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明細書 :可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-039026 (P2019-039026A)
公開日 平成31年3月14日(2019.3.14)
発明の名称または考案の名称 可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途
国際特許分類 B22F   1/00        (2006.01)
C22C  28/00        (2006.01)
B22F   9/16        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B82Y  15/00        (2011.01)
B82Y   5/00        (2011.01)
B82Y  20/00        (2011.01)
G01J   1/02        (2006.01)
C22C   5/04        (2006.01)
C22C  20/00        (2006.01)
FI B22F 1/00 R
C22C 28/00 B
B22F 1/00 K
B22F 9/16
B82Y 30/00
B82Y 40/00
B82Y 15/00
B82Y 5/00
B82Y 20/00
G01J 1/02 R
C22C 5/04
C22C 20/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2017-159786 (P2017-159786)
出願日 平成29年8月22日(2017.8.22)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 良太
【氏名】寺西 利治
【氏名】川脇 徳久
【氏名】信定 克幸
【氏名】飯田 健二
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G065
4K017
4K018
Fターム 2G065AB04
2G065BA40
4K017AA04
4K017BA02
4K017BB18
4K017CA01
4K017CA08
4K017DA09
4K017EK08
4K017FB02
4K018BA01
4K018BB03
4K018BB05
4K018BB07
4K018BD10
4K018KA61
要約 【課題】
本発明は、可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途を提供する。
【解決手段】
下記(1)~(3)を満たす可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途に関する;
(1)当該合金ナノ粒子は、元素A及び元素Bで構成された合金であり、元素Aは周期表の第8~11族からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bは周期表の第12~14族からなる群より選ばれる1種以上の元素である、
(2)当該合金ナノ粒子中の元素Aと元素Bの組成比が60:40~40:60である、及び
(3)当該合金ナノ粒子は、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみても元素A及び元素Bのそれぞれの原子層が交互に積層することが確認できる結晶構造を有する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(1)~(3)を満たす可視光プラズモニック合金ナノ粒子;
(1)当該合金ナノ粒子は、元素A及び元素Bで構成された合金であり、元素Aは周期表の第8~11族からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bは周期表の第12~14族からなる群より選ばれる1種以上の元素である、
(2)当該合金ナノ粒子中の元素Aと元素Bの組成比が60:40~40:60である、及び
(3)当該合金ナノ粒子は、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみても元素A及び元素Bのそれぞれの原子層が交互に積層することが確認できる結晶構造を有する。
【請求項2】
さらに、下記(4)を満たす、請求項1に記載の可視光プラズモニック材料;
(4)当該合金ナノ粒子が、フェルミエネルギーを0eVとした場合、-1.5eV以下の領域に、主にd軌道からなるバンド(dバンド)を有し、-1.5eV~2.0eVの領域に、d軌道を殆ど含まない主にsとp軌道からなるバンド(spバンド)を有する。
【請求項3】
当該合金ナノ粒子の結晶構造が、B2型の結晶構造である、請求項1又は2に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【請求項4】
元素Aが、周期表の第8~11族且つ第4~6周期からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bが、周期表の第12~14族且つ第2~6周期からなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項1~3のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【請求項5】
元素Aが、周期表の第10~11族且つ第4~5周期からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bが、周期表の第12~13族且つ第3~5周期からなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項4に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【請求項6】
元素Aがパラジウム及びニッケルからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bがインジウム及びカドミウムからなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項1~5のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【請求項7】
元素Aがパラジウムであり、元素Bがインジウムである、請求項6に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【請求項8】
前記請求項1~7のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子を含む可視光プラズモニック材料。
【請求項9】
顔料、染料、プラズモンセンシングデバイス、プラズモン増強デバイス、プラズモン光電変換デバイス、イメージングデバイス、プラズモン光学デバイス、ドラックデリバリーシステム、温熱療法からなる群から選ばれる1種以上の用途に用いられる、前記請求項8に記載の可視光プラズモニック材料。
【請求項10】
前記請求項1~7のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子の製造方法であって、前記元素A又はそのリン化合物と、元素B又はその化合物と、有機配位子とを反応させる工程を含む、製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
金(Au)はナノメートルサイズの球状微粒子(ナノ粒子)になると局在表面プラズモン共鳴(LSPR)と呼ばれる自由電子の集団振動現象により緑色の光を吸収するようになる。また、Auのバンド間遷移によって青色の光を吸収するため、太陽光中の緑色と青色の光が吸収されることで赤色を呈する。LSPRによって吸収された緑色の光は近接場光としてAuナノ粒子表面に局在するため、漏斗が液体を集液するかの如く、LSPRによって光子を局所に集光することができる。そのため、表面増強ラマン散乱(SERS)による分子センシングや色素分子の蛍光増強など、近接場光と吸着分子との相互作用は魅力的な研究対象となっている。近年では、太陽光のようなエネルギー密度の低い低品位な光を高品位化し得る現象としても注目されており、創エネ及び省エネ分野での応用も活発に検討されている。
【0003】
LSPRによる吸収波長は「プラズマ振動数」と呼ばれ、物質のキャリア密度の増大に伴い短波長シフトする。通常、金属のキャリア密度(自由電子密度)nは大きく(n≒1023cm-3)、プラズマ振動数は紫外領域に存在する。酸化インジウムスズ(ITO)などの導電性酸化物では金属と比較するとキャリア密度が小さい(n≒1021cm-3)ため、プラズマ振動数は近赤外光領域となる。その中で、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)は可視領域にプラズマ振動数を有する数少ない例外である。可視領域の光は、有機分子、金属錯体又は無機半導体にとって、分子内電子遷移、配位子から中心金属への電荷移動(LMCT)、バンド間遷移などを誘起する極めて重要な波長領域であるにも関わらず、これらの遷移過程を高効率化し得る可視光プラズモニック材料は、実用的にはAu、Ag又はその固溶体合金のみであった。
【0004】
しかし、Auは化学的安定性が高い一方でコストが高い。AgはAuよりも電場増強度が高い反面、酸化耐性が低いなど化学的安定性の面で問題を抱えている。
【0005】
なお、CuはAg以上に酸化耐性が低く、さらにはバンド間遷移に起因する光吸収帯がLSPRによる吸収帯と大きくオーバーラップするため、可視光プラズモニック材料としての応用は困難とされている。
【0006】
近年、紫外領域にプラズマ振動数を有するパラジウム(Pd)やアルミニウム(Al)などの金属ナノ粒子を、ナノシート、ナノプレート、ナノロッドなどの異方的な形状にすることで、プラズマ振動数を制御し可視光応答性を付与することが試みられている(特許文献1、2、非特許文献1、2等)。しかし、当該金属ナノ粒子は、本質的に可視領域にプラズマ振動数を有する材料ではないため、熱等による大きなエネルギーで形状が変化すると可視光応答性が消失することが懸念される。
【0007】
このように、様々なアプローチが試みられているにもかかわらず、Au、Ag及びCu以外に本質的に可視領域にプラズマ振動数を有する金属(合金)材料が見出されていないのが現状である。
【0008】
ところで、特許文献3には、標準酸化還元電位-1.2Vよりも正の電位の金属又はその金属錯体と、リン-パラジウム化合物と、有機配位子とを反応させてパラジウム合金ナノ粒子が製造できることが報告されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特表2008-532097号公報(国際公開第2006/096255号)
【特許文献2】特開2011-232384号公報
【特許文献3】特開2016-56431号公報
【0010】

【非特許文献1】Nat. Nanotech. 2011, 4, 28., “Freestanding Palladium Nanosheets with Plasmonic and Catalytic Properties”
【非特許文献2】ACS Photonics 2014, 1, 538., “Robust and Versatile Light Absorption at Near Infrared Wavelengths by Plasmonic Aluminum Nanorods”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、パラジウム(Pd)とインジウム(In)の合金ナノ粒子が、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により可視領域の光を吸収することを見出した。当該PdIn合金ナノ粒子は、Pd原子とIn原子とがおおよそ1:1で構成される合金であり、塩化セシウム(CsCl)と同様のB2型の結晶構造、即ち、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみてもPd及びInのそれぞれ原子層が交互に積層する結晶構造を有している(例えば、図11を参照)。かかる知見に基づいて、さらに検討を加えることにより、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下の可視光プラズモニック合金ナノ粒子、その製造方法、及びその用途を提供する。
【0014】
項1.下記(1)~(3)を満たす可視光プラズモニック合金ナノ粒子;
(1)当該合金ナノ粒子は、元素A及び元素Bで構成された合金であり、元素Aは周期表の第8~11族からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bは周期表の第12~14族からなる群より選ばれる1種以上の元素である、
(2)当該合金ナノ粒子中の元素Aと元素Bの組成比が60:40~40:60である、及び
(3)当該合金ナノ粒子は、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみても元素A及び元素Bのそれぞれの原子層が交互に積層することが確認できる結晶構造を有する。
【0015】
項2.さらに、下記(4)を満たす、項1に記載の可視光プラズモニック材料;
(4)当該合金ナノ粒子が、フェルミエネルギーを0eVとした場合、-1.5eV以下の領域に、主にd軌道からなるバンド(dバンド)を有し、-1.5eV~2.0eVの領域に、d軌道を殆ど含まない主にsとp軌道からなるバンド(spバンド)を有する。
【0016】
項3.当該合金ナノ粒子の結晶構造が、B2型の結晶構造である、項1又は2に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【0017】
項4.元素Aが、周期表の第8~11族且つ第4~6周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素であり、元素Bが、周期表の第12~14族且つ第2~6周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素である、項1~3のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【0018】
項5.元素Aが、周期表の第10~11族且つ第4~5周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素であり、元素Bが、周期表の第12~13族且つ第3~5周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素である、項4に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【0019】
項6.元素Aがパラジウム及びニッケルからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bがインジウム及びカドミウムからなる群より選ばれる1種以上の元素である、項1~5のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【0020】
項7.元素Aがパラジウムであり、元素Bがインジウムである、項6に記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子。
【0021】
項8.前記項1~7のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子を含む可視光プラズモニック材料。
【0022】
項9.顔料、染料、プラズモンセンシングデバイス、プラズモン増強デバイス、プラズモン光電変換デバイス、イメージングデバイス、プラズモン光学デバイス、ドラックデリバリーシステム、温熱療法からなる群から選ばれる1種以上の用途に用いられる、前記項8に記載の可視光プラズモニック材料。
【0023】
項10.前記項1~7のいずれかに記載の可視光プラズモニック合金ナノ粒子の製造方法であって、前記元素A又はそのリン化合物と、元素B又はその化合物と、有機配位子とを反応させる工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により可視領域の光を吸収するため、本質的に物質自体が可視領域にプラズマ振動数を有する金属(合金)材料であり、これまでにない全く新しい可視光プラズモニック材料である。
【0025】
ここで、「本質的に物質自体が」とは、特許文献1、2、非特許文献1、2等のように、等方的な形状(球形など)では可視領域にプラズマ振動数を有しないが、異方的な形状にすることでプラズマ振動数を制御し可視光応答性を付与するということではなく、等方的な形状であってもその物質の本来の特性として可視領域にプラズマ振動数を有することを意味する。
【0026】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、高い化学的安定性を有しているとともに、低コストで製造が可能である。例えば、B2型-PdIn合金ナノ粒子は、化学的安定性の高いPdを半分程含む合金であるため、酸化耐性の低いAgよりも高い化学的安定性を有していると考えられ、比較的安価なInを半分程含む合金でもあることから、原料コストもAuの25%程度に抑えることができる。
【0027】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、可視光プラズモニック材料として有用であり、プラズモンセンシングデバイス、プラズモン増強デバイス等の幅広い分野に使用されているAu及びAgの有望な代替材料となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】製造例1~4で得られたPd-Pナノ粒子のTEM像を示す。製造例1~4のPd-Pナノ粒子のTEM像は、それぞれ図1のa~dに対応する。
【図2】実施例1~4で得られたPdInナノ粒子のTEM像を示す。実施例1~4のPdInナノ粒子のTEM像は、それぞれ図2のa~dに対応する。
【図3】実施例1~4で得られたPdInナノ粒子の粉末X線回折(PXRD)の測定結果である。
【図4】実施例1~4で得られたPdInナノ粒子の可視及び近赤外吸収スペクトルの測定結果である。
【図5】実施例3で得られたB2型-PdIn合金ナノ粒子を屈折率の異なる溶媒に分散させてLSPRの吸収ピークを測定した結果である。
【図6】周期表の第8~10族、第11族、及び第12~14族の元素からなる金属固体に特徴的な電子構造(フェルミ準位近傍の状態密度分布)を示した模式図である。
【図7】試験例4で計算したPdナノ粒子(Pd561)のフェルミ準位近傍の状態密度分布を示す。
【図8】試験例4で計算したPdInナノ粒子(Pd329In312)のフェルミ準位近傍の状態密度分布を示す。
【図9】試験例4で計算したPdInナノ粒子(Pd312In275)のフェルミ準位近傍の状態密度分布を示す。
【図10】試験例4で計算したAuナノ粒子(Au560)のフェルミ準位近傍の状態密度分布を示す。
【図11】B2型-PdInにおいて、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向(一例として、x、y及びz軸方向)のいずれからみてもPd原子層及びIn原子層が交互に積層していることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0030】
本明細書において、「含む」なる表現については、「含む」、「実質的にからなる」及び「からなる」の概念を包含する。

【0031】
1.可視光プラズモニック合金ナノ粒子
可視光プラズモニック合金ナノ粒子とは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により可視領域の光を吸収する(可視領域にプラズマ振動数を有する)合金ナノ粒子を意味する。

【0032】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、(1)元素A及び元素Bで構成された合金であり、元素Aは周期表の第8~11族からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、元素Bは周期表の第12~14族からなる群より選ばれる1種以上の元素であり、(2)当該合金ナノ粒子中の元素Aと元素Bの組成比が60:40~40:60であり、及び(3)当該合金ナノ粒子は、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみても元素A及び元素Bのそれぞれの原子層が交互に積層することが確認できる結晶構造を有する、ことを特徴とする。

【0033】
元素Aは、好ましくは周期表の第8~11族且つ第4~6周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素(金属元素)であり、具体的には、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)が挙げられる。そのうち、より好ましくは周期表の第10~11族且つ第4~5周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素であり、さらに好ましくはPd及びNiからなる群より選ばれる1種以上(特に1種)の元素であり、特に好ましくはPdである。

【0034】
元素Bは、好ましくは周期表の第12~14族且つ第2~6周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素であり、具体的には、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)が挙げられる。そのうち、より好ましくは周期表の第12~13族且つ第3~5周期からなる群より選ばれる1種以上(特に1~3種)の元素であり、さらに好ましくはインジウム(In)及びカドミウム(Cd)からなる群より選ばれる1種以上(特に1種)の元素であり、特に好ましくはInである。

【0035】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子が、元素Aと元素Bとから構成される理由として、周期表の第8~11族の元素(元素A)と第12~14族の元素(元素B)からなる合金の結晶構造は、直交座標軸の3軸方向に延びる元素Bのp軌道が単純立方格子を形成し、その体心の位置に元素Aが侵入することで、塩化セシウム(CsCl)型の結晶構造に相当するB2型の結晶構造を取り易いと考えられるためである。例えば、図11を参照されたい。また、周期表の第8~11族の元素(元素A)と第12~14族の元素(元素B)からなる合金の電子構造は、その間にある第11族の単元素(Cu、Ag及びAu;既存の可視光プラズモニック材料)と類似した電子構造を取りやすいと考えられるためである。例えば、図6を参照されたい。

【0036】
合金ナノ粒子中の元素Aと元素Bの組成比は、好ましくは58:42~42:58であり、より好ましくは56:44~44:56であり、特に好ましくは54:46~46:54である。

【0037】
合金ナノ粒子として具体例として、AlFe、AlCo、AlNi、AlRu、AlRh、AlPd、AlIr、AlPt、CoGa、NiZn、NiGa、NiIn、CuZn、CuPd、CuIn、ZnAg、ZnPt、ZnAu、GaRh、PdCd、PdIn、AgCd、CdAu等が挙げられ、そのうちPdCd、PdIn等が好ましく、PdInがより好ましい。

【0038】
合金ナノ粒子は、結晶構造を有し、x、y及びz軸で規定される直交座標系の三次元空間において、互いに直交する3方向のいずれからみても元素Aの原子層及び金属Bの原子層が交互に積層することが確認できる結晶構造を有することを特徴とする。特に典型的には、塩化セシウム(CsCl)型の結晶構造に相当するB2型の結晶構造を有することが好ましい。B2型の結晶構造の場合、例えば、x、y及びz軸方向、換言すれば、[100]、[010]及び[001]において元素Aの原子層及び金属Bの原子層が交互に積層することが確認できる。例えば、図11を参照。

【0039】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、フェルミ準位近傍の電子構造を密度汎関数理論(DFT)計算で計算した時に、フェルミエネルギーを0eVとした場合、-1.5eV以下の領域(特に-4.5eV~-1.5eVの領域)に、主にd軌道からなるバンド(dバンド)を有することが好ましい。また、-1.5eV~2.0eVの領域(特に-1.5eV~0eVの領域)に、d軌道を殆ど含まない主にsとp軌道からなるバンド(spバンド)を有することが好ましい。例えば、試験例4を参照。

【0040】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子の平均粒径は、通常、1nm~1000nmであり、好ましくは1~500nmであり、より好ましくは1nm~100nmであり、特に好ましくは3nm~50nmである。標準偏差は、通常、0.1nm~10nmである。相対標準偏差は、通常、5~15%である。このように、平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差は、実施例に記載の方法により測定することができる。

【0041】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により可視領域(波長:360~830nm(例えば、JIS Z 8120を参照))の光を吸収する特性、換言すれば、可視領域にプラズマ振動数を有するという特性を有している。具体的には、当該合金ナノ粒子は、360~830nmの領域に吸収波長のピークトップを有している。可視光プラズモニック材料として有用である。

【0042】
2.可視光プラズモニック合金ナノ粒子の製造方法
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、元素A又はそのリン化合物と、元素B又はその化合物と、有機配位子とを反応させて製造することができる。

【0043】
2.1 元素A又はそのリン化合物
元素Aは、上述した周期表の第8~11族からなる群より選ばれる1種以上の金属である。そのリン化合物とは、元素Aとリンとを含む化合物であり、公知の方法に従い又は準じて製造することができる。典型例として、元素AがPdの場合、Pd又はそのリン化合物は公知の方法(例えば、Small, 2011, vol.7, p.469-473、Nano Res., 2011, vol.4, p.83-91、Dalton Trans., 2013, vol.42, p.12667-12674、Chem. Commun., 2014, Advance Article DOI:10.1039/C4CC03282A、Chem. Mater., 2014, vol.26, p.1056-1061)を参考にして製造することができる。

【0044】
元素Aのリン化合物における元素Aとリン原子との組成比(元素A:P)としては、特に制限はなく、目的とする合金ナノ粒子に応じて適宜調節すればよい。一般的に、元素Aとリン原子との組成比(元素A:P)としては、通常、10:90~90:10の範囲であり、50:50~90:10の範囲とするのが好ましく、60:40~80:20の範囲とするのがより好ましい。元素Aとリン原子との組成比は、蛍光X線分析法(XRF)により測定できる。

【0045】
元素A又はそのリン化合物の平均粒径は、所望の範囲(通常、1nm~1000nmの範囲であり、好ましくは1nm~500nmであり、より好ましくは2nm~100nmであり、特に好ましくは3nm~50nmである。)に設定することができる。該平均粒径は、透過型電子顕微鏡で撮像した写真から測定できる。測定方法としては、粒子を無作為に200個抽出し(標本数n=200)、各々の粒子の直径を測定し、その直径の平均から計算することができる。

【0046】
2.2 元素B又はその化合物
元素Bは、上述した周期表の第12~14族からなる群より選ばれる1種以上の元素である。その化合物とは、当該元素Bが含まれる有機又は無機の化合物であり、公知の方法に従い又は準じて製造することができる。

【0047】
元素Bの化合物としては、例えば、カルボン酸化合物と元素Bとの錯体;アミン化合物と元素Bとの錯体;スルホン酸化合物と元素Bとの錯体;ホスフィン化合物と元素Bとの錯体;アセチルアセトン等のキレート配位子と元素Bとの錯体;元素Bの有機金属化合物;及び元素Bの無機塩(元素Bのハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等)などが挙げられる。これらの中で、特に、カルボン酸化合物と元素Bとの錯体、元素Bの無機塩が好ましい。該カルボン酸化合物と元素Bとの錯体(カルボン酸金属錯体)におけるカルボン酸化合物としては、下記の有機配位子に記載する種類のカルボン酸化合物が挙げられる。元素Bの化合物として、元素BがInの場合、例えば、塩化インジウム(III)、酢酸インジウム(III)等が挙げられる。

【0048】
元素B又はその化合物は一種のみを使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。また、元素Bとその化合物を併用してもよい。

【0049】
元素B又はその化合物は、固体又は液体であってもよい。固体の場合、その形状としては特に制限はない。例えば、粉末又は粒状を使用することができ、市販のものを使用することができる。

【0050】
金属B又はその化合物の平均粒径としては、例えば、50nm~5mmの範囲が挙げられ、好ましくは50nm~500μm、より好ましくは50nm~50μmの範囲である。上記平均粒径には、数平均分布より求めたメジアン径(50%累積径)を採用することができる。粒径の数平均分布は、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気的検知体法、画像解析法など、一般的に使われている各種測定法により容易に求めることができる。

【0051】
元素B又はその化合物の使用量としては、特に制限はなく、目的とする合金ナノ粒子により適宜調節すればよい。例えば、元素A又はそのリン化合物における元素A換算で、元素A(元素Aが2種以上の場合、各元素のモル数の総和)1モルに対して、通常、0.5~100モルであり、1~50モルが好ましく、2~20モルがより好ましい。

【0052】
ここで、元素Aのリン化合物を合成する際に、収率を100%と仮定して、合成する際に使用する元素A(例えば、パラジウム(II)アセチルアセトナト等)の物質量から、元素Aの量を換算することができる。また、元素Aのリン化合物の溶液を調製し、原子吸光分析法(AAS)又は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で溶液中の元素A濃度を求め、元素A量を換算することもできる。

【0053】
2.3 有機配位子
有機配位子としては、金属原子と結合を形成する又はナノ粒子表面に吸着する有機化合物であればよい。例えば、アルコール化合物、カルボニル化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、エステル化合物等の有機酸素化合物;アミン化合物、アンモニウム化合物、ニトリル化合物、イソシアニド化合物等の有機窒素化合物;チオール化合物、チオエーテル化合物、チオエステル化合物、スルホキシド化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物等の有機硫黄化合物;ホスフィン化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスフィン酸化合物、ホスホン酸化合物等の有機リン化合物;シラン化合物、シラノール化合物等の有機ケイ素化合物;これらの重合体(オリゴマー、ポリマー)などが挙げられる。これらのうち、有機酸素化合物及び有機窒素化合物が好ましく、カルボン酸化合物、及びアミン化合物がより好ましい。

【0054】
カルボン酸化合物としては、カルボン酸基を有する有機化合物であれば特に制限はない。例えば、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等の炭素数8~24の不飽和脂肪族カルボン酸;ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、1-アダマンタンカルボン酸等の炭素数8~24飽和脂肪族カルボン酸;クミン酸、4-ブチル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。該カルボン酸化合物は、脂肪族鎖が直鎖、分枝もしくは非芳香環状のカルボン酸であってもよい。これらの中でも、ナノ粒子の凝集及び融合の抑制、溶媒への分散性の向上並びに沸点の観点から、炭素数8~24のカルボン酸が好ましく、炭素数16~20のカルボン酸がより好ましく、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸及びパルミトレイン酸が更に好ましく、オレイン酸が特に好ましい。

【0055】
アミン化合物としては、アミノ基を有する有機化合物であれば特に制限はない。例えば、オレイルアミン、リノレイルアミン等の炭素数8~24の不飽和アミン;ステアリルアミン、ミリスチルアミン、アダマンチルアミン等の炭素数8~24飽和アミン;4-イソプロピルアニリン、4-ブチルアニリン等の芳香族アミンが挙げられる。該アミン化合物は、脂肪族鎖が直鎖、分枝もしくは非芳香環状のアミンであってもよい。これらの中でも、ナノ粒子の凝集及び融合の抑制、溶媒への分散性の向上並びに沸点の観点から、炭素数8~24のアミンが好ましく、炭素数16~20のアミンがより好ましく、オレイルアミン、リノレイルアミン、ステアリルアミン、アラキジルアミン、パルミチルアミン及びパルミトレイルアミンが更に好ましく、オレイルアミンが特に好ましい。

【0056】
有機配位子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。特に、カルボン酸化合物及びアミン化合物の両方用いることが好ましい。

【0057】
有機配位子の使用量としては、特に制限はなく、目的とする合金ナノ粒子により適宜調節すればよい。例えば、元素A又はそのリン化合物における元素A換算で、元素A(元素Aが2種以上の場合、各元素のモル数の総和)1モルに対して、通常、0.1モル~400モルであり、0.5モル~300モルが好ましく、1モル~250モルがより好ましい。

【0058】
また、有機配位子の使用量は、例えば、元素B又はその化合物における元素B換算で、上記元素B(元素Bが2種以上の場合、各元素のモル数の総和)1モルに対して、通常、0.1モル~400モルであり、0.5モル~300モルが好ましく、1モル~200モルがより好ましい。

【0059】
有機配位子は、溶媒として、元素A又はそのリン化合物、或いは元素B又はその化合物よりも過剰量加えることもできる。

【0060】
必要に応じて、有機配位子にさらに有機溶媒を加えてもよい。該有機溶媒としては、反応温度よりも沸点が高く、かつ安定であるものが好ましく、例えば、1-オクタデセン、オクタデカン、エイコサン、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、オクチルエーテル、スクアレン等の炭素数16~30の炭化水素系溶媒を用いることができる。

【0061】
有機溶媒の使用量としては、有機配位子1重量部に対して、通常、0.1重量部~100重量部であり、0.5重量部~50重量部が好ましく、1重量部~20重量部がより好ましい。

【0062】
2.4 反応条件
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子の製造方法は、元素A又はそのリン化合物と、元素B又はその化合物と、有機配位子とを反応させる工程を含んでいる。

【0063】
典型的には、元素A又はそのリン化合物と、元素B又はその化合物と、有機配位子とを、加熱することにより、元素A及び元素Bの合金ナノ粒子を製造することができる。加熱温度としては、通常、260℃以上、好ましくは280℃~350℃の範囲であり、より好ましくは300℃~330℃の範囲である。反応時間は、特に制限はなく、通常、30分~6時間程度、好ましくは1~3時間の範囲である。反応は、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等の不活性ガスの雰囲気下で行なうことができる。

【0064】
このうち、パラジウム合金ナノ粒子の製造方法については、例えば、特許文献3(特開2016-56431号公報)の記載に従い又は準じて実施することができる。

【0065】
3.可視光プラズモニック合金ナノ粒子の用途
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により可視領域の光を吸収するため、本質的に物質自体が可視領域にプラズマ振動数を有する金属(合金)材料となる。そのため、可視光プラズモニック材料として有用である。

【0066】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、例えば、顔料、染料、プラズモンセンシングデバイス、プラズモン増強デバイス、プラズモン光電変換デバイス、イメージングデバイス、プラズモン光学デバイス、ドラックデリバリーシステム、温熱療法等の幅広い分野に用いることができる。具体的には、例えば、増強ラマン散乱(SERS)測定装置、チップ増強ラマン分光(TERS)、表面増強赤外分光(SEIRAS)測定装置、全反射照明蛍光顕微鏡(TIRF)、蛍光増強、光電変換デバイスや光触媒の効率増強、近接場光顕微鏡、光導波路、レーザー、光学フィルター、光変調器、フォトニック結晶、メタマテリアル等に用いることができる。従来から可視光プラズモニック材料として使用されているAu及びAgに代替し得る有望な材料となり得る。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
製造例1~4(平均粒子径の異なるPd-Pナノ粒子の調製)
特許文献3(特開2016-56431号公報)の実施例の記載に従い、平均粒径の異なるPd-Pナノ粒子の調製を行った。その結果を表1に示す。図1のa~dの透過型電子顕微鏡(TEM)像はそれぞれ、製造例1~4で調製されたPd-Pナノ粒子に対応する。
【実施例】
【0069】
各Pd-Pナノ粒子は非晶質(アモルファス)であり、その平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差は、Pd-Pナノ粒子のTEM像から粒子を無作為に200個抽出し(標本数n=200)、各々の粒子の直径を計測して求めた。製造例1~4のPd-Pナノ粒子の粒径はすべて単分散であった。
【実施例】
【0070】
製造例5(Pdナノ粒子の調製)
文献(Nano Res., 2011, vol.4, p.83-91)の記載に従い、Pdナノ粒子の調製を行った。
【実施例】
【0071】
製造例5のPdナノ粒子の平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差を、上記と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0072】
【表1】
JP2019039026A_000002t.gif
【実施例】
【0073】
実施例1(B2型-PdIn合金ナノ粒子の製造)
冷却管、温度計及びセプタムを装着した100mL三ツ口フラスコに、製造例1で得られた平均粒径3.3nmのPd-Pナノ粒子 0.5mmol(Pd原子換算)、インジウム粉末 2mmol、オレイルアミン 10mmol、及びオレイン酸 10mmolを入れ、反応液中の容存酸素及び水分を取り除くため、溶液を攪拌しながら80℃で30分間減圧脱気を行った。その後、反応容器内を窒素雰囲気とし、300℃に昇温した後、同温で3時間攪拌することにより、PdInナノ粒子を製造した。
【実施例】
【0074】
反応溶液を室温に冷却した後、これにクロロホルムを加え、遠心分離により上澄及び沈澱に分離した。上澄中の余分な有機物を取り除くために貧溶媒としてエタノールを加え、さらに遠心分離により精製処理を行い、PdInナノ粒子を沈殿物として得た。このPdInナノ粒子は、クロロホルムに再分散させることが可能であった。
【実施例】
【0075】
実施例1で得られたPdInナノ粒子のTEM像を図2のaに示す。その平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差は、PdIn合金ナノ粒子のTEM像から粒子を無作為に200個抽出し(標本数n=200)、各ナノ粒子の直径を計測して求めた。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0076】
実施例2~4(B2型-PdIn合金ナノ粒子の製造)
製造例2~4で得られた平均粒径の異なるPd-Pナノ粒子を用いてそれぞれ、表2に記載の反応温度に代えた以外は、実施例1と同様の方法を用いてPdInナノ粒子を製造した。
【実施例】
【0077】
実施例2~4で得られたPdInナノ粒子のTEM像をそれぞれ、図2のb~dに示す。何れも形状は球形であった。それらの平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差は、実施例1と同様にして求めた。それらの結果を表2に示す。
【実施例】
【0078】
実施例5(B2型-PdIn合金ナノ粒子の製造)
冷却管、温度計及びセプタムを装着した100mL三ツ口フラスコに、製造例5で得られた平均粒径15nmのPdナノ粒子 0.5mmol(Pd原子換算)、塩化インジウム 1.0mmol、オレイルアミン 100mmol、及びオレイン酸 10mmolを入れ、反応液中の容存酸素及び水分を取り除くため、溶液を攪拌しながら80℃で30分間減圧脱気を行った。その後、反応容器内を窒素雰囲気とし、300℃に昇温した後、同温で3時間攪拌することにより、PdInナノ粒子を製造した。
【実施例】
【0079】
反応溶液を室温に冷却した後、これにクロロホルムを加え、遠心分離により上澄及び沈澱に分離した。上澄中の余分な有機物を取り除くために貧溶媒としてエタノールを加え、さらに遠心分離により精製処理を行い、PdInナノ粒子を沈殿物として得た。このPdInナノ粒子は、クロロホルムに再分散させることが可能であった。
【実施例】
【0080】
実施例5で得られたPdInナノ粒子は、TEM像から球形であった。平均粒径、標準偏差及び相対標準偏差は、実施例1と同様にして求めた。それらの結果を表2に示す。
【実施例】
【0081】
【表2】
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【実施例】
【0082】
試験例1(粉末X線回折の測定;B2型結晶構造の確認)
実施例1~4で得られたPdInナノ粒子の粉末X線回折(PXRD)を測定したところ、その回折ピークのパターンが立方晶のB2(塩化セシウム)型合金相に帰属された。これより、実施例1~4で得られたナノ粒子はいずれも、B2型-PdIn合金ナノ粒子であることが確認できた(図3のa~d)。結晶構造については、図11を参照。
【実施例】
【0083】
試験例2(可視及び近赤外吸収スペクトル;LSPR吸収ピークの測定)
実施例1~4で得られたB2型-PdInナノ粒子のクロロホルム溶液を調製し、紫外-可視-近赤外(UV-Vis-NIR)吸収スペクトルを測定した。その結果(光の波長と吸収強度の相関)を、図4のa~dに示す。いずれにおいても500~800nmの可視領域に吸収ピークを確認した。B2型-PdIn合金ナノ粒子の粒径の増大に伴い、吸収ピーク強度の増加とピークトップの長波長シフトが観測され、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に特徴的な傾向を確認した。
【実施例】
【0084】
試験例3(屈折率感度測定;LSPR吸収ピークの検証)
試験例2にて可視領域に観測された吸収ピークがLSPRに起因することを実験的に検証するために、屈折率感度の測定を行った。実施例3で得られたB2型-PdIn合金ナノ粒子を分散させる媒体(溶媒)を、(i)n-ヘキサン(屈折率n=1.37)、(ii)シクロヘキサン(n=1.42)、(iii)クロロホルム(n=1.44)、(iv)トルエン(n=1.48)及び(v)o-ジクロロベンゼン(屈折率n=1.55)に変更し、それぞれのUV-Vis-NIR吸収スペクトルを測定した。その結果を、図5(1)に示す。
【実施例】
【0085】
このスペクトルから、溶媒の屈折率の増加に伴い、吸収ピークのピークトップが長波長シフトすることが観測された。図5(2)は、図5(1)で用いた溶媒の屈折率とピークトップ波長の関係を表した図であり、両者の間には明瞭な一次の関係が確認された。この一次式における傾きは屈折率感度と呼ばれ、実施例3のB2型-PdIn合金ナノ粒子の屈折率感度は、52.3nm/RIUであった。この屈折率感度の値は既存の可視光プラズモニック材料であるAu及びAgと同等の値であった。
【実施例】
【0086】
以上の結果から、試験例2の図4において可視領域に確認された吸収ピークがLSPRに起因することが確認された。
【実施例】
【0087】
実施例1、2、4及び5で得られたB2型-PdIn合金ナノ粒子についても同様の結果が得られる。
【実施例】
【0088】
これより、実施例1~5で得られたB2型-PdIn合金ナノ粒子が、可視光プラズモニック材料であることが実験的に確認された。
【実施例】
【0089】
試験例4(密度汎関数理論(DFT)計算;電子構造の導出)
B2型-PdIn合金のフェルミ準位近傍の電子構造(状態密度分布(DOS))を理論計算によって導出した。計算は文献(J. Comput. Phys. 2014, Vol.265, p.145-155)に記載の密度汎関数理論に基づく実空間グリッド法を用いた独自開発の計算プログラムGCEEDで行った。GCEEDでは、コーン・シャム方程式を実空間グリッド上で差分法に基づいて直接的に数値計算する手法を採用した。このグリッド幅は0.25Åとし、汎関数にはLDAを用いた。Au5d106s、Pd4d10、In4d105S5p以外の内殻電子は文献(Comput. Phys. Commun. 1999, Vol.119, p.67-98)に記載のfhi98PPプログラムを用いてTroullier-Martinsの手法により擬ポテンシャルに置き換えた。Troullier-Martinsの手法については文献(Comput. Phys. Commun. 1999, Vol.119, p.67-98)を参照した。加えて、比較対象となるPd及びAuのフェルミ準位近傍のDOSを、B2型-PdIn合金と同様の手法を用いて計算した。
【実施例】
【0090】
計算に使用したPdInナノ粒子の構造は、構成原子数がPd329In312及びPd312In275の切稜立方体とし、文献(Russ. Metall., 1980, Vol.4, p.192-194)に記載の格子定数を用いて作成した。Pdナノ粒子の構造は、構成原子数がPd561の立方八面体とし、文献(Crystal Structures, 1963, Vol.1, p.7-83)に記載の格子定数を用いて作成した。また、Auナノ粒子は文献(J. Phys. Chem. A, 2014, Vol.118, p.11317-11322)を参照し、正二十面体から頂点の原子を1つ取り除いた構成原子数Au560の構造を採用した。
【実施例】
【0091】
以上の計算手法で得られた結果を、図7~図10に示す。
【実施例】
【0092】
Pdナノ粒子のDOS(図7)では幅広い単一の分布(丸囲い1)がフェルミ準位 (0eV)近傍から-5eV程度まで続き、sバンドとdバンドが殆ど分離していない。
【実施例】
【0093】
PdInナノ粒子(図8、図9)では、構造の違いによる電子構造の差異は殆ど認められず、ピークの位置(丸囲い2)がエネルギー的に深い位置(-4.5~-1.5eV)にシフトしている。そこからフェルミ準位近傍へ裾が延びている構造を取る(丸囲い3)。つまり、PdInナノ粒子の場合は、Pdのd電子とInのsp電子に由来する分布(丸囲い2)と、Pdのs電子とInのsp電子に由来する分布(丸囲い3)が、-1.5eV辺りを境目にして分離している構造を取る。
【実施例】
【0094】
Auナノ粒子(図10)については占有軌道のDOSのみ示すが、PdInナノ粒子と同様に-1.5eV辺りを境にして、spバンドとdバンドが分離していることが見て取れる。
【実施例】
【0095】
従って、PdIn合金の電子状態はPd(10族)よりもAu(11族)に類似していることが判明した。
【実施例】
【0096】
<考察>
以上の結果より、PdIn合金ナノ粒子は、Pd原子とIn原子がほぼ1:1で構成された、B2型からなる結晶構造を有することが確認された。また、PdIn合金ナノ粒子は、可視光領域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因する吸収が存在するため、可視光プラズモニック材料であることが確認された。
【実施例】
【0097】
また、PdIn合金ナノ粒子の状態密度分布の計算データ(試験例4)から、合金ナノ粒子が可視光プラズモニック材料の特性を有するためには、フェルミエネルギーを0eVとした場合、-1.5eV以下の領域に、主にd軌道からなるバンド(dバンド)を有すること、-1.5eV~2.0eVの領域に、d軌道を殆ど含まない主にsとp軌道からなるバンド(spバンド)を有することが、重要と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の可視光プラズモニック合金ナノ粒子は、本質的に物質自体が可視領域にプラズマ振動数を有する金属(合金)材料であり、これまでにない全く新しい可視光プラズモニック材料である。そのため、プラズモンセンシングデバイス、プラズモン増強デバイス等の幅広い分野に使用されているAu及びAgの有望な代替材料となり得る。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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