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明細書 :無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-029914 (P2019-029914A)
公開日 平成31年2月21日(2019.2.21)
発明の名称または考案の名称 無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラム
国際特許分類 H04B  17/391       (2015.01)
H04W  24/04        (2009.01)
H04W  40/12        (2009.01)
FI H04B 17/391
H04W 24/04
H04W 40/12
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-149463 (P2017-149463)
出願日 平成29年8月1日(2017.8.1)
発明者または考案者 【氏名】佐々木 元晴
【氏名】猪又 稔
【氏名】鷹取 泰司
【氏名】井口 正人
出願人 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100151002、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 剛之
【識別番号】100201673、【弁理士】、【氏名又は名称】河田 良夫
審査請求 未請求
テーマコード 5K067
Fターム 5K067AA26
5K067DD36
5K067DD57
5K067EE06
5K067EE16
5K067JJ43
5K067LL14
要約 【課題】
従来、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを適切に行うことが難しいという問題があった。
【解決手段】
三次元空間に拡散する粒子群の予測値に基づいて無線通信システムの通信系統を切り替える無線通信切替方法であって、粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力するステップと、粒子拡散情報を用いて、粒子群による電波の回折損失および透過損失の推定を行うステップと、回折損失および透過損失の推定結果に基づいて無線通信システムにおける通信障害の発生の有無を判断するステップと、判断の結果に基づいて無線通信システムに対して通信系統の切り替えを指示するステップとを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
三次元空間に拡散する粒子群の予測値に基づいて無線通信システムの通信系統を切り替える無線通信切替方法であって、
前記粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力するステップと、
前記粒子拡散情報を用いて、前記粒子群による電波の回折損失および透過損失の推定を行うステップと、
前記回折損失および前記透過損失の推定結果に基づいて前記無線通信システムにおける通信障害の発生の有無を判断するステップと、
前記判断の結果に基づいて前記無線通信システムに対して通信系統の切り替えを指示するステップと
を有することを特徴とする無線通信切替方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信切替方法において、
前記回折損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を含む面内において、送信点と前記粒子群の外縁部と受信点との為す角度が最大となる前記粒子群の外縁部を回折点に設定し、前記回折点に対する回折損失として計算される
ことを特徴とする無線通信切替方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線通信切替方法において、
前記透過損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を結ぶ第一フレネルゾーンにおける粒子の総重量を求め、送信点と受信点との間に前記総重量と同じ重量で換算した単層媒質が存在する場合の透過損失として計算される
ことを特徴とする無線通信切替方法。
【請求項4】
三次元空間に拡散する粒子群の予測値に基づいて無線通信システムの通信系統を切り替える無線通信切替装置であって、
前記粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力する入力部と、
前記粒子拡散情報を用いて、前記粒子群による電波の回折損失および透過損失の推定を行う推定部と、
前記回折損失および前記透過損失の推定結果に基づいて前記無線通信システムにおける通信障害の発生の有無を判断する判断部と、
前記判断の結果に基づいて前記無線通信システムに対して通信系統の切り替えを指示する指示部と
を有することを特徴とする無線通信切替装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信切替装置において、
前記回折損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を含む面内において、送信点と前記粒子群の外縁部と受信点との為す角度が最大となる前記粒子群の外縁部を回折点に設定し、前記回折点に対する回折損失として計算される
ことを特徴とする無線通信切替装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の無線通信切替装置において、
前記透過損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を結ぶ第一フレネルゾーンにおける粒子の総重量を求め、送信点と受信点との間に前記総重量と同じ重量で換算した単層媒質が存在する場合の透過損失として計算される
ことを特徴とする無線通信切替装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の無線通信切替装置が行う処理をコンピュータに実行させる無線通信切替プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬路の劣化前に回線を切り替える無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、伝搬路の劣化等による通信障害の発生を極力回避することが求められている。ところが、火山の噴火後に空中に散布される火山灰などの粒子により伝搬路が劣化し、通信障害が生じる場合がある。火山灰などの粒子は、空間的な偏りをもつ状態で空中に分布し、無線通信システムの信号伝送区間において電波強度の減衰が引き起こされ、受信点における信号の劣化や通信断などの通信障害が生じる。このような通信障害を回避するためには、事前に中継局を経由する中継回線などへの切り替えを行う必要がある。ところが、事前切替を行うための適切な判断基準や方法については十分に検討されてこなかった。
【0003】
従来、火山灰の誘電率に関する調査がなされ、その電気的特性の検討が行われている(例えば、非特許文献1参照)。また、火山の噴火について、火山観測情報(噴煙高度など)をもとに、初期条件として噴出物の総質量や粒径分布を与えることで、気象データ(風向きや風量)を用いて火山灰の拡散情報を予測する従来手法が考えられている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】T.Oguchi, M.Udagawa, N.Nanba, M.Maki, and Y.Ishimine,“Measurements of Dielectric Constant of Volcanic Ash Erupted From Five Volcanoes in Japan”,IEEE Trans on Geoscience and Remote Sensing, Vol.47, No.4, pp.1089-1096,April 2009.
【非特許文献2】新堀敏基,“火山灰の輸送シミュレーションと降灰予報”,研究集会「火山現象の数値計算研究」,2009年11月16日.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の一つとして、受信点において、信号の減衰等により正常動作に支障が生じた後で、通信可能な中継局への切り替えや非常系動作へ切り替えを行う方法が考えられているが、通信障害による無線通信システムへの影響を完全に防ぐことができない。
【0006】
また、他の従来技術の一つとして、技術者が粒子の噴出点や粒子群の観測値など情報に基づいて粒子群の予測値を予想し、受信点における信号減衰等による通信障害の発生の有無を判断して、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作へ切り替えを行う方法が考えられているが、技術者の予想が適切でない場合、通信障害の影響を受けないときでも不要な回線の切り替えを行ってしまう可能性がある。
【0007】
このように、火山灰などによる通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作へ切り替えを適切に行う方法についての検討は十分に行われていなかった。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、火山灰などの粒子群の予測値を含む粒子拡散情報に基づいて電波伝搬特性を推定することにより、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを適切に行うことができる無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、三次元空間に拡散する粒子群の予測値に基づいて無線通信システムの通信系統を切り替える無線通信切替方法であって、前記粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力するステップと、前記粒子拡散情報を用いて、前記粒子群による電波の回折損失および透過損失の推定を行うステップと、前記回折損失および前記透過損失の推定結果に基づいて前記無線通信システムにおける通信障害の発生の有無を判断するステップと、前記判断の結果に基づいて前記無線通信システムに対して通信系統の切り替えを指示するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記回折損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を含む面内において、送信点と前記粒子群の外縁部と受信点との為す角度が最大となる前記粒子群の外縁部を回折点に設定し、前記回折点に対する回折損失として計算されることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記透過損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を結ぶ第一フレネルゾーンにおける粒子の総重量を求め、送信点と受信点との間に前記総重量と同じ重量で換算した単層媒質が存在する場合の透過損失として計算されることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、三次元空間に拡散する粒子群の予測値に基づいて無線通信システムの通信系統を切り替える無線通信切替装置であって、前記粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力する入力部と、前記粒子拡散情報を用いて、前記粒子群による電波の回折損失および透過損失の推定を行う推定部と、前記回折損失および前記透過損失の推定結果に基づいて前記無線通信システムにおける通信障害の発生の有無を判断する判断部と、前記判断の結果に基づいて前記無線通信システムに対して通信系統の切り替えを指示する指示部とを有することを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、前記回折損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を含む面内において、送信点と前記粒子群の外縁部と受信点との為す角度が最大となる前記粒子群の外縁部を回折点に設定し、前記回折点に対する回折損失として計算されることを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明において、前記透過損失は、前記粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点を結ぶ第一フレネルゾーンにおける粒子の総重量を求め、送信点と受信点との間に前記総重量と同じ重量で換算した単層媒質が存在する場合の透過損失として計算されることを特徴とする。
【0015】
第7の発明は、第4の発明から第6の発明のいずれか1つの発明に記載の無線通信切替装置が行う処理をコンピュータに実行させる無線通信切替プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、火山灰などの粒子群の予測値を含む粒子拡散情報に基づいて電波伝搬特性を推定することにより、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る無線通信切替装置100の構成例を示す図である。
【図2】一実施形態に係る無線通信切替装置100の処理例を示す図である。
【図3】一実施形態に係る無線通信切替装置100の処理の概要を示す図である。
【図4】回折損失及び透過損失の推定方法を説明する図である。
【図5】比較例1の無線通信切替方法の処理例を示す図である。
【図6】比較例1の無線通信切替方法の処理の概要を示す図である。
【図7】比較例2の無線通信切替方法の処理例を示す図である。
【図8】比較例2の無線通信切替方法の処理の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラムの実施形態について説明する。

【0019】
図1は、本実施形態に係る無線通信切替装置100の構成例を示す。図1において、無線通信切替装置100は、粒子拡散情報予測値入力部101、粒子拡散情報保持部102、伝搬特性推定部103、推定結果保持部104、障害発生判断部105、系統切替指示部106を有する。

【0020】
ここで、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、不図示の無線通信システムを管理する装置であり、通信障害が発生する前に通信系統の切り替え(中継回線や非常系動作への切り替え)を無線通信システムに指示することができる。本実施形態では、火山の噴火後に空中に散布される火山灰などの粒子により伝搬路が劣化し、無線通信システムに通信障害が生じる前に、中継回線や非常系動作への切り替えを行う場合について説明する。

【0021】
図1において、粒子拡散情報予測値入力部101は、火山が噴火したときに外部のコンピュータなどで火山灰の輸送シミュレーションを行って求められた粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を入力する。

【0022】
ここで、粒子拡散情報の一例を下記に示す。
・粒子群の情報は、例えば、粒子の種類や成分、大きさ、重さ、密度などの情報である。
・粒子噴出点は、例えば、火山の噴火口の三次元座標(緯度(x軸)、経度(y軸)、高度(z軸))の情報である。
・粒子群の観測値は、例えば、粒子群が存在している三次元空間上の位置や範囲などの情報である。一例として、(緯度x1,経度y1)を中心として半径40km、高さ10kmから15kmの範囲内などの情報である。さらに、拡散方向(例えば北東方向)や、移動速度(例えば時速10km)などの情報を含めてもよい。
・粒子群の予測値は、例えば、予測時間ごとの粒子群の移動先の三次元空間上の予測位置や予測範囲などの情報である。一例として、例えば、日時が6/1の10:00の予測位置及び予測範囲が(緯度x2,経度y2)を中心として半径45km、高さ8kmから12kmの範囲内などの情報である。なお、予測値は、予め決められた一定時間ごとに得られるようにしてもよい。例えば、上述の例の1時間後の6/1の11:00の予測位置及び予測範囲が(緯度x3,経度y3)を中心として半径50km、高さ7kmから13kmの範囲内などのように、外部から日時別の予測値が与えられる。このように、予測値は、粒子群の観測値や気象情報(風速、風向、気象予報など)に基づいて、火山灰の輸送シミュレーションを行って求めた将来の時間経過に伴う粒子群の拡散予測の情報である。

【0023】
粒子拡散情報保持部102は、粒子拡散情報予測値入力部101が外部のコンピュータなどから入力する粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を保持する記憶装置(半導体メモリやハードディスクなど)で構成されるデータベースである。粒子拡散情報保持部102が保持する情報は、例えば、将来の時間経過に伴う粒子群の予測値の情報を少なくとも有するが、粒子群、粒子噴出点、観測値などを含む粒子拡散情報が保持されてもよい。

【0024】
伝搬特性推定部103は、粒子拡散情報保持部102に保持されている粒子群の予測値に基づいて、送信点(無線送信局のアンテナ位置)と受信点(無線受信局のアンテナ位置)との間の伝搬経路に粒子群が存在する場合の電波伝搬特性(伝搬損失や回折損失など)や受信点での受信電力などを推定する。なお、伝搬特性推定部103は、送受信点間の距離や送受信局で使用される無線通信周波数や送受信電力などの情報を予め内部に保持しているものとする。ここで、電波伝搬特性の推定方法については、後述する。

【0025】
推定結果保持部104は、伝搬特性推定部103が推定した結果を保持する記憶装置(半導体メモリやハードディスクなど)である。ここで、推定結果は、例えば、予測日時ごとに推定された送受信点間の電波伝搬特性や受信点での受信電力などの情報である。なお、推定結果保持部104は、例えば、予測日時ごとの推定結果をテーブルとして保持する。

【0026】
障害発生判断部105は、推定結果保持部104に保持されている送受信点間の電波伝搬特性や受信点での受信電力などの情報に基づいて、受信電力の低下による通信品質の劣化や通信断が発生するか否かを判断する。例えば、障害発生判断部105は、送受信局間の通信に使用している変調方式や送信電力において、受信点で適切なデータ誤り率を実現するために必要な受信電力が得られるか否かを判断する。そして、障害発生判断部105は、受信点において、必要な受信電力が得られる場合は通信障害が発生しない、必要な受信電力が得られない場合は通信障害が発生する、と判断する。

【0027】
系統切替指示部106は、障害発生判断部105が通信障害が発生すると判断した場合に、通信系統の切り替え(中継回線や非常系動作への切り替え)を無線通信システムに指示し、障害発生判断部105が通信障害が発生しないと判断した場合には中継回線や非常系動作への切り替えを行わない。ここで、中継回線は、送信点の送信局から受信点の受信局へ直接通信するのではなく、中継局を経由して通信する回線である。無線通信システムの場合は、例えば、送信局及び受信局において、送受信アンテナを中継局用のアンテナへ切り替える必要があるので、無線通信システムは、アンテナ切替装置に対して、中継局用のアンテナへ切り替えるよう制御信号を出力する。一方、非常系動作とは、例えば、使用している無線通信システムが利用不可能な場合に、別のシステム(例えば移動型通信局など)を担当部署に出動させるように要請するためのアラートを出す動作などである。

【0028】
このようにして、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、火山灰が空間分布した場合の粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を外部から入力して電波伝搬特性の推定を行うことにより、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを適切に行うことができる。

【0029】
図2は、本実施形態に係る無線通信切替装置100の処理例を示す。なお、図2の処理は、図1で説明した各ブロックが連携して行う処理である。

【0030】
(ステップS101)図1で説明した無線通信切替装置100において、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行う一連の処理を開始する。なお、本処理は、無線通信システムが可動中に常に動作していてもよいし、火山の噴火などが発生したときに外部の警報システムなどが発報する警報をトリガとして動作を開始するようにしてもよい。

【0031】
(ステップS102)粒子拡散情報予測値入力部101は、粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を外部のコンピュータから読み込む。なお、外部のコンピュータと粒子拡散情報予測値入力部101は、ネットワークを介して接続されているものとする。そして、粒子拡散情報予測値入力部101が読み込んだ粒子群の予測値を含む粒子拡散情報は、粒子拡散情報保持部102に記憶される。

【0032】
(ステップS103)伝搬特性推定部103は、ステップS102で推定結果保持部104に記憶された粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を用いて、粒子群に対する回折損失や透過損失などの電波伝搬特性を推定する。そして、伝搬特性推定部103の推定結果は、推定結果保持部104に記憶される。ここで、電波伝搬特性の推定方法については、後述する。

【0033】
(ステップS104)障害発生判断部105は、ステップS103で推定された粒子群に対する回折損失や透過損失などの電波伝搬特性や受信点での受信電力など推定結果に基づいて、無線通信システムへの通信障害(例えば通信断)が発生するか否かを判別する。そして、障害発生判断部105が、例えば、受信点での受信電力の低下により通信障害が発生すると判断した場合はステップS105の処理に進み、通信障害が発生しないと判断した場合はステップS102の処理に戻る。

【0034】
(ステップS105)系統切替指示部106は、ステップS104において、通信断が発生すると判断されたので、通信障害が発生する前に異常時の系統(中継局を経由する中継回線や非常系動作など)への切り替えを無線通信システムに指示する。ここで、無線通信システムは、送信局と受信局の間の通信経路を任意に切り替えることができ、例えば、無線通信システムは、送信局と受信局との間に粒子群の影響を受けない中継局を挿入して、送信局->中継局->受信局の経路で通信を行うように切り替える。

【0035】
(ステップS106)無線通信切替装置100は、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行う処理を終了する。なお、無線通信システムが粒子群の拡散する経路に複数の回線を有している場合は、ステップS106で処理を終了せずにステップS102に戻って同様の処理を繰り返し実行してもよい。例えば、火山の噴火が継続している場合、気象状況に応じて粒子群の位置が変化するので、常に中継局への切り替えや非常系動作への切り替えが必要であるか否かを判断し続けなければならない。このような場合は、図2のステップS106で処理を終了せずにステップS102に戻って同様の処理を繰り返すことにより、通信障害が発生する前に対処することが可能になる。

【0036】
このように、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、火山灰が空間分布した場合の粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を外部から入力して電波伝搬特性の推定を行うことにより、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを適切に行うことができる。

【0037】
ここで、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、図1に示した各ブロックを有する装置として説明したが、上記の処理に対応するプログラムを実行するコンピュータでも実現できる。なお、プログラムは、記録媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。

【0038】
図3(a)は、距離をx軸,y軸,z軸で示した三次元空間上の粒子拡散情報の一例を示す。図3(a)において、粒子拡散情報は、図1の粒子拡散情報予測値入力部101で説明したように、粒子群の情報、粒子の噴出点の三次元座標、噴出点から拡散される粒子群の観測値、時間と共に移動する粒子群の予測値、などの情報を含む。粒子の噴出点の三次元座標(x2,y2,z2)は、例えば、緯度x2=35゜21.64´、経度y2=138゜43.64´、高度z2=3772mのように入力される。噴出点から拡散される粒子群の観測値は、例えば、噴出点(x2,y2)を中心とする半径50kmの領域で高度3000mから20000mの範囲内、などの分布位置を示す情報である。時間と共に移動する粒子群の予測値は、例えば、噴火時刻が10:00:00である場合、時刻10:30:00における粒子群の予測値は、緯度x3、経度y3の地点(x3,y3)と、緯度x4、経度y4の地点(x4,y4)と、緯度x5、経度y5の地点(x5,y5)とを曲線で結ぶ領域で高度2000mから15000mの範囲内、などの分布位置の予測情報である。

【0039】
このような粒子拡散情報が外部のコンピュータなどから粒子拡散情報予測値入力部101に入力される。これにより、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が入る日時を予測することができる。なお、無線通信切替装置100は、無線通信システムの送信点および受信点の三次元座標が予め分かっているので、予測される粒子群の三次元座標から送信点と受信点との間に粒子群が入る日時や拡散状態などを知ることができる。

【0040】
図3(b)は、送信点と受信点との間に粒子群が入ったときの回折損失および透過損失の一例を示す。図3(b)において、回折損失は、送信点から受信点へ送信される電波が送信点と受信点とを含む面内に存在する粒子群で回折されるときの損失である。また、透過損失は、送信点から受信点へ送信される電波が送信点と受信点とを含む面内に存在する粒子群を透過するときの損失である。本実施形態に係る無線通信切替装置100は、回折損失および透過損失を推定して、受信点での受信レベルを計算する。なお、回折損失および透過損失の推定例については、後述する図4を用いて説明する。

【0041】
図3(c)は、図3(b)と同様の送信点と受信点とを示し、無線通信システムへ指令して事前切替を行う処理の一例を示す。図3(c)において、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、粒子群による回折損失および透過損失の推定値に基づいて受信点での受信レベルの低下量を計算し、無線通信システムに通信障害が生じるか否かを判断する。そして、無線通信切替装置100は、通信障害が生じると判断した場合、通信障害が生じる前に粒子群の影響を受けない中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを無線通信システムに指令する。

【0042】
このようにして、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、外部のコンピュータなどから入力される粒子群の予測値を含む粒子拡散情報に基づいて無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が入ったときの回折損失および透過損失を推定して通信障害の有無を判断する。そして、無線通信切替装置100は、粒子群が送信点と受信点との間に入る前に粒子群の影響を受けない中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを無線通信システムに指令して、事前に通信障害を回避することができる。

【0043】
図4は、回折損失および透過損失の推定例を示す。図4において、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、外部のコンピュータなどから入力される粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を元に粒子群の予測位置や予測範囲を把握し、送信点と受信点を含む面内において、送信点aと粒子群の外縁部と受信点bとの為す角度αが最大となる粒子群の外縁部の位置を回折点cに設定する。そして、無線通信切替装置100は、回折点cに対する回折損失を計算する。なお、回折損失の計算方法は既存手法(例えば、ナイフエッジ回折損失)とする。

【0044】
また、図4において、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、外部のコンピュータなどから入力される粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を元に、周知の手法により送信点aと受信点bを結ぶ第一フレネルゾーンにおける粒子の総重量を求める。そして、無線通信切替装置100は、送信点aと受信点bとの中間に求めた総重量と同じ重量の単層媒質が存在すると仮定した場合に換算して透過損失を計算する。

【0045】
このようにして、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、粒子群の予測値を含む粒子拡散情報に基づいて、送信点と受信点との間に粒子群が到来したときの回折損失及び透過損失を推定することにより、精度の高い電波伝搬特性を求めることができ、受信点において通信障害が発生するか否かを適切に判断することができる。

【0046】
図5は、比較例1の無線通信切替方法の処理を示す。なお、図5の処理は、図1で説明した無線通信切替装置100とは異なる比較例1の従来の無線通信切替装置により実行される。

【0047】
(ステップS801)比較例1の無線通信切替装置において、通信障害が生じた後で通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行う一連の処理を開始する。

【0048】
(ステップS802)比較例1の無線通信切替装置は、無線通信システムの受信点での出力を読み込む。なお、受信点での出力は、受信電力や受信データ誤り率など、通信障害が生じるか否かを判断できるパラメータである。

【0049】
(ステップS803)比較例1の無線通信切替装置は、ステップS802で読み取った受信点での出力が異常であるか否かを判断する。例えば受信電力が予め設定された電力以下になった場合や、受信データ誤り率が予め決められた誤り率以下になった場合、或いは、通信断が発生した場合、などにおいて、受信点での出力が異常であると判断される。そして、受信点での出力が異常であると判断された場合は、ステップS804の処理を行い、受信点での出力が異常ではないと判断された場合は、ステップS802の処理に戻る。

【0050】
(ステップS804)比較例1の無線通信切替装置は、ステップS803において受信点での出力が異常であると判断されたので、無線通信システムを異常時の系統(中継局を経由する中継回線や非常系動作など)へ切り替える指令を無線通信システムに出力する。

【0051】
このように、比較例1の無線通信切替装置は、火山灰による通信障害が生じた後で通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うので、一時的に通信品質が悪くなったり、通信断が発生するという問題がある。

【0052】
図6(a)は、図3(a)と同様の図で、粒子拡散情報の一例を示す。図3(a)との違いは、粒子群の将来の拡散状態を予測するのではなく、常に実際の観測値を用いることである。比較例1の無線通信切替装置では、図6(a)に示すように、無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が実際に到達するまでわからないという問題がある。これに対して、本発明の無線通信切替装置100は、図3(a)で説明したように、時間と共に移動する粒子群の予測値を含む粒子拡散情報を用いるので、例えば無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が到達する日時や到達したときの粒子群の位置,範囲,密度などを予測できる。

【0053】
図6(b)は、無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が実際に到達したときの影響を観測する一例を示す。図6(b)において、送信点から受信点へ送信される電波は、送信点と受信点との間に存在する粒子群の影響を受け、受信点における受信信号に減衰等が発生する。このため、無線通信システムは、正常な通信を行うことが出来ず、通信に支障が生じる。

【0054】
図6(c)は、図3(c)と同様の図で、無線通信システムへ指令して中継局や非常系回線への切り替えを行う処理の一例を示す。図3(c)との違いは、通信障害が生じる前に中継局や非常系回線への切り替えを行うのではなく、通信障害が生じた後で中継局や非常系回線への切り替えを行うことである。

【0055】
このように、比較例1の無線通信切替装置は、火山灰による通信障害が生じた後で通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うので、一時的に通信品質が悪くなったり、通信断が発生するという問題がある。

【0056】
図7は、比較例2の無線通信切替方法の処理を示す。なお、図7の処理は、図1で説明した無線通信切替装置100とは異なる比較例2の従来の無線通信切替装置により実行される。なお、比較例2の無線通信切替装置は、無線通信システムを管理する技術者が介在して処理を行う。

【0057】
(ステップS901)比較例2の無線通信切替装置において、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行う一連の処理を開始する。

【0058】
(ステップS902)比較例2の無線通信切替装置は、粒子拡散情報の観測値を外部から読み込む。

【0059】
(ステップS903)比較例2の無線通信切替装置では、技術者がステップS902で読み込んだ観測値に基づいて、粒子群の予測値を予想し、無線通信システムに通信障害などの異常が発生するか否かを判断する。そして、技術者が、無線通信システムに異常が発生すると判断した場合はステップS904の処理を行う。なお、技術者が無線通信システムに異常が発生しないと判断した場合はステップS902の処理に戻って同様の処理を繰り返し行う。

【0060】
(ステップS904)比較例2の無線通信切替装置は、ステップS903で無線通信システムに異常が発生すると判断されたので、無線通信システムを異常時の系統(中継局を経由する中継回線や非常系動作など)へ切り替える指令を無線通信システムに出力する。

【0061】
このように、比較例2の無線通信切替装置は、火山灰による通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うことができる。しかし、技術者が外部から入力する粒子群の観測値を見ながら粒子群の予測値を求めるため、予測値の精度が低くなったり、また、回折損失や透過損失などの電波伝搬特性の適切な推定を行わずに粒子群による無線通信への影響を判断して事前に中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うので、実際に影響を受けないときでも不要な回線切替が行われることになる。なお、一般的に、異なる回線へ切り替えることにより、通信速度など何らかの通信品質の変動が生じる場合があるので、不要な回線の切り替えを行わないのが望ましい。

【0062】
図8(a)は、図3(a)と同様の図で、粒子拡散情報の一例を示す。なお、比較例2の無線通信切替装置では、図3(a)で説明した本発明に係る無線通信切替装置100と同様に粒子群の予測値を用いるが、外部のコンピュータなどによるシミュレーションではなく、技術者が粒子群の観測値から予想した予測値を用いる。このため、例えば無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が到達する日時や到達したときの粒子群の位置,範囲,密度などを適切に予測することができない場合がある。

【0063】
図8(b)は、無線通信システムの送信点と受信点との間に粒子群が実際に到達したときの影響を観測する一例を示す。図8(b)において、技術者は、図8(a)で予想した予測値に基づいて、送信点から受信点へ送信される電波が送信点と受信点との間に存在する粒子群の影響による受信点での受信信号の減衰量などを計算する。ここで、本実施形態に係る無線通信切替装置100で説明した図3(b)との違いは、透過損失および回折損失などの電波伝搬特性の推定を適切に行うか否かであり、図8(b)の例では透過損失および回折損失などの電波伝搬特性の推定が適切に行われていない場合を示している。

【0064】
図8(c)は、図3(c)と同様の図で、無線通信システムへ指令して中継局や非常系回線への切り替えを行う処理の一例を示す。図8(c)では、本発明に係る無線通信切替装置100で説明した図3(c)の場合と同様に事前切替を実行するが、粒子群の影響が実際に生じない場合でも不要な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えが行われることである。これは、図8(a)及び図8(b)で説明したように、技術者が粒子群の観測値を元に予測値を求めたり、透過損失および回折損失などの電波伝搬特性の推定を適切に行っていないためである。

【0065】
このように、比較例2の無線通信切替装置は、火山灰による通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うことができる。しかし、技術者が粒子群の予測値の計算や電波伝搬特性の推定などを適切に行わずに粒子群による無線通信への影響を判断して中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを行うため、実際に影響を受けないときでも不要な切り替えが行われることになる。これに対して、本発明に係る無線通信切替装置100は、比較例2のように技術者が予想した粒子群の予測値を用いて無線通信システムへの影響を予想するのではなく、外部のコンピュータなどから入力する粒子群の予測値を含む粒子拡散情報に基づいて、粒子群による透過損失および回折損失などの無線伝搬特性を適切に推定して通信障害が発生する可能性を判断する。これにより、本実施形態に係る無線通信切替装置100は、通信障害が生じる前に通信可能な中継局への切り替えや非常系動作への切り替えを高い精度で行うことができる。

【0066】
以上、実施形態において説明してきたように、本発明に係る無線通信切替方法、無線通信切替装置および無線通信切替プログラムは、火山灰などの粒子群による無線通信システムの通信障害の発生を事前に回避することができる。
【符号の説明】
【0067】
100・・・無線通信切替装置;101・・・粒子拡散情報予測値入力部;102・・・粒子拡散情報保持部;103・・・伝搬特性推定部;104・・・推定結果保持部;105・・・障害発生判断部;106・・・系統切替指示部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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