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明細書 :疼痛に関する化合物及び医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6531330号 (P6531330)
登録日 令和元年5月31日(2019.5.31)
発行日 令和元年6月19日(2019.6.19)
発明の名称または考案の名称 疼痛に関する化合物及び医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/428       (2006.01)
A61P  25/04        (2006.01)
C07D 277/64        (2006.01)
FI A61K 31/428
A61P 25/04
C07D 277/64
請求項の数または発明の数 6
全頁数 20
出願番号 特願2015-553602 (P2015-553602)
出願日 平成26年12月18日(2014.12.18)
国際出願番号 PCT/JP2014/083569
国際公開番号 WO2015/093567
国際公開日 平成27年6月25日(2015.6.25)
優先権出願番号 2013261396
優先日 平成25年12月18日(2013.12.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年10月27日(2017.10.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】萩原 正敏
【氏名】豊本 雅靖
【氏名】細谷 孝充
【氏名】吉田 優
【氏名】栗原 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 国際公開第2013/168826(WO,A1)
米国特許出願公開第2005/0171026(US,A1)
国際公開第2009/085226(WO,A1)
国際公開第2010/010797(WO,A1)
特開昭50-089367(JP,A)
米国特許出願公開第2008/0255123(US,A1)
特開2004-002352(JP,A)
MURAKI M. et al,Manipulation of Alternative Splicing by a Newly Developed Inhibitor of Clks,The Journal of Biological Chemistry,2004年,vol.279 no.23,pp.24246-24254
Elizabeth R. Sharlow, et al.,Discovery of Diverse Small Molecule Chemotypes withCell-Based PKD1 Inhibitory Activity,PLoS One,2011年10月 5日,6/10/e25134
調査した分野 A61K 31/428
A61P 25/04
A61P 29/00
C07D 277/64
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のため医薬組成物であって、
下記式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩を含む、医薬組成物
【化1】
JP0006531330B2_000021t.gif
[式(II)において、
1は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基又はシクロプロピル基であり、
1は、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基であり、
1は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1—4のアルキルオキシ基であり、
1は、水素原子である。]
【請求項2】
【化2】
JP0006531330B2_000022t.gif
で表される化合物並びにその製薬上許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つの成分を有効成分として含有する、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
【請求項3】
式(II)で表される化合物が、
【化3】
JP0006531330B2_000023t.gif
又は
である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
疼痛が、急性痛、炎症性疼痛、内臓痛、突出痛、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、慢性痛、及び癌関連疼痛からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
疼痛が、炎症性疼痛及び/又は神経障害性疼痛である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項からのいずれかに記載の医薬組成物を製造するための、下記式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩の使用。
【化4】
JP0006531330B2_000024t.gif
[式(II)において、
1は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基又はシクロプロピル基であり、
1は、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基であり、
1は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1—4のアルキルオキシ基であり、
1は、水素原子である。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、疼痛に関する化合物及び医薬組成物、及び、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛の医学的状態は、数種の感覚機序および神経機序が関与する複雑な生理過程である。疼痛は、実際の又は潜在的な組織損傷を伴う不快な感覚的又は情動的経験として定義され、或いはそのような損傷として記載することができる。
【0003】
疼痛を病態生理学的に分類すると、炎症性疼痛と神経障害性疼痛に分類されうる。
炎症性疼痛は、侵害受容器を介した侵害受容性疼痛であり、組織損傷部位に放出された炎症性メディエーターによって引き起こされる痛みといえる。炎症性疼痛のメカニズムは以下のように考えられている。すなわち、組織が損傷されて炎症が生じるとブラジキニン、ATP、プロトンなどの発痛物質、及び/又は、プロスタグランジン、セロトニン、ヒスタミン、炎症性サイトカイン等が放出され、絶え間なく自発痛が発生する。さらに、侵害受容器の過敏化により痛覚過敏が生じる。また、侵害受容器の過敏化のメカニズムとして、イオンチャネル、特にカプサイシン受容体として知られるTRPV1チャネルのリン酸化が報告されている。
【0004】
一方、神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって生じている疼痛と定義することができる(2011年国際疼痛学会)。日本国内では、数百万人規模の神経障害性疼痛患者が存在すると推測される。侵害受容器の興奮が関与しない痛みであり、末梢神経又は中枢神経の可塑的な変化が関与する。神経障害性疼痛の発生機序として、末梢神経の異所性発火、末梢神経及び脊髄後角における神経解剖学的再構築、下行性抑制系の抑制、脊髄後角内グリア細胞の活性化などが報告されている。
【0005】
特許文献1を含むいくつかの文献が、疼痛を治療するための方法や組成物を開示する。また、特許文献2は、キナーゼが過剰誘導された場合に生じる異常なスプライシングを抑制する医療用組成物を開示する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2008‐539269号公報
【特許文献2】米国特許公開第2005/0171026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、一態様において、疼痛に関する化合物及び医薬組成物、及びそれらの使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩に関する。
【化1】
JP0006531330B2_000002t.gif
[式(I)において、
W、X、Y、及びZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。]
【0009】
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示にかかる式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0010】
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示にかかる医薬組成物を製造するための、本開示にかかる式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用に関する。
【0011】
本開示は、一又は複数の実施形態において、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療方法であって、本開示にかかる医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む方法に関する。また、本開示は、一又は複数の実施形態において、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療方法であって、本開示にかかる医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む方法における、本開示にかかる式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用、あるいは、本開示にかかる医薬組成物お使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物1の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物1を経口投与して機械的アロディニア(機械刺激に対する疼痛)の治療効果を評価した。グラフの縦軸は、von Freyフィラメントの機械刺激に対する逃避反射行動の閾値(荷重)を示す。
【図2】図2は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物1の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物1を経口投与して熱性知覚過敏(熱刺激に対する疼痛)の治療効果を評価した。グラフの縦軸は、熱刺激に対する逃避反射行動までの潜時(時間)を示す。
【図3】図3は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物2の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物2を髄腔内投与して機械刺激及び熱刺激に対する反応を調べた。図3Aは機械刺激に対する逃避反射行動の閾値、図3Bは熱刺激に対する潜時を調べた結果の一例である。
【図4】図4は、完全フロイントアジュバント誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物3の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物3を髄腔内投与して機械刺激に対する逃避反射行動までの閾値を調べた。
【図5】図5は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物4の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物4を髄腔内投与して機械刺激及び熱刺激に対する反応を調べた。図5Aは機械刺激に対する逃避反射行動の閾値、図5Bは熱刺激に対する潜時を調べた結果の一例である。
【図6】図6は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物5の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物5を髄腔内投与して熱刺激に対する逃避反射行動までの潜時(時間)を調べた。
【図7】図7は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスにおける化合物6の疼痛治療の効果を確認したグラフの一例である。化合物6を髄腔内投与して熱刺激に対する逃避反射行動までの潜時(時間)を調べた。
【図8】図8は、カラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスに対して、化合物1とオピオイド拮抗薬とを同時投与して疼痛の治療効果に対する影響を評価したグラフの一例である。化合物1とオピオイド拮抗薬とを腹腔内投与して機械刺激に対するに対する反応を調べた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[一般式(I)で表される化合物]
本開示は、一態様において、下記式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩に関する。
【化2】
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【0014】
式(I)において、W、X、Y、及びZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。

【0015】
W、X、Y、及びZにおける炭素数1—6の直鎖又は分枝のアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、2-メチル-1-プロピル基、2-メチル-2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1-へキシル基、2-へキシル基、3-へキシル基、2-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、2,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、2,2-ジメチル-1-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基等が挙げられる。また、W、X、Y、及びZにおける炭素数1—6の環状アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。

【0016】
W、X、Y、及びZにおけるヘテロアリール(ヘテロアリールメチル基におけるヘテロアリールを含む)としては、一又は複数の実施形態において、窒素原子を1~2個含む5~6員単環式の基、窒素原子を1~2個と酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個とを含む5~6員単環式の基、酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、窒素原子1~4個を含み、6員環と5又は6員環が縮合した二環式の基などが挙げられる。また、その他の一又は複数の実施形態において、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、3-オキサジアゾリル、2-イミダゾリル、2-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、2-フリル、3-フリル、3-ピロリル、2-キノリル、8-キノリル、2-キナゾリニル、8-プリニルが挙げられる。R1及びR2におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数10個以下のアリール基が挙げられる。

【0017】
W、X、Y、及びZにおける置換基としては、一個又は同一若しくは異なって複数個あってもよく、一又は複数の実施形態において、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、メチレンジオキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、又は低級アルキルスルホンアミド基が挙げられる。本開示において、ハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子が挙げられる。また、本開示において、低級アルキルは、一又は複数の実施形態において、炭素数1—6の直鎖又は分枝のアルキル基である。

【0018】
式(I)で表される化合物は、限定されない一又は複数の実施形態において、下記式(II)で表される化合物である。
【化3】
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【0019】
式(II)において、X1及びY1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基であり、Z1及びW1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基である。X1、Y1、Z1及びW1における置換基は、上述の置換基が挙げられる。

【0020】
式(II)で表される化合物は、一又は複数の実施形態において、X1及びY1が炭素数1—4のアルキル基であり、Z1がハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1—4のアルキルオキシ基であり、W1が水素原子である。

【0021】
式(I)又は(II)で表される化合物は、限定されない一又は複数の実施形態として、以下の化合物が挙げられる。
【化4】
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【0022】
また、式(I)及び(II)で表される化合物は、不斉炭素原子が存在する場合、及び/又は、立体異性体が存在する場合、一又は複数の実施形態において、各異性体の混合物、又は、単離されたものである。

【0023】
本開示において「プロドラッグ」は、一又は複数の実施形態において、生体内で容易に加水分解され、式(I)で表される化合物を再生するものが挙げられ、例えばカルボキシル基を有する化合物であればそのカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物、アルキルチオカルボニル基となった化合物、又はアルキルアミノカルボニル基となった化合物が挙げられる。また、例えばアミノ基を有する化合物であれば、そのアミノ基がアルカノイル基で置換されアルカノイルアミノ基となった化合物、アルコキシカルボニル基により置換されアルコキシカルボニルアミノ基となった化合物、アシロキシメチルアミノ基となった化合物、又はヒドロキシルアミンとなった化合物が挙げられる。また例えば水酸基を有する化合物であれば、その水酸基が前記アシル基により置換されてアシロキシ基となった化合物、リン酸エステルとなった化合物、又はアシロキシメチルオキシ基となった化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化に用いる基のアルキル部分としては前記アルキル基が挙げられ、そのアルキル基は置換(例えば炭素原子数1~6のアルコキシ基等により)されていてもよい。一又は複数の実施形態において、例えばカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物を例にとれば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどの低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニル、メトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2-メトキシエトキシカルボニル、2-メトキシエトキシメトキシカルボニル、ピバロイロキシメトキシカルボニルなどのアルコキシ基により置換された低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニルが挙げられる。

【0024】
本開示において「製薬上許容される塩」とは、薬学的、薬理的、及び/又は医薬的に許容される塩を含有し、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性又は塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。

【0025】
前記無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。

【0026】
前記無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。前記有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジア
ミン塩などが挙げられる。

【0027】
前記酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。前記塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などが挙げられる。

【0028】
本開示において「化合物の塩」には、化合物が大気中に放置されることにより、水分を吸収して形成されうる水和物が包含され得る。また、本開示において「化合物の塩」には、化合物が他のある種の溶媒を吸収して形成されうる溶媒和物も包含され得る。

【0029】
[医薬組成物]
本開示は、一態様において、式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。

【0030】
式(I)で表される化合物又は本開示にかかる医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のための用途に使用されうる。また、式(I)で表される化合物又は本開示にかかる医薬組成物は、その他の一又は複数の実施形態において、鎮痛の用途に使用されうる。鎮痛は、疼痛の鎮痛を含む。式(I)で表される化合物又は本開示にかかる医薬組成物が疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のための用途及び鎮痛の用途に使用できるメカニズムの詳細は明らかではないが、一又は複数の実施形態において、式(I)で表される化合物がオピオイド受容体を介して鎮痛作用を発揮すると推定される。但し、本開示及び本発明はこのメカニズムに限定されなくてもよい。

【0031】
本開示において「疼痛」は、一又は複数の実施形態において、病態生理学的に分類される炎症性疼痛又は神経障害性疼痛である。また、本開示において「疼痛」は、一又は複数の実施形態において、時間経過又は機序によって分類される急性痛、炎症性疼痛、内臓痛、突出痛、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、慢性痛、又は癌関連疼痛である。

【0032】
本開示において「医薬組成物」は、一又は複数の実施形態において、周知の製剤技術を適用し、投与形態に適した剤形とすることができる。その投与形態としては、これらに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤等の剤形による経口投与が挙げられる。或いは、注射剤、液剤、エアゾール剤、座剤、貼布剤、パップ剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤、点眼剤等の剤形による非経口投与を挙げることができる。これらの製剤は、これらに限定されないが、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造されうる。

【0033】
本開示にかかる医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、治療(又は鎮痛)効果を有する他の有効成分を含まず、或いは、さらに1又は複数の有効成分を含有する。

【0034】
前記賦形剤としては、これらに限定されないがデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。前記コーティング剤としては、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。前記結合剤としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。前記崩壊剤としては、これらに限定されないが、前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。前記安定化剤としては、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。前記矯味矯臭剤としては、これらに限定されないが、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。

【0035】
また、液剤の製造には、溶媒として、これらに限定されないが、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができ、必要に応じて界面活性剤又は乳化剤等も使用できる。前記界面活性剤又は乳化剤としては、これらに限定されないが、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。

【0036】
本開示にかかる医薬組成物の使用方法は、症状、年齢、投与方法等により異なりうる。使用方法は、これらに限定されないが、一又は複数の実施形態において、有効成分である式(I)で表される化合物の体内濃度が100nM~1mMの間のいずれかになるように、間欠的若しくは持続的に、経口、経皮、粘膜下、皮下、筋肉内、血管内、脳内、又は腹腔内に投与することができる。限定されない一又は複数の実施形態において、経口投与の場合、対象(ヒトであれば成人)に対して1日あたり、式(I)で表される化合物に換算して、下限として0.01mg、又は0.1mg、上限として、2000mg、500mg、又は100mgを1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。限定されない一又は複数の実施形態において、静脈内投与の場合には、対象(ヒトであれば成人)に対して1日当たり、下限として0.001mg、又は好ましくは0.01mg、上限として、500mg、又は50mgを1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。

【0037】
[方法及び使用]
本開示は、一態様において、本開示にかかる医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療方法に関する。前記対象は、一又は複数の実施形態において、哺乳類、ヒトを除く哺乳類、若しくはヒト、又は、疼痛の症状を示す哺乳類、ヒトを除く哺乳類、若しくはヒトが挙げられる。本開示にかかる医薬組成物の投与方法については、一又は複数の実施形態において、前述の医薬組成物の使用方法に準じることができる。

【0038】
したがって、本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[A1] 下記式(I)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩。
【化5】
JP0006531330B2_000006t.gif
[式(I)において、W、X、Y、及びZは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。]
[A2] 下記式(II)で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩。
【化6】
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[式(II)において、
1及びY1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基であり、
1及びW1は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基である。]
[A3] [A1]又は[A2]に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
[A4] 疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のための、[A3]記載の医薬組成物。
[A5]
【化7】
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で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物。
[A6] 疼痛が、炎症性疼痛及び/又は神経障害性疼痛である、[A4]又は[A5]記載の医薬組成物。
[A7] オピオイド受容体を介した鎮痛作用のための、[A3]から[A6]のいずれかに記載の医薬組成物。
[A8] [A3]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を製造するための[A1]又は[2]に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用。
[A9] [A3]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療方法における、[A1]又は[2]に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用、或いは、[A3]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む方法。
[A10] [A3]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む、疼痛の改善、進行抑制、及び/又は、治療方法。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本開示中に引用された文献のその全体は、本開示の一部として組み入れられる。
【実施例】
【0040】
製造例1:化合物1の製造
【化8】
JP0006531330B2_000009t.gif
【実施例】
【0041】
化合物1は、以下のように合成した。
【化9】
JP0006531330B2_000010t.gif
5-フルオロ-2-メチルベンゾチアゾール(5-fluoro-2-methylbenzothiazole)(48.8 g,292 mmol、商用品)のヨウ化エチル(iodoethane)(50.0 mL, 622 mmol、商用品)溶液を72時間加熱還流(油浴温度 100 ℃)した。室温放冷後、生成した無色固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥することで、ヨウ化3-エチル-5-フルオロ-2-メチルベンゾチアゾリウム(3-ethyl-5-fluoro-2-methylbenzothiazolium iodide)(46.5 g,151 mmol,51.7%)を無色固体として得た。
次に、アルゴン雰囲気下、ヨウ化3-エチル-5-フルオロ-2-メチルベンゾチアゾリウム(3-ethyl-5-fluoro-2-methylbenzothiazolium iodide)(32.3 g,100 mmol)のアセトニトリル(150 mL)溶液に、無水酢酸(acetic anhydride)(22.5 mL, 236 mmol、商用品)、トリエチルアミン(triethylamine)(32.2 mL, 231 mmol、商用品)を室温にて順次加えた後、3時間加熱還流(油浴温度 80 ℃)した。室温放冷後、この反応混合物に水を加え、酢酸エチル(×3)で抽出し、これを飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濾過した後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた反応粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(和光純薬、Presep(商標) Silica Gel(HC-N) Type2L、ヘキサン/酢酸エチル=5/1 to 1/1)で精製した後、ヘキサン-酢酸エチルで再結晶し、(1Z)-1-(3-エチル-5-フルオロ-2(3H)-ベンゾチアゾイリデン)-2-プロパノン((1Z)-1-(3-ethyl-5-fluoro-2(3H)-benzothiazolylidene)-2-propanone)(17.8 g,75.2 mmol,75.2%)(化合物1)を無色の針状結晶として得た。融点 179-180 ℃; TLC Rf 0.36 (ヘキサン/酢酸エチル = 7/3); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.38 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 2.25 (s, 3H),4.01 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 5.90 (s, 1 H), 6.82 (dd, 1H, J = 2.4, 9.6Hz), 6.88 (ddd, 1H, J = 2.4, 8.4, 8.4 Hz), 7.48 (dd, 1H, J = 5.2, 8.4 Hz); IR (KBr, cm-1) 978, 1042, 1125, 1192, 1326, 1332, 1354, 1382, 1449, 1453, 1468, 1488, 1492, 1604, 2981.
【実施例】
【0042】
製造例2:化合物2の製造
【化10】
JP0006531330B2_000011t.gif
化合物2は、文献記載の手法(M. Muraki, et al., Manipulation of Alternative Splicing by a Newly Developed Inhibitor of Clks, The Journal of Biological Chemistry, 2004, 279, 24246-24254,またはWO 2010010797 A1)に従って合成した。
【実施例】
【0043】
製造例3:化合物3の製造
【化11】
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【実施例】
【0044】
化合物3は、以下のように合成した。
【化12】
JP0006531330B2_000013t.gif
6-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾール(6-methoxy-2-methylbenzothiazole)(201 mg,1.12 mmol、商用品)のヨウ化エチル(iodoethane)(2.00 mL, 24.6 mmol、商用品)溶液を24時間加熱還流(油浴温度 100 ℃)した。室温放冷後、生成した無色固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥することで、ヨウ化3-エチル-6-メトキシ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾリウム(3-ethyl-6-methoxy-2-methylbenzothiazolium iodide)(257 mg,0.766 mmol,68.4%)を無色固体として得た。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化3-エチル-6-メトキシ-2-メチルベンゾチアゾリウム(3-ethyl-6-methoxy-2-methylbenzothiazolium iodide)(257 mg,0.766 mmol)のアセトニトリル(2 mL)溶液に、無水酢酸(acetic anhydride)(0.170 mL, 1.80 mmol、商用品)、トリエチルアミン(triethylamine)(0.250 mL, 1.79 mmol、商用品)を室温にて順次加えた後、2時間加熱還流(油浴温度 80 ℃)した。室温放冷後、この反応混合物を減圧濃縮し、水を加え、酢酸エチル(×3)で抽出し、これを飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを濾過した後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた反応粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製し、(1Z)-1-(3-エチル-6-メトキシ-2(3H)-ベンゾチアゾイリデン)プロパン-2-オン((1Z)-1-(3-ethyl-6-methoxy-2(3H)-benzothiazoylidene)-2-propanone)(115 mg,0.461 mmol,60.2%)(化合物3)を淡黄色固体として得た。融点 134-135 ℃; TLC Rf 0.27 (ヘキサン/酢酸エチル = 1/2); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.36 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 2.23 (s, 3H), 4.03 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 5.82 (s, 1 H), 6.91 (dd, 1H, J = 2.5, 8.7 Hz), 7.01 (d,1H, J = 8.7 Hz), 7.13 (d, 1H, J = 2.5 Hz); IR (KBr, cm-1) 720, 760, 801, 959, 1020, 1046, 1136, 1188, 1219, 1258, 1273, 1298, 1327, 1358, 1472, 1487, 1590, 1603, 2342, 2361, 2980.
【実施例】
【0045】
製造例5:化合物5の製造
【化13】
JP0006531330B2_000014t.gif
【実施例】
【0046】
化合物5は、以下のように合成した。
【化14】
JP0006531330B2_000015t.gif
5-ブロモ-2-メチルベンゾチアゾール(5-bromo-2-methylbenzothiazole)(5.11 g,22.4 mmol、商用品)のヨウ化エチル(iodoethane)(3.70 mL, 46.3 mmol、商用品)溶液を72時間加熱還流(油浴温度 100 ℃)した。室温放冷後、生成した無色固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥することで、ヨウ化5-ブロモ-3-エチル-2-メチルベンゾチアゾリウム(5-bromo-3-ethyl-2-methylbenzothiazolium iodide)(4.11 g,10.7 mmol,47.7%)を無色固体として得た。
次に、アルゴン雰囲気下、ヨウ化5-ブロモ-3-エチル-2-メチルベンゾチアゾリウム(5-bromo-3-ethyl-2-methylbenzothiazolium iodide)(4.10 g,10.7 mmol)のアセトニトリル(18 mL)溶液に、無水酢酸(acetic anhydride)(2.41 mL, 25.5 mmol、商用品)、トリエチルアミン(triethylamine)(3.44 mL, 24.7 mmol、商用品)を室温にて順次加えた後、2時間加熱還流(油浴温度 80 ℃)した。室温放冷後、この反応混合物に塩化メチレン300 mLを加え、塩化アンモニウム水溶液と飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過した後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた反応粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(和光純薬、Presep(商標) Silica Gel(HC-N) Type L、ヘキサン/酢酸エチル=5/1 to 1/2)で精製した後、ヘキサン-酢酸エチルで再結晶し、(1Z)-1-(5-ブロモ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾイリデン)-2-プロパノン((1Z)-1-(5-bromo-3-ethyl-2(3H)-benzothiazoylidene)-2-propanone)(2.72 g,9.13 mmol,85.3%)(化合物5)を無色固体として得た。融点 184-185 ℃; TLC Rf 0.39 (ヘキサン/酢酸エチル = 7/3); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.38 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 2.25 (s, 3H), 4.02 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 5.90 (s, 1 H), 7.22 (d, 1H, J = 1.6 Hz), 7.27 (dd, 1H, J = 1.6, 8.4Hz), 7.41 (d, 1H, J = 8.4 Hz); IR (KBr, cm-1) 800, 850, 964, 1086, 1139, 1188, 1299, 1328, 1353, 1382, 1450, 1467, 1489, 1588, 1614, 2978.
【実施例】
【0047】
製造例6:化合物6の製造
【化15】
JP0006531330B2_000016t.gif
【実施例】
【0048】
化合物6は、以下のように合成した。
【化16】
JP0006531330B2_000017t.gif
5-クロロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール(5-chloro-2-methylbenzothiazole)(10.0g,54.3 mmol、商用品)のヨウ化エチル(iodoethane)(9.10 mL, 114 mmol、商用品)溶液を72時間加熱還流(油浴温度 100 ℃)した。室温放冷後、生成した無色固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥することで、ヨウ化5-クロロ-3-エチル-2-メチルベンゾチアゾリウム(5-chloro-3-ethyl-2-methylbenzothiazolium iodide)(9.96 g,29.3 mmol,53.9%)を無色固体として得た。
次に、アルゴン雰囲気下、ヨウ化5-クロロ-3-エチル-2-メチルベンゾチアゾリウム(5-chloro-3-ethyl-2-methylbenzothiazolium iodide)(4.95 g,14.6 mmol)のアセトニトリル(25 mL)溶液に、無水酢酸(acetic anhydride)(3.29 mL, 34.8 mmol、商用品)、トリエチルアミン(triethylamine)(4.70 mL, 33.8 mmol、商用品)を室温にて順次加えた後、3時間加熱還流(油浴温度 80 ℃)した。室温放冷後、この反応混合物に塩化メチレン300 mLを加え、塩化アンモニウム水溶液と飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。これを濾過した後、濾液を減圧下で濃縮した。得られた反応粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(和光純薬、Presep(商標) Silica Gel(HC-N) Type L、ヘキサン/酢酸エチル=5/1 to 1/2)で精製した後、ヘキサン-酢酸エチルで再結晶し、(1Z)-1-(5-クロロ-3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾイリデン)-2-プロパノン((1Z)-1-(5-chloro-3-ethyl-2(3H)-benzothiazoylidene)propan-2-one)(3.42 g,75.2 mmol,92.2%)(化合物6)を無色固体として得た。融点 175-176 ℃; TLC Rf 0.43 (ヘキサン/酢酸エチル = 7/3); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 1.38 (t, 3H, J = 7.2 Hz), 2.25 (s, 3H), 4.02 (q, 2H, J = 7.2 Hz), 5.90 (s, 1 H), 7.07 (d, 1H, J = 1.6 Hz), 7.13 (dd, 1H, J = 1.6, 8.4 Hz), 7.47 (d, 1H, J = 8.4 Hz); IR (KBr, cm-1) 839, 938, 963, 1044, 1088, 1140, 1189, 1297, 1314, 1328, 1353, 1382, 1463, 1492, 1582, 1613, 2979.
【実施例】
【0049】
[実験例1]
カラゲニンを足底皮下投与すると、数時間後にかけて急性炎症が生じ、それに伴い機械的刺激、熱刺激に対する過敏現象が生じる。このカラゲニン誘発による炎症性疼痛モデルマウスに化合物1を有効成分とする治療薬を投与し、疼痛を評価した。
すなわち、マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の後肢足底部へカラゲニンを皮下投与した7時間後に化合物1を経口投与し、化合物1の投与1時間後に機械的アロディニアの治療効果を確認した具体的な条件は以下の通りとした。
マウス:C57BL/6J、オス、8週齢、n=4(片足ずつでn=8)
疼痛の誘導:25μLの2%λ-カラゲニンを含む生理食塩水を後肢底部皮下に注入して誘導した。
治療薬投与:マウスの体重1gあたり1nmolの化合物1となるように、マウスの体重20gあたり0.2mlの化合物1の溶液を経口投与した。なお、化合物1の溶液は、化合物1を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。
疼痛の評価:von Freyテストにより評価した。すなわち、様々な太さのvon Freyフィラメントの先端でマウスの後肢底部を機械的に刺激し、マウスが逃避行動を起こす刺激の荷重を調べた。その結果を図1に示す。
図1に示すとおり、化合物1の投与によって疼痛が有意に抑制された。一方、化合物1に換えてDMSOを使用した例では、投与による疼痛の抑制が確認されなかった。
【実施例】
【0050】
[実験例2]
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にカラゲニン(2%, 25μl)を皮下投与する前後で、熱刺激を与え、後肢の逃避反射行動の潜時を測定した。カラゲニンによる熱性痛覚過敏現象出現を投与後6時間まで確認した後、化合物1又は溶解に使用した溶媒(veh.)を経口投与し(マウスの体重1gあたり1pmol又は10pmol)、その後2時間まで効果を検討した。その結果を図2に示す。
図2に示すとおり、化合物1の投与によって疼痛が有意に抑制された。一方、化合物1に換えてDMSOを使用した例では、投与による疼痛の抑制が確認されなかった。
【実施例】
【0051】
[実験例3]
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にカラゲニン(2%, 25μl)を皮下投与する前後で、機械刺激或いは熱刺激を与え、後肢の逃避反射行動の閾値(機械刺激)と潜時(熱刺激)を測定した。カラゲニンによる機械的アロディニア現象或いは熱性痛覚過敏出現を投与後6時間まで確認した後、化合物2を髄腔内投与し(0.1 pmol、1 pmol又は10 pmol)、その後3時間まで効果を検討した。なお、化合物2の溶液は、化合物2を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。
その結果を図3に示す。図3Aは機械刺激に対する逃避反射行動の閾値、図3Bは熱刺激に対する潜時を調べた結果である。
図3に示すとおり、化合物2の投与によって疼痛が有意に抑制された。
【実施例】
【0052】
[実験例4]
完全フロイントアジュバンド(CFA)を足底皮下投与すると、カラゲニンモデルより長期間持続する遷延性炎症を生じ、それに伴い機械的刺激、熱刺激に対する過敏現象が生じる。このCFAモデルマウスを用い、化合物3の疼痛治療効果を評価した。
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にCFA(25μl)を皮下投与する前後に機械刺激を与え、後肢の逃避反射行動の閾値を測定した。CFAによる機械的アロディニア現象出現を投与後3日後に確認し、化合物3を髄腔内投与した後、3時間まで効果を検討した。なお、化合物3の溶液は、化合物3を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。その結果を図4に示す。
図4に示すとおり、化合物3の投与によって疼痛が有意に抑制された。
【実施例】
【0053】
[実験例5]
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にカラゲニン(2%, 25μl)を皮下投与する前後で、機械刺激あるいは熱刺激を与え、後肢の逃避反射行動の閾値(機械刺激)と潜時(熱刺激)を測定した。カラゲニンによる機械的アロディニア現象あるいは熱性痛覚過敏出現を投与後6時間まで確認した後、化合物4を髄腔内投与し、その後3時間まで効果を検討した。なお、化合物4の溶液は、化合物4を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。その結果を図5に示す。
図5に示すとおり、化合物4の投与によって疼痛が有意に抑制された。
【化17】
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【実施例】
【0054】
[実験例6]
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にカラゲニン(2%, 25μl)を皮下投与する前後で、熱刺激を与え、後肢の逃避反射行動の潜時を測定した。カラゲニンによる熱性痛覚過敏現象出現を投与後6時間まで確認した後、化合物5を髄腔内投与し、その後3時間まで効果を検討した。なお、化合物5の溶液は、化合物5を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。その結果を図6に示す。
図6に示すとおり、化合物5の投与によって疼痛が有意に抑制された。
【実施例】
【0055】
[実験例7]
マウス(雄性C57BL/6J、6~8週齢)の片側後肢足底にカラゲニン(2%, 25μl)を皮下投与する前後で、熱刺激を与え、後肢の逃避反射行動の潜時を測定した。カラゲニンによる熱性痛覚過敏現象出現を投与後6時間まで確認した後、化合物6を髄腔内投与し、その後3時間まで効果を検討した。なお、化合物6の溶液は、化合物6を99%DMSOに溶解した後に生理食塩水で希釈して調製した(0.2%DMSO in 生理食塩水)。その結果を図7に示す。
図7に示すとおり、化合物6の投与によって疼痛が有意に抑制された。
【実施例】
【0056】
[実験例8]
マウスの後肢底部へカラゲニンを皮下注射し、7時間後に化合物1とオピオイド拮抗薬とを同時に腹腔内投与し、投与後1時間後と3時間後に機械的アロディニアの治療効果を評価した。具体的な条件は以下の通りとした。
マウス:C57BL/6J、オス、8週齢
疼痛の誘導:20μLの2%λ-カラゲニンを含む生理食塩水を後肢底部皮下に注入して誘導した。
治療薬投与:化合物1及び下記オピオイド拮抗薬が溶解した2%DMSO、1%Tween80(商標)の生理食塩水を体重1gあたり0.01mLの分量で腹腔内投与した(マウス1匹あたり、約0.2mLの溶液を投与した)。化合物1は、マウスの体重1gあたり1nmolとなるように調製した。オピオイド拮抗薬は、マウスの体重1gあたり20nmolとなるように調製した。
【実施例】
【0057】
オピオイド拮抗薬MNTX:Methylnaltrexone bromide
μ-オピオイド受容体とκ-オピオイド受容体に選択的な拮抗薬。血液脳関門は通過しない。
【実施例】
【0058】
【化18】
JP0006531330B2_000019t.gif
【実施例】
【0059】
オピオイド拮抗薬NAL-M:Naloxone methiodide
オピオイド受容体に対する非選択的な拮抗薬。血液脳関門は通過しない。
【実施例】
【0060】
【化19】
JP0006531330B2_000020t.gif
【実施例】
【0061】
疼痛の評価:実験例1と同様に、von Frey テストにより評価した。その結果を図8に示す。
図8に示すとおり、化合物1の疼痛の鎮痛作用が、末梢性のオピオイド拮抗薬で鎮痛作用が阻害された。よって、化合物1の疼痛の鎮痛作用は、オピオイド受容体を介すると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7