようにセンサユニット2に搭載されている。

【0089】
例えば、図2に示すように、センサユニット2に対して固定的に設定されたxyz直交座標系Cs(以降、センサユニットローカル座標系Csという)の各軸方向(x軸方向、y軸方向及びz軸方向)が角速度センサ4及び加速度センサ5の共通の検出軸方向である。

【0090】
ただし、各センサユニット2毎の角速度センサ4の3つの検出軸方向と加速度センサ5の3つの検出軸方向とは互いに異なっていてもよい。さらには、角速度センサ4の3つの検出軸方向、又は、加速度センサ5の3つの検出軸方向は、2つ以上の検出軸方向が互いに平行となる場合を除いて、互いに直交する方向でなくてもよい。

【0091】
この場合、角速度センサ4及び加速度センサ5の相互の配置関係が一定に保たれるので、角速度センサ4による角速度ベクトルの検出値又は加速度センサ5による加速度ベクトルの検出値から、座標変換によって、角速度センサ4と加速度センサ5とで同一の検出軸方向の検出値を得ることができる。

【0092】
各センサユニット2の回路ユニット6は、図3に示すように、演算処理部7及び通信機能部8を備える。

【0093】
演算処理部7は、CPU、メモリ等を含む回路部である。該演算処理部7は、実装されるプログラムを実行することで実現される機能として、該演算処理部7を含む回路ユニット6が搭載されたセンサユニット2の空間的な姿勢(空間的な向き)を推定するセンサユニット姿勢推定手段としての機能を有する。

【0094】
この機能を有する演算処理部7は、角速度センサ4及び加速度センサ5のそれぞれの検出出力を増幅器、A/D変換器等の入力回路(図示省略)を介して取得する。そして、演算処理部7は、角速度センサ4の検出出力により示される角速度ベクトルの検出値と、加速度センサ5の検出出力により示される加速度ベクトルの検出値とを用いて、公知のストラップダウン演算等、所定の演算処理を実行することで、被験者Pの運動環境におけるセンサユニット2の空間的な姿勢を推定する。

【0095】
演算処理部7で推定される各センサユニット2の姿勢は、図1(a),(b)に例示する如く、被験者Pの移動環境に設定されるグローバル座標系Cgで見た姿勢として表現される。このグローバル座標系Cgとしては、例えば、前記センサユニットローカル座標系Csのx軸を水平面に投影した軸の方向をX軸方向、鉛直方向(重力方向)をZ軸方向、X軸及びZ軸に直交する方向をY軸方向としたXYZ直交座標系が使用される。

【0096】
通信機能部8は、無線通信又は有線通信用の通信機器及びそれに付随する通信回路により構成される。この通信機能部8は、演算処理部7で推定されたセンサユニット2の姿勢を示す計測データと、加速度センサ5の検出出力により示されるセンサユニット2の加速度(並進加速度ベクトル)の検出値を示す計測データとを、無線又は有線によりデータ収集装置10に送信する。

【0097】
上記の如く構成された2つのセンサユニット2は、本実施形態では、図1(a),(b)に示すように、被験者Pの上体の背中(背面)に、上下に間隔を有するように装着される。

【0098】
具体的には、本実施形態では、2つのセンサユニット2,2は、被験者Pの上体の背中の脊椎沿いの線上で(体幹軸Lに沿って)で、第12胸椎(胸椎のうちの最下段の椎骨)と第1腰椎(腰椎のうちの最上段の椎骨)との境界(以降、胸椎/腰椎境界という)よりも上側の箇所と、該胸椎/腰椎境界よりも下側の箇所(腰付近の箇所)に装着される。

【0099】
より具体的には、上側のセンサユニット2の装着箇所は、例えば被験者Pの首の付け根付近の箇所(胸椎のうちの最上段の椎骨(第1胸椎)付近の箇所)である。また、下側のセンサユニット2の装着箇所は、例えば腰椎のうちの最下段の椎骨(第5腰椎)付近の箇所である。

【0100】
ここで、人の上体のうち、腰椎が存在する部位は、該上体の姿勢をピッチ方向又はロール方向に変化させる場合における該上体の主たる折れ曲がり部分(回転中心部分)に相当する。従って、下側のセンサユニット2は、上体の姿勢の変化における回転中心付近の箇所で上体に装着されることとなる。

【0101】
また、胸椎には肋骨が接触するので、胸椎が存在する部位は、腰椎が存在する部位等に比して剛性が高い部位である。従って、上側のセンサユニット2は、上体の剛性が高い部位の上端寄りの箇所で上体に装着されることとなる。

【0102】
補足すると、センサユニット2,2の間の上下方向の距離が大きい方が、該距離が小さい場合よりも、上体の角速度の変化に対するセンサユニット2,2の加速度(X軸方向又はY軸方向の加速度)の差の変化の感度が高まる。このため、被験者Pの上体の角加速度(ピッチ方向の角加速度又はロール方向の角加速度)を後述する如く推定(計測)する場合、センサユニット2,2の上下方向の距離が大きい方が小さい場合よりも上体の角速度の推定の分解能を高めることができる。

【0103】
なお、センサユニット2,2の装着箇所は、上記の例に限られるものではない。例えば、センサユニット2,2の少なくともいずれか一方を被験者Pの前側(胸側あるいは腹側)に装着してもよい。また、センサユニット2,2を上記の例と異なる高さ位置で被験者Pに装着してもよい。

【0104】
被験者Pの上体の背中への各センサユニット2の装着は、適宜の装着用部材を介して行われる。例えば、被験者Pは、レオタード等、伸縮性を有すると共に被験者Pの上体への密着性が高い衣類を装着する。そして、各センサユニット2は、その筐体3が、例えば面ファスナー等の装着用部材を介して被験者Pの上体の衣類に固定される。これにより、各センサユニット2は、その装着箇所での上体の部位と一体又はほぼ一体に並進運動を行い得るように該上体に装着される。

【0105】
なお、各センサユニット2の被験者Pへの装着形態は、上記の形態に限らない。例えば各センサユニット2を、被験者Pの上体に装着するベルトに取り付けてもよい。あるいは、各センサユニット2を被験者Pの上体の皮膚にテープ等により直接的に貼り付けるようにしてもよい。

【0106】
この場合、各センサユニット2は、図2に示したセンサユニットローカル座標系Csのx軸方向が被験者Pの上体に対する該センサユニット2の接触面の法線方向(換言すれば、被験者Pの上体の前後方向)に一致もしくはほぼ一致し、y軸方向が被験者Pの上体の左右方向(幅方向)に一致もしくはほぼ一致し、z軸方向が被験者Pの上体の上下方向(体幹軸Lの方向)に一致もしくはほぼ一致するように被験者Pの上体に装着される。

【0107】
データ収集装置10は、例えばディスプレイ10aを有するコンピュータにより構成される。このデータ収集装置10は、各センサユニット2の回路ユニット6との通信によって、各センサユニット2の姿勢の推定値を示す信号を受信する。

【0108】
そして、データ収集装置10は、実装されるプログラムにより実現される機能、あるいは、ハードウェア構成により実現される機能として、図3に示す如く、グローバル座標系Cgで見た各慣性センサユニット2の加速度を推定するセンサユニット加速度推定部11と、グローバル座標系で見た被験者Pの上体の角加速度を含む該上体の姿勢の動きを推定する上体姿勢運動推定部12とを備える。

【0109】
上記センサユニット加速度推定部11は、本発明におけるセンサユニット加速度推定手段としての機能を有するものである。また、上体姿勢運動推定部12は、本発明における上体角加速度推定手段及び上体角速度推定手段としての機能を有するものである。

【0110】
本実施形態の上体運動計測システム1は、さらに、図1(a)に示す如く、被験者Pの各脚の着地及び離床を検知するための接地センサ21,21を備える。接地センサ21は、感圧スイッチ等により構成され、被験者Pの各足平部に装着する靴の底部に装着されている。そして、各脚の接地センサ21は、該脚の足平部が着地すると、オン信号を出力し、該脚の足平部が離床すると、オフ信号を出力する。この場合、各脚の接地センサ21の出力信号は、図示を省略する通信装置を介して無線又は有線によりデータ収集装置10に送信される。

【0111】
次に、データ収集装置10の各機能部の処理の詳細と合わせて、本実施形態の上体運動計測システムによる被験者Pの上体の姿勢の動きの計測処理を説明する。

【0112】
まず、センサユニット2,2とデータ収集装置10とが起動される。また、被験者Pの上体に前記した如く2つのセンサユニット2,2が装着されると共に、被験者Pがその各足平部に、前記接地センサ21を有する靴を装着する。なお、このとき、センサユニット2,2とデータ収集装置10との間でタイマー時刻の同期設定、あるいは、タイマー時刻の相互認識等の初期設定処理も行われる。

【0113】
この状態で、被験者Pの歩行(直進歩行)が行われる。その歩行は、2*n歩(nはあらかじめ定めた2以上の整数値)以上の歩数で行われる(“*”は乗算記号を意味する)。なお、被験者Pは、適宜の歩行補助装具を装着していてもよい。

【0114】
この歩行中に、センサユニット姿勢推定手段としての機能を有する各センサユニット2の演算処理部7は、角速度センサ4及び加速度センサ5の検出出力を逐次取得しつつ、該センサユニット2の空間的な姿勢をストラップダウン演算等の手法によって逐次推定する。なお、センサユニット2の姿勢の推定値は、例えばオイラー角により表現される。ただし、センサユニット2の姿勢は、クオータニオン、あるいは、姿勢行列の形態で表現することもできる。

【0115】
具体的には、演算処理部7は、角速度センサ4の検出出力により示される角速度(3軸成分から成る角速度ベクトル)の検出値を積分する演算によって、センサユニット2の瞬時姿勢の基本値を逐次算出する。

【0116】
また、演算処理部7は、加速度センサ5の検出出力により示される加速度(3軸成分からなる並進加速度ベクトル)の検出値を基に、重力方向(鉛直方向)に対するセンサユニット2の瞬時姿勢(ピッチ方向及びロール方向の傾斜角)を逐次算出する。

【0117】
さらに、演算処理部7は、角速度センサ4の検出出力に基づく瞬時姿勢の基本値と、加速度センサ5の検出出力に基づく瞬時姿勢との偏差を算出する。

【0118】
ここで、加速度センサ5が検出する加速度は重力加速度ベクトルを含んでいる。また、加速度センサ5が検出する並進加速度ベクトルの水平方向成分の大きさは、一般に重力加速度ベクトルの大きさに比して十分に小さい。このため、加速度センサ5が検出する並進加速度ベクトルの長期的な平均値は、重力加速度ベクトルにほぼ一致する。

【0119】
そこで、演算処理部7は、上記偏差を長期的にゼロに収束させるように、角速度センサ4の検出出力に基づく瞬時姿勢の基本値を、該偏差に応じて補正することで、センサユニット2の姿勢の推定値を算出する。

【0120】
センサユニット2の姿勢の推定手法は、上記の如く、ストラップダウン演算等の公知の手法を採用できる。

【0121】
このように各センサユニット2の演算処理部7で逐次推定される該センサユニット2の姿勢を示す計測データが該センサユニット2の通信機能部8により、データ収集装置10に送信される。さらに、該センサユニット2の加速度センサ5の検出出力により示される並進加速度ベクトルの検出値を示す計測データも、通信機能部8により、データ収集装置10に送信される。

【0122】
なお、各センサユニット2の姿勢を推定する処理は、データ収集装置10で実行するようにしてもよい。すなわち、データ収集装置10にセンサユニット姿勢推定手段としての機能を持たせてもよい。この場合には、各センサユニット2の角速度センサ4及び加速度センサ5の検出出力を示す計測データを、各センサユニット2からデータ収集装置10に送信する。

【0123】
補足すると、角速度センサ4及び加速度センサ5以外にセンサユニット2に搭載したカメラ等のセンサを使用して、センサユニット2の水平方向(床面とほぼ平行な方向)の加速度(並進加速度)を推定することも可能である。この場合には、加速度センサ5が検出する加速度ベクトルから、水平方向の加速度ベクトルの推定値を減算することで、センサユニットローカル座標系Csで見た重力加速度ベクトルを求めることができる。ひいては、この重力加速度ベクトルを基に、重力方向に対するセンサユニット2の瞬時姿勢を推定することもできる。

【0124】
また、各センサユニット2に地磁気センサを搭載した場合には、角速度センサ4の検出出力により示される角速度のうち、ヨー方向の成分のドリフト補正を行うこともできる。

【0125】
データ収集装置10に各センサユニット2から送信される計測データ(詳しくは、被験者Pの歩行中の各時刻における各センサユニット2の姿勢の推定値及び並進加速度ベクトルの検出値を示す計測データ)は、該データ収集装置10において、メモリ等の記憶媒体に時系列的に記憶保持される。

【0126】
そして、データ収集装置10は、その計測データを用いて、前記被験者Pの上体の動きを解析又は評価するための処理(センサユニット加速度推定部11及び上体姿勢運動推定部12の処理を含む)を、図4のフローチャートに示す如く実行する。

【0127】
なお、以降の説明では、2つのセンサユニット2,2を区別するために、一方のセンサユニット2(例えば上側のセンサユニット2)を第1センサユニット2、他方のセンサユニット2(例えば下側のセンサユニット2)を第2センサユニット2ということがある。また、第1センサユニット2及び第2センサユニット2のうちの任意の1つを第iセンサユニット2(i=1,2)ということがある。

【0128】
また、第iセンサユニット2に対応するセンサユニットローカル座標系Csを第iローカル座標系Cs_iと称する。さらに、第iローカル座標系Cs_iのx軸を水平面に投影した軸の方向をX軸方向とするグローバル座標系Cgを第iグローバル座標系Cg_iと称する。

【0129】
補足すると、各センサユニット2に対応する第iグローバル座標系Cg_iのX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれは、いずれのセンサユニット2についても互いに同一方向もしくはほぼ同一方向である。このため、第iグローバル座標系Cg_iを互いに区別せずに、単にグローバル座標系Cgと称する場合もある。

【0130】
なお、本実施形態の説明では、グローバル座標系CgのX軸、Y軸、Z軸の正方向は、それぞれ、被験者Pから見て、前向き、左向き、上向きと定義する。また、センサユニットローカル座標系Cs(第iローカル座標系Cs_i)のx軸、y軸、z軸の正方向は、それぞれ、被験者Pの上体の前方向き、左向き、上向きと定義する。

【0131】
図4を参照して、データ収集装置10は、まず、STEP1において、記憶媒体に記憶保持された計測データから、2*n歩分の歩容の計測データを取得する。ここで、1歩分の歩容(以降、要素歩容という)の計測データは、被験者Pの支持脚(又は遊脚)が一方の脚から他方の脚に切替わる切替わりタイミングからその次の切替わりタイミングまでの期間の計測データである。

【0132】
例えば、本実施形態では、被験者Pの一方の脚の着地(又は離床)が、該一方の脚側の接地センサ21により検出されるタイミングから、他方の脚の着地(又は離床)が、該他方の脚側の接地センサ21により検出されるタイミングまでの期間が要素歩容の期間とされる。そして、データ収集装置10は、連続した2*n個の要素歩容(以降、2n歩容という)の期間の計測データを、2*n歩分の歩容の計測データとして取得する。

【0133】
なお、2n歩容のうちの1歩目の要素歩容は、被験者Pが実際に歩行を開始した後の任意の歩数目の要素歩容でよい。例えば、被験者Pの歩行状態が定常的な状態になったとみなせる歩数目(実際の歩行における3歩目等)の歩容を、2n歩容のうちの1歩目の要素歩容として計測データを取得するようにしてもよい。

【0134】
次いで、STEP2において、データ収集装置10は、センサユニット2毎に、2n歩容の期間の各時刻t(2n歩容の開始時刻から所定の演算処理周期毎のサンプリング時刻)において第iグローバル座標系Cg_iで見た第iセンサユニット2の加速度ベクトル(瞬時値)である第iグローバル加速度ベクトルを算出する。

【0135】
以降、第iグローバル加速度ベクトルを表す参照符号として↑acc_i_global又は↑acc_i_global(t)を用いる。また、第iローカル座標系Cs_iで見た第iセンサユニット2の加速度ベクトル(瞬時値)を第iローカル加速度ベクトルと称し、その参照符号として↑acc_i_local又は↑acc_i_local(t)を用いる。

【0136】
なお、参照符号中の“↑”は、複数成分から成るベクトルを表す記号、末尾の(t)は、時刻tでの値を意味する記号である。

【0137】
第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_global(t)は、時刻tにおける第iセンサユニット2の加速度センサ5の検出出力により示される第iローカル加速度ベクトル↑acc_i_local(t)の検出値と、時刻tにおける第iセンサユニット2の姿勢(第iグローバル座標系Cg_iで見た姿勢)の推定値により規定される回転行列(姿勢変換行列)M_i(t)とから次式(1)により算出される。

【0138】
【数1】
JP0006288706B2_000002t.gif

なお、上記式(1a),(1b)の右辺の上付き添え字“T”は転置を意味する。また、式(1c)により表される回転行列M_i(t)の第1列、第2列、第3列は、それぞれ、第iグローバル座標系で見た第iローカル座標系のx軸の基底ベクトル、y軸の基底ベクトル、z軸の基底ベクトルを意味する。

【0139】
なお、本実施形態では、第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalのZ軸方向成分acc_i_z_global(t)は、以降の処理で使用しない。従って、Z軸方向成分acc_i_z_global(t)を算出する処理を省略してもよい。

【0140】
次いで、STEP3において、データ収集装置10は、2n歩容のうち、被験者Pの右脚が支持脚となるn個の要素歩容(以降、R支持歩容という)の期間のそれぞれの時間幅(各R支持歩容の開始時から終了時までの時間幅)であるR支持歩容周期period_R_k(k=1,2,…,n)の平均値ave_period_Rと、被験者Pの左脚が支持脚となるn個の要素歩容(以降、L支持歩容という)の期間のそれぞれの時間幅であるL支持歩容周期period_L_k(k=1,2,…,n)の平均値ave_period_Lとをそれぞれ、次式(2a),(2b)により算出する。

【0141】

ave_period_R=(period_R_1+period_R_2+……+period_R_n)/n …(2a)
ave_period_L=(period_L_1+period_L_2+……+period_L_n)/n …(2b)

次いで、STEP4において、データ収集装置10は、R支持歩容及びL支持歩容のそれぞれの時間軸を正規化するための正規化R支持歩容周期norm_period_Rと正規化L支持歩容周期norm_period_Lとを算出する。

【0142】
上記正規化R支持歩容周期norm_period_R及び正規化L支持歩容周期norm_period_Lは、それらの値の総和(=norm_period_R+norm_period_L)が任意の定数値(≠0)となり、且つ、norm_period_Rとnorm_period_Lとの比率が、ave_period_Rとave_period_Lとの比率に一致するように決定される。

【0143】
具体的には、データ収集装置10は、次式(3a),(3b)によりnorm_period_R及びnorm_period_Lを算出する。

【0144】

norm_period_R=Tnorm*ave_period_R/(ave_period_R+ave_period_L) …(3a)
norm_period_L=Tnorm*ave_period_L/(ave_period_R+ave_period_L) …(3b)

式(3a),(3b)のTnorm(=norm_period_R+norm_period_L)は、2歩分の歩容の期間の時間幅を正規化して表す値として任意に設定した定数値Tnorm(≠0)であり、例えば“1”である。以降、Tnormを正規化基準時間幅という。

【0145】
なお、正規化基準時間幅Tnormは、“1”以外の定数値であってもよい。例えば、Tnorm=ave_period_R+ave_period_Lであってもよい。このようにした場合には、norm_period_R=ave_period_R、norm_period_L=ave_period_Lとなるため、STEP4の処理は実質的に不要である。

【0146】
次いで、STEP5において、データ収集装置10は、前記2n歩容を構成する各R支持歩容及び各L支持歩容のそれぞれの期間における第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分に波形を表す時間軸を、正規化基準時間幅Tnormを2歩分の歩容の期間の時間幅とする時間軸に正規化する。

【0147】
この正規化の処理は、2n歩容のうちの各R支持歩容周期と各L支持歩容周期とをそれぞれ、norm_period_R、norm_period_Lに一致させるように、2n歩容の各要素歩容毎に、第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形を、時間軸方向にスケール変換(拡大又は縮小)することでなされる。

【0148】
この場合、各R支持歩容における第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形の時間軸方向の拡大又は縮小の倍率は、該R支持歩容周期の実際の時間幅をT_Rとおくと、(norm_period_R/T_R)である。同様に、各L支持歩容における第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形の時間軸方向の拡大又は縮小の倍率は、該L支持歩容周期の実際の時間幅をT_Lとおくと、(norm_period_L/T_L)である。

【0149】
以上のSTEP5の処理により、2n歩容の各R支持歩容における第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形は、互いに同一の時間幅(=norm_period_R)を有する波形に、時間軸方向でスケール変換される。同様に、2n歩容の各L支持歩容における第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形は、互いに同一の時間幅(=norm_period_L)を有する波形に、時間軸方向でスケール変換される。

【0150】
以降、上記の如く時間軸を正規化した第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalを、正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalと表記し、そのX軸方向成分、Y軸方向成分、Z軸方向成分をそれぞれnorm_acc_i_x_global、norm_acc_i_y_global、norm_acc_i_z_globalと表記する。また、正規化した時間軸を正規化時間軸という。

【0151】
第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalのいずれかの成分、例えばX軸方向成分acc_i_x_globalの波形(実際の時間軸上での波形)の例と、上記正規化処理により得られる正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalのX軸方向成分norm_acc_i_x_globalの波形(正規化時間軸上での波形)の例とをそれぞれ図5(a)、図5(b)に示す。図5(a)は、2n歩容のうちの1歩目、2歩目、3歩目、4歩目の各要素歩容におけるacc_i_x_globalの波形を例示し、図5(b)は、1歩目、2歩目、3歩目、4歩目の各要素歩容におけるnorm_acc_i_x_globalの波形を例示している。

【0152】
なお、図示例では、奇数歩目(1歩目、3歩目)の要素歩容がR支持歩容、偶数歩目(2歩目、4歩目)の要素歩容がL支持歩容である。また、図5(a)では、参照符号tで示す横軸が時間軸を表し、図5(b)では参照符号τで示す横軸が正規化時間軸を表している。

【0153】
図示の如く、R支持歩容及びL支持歩容のそれぞれについて、正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの波形は、正規化時間軸上で同一の時間幅を有する波形となる。

【0154】
次に、STEP6において、データ収集装置10は、2n歩容のうちのn個のR支持歩容の正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの各成分の波形と、n個のL支持歩容の正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの各成分の波形とを各々平均化してなる平均波形データを生成する。

【0155】
具体的には、R支持歩容に関する正規化時間軸の各時刻τ(正規化時間軸上での各R支持歩容の開始時刻から所定の刻み時間毎の各時刻)において、n個のR支持歩容のそれぞれの正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_global(τ)の各成分毎の平均値を算出することで、n個のR支持歩容の正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの各成分値の平均波形データが生成される。

【0156】
同様に、L支持歩容に関する正規化時間軸の各時刻τ(正規化時間軸上での各L支持歩容の開始時刻から所定の刻み時間毎の各時刻)において、n個のL支持歩容のそれぞれの正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_global(τ)の各成分毎の平均値を算出することで、n個のL支持歩容の正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの各成分の平均波形データが生成される。

【0157】
なお、参照符号の末尾の(τ)は、正規化時間軸上の時刻τでの値を意味する記号である。

【0158】
以降、R支持歩容に関する上記平均波形データにおける正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの値(瞬時値)をR側正規化第i平均加速度ベクトル、L支持歩容に関する上記平均波形データにおける正規化第iグローバル加速度ベクトル↑norm_acc_i_globalの値(瞬時値)をL側正規化第i平均加速度ベクトルと称する。そして、R側正規化第i平均加速度ベクトルの参照符号として、↑norm_R_ave_acc_i_globalを使用し、L側正規化第i平均加速度ベクトルの参照符号として、↑norm_L_ave_acc_i_globalを使用する。

【0159】
また、これらのR側正規化第i平均加速度ベクトル及びL側正規化第i平均加速度ベクトルを総称的に正規化第i平均加速度ベクトルと称し、その参照符号として、↑norm_ave_acc_i_globalを使用する。

【0160】
以上のSTEP6の処理により得られるR支持歩容の平均波形データにより示される波形(例えば↑norm_R_ave_acc_i_globalのX軸方向成分norm_R_ave_acc_i_x_globalの波形)の例と、L支持歩容の平均波形データにより示される波形(例えば↑norm_L_ave_acc_i_globalのX軸方向成分norm_L_ave_acc_i_x_globalの波形)の例とを、正規化時間軸上に連続的に並べた状態で図5(c)に示す。

【0161】
本実施形態では、R側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_R_ave_acc_i_globalの波形とL側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_L_ave_acc_i_globalの波形とを各成分毎に正規化時間軸上で図5(c)に例示した如く連続的に並べた波形(以降、RL正規化第i平均加速度ベクトル波形という)が、被験者Pの2歩分の歩容の期間(正規化時間軸上でTnormの時間幅の期間)における第i加速度ベクトル↑acc_i_globalの平均波形データの波形として使用される。

【0162】
なお、RL正規化第i平均加速度ベクトル波形におけるR側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_R_ave_acc_i_globalの波形とL側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_L_ave_acc_i_globalの波形との並び順はR側、L側の順番、あるいは、L側、R側の順番のいずれでもよい。

【0163】
R側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_R_ave_acc_i_globalの波形は、被験者PのR支持歩容での平均的な第i加速度ベクトル↑acc_i_globalの波形を正規化時間軸上で表現した波形に相当する。また、L側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_L_ave_acc_i_globalの波形は、被験者PのL支持歩容での平均的な第i加速度ベクトル↑acc_i_globalの波形を正規化時間軸上で表現した波形に相当する。

【0164】
以降の説明では、R側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_R_ave_acc_i_globalの波形に対応するR支持歩容を正規化平均R支持歩容、L側正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_L_ave_acc_i_globalの波形に対応するL支持歩容を正規化平均L支持歩容という。また、これらの正規化平均R支持歩容と正規化平均L支持歩容とを連続させた2歩分の歩容(RL正規化第i平均加速度ベクトル波形に対応する歩容)を2歩分正規化平均歩容という。

【0165】
補足すると、本実施形態では、以上説明したSTEP2~6の処理が、本発明におけるセンサユニット加速度推定手段に相当するセンサユニット加速度推定部11により実行される処理である。この場合、各センサユニット2についての第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分が本発明における対象状態量に相当する。そして、STEP2の処理が、本発明における基本推定値生成処理に相当し、STEP3~6の処理が、平均波形データ生成処理に相当する。

【0166】
次に、STEP7において、データ収集装置10は、上記RL正規化第i平均加速度ベクトル波形のデータ(平均波形データ)を用いて、被験者Pの上体の角加速度(2歩分正規化平均歩容の期間の各時刻τでの瞬時値)を算出する。なお、このSTEP7で算出する角加速度は、本実施形態では、被験者Pの上体のロール方向(X軸周り方向)の角加速度θx_dot2_with_offset、及び被験者Pの上体のピッチ方向(Y軸周り方向)の角加速度θy_dot2_with_offsetである。そして、これらの角加速度θx_dot2_with_offset,θy_dot2_with_offsetは、後述するオフセット成分を除去する前の角加速度である。

【0167】
ここで、各センサユニット2は、被験者Pの上体に比して十分に小型なものであり、各センサユニット2の被験者Pの上体への装着面(接触面)の面積は比較的小さい。このため、各センサユニット2の瞬時的な姿勢は、被験者Pの上体の実際の瞬時的な姿勢に対してずれを生じ易い。ひいては、各センサユニット2自体の角加速度の瞬時値は、被験者Pの上体の実際の角加速度の瞬時値に対してずれを生じやすい。

【0168】
一方、各センサユニット2の並進加速度は、被験者Pの上体における該センサユニット2の装着箇所の並進加速度に対して比較的高い追従性を有する。このため、センサユニット2,2のそれぞれのY軸方向の並進加速度の差の変化は、被験者Pの上体のロール方向(X軸周り方向)の角加速度の変化に対して比較的高い追従性を有する。同様に、センサユニット2,2のそれぞれX軸方向の並進加速度の差の変化は、被験者Pの上体のピッチ方向(Y軸周り方向)の角加速度の変化に対して高い追従性を有する。

【0169】
そこで、STEP7では、データ収集装置10は、センサユニット2のうちの第1センサユニット2(上側のセンサユニット2)についての正規化第1平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_1_globalのY軸方向成分norm_ave_acc_1_y_globalと、第2センサユニット2(下側のセンサユニット2)についての正規化第2平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_2_globalのY軸方向成分norm_ave_acc_2_y_globalとから、次式(4a)に示す線形結合によって被験者Pの上体のロール方向(X軸方向)の角加速度θx_dot2_with_offsetを算出する。

【0170】
また、データ収集装置10は、第1センサユニット2についての正規化第1平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_1_globalのX軸方向成分norm_ave_acc_1_x_globalと、第2センサユニット2についての正規化第2平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_2_globalのX軸方向成分norm_ave_acc_2_x_globalとから、次式(4b)に示す線形結合によって、被験者Pの上体のピッチ方向(Y軸方向)の角加速度θy_dot2_with_offsetを算出する。

【0171】

θx_dot2_with_offset(τ)
=-(norm_ave_acc_1_y_global(τ)-norm_ave_acc_2_y_global(τ))/(h1-h2)
…(4a)
θy_dot2_with_offset
=(norm_ave_acc_1_x_global(τ)-norm_ave_acc_2_x_global(τ))/(h1-h2)
…(4b)
ただし、
h1:床面からの第1センサユニット2の高さ
h2:床面からの第2センサユニット2の高さ(<h1)

上式(4a),(4b)における右辺の各項の係数を規定するh1-h2は、第1センサユニット2と第2センサユニット2との上下方向の距離に相当する。

【0172】
なお、h1,h2の値としては、被験者Pの直立姿勢状態での第1センサユニット2及び第2センサユニット2のそれぞれ高さの、あらかじめ計測された値(一定値)が用いられる。

【0173】
上記の如くSTEP7で算出される角加速度の値は、一般に、各センサユニット2の角速度センサ4又は加速度センサ5の検出出力のドリフト等に起因して、オフセット成分を含む。

【0174】
そこで、データ収集装置10は、次に、STEP8において、上記オフセット成分を除去する処理を実行する。

【0175】
ここで、一般に、人の定常的な直進歩行の2歩分の歩容の期間における上体の実際の角加速度の平均値は、ゼロもしくはほぼゼロとなる。従って、前記2歩分正規化平均歩容におけるロール方向の角加速度θx_dot2_with_offset(τ)の平均値θx_dot2_aveと、ピッチ方向の角加速度θy_dot2_with_offset(τ)の平均値θy_dot2_aveとがそれぞれ、θx_dot2_with_offset(τ)のオフセット成分、θy_dot2_with_offset(τ)のオフセット成分に相当すると見なせる。

【0176】
そこで、STEP8では、データ収集装置10は、次式(5a),(5b)により、前記2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のロール方向の角加速度θx_dot2_with_offsetの平均値θx_dot2_aveとピッチ方向の角加速度θy_dot2_with_offsetの平均値θy_dot2_aveとを算出する。

【0177】
【数2】
JP0006288706B2_000003t.gif

そして、データ収集装置10は、次式(6a),(6b)で示す如く、2歩分正規化平均歩容における各時刻τにおけるロール方向の角加速度θx_dot2_with_offset(τ)から上記の如く算出した平均値θx_dot2_ave(オフセット成分)を差し引いた値と、ピッチ方向の角加速度θy_dot2_with_offset(τ)から上記の如く算出した平均値θy_dot2_ave(オフセット成分)を差し引いた値とをそれぞれ、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体の実際のロール方向の角加速度θx_dot2(τ)の推定値(オフセット成分の除去後の推定値)、ピッチ方向の角加速度θy_dot2(τ)の推定値(オフセット成分の除去後の推定値)として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体の角加速度θx_dot2(τ),θy_dot2(τ)の推定値の波形データが得られることとなる。

【0178】

θx_dot2(τ)=θx_dot2_with_offset(τ)-θx_dot2_ave …(6a)
θy_dot2(τ)=θy_dot2_with_offset(τ)-θy_dot2_ave …(6a)

次に、STEP9において、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容の各時刻τにおける被験者Pの上体の角速度(ロール方向の角速度θx_dot(τ)及びピッチ方向の角速度θy_dot(τ))の推定値を算出する。

【0179】
この場合、θx_dot(τ)、θy_dot(τ)の推定値は次のように算出される。すなわち、まず、次式(7a),(7b)で示す如く、ロール方向の角加速度θx_dot2(τ)の推定値、ピッチ方向の角加速度θy_dot2(τ)の推定値をそれぞれ積分することにより、2歩分正規化平均歩容の初期時刻(τ=0)での角速度の値(初期値θx_dot(0),θy_dot(0))をゼロと仮定した場合における各時刻τでのロール方向の角速度の値θx_dot_with_offset(τ)及びピッチ方向の角速度の値θy_dot_with_offset(τ)が算出される。

【0180】
【数3】
JP0006288706B2_000004t.gif

ここで、一般に、人の定常的な直進歩行の2歩分の歩容の期間における上体の角速度の平均値は、一般に、ゼロもしくはほぼゼロとなる。そこで、本実施形態では、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容におけるロール方向の角速度θx_dot(τ)及びピッチ方向の角速度θy_dot(τ)のそれぞれの平均値がゼロになるように、ロール方向の角速度θx_dot(τ)及びピッチ方向の角速度θy_dot(τ)のそれぞれの初期値θx_dot(0),θy_dot(0)を決定する。

【0181】
具体的には、θx_dot(0),θy_dot(0)は、それぞれ、次式(8a),(8b)に算出される。

【0182】
【数4】
JP0006288706B2_000005t.gif

すなわち、2歩分正規化平均歩容におけるθx_dot_with_offset(τ)の平均値θx_dot_aveの逆極性の値と、θy_dot_with_offset(τ)の平均値θy_dot_aveの逆極性の値とがそれぞれθx_dot(0),θy_dot(0)として算出される。

【0183】
そして、データ収集装置10は、次式(9a),(9b)で示す如く、上記初期値θx_dot(0),θy_dot(0)をそれぞれθx_dot_with_offset(τ)、θy_dot_with_offset(τ)に加算してなる値をそれぞれ、各時刻τでのロール方向の角速度θx_dot(τ)の推定値、ピッチ方向の角速度θy_dot(τ)の推定値として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体の角速度θx_dot(τ),θy_dot(τ)の推定値の波形データが得られることとなる。

【0184】

θx_dot(τ)=θx_dot_with_offset(τ)+θx_dot(0) …(9a)
θy_dot(τ)=θy_dot_with_offset(τ)+θy_dot(0) …(9b)

次に、STEP10において、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容の各時刻τにおける被験者Pの上体の姿勢(ロール方向の傾斜角θx(τ)及びピッチ方向の傾斜角θy(τ))の推定値を算出する。

【0185】
この場合、θx(τ)、θy(τ)の推定値は次のように算出される。すなわち、まず、次式(10a),(10b)で示す如く、ロール方向の角速度θx_dot(τ)の推定値、ピッチ方向の角速度θy_dot(τ)の推定値をそれぞれ積分することにより、2歩分正規化平均歩容の初期時刻(τ=0)での傾斜角の値(初期値θx(0),θy(0))をゼロと仮定した場合における各時刻τでのロール方向の傾斜角の値θx_with_offset(τ)及びピッチ方向の傾斜角の値θy_with_offset(τ)が算出される。

【0186】
【数5】
JP0006288706B2_000006t.gif

ここで、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のロール方向の傾斜角θx(τ)の平均値は、前記2n歩容における第1センサユニット2(首の付け根付近のセンサユニット2)の姿勢のうちのロール方向の実際の傾斜角の平均値(以降、これをθx_neck_aveと表記する)と、被験者Pの直立姿勢における第1センサユニット2の姿勢のうちのロール方向の実際の傾斜角(以降、これをθx_neck_up_rightと表記する)との差(以降、これをθx_neck_offsetと表記する)に一致もしくはほぼ一致すると考えられる。

【0187】
同様に、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のピッチ方向の傾斜角θy(τ)の平均値は、前記2n歩容における第1センサユニット2(首の付け根付近のセンサユニット2)の姿勢のうちのピッチ方向の実際の傾斜角の平均値(以降、これをθy_neck_aveと表記する)と、被験者Pの直立姿勢における第1センサユニット2のピッチ方向の実際の傾斜角の推定値(以降、これをθy_neck_up_rightと表記する)との差(以降、これをθy_neck_offsetと表記する)に一致もしくはほぼ一致すると考えられる。

【0188】
そこで、本実施形態では、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のロール方向の傾斜角θx_(τ)及びピッチ方向の傾斜角θy_dot(τ)のそれぞれの平均値が、上記θx_neck_offsetの推定値と上記θy_neck_offsetの推定値とに各々一致するように、ロール方向の傾斜角θx(τ)及びピッチ方向の傾斜角θy(τ)のそれぞれの初期値θx(0),θy(0)を決定する。

【0189】
具体的には、θx_neck_offsetの推定値とθy_neck_offsetの推定値とが、それぞれ次式(11a),(11b)により算出される。

【0190】

θx_neck_offset=θx_neck_ave-θx_neck_up_right …(11a)
θy_neck_offset=θy_neck_ave-θy_neck_up_right …(11b)

ここで、θx_neck_ave,θy_neck_aveは、第1センサユニット2の演算処理部7で前記した如く逐次推定された第1センサユニット2の姿勢におけるロール方向の傾斜角の値と、ピッチ方向の傾斜角の値とからそれぞれ算出される。また、θx_neck_up_right,θy_neck_up_rightは、被験者Pの直立姿勢であらかじめ計測されてデータ収集装置10に記憶保持された値である。

【0191】
また、2歩分正規化平均歩容について前記式(10a),(10b)によりそれぞれ算出されたθx_with_offset(τ),θy_with_offset(τ)のそれぞれの平均値θx_ave,θy_aveがそれぞれ次式(12a),(12b)により算出される。

【0192】
【数6】
JP0006288706B2_000007t.gif

さらに、次式(13a)で示す如く、θx_aveの上記の算出値とθx_neck_offsetの上記の算出値との差の逆極性の値がθx(0)として算出される。また、次式(13b)で示す如く、θy_aveの上記の算出値とθy_neck_offsetの上記の算出値との差の逆極性の値がθy(0)として算出される。

【0193】

θx(0)=-(θx_ave-θx_neck_offset) …(13a)
θy(0)=-(θy_ave-θy_neck_offset) …(13b)

そして、データ収集装置10は、次式(14a),(14b)で示す如く、上記初期値θx(0),θy(0)をそれぞれθx_with_offset(τ)、θy_with_offset(τ)に加算してなる値を、それぞれ各時刻τでのロール方向の傾斜角θx(τ)の推定値、ピッチ方向の傾斜角θy(τ)の推定値として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体の傾斜角θx(τ),θy(τ)の推定値の波形データが得られることとなる。

【0194】

θx(τ)=θx_with_offset(τ)+θx(0) …(14a)
θy(τ)=θy_with_offset(τ)+θy(0) …(14b)

補足すると、本実施形態では、以上説明したSTEP7~10の処理が、本発明における上体角加速度推定手段及び上体角速度推定手段としての機能を有する上体姿勢運動推定部12により実行される処理である。この場合、STEP7,8の処理が、上体角加速度推定手段として処理、STEP9の処理が、上体角速度推定手段としての処理に相当する。

【0195】
本実施形態では、以上の如く、被験者Pの上体のロール方向の角加速度θx_dot2(τ)、角速度θx_do2(τ)、傾斜角θx(τ)の推定値の波形データと、ピッチ方向の角加速度θy_dot2(τ)、角速度θy_do2(τ)、傾斜角θy(τ)の推定値の波形データとが該上体の姿勢の実際の動きを代表的に示すデータとして得られる。

【0196】
そして、データ収集装置10は、そのディスプレイ10aに上記波形データ、あるいは、正規化R支持歩容周期norm_period_R及び正規化L支持歩容周期norm_period_Lの比率(R支持歩容周期period_RとL支持歩容周期period_Lとの平均的な比率)等を視覚的に表示する。なお、波形データ等の表示は、印刷により行うようにしてもよい。

【0197】
ディスプレイ10aに表示される波形データ等の一例を図6に示す。図示例では、上体の角加速度の波形のグラフと、正規化R支持歩容周期norm_period_Rと正規化L支持歩容周期norm_period_Lとの大小を視覚的に示すグラフとが表示されている。

【0198】
波形のグラフは、角加速度以外の波形(角速度、傾斜角等の波形)に切替えることも可能である。

【0199】
なお、データ収集装置10から出力する波形データは、上体の角加速度、角速度又は姿勢(傾斜角)の波形データに限らず、いずれかのセンサユニット2(例えば腰部付近で被験者Pの上体に装着されたセンサユニット2)のグローバル座標系で見た加速度の波形データを含んでいてもよい。

【0200】
本実施形態の上体運動計測システム1によれば、以上の如く被験者Pの歩行動作における上体の角加速度等の波形データが得られる。そして、その波形データを利用して、被験者Pの歩行状態の解析又は評価を行うことができる。

【0201】
例えば、健常な被験者Pの歩行動作では、一般に、R支持歩容における上体の動きとL支持歩容における上体の動きとがバランスよく行われる。

【0202】
そして、本実施形態では、正規化R支持歩容周期norm_period_Rと正規化L支持歩容周期norm_period_Lとの比率(又は大小関係)、あるいは、正規化R支持歩容周期norm_period_R及び正規化L支持歩容周期norm_period_Lのそれぞれの期間での上体の角加速度又は角速度又は傾斜角度の波形から、被験者Pの歩行動作におけるR支持歩容とL支持歩容とのバランス状態を評価することができる。

【0203】
ひいては、被験者Pの片脚に不具合があるか否か、あるいは、不具合を生じた片脚の回復状況等を評価することができる。

【0204】
また、健常な被験者Pの歩行動作では、一般に、図7(a)に例示する如く、各脚の着地直前において、上体が後ろに傾く方向の角加速度(Y軸周りで負方向の角加速度)が発生するように上体の姿勢が自然に(無意識的に)ピッチ方向に動く。この結果、当該上体の姿勢の動きが、着地衝撃に起因する上体のピッチ方向の角加速度(Y軸周りで正方向の角加速度)とバランスする。ひいては、次の歩行サイクルへの移行が滑らかに行われる。

【0205】
一方、脚に障害を持つ被験者P等の歩行動作では、図7(b)に例示する如く、着地衝撃に対する対応力を十分に発揮できず、各脚の着地直後において、上体のピッチ方向の角加速度がY軸周りの正方向にスパイク形状の波形となる場合がある。

【0206】
従って、被験者Pの各脚の着地近辺における上体のピッチ方向の角加速度の波形を観測することで、被験者Pの不具合状態を評価できる。

【0207】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8等を参照して説明する。なお、本実施形態の上体運動計測システムは、前記第1実施形態の上体運動計測システム1とセンサユニットの配置構成と、データ収集装置の一部の処理だけが第1実施形態と相違する。そこで、本実施形態の説明は、第1実施形態と相違する部分を中心に行い、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。

【0208】
図8(a)を参照して、本実施形態の測定システムは、4個のセンサユニット(慣性センサユニット)2,2,2,2を備える。各センサユニット2の構成は、第1実施形態と同じである。

【0209】
4個のセンサユニット2,2,2,2のうち、2つのセンサユニット2,2は、第1実施形態と同様に、被験者Pの上体の背中の脊椎沿いの線上(体幹軸沿いの線上)で、被験者Pの首の付け根の付近の箇所と腰付近の箇所とに装着されている。以降、第1実施形態と同様に、この2つのセンサユニット2,2のうちの上側の(首の付け根付近の)センサユニット2を第1センサユニット2、下側の(腰付近の)センサユニット2を第2センサユニット2ということがある。

【0210】
また、残りの2つのセンサユニット2,2は、人の上体の脊椎(体幹軸)の左側の箇所と右側の箇所とで該上体の背中(背面)に装着されている。それらの装着箇所は、人の上体の脊椎に対して左右対称になるようにして、上体の同じ高さ位置に配置されている。その高さ位置としては、例えば図8(a)に示すように、被験者Pの胸付近の高さ位置、あるいは、図8(b)に示すように、被験者Pの肩と同程度の高さ位置等を採用できる。

【0211】
以降、上記の如く被験者Pの上体の左側の箇所と右側の箇所とに配置される2つのセンサユニット2,2の一方、例えば左側のセンサユニット2を第3センサユニット2、他方(右側)のセンサユニット2を第4センサユニット2ということがある。そして、第1~第4センサユニット2の任意の1つを第iセンサユニット2(i=1,2,3,4)ということがある。

【0212】
本実施形態の上体運動計測システムの構成は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。

【0213】
次に、本実施形態の上体運動計測システムよる計測処理を説明する。

【0214】
第1実施形態と同様に、データ収集装置10に各センサユニット2から送信される計測データ(被験者Pの歩行中の各時刻における各センサユニット2の姿勢の推定値及び加速度ベクトルの検出値を示す計測データ)が、該データ収集装置10の記憶媒体に時系列的に記憶保持される。

【0215】
そして、データ収集装置10は、その計測データを用いて、前記被験者Pの上体の動きを解析するための処理を、第1実施形態と同様に、図4のフローチャートに示す如く実行する。

【0216】
ただし、本実施形態では、STEP2,4の処理は、4個のセンサユニット2のそれぞれに関して実行される。

【0217】
また、本実施形態では、STEP7からの処理において、第1実施形態で説明した処理に加えて、被験者Pの上体のヨー方向(Z軸方向)の角加速度、角速度、及び回転角度を推定するための処理が追加される。

【0218】
具体的には、データ収集装置10は、STEP7において、被験者Pの上体のロール方向(X軸方向)の角加速度θx_dot2_with_offset、及びピッチ方向(Y軸方向)の角加速度θy_dot2_with_offsetに加えて、ヨー方向(Z軸方向)の角加速度θz_dot2_with_offsetを算出する。

【0219】
この場合、データ収集装置10は、第3センサユニット2(右側のセンサユニット2)についての正規化第1平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_3_globalのX軸方向成分norm_ave_acc_1_x_globalと、第4センサユニット2(左側のセンサユニット2)についての正規化第2平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_4_globalのX軸方向成分norm_ave_acc_4_x_globalとから、次式(4c)に示す線形結合によって被験者Pの上体のヨー方向(Z軸方向)の角加速度θz_dot2_with_offsetを算出する。

【0220】

θz_dot2_with_offset(τ)
=(norm_ave_acc_3_x_global(τ)-norm_ave_acc_4_x_global(τ))/Δy…(4c)
ただし、
Δy:第3センサユニット2と第4センサユニット2間のY軸方向(左右方向)の距離

上式(4c)のΔyの値としては、被験者Pの直立姿勢状態での第3センサユニット2と第4センサユニット2との間のY軸方向の距離の、あらかじめ計測された値(一定値)が用いられる。

【0221】
また、次のSTEP8では、データ収集装置10は、ロール方向及びピッチ方向の角加速度θx_dot2_with_offset,θy_dot2_with_offsetの算出値からオフセット成分を除去することに加えて、ヨー方向の角加速度θz_dot2_with_offsetの算出値からオフセット成分を除去する処理も実行する。

【0222】
この処理では、データ収集装置10は、次式(5c)により、前記2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の角加速度θz_dot2_with_offsetの平均値θz_dot2_aveを算出する。

【0223】
【数7】
JP0006288706B2_000008t.gif

そして、データ収集装置10は、次式(6c)で示す如く、2歩分正規化平均歩容における各時刻τにおけるヨー方向の角加速度θz_dot2_with_offset(τ)から上記の如く算出した平均値θz_dot2_ave(オフセット成分)を差し引いた値を、被験者Pの上体の実際のヨー方向の角加速度θz_dot2(τ)の推定値として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の角加速度θz_do2(τ)の推定値の波形データがさらに得られることとなる。

【0224】

θz_dot2(τ)=θz_dot2_with_offset(τ)-θz_dot2_ave …(6c)

また、次のSTEP9において、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容の各時刻τにおける被験者Pの上体のロール方向の角速度θx_dot(τ)及びピッチ方向の角速度θy_dot(τ)の推定値に加えて、ヨー方向の角速度θz_dot(τ)の推定値を算出する。

【0225】
この場合、θz_dot(τ)の推定値は次のように算出される。すなわち、まず、次式(7c)で示す如く、ヨー方向の角加速度θz_dot2(τ)の推定値を積分することにより、2歩分正規化平均歩容の初期時刻(τ=0)での角速度の値(初期値θz_dot(0))をゼロと仮定した場合における各時刻τでのヨー方向の角速度の値θz_dot_with_offset(τ)が算出される。

【0226】
【数8】
JP0006288706B2_000009t.gif

ここで、前記したように、人の定常的な直進歩行の2歩分の歩容の期間における上体の角速度の平均値は、一般に、ゼロもしくはほぼゼロとなる。そこで、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容におけるヨー方向の角速度θz_dot(τ)の平均値がゼロになるように、ヨー方向の角速度θz_dot(τ)の初期値θz_dot(0)を決定する。

【0227】
具体的には、θz_dot(0)は次式(8c)に算出される。

【0228】
【数9】
JP0006288706B2_000010t.gif

すなわち、2歩分正規化平均歩容におけるθz_dot_with_offset(τ)の平均値θz_dot_aveの逆極性の値がθz_dot(0)として算出される。

【0229】
そして、データ収集装置10は、次式(9c)で示す如く、上記初期値θz_dot(0)をθz_dot_with_offset(τ)に加算してなる値を、各時刻τでのヨー方向の角速度θz_dot(τ)の推定値として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の角速度θz_dot(τ)の推定値の波形データがさらに得られることとなる。

【0230】

θz_dot(τ)=θz_dot_with_offset(τ)+θz_dot(0) …(9c)

次のSTEP10において、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容の各時刻τにおける被験者Pの上体のロール方向の傾斜角θx(τ)及びピッチ方向の傾斜角θy(τ)の推定値に加えて、ヨー方向の回転角θz(τ)の推定値を算出する。

【0231】
この場合、θz(τ)の推定値は次のように算出される。すなわち、まず、次式(10c)で示す如く、ヨー方向の角速度θz_dot(τ)の推定値を積分することにより、2歩分正規化平均歩容の初期時刻(τ=0)での回転角の値(初期値θz(0))をゼロと仮定した場合における各時刻τでのヨー方向の回転角の値θz_with_offset(τ)が算出される。

【0232】
【数10】
JP0006288706B2_000011t.gif

ここで、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の傾斜角θx(τ)の平均値は、一般にゼロもしくはほぼゼロになる。

【0233】
そこで、本実施形態では、データ収集装置10は、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の回転角θz_(τ)の平均値がゼロになるように、ヨー方向の回転角θz(τ)の初期値θz(0)を決定する。

【0234】
具体的には、次式(13c)で示す如く、2歩分正規化平均歩容について前記式(10c)により算出されたθz_with_offset(τ)の平均値θz_aveの逆極性の値がθx(0)として算出される。

【0235】
【数11】
JP0006288706B2_000012t.gif

そして、データ収集装置10は、次式(14c)で示す如く、上記初期値θz(0)をθz_with_offset(τ)に加算してなる値を、各時刻τでのヨー方向の回転角θz(τ)の推定値として算出する。これにより、2歩分正規化平均歩容における被験者Pの上体のヨー方向の回転角θz(τ)の推定値の波形データがさらに得られることとなる。

【0236】

θz(τ)=θz_with_offset(τ)+θz(0) …(14c)

本実施形態は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。

【0237】
本実施形態によれば、被験者Pの歩行状態の解析あるいは評価を行うために、上体のロール方向及びピッチ方向の角加速度、角速度及び傾斜角度の他、さらに、ヨー方向の角加速度、角速度及び回転角度の推定値及びその波形データを活用することができる。

【0238】
[変形態様]
次に、以上説明した各実施形態に関連する変形態様をいくつか説明する。

【0239】
前記各実施形態では、前記式(4a),(4b),(4c)により、被験者Pの上体の角加速度の推定値を算出するようにした。ただし、例えば上体が直立姿勢状態からロール方向に傾いた状態では、上体のロール方向の角加速度の変化に応じて、各センサユニット2(特に、上体の上部側のセンサユニット2)の並進加速度ベクトルは、Y軸方向成分に加えて、Z軸方向成分も変化する。

【0240】
同様に、例えば上体が直立姿勢状態からピッチ方向に傾いた状態では、上体のピッチ方向の角加速度の変化に応じて、各センサユニット2(特に、上体の上部側のセンサユニット2)の並進加速度ベクトルは、X軸方向成分に加えて、Z軸方向成分も変化する。

【0241】
これらのことを考慮すると、ロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の各方向の上体の角加速度の推定値は、より一般的には、上体に装着する複数のセンサユニット2の加速度を線形結合することによって算出するようにしてもよい。

【0242】
例えば、前記STEP7の処理において、次式(15a),(15b),(15c)により、ロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の各方向の上体の角加速度の推定値(オフセット成分を除去する前の推定値)を算出するようにしてもよい。

【0243】
【数12】
JP0006288706B2_000013t.gif

なお、Nは、上体に装着するセンサユニット2の個数、w_xy_i,wxz_i,w_yx_i,wyz_i,w_zx_i、w_zy_i(i=1,2,…,N)は重み係数である。これらの重み係数w_xy_i,wxz_i,w_yx_i,wyz_i,w_zx_i、w_zy_iの値は、あらかじめ実験等に基づいて設定すればよい。この場合、重み係数w_xy_i,wxz_i,w_yx_i,wyz_i,w_zx_i、w_zy_iのうちの一部の重み係数はゼロであってもよい。

【0244】
このように上体の角加速度の推定値を算出することで、該角加速度の推定値の信頼性をより高めることができる。

【0245】
また、前記各実施形態では、上体に装着する複数のセンサユニット2の配置構成として、図1(b)あるいは、図8(a)もしくは図8(b)に示した配置構成を例示したが、例えば、図9に示す配置構成を採用してもよい。この例では、3個のセンサユニット2のうちの一つが、被験者Pの腰付近の高さで上体に装着され、2個のセンサユニット2が、上体の上部(例えば肩付近の高さの部分)で、体幹軸Lに対して左右対称となるように上体に装着される。

【0246】
また、前記各実施形態では、各センサユニット2を上体の背中(背面)に装着したが、各センサユニット2を上体の前面側(腹側の面)に装着してもよい。

【0247】
また、前記各実施形態では、正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_i_globalの各成分の波形を算出した上で、2歩分正規化平均歩容における上体の角加速度の推定値を算出するようにした。ただし、正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_i_globalの各成分の代わりに、前記STEP2で算出される第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の値をそのまま使用して、式(4a),(4b),(4c)又は式(15a),(15b),(15c)と同様の演算を行うことで、2n歩容の全体における上体の各方向の角加速度の推定値の時系列を算出するようにしてもよい。

【0248】
そして、この場合には、上記の如く算出した角加速度の推定値の波形を、第iグローバル加速度ベクトル↑acc_i_globalの各成分の波形の正規化及び平均化と同様の処理によって、正規化及び平均化することで、各方向の角加速度の平均波形データを生成するようにしてもよい。

【0249】
この場合、上体の角加速度の平均波形データを生成した後は、前記STEP8~10と同様の処理を行うことで、オフセット成分を除去した角加速度の推定値の算出、角速度の算出、上体の姿勢(傾斜角あるいは回転角)の推定値を算出できる。

【0250】
また、前記各実施形態では、STEP6で生成した正規化第i平均加速度ベクトル↑norm_ave_acc_i_globalの各成分の波形データ(平均波形データ)に対して、前記STEP8と同様の処理によって、オフセット成分を除去する処理を実行するようにしてもよい。

【0251】
すなわち、2歩分正規化平均歩容の期間における↑norm_ave_acc_i_globalの各成分の平均値をオフセット成分として求め、このオフセット成分を当該成分の値から差し引くことで、該オフセット成分を除去してなる平均波形データを求めるようにしてもよい。このようにした場合には、前記STEP8の処理を省略してもよい。

【0252】
また、前記各実施形態では、R支持歩容及びL支持歩容の一方から他方への切替わりのタイミンングをデータ収集装置10で認識するために、接地センサ21,21を用いた。ただし、被験者の上体に装着するいずれかのセンサユニット2の加速度センサ5の検出出力により示される所定方向の加速度の検出値(センサユニットローカル座標系Csで見た該センサユニット2の加速度)又は、いずれかのセンサユニット2についての第iグローバル加速度ベクトルの所定方向成分の変化に基づいて、上記切替わりのタイミングを認識することもできる。

【0253】
例えば、被験者Pの腰付近に装着されるセンサユニット2(第2センサユニット2)についての第2グローバル加速度ベクトル↑acc_2_globalのX軸方向成分acc_2__x_globalの推定値は、被験者Pの歩行動作において、図10に例示する如く、各要素歩容における遊脚の着地タイミングで、減速方向(X軸の負方向)の加速度に急激に変化する。このことは、第2センサユニット2についての第2ローカル加速度ベクトル↑acc_i_localの検出値のX軸方向成分acc_2__x_localについても同様である。

【0254】
従って、↑acc_2_globalのX軸方向成分acc_2__x_globalの微分値(時間的変化率)、又は↑acc_2__x_localのX軸方向成分acc_2_x_localの微分値(時間的変化率)を逐次算出し、この微分値が負の値(第2センサユニット2がX軸方向で減速する方向の値)で、且つ、その絶対値又は二乗値が、所定の設定閾値以上になったタイミングを、R支持歩容及びL支持歩容の一方から他方への切替わりのタイミンングとして認識するようにしてもよい。

【0255】
さらに、このようにR支持歩容及びL支持歩容の一方から他方への切替わりのタイミンングとして認識する場合、例えば第2センサユニット2についての第2グローバル加速度ベクトル↑acc_2_globalのY軸方向成分acc_2_y_globalの変化パターンに基づいて、各要素歩容において支持脚となっている脚が右脚及び左脚のいずれであるかを認識することも可能である。

【0256】
すなわち、図11に例示する如く、↑acc_2_globalのY軸方向成分acc_2_y_globalの波形は、R支持歩容とL支持歩容とで各別の特徴的な変化パータンを有するので、該変化パターンの特徴から、各要素歩容において支持脚となっている脚が右脚及び左脚のいずれであるかを認識することが可能である。

【0257】
この場合、acc_2_y_globalの波形の変化パターンの認識は、例えば、次のような手法で行うことができる。すなわち、図11に示す如く、各要素歩容の期間を複数の期間に分割する。

【0258】
そして、その各分割期間ごとに、該分割期間の始端から終端までのacc_2_y_globalの変化量(終端における値と始端における値との差)と、該分割期間でのacc_2_y_globalの極性(詳しくは該分割期間内で正極性となっている時間と負極性となっている時間とのうちのより長い方の時間に対応する極性)とを指標として、各分割期間でのacc_2_y_globalの変化パターンを分類する。

【0259】
そして、各要素歩容での全ての分割期間での変化パターンと、R支持歩容とL支持歩容とに対応してあらかじめ設定した変化パターンとの一致度合を照合することで、各要素歩容で支持脚となっている脚が右脚及び左脚のいずれであるかを認識する。

【0260】
また、前記接地センサ21の代わりに、例えば被験者Pの各足平部に加速度センサを装着してもよい。この場合、各足平部に装着した加速度センサにより検出される加速度の絶対値が、各脚の着地又は離床のタイミングで急激に大きなものとなる。従って、上記加速度の絶対値の変化に基づいて検出される各脚の着地又は離床のタイミングを、、R支持歩容及びL支持歩容の一方から他方への切替わりのタイミングとして認識することも可能である。
【符号の説明】
【0261】
1…上体運動計測システム、2…慣性センサユニット、4…角速度センサ、5…加速度センサ、7…演算処理部(センサユニット姿勢推定手段)、11…センサユニット加速度推定部(センサユニット加速度推定手段)、12…上体姿勢運動推定部(上体角加速度推定手段、上体角速度推定手段)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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