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明細書 :樹脂改質剤、及び樹脂組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-077753 (P2019-077753A)
公開日 令和元年5月23日(2019.5.23)
発明の名称または考案の名称 樹脂改質剤、及び樹脂組成物
国際特許分類 C08K   9/04        (2006.01)
C08L   1/02        (2006.01)
C08L 101/12        (2006.01)
FI C08K 9/04
C08L 1/02
C08L 101/12
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-203885 (P2017-203885)
出願日 平成29年10月20日(2017.10.20)
発明者または考案者 【氏名】岡田 きよみ
【氏名】長嶺 信輔
【氏名】大嶋 正裕
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100124431、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 順也
【識別番号】100174160、【弁理士】、【氏名又は名称】水谷 馨也
【識別番号】100175651、【弁理士】、【氏名又は名称】迫田 恭子
審査請求 未請求
テーマコード 4J002
Fターム 4J002AA001
4J002AA011
4J002AA021
4J002AB012
4J002AB022
4J002AB032
4J002AC011
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BC061
4J002BD041
4J002BD101
4J002BD141
4J002BD151
4J002BE021
4J002BF021
4J002BF051
4J002BG011
4J002BG061
4J002BN151
4J002CB001
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
4J002CE003
4J002CF031
4J002CF061
4J002CF161
4J002CF181
4J002CF211
4J002CG011
4J002CH071
4J002CH091
4J002CK021
4J002CL011
4J002CL031
4J002CM041
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP031
4J002FB262
4J002FD012
4J002FD062
4J002FD203
要約 【課題】本発明の目的は、樹脂に対する接着性及び分散性が良好で、樹脂に優れた機械的強度及び耐熱性を付与できる樹脂改質剤を提供することである。
【解決手段】セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との複合体を含む、樹脂改質剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との複合体を含む、樹脂改質剤。
【請求項2】
前記セルロース繊維がセルロースナノファーバーである、請求項1に記載の、樹脂改質剤。
【請求項3】
前記セルロース繊維100質量部当たり、前記ポリドーパミン及び/又はその誘導体が0.2~20質量部含まれる、請求項1又は2に記載の樹脂改質剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の樹脂改質剤、及び樹脂を含有する、樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が疎水性樹脂である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂改質剤が0.5~45質量%含まれる、請求項4又は5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された、樹脂成形体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂に対する接着性及び分散性が良好で、樹脂に優れた機械的強度及び耐熱性を付与できる樹脂改質剤に関する。また、本発明は、当該樹脂改質剤を含む、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形体の機械的強度の向上や耐熱性の付与等を目的として、樹脂の改質剤(補強材)として、セルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が利用されている。特に、セルロース繊維は、高弾性率、軽量、低線熱膨張性等の利点があり、更に、カーボンニュートラルな素材としてバイオマスの有効利用にもなるため、樹脂の改質剤として注目されている。しかしながら、セルロース繊維は親水性を示すのに対し、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂は疎水性(親水性基を有していない)であるため、セルロース繊維は、これらの樹脂に対する接着性や分散性が悪く、十分な機械的強度や耐熱性を付与できないという欠点がある。
【0003】
そこで、従来、セルロース繊維を改質することにより、樹脂との親和性を高める手法が提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂親和性セグメントA及びセルロース親和性セグメントBを有するブロック共重合体又はグラジエント共重合体からなる分散剤と、セルロースとを併用することによって、樹脂に対するセルロースの分散性を向上できることが開示されている。また、特許文献2には、水酸基の一部を脂環式炭化水素基又は脂環式炭化水素基に置換した変性ナノセルロースは、界面での接着性が高く、樹脂の補強に好適に使用し得ることが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、2つの異なるセグメントを有する共重合体が必要とされており、当該共重合体の製造コストが高いという欠点がある。また、特許文献1の技術では、使用する樹脂の種類に応じて、樹脂親和性セグメントAの設計が必要とされるため、汎用性の点でも欠点がある。一方、特許文献2の技術では、セルロースの水酸基に疎水性基を置換することによって樹脂との親和性を高めているが、疎水性樹脂に添加する場合には、当該疎水性基の置換度を高める必要があり、その結果、変性セルロースの結晶性が低くなり、十分な機械的強度を具備できなくなることがある。
【0005】
一方、ドーパミンは、材料表面に付着して酸化重合するとポリドーパミンの膜を形成することが知られており、様々な材料の表面コーティングに利用されている。しかしながら、従来、ポリドーパミンを樹脂の改質剤として利用する技術については報告されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-162880号公報
【特許文献2】特開2014-148629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、樹脂に対する接着性及び分散性が良好で、樹脂に優れた機械的強度及び耐熱性を付与できる樹脂改質剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該樹脂改質剤を含む樹脂組成物及び樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、セルロースをポリドーパミン及び/又はその誘導体と複合化した複合体は、樹脂に対する接着性及び分散性が良好で、樹脂に優れた機械的強度及び耐熱性を付与できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との複合体を含む、樹脂改質剤。
項2. 前記セルロース繊維がセルロースナノファーバーである、項1に記載の、樹脂改質剤。
項3. 前記セルロース繊維100質量部当たり、前記ポリドーパミン及び/又はその誘導体が0.2~20質量部含まれる、項1又は2に記載の樹脂改質剤。
項4. 項1~3のいずれかに記載の樹脂改質剤、及び樹脂を含有する、樹脂組成物。
項5. 前記樹脂が疎水性樹脂である、項4に記載の樹脂組成物。
項6. 前記樹脂改質剤が0.5~45質量%含まれる、項4又は5に記載の樹脂組成物。
項7. 項4~6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて成形された、樹脂成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂改質剤は、樹脂に対する分散性及び接着性が良好であり、樹脂の機械的強度や耐熱性を効果的に向上させることができる。特に、本発明の樹脂改質剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の疎水性樹脂(親水性基を有していない樹脂)に対しても、良好な分散性を示すので、樹脂の選択性がなく、汎用性の点でも優れている。また、本発明の樹脂改質剤は、溶媒中でセルロース繊維にドーパミン及び/又はその誘導体を共存させることによって得られるので、製造コストを抑えて、簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体を含む樹脂成形体、及びセルロースナノファイバーを含む樹脂成形体について、引張試験を行い、最大応力を測定した結果を示す図である。
【図2】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体、及びセルロースナノファイバーについて、熱重量測定を行い、質量変化を測定した結果を示す図である。
【図3】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体を含む樹脂組成物、及びセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物について、熱重量測定を行い、質量変化を測定した結果を示す図である。
【図4】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体を含む樹脂成形体、及びセルロースナノファイバーを含む樹脂成形体について、表面を偏光顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図5】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体を含む樹脂成形体、及びセルロースナノファイバーを含む樹脂成形体について、断面をフーリエ変換赤外分光光度計にて観察した結果を示す図である。
【図6】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体、及びセルロースナノファイバーについて、ポリプロピレンに対する接着性を評価した結果を示す図である。
【図7】セルロースナノファイバーとポリドーパミンの複合体、及びセルロースナノファイバーについて、ポリエチレンテレフタレートに対する接着性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.樹脂改質剤
本発明の樹脂改質剤は、セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との複合体を含むことを特徴とする。以下、本発明の樹脂改質剤について、詳述する。

【0013】
[セルロース繊維]
本発明で使用されるセルロース繊維の由来については、特に制限されないが、例えば、植物由来のセルロース繊維、動物由来のセルロース繊維、微生物由来のセルロース繊維、化学的に合成されたセルロース繊維、古紙由来のセルロース繊維等が挙げられる。

【0014】
植物由来のセルロース繊維としては、具体的には、木材繊維(例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等)、竹繊維、サトウキビ繊維、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、種子毛繊維(例えば、コットンリンター、カポック、ボンバックス綿等)、葉繊維(例えば、ニュージーランド麻、マニラ麻等)等のパルプが挙げられる。

【0015】
動物由来のセルロース繊維としては、具体的には、ホヤセルロース等が挙げられる。

【0016】
微生物由来のセルロース繊維としては、具体的には、酢酸菌等の微生物によって産生されたバクテリアセルロースが挙げられる。

【0017】
化学的に合成されたセルロース繊維としては、具体的には、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等のセルロースの無機酸エステル;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;レーヨン、セロファン等の再生セルロース等が挙げられる。

【0018】
これらのセルロース繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0019】
また、セルロース繊維として、パルプを用いる場合、砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプ等の機械的方法で得られたパルプであってもよく、またクラフトパルプ、亜硫酸パルプ等の化学的方法で得られたパルプであってもよい。また、パルプは、必要に応じ、脱リグニン処理、漂白処理等に供され、リグニン量が調整されたものであってもよい。

【0020】
本発明で使用されるセルロース繊維の繊維径及び繊維長については、特に制限されないが、ナノメータサイズに微細化されているナノセルロースが好ましい。ナノセルロースとして、具体的には、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、好ましくはセルロースナノファイバーが挙げられる。

【0021】
セルロースナノファイバーとは、セルロース繊維(例えば、パルプ等)を、その繊維をナノサイズレベルまで解繊処理したセルロース繊維であり、平均繊維径が4nm~400nm程度であり、平均繊維長が5μm程度以上である。本発明で使用されるセルロースナノファイバーの平均繊維径として、好ましくは10~400nmが挙げられる。また、本発明で使用されるセルロースナノファイバーの平均繊維長として、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20~数千μm、50~1500μmが挙げられる。

【0022】
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維を解繊処理に供することによって得ることができる。解繊処理としては、例えば、セルロース繊維の水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、混練機(押出機)、ビーズミル等を用いて、機械的な摩砕ないし叩解することにより行うことができる。

【0023】
セルロースナノクリスタルとは、セルロース繊維を酸加水分解等の化学的処理を施すことによって得られる結晶であり、平均結晶幅4~70nm程度、平均結晶長25~3000nm程度の結晶である。

【0024】
セルロースナノクリスタルは、セルロース繊維の水懸濁液又はスラリーを、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸等の酸を用いた酸加水分解等の化学的処理に供することにより得ることができる。

【0025】
なお、本明細書において、セルロース繊維の平均繊維径(平均結晶径)及び平均繊維長(平均結晶長)は、電子顕微鏡にて少なくとも50本以上のセルロースナノファイバーの繊維径(結晶径)及び繊維長(結晶長)を測定し、平均値を算出することによって求められる値である。

【0026】
[ポリドーパミン及び/又はその誘導体]
ポリドーパミンとは、ドーパミンが酸化重合したポリマーである。

【0027】
ポリドーパミンの誘導体とは、ドーパミンの誘導体が酸化重合したポリマーである。ドーパミンの誘導体とは、ドーパミンに置換基が導入されている化合物である。本発明で使用されるポリドーパミンの誘導体として、例えば、下記一般式(1)に示すドーパミンの誘導体が酸化重合したポリマーが挙げられる。
【化1】
JP2019077753A_000002t.gif

【0028】
一般式(1)中、Xは、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシル基、ハロゲン原子、重合開始基、糖鎖、又は色素を示す。また、一般式(1)中、Yは、水素原子、水酸基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシル基、ハロゲン原子、重合開始基、糖鎖、又は色素を示す。但し、一般式(1)において、X及びYが共に水素原子になることはない。

【0029】
また、ポリドーパミン及び/又はその誘導体の形成に使用されるドーパミン及び/又はその誘導体は、酸化重合が可能であることを限度として、塩酸塩等の塩の形態であってもよい。

【0030】
本発明において、ポリドーパミン及びその誘導体の中から1種のポリマーを選択して単独で使用してもよく、また2種以上のポリマーを組み合わせて使用してもよい。ポリドーパミン及びその誘導体の中でも、好ましくはポリドーパミンが挙げられる。

【0031】
[セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との複合体]
本発明の樹脂改質剤は、セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体とを複合化させた複合体(以下、「CF/PDM複合体」と表記することもある)を使用する。セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体とを複合化させることにより、樹脂と混合した際の樹脂に対する接着性及び分散性が向上し、その結果、優れた機械的強度及び耐熱性を樹脂に具備させることが可能になる。

【0032】
CF/PDM複合体は、セルロース繊維上でドーパミン及び/又はその誘導体を酸化重合させることによって得られるものであり、セルロース繊維上にポリドーパミン及び/又はその誘導体が被覆した状態になっていると考えられる。また、セルロース繊維上でドーパミン及び/又はその誘導体を酸化重合させる際に、セルロース繊維が微細化して嵩高くなる。このようなセルロース繊維の嵩密度の低下が、CF/PDM複合体の樹脂への分散性が良好になる一因になっていると考えられる。

【0033】
CF/PDM複合体において、セルロース繊維とポリドーパミン及び/又はその誘導体との比率については、特に制限されないが、例えば、セルロース繊維100質量部当たり、ポリドーパミン及び/又はその誘導体が0.2~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、更に好ましくは0.5~8質量部、特に好ましくは1~4質量部となる比率が挙げられる。このような比率は、CF/PDM複合体を形成する際の条件(セルロース繊維とドーパミン及び/又はその誘導体との比率、反応温度、反応時間等)を適宜設定することによって充足させることができる。

【0034】
CF/PDM複合体は、セルロース繊維を分散させた溶媒に、ドーパミン及び/又はその誘導体を添加し、セルロース繊維上でドーパミン及び/又はその誘導体を酸化重合させることによって形成することができる。

【0035】
セルロース繊維を分散させる溶媒の種類については、セルロース繊維の分散が可能であり、且つドーパミン及び/又はその誘導体の酸化重合が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、水、含水アルコール等の水性溶媒が挙げられる。また、当該溶媒には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、各種ラテックスや樹脂エマルジョンが含まれていてもよい。

【0036】
溶媒に分散させるセルロース繊維の濃度については、特に制限されないが、例えば、0.1~10質量%程度、好ましくは0.2~8質量%程度が挙げられる。

【0037】
また、添加するドーパミン及び/又はその誘導体の量については、特に制限されないが、例えば、溶媒に分散しているセルロース繊維の総量100質量部当たり、ドーパミン及び/又はその誘導体が0.3~30質量部、好ましくは0.5~20質量部となる量が挙げられる。

【0038】
ドーパミン及び/又はその誘導体の酸化重合は、pH7.5以上で進行するため、CF/PDM複合体の形成に使用される溶媒は、pHを7.5以上、好ましくは7.5~9.5、更に好ましくは8~9付近に調整すればよい。このようなpHの調整は、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ剤を使用することによって行うことができる。また、各種緩衝剤を使用して、pHを前記範囲に調整してもよい。

【0039】
CF/PDM複合体を形成させる際の反応温度については、ドーパミン及び/又はその誘導体の酸化重合が進行できる範囲で、複合化させるポリドーパミン及び/又はその誘導体の量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば10~60℃、好ましくは20~50℃、が挙げられる。

【0040】
CF/PDM複合体を形成させる際の反応時間については、複合化させるポリドーパミン及び/又はその誘導体の量、反応温度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば2~48時間、好ましくは4~30時間時間が挙げられる。

【0041】
斯くしてCF/PDM複合体を形成させた後に、濾過、遠心分離等の固液分離手段によって固形分を回収することによりCF/PDM複合体を得ることができる。また、得られたCF/PDM複合体は、必要に応じて、エタノール、水、これらの混合溶媒を用いて洗浄してもよい。

【0042】
得られたCF/PDM複合体は、乾燥した後に、必要に応じて粉砕して、樹脂改質剤として使用される。

【0043】
[用途]
本発明の樹脂改質剤は、樹脂の機械的強度や耐熱性を向上させるために、樹脂に混合する添加剤として使用される。

【0044】
本発明の樹脂改質剤の添加対象となる樹脂の種類については、特に制限されず、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。

【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリルニトリル・スチレン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、天然ゴム、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。

【0046】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。

【0047】
本発明の樹脂改質剤の添加対象となる樹脂は、1種単独の樹脂からなるもよく、また2種以上の樹脂がブレンドされたものであってもよい。

【0048】
これらの樹脂の中でも、成形の自由度等の観点から、好ましくは熱可塑性樹脂、更に好ましくはポリオレフィン、ポリエステル、特に好ましくはポリオレフィンが挙げられる。

【0049】
また、セルロース繊維は親水性であるため、疎水性樹脂に対する分散性が劣っているが、本発明の樹脂改質剤では、CF/PDM複合体を使用することによって、当該セルロース繊維の欠点が克服されている。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の樹脂改質剤の添加対象となる樹脂の好適な例としては、疎水性樹脂が挙げられる。疎水性樹脂とは、主鎖及び側鎖に、親水性基を有しておらず、水との親和性がなく、乾燥時に水の吸収がなく、水をはじく性質を有する樹脂である。疎水性樹脂としては、具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。

【0050】
本発明の樹脂改質剤の樹脂への添加量については、樹脂に付与すべき機械的強度、耐熱性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、本発明の樹脂改質剤、及び樹脂を含む樹脂組成物中で、本発明の樹脂改質剤が0.5~45質量%、好ましくは1~35質量%、更に好ましくは2~30質量%となる量が挙げられる。

【0051】
また、本発明の樹脂改質剤が添加される樹脂には、必要に応じて、相溶化剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤の添加剤が含まれていてもよい。

【0052】
2.樹脂組成物及び樹脂成形体
本発明の樹脂組成物は、前記樹脂改質剤、及び樹脂を含有することを特徴とする。本発明の樹脂組成物において、樹脂改質剤の含有量、樹脂の種類等については、前記「1.樹脂改質剤」の欄に記載の通りである。

【0053】
本発明の樹脂組成物は、シート、ペレット、チップ、粉末等の形状で提供され、樹脂成形体の成形材料として使用される。

【0054】
本発明の樹脂成形体は、前記樹脂組成物を用いて成形された成形体である。本発明の樹脂成形体の成形方法については、特に制限されず、樹脂の種類、樹脂成形体の形状等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、射出成形、押出し成形、トランスファー成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファー成形等が挙げられる。

【0055】
本発明の樹脂成形体は、主に繊維強化プラスチック等が使用されている各種用途で使用される。具体的には、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、各種機能性シート、コンテナー等として使用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0057】
1.CF/PDM複合体の製造
実施例1
水300mlにセルロースナノファイバー(商品名「セリッシュKY100G」、ダイセルファインケミカル株式会社製)を1質量%となるように分散させ、セルロースナノファイバー分散液を調製した。次いで、10mMに希釈したToris水溶液を、セルロースナノファイバー分散液に添加し、pH8.0になるように調整した。その後、ドーパミン塩酸塩を、分散液に含まれるセルロースナノファイバー100質量部に対して、5質量部となるように添加し、室温で24時間撹拌し、ドーパミンの酸化重合を行った。次いで、反応後の溶液を濾過してCF/PDM複合体を回収し、エタノールで洗浄して乾燥させた。更に、CF/PDM複合体を粉砕処理し、再度乾燥することによって、CF/PDM複合体(実施例1)を得た。
【実施例】
【0058】
得られたCF/PDM複合体について、元素分析装置(ECS4010、Costech社製)にて分析した後、重量換算した結果、セルロースナノファイバー100重量部当たりポリドーパミンが1.3重量部含まれていることが確認された。
【実施例】
【0059】
実施例2
分散液に含まれるセルロースナノファイバー100質量部に対して、ドーパミン塩酸塩の添加量を10質量部に変更したこと以外は、前記実施例1と同条件でCF/PDM複合体を製造した。
【実施例】
【0060】
得られたCF/PDM複合体(実施例2)について、元素分析装置(ECS4010、Costech社製)にて分析した後、重量換算した結果、セルロースナノファイバー100重量部当たりポリドーパミンが1.8重量部含まれていることが確認された。
【実施例】
【0061】
実施例3
分散液に含まれるセルロースナノファイバー100質量部に対して、ドーパミン塩酸塩の添加量を20質量部に変更したこと以外は、前記実施例1と同条件でCF/PDM複合体を製造した。
【実施例】
【0062】
得られたCF/PDM複合体(実施例3)について、元素分析装置(ECS4010、Costech社製)にて分析した後、重量換算した結果、セルロースナノファイバー100重量部当たりポリドーパミンが2.4重量部含まれていることが確認された。
【実施例】
【0063】
2.樹脂組成物・樹脂成形体の製造
ポリプロピレン樹脂(F-133、プライムポリマー株式会社製)に5質量%となるように前記CF/PDM複合体を添加して混合し、バッチ式混練機ラボプラストミル(株式会社 東洋精機製作所;4C150)のミル部にセグメントミキサ(型式KF15V)を用いて、190℃で混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用い、190℃の熱版プレス機(井元製作所)を使用して、縦6cm、横3.5cm、厚み2mmの樹脂成形体を作成した。
【実施例】
【0064】
また、比較のために、CF/PDM複合体の代わりに、5質量%となるようにセルロースナノファイバー(CF)(商品名「セリッシュKY100G」、ダイセルファインケミカル株式会社製)を添加したこと以外は、前記と同条件で、樹脂成形体を製造した。
【実施例】
【0065】
3.樹脂成形体の引張試験
実施例2のCF/PDM複合体を含む樹脂成形体について、JIS K6251-7カッターを使用して試験片を切り抜き引張試験に用いた。引張試験機(株式会社 島津製作所:Autograph AGS-J)を用いて、掴み具間距離17.5mm、引張速度10mm/分の条件で引張試験に供し、樹脂成形体が破断した際の応力(最大応力)を測定した。また、比較のために、セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体についても、同様に引張試験を行った。
【実施例】
【0066】
結果を図1に示す。この結果、CF/PDM複合体を含む樹脂成形体は、セルロースナノファイバーを含む場合に比して、最大応力が大幅に向上しており、CF/PDM複合体には、樹脂の機械的強度を向上させる作用に優れていることが確認された。
【実施例】
【0067】
3.CF/PDM複合体及び樹脂組成物の熱重量測定
実施例2のCF/PDM複合体、及び実施例2のCF/PDM複合体を含む樹脂組成物について、熱分析装置(株式会社島津製作所、DTA-60H)を用いて、窒素雰囲気(50ml/分)で昇温速度(10℃/分)の条件で、熱重量測定を行い、質量変化を測定した。また、比較のために、セルロースナノファイバー、及びセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物についても、同様に熱重量測定を行った。
【実施例】
【0068】
実施例2のCF/PDM複合体及びセルロースナノファイバー(CF)の重量減少率を図2に示し、実施例2のCF/PDM複合体を含む樹脂組成物、セルロースナノファイバー(CF)を含む樹脂組成物、及びポリプロピレン樹脂(CF/PDM複合体及びCF未添加)の重量減少率を図3に示す。この結果、CF/PDM複合体は、セルロースナノファイバーに比べて、重量変化が小さく、耐熱性が向上していることが明らかとなった。また、同様に、CF/PDM複合体を含む樹脂組成物でも、セルロースナノファイバーを含む場合に比べて質量変化が小さく、耐熱性が向上していた。
【実施例】
【0069】
4.樹脂成形体におけるCF/PDM複合体の分散状態の評価
実施例2のCF/PDM複合体を含む樹脂成形体の表面を偏光顕微鏡で観察し、CF/PDM複合体の分散状態を評価した。また、実施例2のCF/PDM複合体を含む樹脂成形体を切断して、その断面をフーリエ変換赤外分光光度計にて観察し、CF/PDM複合体の分散状態を評価した。また、比較のために、セルロースナノファイバー(CF)を含む樹脂成形体についても、同様に、偏光顕微鏡及びフーリエ変換赤外分光光度計による観察を行った。
【実施例】
【0070】
樹脂成形体の表面を偏光顕微鏡で観察した結果を図4に示し、樹脂成形体の断面をフーリエ変換赤外分光光度計にて観察した結果を図5に示す。図4では、明るい部分がセルロース部分を示している。また、図5では、スケールバーの上の色になるほどセルロース濃度が高いことを示している。この結果、セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体では、セルロースナノファイバーの分散が不均一になっていたが、CF/PDM複合体を含む樹脂成形体では、CF/PDM複合体が均一に分散されていることが確認された。
【実施例】
【0071】
5.CF/PDM複合体のポリプロピレンに対する接着性の評価
ポリプロピレンフィルム(縦5cm、横3cm、厚み195μm)を2枚用意した。1枚のポリプロピレンフィルムの片端(縦2cm、横3cm)上にCF/PDM複合体20mgを均一に載置し、その上にもう1枚のポリプロピレンフィルムの片端(縦2cm、横3cm)を被せ、2枚のポリプロピレンフィルムでCF/PDM複合体を挟んだ状態にして、熱圧着(150℃、6MPa、1分間)を行った。
【実施例】
【0072】
熱圧着した2枚のポリプロピレンフィルムの縦方向の端部を剥がし、引張試験機(株式会社 島津製作所:Autograph AGS-J)の掴み具に固定させた。次いで、掴み具間距離5cm、移動速度1mm/分の条件で引張試験に供し、剥離強度(180°剥離)を、接着強度として求めた。また、比較のために、CF/PDM複合体を使用しなかった場合(コントロール)、及びCF/PDM複合体の代わりにセルロースナノファイバー(CF)を使用した場合についても、同様に接着強度を求めた。
【実施例】
【0073】
結果を図6に示す。この結果、2枚のポリプロピレンフィルムの間にCF/PDM複合体を載置した場合には、セルロースナノファイバーを載置した場合に比べて、接着強度が向上していた。即ち、CF/PDM複合体は、セルロースナノファイバーに比べて、ポリプロピレンに対する接着性が向上していることが確認された。
【実施例】
【0074】
6.CF/PDM複合体のポリエチレンテレフタレートに対する接着性の評価
ポリエチレンテレフタレートフィルム(縦5cm、横3cm、厚み100μm)を2枚用意した。1枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片端(縦2cm、横3cm)上にCF/PDM複合体20mgを均一に載置し、その上にもう1枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片端(縦2cm、横3cm)を被せ、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムでCF/PDM複合体を挟んだ状態にして、熱圧着(180℃、10MPa、1分間)を行った。次いで、前記「5.CF/PDM複合体のポリプロピレンに対する接着性の評価」の欄に記載した条件で、接着強度を測定した。
【実施例】
【0075】
結果を図7に示す。この結果、CF/PDM複合体は、セルロースナノファイバーに比べて、ポリエチレンテレフタレートに対する接着性が向上していることが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6