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明細書 :ガラスの加工方法及び加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-016507 (P2018-016507A)
公開日 平成30年2月1日(2018.2.1)
発明の名称または考案の名称 ガラスの加工方法及び加工装置
国際特許分類 C03B  23/02        (2006.01)
C03B  29/08        (2006.01)
G02B   3/00        (2006.01)
FI C03B 23/02
C03B 29/08
G02B 3/00 Z
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-146534 (P2016-146534)
出願日 平成28年7月26日(2016.7.26)
発明者または考案者 【氏名】和田 正紀
【氏名】下間 靖彦
【氏名】三浦 清貴
【氏名】坂倉 政明
【氏名】清水 政二
出願人 【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100107423、【弁理士】、【氏名又は名称】城村 邦彦
【識別番号】100120949、【弁理士】、【氏名又は名称】熊野 剛
【識別番号】100168550、【弁理士】、【氏名又は名称】友廣 真一
審査請求 未請求
テーマコード 4G015
Fターム 4G015DA01
4G015DA03
要約 【課題】成形型を低温に維持しつつ、成形型に設けられた成形面に面するガラスの表層部を重点的に加熱する。
【解決手段】成形型1に配置したガラス板G1を加熱して、ガラス板G1を成形型1に設けた成形面1aに倣った形状に成形するガラス板の加工方法であって、成形型1を透過し且つガラス板G1で吸収されるレーザLBを、成形型1を通してガラス板G1に照射することで、ガラス板G1を加熱する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
成形型に配置したガラスを加熱して、前記ガラスを前記成形型に設けた成形面に倣った形状に成形するガラスの加工方法であって、
前記成形型を透過し且つ前記ガラスで吸収されるレーザを、前記成形型を通して前記ガラスに照射することを特徴とするガラスの加工方法。
【請求項2】
前記成形面が微細パターンを構成する溝部を有し、前記レーザの照射によって、前記ガラスに前記微細パターンを転写することを特徴とする請求項1に記載のガラスの加工方法。
【請求項3】
前記成形面が凹状又は凸状をなし、前記レーザの照射によって、前記ガラスに前記成形面に倣った湾曲面を形成することを特徴とする請求項1に記載のガラスの加工方法。
【請求項4】
前記成形面に対して前記ガラスを押圧しながら、前記レーザを照射することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスの加工方法。
【請求項5】
前記ガラスがガラス板であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスの加工方法。
【請求項6】
前記ガラスがガラス粉末の集合体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスの加工方法。
【請求項7】
前記レーザがCOレーザであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスの加工方法。
【請求項8】
前記成形型がセレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素及びCVDダイヤモンドからなる群から選ばれた1つの材料で形成されていることを特徴とする請求項7に記載のガラスの加工方法。
【請求項9】
前記レーザが中赤外線レーザまたは近赤外線レーザであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスの加工方法。
【請求項10】
前記成形型がシリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素、CVDダイヤモンド及びIRグレード石英ガラスからなる群から選ばれた1つの材料、若しくは、中赤外及び/または近赤外を透過する透明セラミックスで形成されていることを特徴とする請求項9に記載のガラスの加工方法。
【請求項11】
ガラスが配置される成形型と、前記ガラスを加熱する加熱装置とを備え、前記ガラスを前記成形型に設けた成形面に倣った形状に成形するガラスの加工装置であって、
前記加熱装置が、前記成形型を透過し且つ前記ガラスで吸収されるレーザを、前記成形型を通して前記ガラスに照射するレーザ照射装置であることを特徴とするガラスの加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型を用いたガラスの加工技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを加工する方法としては、成形型にガラスを配置した状態でガラスを加熱して、ガラスを成形型に設けた成形面に倣った形状に成形する方法が挙げられる(特許文献1を参照)。この場合、ガラスが配置された成形型を、ヒータなどが設けられた加熱炉内で加熱するのが通例である。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】WO2016/067829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱炉を用いると、加熱炉内で成形型も高温に晒されるため、成形型の劣化も生じやすく、成形型の寿命が短くなる。その結果、成形型の交換頻度が高くなり、製造コストの高騰を招く原因となる。
【0005】
しかも、成形型を用いてガラスを加工する場合、成形面に面するガラスの表層部のみが軟化していれば十分な場合が多い。すなわち、加熱炉のように成形型やガラスを全体的に加熱するのではなく、成形面に面するガラスの表層部を重点的に加熱することが、熱エネルギー効率上も望ましい場合が多い。
【0006】
本発明は、成形型を低温に維持しつつ、成形型に設けられた成形面に面するガラスの表層部を重点的に加熱することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために創案された本発明は、成形型に配置したガラスを加熱して、ガラスを成形型に設けた成形面に倣った形状に成形するガラスの加工方法であって、成形型を透過し且つガラスで吸収されるレーザを、成形型を通してガラスに照射することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、レーザは成形型を透過するため、成形型を通してガラスにレーザを照射することができる。そして、このように照射されたレーザはガラスで吸収されるが、レーザの吸収はレーザの入射側表面から深さ方向に進むに連れて徐々に弱くなる。換言すれば、レーザの吸収は、レーザの入射側表面である、成形型の成形面に面するガラスの表層部で主に生じる。したがって、レーザの吸収によって、成形型の成形面に面するガラスの表層部を重点的に加熱することができる。しかも、レーザは成形型を透過するため、レーザの吸収によって成形型が加熱されるという事態も生じにくい。
【0009】
上記の構成において、成形面が微細パターンを構成する溝部を有し、レーザの照射によって、ガラスに微細パターンを転写してもよい。すなわち、本発明はガラスの表層部を重点的に加熱することができるので、ガラス全体を軟化させる必要のない微細パターンの転写に好適である。
【0010】
上記の構成において、成形面が凹状又は凸状をなし、レーザの照射によって、ガラスに成形面に倣った湾曲面を形成してもよい。
【0011】
上記の構成において、成形面に対してガラスを押圧しながらレーザを照射してもよい。このようにすれば、ガラスが押圧されて成形面と密着するため、ガラスを成形面に倣った形状に成形しやすくなる。
【0012】
上記の構成において、ガラスがガラス板であってもよい。
【0013】
上記の構成において、ガラスがガラス粉末の集合体であってもよい。
【0014】
上記の構成において、レーザがCOレーザであることが好ましい。すなわち、COレーザの場合、ガラスにおける吸収率が大きくなるため、成形型の成形面に面するガラスの表層部においてレーザのほとんどが吸収される。その結果、ガラスの表層部のみを局所的に加熱することができる。
【0015】
この場合、成形型がセレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素及びCVDダイヤモンドからなる群から選ばれた1つ以上の材料で形成されていることが好ましい。このようにすれば、COレーザが成形型で実質的に吸収されることがない。
【0016】
上記の構成において、レーザが中赤外線レーザまたは近赤外線レーザであることが好ましい。このようにすれば、ガラスにおける吸収率が大きいがCOレーザの場合よりも小さくなるため、ガラスの表層部のみではなく、表層部から深さ方向に僅かに進行した部分でも吸収が生じる。したがって、ガラスの表層部及びその近傍を局所的に加熱することができる。
【0017】
この場合、成形型がシリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素、CVDダイヤモンド及びIRグレード石英ガラスからなる群から選ばれた1つ以上の材料、若しくは、中赤外線及び/又は近赤外線を透過する透明セラミックスで形成されていることが好ましい。このようにすれば、中赤外線レーザや近赤外線レーザが成形型で実質的に吸収されることがない。
【0018】
上記課題を解決するために創案された本発明は、ガラスが配置される成形型と、ガラスを加熱する加熱装置とを備え、ガラスを成形型に設けた成形面に倣った形状に成形するガラスの加工装置であって、加熱装置が、成形型を透過し且つガラスで吸収されるレーザを、成形型を通してガラスに照射するレーザ照射装置であることを特徴とする。このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、成形型を低温に維持しつつ、成形型に設けられた成形面に面するガラスの表層部を重点的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラスの加工装置を示す断面図である。
【図2】図1のガラスの加工装置を用いたガラスの加工方法を説明するための図であって、(a)は成形型とガラスの界面の加工工程序盤の状態を示す部分断面図であって、(b)は成形型とガラスの界面の加工工程終盤の状態を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るガラスの加工装置を示す断面図である。
【図4】図3のガラスの加工装置を用いたガラスの加工方法を説明するための図であって、(a)は成形型とガラスの界面の加工工程序盤の状態を示す部分断面図であって、(b)は成形型とガラスの界面の加工工程終盤の状態を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るガラスの加工装置を示す断面図である。
【図6】図5のガラスの加工装置を用いたガラスの加工方法を説明するための図であって、(a)は成形型とガラスの界面の加工工程序盤の状態を示す部分断面図であって、(b)は成形型とガラスの界面の加工工程終盤の状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るガラスの加工装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。

【0022】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るガラスの加工装置は、成形型1と、加熱装置としてのレーザ照射装置2とを備えている。この実施形態では、加工対象のガラスとしてガラス板G1を例示する。

【0023】
成形型1は、ガラス板G1が配置される成形面1aを有する。この実施形態では、成形型1は下型で構成されており、成形型1の上面が成形面1aとなっている。成形面1aには、微細パターンを構成する複数の溝部が形成されている(図2の符号1bを参照)。成形面1aには、ガラス板G1に離型性を考慮し、離型層が形成されていることが好ましい。離型層は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)や含フッ素化合物などを成形型1の成形面1aに成膜することで形成することができる。

【0024】
レーザ照射装置2は、成形型1側からレーザLBを照射する。レーザLBは、成形型1を透過するとともに、ガラス板G1で吸収される波長域のものが選択される。そのため、レーザLBは、成形型1を通してガラス板G1に照射される。この実施形態では、レーザ照射装置2は、ガラス板G1の下面全体にレーザLBが照射されるように、矢印x方向に移動しながらレーザLBを走査する。なお、レーザ照射装置2を静止させた状態で、ガラス板G1と成形型1を移動させることで、レーザLBがガラス板G1の下面全体に走査されるようにしてもよい。すなわち、レーザ照射装置2とガラス板G1との間に相対的な移動があればよい。また、レーザLBの照射領域をレンズなどで拡大し、レーザLBがガラス板G1の下面全体に一度に照射されるようにしてもよい。

【0025】
レーザLBの波長は、1μm~10μmであることが好ましく、2μm~5μmであることがより好ましく、2μm~3μmであることがさらに好ましい。詳細には、レーザLBとしては、例えば、連続発振のCOレーザ(波長域:9.2μmまたは10.8μm)や中赤外線レーザ(波長域:3μm~5μm)や近赤外線レーザ(波長域:1μm~3μm)が使用される。ここで、成形型1における単位長さ当たりのレーザLBの透過率は、30%~90%であることが好ましく、40%~70%であることがより好ましい。また、ガラス板G1における単位長さ当たりのレーザLBの吸収率は、10%~60%であることが好ましく、20%~50%であることがより好ましい。ここで、単位長さは1mmとする(以下、同様)。

【0026】
レーザLBとしてCOレーザを使用する場合、成形型1は、例えばセレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素及びCVDダイヤモンドからなる群から選ばれた1つ以上の材料により形成されることが好ましい。この場合、成形型1におけるレーザLBの単位長さ当たりの透過率は、例えば30%~60%となる。一方、レーザLBとして、中赤外線レーザまたは近赤外線レーザを使用する場合、成形型1は、例えばシリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ガリウム砒素、CVDダイヤモンド及びIRグレード石英ガラスからなる群から選ばれた1つ以上の材料、若しくは、中赤外及び/または近赤外を透過する透明セラミックスにより形成されることが好ましい。この場合、成形型1におけるレーザLBの単位長さ当たりの透過率は、例えば中赤外線レーザの場合は30%~60%となり、近赤外線レーザの場合は40~60%となる。

【0027】
ここで、ガラス板G1は、その用途に応じて適当な組成を採用することが可能であり、その組成は特に限定されるものではない。例えば、ガラス板G1としては、質量%で、SiO 50~80%、Al 5~25%、B 0~15%、NaO 1~20%、KO 0~10%の組成を有するものが採用可能である。ガラス板G1は、レーザLBの吸収を高めるために、レーザ吸収材を含有していてもよい。レーザ吸収材としては、無機顔料が好ましく、カーボン、Co、CuO、Cr、Fe、MnO、SnO、Ti2n-1(nは整数)から選ばれる一種又は二種以上がより好ましく、特にカーボンが好ましい。これらの顔料は、発色性に優れており、レーザの吸収性が良好である。カーボンとして、非晶質カーボン又はグラファイトが好ましい。なお、ガラス板G1をレンズなどの光学部品として用いる場合には、ガラス板G1は顔料等のレーザ吸収材を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「実質的にレーザ吸収材を含有しない」とは、ガラス成分として積極的に明示の成分を添加しないものの、不純物レベルで混入する場合を許容する趣旨であり、具体的には、レーザ吸収材の含有量が0.1モル%未満であることを指す。

【0028】
また、ガラス板G1はフィルム状の薄板であることが好ましく、その厚みは1μm~1000μmであることが好ましい。

【0029】
次に、第1実施形態に係るガラスの加工装置を用いたガラスの加工方法を説明する。

【0030】
まず、図1に示すように、成形型1の成形面1aの上にガラス板G1を平置き姿勢で配置する。次に、この状態で、成形型1側からレーザ照射装置2によってレーザLBを照射する。レーザLBは成形型1を透過し且つガラス板G1で吸収される波長域のものであるので、レーザLBは成形型1を透過してガラス板G1に到達する。これにより、レーザLBは成形型1を通してガラス板G1に照射される。

【0031】
成形型1を通してガラス板G1にレーザLBが照射されると、図2(a)に示すように、レーザLBの吸収によってガラス板G1に加熱領域H1(図中のクロスハッチングを付した部分)が生じる。加熱領域H1では、ガラス板G1が軟化(又は溶融)する。レーザLBの波長によってガラス板G1の吸収率が変化するので、加熱領域H1の深さΔDはレーザLBの波長に依存する。すなわち、吸収率が大きくなると、レーザLBが成形型1の成形面1aに面するガラス板G1の表層部で全て吸収され、加熱領域H1の深さΔDは小さくなる。したがって、微細パターンを構成する溝部1bの深さに応じて、所望の加熱領域H1の深さΔDを実現するために、レーザLBの波長を適宜選択することが好ましい。

【0032】
詳細には、レーザLBとしてCOレーザを用いた場合、レーザLBは成形面1a側のガラス板G1の表層部で全て吸収される。その結果、加熱領域H1は、成形面1a側のガラス板G1の表層部のみに形成される。この場合、加熱領域H1の深さΔDは、例えば、1μm~10μmとなる。

【0033】
また、レーザLBとして中赤外線レーザもしくは近赤外線レーザを用いた場合、レーザLBは成形面1a側のガラス板G1の表層部で全て吸収されず、表層部の近傍でも吸収が生じる。その結果、加熱領域H1は、成形面1a側のガラス板G1の表層部及びその近傍に形成される。この場合、加熱領域H1の深さΔDは、例えば、10μm~1000μmとなる。すなわち、加熱領域H1の深さΔDは、COレーザを用いた場合よりも大きくなる。ここで、中赤外線レーザ(例えば3ミクロンレーザ)を用いた場合、ガラス板G1の表面に存在するOH基におけるレーザLBの吸収が支配的になる。ただし、レーザLBはOH基で全て吸収される訳ではなく、OH基で吸収されなかったレーザLBによって、ガラス板G1の表層部の近傍で吸収が生じる。

【0034】
以上のように、ガラス板G1の成形面1a側の表層部のみ又は表層部とその近傍に、加熱領域H1が形成されると、図2(b)に示すように、軟化した加熱領域H1が成形型1の成形面1aに倣って変形する。この実施形態では、成形型1は下型であるので、ガラス板G1を成形面1aに押し付ける方向(矢印y方向)に重力が作用する。これにより、成形面1aに設けられた微細パターンを構成する溝部1bがガラス板G1に転写される。このように加工されたガラス板G1は、例えば、マイクロレンズアレイやフレネルレンズなどとして利用できる。このようにすれば、ガラス板G1のうち、加熱領域H1を除く部分(レーザLBの反入射側に位置する部分)は非加熱領域とすることができるので、ガラス板G1全体が過度に加熱されることがない。そのため、ガラス板G1の失透を防ぐこともできる。また、このような非加熱領域を形成することで、ガラス板G1の上面に半導体や有機ELなどの熱に弱い素子が形成されている場合でも、当該素子の破損を防止しつつ微細パターンを転写することができる。一方、成形型1に着目した場合には、レーザLBは成形型1を透過するため、成形型1は低温に維持される。そのため、成形型1の熱劣化を防止できるという利点もある。

【0035】
ここで、以上のように構成されたガラスの加工装置又は加工方法は、例えば、ナノインプリント装置又は方法として利用できる。

【0036】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るガラスの加工装置及びその加工方法が、第1実施形態と相違するところは、成形型の成形面の構成にある。

【0037】
すなわち、この実施形態では、図3に示すように、成形型3の成形面3aが、凹状の湾曲面で構成されている。また、この実施形態では、ガラス板G2は、粗加工により形成された凸状の湾曲面G2aを有している。ガラス板G2は、湾曲面G2aが成形面3a側を向くように成形面3aの上に配置され、この状態で成形型3を通してガラス板G2にレーザLBが照射される。なお、成形面3aは凸状の湾曲面で構成されるとともに、ガラス板G2が凹状の湾曲面を有していてもよい。また、成形面3aの凸状又は凹状の湾曲面に、第1実施形態のような微細パターンを構成する溝部が形成されていてもよい。

【0038】
図4(a)に示すように、成形型3を通してガラス板G2にレーザLBが照射されると、レーザLBの吸収によってガラス板G2に加熱領域H2が生じ、加熱領域H2でガラス板G2が軟化(又は溶融)する。そうすると、図4(b)に示すように、軟化した加熱領域H2が成形型3の成形面3aに倣って変形し、ガラス板G2の湾曲面G2aが成形面3aに倣った湾曲形状に仕上げ加工される。このように加工されたガラス板G2は、例えば、凸レンズや凹レンズなどとして利用できる。特に、携帯電話のカメラのレンズに好適である。

【0039】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るガラスの加工装置及びその加工方法が、第1実施形態と相違するところは、主に2つある。

【0040】
第一の相違点は、図5に示すように、加工対象のガラスがガラス粉末の集合体G3であるところである。この集合体G3は、板状に予めプレス成形された圧粉体である。

【0041】
第二の相違点は、図5に示すように、成形型4の成形面4aに対して集合体G3を押圧しながらレーザLBを照射するところである。詳細には、成形型4と押圧型5とで集合体G3を上下両側から挟んで、押圧型5によって集合体G3を成形型4の成形面4aに押圧する。このとき、第1実施形態と同様に、成形型4を通して集合体G3にレーザLBを照射する。ここで、この実施形態では、図6に示すように、成形面4aには、第1実施形態と同様に微細パターンを構成する複数の溝部4bが形成されているが、第2実施形態と同様に凸状又は凹状の湾曲面が形成されていてもよい。

【0042】
図6(a)に示すように、成形型4を通して集合体G3にレーザLBが照射されると、レーザLBの吸収によって集合体G3に加熱領域H3が生じ、加熱領域H3で集合体G3が軟化(又は溶融)する。そうすると、図6(b)に示すように、軟化した加熱領域H3が成形型4の成形面4aに倣って変形する。その結果、集合体G3に成形面4aの微細パターンが転写される。なお、加熱領域H3では、集合体G3を構成するガラス粉同士が融着され、例えば可視光の波長域において透明となる。

【0043】
なお、図6(b)に示すように、微細パターンを集合体G3に転写した後に、集合体G3にガラス粉末同士が融着していない未融着領域X3が残る場合には、未融着領域X3のガラス粉同士を融着させる処理を別途施してもよい。このような処理として、例えば、成形型4を透過可能な波長の異なるレーザを、成形型4を通して未融着領域X3に照射したり、押圧型5を透過可能なレーザを、押圧型5を通して未融着領域X3に照射したり、加熱炉などで未融着領域X3を有する集合体G3を焼結したりしてもよい。押圧型5側からもレーザを照射する場合、押圧型5の押圧面に微細パターンを構成する溝部を形成してもよい。この場合、成形面4aと押圧面によって、集合体G3の表裏両面に微細パターンが転写される。

【0044】
また、集合体G3の厚みが薄い場合は、レーザLBの照射のみで、集合体G3全体を融着し、未融着領域X3が残らないようにすることもできる。集合体G3の厚みは、1μm~1000μmであることが好ましい。

【0045】
また、図5では、成形型4を下型、押圧型5を上型としているが、成形型4を上型、押圧型5を下型としてもよい。この場合、レーザLBは、上方側から成形型4を通して集合体G3に照射される。

【0046】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、この実施形態のような押圧型を設け、成形型1,3の成形面1a,3aに対してガラス板G1,G2を押圧しながらレーザLBを照射するようにしてもよい。

【0047】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係るガラスの加工装置及びその加工方法が、第1実施形態と相違するところは、加工対象のガラスを連続供給しながら、ガラスに微細パターンを転写する点にある。

【0048】
図7に示すように、この実施形態に係るガラスの加工装置は、加工対象のガラスである板状のガラスリボンG4を連続的に供給する供給源6と、ガラスリボンG4の姿勢を縦姿勢から横姿勢に変換する変換ローラ7と、ガラスリボンG4を搬送する第一コンベア8及び第二コンベア9と、ガラスリボンG4を巻き取る巻取装置10とを備えている。なお、第二コンベア9は省略してもよい。

【0049】
供給源6は、ガラスリボンG4を連続的に供給するものであれば特に限定されるものではない。図示例では、供給源6として、成形装置11とガラスロール12とが例示されており、これらのいずれか一方からガラスリボンG4が供給される。ガラスリボンG4の厚みは、1μm~1000μmであることが好ましい。

【0050】
成形装置11は、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスG4mからガラスリボンG4を成形する成形体13を備えている。成形体13に供給された溶融ガラスG4mは成形体13の頂部13aから溢れ出るようになっており、その溢れ出た溶融ガラスG4mが成形体13の断面楔状を呈する両側面13bを伝って下端で合流することで、ガラスリボンG4が連続的に成形されるようになっている。なお、図示は省略するが、ガラスリボンG4は成形体13の下方空間で徐冷(アニール処理)される。

【0051】
一方、ガラスロール12は、巻芯12aの周りにガラスリボンG4を巻き取ったものである。この実施形態では、ガラスロール12において、半径方向に対向するガラスリボンG4の相互間には樹脂などで形成された保護シート(図示省略)が配置されている。すなわち、ガラスロール12では、ガラスリボンG4と保護シートとを重ねた状態で、これらが一緒に巻芯12aの周りに巻き取られている。保護シートは、ガラスロール12からガラスリボンG4を巻き出す際に、ガラスリボンG4から分離される。

【0052】
変換ローラ7は、成形装置11やガラスロール12などの供給源6から供給される縦姿勢のガラスリボンG4を滑らかに湾曲させて横姿勢に変換する。なお、変換ローラ7は省略してもよい。

【0053】
ガラスリボンG4の下方側に設けられた第一コンベア8は、成形型として機能する第一搬送ベルト8aと、レーザ照射装置8bとを備えている。第一搬送ベルト8aは、レーザ照射装置8bから出射されたレーザLBが透過可能であり、かつ、その外表面には第1実施形態で説明したような微細パターンを構成する溝部(図示省略)が形成されている。レーザ照射装置8bから出射されたレーザLBは、第一搬送ベルト8aを通じて、第一搬送ベルト8a上に支持されたガラスリボンG4に照射される。

【0054】
一方、ガラスリボンG4の上方側に設けられた第二コンベア9は、押圧型として機能する第二搬送ベルト9aを備えている。第二搬送ベルト9aは、第一搬送ベルト8a上で支持されたガラスリボンG4を、上方から第一搬送ベルト8a側に押圧する。この状態で、搬送ベルト8a,9aは、ガラスリボンG4を下流側に送るために、それぞれがa方向及びb方向に同速度で送り駆動される。

【0055】
第一搬送ベルト8aと第二搬送ベルト9aでガラスリボンG4を下流側に搬送すると、ガラスリボンG4がレーザ照射装置8bの上を通過する。そのため、ガラスリボンG4に対して第一搬送ベルト8aを通してレーザLBが順次照射される。その結果、ガラスリボンG4の下面側の表層部(又は表層部及びその近傍部)に、レーザLBの照射による加熱領域が形成され、第一搬送ベルト8aの外表面に形成された微細パターンがガラスリボンG4の下面に転写される。

【0056】
巻取装置10は、微細パターンが転写されたガラスリボンG4を巻芯14aの周りに巻き取り、ガラスロール14を製造する。この実施形態では、ガラスリボンG4は、微細パターンが転写された転写面が内周面側を向くように巻芯14aの周りに巻き取られる。これにより、転写面に作用する引張応力を抑制している。また、この実施形態では、ガラスロール14において、半径方向に対向するガラスリボンG4の相互間には樹脂などで形成された保護シート(図示省略)が配置されている。保護シートは、コンベア8,9の下流側でガラスリボンG4に重ねられ、ガラスリボンG4と一緒に巻芯14aの周りに巻き取られる。

【0057】
なお、供給源6としてガラスロール12を用いる場合に、ガラスロール12とガラスロール14を実質的に同一高さに配置した状態で、ガラスロール12から引き出されたガラスリボンG4を横方向に搬送し、そのままの姿勢でガラスロール14に至るようにしてもよい。

【0058】
また、微細パターンが転写されたガラスリボンG4は、ロール状に巻き取る代わりに、所定長さ毎に切断してもよい。この場合、ガラスリボンG4からガラス板が順次製造される。

【0059】
また、第一コンベア8の第一搬送ベルト8aを成形型、第二コンベア9の第二搬送ベルト9aを押圧型とする場合を説明したが、第一搬送ベルト8aを押圧型、第二搬送ベルト9aを成形型としてもよい。この場合、レーザLBは、上方側から第二搬送ベルト9aを通してガラスリボンG4に照射される。

【0060】
また、第一搬送ベルト8aと第二搬送ベルト9aの両側からレーザLBを照射するようにしてもよい。この場合、第一搬送ベルト8aと第二搬送ベルト9aのそれぞれの外表面に微細パターンを構成する溝部を形成してもよい。

【0061】
また、ガラスリボンG4を横方向に搬送する領域に第一コンベア8及び第二コンベア9を設ける場合を説明したが、ガラスリボンG4を縦方向に搬送する領域に第一コンベア8及び第二コンベア9を設けてもよい。この場合、ガラスリボンG4を縦方向に搬送しながら、ガラスリボンG4に微細パターンが転写される。

【0062】
以上、本発明の実施形態に係るガラスの加工装置及びその製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。

【0063】
例えば、上記の実施形態では、成形型を用いてガラスに微細パターンの転写加工や湾曲面の成形加工(仕上げ加工)を行う場合を説明したが、本発明は、成形型を用いてガラスの曲げ加工を行う場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1,3,4 成形型
1a,3a,4a 成形面
1b,4b 溝部
2,8b レーザ照射装置
5 押圧型
6 供給源
7 変換ローラ
8 第一コンベア
8a 第一搬送ベルト
9 第二コンベア
9a 第二搬送ベルト
10 巻取装置
11 成形装置
12 ガラスロール
12a 巻芯
13 成形体
14 ガラスロール
14a 巻芯
G1,G2 ガラス板
G3 集合体
G4 ガラスリボン
H1,H2,H3 加熱領域
LB レーザ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6