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明細書 :錯体,ペロブスカイト層及び太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-055916 (P2019-055916A)
公開日 平成31年4月11日(2019.4.11)
発明の名称または考案の名称 錯体,ペロブスカイト層及び太陽電池
国際特許分類 C07F   7/24        (2006.01)
H01L  51/44        (2006.01)
H01L  51/48        (2006.01)
FI C07F 7/24 CSP
H01L 31/04 112Z
H01L 31/04 182
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-179641 (P2017-179641)
出願日 平成29年9月20日(2017.9.20)
発明者または考案者 【氏名】若宮 淳志
【氏名】香月 幸恵
【氏名】尾崎 雅司
【氏名】嶋崎 愛
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116850、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 隆行
【識別番号】100165847、【弁理士】、【氏名又は名称】関 大祐
審査請求 未請求
テーマコード 4H049
5F151
Fターム 4H049VN04
4H049VP01
4H049VP02
4H049VU24
5F151AA11
5F151FA02
5F151FA06
要約 【課題】塗布液を塗布した後に,貧溶媒を塗布するまでの時間を十分に確保できるペロブスカイト層の製造方法や,その塗布液に含まれる錯体,ペロブスカイト前駆体,及び太陽電池の製造方法のを提供する。
【解決手段】式(I)で示される化合物と,1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン,スルホラン,N,N-ジメチルアセトアミド,テトラメチレンスルホキシド又はN,N-ジメチルアセトアミドを含む錯体。AMn1m1・・・(I)(Aはメチルアンモニウムカチオン(CHNH),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)又はセシウムカチオン(Cs);MはPb,Ge又はSn;XはF,Cl,Br又はI;n1は,0.8~1.2;m1は2.8~3.2)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)で示される化合物と,
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン,スルホラン,N,N-ジメチルアセトアミド,テトラメチレンスルホキシド又はN,N-ジメチルアセトアミドを含む錯体。
AMn1m1・・・(I)
(式(I)中,
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)又はセシウムカチオン(Cs)であり,
Mは,Pb,Ge,又はSnであり,
Xは,F,Cl,Br,又はIであり,
n1は,0.8~1.2であり,
m1は,2.8~3.2である。)
【請求項2】
請求項1に記載の錯体であって,
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH)又はホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)であり,
Mは,Pbであり,
Xは,Br,又はIである錯体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の錯体を含むペロブスカイト前駆体。
【請求項4】
ペロブスカイト層の製造方法であって,
式(I)で示される化合物と,
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン,スルホラン,テトラメチレンスルホキシド又はN,N-ジメチルアセトアミドを含む溶液を基板に塗布し塗布層を得る塗布工程と,
前記塗布工程の後に,前記塗布層に貧溶媒を添加する,貧溶媒添加工程と,
前記貧溶媒添加工程の後に,前記基板を加熱する加熱工程と,
を含み,
前記塗布工程の終わりから,前記貧溶媒添加工程までの時間が10秒以上5分以下である,
方法。

AMn1m1・・・(I)
(式(I)中,
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)又はセシウムカチオン(Cs)であり,
Mは,Pb,Ge,又はSnであり,
Xは,F,Cl,Br,又はIであり,
n1は,0.8~1.2であり,
m1は,2.8~3.2である。)
【請求項5】
請求項4に記載のペロブスカイト層の製造方法によりペロブスカイト層を得る工程を含む,太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,塗布液を塗布した後に,貧溶媒を塗布するまでの時間を十分に確保できるペロブスカイト層の製造方法や,その塗布液に含まれる錯体,ペロブスカイト前駆体,及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2017/104792号パンフレットには,ペロブスカイト構造を有する化合物とジメチルホルムアミド(DMF)分子からなる錯体の他,ペロブスカイト層及び太陽電池の製造方法が記載されている。この公報に記載された太陽電池の製造方法は,ロール・トゥ・ロールによる大量生産を考慮したものである。しかしながら,ペロブスカイト構造を有する化合物とDMFを含む溶液を塗布した後に,貧溶媒を滴下するまでの期間が1~5秒とされ,しかもできる限り短くする必要があるとされている(段落[0059])。このため,この公報に記載された方法では,ロール・トゥ・ロールにてペロブスカイト層を形成するためには,制約があった。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開WO2017/104792号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで,本発明は,塗布液を塗布した後に,貧溶媒を塗布するまでの時間を十分に確保できるペロブスカイト層の製造方法や,その塗布液に含まれる錯体,ペロブスカイト前駆体,及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,基本的には,ペロブスカイト構造を有する化合物と,所定の化合物を含む溶液を用いることで,貧溶媒を添加するまでに十分な時間を確保できるという実施例による知見に基づく。
【0006】
本発明は,第1に錯体に関する。この錯体は,ペロブスカイト材料である。
この錯体は,式(I)で示される化合物と,
(1)1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(「DMTHP」と略記),
(2)スルホラン(テトラヒドロチオフェン1,1-オキシド:「SU」と略記),
(3)テトラメチレンスルホキシド(「TS」と略記),又は
(4)N,N-ジメチルアセトアミド(「DMA」と略記)を含む錯体である。
【0007】
AMn1m1・・・(I)
(式(I)中,
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)又はセシウムカチオン(Cs)であり,
Mは,Pb2+,Ge2+,又はSn2+であり,
Xは,F,Cl,Br,又はIであり,
n1は,0.8~1.2であり,
m1は,2.8~3.2である。)


式(I)で示される化合物は,好ましくは,ペロブスカイト構造を有する化合物である。DMTHP,SU,及びDMAは,錯体を構成する分子(L)であることが好ましい。
この錯体は,実質的に,ペロブスカイト構造を有する化合物と分子(L)のみからなるものであってもよいし,不可避不純物といった不純物を含んでいてもよい。この錯体は,例えばアニールすることで,分子(L)が脱離し,ペロブスカイト構造を有する化合物を生ずる。このため,この錯体又はこの錯体を含む組成物は,ペロブスカイト前駆体として機能する。分子(L)は,X線結晶構造解析を行うと,一般的に,式(I)で示される化合物による結晶構造の隙間に,溶媒として取り込まれている状態として観測される。その意味で,分子(L)は,結晶内の溶媒分子(intercalated solvent molecule:結晶溶媒)として存在するものであってもよい。
【0008】
次に,本発明は,ペロブスカイト層の製造方法に関する。
この方法は,まず式(I)で示される化合物と,上記の分子(L)を含む溶液を基板に塗布して塗布層を得る。次に,塗布層に貧溶媒を添加する。次に,基板を加熱する。このようにして,ペロブスカイト層を得る。この方法は,溶液を塗布してから,貧溶媒を添加するまでの時間を10秒以上とすることができる(好ましくは5分以下である)。このように,この方法は,貧溶媒を添加するまで比較的十分な時間を確保できるので,ロール・トゥ・ロールといった大量生産に用いることができる。このペロブスカイト層を製造する方法と,公知の方法を組み合わせることで,太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は,塗布液を塗布した後に,貧溶媒を塗布するまでの時間を十分に確保できるペロブスカイト層の製造方法や,その塗布液に含まれる錯体,ペロブスカイト前駆体,及び太陽電池の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。

【0011】
本発明は,第1に錯体(本発明の錯体)に関する。この錯体は,ペロブスカイト前駆体である。この錯体は,式(I)で示される化合物(本発明の化合物)と,
(1)1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(「DMTHP」と略記),
(2)スルホラン(テトラヒドロチオフェン1,1-オキシド:「SU」と略記),
(3)テトラメチレンスルホキシド(「TS」と略記),又は
(4)N,N-ジメチルアセトアミド(「DMA」と略記)を含む錯体である。

【0012】
AMn1m1・・・(I)
式(I)中,
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH),ホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH),又はセシウムカチオン(Cs)であり,
Mは,Pb2+,Ge2+,又はSn2+であり,
Xは,F,Cl,Br,又はIであり,
n1は,0.8~1.2であり,
m1は,2.8~3.2である。

【0013】
錯体は,以下の式(Ia)で示されるものであってもよい。
AMn1m1・(k)L (Ia)
Lは,上記(1)~(4)のいずれかの化合物(錯体を構成する分子(L))を示す。
は,0.8以上2.2以下の数を示す。
つまり,本発明の錯体は,AMn1m11分子あたり,1個又は2個の分子(L)が存在するものが好ましいが,2個以上の分子(L)が存在してもよい。kは,0.8以上1.2以下でもよいし,1.8以上2.2以下でもよく,
0.9以上2.1以下でもよいし,1又は2でもよい。

【0014】
Aは,メチルアンモニウムカチオン(CHNH)又はホルムアミジニウムカチオン(NHCHNH)であることが好ましい。
Mは,Pb2+であることが好ましい。
Xは,Br,又はIであることが好ましい。

【0015】
式(I)で示される化合物の例は,ヨウ化鉛メチルアンモニウム(CHNHPbI:「MAPbI」と略記),(CHNHPb:「MAPb」と略記,臭化鉛メチルアンモニウム(CHNHPbBr:「MAPbBr」と略記),ヨウ化鉛ホルムアミジニウム((NHCHPbI:「FAPbI」と略記),及び臭化鉛ホルムアミジニウム((NHCHPbBr:「FAPbBr」と略記)である。これらの中では,MAPbI及びFAPbIが好ましい。

【0016】
(1)1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(DMTHP),(2)スルホラン(テトラヒドロチオフェン1,1-オキシド:SU),(3)テトラメチレンスルホキシド(「TS」と略記),及び(4)N,N-ジメチルアセトアミド(「DMA」と略記)は,以下の式IIa~IIdで示される構造を有し,錯体を構成する分子(L)であることが好ましい。これらの化合物(分子(L))を,それぞれLとも略する。Lとして,(1)DMTHP,又は(2)SUが好ましい。また,(2)SUと(3)TSとは,類似した構造及び物性を有しており,同様の化学的挙動を起こすことが想定される。(1)DMTHP及び(4)DMAは,ともにアミド結合を有しており,物性が類似し,同様の化学的挙動を起こすことが想定される。この錯体は,実質的に,ペロブスカイト構造を有する化合物と分子(L)のみからなるものであってもよいし,不可避不純物といった不純物を含んでいてもよい。

【0017】
【化1】
JP2019055916A_000002t.gif

【0018】
具体的な本発明の錯体の例は,MAPbI・2DMTHP,FAPbI・2DMTHP,MAPbBr・2DMTHP,FAPbBr・2DMTHP,MAPbI・SU,FAPbI・SU,MAPbBr・SU,FAPbBr・SU,MAPbI・TS,FAPbI・TS,MAPbBr・TS,FAPbBr・TS,PBr(TS),MAPbI・DMA,FAPbI・DMA,MAPbBr・DMA,及びFAPbBr・DMAである。

【0019】
上記のような条件を満たす本発明の錯体は,針状の結晶として得られやすい。基板上に膜として形成した場合には,この針状の微結晶は,幅(直径)が10~100nm(特に20~80nm),長さが100~1000nm(特に200~800nm)が好ましい。この本発明の錯体は,基板上に膜として形成した場合には基板に対して水平方向に配向し,略平坦な膜が得られ得る。なお,本発明において,「略平坦な膜」とは,後述のように,走査型電子顕微鏡で測定した表面の平坦性が,水平方向500nm×500nmの範囲において,高低差が50nm以下であることを意味する。一方,本発明の錯体を単離し,各種原料として用いる場合は,例えば,二層拡散法(再結晶)により,針状の比較的大きな結晶としてもよい。この場合,この針状の微結晶は,幅(直径)が50~2000μm(特に100~1000μm),長さが1~50mm(特に1mm~3mm)が好ましい。

【0020】
上記のような条件を満たす本発明の錯体は,分子(L)が脱離することにより,ペロブスカイト材料を得ることができる。つまり,本発明の錯体は,ペロブスカイト前駆体として使用され得る。また,これらの錯体は実施例で示したように元素純度が高いペロブスカイト材料の前駆体として用いることができ,これにより,より高純度のペロブスカイト材料を得ることができる。

【0021】
本発明の錯体を製造する方法
本発明の錯体を製造する方法は,公知の方法を適宜採用すればよく,例えば,PbXで示される化合物とRXで示される化合物とを分子(L)を含む第1の有機溶媒に溶解させること(スキーム1)により得ることができる。ここで,X及びXは,同一でも異なってもよくハロゲン原子(特にヨウ素原子又は臭素原子)を示す。Rは,MA(メチルアンモニウム)又はFA(ホルムアミジニウム)を示す。

【0022】
第1の有機溶媒は,分子(L)自体が溶媒であってもよいし,分子(L)以外の溶媒を含んでもよい。本発明の分子(L)以外の溶媒の例は,ジメチルスルホキシド(DMSO)及びγ-ブチロラクトンである。一方,分子(L)以外の溶媒は,本発明の化合物と錯体を形成する能力が強い溶媒でないものが好ましい。第1の有機溶媒が,分子(L)以外の溶媒を含む場合,分子(L)とそれ以外の溶媒のモル比は,4:1以上100:1以下が好ましく,5:1以上10:1以下でもよい。
PbXで示される化合物とRXで示される化合物とを,第1の有機溶媒に溶解させる際には,各化合物の濃度は,本発明の錯体が得られやすい観点から,PbXで表される化合物の濃度は,例えば0.5~3.0モル/Lが好ましく,0.8~2.0モル/Lがより好ましい。また,RXで示される化合物の濃度は,例えば,0.5~3.0モル/Lが好ましく,0.8~2.0モル/Lがより好ましい。

【0023】
上記の工程(スキーム1)は,例えば,攪拌下,溶媒にPbXとRXを滴下することにより行う。PbXとRXのモル比は,通常1:1である。もっとも,PbXとRXのモル比は,1:3~3:1でもよいし,1:2~2:1でもよいし,2:3~3:2でもよい。攪拌速度は任意であり,10rpm以上200rpm以下でもよい。溶媒は過剰に存在してもよいし,PbX1モルに対し,溶媒が1モル又は2モル以上であってもよい。スキーム1は,加熱下に行ってもよい。加熱温度は,PbX,RX及び第1の有機溶媒に合わせて適宜調整すればよく,加熱温度の例は60℃以上110℃であり,70℃以上100℃以下でもよい。スキーム1の反応時間(滴下時間)は,適宜調整すればよく,例えば,10分以上2時間以下でもよく,15分以上1時間以下でもよいし,20分以上45分以下でもよい。

【0024】
スキーム1の後,溶液を室温まで空冷してもよい。その後,溶液に貧溶媒(第2の有機溶媒)を添加してもよい(スキーム2)。なお,スキーム1の後,溶液を用いて膜を形成し,その膜が乾燥する前に貧溶媒を滴下してもよい。
第2の有機溶媒が拡散して小さく(直径が10~100nm程度,長さが100~1000nm程度)針状の結晶からなる本発明の錯体が生成される。貧溶媒を用いることで,本発明の錯体が水平方向に配向し,略平坦な膜が得られやすくなる。

【0025】
第2の有機溶媒は,第2の有機溶媒が十分に拡散して本発明の錯体を得やすいという観点から,貧溶媒が好ましい。具体的な第2の有機溶媒の例は,トルエン,ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン,オルトジクロロベンゼン,ニトロベンゼン等の置換芳香族炭化水素;ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール,オクタノール等のアルコール;ヘキサン等の長鎖炭化水素(特にC4-10炭化水素);ピリジン;アセトニトリルである。これら第2の有機溶媒は,単独で使用することもできるし,2種以上を組合せて使用することもできる。なかでも,本発明の錯体が得られやすい観点から,第2の有機溶媒として,芳香族炭化水素が好ましく,トルエンがより好ましい。

【0026】
第2の有機溶媒の添加量は,特に制限されず,第2の有機溶媒が十分に拡散して本発明の錯体を得やすい観点から,第1の有機溶媒の使用量と,第2の有機溶媒の添加量との比が,第2の有機溶媒/第1の有機溶媒=0.05~2.0/1.0(体積比)が好ましく,0.1~1.3/1.0(体積比)がより好ましい。

【0027】
第2の有機溶媒を添加する場合,第2の有機溶媒が十分に拡散して本発明の錯体を単離しやすいという観点からは,その後長時間放置することが好ましい。例えば,5~100時間程度,特に10~50時間程度放置することが好ましい。一方,本錯体を成膜過程で生成させ,平坦性が高く緻密なペロブスカイト膜の中間体として用いる場合は,溶媒の乾燥の制御という観点から,第2の有機溶媒の添加を短時間で行い,その後速やかにアニール過程へと移行することが好ましい。例えば,第1の有機溶媒の溶液をスピンコートなどにより成膜する過程で,終了の1~5秒で第2の有機溶媒を滴下し,その後5分以内にアニール過程へと移行することが好ましい。

【0028】
本発明の錯体や本発明の錯体の膜を加熱すると,分子(L)が分離し,ペロブスカイト化合物が形成される。すなわち,本発明の錯体や本発明の錯体を含む膜は,ペロブスカイト前駆体として機能する。

【0029】
ペロブスカイト層を製造する方法
次に,ペロブスカイト層を製造する方法を説明する。この方法は,本発明の錯体を製造する方法を用いて,本発明の錯体を含む膜を形成し,膜(従って基板)をアニール等する方法であってもよい。
この方法は,まず式(I)で示される化合物と,上記の分子(L)を含む溶液を基板に塗布して塗布層を得る。次に,塗布層に貧溶媒を添加する。次に,基板を加熱する。このようにして,ペロブスカイト層を得る。この方法は,溶液を塗布してから,貧溶媒を添加するまでの時間を10秒以上とすることができる(好ましくは30秒以上,1分以上,又は2分以上であり,5分以下であってもよい)。このように,この方法は,貧溶媒を添加するまで比較的十分な時間を確保できるので,ロール・トゥ・ロールといった大量生産に用いることができる。このペロブスカイト層を製造する方法と,公知の方法を組み合わせることで,太陽電池を得ることができる。基板には,既に他の膜が形成されており,その膜の上にペロブスカイト層を形成してもよい。塗布層の膜厚の例は,10nm以上1000nm以下である。膜厚は,50nm以上500nm以下でもよいし,100nm以上500nm以下でもよいし,250nm以上500nm以下でもよい。

【0030】
次に,本発明の化合物を含む太陽電池(特にペロブスカイト型太陽電池)や,本発明の化合物を含む電子輸送層について説明する。

【0031】
本発明のペロブスカイト型太陽電池は,例えば,透明電極,(正孔)ブロッキング層,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び金属電極をこの順に備える。

【0032】
透明電極
透明電極は,電子輸送層の支持体であるとともに,(正孔)ブロッキング層を介してペロブスカイト層(光吸収層)より電流(電子)を取り出す機能を有する層であることから,導電性基板が好ましく,光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する透明導電層が好ましい。

【0033】
当該透明導電層としては,例えば,錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化錫(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜等が挙げられる。これら透明導電層の厚みは特に制限されず,通常,抵抗が5~15Ω/□となるように調整することが好ましい。当該透明導電層は,成形する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。

【0034】
また,当該透明導電層は,外部から保護するために,必要に応じて,透光性被覆体により覆われ得る。当該透光性被覆体としては,例えば,フッ素樹脂,ポリ塩化ビニル,ポリイミド等の樹脂シート;白板ガラス,ソーダガラス等の無機シート;これらの素材を組合せてなるハイブリッドシート等が挙げられる。これら透光性被覆体の厚みは特に制限されず,通常,抵抗が5~15Ω/□となるように調整することが好ましい。

【0035】
(正孔)ブロッキング層
(正孔)ブロッキング層は,正孔の漏れを防ぎ,逆電流を抑制して太陽電池特性(特に光電変換効率)を向上させるために設けられる層であり,透明電極とペロブスカイト層(光吸収層)との間に設けられることが好ましい。(正孔)ブロッキング層は,酸化チタン等の金属酸化物からなる層が好ましく,コンパクトTiO等のn型半導体で透明電極の表面を平滑且つ緻密に覆った層がより好ましい。「緻密」とは,電子輸送層中の金属化合物の充填密度より高密度で金属化合物が充填されていることを意味する。なお,透明電極と電子輸送層とが電気的に接続されなければ,ピンホール,クラック等が存在していてもよい。

【0036】
(正孔)ブロッキング層の膜厚は,例えば,5~300nmである。(正孔)ブロッキング層の膜厚は,電極への電子注入効率の観点より,10~200nmがより好ましい。

【0037】
(正孔)ブロッキング層は上記透明電極上に形成される。金属酸化物を(正孔)ブロッキング層に用いる場合,既知の方法に従って(例えば,非特許文献4,J. Phys. D: Appl. Phys. 2008, 41, 102002.等),スプレーパイロリシスを行うことにより作製できる。例えば,200~550℃(特に300~500℃)に加熱したホットプレート上に置いた透明電極に0.01~0.40M(特に0.02~0.20M)の金属アルコキシド(チタンジ(イソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)等のチタンアルコキシド等)のアルコール溶液(例えばイソプロピルアルコール溶液等)をスプレーで吹き付けて作製できる。

【0038】
その後,得られた基板を,酸化チタン(TiO等),チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等),チタンハロゲン化物(TiCl等)の水溶液中に浸漬して加熱することで,より緻密な膜とすることもできる。

【0039】
この水溶液の濃度は,0.1~1.0mMが好ましく,0.2~0.7mMがより好ましい。また,浸漬温度は30~100℃が好ましく,50~80℃がより好ましい。さらに,加熱条件は200~1000℃(特に300~700℃)で5~60分(特に10~30分)が好ましい。

【0040】
電子輸送層
電子輸送層は,ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ,光電変換効率を向上させるとともに,電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層は,基板上に形成してもよいが,(正孔)ブロッキング層の上に形成することが好ましい。また,上記の(正孔)ブロッキング層が,電子輸送層として機能してもよいし,電子輸送層が(正孔)ブロッキング層を兼ねてもよい。電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でもよい。また,電子輸送層は,酸化チタン(TiO)(メソポーラスTiOを含む),SnO層,又はZnO層であってもよい。電子輸送層は,メソポーラスTiO等多孔質構造を有していることが好ましい。多孔質構造とは,例えば,粒状体,針状体,チューブ状体,柱状体等が集合して,全体として多孔質な性質を有していることが好ましい。また,細孔サイズはナノスケールが好ましい。多孔質構造を有することにより,ナノスケールであるため,光吸収層の活性表面積を著しく増加させ,太陽電池特性(特に光電変換効率)を向上させるとともに,電子収集に優れる多孔質電子輸送層とすることができる。

【0041】
電子輸送層は,酸化チタン,酸化スズ等の金属酸化物からなる層であってもよい。なお,金属化合物が半導体である場合,半導体を使用する場合には,ドナーをドープすることもできる。これにより,電子輸送層がペロブスカイト層(光吸収層)に導入するための窓層となり,且つ,ペロブスカイト層(光吸収層)から得られた電力をより効率よく取り出すことができる。

【0042】
電子輸送層の厚みは,特に制限されず,ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から,10~300nm程度が好ましく,10~250nm程度がより好ましい。電子輸送層は,成形する材料に応じて公知の成膜方法を用いて得ることができる。例えば,(正孔)ブロッキング層の上に,5~50質量%(特に10~30質量%)の酸化チタンペーストのアルコール溶液(例えばエタノール溶液等)を塗布して作製することができる。酸化チタンペーストは公知又は市販品を用いることができる。塗布の方法は,スピンコート法が好ましい。なお,塗布は例えば15~30℃程度で行うことができる。

【0043】
ペロブスカイト層(光吸収層)
ペロブスカイト型太陽電池におけるペロブスカイト層(光吸収層)は,光を吸収し,励起された電子を移動させることにより,光電変換を行う層である。ペロブスカイト層(光吸収層)は,ペロブスカイト材料や,ペロブスカイト錯体を含む。ペロブスカイト層は,先に説明した方法に基づいて製造すればよい。ペロブスカイト層は,ロール・トゥ・ロールによる大量生産を実現することが好ましい。混合液をスピンコート,ディップコート,スクリーン印刷法,ロールコート,ダイコート法,転写印刷法,スプレー法,スリットコート法等,好ましくはスピンコートにより基板上に塗布することが好ましい。

【0044】
基板は,成膜する膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基板の材料も,本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず,公知の基板であってよく,有機化合物及び無機化合物のいずれも採用し得る。例えば,絶縁体基板,半導体基板,金属基板及び導電性基板(導電性フィルムも含む)のいずれも採用できる。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。

【0045】
前記金属膜の構成金属としては,例えば,ガリウム,鉄,インジウム,アルミニウム,バナジウム,チタン,クロム,ロジウム,ニッケル,コバルト,亜鉛,マグネシウム,カルシウム,シリコン,イットリウム,ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属等が挙げられる。半導体膜の構成材料としては,例えば,シリコン,ゲルマニウム等の元素単体,周期表の第3族~第5族,第13族~第15族の元素を有する化合物,金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,金属窒化物等が挙げられる。また,前記導電性膜の構成材料としては,例えば,スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化亜鉛(ZnO),アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),酸化スズ(SnO),酸化インジウム(In),酸化タングステン(WO)等が挙げられる。前記絶縁性膜の構成材料としては,例えば,酸化アルミニウム(AlO3),酸化チタン(TiO),酸化シリコン(SiO),窒化シリコン(Si),酸窒化シリコン(Si)等が挙げられ,絶縁性酸化物からなる絶縁性膜が好ましく,酸化チタン膜がより好ましい。本発明においては,導電性酸化物又は絶縁性酸化物からなる導電性膜が好ましく,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,フッ素ドープ酸化インジウム(FTO)等がより好ましい。

【0046】
前記基板の形状としては,どのような形状のものであってもよく,あらゆる形状に対して有効であり,例えば,平板や円板等の板状,繊維状,棒状,円柱状,角柱状,筒状,螺旋状,球状,リング状等が挙げられ,多孔質構造体を採用することもできる。本発明においては,板状の基板が好ましい。基板の厚さは,本発明においては特に限定されず,0.1μm~100mmが好ましく,1μm~10mmがより好ましい。基板がガラス基板の場合,基板の厚さの例は,0.1mm以上1cm以下であり,0.5mm以上3mm以下でもよいし,0.5mm以上2mm以下でもよい。また,基板が,PET基板や2軸延伸ポリエチレン2,6-ナフタレート(PEN)基板といった樹脂製の基板の場合,基板の厚さの例は,1μm以上200μm以下であり,5μm以上100μm以下でもよいし,10μm以上100μm以下でもよい。

【0047】
ペロブスカイト層は,本発明の錯体から得られるペロブスカイト材料又は本発明のペロブスカイト材料のみからなる層ともし得るし,電子輸送層との接着性の観点より,メソ酸化チタンや酸化アルミニウム等の金属酸化物及びペロブスカイト材料を含む層とすることもできる。

【0048】
ペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,光吸収効率と励起子拡散長とのバランス及び透明電極で反射した光の吸収効率の観点から,例えば,50~1000nmが好ましく,200~800nmがより好ましい。なお,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,100~1000nmの範囲内であることが好ましく,250~500nmの範囲内であることがより好ましい。具体的には,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚の下限値が100nm以上(特に250nm)以上であり,上限値が1000nm以下(特に500nm以下)であることが好ましい。本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の膜厚は,本発明の錯体からなる膜の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。

【0049】
また,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において高低差が50nm以下(-25nm~+25nm)であるものが好ましく,高低差が40nm以下(-20nm~+20nm)がより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,透明電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。なお,ペロブスカイト層(光吸収層)の平坦性とは,任意に決定した測定点を基準点とし,測定範囲内において最も膜厚が大きいところとの差を上限値,最も小さいところとの差を下限値としており,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。

【0050】
正孔輸送層
正孔輸送層は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuInSe,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi,MoO,Cr等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,spiro-OMeTADなどがより好ましい。

【0051】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF,SbCl,SbF等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t-ブチルピリジン(TBP),2-ピコリン,2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,30~200nmが好ましく,50~100nmがより好ましい。正孔輸送層を成膜する方法は,例えば,乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば,有機正孔輸送材料を含む溶液を,乾燥雰囲気下,ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し,30~150℃(特に50~100℃)で加熱することが好ましい。

【0052】
金属電極
金属電極は,透明電極に対向配置され,正孔輸送層の上に形成されることで,正孔輸送層と電荷のやり取りが可能である。金属電極としては,当業界で用いられる公知の素材を用いることが可能であり,例えば,白金,チタン,ステンレス,アルミニウム,金,銀,ニッケル等の金属又はこれらの合金が挙げられる。これらの中でも金属電極は,乾燥雰囲気下で電極を形成することができる点から,蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。 上記層構成以外の構成を有するペロブスカイト型太陽電池についても,同様の方法により,製造することができる。

【0053】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
有機EL素子は,例えば特開2017-123352号公報,特開2015-071619号公報に記載される通り,公知の素子であり,その製造方法も公知である。有機EL素子の例は,基板と,陽極と,陰極と,陽極と陰極との間に配置された有機層と,を有する。 そして,有機層は,陽極側から順に,正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,および電子注入層が,この順番で積層されて構成される。本発明の化合物は,電子輸送層における電子輸送材料として用いることができる。

【0054】
本発明は,太陽電池の製造方法をも提供する。この方法は,先に説明したペロブスカイト層の製造方法を用いて,基板上に,電子輸送(ブロッキング)層を形成する工程と,電子輸送層上にペロブスカイト層を形成する工程と,ペロブスカイト層上にホール輸送層を形成する工程と,ホール輸送層上に電極を形成する工程とを含む。
【実施例1】
【0055】
CH3NH3PbI3・2DMTHP (MAPbI3・2DMTHP)の合成
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(1,3-Dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone:DMTHP) 7.0 mL 中にPbI (2.34 g, 5.0 mmol)とヨウ化メチルアンモニウム(MAI; CHNHI; 800 mg, 5.0 mmol)を添加し,80 ℃ で 30 分間攪拌した後に室温まで放冷して橙色溶液を得た.スクリュー管に当該溶液を投入し,貧溶媒としてトルエンを 20 mL加えた.容器にフタをして室温で 3日間静置することで,合計 4.28 g(収率96%)の淡黄色針状の結晶を回収した.得られた淡黄色針状結晶に対して,ブルカー社製単結晶CCD-X線回析計(Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer)スマートアペックスIIウルトラ(SMART APEX II ULTRA),X線源:Mo Kα照射(radiation) (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.2θ角が 51.0 °の範囲において全部で 24994 個の反射を観測した.これらのうち 6989 個の反射が独立であり,Rint値は0.0230であった.直接法により解析した結晶データは以下の通りである.
【実施例1】
【0056】
C26H60I6N10O4Pb2; FW = 1752.62, crystal size 0.20 × 0.11 × 0.07 mm, Orthorhombic, Pna21, a = 15.9292(12) Å, b = 20.0253(15) Å, c = 15.2483(11) Å, V = 4864.0(6) Å, Z = 4, Dc = 2.393 g cm-3. The refinement converged to R1 = 0.0233, wR2 = 0.0435 (I > 2σ(I)), GOF = 1.035
【実施例1】
【0057】
単離した化合物の元素分析結果からCH3NH3PbI3・2DMTHP (MAPbI3・2DMTHP)であることを明らかにした.Anal. Calcd. for C13H30N5O2PbI3: C, 17.82; H, 3.45; N, 7.99%; Found: C, 17.81; H, 3.37; N, 7.89%.
【実施例2】
【0058】
CH(NH2)2PbI3・2DMTHP (FAPbI3・2DMTHP)の合成
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(1,3-Dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone :DMTHP) 1.5 mL 中にPbI2 (463 mg, 1.0 mmol)とヨウ化ホルムアミジニウム(FAI; CH(NH2)2I; 176 mg, 1.0 mmol)を添加し,90 ℃ で 30 分間攪拌した後に室温まで放冷して橙色溶液を得た.スクリュー管に当該溶液を投入し,貧溶媒としてトルエンを 5 mL加えた.容器にフタをして室温で 1 週間静置することで,合計 764 mg(収率85%)の淡黄色針状の結晶を回収した.得られた淡黄色針状結晶に対して,Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer(SMART APEX II ULTRA,X線源:Mo Kα radiation (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.2θ角が 51.0 °の範囲において全部で 6419 個の反射を観測した.これらのうち 4697 個の反射が独立であり,Rint値は0.0191であった.直接法により解析した結晶データは以下の通りである.
【実施例2】
【0059】
C13H29I3N6O2Pb; FW = 889.31, crystal size 0.16 × 0.10 × 0.07 mm, Triclinic, P-1, a = 8.0581(16) Å, b = 11.270(2) Å, c = 14.379(3) Å, V = 1203.2(4) Å, Z = 2, Dc = 2.455 g cm-3. The refinement converged to R1 = 0.0339, wR2 = 0.0875 (I > 2σ(I)), GOF = 1.049
【実施例2】
【0060】
単離した化合物の元素分析結果からCH(NH2)2PbI3・2DMTHP (FAPbI3・2DMTHP)であることを明らかにした.Anal. Calcd. for C13H29N6O2PbI3: C, 17.56; H, 3.29; N, 9.45%; Found: C, 17.94; H, 3.33; N, 9.55%.
【実施例3】
【0061】
CH3NH3PbBr3・2DMTHP (MAPbBr3・2DMTHP)の合成
1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(1,3-Dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidinone :DMTHP) 1.5 mL 中にPbBr2 (368 mg, 1.0 mmol)と臭化メチルアンモニウム(MABr; CH3NH3Br; 116 mg, 1.0 mmol)を添加し,90 ℃ で 30 分間攪拌した後に室温まで放冷して無色透明溶液を得た.スクリュー管に当該溶液を投入し,貧溶媒としてトルエンを 5 mL加えた.容器にフタをして室温で 1 週間静置することで,合計 400 mg(収率54%)の無色針状の結晶を回収した.得られた結晶に対して,Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer(SMART APEX II ULTRA,X線源:Mo Kα radiation (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.2θ角が 51.0 °の範囲において全部で 13221 個の反射を観測した.これらのうち 2908 個の反射が独立であり,Rint値は0.0303であった.直接法により解析した結晶データは以下の通りである.
【実施例3】
【0062】
C13H30IBr3N5O2Pb; FW = 735.34, crystal size 0.16 × 0.10 × 0.07 mm, Orthorhombic, Pnma, a = 7.7783(10) Å, b = 16.821(2) Å, c = 20.212(3) Å, V = 2644.5(6) Å, Z = 8, Dc = 3.694 g cm-3. The refinement converged to R1 = 0.0399, wR2 = 0.1186 (I > 2σ(I)), GOF = 1.261
【実施例4】
【0063】
CH3NH3PbI3・スルホラン(Sulfolane) (MAPbI3・スルホラン(Sulfolane))の合成
テトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシド(スルホラン)(Tetrahydrothiophene 1,1-Dioxide (Sulfolane)) 7.0 mL 中にPbI2 (1.21 g, 2.6 mmol)とヨウ化メチルアンモニウム(MAI; CH3NH3I; 406 mg, 2.6 mmol)を添加し,80 ℃ で 30 分間攪拌した後に室温まで放冷して黄色溶液を得た.スクリュー管に当該溶液を投入し,貧溶媒としてトルエンを 7 mL加えた.容器にフタをして室温で 4日間静置することで,合計 1.88 g(収率97%)の淡黄色針状の結晶を回収した.得られた淡黄色針状結晶に対して,Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer(SMART APEX II ULTRA,X線源:Mo Kα radiation (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.
【実施例5】
【0064】
CH(NH2)2PbI3・スルホラン(Sulfolane) (FAPbI3・スルホラン(Sulfolane))の合成
テトラヒドロチオフェン1,1-ジオキシド(スルホラン)(Tetrahydrothiophene 1,1-Dioxide (Sulfolane)) 2.0 mL 中にPbI2 (460 mg, 1.0 mmol)とヨウ化ホルムアミジニウム(FAI; CH(NH2)2I; 177 mg, 1.0 mmol)を添加し,90 ℃ で 30 分間攪拌した後に室温まで放冷して黄色溶液を得た.スクリュー管に当該溶液を投入し,貧溶媒としてトルエンを 7 mL加えた.容器にフタをして室温で 4日間静置することで,合計 671 mg(収率89%)の淡黄色針状の結晶を回収した.得られた淡黄色針状結晶に対して,Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer(SMART APEX II ULTRA,X線源:Mo Kα radiation (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.得られた結晶に対して,Bruker Single Crystal CCD X-ray Diffractometer(SMART APEX II ULTRA,X線源:Mo Kα radiation (λ= 0.71073 Å))を用いて結晶を 100 Kに冷却して測定を行った.2θ角が 50.5 °の範囲において全部で 7945 個の反射を観測した.これらのうち 1770 個の反射が独立であり,Rint値は0.0255であった.直接法により解析した結晶データは以下の通りである.
C5H13I3N2O2PbS; FW = 735.12, crystal size 0.28 × 0.13 × 0.08 mm, Orthorhombic, Pbcm, a = 11.6247(14) Å, b = 7.8287(10) Å, c = 17.740(2) Å, V = 1614.4(3) Å, Z = 8, Dc = 6.197 g cm-3. The refinement converged to R1 = 0.0187, wR2 = 0.0438 (I > 2σ(I)), GOF = 1.152.
単離した化合物の元素分析結果からCH(NH2)2PbI3・Sulfolane (FAPbI3・Sulfolane)であることを明らかにした.Anal. Calcd. for C5H13N2O2SPbI3: C, 7.97; H, 1.74; N, 3.72; S, 4.26%; Found: C, 8.21; H, 1.74; N, 3.69; S, 4.55%.
【実施例6】
【0065】
塗膜形成から貧溶媒滴下までの時間についての検討
ITO付ガラス基板(25 mm×24 mm,ジオマテック)を,水,アセトン,セミコクリーン56,水,エタノールの順でそれぞれ15分間超音波洗浄した.最後に,15分間のUVオゾン洗浄を行った.
上記ITO基板に,SnOのコロイド水溶液(アフラ アエサー社製)を蒸留水で薄め,400μL/枚でスピンコート塗布した.スピンコート条件は,3秒間で3000rpmにして30秒間回転させ,その後3秒間のスロープで0rpmとした。その後,ホットプレートを用いて150℃で30分アニールした。
【実施例6】
【0066】
PbI及びMAIを1:1(モル比)で含む混合物に対して,DMTHPを濃度が1.5 Mになるように加えた.この溶液をスピンコート塗布した。溶液を塗布してから10秒後,1分後又は5分後にトルエン(700μL)をスピンコート塗布した。得られたフィルムを100℃でアニールすることでペロブスカイト層を作製した.
【実施例6】
【0067】
正孔輸送材料(Spiro-OMeTAD; 2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン, 73.6mg),[トリス(2-(1H-ピラゾル-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209, 13.3mg),4-tert-ブチルピリジン(TBP, 27μL),及びリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI, 7.6mg)を1 mLのクロロベンゼンに溶解させた.30分間撹拌後,溶液をメンブレンフィルターで濾過し,濾液をペロブスカイト層上に4000 rpmで30秒間スピンコートし,70℃で30分間アニールした.最後に,真空蒸着により80nmの金電極をつけ,ペロブスカイト太陽電池を得た.
【実施例6】
【0068】
溶液を塗布してから10秒後,1分後又は5分後にトルエンを塗布したいずれのものも,ペロブスカイト太陽電池として良好な特性を発揮していた。このように,溶液を塗布してから貧溶媒を塗布するまでに十分な時間を確保することができた。なお,MAPbI・2DMTHP以外の錯体についても同様にペロブスカイト太陽電池を得たところ,それぞれ特性の変化はあったもののいずれもペロブスカイト太陽電池としての特性を発揮できる太陽電池を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は新規錯体を提供するので,化学産業の分野で利用されうる。また,本発明は,ペロブスカイト前駆体や,ペロブスカイト層,太陽電池,有機EL素子の製造方法を提供するので,情報電気産業において利用されうる。