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明細書 :ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子及びその前駆体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-043875 (P2019-043875A)
公開日 平成31年3月22日(2019.3.22)
発明の名称または考案の名称 ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子及びその前駆体
国際特許分類 C07D 211/90        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C07D 213/56        (2006.01)
FI C07D 211/90 CSP
C09K 3/00 109
C07D 213/56
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2017-167599 (P2017-167599)
出願日 平成29年8月31日(2017.8.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (その1) 掲載年月日 2017年3月3日 掲載アドレス https://nenkai.csj.jp/Proceeding/index/year/2017 (その2) 開催日 2017年3月16日から2017年3月19日(公開日は2017年3月16日) 集会名 日本化学会第97春季年会(2017) 主催者 公益社団法人 日本化学会
発明者または考案者 【氏名】梶原 隆史
【氏名】樋口 雅一
【氏名】田中 晃二
【氏名】北川 進
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C054
4C055
Fターム 4C054AA07
4C054BB01
4C054CC04
4C054EE20
4C054FF01
4C055AA13
4C055BA01
4C055CA34
4C055DA01
4C055GA02
4C055GA03
要約 【課題】水の存在下でも使用することができる、再生可能な還元剤を提供すること。
【解決手段】ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子であって、前記ヒドリド供与基が、下式:
JP2019043875A_000029t.gif
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。)
で表される、多孔性配位高分子。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子であって、前記ヒドリド供与基が、下式:
【化1】
JP2019043875A_000025t.gif
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。)
で表される、多孔性配位高分子。
【請求項2】
下式(1):
【化2】
JP2019043875A_000026t.gif
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは同一又は異なって、H、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれ、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれる。
mは、0~3の整数である。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカーが、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体である、請求項1に記載の多孔性配位高分子。
【請求項3】
前記多孔性配位高分子が、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]又は[ZrO(bpdc)]である、請求項2に記載の多孔性配位高分子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む還元剤。
【請求項5】
下式(1):
【化3】
JP2019043875A_000027t.gif
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びmは、請求項2と同じ。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカー。
【請求項6】
前記式(1)において、Rが、CH、H、又はCONHであり、R及びRが、いずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、及びRが、いずれもHであり、mが1である、請求項5に記載のヒドリド供与基を有する有機リンカー。
【請求項7】
下式(2):
【化4】
JP2019043875A_000028t.gif
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びmは、請求項2と同じ。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカーの前駆体。
【請求項8】
請求項7に記載の前駆体が、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体である、酸化型多孔性配位高分子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本明細書は、ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子及びその前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の社会においてC1源としての二酸化炭素の使用は、例えば二酸化炭素の排出削減、化石燃料に代わるエネルギー資源の開発等を考慮すると、最も重要なトピックスの一つである。二酸化炭素から様々な有機化学物質への転換についての研究が広く行われてきた(非特許文献1及び2)。その中で、二酸化炭素の還元(水素添加)は、その生産物、例えば、CO、HCOOH、MeOH及びCHがエネルギー・キャリアーとみなされ、C1化学にとって重要な材料と見込まれることから、特に注目を集めている。
【0003】
従来、有機化合物の還元剤としては、水素ガス;NaBH、LiAlH等の金属水素化物等が用いられている。水素ガスは、爆発の危険性があり、取り扱いが難しい。金属水素化物は、水との反応性が高く、水存在下では使用できない。また、金属水素化物は、再生して使用することができず、高価である。
【0004】
また、二酸化炭素の還元は、トリエタノールアミン又はトリエチルアミンを犠牲還元剤として用いて行われているが、トリエタノールアミン及びトリエチルアミンは生成物に比べて高価である。
【0005】
そこで、低環境負荷な還元系を開発するために、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)(NAD(P)H)を含む生体系に強い関心が集まっている。NAD(P)Hの人工的類似体として1,4-ジヒドロピリジン誘導体を用いた還元の研究が広範囲に行われているが、現在までに、酵素触媒反応を除けば効率のよい還元系の例はほとんど知られていない。その理由として、ヒドリド供与体としての反応性が不十分であること、及び反応中間体であるラジカル種が不安定であり、二量化により失活することが挙げられている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】S. N. Riduan, Y. Zhang, Dalton Trans. 2010, 39, 3347-3357
【非特許文献2】C. Federsel, R. Jackstell, M. Beller, Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 6254-6257; Angew. Chem. 2010, 122, 6392-6395
【非特許文献3】A. McSkimming et al., Chem. Soc. Rev. 2013, 42, 5439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、水の存在下でも使用することができる、再生可能な還元剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、水の存在下でも使用することができる、再生可能な還元剤を開発すべく鋭意検討した結果、多孔性配位高分子(PCP: Porous Coordination Polymer)にヒドリド供与基を有する有機リンカーを組み込むことにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
本発明は、下記項1~項8に示すヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子等に係る。
項1. ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子であって、前記ヒドリド供与基が、下式:
【0010】
【化1】
JP2019043875A_000002t.gif

【0011】
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。)
で表される、多孔性配位高分子。
項2. 下式(1):
【0012】
【化2】
JP2019043875A_000003t.gif

【0013】
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは同一又は異なって、H、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれ、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれる。
mは、0~3の整数である。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカーが、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体である、上記項1に記載の多孔性配位高分子。
項3. 前記多孔性配位高分子が、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]又は[ZrO(bpdc)]である、上記項2に記載の多孔性配位高分子。
項4. 上記項1~3のいずれか1項に記載の多孔性配位高分子を含む還元剤。
項5. 下式(1):
【0014】
【化3】
JP2019043875A_000004t.gif

【0015】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びmは、上記項2と同じ。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカー。
項6. 前記式(1)において、Rが、CH、H、又はCONHであり、R及びRが、いずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、及びRが、いずれもHであり、mが1である、上記項5に記載のヒドリド供与基を有する有機リンカー。
項7. 下式(2):
【0016】
【化4】
JP2019043875A_000005t.gif

【0017】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びmは、上記項2と同じ。)
で表される、ヒドリド供与基を有する有機リンカーの前駆体。
項8. 上記項7に記載の前駆体が、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体である、酸化型多孔性配位高分子。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、ヒドリド(H)を供与することができるので、炭素-炭素二重結合(C=C)を有する化合物(例えば、オレフィン)、炭素-酸素二重結合(C=O)を有する化合物(例えば、ケトン)等と反応して還元(水素化)生成物を与えることができる。よって、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、還元剤として使用することができる。また、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、ヒドリド供与基が多孔性配位高分子の骨格中に固定化されており、反応中間体であるラジカル種の二量化による失活が起こらず安定であるため、水の存在下でもヒドリド供与能力(還元能力)を有する。さらに、使用後の酸化体は還元剤により元のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子に戻ることから、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は再生することができ、還元剤として繰り返し使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】製造例7で得られた複合体のH NMRスペクトルである。
【図2】製造例7で得られた複合体についてTGA(熱重量分析)を行った結果である。
【図3】製造例7で得られた複合体の粉末X線回折パターンである。
【図4】製造例7で得られた複合体の窒素ガス吸着等温線である。
【図5】製造例8-1で得られた複合体のH NMRスペクトルである。
【図6】製造例8-1で得られた複合体についてTGA(熱重量分析)を行った結果である。
【図7】製造例8-1で得られた複合体の粉末X線回折パターンである。
【図8】製造例8-1で得られた複合体の窒素ガス吸着等温線である。
【図9】製造例8-2で得られた複合体のH NMRスペクトルである。
【図10】製造例8-2で得られた複合体についてTGA(熱重量分析)を行った結果である。
【図11】製造例8-2で得られた複合体の粉末X線回折パターンである。
【図12】製造例8-2で得られた複合体の窒素ガス吸着等温線である。
【図13】実施例1で得られた複合体のH NMRスペクトルである。
【図14】実施例1で得られた複合体についてTGA(熱重量分析)を行った結果である。
【図15】実施例1で得られた複合体の粉末X線回折パターンである。
【図16】実施例1で得られた複合体の窒素ガス吸着等温線である。
【図17】実施例2で得られた複合体のH NMRスペクトルである。
【図18】実施例2で得られた複合体についてTGA(熱重量分析)を行った結果である。
【図19】実施例2で得られた複合体の粉末X線回折パターンである。
【図20】実施例2で得られた複合体の窒素ガス吸着等温線である。
【図21】置換基(R)の種類が異なるヒドリド供与基を有する有機リンカーのサイクリックボルタモグラムである。
【図22】酸化型有機リンカーと、該酸化型有機リンカーとPCPとの複合体のサイクリックボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、下式:

【0021】
【化5】
JP2019043875A_000006t.gif

【0022】
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。)
で表されるヒドリド供与基を有することが特徴である。該多孔性配位高分子は、ヒドリド(H)を供与することができるので、炭素-炭素二重結合(C=C)を有する化合物(例えば、オレフィン)、炭素-酸素二重結合(C=O)を有する化合物(例えば、ケトン)等と反応して、還元(水素化)生成物を与えることができる。該多孔性配位高分子は、新規化合物である。

【0023】
Rの種類により酸化還元電位が変化し、ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子のヒドリド供与能力が変わる。以下の実施例で詳述するように、還元剤としての能力はCH>H>CONH>COOH>COCHの順である。Rとしては、CH、H、及びCONHが好ましい。

【0024】
本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、ヒドリド供与基を有する有機リンカーが、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体であることが好ましい。本明細書では、ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子を、「ヒドリド供与基を有する有機リンカーと多孔性配位高分子との複合体」又は「還元型複合体」という場合がある。

【0025】
前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーは、下式(1):

【0026】
【化6】
JP2019043875A_000007t.gif

【0027】
(式中、Rは、H、CH、CONH、COOH、又はCOCHを示す。
、R、R、R、R、R、R、R、及びRは同一又は異なって、H、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、又はTeOを示す。但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれ、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つには、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基が含まれる。
mは、0~3の整数である。)
で表される化合物であることが好ましい。前記ヒドリド供与基を有する有機リンカー(1)は、新規化合物である。以下、ヒドリド供与基を有する有機リンカーを「還元型有機リンカー」という場合がある。

【0028】
式(1)において、Rとしては、CH、H、及びCONHが好ましい。R、R、R、R、R、R、R、R、及びRのうち、R及びRが、CO、CS、PO2-、PO2-、AsO2-、AsO2-、SO、SO、SeO、SeO、TeO、及びTeOからなる群から選択される基であることが好ましい。この場合、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。R及びRは、いずれもCOであることがより好ましい。R、R、R、R、R、R、及びRは、いずれもHであることが好ましい。mは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。

【0029】
具体的には、前記式(1)において、Rが、CH、H、又はCONHであり、R及びRが、いずれもCOであり、R、R、R、R、R、R、及びRが、いずれもHであり、mが1である、ヒドリド供与基を有する有機リンカーが好ましい。

【0030】
前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーは、上記のような構造を有することで、多孔性配位高分子(PCP)の骨格の一部として良好に導入され、ヒドリド供与基が多孔性配位高分子の骨格中に固定化されることで、失活を防ぐことができる。これは、PCPを構成する有機リンカーと、前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーとの構造上の類似性、及びPCPの細孔の大きさが関係している。

【0031】
前記多孔性配位高分子(PCP)は、ZrIVタイプPCPが好ましい。

【0032】
前記多孔性配位高分子が、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]又は[ZrO(bpdc)]であることが好ましい。[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]は、三次元細孔構造を有する公知のPCPであり、[ZrO(bpdc)]は、一次元チャネル型構造を有する公知のPCPである。ここで、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]は、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6・(DMF)n] 又は[Zr6O4(OH)4(bpdc)6・(DMF)n]と表すことも可能である。また、[ZrO(bpdc)]は、[ZrO(bpdc) ・(DMF)p] [ZrO(bpdc) ・(DMF)p]と表すことも可能である。なお、本明細書において「bpdc」は、ビフェニル-4,4’-ジカルボキシラート(biphenyl-4,4′-dicarboxylate)を示す。

【0033】
nの値は、合成バッチによって差異があり、TGA(熱重量測定装置)による重量減少率から求めることができる。n及びpの値は、合成直後の多孔性配位高分子(PCP)に含まれる溶媒(DMF)の数である。nの値は、20程度が好ましく、17~25程度がより好ましい。pの値は、0.5~2程度が好ましい。

【0034】
∞は、PCPが特定の単位の繰り返し構造であることを示す。∞の値は、109程度が好ましい。PCPは、∞を省略しても技術的に問題ない。

【0035】
[Zr6O4(OH)4(bpdc)6](Zr-bpdc)及び[ZrO(bpdc)]が好ましい理由は以下の通りである。1) PCPにおける有機リンカー bpdc の構造が、前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーにおけるビフェニル構造とよく似ているために、前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーをPCP骨格中に良好に導入することができる。2) 前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーを取り込むに十分な大きさの細孔を有している。3) 存在するPCPの中では、比較的高い熱及び化学安定性を示す。

【0036】
前記ヒドリド供与基を有する有機リンカーは、良好に[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]又は[ZrO(bpdc)]に取り込まれ、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと多孔性配位高分子との複合体が得られる。ヒドリド供与基を有する有機リンカーが多孔性配位高分子内に組み込まれることで、ヒドリド供与基を有する有機リンカー単独よりもヒドリド供与能力(還元能力)が向上することが示唆される(以下の実施例参照)。

【0037】
ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子の製造方法
ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子(還元型複合体)は、多孔性配位高分子の有機リンカーの一部を、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと交換する、合成後交換法によって製造することが好ましい。

【0038】
具体的には、ヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子の製造方法は、
ヒドリド供与基を有する有機リンカーを合成する工程1、
多孔性配位高分子を合成する工程2、及び
多孔性配位高分子の有機リンカーの一部を、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと交換する工程3、を含むことが好ましい。

【0039】
多孔性配位高分子が、[Zr6O4(OH)4(bpdc)6]である場合、上記工程1~3は、以下のスキームに従って行うことが好ましい。

【0040】
【化7】
JP2019043875A_000008t.gif

【0041】
上記スキームにおいて、ヒドリド供与基を有する有機リンカーはLi2Lred-Rで示されており、多孔性配位高分子はUiO-67(= [Zr6O4(OH)4(bpdc)6]∞、Zr-bpdc)で示されている。

【0042】
以下、ヒドリド供与基を有する有機リンカーが、下式(1a):

【0043】
【化8】
JP2019043875A_000009t.gif

【0044】
(式中、R’は、CONHを示す。)
で表される化合物を用いた場合を例にとって各工程について説明する。

【0045】
工程1
工程1において、ヒドリド供与基を有する有機リンカーを合成する。工程1は、以下の(1)~(4)を含むことが好ましい。

【0046】
(1)参考文献1(L. Zhu, J. Duquette, M. Zhang, J. Org. Chem. 2003, 68, 3729)に従い、下式に示すように、2-メチルビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ジメチル (Me2bpdc-CH3)を合成する。

【0047】
【化9】
JP2019043875A_000010t.gif

【0048】
(式中、pinは、ピナコールエステルを示す。)

【0049】
(2)参考文献2(A. D. Burrows, C. G. Frost, M. F. Mahon, C. Richardson, Chem. Commun. 2009, 4218)に従い、下式に示すように、Me2bpdc-CH3から2-(ブロモメチル)ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ジメチル(Me2bpdc-CH2Br)を合成する。

【0050】
【化10】
JP2019043875A_000011t.gif

【0051】
(3)得られたMe2bpdc-CH2Brとニコチンアミドとを、溶媒中で還流加熱させることにより、下式(2a):

【0052】
【化11】
JP2019043875A_000012t.gif

【0053】
で表される酸化型有機リンカーが得られる。

【0054】
溶媒として、例えば、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、アセトニトリルが好ましい。

【0055】
反応時間は、通常6~48時間程度である。

【0056】
ここで、上記酸化型有機リンカー(2a)、及び下式(2):

【0057】
【化12】
JP2019043875A_000013t.gif

【0058】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びmは、前記と同じ。)
で表される酸化型有機リンカー(ヒドリド供与基を有する有機リンカーの前駆体)は、新規化合物である。

【0059】
(4)得られた酸化型有機リンカーを、溶媒中で還元することにより、上記(1a)で表されるヒドリド供与基を有する有機リンカー(還元型有機リンカー)を製造することができる。

【0060】
溶媒としては、水、及び、水とアルコール系溶媒(メタノール、エタノール等)、アセトニトリル、ジクロロメタン等との混合溶媒が挙げられる。

【0061】
還元剤としては、亜ジチオン酸ナトリウム(Na2S2O4)等が挙げられる。

【0062】
反応温度は、通常0~40℃程度であり、反応時間は、通常1~24時間程度である。

【0063】
なお、工程3には、得られたジカルボン酸メチルエステルをリチウム塩に変換したものを使用することが好ましい。

【0064】
工程2
工程2において、多孔性配位高分子を合成する。

【0065】
Zr-bpdc(PCP)は、公知の方法、例えば、ソルボサーマル合成法によって製造することができる。

【0066】
具体的には、以下のとおりである。ZrCl4、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸(H2bpdc)、DMF、酢酸及びH2Oの混合物を、オートクレーブに充填する。オートクレーブを密閉し、混合物を120℃程度で24時間攪拌する。オートクレーブ後の試料を、室温まで冷却し、生成した堆積物をろ過にて収集する。収集物を、DMFにて洗浄し、動的真空雰囲気中、室温にて乾燥することにより、細孔が形成されたZr-bpdc ([Zr6O4(OH)4(bpdc)6・(DMF)n])を得ることができる。n及び∞は、前述の通りである。

【0067】
工程1及び工程2は、どちらを先に行ってもよい。

【0068】
工程3
工程3において、多孔性配位高分子の有機リンカーの一部を、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと交換する。この合成後交換(PSE)法は公知であり、所定の条件下でヒドリド供与基を有する有機リンカーと多孔性配位高分子とを反応させることにより、還元型複合体を得ることができる。

【0069】
具体的には、以下のとおりである。工程1で得られたヒドリド供与基を有する有機リンカーを、ガラス瓶に充填し、そこにH2O、DMF、及び工程2で得られたZr-bpdcを加える。ここで、ヒドリド供与基を有する有機リンカーの使用量は、Zr-bpdc1モルに対して、0.01~0.15モル程度が好ましく、0.05~0.1モル程度がより好ましい。

【0070】
得られた混合物を、室温で、数日間静置し、次いで混合物をろ過する。ろ過物を、H2O/DMFで洗浄し、次いでDMFで連続して洗浄し、動的真空雰囲気中、室温にて乾燥する。なお、洗浄には、好ましくは3:1 (体積比)のH2O/DMFを使用する。得られた固体を、DMF又はMeCNに懸濁し、遠心分離する。遠心分離後の試料を、半日程度、MeCNに含浸処理し、再度遠心分離し、固体をろ過によって収集する。これを、MeCNにて洗浄し、動的真空雰囲気中、室温にて乾燥する。

【0071】
合成後交換法を用いることで、ヒドリド供与基を有する有機リンカーは良好にZr-bpdcに取り込まれ、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと多孔性配位高分子との複合体(還元型複合体)を製造することができる。Zr-bpdcは、混合溶剤 H2O/DMF 中にて、ヒドリド供与基を有する有機リンカーと懸濁され、リンカーが交換される。還元型複合体の存在は、例えば、炭素-炭素二重結合(C=C)の反応性を調べることにより確認することができる。

【0072】
なお、以下の実施例で製造される、前記酸化型有機リンカー(ヒドリド供与基を有する有機リンカーの前駆体)が、多孔性配位高分子の骨格中に組み込まれた複合体(酸化型多孔性配位高分子)は、新規化合物である。

【0073】
上記製造方法によって得られたヒドリド供与基を有する有機リンカーと多孔性配位高分子との複合体は、ヒドリド(H)を供与することができるので、炭素-炭素二重結合(C=C)を有する化合物(例えば、オレフィン)、炭素-酸素二重結合(C=O)を有する化合物(例えば、ケトン)等と反応して還元(水素化)生成物を与えることができる。よって、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、還元剤として使用することができる。また、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は、ヒドリド供与基が多孔性配位高分子の骨格中に固定化されており、反応中間体であるラジカル種の二量化による失活が起こらず安定であるため、水の存在下でもヒドリド供与能力(還元能力)を有する。さらに、使用後の酸化体は還元剤により元のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子に戻ることから、本発明のヒドリド供与基を有する多孔性配位高分子は再生することができ、還元剤として繰り返し使用することが可能である。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
実施例おける分析及び評価は、以下の方法によって実施した。
(1)核磁気共鳴
1H NMRスペクトルをJEOL JNM-ECS400又はBruker AV500分光計にて計測した。
1H NMRスペクトルの化学シフトは、テトラメチルシラン(δ scale)より低磁場のppmで観察され、残留内部DMSO-d5(δ 2.50)又はCHCl3(δ 7.26)と比較した。
(2)熱重量分析(TGA)
TGAをRigaku Thermo plus EVO II TG8120にて、N2気流下、昇温速度5 K/minで計測した。
(3)粉末X線回折(PXRD)
PXRDをBruker D8 DISCOVER with GADDSを用い、CuKαアノードを使用して計測した。
(4)窒素ガス吸着等温線
窒素ガス吸着等温線をBEL Japan BELSORP-miniIIにて、77 Kで計測した。
【実施例】
【0076】
製造例1:2-メチルビフェニル-4,4′-ジカルボン酸ジメチル(Me2bpdc-CH3)の合成
【実施例】
【0077】
【化13】
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【実施例】
【0078】
Me2bpdc-CH3を、参考文献1(L. Zhu, J. Duquette, M. Zhang, J. Org. Chem. 2003, 68, 3729)に従って合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 2.30 (s, 3H), 3.94 (s, 3H), 3.95 (s, 3H), 7.29 (d, 3JHH= 7.6 Hz, 1H), 7.40 (d, 3JHH= 6.6 Hz, 2H), 7.91 (dd, 3JHH= 7.6 Hz, 4JHH= 1.6 Hz, 1H), 7.97 (d, 4JHH= 1.6 Hz, 1H), 8.11 (d, 3JHH= 6.6 Hz, 2H).
【実施例】
【0079】
製造例2:2-(ブロモメチル)ビフェニル-4,4′-ジカルボン酸ジメチル(Me2bpdc-CH2Br)の合成
【実施例】
【0080】
【化14】
JP2019043875A_000015t.gif

【実施例】
【0081】
Me2bpdc-CH2Brを、参考文献2(A. D. Burrows, C. G. Frost, M. F. Mahon, C. Richardson, Chem. Commun. 2009, 4218)に従って合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 3.96 (s, 6H), 4.42 (s, 2H), 7.34 (d, 3JHH= 8.2 Hz, 1H), 7.53 (d, 3JHH= 8.4 Hz, 2H), 8.02 (dd, 3JHH= 8.2 Hz, 4JHH= 1.6 Hz, 1H), 8.15 (d, 3JHH= 8.4 Hz, 2H), 8.22 (s, 1H).
【実施例】
【0082】
製造例3:1-{[4,4′-ビス(メトキシカルボニル)ビフェニル-2-イル]メチル}-3-R-ピリジニウム ブロミド(Me2Lox-R)(酸化型有機リンカー)の合成
【実施例】
【0083】
【化15】
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【実施例】
【0084】
(3-1) Rがカルバモイルである化合物 (Me2Lox-CONH2)の合成
Me2bpdc-CH2Br (3.20 g, 8.81 mmol)、アセトニトリル (90 mL)、及びニコチンアミド (1.19 g, 9.71 mmol)の混合物を24時間還流加熱した。反応混合物を室温まで放冷し、ジエチルエーテル (90 mL)を加えて析出した固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体を水/エタノール (1:1(容積比))から再結晶し、Me2Lox-CONH2 (3.06 g, 6.30 mmol, 収率71%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 3.89 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 6.05 (s, 2H), 7.39 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 2H), 7.51 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 7.95 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 2H), 8.05-8.14 (m, 4H), 8.44 (s, 1H), 8.72 (d, 3JHH= 6.4 Hz, 1H), 8.85 (d, 3JHH= 8.4 Hz, 1H), 8.96 (s, 1H).
【実施例】
【0085】
(3-2) R がカルボキシである化合物 (Me2Lox-COOH)の合成
ニコチンアミドの代わりにニコチン酸を用いた以外は、上記(3-1)と同様の方法によりMe2Lox-COOH (収率91%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 3.89 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 6.07 (s, 2H), 7.38 (d, 3JHH = 8.3 Hz, 2H), 7.50 (d, 3JHH = 7.9 Hz, 1H), 7.95 (d, 3JHH = 8.3 Hz, 2H), 8.05 (t, 3JHH = 7.1 Hz, 1H), 8.12 (dd, 3JHH = 7.9 Hz, 4JHH = 1.6 Hz, 1H), 8.18 (d, 4JHH = 1.4 Hz, 1H), 8.76 (d, 3JHH = 6.1 Hz, 1H), 8.84 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 8.92 (s, 1H), -COOH not observed.
【実施例】
【0086】
(3-3) R がメチルである化合物 (Me2Lox-Me)の合成
ニコチンアミドの代わりにβ-ピコリンを用いた以外は、上記(3-1)と同様の方法によりMe2Lox-Me (収率36%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 2.20 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 5.93 (s, 2H), 7.39 (d, 3JHH = 8.2 Hz, 2H), 7.50 (d, 3JHH = 7.9 Hz, 1H), 7.85 (t, 3JHH = 7.2 Hz, 1H), 7.97 (d, 3JHH = 8.2 Hz, 2H), 8.09 (s, 1H), 8.12 (dd, 3JHH= 7.9 Hz, 4JHH= 1.5 Hz, 1H), 8.35 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.44 (d, 3JHH = 5.7 Hz, 1H).
【実施例】
【0087】
(3-4) R が水素原子である化合物 (Me2Lox-H)の合成
ニコチンアミドの代わりにピリジンを用いた以外は、上記(3-1)と同様の方法によりMe2Lox-H (収率33%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 3.89 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 5.99 (s, 2H), 7.42 (d, 3JHH = 8.3 Hz, 2H), 7.52 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 7.94-7.99 (m, 4H), 8.06 (d, 4JHH= 1.4 Hz, 1H), 8.12 (dd, 3JHH= 7.9 Hz, 4JHH= 1.7 Hz, 1H), 8.52 (t, 3JHH= 7.6 Hz, 1H), 8.62 (d, 3JHH= 5.6 Hz, 2H).
【実施例】
【0088】
(3-5) R がアセチルである化合物 (Me2Lox-COMe)の合成
ニコチンアミドの代わりに3-アセチルピリジンを用いた以外は、上記(3-1)と同様の方法によりMe2Lox-COMe (収率39%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 2.57 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 3.91 (s, 3H), 6.09 (s, 2H), 7.39 (d, 3JHH = 6.7 Hz, 2H), 7.51 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 7.95 (d, 3JHH = 8.3 Hz, 2H), 8.09-8.14 (m, 2H), 8.16 (d, 4JHH= 1.4 Hz, 1H), 8.78 (d, 3JHH= 6.2 Hz, 1H), 8.92 (d, 3JHH= 8.1 Hz, 1H), 9.03 (s, 1H).
【実施例】
【0089】
製造例4:1-[(4,4′-ジカルボキシビフェニル-2-イル)メチル]-3-R-ピリジニウム ブロミド (H2Lox-R)(酸化型有機リンカー)の合成
【実施例】
【0090】
【化16】
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【実施例】
【0091】
(4-1) R がカルバモイルである化合物 (H2Lox-CONH2)の合成
Me2Lox-CONH2 (485 mg, 1.00 mmol)をTHF (20 mL)に懸濁させ、ここに0.1 M 炭酸ナトリウム水溶液 (40 mL)を滴下した。室温で1日撹拌した後、水及びクロロホルムを加えて分液した。水層に47% 臭化水素酸を加えて酸性にすることで固体を析出させ、ろ過し、水で洗浄してH2Lox-CONH2 (271 mg, 593 μmol, 収率59%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 6.03 (s, 2H), 7.40 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 2H), 7.48 (d, 3JHH = 7.9 Hz, 1H), 7.93 (d, 3JHH = 8.7 Hz, 2H), 8.01 (s, 1H), 8.08-8.12 (m, 3H), 8.49 (s, 1H), 8.75 (d, 3JHH = 6.0 Hz, 1H), 8.87 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 9.06 (s, 1H), -COOH not observed.
【実施例】
【0092】
(4-2) R がカルボキシである化合物 (H2Lox-COOH)の合成
Me2Lox-COOHを原料として用いた以外は、上記(4-1)と同様の方法によりH2Lox-COOH (収率76%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 5.97 (s, 2H), 7.41 (d, 3JHH = 8.4 Hz, 2H), 7.46 (d, 3JHH = 7.6 Hz, 1H), 7.85-7.89 (m, 2H), 7.96 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 2H), 8.06 (t, 3JHH= 7.6 Hz, 1H), 8.49 (d, 3JHH= 6.0 Hz, 1H), 8.70 (d, 3JHH= 7.6 Hz, 1H), 8.91 (s, 1H), -COOHnot observed.
【実施例】
【0093】
(4-3) R がメチルである化合物 (H2Lox-Me)の合成
Me2Lox-Meを原料として用いた以外は、上記(4-1)と同様の方法によりH2Lox-Me (収率82%)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, δ): 2.30 (s, 3H), 5.91 (s, 2H), 7.36 (d, 3JHH = 8.1 Hz, 2H), 7.47 (d, 3JHH = 7.9 Hz, 1H), 7.86 (t, 3JHH = 7.0 Hz, 1H), 7.95 (d, 3JHH = 8.2 Hz, 2H), 8.01 (s, 1H), 8.08 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 1H), 8.35 (d, 3JHH= 7.8 Hz, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.46 (d, 3JHH = 5.8 Hz, 1H).
【実施例】
【0094】
製造例5:2-[(3-カルバモイル-1,4-ジヒドロピリジン-1-イル)メチル]ビフェニル-4,4′-ジカルボン酸ジメチル(Me2Lred-CONH2)(還元型有機リンカー)の合成
【実施例】
【0095】
【化17】
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【実施例】
【0096】
エタノール (25 mL)と水 (25 mL)との混合溶媒にアルゴンガスを15分間バブリングした。ここにMe2Lox-CONH2(486 mg, 1.00 mmol)、炭酸水素ナトリウム (505 mg, 6.02 mmol)、及び亜ジチオン酸ナトリウム (1.05 g, 6.01 mmol)を順に加えて、室温アルゴン下で6.5時間撹拌した。溶媒を留去してから、水及びジクロロメタンを加えて分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。この液体をろ過及び濃縮し、ジクロロメタン/ヘキサンで再沈殿することによりMe2Lred-CONH2(308 mg, 759 μmol, 収率76%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.93 (s, 2H), 3.89 (s, 6H), 4.37 (s, 2H), 4.56 (dt, 3JHH = 7.6 Hz, 3JHH = 4.0 Hz, 1H), 5.65 (d, 3JHH = 7.6 Hz, 1H), 6.51 (s, 2H), 6.72 (s, 1H), 7.42 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 1H), 7.53 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 2H), 7.97 (dd, 3JHH= 8.0 Hz, 4JHH= 1.6 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 8.05 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 2H).
【実施例】
【0097】
製造例6:2-[(3-カルバモイル-1,4-ジヒドロピリジン-1-イル)メチル]ビフェニル-4,4′-ジカルボン酸リチウム(Li2Lred-CONH2)(還元型有機リンカー)の合成
【実施例】
【0098】
【化18】
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Me2Lred-CONH2 (104 mg, 255 μmol)とTHF (4.0 mL)との混合物にアルゴンガスをバブリングした。ここに水酸化リチウム (22.2 mg, 529 μmol)の水溶液 (10 mL)を滴下し、室温アルゴン下で21時間撹拌した。水とジクロロメタンを加えて分液し、水槽を約10 mLまで濃縮した後、水を加えて50 mLに調節することにより5 mM Li2Lred-CONH2水溶液を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ): 2.95 (s, 2H), 4.27 (s, 2H), 4.52 (dt, 3JHH = 7.2 Hz, 3JHH = 4.0 Hz, 1H), 5.60 (d, 3JHH = 8.0 Hz, 1H), 6.49 (s, 2H), 6.80 (s, 1H), 7.12 (d, 3JHH= 8.0 Hz, 1H), 7.20 (d, 3JHH= 8.4 Hz, 2H), 7.82 (d, 3JHH= 7.6 Hz, 1H), 7.89-7.92 (m, 3H).
【実施例】
【0099】
製造例7:UiO-67/Lox-COOH複合体(酸化型複合体)の製造
【実施例】
【0100】
【化19】
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【実施例】
【0101】
UiO-67 (= [Zr6O4(OH)4(bpdc)6], bpdc = biphenyl-4,4′-dicarboxylate)を、参考文献3(A. Schaate, P. Roy, A. Godt, J. Lippke, F. Waltz, M. Wiebcke, P. Behrens, Chem. Eur. J. 2011, 17, 6643)に従って合成した。
【実施例】
【0102】
製造例(4-2)で得られたH2Lox-COOH (99.3 mg, 209 μmol)にDMF (12.5 mL)と水 (37.5 mL)とを加えた。ここに上で製造したUiO-67 (1.21 g, 2.01 mmol bpdc)を加え、室温で2日間静置した。混合物をろ過し、DMF/水 (1:3(容積比), 250 mL)、続いてDMF (250 mL)で洗浄した。得られた固体に対し、DMF (50 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返し、次に、アセトニトリル (50 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。さらに、アセトニトリル (50 mL)に懸濁させて半日間室温で静置してから遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄して室温で真空乾燥することによりUiO-67/Lox-COOH複合体 (752 mg)を得た。
【実施例】
【0103】
得られた複合体をフッ酸-ジメチルスルホキシド-d6により溶解させ、1H NMR測定を行ったところ、H2bpdcおよびH2Lox-COOHの双方のシグナルが観測された(図1)。またTGAでH2Lox-COOH由来の重量減少が見られないことからLox-COOHが骨格中に組み込まれたことが確認された(図2)。PXRDにより母体のUiO-67の結晶構造が維持されていることが確認された(図3)。窒素ガス吸着測定により多孔性を保持していることが確認された(図4)。
【実施例】
【0104】
製造例8:MIL-140C/Lox-R複合体(酸化型複合体)の製造
【実施例】
【0105】
【化20】
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【実施例】
【0106】
MIL-140C (=[ZrO(bpdc)])を、参考文献4(W. Liang, R. Babarao, T. L. Church, D. M. D’Alessandro, Chem. Commun. 2015, 51, 11286)に従って合成した。
【実施例】
【0107】
(8-1) Rがカルバモイルである複合体(MIL-140C/Lox-CONH2複合体)の製造
製造例(4-1)で得られたH2Lox-CONH2 (36.3 mg, 79.4 μmol)にDMF (2.0 mL)と水 (18.0 mL)とを加えた。ここに上で製造したMIL-140C (359 mg, 798 μmol bpdc)を加え、室温で2日間静置した。混合物をろ過し、DMF/水 (1:9(容積比), 100 mL)で、続いてDMF (100 mL)で洗浄した。得られた固体を、DMF (20 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返し、次に、アセトニトリル (20 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。さらに、アセトニトリル (20 mL)に懸濁させて半日間室温で静置してから遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄して室温で真空乾燥することによりMIL-140C/Lox-CONH2複合体 (294 mg)を得た。
【実施例】
【0108】
得られた複合体をフッ酸-ジメチルスルホキシド-d6により溶解させ、1H NMR測定を行ったところ、H2bpdcおよびH2Lox-CONH2の双方のシグナルが観測された(図5)。またTGAでH2Lox-CONH2由来の重量減少が見られないことからLox-CONH2が骨格中に組み込まれたことが確認された(図6)。PXRDにより母体のMIL-140Cの結晶構造が維持されていることが確認された(図7)。窒素ガス吸着測定により多孔性を保持していることが確認された(図8)。
【実施例】
【0109】
(8-2) R がカルボキシである複合体(MIL-140C/Lox-COOH複合体)の製造
製造例(4-2)で得られたH2Lox-COOH (40.6 mg, 85.4 μmol)にDMF (2.5 mL)と水 (22.5 mL)とを加えた。ここに上で製造したMIL-140C (389 mg, 942 μmol bpdc)を加え、室温で3日間静置した。混合物をろ過し、DMF/水 (1:9(容積比), 125 mL)で、続いてDMF (125 mL)で洗浄した。得られた固体を、DMF (25 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返し、次にアセトニトリル (25 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。さらに、アセトニトリル (25 mL)に懸濁させて半日間室温で静置してから遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄して室温で真空乾燥することによりMIL-140C/Lox-COOH複合体 (350 mg)を得た。
【実施例】
【0110】
得られた複合体をフッ酸-ジメチルスルホキシド-d6により溶解させ、1H NMR測定を行ったところ、H2bpdcおよびH2Lox-COOHの双方のシグナルが観測された(図9)。またTGAでH2Lox-COOH由来の重量減少が見られないことからLox-COOHが骨格中に組み込まれたことが確認された(図10)。PXRDにより母体のMIL-140Cの結晶構造が維持されていることが確認された(図11)。窒素ガス吸着測定により多孔性を保持していることが確認された(図12)。
【実施例】
【0111】
実施例1:UiO-67/Lred-CONH2複合体(還元型複合体)の製造
【実施例】
【0112】
【化21】
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【実施例】
【0113】
製造例7の始めに製造したUiO-67 (254 mg, 444 μmol bpdc)にDMF (5.0 mL)を加えて脱気した。ここに製造例6で調製した5 mM Li2Lred-CONH2水溶液 (15.0 mL, 75 μmol)を加えた後、再び脱気し、室温で3日間静置した。混合物を遠心分離し、上澄みを除去した。得られた固体を、DMF/水 (1:3(容積比), 11 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を5回繰り返し、次に、DMF (11 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を5回繰り返し、アセトニトリル (11 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。さらに、生成物をアセトニトリル (11 mL)に懸濁させて半日間室温で静置してから遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返したあと、真空乾燥することによりUiO-67/Lred-CONH2複合体 (93.4 mg)を得た。
【実施例】
【0114】
得られた複合体をフッ酸-ジメチルスルホキシド-d6により溶解させ、1H NMR測定を行ったところ、H2bpdcおよびH2Lox-CONH2の双方のシグナルが観測された(図13)。またTGAでH2Lred-CONH2由来の重量減少が見られないことからLred-CONH2が骨格中に組み込まれたことが確認された(図14)。PXRDにより母体のUiO-67の結晶構造が維持されていることが確認された(図15)。窒素ガス吸着測定により多孔性を保持していることが確認された(図16)。
【実施例】
【0115】
実施例2:MIL-140C/Lred-COOH複合体(還元型複合体)の製造
【実施例】
【0116】
【化22】
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【実施例】
【0117】
製造例7で製造したMIL-140C/Lox-COOH複合体 (197 mg, 68.4 μmol Lox-COOH)にアセトニトリル (13.0 mL)と水 (3.0 mL)とを加えた。ここに、0.1 M Na2S2O4/NaHCO3/H2O (3.0 mL, 300 μmol)を加えて、室温アルゴン下で36時間撹拌した。混合物をろ過し、アセトニトリル/水 (13:7(容積比), 20 mL)、アセトニトリル (20 mL)、クロロホルム (20 mL)の順で洗浄した。得られた固体を室温で真空乾燥することによりMIL-140C/Lred-COOH複合体 (166 mg)を得た。
【実施例】
【0118】
得られた複合体をフッ酸-ジメチルスルホキシド-d6により溶解させ、1H NMR測定を行ったところ、H2bpdcおよびH2Lox-COOHの双方のシグナルが観測された(図17)。またTGAでH2Lred-COOH由来の重量減少が見られないことからLred-COOHが骨格中に組み込まれたことが確認された(図18)。PXRDにより母体のMIL-140Cの結晶構造が維持されていることが確認された(図19)。N2ガス吸着測定により多孔性を保持していることが確認された(図20)。
【実施例】
【0119】
実験例1:炭素-炭素二重結合(C=C)の還元
【実施例】
【0120】
【化23】
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【実施例】
【0121】
(1)25 mLガラスフラスコに2-ベンジリデンマロノニトリル (1.6 mg, 10 μmol)と実施例1で製造したUiO-67/Lred-CONH2複合体 (72 mg)を加えて、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。アルゴンガスをバブリングしたアセトニトリル (5.0 mL)を加えて、室温アルゴン下で24時間撹拌した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、ろ液を濃縮し、1H NMR測定を行ったところ、2-ベンジルマロノニトリルの生成が確認された(転化率24%)。
【実施例】
【0122】
(2)25 mLガラスフラスコに2-ベンジリデンマロノニトリル (4.3 mg, 28 μmol)と実施例2で製造したMIL-140C/Lred-COOH複合体 (158 mg)を加えて、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。アルゴンガスをバブリングしたアセトニトリル (9.0 mL)と水 (1.0 mL)を加えて、室温アルゴン下で46時間撹拌した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、ろ液を濃縮し、1H NMR測定を行ったところ、2-ベンジルマロノニトリルの生成が確認された(転化率70%)。
【実施例】
【0123】
(対照実験1)
酸化型複合体を使用して上記(1)と同様の実験を行った。具体的には、25 mLガラスフラスコに2-ベンジリデンマロノニトリル (1.7 mg, 11 μmol)と製造例7で製造したUiO-67/Lox-COOH複合体 (36 mg)を加えて、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。アルゴンガスをバブリングしたアセトニトリル (5.0 mL)を加えて、室温アルゴン下で24時間撹拌した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、ろ液を濃縮し、1H NMR測定を行ったところ、2-ベンジルマロノニトリルの生成は検出されなかった。
【実施例】
【0124】
(対照実験2)
H-で処理したPCPを使用して上記(1)と同様の実験を行った。具体的には、DMF (6.0 mL)と水 (18.0 mL)の混合溶媒を脱気し、ここに1-ベンジル-3-カルバモイル-1,4-ジヒドロピリジン (17.0 mg, 79.3 μmol)及びUiO-67 (278 mg, 447 μmol bpdc)を加え、室温アルゴン下で3日間静置した。混合物をろ過し、DMF/水 (1:3(容積比), 120 mL)で、続いてDMF (120 mL)で洗浄した。得られた固体を、DMF (24 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返し、次に、アセトニトリル (24 mL)に懸濁させて遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。さらに、アセトニトリル (24 mL)に懸濁させて半日間室温で静置してから遠心分離した後に上澄みを除去する工程を3回繰り返した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、室温で真空乾燥することによりH-処理UiO-67 (155 mg)を得た。
【実施例】
【0125】
25 mLガラスフラスコに2-ベンジリデンマロノニトリル (1.6 mg, 10 μmol)と上記H-処理UiO-67 (41 mg)を加えて、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。アルゴンガスをバブリングしたアセトニトリル (5.0 mL)を加えて、室温アルゴン下で24時間撹拌した。生成物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、ろ液を濃縮し、1H NMR測定を行ったところ、2-ベンジルマロノニトリルの生成は検出されなかった。
【実施例】
【0126】
実験例2:CV測定
(1)0.1 M塩化カリウム水溶液中に、製造例3で合成した5種類の酸化型有機リンカーを溶解させ、作用電極にガラス状カーボン、参照電極に銀-塩化銀、カウンター電極に白金線を用いてサイクリックボルタンメトリー測定を行った。その結果を図21に示す。図21より、-0.9 V ~-1.4 V 付近に還元波を、0.6 V ~0.0 V付近に酸化波をそれぞれ観測した。これらの波の位置は置換基Rによって変動し、より電子供与性の置換基のほうが負電位側に波を与えることが示された。この結果より、メチル等の電子供与性の置換基を有するPCPのほうが、ヒドリド供与能力が高いことがわかる。
【実施例】
【0127】
(2)0.1 M塩化カリウム水溶液中で、カーボンペーストオイルと製造例(8-2)で製造したMIL-140C/Lox-COOH複合体との混合物を作用電極として用い、参照電極に銀-塩化銀、カウンター電極に白金線を用いてサイクリックボルタンメトリー測定を行った。その結果を図22に示す。図22より、-1.5 V 付近に還元波を,-0.2 V付近に酸化波をそれぞれ観測した。これらの波の位置は対応するジエステル体Me2Lox-COOH(製造例(3-2)で合成した酸化型有機リンカー)と比較して負電位側へシフトしていることが明らかとなった。この結果より、ヒドリド供与基をPCP骨格に導入することにより、還元能力が増大することが示唆される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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