TOP > 国内特許検索 > 金属チタン製造装置及び方法 > 明細書

明細書 :金属チタン製造装置及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-052350 (P2019-052350A)
公開日 平成31年4月4日(2019.4.4)
発明の名称または考案の名称 金属チタン製造装置及び方法
国際特許分類 C22B  34/12        (2006.01)
C22B   5/04        (2006.01)
C22B   9/10        (2006.01)
C22B   9/04        (2006.01)
FI C22B 34/12 103
C22B 5/04
C22B 9/10 101
C22B 34/12 102
C22B 9/04
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2017-176775 (P2017-176775)
出願日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明者または考案者 【氏名】宇田 哲也
【氏名】熊本 和宏
【氏名】岸本 章宏
【氏名】國友 美信
【氏名】佐藤 彰洋
【氏名】百々 泰
【氏名】橋本 卓也
【氏名】吉村 昭彦
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
個別代理人の代理人 【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100175802、【弁理士】、【氏名又は名称】寺本 光生
【識別番号】100169764、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 雄一郎
【識別番号】100167553、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 久典
審査請求 未請求
テーマコード 4K001
Fターム 4K001AA27
4K001BA08
4K001CA03
4K001DA11
4K001EA01
4K001EA02
4K001EA04
4K001GA19
4K001GB12
4K001HA07
要約 【課題】精製工程の前工程で得られる回収物のチタン濃度を従来よりも上昇させることが可能な金属チタン製造装置及び方法を提供することができる。
【解決手段】ビスマスとマグネシウムとの存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、チタン及びビスマスからなる液体合金を得る還元装置と、液体合金から金属間化合物を析出させ、当該金属間化合物に付帯するビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物を得る濃縮装置と、濃縮金属間化合物を精製処理して金属チタンを得る精製装置とを備え、濃縮装置は、金属間化合物のみを選択的に固体状態とし、かつ慣性力を作用させることによりビスマスを分離する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ビスマスとマグネシウムとの存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、チタン及び前記ビスマスからなる液体合金を得る還元装置と、
前記液体合金から金属間化合物を析出させ、当該金属間化合物に付帯する前記ビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物を得る濃縮装置と、
前記濃縮金属間化合物を精製処理して金属チタンを得る精製装置とを備え、
前記濃縮装置は、前記金属間化合物のみを選択的に固化状態とし、かつ慣性力を作用させることにより前記ビスマスを分離することを特徴とする金属チタン製造装置。
【請求項2】
前記液体合金を偏析処理することにより析出物を得る偏析装置をさらに備え、
前記濃縮装置は、前記析出物を加熱かつ当該析出物に慣性力を作用させることにより、前記ビスマスを分離することを特徴とする請求項1記載の金属チタン製造装置。
【請求項3】
前記濃縮装置は、前記慣性力を遠心力として作用させることを特徴とする請求項1または2記載の金属チタン製造装置。
【請求項4】
前記濃縮装置は、
内部の雰囲気温度が前記金属間化合物のみを選択的に固体状態とする温度に設定された濃縮炉と、
前記濃縮炉に収容され、前記偏析装置で得られた析出物を収納すると共に複数の開口が形成された内部容器と、
前記内部容器を所定速度で回転させる駆動源と
を備えることを特徴とする請求項3に記載の金属チタン製造装置。
【請求項5】
前記濃縮装置は、所定方向に所定速度で移動させた状態で制止させることにより前記慣性力を作用させることを特徴とする請求項1または2に記載の金属チタン製造装置。
【請求項6】
ビスマスとマグネシウムとの存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、チタン及び前記ビスマスからなる液体合金を得る還元工程と、
前記液体合金から金属間化合物を析出させ、当該金属間化合物に付帯する前記ビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物を得る濃縮工程と、
前記濃縮金属間化合物を精製処理して金属チタンを得る精製工程とを有し、
前記濃縮工程では、前記金属間化合物のみを選択的に固化状態とし、かつ慣性力を作用させることにより前記ビスマスを分離することを特徴とする金属チタン製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属チタン製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、効率よくチタン合金を得ることができ、当該チタン合金を精製することで金属チタンを低コストで連続的に製造することができるチタンの製造方法が開示されている。この製造方法は、ビスマスとマグネシウムとを含む混合物に四塩化チタン(TiCl)を添加してビスマスとチタンとの液体合金を得る工程1(還元工程)と、液体合金からチタン以外の成分を除去する精製処理を施す工程2(精製工程)とを含むことを基本工程とし、工程1と工程2との間に液体合金を偏析させて液体部分、固体及び液体が共存する固液共存部分とに分離する工程(偏析工程)を補助工程として含むものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第6095374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記偏析工程で得られる偏析回収物は、析出物である(TiBi)にビスマス(Bi)が付帯したものであり、チタン濃度が比較的低い。偏析工程の後工程である精製工程での消費エネルギーが多大なことに鑑みると、精製工程の前工程である偏析工程あるいは/及び還元工程で得られる回収物におけるチタン濃度を極力上昇させる必要がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、精製工程の前工程で得られる回収物のチタン濃度を従来よりも上昇させることが可能な金属チタン製造装置及び方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、金属チタン製造装置に係る第1の解決手段として、ビスマスとマグネシウムとの存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、チタン及び前記ビスマスからなる液体合金を得る還元装置と、前記液体合金から金属間化合物を析出させ、当該金属間化合物に付帯する前記ビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物を得る濃縮装置と、前記濃縮金属間化合物を精製処理して金属チタンを得る精製装置とを備え、前記濃縮装置は、前記金属間化合物のみを選択的に固体状態とし、かつ慣性力を作用させることにより前記ビスマスを分離する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、金属チタン製造装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記液体合金を偏析処理することにより析出物を得る偏析装置をさらに備え、前記濃縮装置は、前記析出物を加熱かつ当該析出物に慣性力を作用させることにより、前記ビスマスを分離する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、金属チタン製造装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記濃縮装置は、前記慣性力を遠心力として作用させる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、金属チタン製造装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記濃縮装置は、内部の雰囲気温度が前記金属間化合物のみを選択的に固体状態とする温度に設定された濃縮炉と、前記濃縮炉に収容され、前記偏析装置で得られた析出物を収納すると共に複数の開口が形成された内部容器と、前記内部容器を所定速度で回転させる駆動源とを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、金属チタン製造装置に係る第5の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記濃縮装置は、所定方向に所定速度で移動させた状態で制止させることにより前記慣性力を作用させる、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、金属チタン製造方法に係る解決手段として、ビスマスとマグネシウムとの存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、チタン及び前記ビスマスからなる液体合金を得る還元工程と、前記液体合金から金属間化合物を析出させ、当該金属間化合物に付帯する前記ビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物を得る濃縮工程と、前記濃縮金属間化合物を精製処理して金属チタンを得る精製工程とを有し、前記濃縮工程では、前記金属間化合物のみを選択的に固体状態とし、かつ慣性力を作用させることにより前記ビスマスを分離する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、精製工程の前工程で得られる回収物のチタン濃度を従来より上昇させることが可能な金属チタン製造装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る金属チタン製造装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態における濃縮装置の詳細構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるBi-Ti二元系状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る金属チタン製造装置は、図1に示すように還元炉1、Bi供給装置2、TiCl供給装置3、Mg供給装置4、MgCl回収装置5、偏析装置6、濃縮装置7、蒸留装置8及び排気装置9を備えている。

【0015】
これら構成要素のうち、還元炉1、Bi供給装置2、TiCl供給装置3、Mg供給装置4及びMgCl2回収装置5は、本実施形態の還元装置を構成している。すなわち、還元炉1、Bi供給装置2、TiCl供給装置3、Mg供給装置4及びMgCl2回収装置5は、全体的な機能として、ビスマス(Bi)X1とマグネシウム(Mg)X3との存在下で四塩化チタン(TiCl)X2を還元処理することにより、チタン(Ti)及びビスマス(Bi)からなる液体合金(Bi-Ti液体合金X4)を得る装置である。

【0016】
還元炉1は、ビスマスX1及びマグネシウムX3の融点よりも高い温度(還元温度)でビスマスX1及びマグネシウムX3の存在下で四塩化チタンを還元処理することにより、上記Bi-Ti液体合金X4と塩化マグネシウム(MgCl)X5とを生成する加熱炉である。上記還元温度は例えば900℃である。このような還元温度に温度設定された還元炉1内では、液体状態のビスマスX1及びマグネシウムX3に液体状態の四塩化チタンX2が添加されることにより、液体状態のBi-Ti液体合金X4及び液体状態の塩化マグネシウムX5とが生成される。このような還元炉1は、一方の生成物であるBi-Ti液体合金X4を偏析装置6に供給し、他方の生成物である塩化マグネシウムX5をMgCl2回収装置5に供給する。

【0017】
Bi供給装置2は、還元炉1に上記還元処理の原料の1つであるビスマスX1を供給するビスマス供給源である。TiCl供給装置3は、還元炉1に上記還元処理の原料の1つである四塩化チタンX2を供給する四塩化チタン供給源である。Mg供給装置4は、還元炉1に上記還元処理の原料の1つであるマグネシウムX3を供給するマグネシウム供給源である。MgCl回収装置5は、還元炉1から生成物の1つである塩化マグネシウムX5を回収する装置である。

【0018】
偏析装置6は、上記Bi-Ti液体合金X4に偏析処理を施すことにより固液混合物を得る装置である。すなわち、この偏析装置6は、Bi-Ti液体合金X4を所定の偏析温度、例えば500℃に保持することにより、Bi-Ti液体合金X4よりもチタン濃度が高いBi-Ti液体合金(TiBi液体合金)のみを選択的に析出させ、TiBi金属間化合物(固相)とビスマスX7(液相)からなる固液混合物を生成する。この偏析装置6は、このような固液混合物のうち、TiBiを比較的多く含む混合物X6を濃縮装置7に提供し、ビスマスX7を還元炉1に提供する。なお、この偏析装置6で得られる混合物X6は、TiBi結晶(固体)間にビスマス(固体または液体)が付着または内包されたものである。

【0019】
濃縮装置7は、このような混合物X6から当該混合物X6に付帯するビスマスを分離することにより濃縮金属間化合物X9を得る装置である。この濃縮装置7は、図1に示すように、濃縮炉7a、Arガス供給装置7b及び駆動源7cを少なくとも備えている。濃縮炉7aは、混合物X6を収容して所定雰囲気に保持する有底円筒状容器であり、軸線が鉛直方向となる姿勢で設置されている。すなわち、この濃縮炉7aは、所定直径及び所定筒長を有する円環状の周面と、当該周面の一端を閉鎖する円板状の底面と、周面の他端を閉鎖する円板状の上面とを備える。

【0020】
このような濃縮炉7aは、例えば図2に示すように構成されている。すなわち、濃縮炉7aは、ヒータ7d、断熱部材7e、受け容器7f、穴開きドラム7g及びシャフト7hを備えている。ヒータ7dは、濃縮炉7aの上記周面に設けられた電気ヒータであり、濃縮炉7a内を所定の濃縮温度(例えば500℃)に加熱する。断熱部材7eは、濃縮炉7aの上記底面に設けられており、濃縮炉7aの底面からの熱の放散を抑制する。なお、図2の構成では、濃縮炉7aの上面及び側面に断熱部材7eが設けられていないが、この上面及び側面にも断熱部材7eを設けてもよい。

【0021】
受け容器7fは、濃縮炉7a内に同心状に設けられた筒状容器である。この受け容器7fは、下端を閉鎖する底部を備えるが、上端が解放されている。穴開きドラム7gは、濃縮炉7の受け容器7f内に同心状に収容され、混合物X6を収納すると共に複数の穴(開口)が離散的に形成された内部容器である。この穴開きドラム7gは、受け容器7fと同様に下端を閉鎖する低部を備えるが、上端が解放されている。

【0022】
また、この穴開きドラム7gの上部は、軸中心と同軸となるようにシャフト7hが固定されている。すなわち、シャフト7hは、穴開きドラム7gの軸中心に沿って延在する棒状部材であり、一端(下端)が穴開きドラム7gの上部に固定され、他端(上端)が動力源7cの出力軸に連結されている。

【0023】
続いて、Arガス供給装置7bは、濃縮炉7aにArガスX8を供給する装置である。このArガス供給装置7bが濃縮炉7aにArガスX8を供給することによって、濃縮炉7a内はArガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)となる。駆動源7cは、濃縮炉7a内の混合物X6を回転させる回転動力源である。すなわち、この駆動源7cは、濃縮炉7a内に収容された穴開きドラム7gを回転駆動することにより、当該穴開きドラム7gに収納された混合物X6を回転させる。

【0024】
このように構成された濃縮装置7は、穴開きドラム7gに収納した混合物X6をArガス雰囲気下で加熱し、かつ穴開きドラム7gを回転させることにより混合物X6に遠心力を作用させる。このような濃縮装置7は、一種の遠心分離器として機能するものであり、混合物X6に遠心力を作用させることにより液相のビスマスと固相のTiBiの結晶とを固液分離する。濃縮装置7は、このような遠心分離によって液相のビスマスの大部分が除去され、混合物X6よりもチタン濃度が高い合金つまり濃縮金属間化合物X9を蒸留装置8に供給する。なお、上記遠心力は、周知のように慣性力の一種である。

【0025】
蒸留装置8は、濃縮金属間化合物X9に精製処理の一種である蒸留処理を施して金属チタンを得る装置である。すなわち、この蒸留装置8は、減圧雰囲気下で濃縮金属間化合物X9を所定の蒸留温度に加熱することにより、濃縮金属間化合物X9を形成するビスマスを選択的に気化させて金属チタンを得る。上記蒸留温度は、例えば1000℃である。また、このような蒸留装置8は、精製装置の一種である。

【0026】
排気装置9は、蒸留装置8の内部ガスを外部に排気する真空ポンプである。この排気装置9は、排気装置9の排気処理によって得られたビスマスX10を還元炉1に供給する。なお、排気装置9の作動によって、蒸留装置8の内部は減圧雰囲気となる。

【0027】
ここで、このように構成された金属チタン製造装置は、図示しない制御装置によって統括的に制御される。すなわち、上述したBi供給装置2、TiCl供給装置3、Mg供給装置4、MgCl2回収装置5、偏析装置6、濃縮装置7、蒸留装置8及び排気装置9は、制御装置によって動作が適宜制御されることによって、以下に説明するような一連の製造工程を行う。

【0028】
次に、本実施形態に係る金属チタン製造装置の動作、つまり当該金属チタン製造装置を用いた金属チタン製造方法について、図3をも参照して詳しく説明する。

【0029】
この金属チタン製造装置は、最初に還元装置によって還元工程(還元処理)が行われる。すなわち、還元装置では、還元炉1の雰囲気温度が所定の還元温度に設定され、またBi供給装置2がビスマスX1を還元炉1に供給し、TiCl供給装置3が四塩化チタンX2を還元炉1に供給し、Mg供給装置4がマグネシウムX3を還元炉1に供給する。

【0030】
この結果、還元炉1では、下式(1)の化学反応(還元反応)が進行し、チタン及びビスマスからなるBi-Ti液体合金X4と塩化マグネシウムX5とが生成される。
TiCl+Bi+2Mg→Bi-Ti+2MgCl (1)

【0031】
なお、式(1)において、「Bi-Ti」は、チタン及びビスマスからなるBi-Ti液体合金X4を示してる。また、還元炉1に供給する各原料の供給量、つまりビスマスX1、四塩化チタンX2及びマグネシウムX3の還元炉1への供給量は、上式(1)に示される還元反応における各原料のモル比に基づいて適宜設定される。

【0032】
ここで、Bi-Ti液体合金X4及び塩化マグネシウムX5は、還元炉1において液体として存在するが、両者は比重の違いに起因して二層に相分離した状態となる。すなわち、Bi-Ti液体合金X4は、比重が比較的大きいので、還元炉1において下層液体生成物となる。一方、塩化マグネシウムX5は、比重が比較的小さいので、還元炉1において上層液体生成物となる。下層のBi-Ti液体合金X4は、還元炉1の底部から取り出されて偏析装置6に供給され、上層の塩化マグネシウムX5は、還元炉1の中間部から取り出されてMgCl回収装置5に回収される。

【0033】
この金属チタン製造装置は、続いて偏析装置6によって偏析工程(偏析処理)が行われる。すなわち、偏析装置6は、Bi-Ti液体合金X4に偏析処理を施す。図3の状態図に示すように、Bi-Ti液体合金X4は、所定の偏析温度(例えば500℃)かつBi-Ti液体合金X4におけるチタン濃度が47at%以下である場合に、TiBi金属間化合物が析出する。

【0034】
このTiBi金属間化合物は、Bi-Ti液体合金X4の析出物であり、チタン濃度がBi-Ti液体合金X4よりも高い固形物である。また、このTiBi金属間化合物は、Bi-Ti液体合金X4よりも密度が低いので、Bi-Ti液体合金X4において浮上して浮体物となる。すなわち、偏析装置6では、Bi-Ti液体合金X4が所定の偏析温度に曝されることによりTiBi金属間化合物(固相)とビスマス(液相)からなる固液混合物が生成される。

【0035】
ここで、上記混合物X6は、TiBi結晶(固体)にビスマス(固体)が付着または内包された固形物である。また、混合物X6を形成するTiBi結晶とビスマスとでは融点が異なる。

【0036】
濃縮装置7は、このような混合物X6に対して濃縮工程(濃縮処理)を行う。すなわち、濃縮装置7は、濃縮炉7a内を所定の濃縮温度(例えば500℃)かつアルゴンガス雰囲気に設定し、穴開きドラム7gに収納されたTiBi金属間化合物のTiBi結晶(固体)に付着または内包されたビスマスを選択的に液体状態に維持する。この結果、穴開きドラム7gには、TiBi結晶(固体)とビスマス(液体)とからなる混合物X6が収納された状態となる。

【0037】
濃縮装置7では、この状態において駆動源7cが穴開きドラム7gを回転させる。この結果、穴開きドラム7g内の混合物X6に遠心力(慣性力)が作用するので、ビスマス(液体)がTiBi結晶(固体)から分離され穴開きドラム7gの内面に付着し、さらに穴開きドラム7gに形成された複数の穴から受け容器7fに向かって飛散する。

【0038】
すなわち、濃縮装置7では、混合物X6のTiBi結晶(固体)に付帯するビスマス(固体または液体)が液体状態に維持され、遠心力の作用によってTiBi結晶(固体)から受け容器7fの内面に付着する。このような固液分離の結果、濃縮装置7では、混合物X6よりもチタン濃度が高い金属間化合物、つまり混合物X6の濃縮物である濃縮金属間化合物X9が得られる。

【0039】
この金属チタン製造装置は、続いて蒸留装置8を用いて蒸留工程(蒸留処理)を行う。すなわち、蒸留装置8は、濃縮金属間化合物X9を所定の蒸留温度下かつ減圧雰囲気下に置くことにより、濃縮金属間化合物X9を形成するビスマスを選択的に気化させて金属チタンを得る。

【0040】
そして、排気装置9が蒸留装置8から取得したビスマス(気相)は、図1に示されているように還元炉1に供給される。また、偏析装置6の固液混合物に含まれるビスマス(液相)は、同じく図1に示されているように還元炉1に供給される。したがって、金属チタン製造装置の稼働初期段階では、排気装置9及び偏析装置6からビスマスが還元炉1に供給されないので、Bi供給装置2からビスマスを供給する必要があるが、稼働後においてはBi供給装置2から還元炉1に供給するビスマスの量を削減することができる。

【0041】
このように、本実施形態では、偏析工程と蒸留工程(精製工程)との間で濃縮工程を行うので、偏析工程で得られる回収物(混合物X6)よりもチタン濃度が高い回収物(濃縮金属間化合物X9)を用いて蒸留工程(精製工程)を行う。すなわち、本実施形態によれば、精製工程の前工程で得られる回収物のチタン濃度を従来よりも上昇させることができるので、後工程である蒸留工程(精製工程)における消費エネルギーを従来よりも低減させることができる。

【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、混合物X6に遠心力(慣性力)を作用させる濃縮装置7を用いたが、本発明はこれに限定されない。力学的な慣性力を混合物X6に作用させる他の装置形態として、例えば混合物X6を所定方向に所定速度で移動させた状態で制止(停止)させることが考えられる。

【0043】
より詳細には、例えば混合物X6を収納した穴開きドラム7gを周面に直交する方向に直線移動させて急停止させることにより、遠心力とは異なる慣性力を混合物X6に作用させることができる。また、このような慣性力を混合物X6に作用させるためには、濃縮装置7に代えて、上記慣性力に最適化された構成の濃縮装置を採用することが好ましい。

【0044】
(2)上記実施形態における濃縮装置7は一種の遠心分離装置であるが、混合物X6の性状を踏まえて、各部品を最適化することが考えられる。例えば穴開きドラム7gを円筒状に代えて他の形状、例えば立方体状としてもよい。

【0045】
(3)上記実施形態では、濃縮温度を例えば500℃としたが、本発明はこれに限定されない。図3に示す状態図によれば、濃縮温度は、最大幅として425~930℃の範囲内であればよく、より好ましくは425~700℃の範囲内が好ましい。

【0046】
(4)上記実施形態では、精製工程として蒸留工程を採用したが、本発明はこれに限定されない。蒸留工程に代えて他の精製工程を採用してもよい。この他の精製工程として、例えば特許文献1に記載された電解精製工程を採用してもよい。

【0047】
(5)上記実施形態では、偏析工程で得られる回収物(混合物X6)に対して濃縮工程を行ったが、必要に応じて偏析工程を省略する場合が考えられる。このような場合には、還元工程で得られる回収物(Bi-Ti液体金属X4)に濃縮工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 還元炉
2 Bi供給装置
3 TiCl供給装置
4 Mg供給装置
5 MgCl回収装置
6 偏析装置
7 濃縮装置
7a 濃縮炉
7b Arガス供給装置
7c 駆動源
7d ヒータ
7e 断熱部材
7f 受け容器
7g 穴開きドラム(内部容器)
7h シャフト
8 蒸留装置(精製装置)
9 排気装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2