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明細書 :ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-034918 (P2019-034918A)
公開日 平成31年3月7日(2019.3.7)
発明の名称または考案の名称 ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物及びその製造方法
国際特許分類 C07C 211/65        (2006.01)
C07F   7/24        (2006.01)
C07F   9/94        (2006.01)
FI C07C 211/65 CSP
C07F 7/24
C07F 9/94
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-158857 (P2017-158857)
出願日 平成29年8月21日(2017.8.21)
発明者または考案者 【氏名】金光 義彦
【氏名】山田 泰裕
【氏名】若宮 淳志
【氏名】保屋野 瑞希
【氏名】明石 涼
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H049
4H050
Fターム 4H006AA01
4H006AA02
4H006AB78
4H006BB20
4H006BC10
4H049VN04
4H049VP01
4H049VQ35
4H049VQ93
4H049VR33
4H049VR51
4H049VU24
4H049VW01
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB78
4H050BB20
4H050BC10
4H050WB14
4H050WB17
4H050WB21
要約 【課題】電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御が可能なハロゲン化金属ペロブスカイト化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1A):
Rn(M1x1M21-x1)mXk (1A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.750≦x1<1.000を示す。]【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1A):
Rn(M1x1M21-x1)mXk (1A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.750≦x1<1.000を示す。]【請求項2】
単結晶材料である、請求項1に記載のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物。
【請求項3】
前記一般式(1A)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、請求項1又は2に記載のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物。
【請求項4】
ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の製造方法であって、
貧溶媒が入った密閉容器内に、前記密閉容器よりも容量が小さく前駆体溶液が入った開放容器を配置し、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を析出させる工程を備え、
前記前駆体溶液は、一般式(2):
RnXk1 (2)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦k1≦1.2を示す。]
で表される化合物と、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物とを含んでいる、製造方法。
【請求項5】
製造されるハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、一般式(1):
Rn(M1xM21-x)mXk (1)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.750≦x≦1.000を示す。]
で表される化合物である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体溶液が、さらに、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物を含んでいる、請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の析出が、20~80℃で行われる、請求項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、高い変換効率、簡便な作製手法から現在最も注目されている太陽電池材料の一つである。この物質の優れた特徴は、極めて高品質で欠陥の少ない試料が溶液プロセスで容易に作製できる点である。さらに、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、欠陥密度が極めて低く、高い発光量子効率を有することとペロブスカイト構造に起因するユニークな性質から、太陽電池に限らず発光・受光素子を含む広範なフォトニクス材料としても応用が期待されている。このハロゲン化金属ペロブスカイト化合物について、さらなる応用展開のためには、不純物置換によるキャリアドーピング技術の確立と、それによる電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御が必要不可欠である。
【0003】
キャリアドーピングは化学的元素置換によって行われることが多い。つまり、価数の異なるイオンを置換することで余剰キャリアを結晶内に導入する手法が用いられる。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物においては、電場印加、光励起等によるself-doping効果が報告されているが、欠陥が起源であるこのようなドーピングは結晶構造が大きく歪められるため、キャリアドーピングによる本質的な物性変化の制御には適していない。したがって、元素置換によるキャリアドーピングが必要であるが、ペロブスカイト型半導体における元素置換とキャリア密度制御とドープした半導体の性質についてはほとんど研究がなされていない。
【0004】
元素置換によるキャリアドーピングの数少ない例としては、例えば、非特許文献1では、単結晶を作製する手法の一つである逆温度法を用い、出発材料(CH3NH3Br及びPbBr2)にBiBr3を加えることで、CH3NH3PbBr3単結晶への電子ドーピングが可能となることを報告している。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】J. Phys. Chem. Lett., 2016, 7 (2), pp. 295-301.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の方法では、平坦な結晶面を有し結晶性の高い高品質単結晶の育成は困難であり、特に表面にfacetの出た高品質な単結晶材料の作製は困難であった。また、Bi置換による電子ドーピングが報告されたのはCH3NH3PbBr3単結晶のみであり、これまでにCH3NH3PbI3単結晶への電子ドーピングは報告されていない。加えて、従来の逆温度法では、溶解度の下がる高温に溶液を加熱することが必要であるが、50℃付近に構造相転移を有するCH3NH3PbI3では、作製した単結晶を室温に戻す際に結晶内部に相境界が発生してしまい、試料の均一性に問題が発生する。
【0007】
本発明は、電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御が可能なハロゲン化金属ペロブスカイト化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、特定の構造を有するハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、表面にfacetの出た高品質な単結晶材料であるとともに、電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御が可能であることを見出した。このハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、例えば、貧溶媒が入った密閉容器内に、前記密閉容器よりも容量が小さく前駆体溶液が入った開放容器を配置して加熱する方法により製造することができる。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.一般式(1A):
Rn(M1x1M21-x1)mXk (1A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.750≦x1<1.000を示す。]項2.単結晶材料である、項1に記載のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物。
項3.前記一般式(1A)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、項1又は2に記載のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物。
項4.ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の製造方法であって、
貧溶媒が入った密閉容器内に、前記密閉容器よりも容量が小さく前駆体溶液が入った開放容器を配置し、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を析出させる工程を備え、
前記前駆体溶液は、一般式(2):
RnXk1 (2)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦k1≦1.2を示す。]
で表される化合物と、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物とを含んでいる、製造方法。
項5.製造されるハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、一般式(1):
Rn(M1xM21-x)mXk (1)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.750≦x≦1.000を示す。]
で表される化合物である、項4に記載の製造方法。
項6.前記一般式(1)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、項5に記載の製造方法。
項7.前記前駆体溶液が、さらに、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物を含んでいる、項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の析出が、20~80℃で行われる、項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面にfacetの出た高品質な単結晶材料であるとともに、電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御が可能であるハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a) Biドープされた単結晶材料の外観の写真である。(b) 前駆体溶液中のBi/Pb比と、実施例で作製された単結晶材料のBi/Pb比(ICP元素分析)との相関を示すグラフである。(c) 得られた単結晶材料のXRD測定の結果である。青線はBiドープされていない結晶。赤線は5mol%Biドープされた試料である。(d) 4端子法による電気伝導度測定の結果を示すグラフである。
【図2】BiBr3の仕込み濃度を5mol%(結晶中のBi/Pb比は0.09mol%)とした試料のホール測定の結果を示すグラフである。
【図3】(a) Bi濃度の異なる単結晶材料における反射及び吸収スペクトルである。(b) Bi濃度の異なる単結晶材料における発光スペクトルである。
【図4】発光強度、スペクトル幅、ピークエネルギーのBiドープ量依存性を示す。
【図5】(a) Bi濃度が0mol%及び0.5mol%の単結晶材料の時間分解発光スペクトルを示す。(b) Bi濃度の異なる単結晶材料の発光強度の時間減衰の挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。

【0012】
1.ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物
本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、一般式(1A):
Rn(M1x1M21-x1)mXk (1A)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。M1は同一又は異なって、周期表第14族の遷移金属を示す。M2は同一又は異なって、1価又は3価の遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦m≦1.2、2.8≦k≦3.2、0.75≦x1<1.00を示す。]
【0013】
一般式(1A)において、Rは1価のカチオンであり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)等が挙げられる。R1及びR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等のC1-4アルキル基が好ましい。なかでも、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、メチル基が好ましい。

【0014】
上記R1及びR2としては、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、R1はメチル基が好ましく、R2は水素原子が好ましい。つまり、Rとしては、-CH3NH3+又は-CH(NH2)2+であることが好ましい。

【0015】
なお、Rで示される1価のカチオンとしては、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0016】
一般式(1A)において、M1は、Bサイトを構成する金属カチオンを意味する。このM1で示される遷移金属は、周期表第14族の遷移金属であり、例えば、Pb、Sn等が挙げられる。これらの遷移金属は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0017】
一方、一般式(1A)において、M2は、Bサイトを構成する金属カチオンであり、上記M1に対してドープされる金属カチオンを意味する。このM2で示される遷移金属は、1価又は3価の遷移金属であり、例えば、In、Tl等の周期表第13族の遷移金属;Sb、Bi等の周期表第15族の遷移金属;Ag等が挙げられる。これらの遷移金属は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0018】
一般式(1)において、Xで示されるハロゲン原子としては、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、臭素原子、塩素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。特に、全てが臭素原子であることが好ましい。これらのハロゲン原子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0019】
一般式(1A)において、nは0.8~1.2であり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0020】
一般式(1A)において、mは0.8~1.2であり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0021】
一般式(1A)において、kは2.8~3.2であり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、2.9~3.1が好ましい。

【0022】
一般式(1A)において、x1は0.750以上1.000未満であり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすいとともに電気伝導度等の電気的・光学的特性の制御より容易である観点から、0.900~0.999が好ましい。なお、本発明によれば、x1の数値によっては結晶構造は変化しない。つまり、ドープ元素が含まれる量によって結晶構造は左右されない。

【0023】
このような条件を満たすハロゲン化金属ペロブスカイト化合物としては、例えば、CH3NH3(Pbx1Bi1-x1)Br3、CH3NH3(Pbx1Sb1-x1)Br3、CH3NH3(Pbx1In1-x1)Br3、CH3NH3(Pbx1Tl1-x1)Br3、CH3NH3(Snx1Bi1-x1)Br3、CH3NH3(Snx1Sb1-x1)Br3、CH3NH3(Snx1In1-x1)Br3、CH3NH3(Snx1Tl1-x1)Br3、CH3NH3(Pbx1Bi1-x1)I3、CH3NH3(Pbx1Sb1-x1)I3、CH3NH3(Pbx1In1-x1)I3、CH3NH3(Pbx1Tl1-x1)I3、CH3NH3(Snx1Bi1-x1)I3、CH3NH3(Snx1Sb1-x1)I3、CH3NH3(Snx1In1-x1)I3、CH3NH3(Snx1Tl1-x1)I3、CH3NH3(Pbx1Bi1-x1)Cl3、CH3NH3(Pbx1Sb1-x1)Cl3、CH3NH3(Pbx1In1-x1)Cl3、CH3NH3(Pbx1Tl1-x1)Cl3、CH3NH3(Snx1Bi1-x1)Cl3、CH3NH3(Snx1Sb1-x1)Cl3、CH3NH3(Snx1In1-x1)Cl3、CH3NH3(Snx1Tl1-x1)Cl3等が好適に使用でき、特に後述の実施例に示すハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が好ましい。これらのハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0024】
本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、1価又は3価の遷移金属が含まれているが、1価又は3価の遷移金属が含まれていない材料と比較しても、結晶構造はほとんど変化せず、バンドギャップもほとんど変化しない。

【0025】
このような本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、1価又は3価の遷移金属をドープしていない材料と比較すると、電気伝導度を5倍以上、特に10~100000倍とすることが可能であり、特に、100~50000倍も向上させることも可能である。なお、電気伝導度は、後述の実施例のように、4端子法により測定する。

【0026】
本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、1価又は3価の遷移金属が含まれていることにより、n型(3価の場合)又はp型(1価の場合)の半導体としての挙動を示すことが可能である。

【0027】
このような本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、例えば後述の製造方法により製造することで、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料とすることが可能である。本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、従来は困難であった、ドープ元素を導入しつつ表面にfacetが出た平坦な単結晶材料とすることも可能であるため、フォトニクス材料応用など、多様な用途に適用できる。

【0028】
2.ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の製造方法
本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の製造方法は、貧溶媒が入った密閉容器内に、前記密閉容器よりも容量が小さく前駆体溶液が入った開放容器を配置し、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を析出させる工程を備え、
前記前駆体溶液は、一般式(2):
RnXk1 (2)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦k1≦1.2を示す。]
で表される化合物と、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物とを含んでいる。

【0029】
本発明の製造方法として、出発物質として使用する前駆体溶液は、一般式(2):
RnXk1 (2)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。0.8≦n≦1.2、0.8≦k1≦1.2を示す。]
で表される化合物と、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物とを含んでいる。

【0030】
一般式(2)において、R、X及びnは前記に同じである。好ましい具体例も同様である。

【0031】
一般式(2)において、k1は0.8~1.2であり、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすい観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0032】
このような一般式(2)で表される化合物としては、例えば、CH3NH3Br、CH3NH3I、CH3NH3Cl等が挙げられ、公知又は市販品を使用することができる。これらの一般式(2)で表される化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0033】
周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物としては、一般式(3):
M1m1Xk2 (3)
[式中、M1及びXは前記に同じである。0.8≦m1≦1.2、1.8≦k2≦2.2を示す。]
で表される化合物が好ましく、例えば、PbBr2、SnBr2、PbI2、SnI2、PbCl2、SnCl2等が挙げられ、公知又は市販品を使用することができる。これらの周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0034】
周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物の使用量は、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすい観点から、一般式(2)で表される化合物1モルに対して、0.3~2.0モルが好ましく、0.5~1.5モルがより好ましい。

【0035】
上記のように、一般式(2)で表される化合物と周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物のみを溶質として含む前駆体溶液を使用した場合は、一般式(1B):
RnM1mXk (1B)
[式中、R、M1、X、n、m及びkは前記に同じである。]
で表される、ドープ元素の存在しないハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を得ることができる。

【0036】
一方、前駆体溶液には、上記成分以外にも、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物を含ませることも可能である。これにより、ドープ元素としてM2を含む、上記一般式(1A)で表される本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物を得ることも可能である。

【0037】
なお、本発明で製造できる上記一般式(1A)で表される本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物と一般式(1B)で表される本発明のハロゲン化金属ペロブスカイト化合物をまとめて、本発明の製造方法により、一般式(1):
Rn(M1xM21-x)mXk (1)
[式中、R、M1、M2、X、n、m、k及びxは前記に同じである。]
で表される化合物を製造することが可能である。

【0038】
使用できる1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物としては、一般式(4):
M2m2Xk3 (4)
[式中、M2及びXは前記に同じである。0.8≦m2≦1.2、0.8≦k3≦3.2を示す。]
で表される化合物が好ましく、例えば、InBr3、SbBr3、TlBr、BiBr3、InI3、SbI3、TlI、BiI3、InCl3、SbCl3、TlCl、BiCl3、AgBr、AgI、AgCl等が挙げられ、公知又は市販品を使用することができる。これらの1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0039】
1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物の使用量は、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすい観点から、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物1モルに対して、0.05~100モルが好ましく、0.1~10モルがより好ましい。なお、本発明の製造方法によれば、得られるハロゲン化金属ペロブスカイト化合物単結晶中のドープ元素濃度(1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物/周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物)は、前駆体溶液中のドープ元素濃度(1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物/周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物)と比較すると約1/50程度になる傾向が見られる。このため、得ようとするハロゲン化金属ペロブスカイト化合物単結晶のドープ元素濃度に応じて、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物の使用量を決定することが好ましい。

【0040】
本発明において、前駆体溶液に使用する溶媒としては、上記した一般式(2)で表される化合物、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物等を溶解させることが可能な溶媒であれば特に制限はないが、極性溶媒が好ましく、ケトン、アミド、スルホキシド等の構造を有し沸点が150~250℃程度の溶媒がより好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、テトラヒドロチオフェン1,1-オキシド、テトラメチレンスルホキシド、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチレンスルホキシド、エチルシアノアセテート、アセチルアセトン、3-メトキシN,N-ジメチルプロパンアミド、N,N'-ジメチルエチレンウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、2-アセチルシクロヘキサノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3,4-ジヒドロ-1(2H)-ナフタレノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ピリジン、シクロオクタノン等が挙げられる。なかでも、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすい観点から、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン等が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)がより好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることができる。なお、これらの溶媒の使用量は、溶媒量とすることが好ましい。

【0041】
本発明の製造方法では、貧溶媒が入った密閉容器内に、前記密閉容器よりも容量が小さく上記前駆体溶液が入った開放容器を配置する。

【0042】
この際使用する貧溶媒としては、上記した一般式(2)で表される化合物、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物等を溶解しない溶媒が好ましい。具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム等の置換脂肪族炭化水素;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の置換芳香族炭化水素;酢酸、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;ヘキサン等の長鎖炭化水素(特にC4-10炭化水素);アセトニトリル等が挙げられる。なかでも、表面にfacetが出た平坦な単結晶材料が得やすい観点から、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。これらの溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることができる。なお、これらの溶媒の使用量は、上記前駆体溶液の溶媒に対して過剰量とすることが好ましい。

【0043】
このような構成を採用することで、貧溶媒が蒸発し、開放容器中に存在する前駆体溶液の溶媒と混ざる。この際、貧溶媒は、上記した一般式(2)で表される化合物、周期表第14族の遷移金属のハロゲン化物、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物等を溶解しないため、これらの化合物の溶解度が低下する。その結果として、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の単結晶が析出する。この際、前駆体溶液中に1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物が含まれていれば、ドープ元素が含まれた状態で、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の単結晶が析出する。なお、本発明の製造方法によれば、1価又は3価の遷移金属のハロゲン化物の有無にかかわらず、得られるハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の結晶構造に違いはない。このため、本発明の製造方法によれば、結晶構造を変えることなく、ドープ元素として1価又は3価の遷移金属を導入しつつ表面にfacetを有するハロゲン化金属ペロブスカイト化合物も製造することが可能である。この際、上記析出反応を進行させるため、当該析出反応は、20~80℃で行われることが好ましく、40~50℃で行われることがより好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
単結晶の作製
BiドープCH3NH3PbBr3単結晶をアンチソルベント法によって作製した。PbBr2、CH3NH3Br及びBiBr3をジメチルホルムアミド(DMF; 2mL)に溶解させ(モル比1: 1: n、 モル濃度: 1M)、小ビン(開放容器)に入れた。この小ビンを25mLのトルエンを入れた大ビン(密閉容器)の中に置き、大ビンのフタを固く締め、ホットプレートで50℃に加熱した。96時間後、いずれの場合も、結晶面(facet)の出た数mm角の立方体状の単結晶が小ビンの中に析出した。BiBr3の濃度nは、PbBr2に対して0~5mol%の範囲で変化させ、異なるBi濃度の試料を作製した。なお、Biドープされていない単結晶についてもBiI3を添加しないこと以外は同様に作製した。
【実施例】
【0046】
試料の作製
光透過測定及び電気伝導測定のため、得られた単結晶を厚み100μm程度の立方体状となるまで削った。両面をラッピングフィルムで研磨したのち、SiO2基板上にパラフィンを用いて固定した。
【実施例】
【0047】
光学測定
分光光度計で、光吸収、反射スペクトル等の基本的な光学測定を行った。顕微鏡観察とデジマチック厚さ計を組合せて、結晶の厚さを慎重に評価した。発光スペクトルの測定には、CCD分光器と、励起光源として440nmレーザーパルス(78MHz繰り返し率)を使用した。時間分解発光スペクトルは、ストリークカメラ及び波長可変フェムト秒レーザーによって収集した。全ての測定は室温で行った。
【実施例】
【0048】
電気伝導度及びホール測定
電気伝導度は、標準的なvan der Pauw法によって測定した。4つの電極(NiCr/Au)を結晶の四隅に堆積させた。ホール測定も1Tまでの磁界下で行った。5%ドープした試料では、電子密度と移動度はそれぞれ2.28×1012cm-3及び48cm2V-1s-1と推定した。
【実施例】
【0049】
単結晶材料の評価
上記方法で得られた単結晶材料は、図1(a)に示されるように、Bi濃度の増加とともに結晶の色は橙色から濃い赤色に変化した。ICP元素分析により、前駆体溶液のBi/Pb比と比較して、得られた単結晶結晶中のBi/Pb比は1/50程度と極めて小さいものの、前駆体溶液中と単結晶材料中のBi/Pb比は比例関係にあり、最大で約0.09mol%のBiが結晶中に存在していた(図1(b))。このため、前駆体溶液中のBi/Pb比を調整することにより、所望のBi/Pb比の単結晶材料を得ることが可能である。以下では、前駆体溶液中でのBi/Pb比を使って、試料を表している。また、XRD測定では、Biドープされていない試料(青線)とBiドープされた試料(赤線)とではほとんど同じ結晶構造が見られ、Biドーピングによる結晶構造の変化は全く見られなかった(図1(c))。
【実施例】
【0050】
次に、吸収スペクトルや電気伝導度測定のため、単結晶材料を厚み100μm程度に薄くし、ラッピングフィルムを使って表面を研磨した。電気伝導度測定により、Biドープ量が増大するにしたがって電気伝導度も向上し、前駆体溶液中のBi/Pb比の1.8乗に比例することが分かった(図1(d))。
【実施例】
【0051】
また、BiI3の仕込み濃度を5mol%(結晶中のBi/Pb比は0.09mol%)とした試料のホール測定の結果(図2)から、キャリアは電子であることが確認された。このことから、Biドープによってn型半導体の性質を示すようになり、キャリアドーピングに成功したと結論できる。
【実施例】
【0052】
図3(a)にBi濃度の異なる単結晶材料における反射及び吸収スペクトルを示す。この結果、Biドープされていない試料の場合、吸収スペクトルは、2.21 eV付近で立ち上がっている。この立ち上がりはバンド間光吸収に由来するものである。薄膜での報告によれば、バンドギャップエネルギーは約2.3eVである。BiドープされていないCH3NH3PbBr3単結晶は欠陥の少ない高品質な単結晶が容易に作製でき、結晶構造の乱れに起因するUrbach tailは極めて小さい。一方、Biドープ量を増やすにつれて低エネルギー側への裾が現れ、吸収端が緩やかになるとともに、結晶の不均一性増大によりUrbach tailが見受けられた。
【実施例】
【0053】
一方、得られた単結晶材料は、反射スペクトルは2.32 eV付近にブロードなピークを有していた。一般に、反射スペクトルのピークとバンドギャップエネルギーは近い位置にあることが知られている。吸収スペクトルとは異なり、いずれのBi濃度においても、同じ位置にピークが見られ、ピークエネルギーはBi濃度に依存しなかった。このことから、バンドギャップエネルギーはBiドーピングで変化しないことが分かる。吸収スペクトルの結果と合わせて考えると、Biドーピングはバンドギャップエネルギーを変化させず、結晶性の乱れに由来したUrbach tailの増大が光吸収スペクトルの立ち上がりエネルギーを低エネルギーシフトさせたと考えることができる。
【実施例】
【0054】
次に、発光スペクトルを測定した。励起光のエネルギーは2.58 eVであった。図3(b)に示すように、Biドープされていない試料の発光スペクトルは、2.27eV付近にピークを持ち、Biドーピングによって高エネルギー側にシフトし、BiI3の仕込み濃度を5mol%(結晶中のBi/Pb比は0.09mol%)とした試料では、ピークエネルギーは2.35eV付近に観測された。このことから、発光ピークエネルギーは、Biドープによりバンドギャップエネルギーに近づく、つまり、ストークスシフトが減少することが理解できる。図4に発光強度、スペクトル幅、ピークエネルギーのBiドープ量依存性を示す。発光スペクトル幅及びUrbachエネルギーはBiドープ量とともに増大した。一方、発光強度はBiドープ量とともに急激に減少した。また、ピークエネルギーはBiドープ量とともに増大し、前駆体溶液中のBi/Pb比が2mol%の場合に約2.34eVに達した。
【実施例】
【0055】
このような発光ピークシフトの起源を明らかにするため、時間分解発光スペクトルを測定した。図5(a)にBiドープされていない単結晶材料及びBiI3の仕込み濃度を0.5mol%(結晶中のBi/Pb比は0.01mol%)とした単結晶材料の時間分解発光スペクトルを示す。Biドープされていない単結晶材料では、励起直後は2.33 eV付近にピークを持ち、時間とともに発光スペクトルは低エネルギー側にシフトした。このようなピークシフトはフォトンリサイクリング効果(発光再吸収)によって説明できる。つまり、試料表面付近で励起された光キャリアは、励起直後には表面付近からのみ発光するため、この時には本来の発光スペクトルが観測される。一方で、時間とともに光キャリアは試料の内部に拡散するが、内部からの発光は小さいストークスシフトのために高エネルギー側が強く吸収されて、発光ピークは低エネルギー側にシフトする。
【実施例】
【0056】
Biドープされた試料の場合にも、励起直後には、Biドープされていない試料と同様に2.33eV付近に発光ピークが現れたが、時間が経過してもほとんどピークシフトは起こらなかった。これは、Biドープされていない試料で見られたフォトンリサイクリング効果が強く抑制されていることを意味している。図5(b)に積分発光強度の時間減衰を示す。このように発光寿命はBiドープによって短くなる傾向が見られる。
【実施例】
【0057】
以上のことから、Biドープ量により光学特性を制御することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4