TOP > 国内特許検索 > ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法 > 明細書

明細書 :ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-038714 (P2019-038714A)
公開日 平成31年3月14日(2019.3.14)
発明の名称または考案の名称 ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法
国際特許分類 C01G  19/04        (2006.01)
H01L  51/44        (2006.01)
FI C01G 19/04
H01L 31/04 112Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-161309 (P2017-161309)
出願日 平成29年8月24日(2017.8.24)
発明者または考案者 【氏名】金光 義彦
【氏名】阿波連 知子
【氏名】若宮 淳志
【氏名】半田 岳人
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151AA20
5F151CB13
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA13
5F151FA15
5F151GA02
5F151GA03
5F151GA04
要約 【課題】開放電圧(Voc)向上可能なハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法の提供。
【解決手段】ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法であって、一般式(1):SnX1m1(1)[式中、X1は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。1.8≦m1≦2.2を示す。]で表される化合物と、塩化物とを含む前駆体溶液を加熱する工程を備え、前記塩化物は、一般式(2A):RnX2m2(2A)[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。X2は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m2≦1.2を示す。]で表される化合物と、SnCl2とを含むか、又は、一般式(2B):RnClm3(2B)[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m3≦1.2を示す。]で表される化合物を含む、製造方法。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法であって、
一般式(1):
SnX1m1 (1)
[式中、X1は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。1.8≦m1≦2.2を示す。]
で表される化合物と、塩化物とを含む前駆体溶液を加熱する工程
を備え、
前記塩化物は、
一般式(2A):
RnX2m2 (2A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。X2は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m2≦1.2を示す。]
で表される化合物と、SnCl2とを含むか、又は、
一般式(2B):
RnClm3 (2B)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m3≦1.2を示す。]
で表される化合物を含む、製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2A)で表される化合物と、SnCl2とを含む前駆体溶液を加熱する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2B)で表される化合物とを含む前駆体溶液を加熱する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(2A)及び(2B)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
製造されるハロゲン化スズペロブスカイト化合物が、一般式(3):
RnSnkXm (3)
[式中、R及びnは前記に同じである。Xは同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦k≦1.2、2.8≦m≦3.2を示す。]
で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程における加熱温度が40~200℃である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程前の成膜時に、前記前駆体溶液に貧溶媒を滴下しない、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いたペロブスカイト層。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いたペロブスカイト型太陽電池。
【請求項10】
請求項8に記載のペロブスカイト層を備える、ペロブスカイト型太陽電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、太陽光発電が注目を浴びており、太陽電池の開発が進んでいる。その一つとして、低コストで製造可能な次世代型の太陽電池として、ペロブスカイト化合物を光吸収層に用いた太陽電池が急速に注目を集めている。例えば、非特許文献1では、ペロブスカイト化合物を光吸収層に用いた溶液型の太陽電池が報告されている。
【0003】
ペロブスカイト型太陽電池のペロブスカイト層(光吸収層)には、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物として、CH3NH3PbI3等の鉛含有ペロブスカイト化合物が一般に使用されている。ところが、最近は環境負荷の少ないペロブスカイト型太陽電池の開発が求められており、鉛フリーペロブスカイト化合物を使用することが求められている。
【0004】
太陽電池の光吸収層に使用できる鉛フリーペロブスカイト化合物としては、鉛をスズで代替したCH3NH3SnI3等が考えられる。しかしながら、鉛イオン(Pb2+)とは異なり、スズイオン(Sn2+)は安定性に乏しく、容易に酸化されてSn4+となる。スズ含有ペロブスカイト化合物は部分的酸化されて半導体から金属的特性を示すようになる。このため、現状、スズ含有ペロブスカイト化合物を用いた太陽電池は再現性に乏しく、優れた太陽電池は得られていない上に、スズ含有ペロブスカイト化合物が本来有する性能を評価することも困難でありペロブスカイト型太陽電池に適したペロブスカイト化合物の開発も妨げられている。
【0005】
スズイオン(Sn2+)の酸化を抑制する方法としては、前駆体溶液中にSnF2を添加することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。現状、スズイオン(Sn2+)の酸化を抑制する添加剤としてはSnF2しか知られておらず、実質一択と言ってもよい状況であり、また、開放電圧が十分とは言えない。塗布方法等を最適化することにより短絡電流密度(Jsc)を高くすることは可能であるため、開放電圧(Voc)を十分に大きくすることができれば、変換効率のさらなる向上を見込むことができる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society, 2009, 131, 6050-6051.
【非特許文献2】Advanced Materials, 2016, 28, 9333-9340.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、開放電圧(Voc)を向上することができるハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、前駆体溶液中に、フッ化物ではなく特定の塩化物を含ませることにより、開放電圧(Voc)を向上することができるハロゲン化スズペロブスカイト化合物が得られることを見出した。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法であって、
一般式(1):
SnX1m1 (1)
[式中、X1は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。1.8≦m1≦2.2を示す。]
で表される化合物と、塩化物とを含む前駆体溶液を加熱する工程
を備え、
前記塩化物は、
一般式(2A):
RnX2m2 (2A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。X2は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m2≦1.2を示す。]
で表される化合物と、SnCl2とを含むか、又は、
一般式(2B):
RnClm3 (2B)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m3≦1.2を示す。]
で表される化合物を含む、製造方法。
項2.前記加熱工程が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2A)で表される化合物と、SnCl2とを含む前駆体溶液を加熱する工程である、項1に記載の製造方法。
項3.前記加熱工程が、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2B)で表される化合物とを含む前駆体溶液を加熱する工程である、項1に記載の製造方法。
項4.前記一般式(2A)及び(2B)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.製造されるハロゲン化スズペロブスカイト化合物が、一般式(3):
RnSnkXm (3)
[式中、R及びnは前記に同じである。Xは同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦k≦1.2、2.8≦m≦3.2を示す。]
で表される化合物である、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.前記加熱工程における加熱温度が40~200℃である、項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
項7.前記加熱工程前の成膜時に、前記前駆体溶液に貧溶媒を滴下しない、項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いたペロブスカイト層。
項9.項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により得られたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いたペロブスカイト型太陽電池。
項10.項8に記載のペロブスカイト層を備える、ペロブスカイト型太陽電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開放電圧(Voc)を向上することができるハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1及び比較例1で得られたペロブスカイト層(ハロゲン化スズペロブスカイト化合物)のX線回折パターンである。
【図2】実施例1~2及び比較例1で得られたペロブスカイト層(ハロゲン化スズペロブスカイト化合物)のSEM像である。
【図3】実施例1で得られたペロブスカイト層(ハロゲン化スズペロブスカイト化合物)の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。

【0012】
1.ハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法
本発明のハロゲン化スズペロブスカイト化合物の製造方法は、一般式(1):
SnX1m1 (1)
[式中、X1は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。1.8≦m1≦2.2を示す。]
で表される化合物と、塩化物とを含む前駆体溶液を加熱する工程
を備える。スズイオン(Sn2+)の酸化を抑制するためにフッ化物を使用する場合は、実質的にSnF2の一択のみであるが、本発明では後述のように様々な塩化物を使用することが可能であり、材料選択の幅が広い。

【0013】
一般式(1)において、X1は臭素原子又はヨウ素原子であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、ヨウ素原子が好ましい。これらのハロゲン原子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0014】
一般式(1)において、m1は1.8~2.2であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、1.9~2.1が好ましい。

【0015】
このような一般式(1)で表される化合物としては、SnI2、SnBr2等が挙げられる。一般式(1)で表される化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0016】
本発明の第1の実施形態において、前駆体溶液中の塩化物は、一般式(2A):
RnX2m2 (2A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。X2は同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m2≦1.2を示す。]
で表される化合物と、SnCl2とを含む。

【0017】
本発明の第1の実施形態では、前駆体溶液中に、前記した一般式(1)で表される化合物と一般式(2A)で表される化合物のみならず、SnCl2も含ませることにより、スズイオン(Sn2+)の酸化を抑制して安定性に優れるとともに、開放電圧(Voc)を向上させることも可能である。これにより、SnCl2ではなくSnF2を含ませた場合と比較しても開放電圧(Voc)をさらに向上させることが可能である。なお、SnBr2又はSnI2を含ませた場合は臭素又はヨウ素がペロブスカイト化合物を構成するためにスズイオン(Sn2+)の酸化を抑制する効果は十分ではない。

【0018】
一般式(2A)において、Rは1価のカチオンであり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)等が挙げられる。R1及びR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等のC1-4アルキル基が好ましい。なかでも、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、R1はメチル基が好ましく、R2は水素原子が好ましい。つまり、Rとしては、-CH3NH3+又は-CH(NH2)2+であることが好ましい。

【0019】
なお、Rで示される1価のカチオンとしては、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0020】
一般式(2A)において、X2は臭素原子又はヨウ素原子であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、ヨウ素原子が好ましい。これらのハロゲン原子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0021】
一般式(2A)において、nは0.8~1.2であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0022】
一般式(2A)において、m2は0.8~1.2であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0023】
このような一般式(2A)で表される化合物としては、CH3NH3I、CH3NH3Br、CH(NH2)2I、CH(NH2)2Br等が挙げられる。一般式(2A)で表される化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0024】
前駆体溶液中において、一般式(1)で表される化合物、一般式(2A)で表される化合物及びSnCl2の含有量は特に制限されない。開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点からは、一般式(2A)で表される化合物1モルに対して、一般式(1)で表される化合物を0.8~1.5モル(特に1.0~1.2モル)、SnCl2を0.2~0.8モル(特に0.4~0.7モル)含有することが好ましい。

【0025】
また、 本発明の第2の実施形態において、前駆体溶液中の塩化物は、一般式(2B):
RnClm3 (2B)
[式中、R及びnは前記に同じである。0.8≦m3≦1.2を示す。]
で表される化合物を含む。

【0026】
一般式(2B)において、m3は0.8~1.2であり、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0027】
このような一般式(2B)で表される化合物としては、CH3NH3Cl、CH(NH2)2Cl等が挙げられる。一般式(2B)で表される化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0028】
前駆体溶液中において、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2B)で表される化合物の含有量は特に制限されない。開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点からは、一般式(2B)で表される化合物1モルに対して、一般式(1)で表される化合物を1.0~2.0モル(特に1.2~1.8モル)含有することが好ましい。

【0029】
本発明において、前駆体溶液に使用する溶媒としては、上記した一般式(1)で表される化合物、一般式(2A)で表される化合物、一般式(2B)で表される化合物、SnCl2等を溶解させることが可能な溶媒であれば特に制限はないが、極性溶媒が好ましく、ケトン、エステル、エーテル等の構造を有し沸点が150~250℃程度の溶媒がより好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、プロピレンカーボネート、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチレンスルホキシド、アセチルアセトン、3-メトキシN,N-ジメチルプロパンアミド、N,N'-ジメチルエチレンウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、2-アセチルシクロヘキサノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ピリジン、シクロオクタノン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、1,4,7,10-テトラオキサシクロドデカン、エチルp-トルエート、1,2-ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフルフリルアセテート、シクロヘキシルアセテート、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。なかでも、開放電圧(Voc)をより向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる観点から、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることができる。なお、これらの溶媒の使用量は、溶媒量とすることが好ましい。

【0030】
本発明では、このような前駆体溶液を加熱することでハロゲン化スズペロブスカイト化合物を製造する。本発明では、平坦な膜を形成するため、加熱前に貧溶媒を滴下することもできるが、加熱前に貧溶媒を滴下しなくてもよい。貧溶媒を滴下する場合は、前駆体溶液を用いて塗布中の数秒ほど行うことが好ましい。なお、貧溶媒による処理を施した場合と比較して、貧溶媒を滴下しない場合は開放電圧(Voc)をさらに向上させることが可能である。この点、非特許文献2のように、SnF2を添加することでスズイオン(Sn2+)の酸化を抑制する場合には、通常貧溶媒滴下工程が施されていることとは異なる。

【0031】
この際使用される貧溶媒としては、例えば、クロロメタン、クロロホルム等の置換脂肪族炭化水素;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の置換芳香族炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル;ヘキサン等の長鎖炭化水素(特にC4-10炭化水素)等が挙げられる。

【0032】
このような前駆体溶液を用いて加熱することで、開放電圧(Voc)を向上させたハロゲン化スズペロブスカイト化合物を得ることができる。加熱温度は40~200℃が好ましく、65~100℃がより好ましい。

【0033】
このようにして得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物は、一般式(3):
RnSnkXm (3)
[式中、R及びnは前記に同じである。Xは同一又は異なって、臭素原子又はヨウ素原子を示す。0.8≦k≦1.2、2.8≦m≦3.2を示す。]
で表される化合物である。具体的には、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH(NH2)2SnI3、CH(NH2)2SnBr3等である。この際、副生成物として、上記一般式(1)で表される化合物も生成され得る。

【0034】
2.ペロブスカイト層及びペロブスカイト型太陽電池
上記のとおり、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物は、スズイオン(Sn2+)の酸化を効果的に抑制することができ、その結果、ペロブスカイト型太陽電池のペロブスカイト層(光吸収層)に使用することで、開放電圧(Voc)を向上させることが可能である。このため、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いて、緻密且つ平坦な膜とすれば、開放電圧(Voc)とともに短絡電流密度(Jsc)を高くすることも可能である。このため、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物をペロブスカイト型太陽電池のペロブスカイト層(光吸収層)に使用することで、エネルギー変換効率(PCE)を効率的に向上させたペロブスカイト型太陽電池を得ることが可能である。このような効果は、本発明の製造方法により得られるから得られるものであり、従来から知られているハロゲン化スズペロブスカイト化合物ではなしえなかった効果である。

【0035】
本発明のペロブスカイト型太陽電池は、ペロブスカイト層(光吸収層)として、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物を用いたペロブスカイト層を備える他は、公知のペロブスカイト型太陽電池と同様の構成とすることができる。例えば、本発明のペロブスカイト型太陽電池は、透明電極、(正孔)ブロッキング層、電子輸送層、ペロブスカイト層(光吸収層)、正孔輸送層、及び金属電極をこの順に備えることが好ましい。なお、本明細書において、「A層をB層の上に形成する」とは、A層とB層とを隣接するように積層することを意味しており、A層とB層の物理的な上下関係は問わない。

【0036】
(2-1)透明電極
透明電極は、(正孔)ブロッキング層の支持体であるとともに、(正孔)ブロッキング層を介してペロブスカイト層(光吸収層)より電流(電子)を取り出す機能を有する層であることから、導電性基板が好ましく、光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する透明導電層が好ましい。

【0037】
当該透明導電層としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜、不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜、不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜、フッ素ドープ二酸化錫(FTO)膜、これらを積層してなる積層膜等が挙げられる。これら透明導電層の厚みは特に制限されず、通常、抵抗が5~15Ω/□となるように調整することが好ましい。当該透明導電層は、成形する材料に応じ、公知の成膜方法により得ることができる。

【0038】
また、当該透明導電層は、外部から保護するために、必要に応じて、透光性被覆体により覆われ得る。当該透光性被覆体としては、例えば、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド等の樹脂シート;白板ガラス、ソーダガラス等の無機シート;これらの素材を組合せてなるハイブリッドシート等が挙げられる。これら透光性被覆体の厚みは特に制限されず、通常、抵抗が5~15Ω/□となるように調整することが好ましい。

【0039】
(2-2)(正孔)ブロッキング層
(正孔)ブロッキング層は、正孔の漏れを防ぎ、逆電流を抑制して太陽電池特性(特にエネルギー変換効率(PCE))を向上させるために設けられる層であり、透明電極とペロブスカイト層(光吸収層)との間に設けられることが好ましい。(正孔)ブロッキング層は、酸化チタン等の金属酸化物からなる層が好ましく、コンパクトTiO2等のn型半導体で透明電極の表面を平滑且つ緻密に覆った層がより好ましい。「緻密」とは、電子輸送層中の金属化合物の充填密度より高密度で金属化合物が充填されていることを意味する。なお、透明電極と電子輸送層とが電気的に接続されなければ、ピンホール、クラック等が存在していてもよい。(正孔)ブロッキング層の膜厚は、例えば、5~300nmである。(正孔)ブロッキング層の膜厚は、電極への電子注入効率の観点より、10~200nmがより好ましい。

【0040】
(正孔)ブロッキング層は上記透明電極上に形成される。金属酸化物を(正孔)ブロッキング層に用いる場合、既知の方法に従って(例えば、J. Phys. D: Appl. Phys. 2008, 41, 102002.等)、スプレーパイロリシスを行うことにより作製できる。例えば、200~550℃(特に300~500℃)に加熱したホットプレート上に置いた透明電極に0.01~0.40M(特に0.02~0.20M)の金属アルコキシド(チタンジ(イソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)等のチタンアルコキシド等)のアルコール溶液(例えばイソプロピルアルコール溶液等)をスプレーで吹き付けて作製できる。

【0041】
その後、得られた基板を、酸化チタン(TiO2等)、チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等)、チタンハロゲン化物(TiCl4等)の水溶液中に浸漬して加熱することで、より緻密な膜とすることもできる。

【0042】
この水溶液の濃度は、10~100mMが好ましく、20~70mMがより好ましい。また、浸漬温度は30~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。さらに、加熱条件は200~1000℃(特に300~700℃)で5~60分(特に10~30分)が好ましい。

【0043】
(2-3)電子輸送層
電子輸送層は、ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ、エネルギー変換効率を向上させるとともに、電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層は、前記(正孔)ブロッキング層の上に形成することが好ましい。

【0044】
電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でも好ましいが、多孔質構造を有していることが好ましい。多孔質構造とは、例えば、粒状体、針状体、チューブ状体、柱状体等が集合して、全体として多孔質な性質を有していることが好ましい。また、細孔サイズはナノスケールが好ましい。多孔質構造を有することにより、ナノスケールであるため、光吸収層の活性表面積を著しく増加させ、太陽電池特性(特にエネルギー変換効率)を向上させるとともに、電子収集に優れる多孔質電子輸送層とすることができる。電子輸送層は、酸化チタン等の金属酸化物からなる層が好ましい。なお、金属化合物が半導体である場合、半導体を使用する場合には、ドナーをドープすることもできる。これにより、電子輸送層がペロブスカイト層(光吸収層)に導入するための窓層となり、且つ、ペロブスカイト層(光吸収層)から得られた電力をより効率よく取り出すことができる。電子輸送層の厚みは、特に制限されず、ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から、10~300nm程度が好ましく、10~250nm程度がより好ましい。

【0045】
電子輸送層は、成形する材料に応じて公知の成膜方法を用いて得ることができる。例えば、(正孔)ブロッキング層の上に、5~50質量%(特に10~40質量%)の酸化チタンペーストのアルコール溶液(例えば(無水)エタノール溶液等)を塗布して作製することができる。酸化チタンペーストは公知又は市販品を用いることができる。塗布の方法は、スピンコート法が好ましい。なお、塗布は例えば15~30℃程度で行うことができ、その後必要に応じて、100~150℃での加熱及び300~800℃での焼結を行うこともできる。

【0046】
(2-4)ペロブスカイト層(光吸収層)
ペロブスカイト型太陽電池におけるペロブスカイト層(光吸収層)は、光を吸収し、励起された電子を移動させることにより、光電変換を行う層である。ペロブスカイト層(光吸収層)は、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物を含む層である。これにより、開放電圧(Voc)を向上させることができる。

【0047】
本発明においては、ロール・トゥ・ロールによる大量生産が実現することができるので、混合液をスピンコート、ディップコート、スクリーン印刷法、ロールコート、ダイコート法、転写印刷法、スプレー法、スリットコート法等、好ましくはスピンコートにより基板上に塗布することが好ましい。

【0048】
前記基板は、成膜する膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基板の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基板であってよく、有機化合物及び無機化合物のいずれも採用し得る。例えば、絶縁体基板、半導体基板、金属基板及び導電性基板(導電性フィルムも含む)のいずれも採用できる。また、これらの表面の一部又は全部の上に、金属膜、半導体膜、導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。

【0049】
前記金属膜の構成金属としては、例えば、ガリウム、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、シリコン、イットリウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属等が挙げられる。半導体膜の構成材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素単体、周期表の第3族~第5族、第13族~第15族の元素を有する化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属窒化物等が挙げられる。また、前記導電性膜の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ二酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)、酸化タングステン(WO3)等が挙げられる。前記絶縁性膜の構成材料としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸窒化シリコン(Si4O5N3)等が挙げられ、絶縁性酸化物からなる絶縁性膜が好ましく、酸化チタン膜がより好ましい。本発明においては、導電性酸化物又は絶縁性酸化物からなる導電性膜が好ましく、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、フッ素ドープ二酸化錫(FTO)、酸化チタン(TiO2)等がより好ましい。

【0050】
前記基板の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状等が挙げられ、多孔質構造体を採用することもできる。本発明においては、板状の基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されず、0.1μm~100mmが好ましく、1μm~10mmがより好ましい。

【0051】
本発明では、上記のとおり、様々な基板の上にペロブスカイト層(光吸収層)を形成することができるが、上記電子輸送層上に形成するのが簡便である。

【0052】
ペロブスカイト層は、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物のみからなる層ともし得るし、本発明の製造方法により得られるハロゲン化スズペロブスカイト化合物と一般式(1)で表される化合物等とを含む層とすることもできる。

【0053】
ペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は、光吸収効率と電子及び正孔拡散長とのバランス及び透明電極で反射した光の吸収効率の観点から、例えば、50~1000nmが好ましく、200~800nmがより好ましい。本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は、本発明の錯体からなる膜の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。

【0054】
ペロブスカイト層の成膜方法は特に制限されない。例えば、上記した前駆体溶液を基板(特に上記電子輸送層)上に塗布し、加熱することで得ることができる。塗布の方法は、スピンコート法が好ましい。この際、本発明では、成膜と同時にハロゲン化スズペロブスカイト化合物を生成することが可能である。

【0055】
成膜時の雰囲気は、ペロブスカイト層(光吸収層)を形成する際に水分の混入を防ぐことにより、再現よく高効率ペロブスカイト型太陽電池を製造できるため、乾燥雰囲気下が好ましく、グローブボックス等の乾燥不活性気体雰囲気下がより好ましい。また、脱水を行い、水分含量が少ない溶媒を用いることが好ましい。

【0056】
(2-5)正孔輸送層
正孔輸送層は、電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には、例えば、導電体、半導体、有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は、ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り、正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。

【0057】
当該導電体及び半導体としては、例えば、CuI、CuInSe2、CuS、CuSCN等の1価銅を含む化合物半導体;GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、1価銅を含む半導体が好ましく、CuIがより好ましい。

【0058】
有機正孔輸送材料としては、例えば、ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、トリフェニルアミン誘導体、フルオレン誘導体等が好ましく、PTAA、spiro-OMeTAD等がより好ましい。

【0059】
正孔輸送層中には、正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li-TFSI)、銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀、NOSbF6、SbCl5、SbF5等の酸化剤を含むこともできる。また、正孔輸送層中には、t-ブチルピリジン(TBP)、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は、従来から通常使用される量とすることができる。

【0060】
正孔輸送層の膜厚は、より効率的に正孔のみを受け取り、より高い正孔移動度を得る観点から、例えば、30~200nmが好ましく、50~100nmがより好ましい。

【0061】
正孔輸送層を成膜する方法は、例えば、乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、有機正孔輸送材料を含む溶液を、乾燥雰囲気下、ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し、30~150℃(特に50~100℃)で加熱することが好ましい。

【0062】
(2-6)金属電極
金属電極は、透明電極に対向配置され、正孔輸送層の上に形成されることで、正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。

【0063】
金属電極としては、当業界で用いられる公知の素材を用いることが可能であり、例えば、白金、チタン、ステンレス、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属又はこれらの合金が挙げられる。

【0064】
これらの中でも金属電極は、乾燥雰囲気下で電極を形成することができる点から、蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。

【0065】
上記層構成以外の構成を有するペロブスカイト型太陽電池についても、同様の方法により、製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1:Cl50
フッ素ドープ二酸化錫(FTO)基板は、Zn粉末及び濃塩酸を用いてパターン化及びエッチングし、次いで、希釈洗剤、アセトン、イソプロピルアルコール、及び蒸留水でそれぞれ15分間洗浄した。
【実施例】
【0068】
次に、FTO基板をUV/O3プラズマエッチングで処理した。洗浄した基板をホットプレート上に移し、450℃に予熱した。チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)75質量%をイソプロパノールに溶解した溶液1mLと、無水エタノール39mLとを混合し、TiO2スプレー溶液を作製した。この溶液をホットプレート上で予熱(450℃)したパターン化基板上にスプレーし、1回のバッチ処理で2回繰り返し、さらに2回のバッチ処理を繰り返した。30分間焼成した後、ホットプレートをオフにすることで自然冷却させた。次いで、基板を40mM TiCl4水溶液に70℃で30分間浸漬し、次いで500℃で20分間焼結し、FTO基板上に緻密TiO2層を形成した。
【実施例】
【0069】
次に、TiO2ナノ粒子ペースト(PST-18NR)を無水エタノールで希釈した。 ペーストとエタノールの比(重量比)は1: 3.5とした。 次に、調製された溶液を緻密TiO2層上にスピンコートした。125℃で30分間加熱した後、基材を炉に移し、500℃で30分間焼結し、多孔質TiO2層(約200nm)を緻密TiO2層上に形成した。
【実施例】
【0070】
次に、1.0mmolのCH(NH2)2I、1.0mmolのSnI2、及び0.5mmolのSnCl2を1.0mLのDMSOに溶解させ、40℃で完全に溶解するまで撹拌し、ろ過することで、1Mの前駆体溶液を作製した。その後、上記で緻密TiO2層及び多孔質TiO2層を形成した基板を、UV/O3プラズマエッチングで処理し、N2を充填したグローブボックスに移した。ペロブスカイト層及び正孔輸送層の製造は、グローブボックス内で順次行った。ペロブスカイト層は、上記の前駆体溶液を多孔質TiO2層上にスピンコートし、65℃で5~15分間、次いで100℃で30分間アニールし、ペロブスカイト層(約500nm)を多孔質TiO2層上に形成した。
【実施例】
【0071】
次に、2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD)をクロロベンゼンに溶解させ、0.059Mの溶液を得た。ここに添加剤として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li-TFSI)をアセトニトリルに溶解させた0.59Mの溶液を、Spiro-OMeTADとLi-TFSIとの含有比(質量比)が56.7:1となるように添加し、撹拌し、ろ過した。得られた溶液をペロブスカイト層上にスピンコートし、70℃で10分間アニールし、正孔輸送層をペロブスカイト層上に形成した。
【実施例】
【0072】
最後に、Au電極(80nm)を正孔輸送層上に熱蒸着することにより、実施例1のペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【実施例】
【0073】
実施例2:Cl30
1.0mmolのCH(NH2)2I、1.0mmolのSnI2、及び0.3mmolのSnCl2を1.0mLのDMSOに溶解させ、40℃で完全に溶解するまで撹拌し、ろ過することで、1Mの前駆体溶液を作製した。得られた溶液をペロブスカイト層の前駆体溶液として使用すること以外は実施例1と同様に、実施例2のペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【実施例】
【0074】
実施例3
1.0mmolのCH(NH2)2Cl、及び1.5mmolのSnI2を1.0mLのDMSOに溶解させ、40℃で完全に溶解するまで撹拌し、ろ過することで、1Mの前駆体溶液を作製した。得られた溶液をペロブスカイト層の前駆体溶液として使用すること以外は実施例1と同様に、実施例3のペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【実施例】
【0075】
比較例1:F20
1.0mmolのCH(NH2)2I、1.0mmolのSnI2、及び0.2mmolのSnF2を1.0mLのDMSOに溶解させ、40℃で完全に溶解するまで撹拌し、ろ過することで、1Mの前駆体溶液を作製した。得られた溶液をペロブスカイト層の前駆体溶液として使用したこと以外は実施例1と同様に、比較例1のペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【実施例】
【0076】
比較例2:F20+トルエンドリッピング
1.0mmolのCH(NH2)2I、1.0mmolのSnI2、及び0.2mmolのSnF2を1.0mLのDMSOに溶解させ、40℃で完全に溶解するまで撹拌し、ろ過することで、1Mの前駆体溶液を作製した。得られた溶液をペロブスカイト層の前駆体溶液として使用し、ペロブスカイト層形成のための加熱前、製膜中の最後数秒ほどでトルエンドリッピング(トルエンを滴下)すること以外は実施例1と同様に、比較例2のペロブスカイト型太陽電池を作製した。
【実施例】
【0077】
X線回折測定
実施例1及び比較例1で得たペロブスカイト層について、X線回折測定を行った。結果を図1に示す。この結果、実施例1及び比較例1のいずれも、ハロゲン化スズペロブスカイト化合物が形成されていることが理解できる。なお、実施例1及び比較例1の試料では、約14°のピークと、約32°のピークの強度比が異なっている。これは、基板上のPreferred orientationが異なる材料が製造されているためと考えられる。
【実施例】
【0078】
SEM観察
実施例1~2及び比較例1で得たペロブスカイト層について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図2~3に示す。この結果、実施例1の試料では大きいグレインで構成されておりエネルギー変換効率が高いことが示唆される。また、実施例2の試料ではグレインの境界に小さい結晶も見られたものの小さい結晶はグレインの境界に集中しており結晶性は高いことが想定される。一方、比較例1の試料では、TiO2上又はグレイン上にランダムに小さい結晶が堆積しており、グレインの境界は不明確であり結晶性はよくないことが想定される。
【実施例】
【0079】
蛍光寿命
実施例2及び比較例1で得た試料の蛍光寿命は、励起光源にSuperContinuum白色光源および可視光バンドパスフィルタ(ともにFianium社)を用いた波長650 nmのレーザー光を使用し、アバランシェ・フォトダイオード(IDQ社)および時間相関単一光計数モジュール(Becker&Hickl社)を用いた検出システムで測定した。この結果、蛍光寿命は、実施例2では6.2nsとなり、比較例1の5.0nsと比較して蛍光寿命を長くすることができた。
【実施例】
【0080】
開放電圧
実施例1及び比較例2の太陽電池の光電変換特性について、JIS C 8913: 1998のシリコン結晶系太陽電池セルの出力測定方法に準拠した方法で測定した。ソーラーシュミレーター(分光計器社製ソーラーシミュレーター OTENTO-SUN-P1G)に、AM 1.5G相当のエアマスフィルターを組み合わせ、2次基準Si 太陽電池で100 mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、ペロブスカイト型太陽電池セルの試験サンプルに光照射をしながら、ソースメーター(Keithley Instruments Inc. 製、2400型汎用ソースメーター)を使用してI-Vカーブ特性を測定し、I-Vカーブ特性測定から得られた開放電圧(Voc)を導出した。
【実施例】
【0081】
この結果、実施例1では開放電圧Vocは0.30V、実施例3では開放電圧Vocは0.26Vであり、比較例2では開放電圧Vocは0.22Vであった。
【実施例】
【0082】
以上の結果から、実施例の太陽電池では、比較例の太陽電池と比較すると蛍光寿命が長く、開放電圧Vocが向上していた。この結果、塗布方法等を最適化することにより緻密且つ平坦な膜とすれば短絡電流密度(Jsc)を高くすることは可能であるため、特に優れたエネルギー変換効率を得ることもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2