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明細書 :燃料電池用電解質及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-206587 (P2018-206587A)
公開日 平成30年12月27日(2018.12.27)
発明の名称または考案の名称 燃料電池用電解質及びその製造方法
国際特許分類 H01M   8/02        (2016.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI H01M 8/02 P
H01M 8/10
H01B 1/06 A
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-110033 (P2017-110033)
出願日 平成29年6月2日(2017.6.2)
発明者または考案者 【氏名】篠崎 良太
【氏名】榊原 伸義
【氏名】板倉 智也
【氏名】北川 進
【氏名】堀毛 悟史
出願人 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 5G301
5H126
Fターム 5G301CD01
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG02
5H126GG11
5H126GG15
5H126GG18
5H126GG19
5H126HH10
要約 【課題】ガスシール性が高い燃料電池用電解質及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】燃料電池用電解質1は、多孔質部材9と、前記多孔質部材に支持されたプロトン伝導材料11とを含む。前記プロトン伝導材料は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む。前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子は、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成している。燃料電池用電解質の相対密度は75%以上である。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
燃料電池用電解質(1)であって、
多孔質部材(9)と、
前記多孔質部材に支持されたプロトン伝導材料(11)と、
を含み、
前記プロトン伝導材料は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成しており、
相対密度が75%以上である燃料電池用電解質。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用電解質であって、
前記多孔質部材は樹脂又は無機物を含む燃料電池用電解質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池用電解質であって、
前記多孔質部材は、テフロン、ポリイミド、アクリル、及びセルロースのうちのいずれかから成る燃料電池用電解質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質であって、
前記オキソアニオンが単量体である燃料電池用電解質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質であって、
前記オキソアニオンが、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及びリン酸二水素イオンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質であって、
前記プロトン配位性分子が、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、及びこれらの誘導体から成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質であって、
前記プロトン配位性分子が、一般式R-NH2で表される第一級アミン、一般式R1(R2)-NHで表される第二級アミン、一般式R1(R2)(R3)-Nで表される第三級アミン、炭素直鎖ジアミン、飽和環状アミン、及び飽和環状ジアミンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質。
(R、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、脂環式炭化水素基、及び複素環基のうちのいずれかを示す。)
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質であって、
前記金属イオンが、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、及びガリウムイオンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質。
【請求項9】
燃料電池用電解質(1)の製造方法であって、
金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む溶液と、多孔質部材(9)とを接触させ、
前記多孔質部材から前記溶液の溶媒を除去し、
前記多孔質部材に支持されたプロトン伝導材料(11)を形成し、
前記プロトン伝導材料は、前記金属イオン、前記オキソアニオン、及び前記プロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成している燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記多孔質部材は樹脂から成る燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記多孔質部材は、テフロン、ポリイミド、アクリル、及びセルロースのうちのいずれかから成る燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記オキソアニオンが単量体である燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記オキソアニオンが、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及びリン酸二水素イオンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記プロトン配位性分子が、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、及びこれらの誘導体から成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質の製造方法。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記プロトン配位性分子が、一般式R-NH2で表される第一級アミン、一般式R1(R2)-NHで表される第二級アミン、一般式R1(R2)(R3)-Nで表される第三級アミン、炭素直鎖ジアミン、飽和環状アミン、及び飽和環状ジアミンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質の製造方法。
(R、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、脂環式炭化水素基、及び複素環基のうちのいずれかを示す。)
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載の燃料電池用電解質の製造方法であって、
前記金属イオンが、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、及びガリウムイオンから成る群から選ばれる1種以上である燃料電池用電解質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池用電解質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池用電解質に使用可能なプロトン伝導材料が開示されている。このプロトン伝導材料は、高温下でも使用でき、無加湿又は低加湿条件でも使用できる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-116276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池用電解質には、ガスシール性が高いことが求められる。本開示は、ガスシール性が高い燃料電池用電解質及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、燃料電池用電解質(1)であって、多孔質部材(9)と、前記多孔質部材に支持されたプロトン伝導材料(11)と、を含み、前記プロトン伝導材料は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成しており、相対密度が75%以上である燃料電池用電解質である。
【0006】
本開示の一態様である燃料電池用電解質は、相対密度が大きいため、ガスシール性が高い。
本開示の別の態様は、燃料電池用電解質(1)の製造方法であって、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む溶液と、多孔質部材(9)とを接触させ、前記多孔質部材から前記溶液の溶媒を除去し、前記多孔質部材に支持されたプロトン伝導材料(11)を形成し、前記プロトン伝導材料は、前記金属イオン、前記オキソアニオン、及び前記プロトン配位性分子を含み、前記オキソアニオン及び/又は前記プロトン配位性分子が、前記金属イオンに配位して配位高分子を形成している燃料電池用電解質の製造方法である。
【0007】
本開示の別の態様である燃料電池用電解質の製造方法によれば、相対密度が大きく、ガスシール性が高い燃料電池用電解質を製造できる。
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】燃料電池用電解質1の両側に電極3、5を取りつける方法を表す説明図である。
【図2】燃料電池の単セル7の構成を表す斜視図である。
【図3】燃料電池用電解質1の製造方法の一例を表す説明図である。
【図4】図4Aは、ポリアクリル酸(PAA)を表す説明図であり、図4Bは、ポリビニルホスホン酸(PVPA)を表す説明図であり、図4Cは、ポリスチレンスルホン酸(PSSA)を表す説明図であり、図4Dは、デオキシリボ核酸(DNA)を表す説明図である。
【図5】燃料電池用電解質の製造方法を表す説明図である。
【図6】膜電極接合体21の構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態を説明する。
1.燃料電池用電解質
(1-1)多孔質部材
燃料電池用電解質は多孔質部材を含む。多孔質部材はプロトン伝導材料を支持する。プロトン伝導材料を支持するとは、プロトン伝導材料の形状又は位置を一定に保つことを意味する。例えば、多孔質部材に、プロトン伝導材料の少なくとも一部が含浸されていてもよい。また、多孔質部材の表面にプロトン伝導材料の膜が形成されていてもよい。

【0010】
多孔質部材は、例えば、樹脂を含む。多孔質部材は、樹脂から成る部材であってもよいし、樹脂と他の材料とから成る部材であってもよい。樹脂として、例えば、テフロン(登録商標)、ポリイミド、アクリル、セルロース、ポリオレフィン、アラミド、ポリアミド、及びポリエステル等が挙げられる。また、多孔質部材は、例えば、無機物を含む。多孔質部材は、無機物から成る部材であってもよいし、無機物と他の材料とから成る部材であってもよい。無機物として、例えば、グラスウール、シリカ等が挙げられる。多孔質部材の形状として、例えば、膜の形状、板の形状等が挙げられる。
(1-2)プロトン伝導材料
燃料電池用電解質はプロトン伝導材料を含む。プロトン伝導材料は多孔質部材に支持されている。プロトン伝導材料は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む。オキソアニオン及び/又はプロトン配位性分子は、金属イオンに配位して配位高分子を形成している。

【0011】
オキソアニオンとして、例えば、リン酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。水素に対する化学的安定性の点から、リン酸イオンが好ましい。リン酸イオンは、プロトンが1つ配位したリン酸水素イオン、又はプロトンが2つ配位したリン酸二水素イオンの形態であってもよい。

【0012】
オキソアニオンは、例えば、縮合が起こっていない単量体の形態で金属イオンに配位している。オキソアニオンが単量体である場合、プロトン伝導材料はプロトン濃度が高い状態で保持される。また、オキソアニオンが単量体である場合、プロトン伝導材料は水分に対する安定性にも優れる。

【0013】
プロトン配位性分子は、プロトンを配位するための配位点を分子内に好ましくは2つ以上持った分子である。プロトン配位性分子として、イミダゾール、トリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、及びこれらの誘導体が好ましい。これらのプロトン配位性分子は、プロトンの配位と放出とのバランスに優れた配位点を持つため、イオン伝導性において優れる。

【0014】
ここで、誘導体とは、化学構造の一部を他の原子又は原子団で置き換えたものを意味する。誘導体の具体例として、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ヒスタミン、ヒスチジン等が挙げられる。これらはイミダゾールの誘導体である。

【0015】
また、プロトン配位性分子として、例えば、一般式R-NH2で表される第一級アミン、一般式R1(R2)-NHで表される第二級アミン、一般式R1(R2)(R3)-Nで表される第三級アミンが挙げられる。ここで、R、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、脂環式炭化水素基、及び複素環基のうちのいずれかである。

【0016】
第一級アミンとして、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の低級アルキルアミン、アニリン、トルイジン等の芳香族アミンが挙げられる。
第二級アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等のジ低級アルキルアミン、N-メチルアニリン、N-メチルトルイジン等の芳香族二級アミン等が挙げられる。

【0017】
第三級アミンとして、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリ低級アルキルアミンが挙げられる。また、プロトン配位性分子として、例えば、エチレンジアミン、そのN-低級アルキル誘導体等の炭素直鎖ジアミン等が挙げられる。N-低級アルキル誘導体として、例えば、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。

【0018】
また、プロトン配位性分子として、例えば、ピロリジン、N-低級アルキルピロリジン、ピペリジン、N-低級アルキルピペリジン、モルホリン、N-低級アルキルモルホリン等の飽和環状アミンを挙げることができる。N-低級アルキルピロリジンとして、例えば、N-メチルピロリジン等が挙げられる。N-低級アルキルピペリジンとして、例えば、N-メチルピペリジン等が挙げられる。

【0019】
また、プロトン配位性分子として、例えば、ピペラジン、N-低級ジアルキルピペラジン、1、4-ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン(別名:トリエチレンジアミン)等の飽和環状ジアミン等を挙げることができる。N-低級ジアルキルピペラジンとして、例えば、N、N-ジメチルピペラジン等が挙げられる。

【0020】
金属イオンは、特に限定されるものではないが、高周期の遷移金属イオンや典型金属イオンが好ましい。特に、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオン、及びガリウムイオンが好ましい。これらの金属イオンは、前記オキソアニオン及び/又はプロトン配位性分子との配位結合を形成しやすい。

【0021】
プロトン伝導材料において、金属イオン1モルに対して、オキソアニオンが1~4モル、プロトン配位性分子が1~3モルの配合比率であることが望ましい。この配合比率である場合、効率的に配位高分子を形成することができる。

【0022】
金属イオン1モルに対して、オキソアイニオン又はプロトン配位性分子の配合比率が1モルより少ないと、配位高分子を形成しないことがある。また、金属イオン1モルに対して、オキソアニオンを4モルより多く配合した場合、又は、プロトン配位性分子を3モルより多く配合した場合、プロトン伝導材料が固体状にならず、非常に高い吸湿性を示し、形状安定性が著しく低下してしまうことがある。

【0023】
プロトン伝導材料は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子に加えて、添加材料を含んでいてもよい。この添加材料として、例えば、オキソ酸、金属酸化物、有機ポリマー、及びアルカリ金属イオンから成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの添加材料のいずれかを含む場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。高温とは、例えば100℃以上である。低温とは、例えば100℃未満である。

【0024】
添加材料の添加量は、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子の合計質量を100質量部としたとき、1~20質量部の範囲が好ましい。
オキソ酸として、例えば、リン酸、硝酸、硫酸、及びそれらの類縁化合物等が挙げられる。金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子の合計質量を100質量部としたとき、オキソ酸の添加量は、2~150質量部の範囲が好ましい。2質量部以上である場合、添加材料による上記の効果が一層顕著になる。150質量部以下である場合、オキソ酸の酸性度により配位高分子が分解してしまうことを抑制できる。
添加材料が金属酸化物又は有機ポリマーである場合、添加材料の添加量は、5~20質量部の範囲が好ましい。添加量がこの範囲内である場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0025】
前記金属酸化物として、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、WO3、MoO3、ZrO2、及びV2O5から成る群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの金属酸化物のいずれかを用いる場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0026】
金属酸化物の粒子径は、5~500nmの範囲が好ましい。粒子径がこの範囲内である場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。なお、粒子径とは、金属酸化物の粒子を電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、得られた画像を画像解析する方法で得られる値である。

【0027】
前記有機ポリマーは、酸性官能基を有することが好ましい。酸性官能基を有する有機ポリマーを用いる場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。酸性官能基として、例えば、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、及びホスホン酸基(-PO32)等が挙げられる。有機ポリマーのpHは、4以下の範囲が好ましい。pHが4以下である場合、プロトン伝導材料の高温における性能を損なうことなく、低温におけるイオン伝導率が一層高くなる。

【0028】
前記有機ポリマーとして、例えば、図4Aに示すポリアクリル酸(PAA)、図4Bに示すポリビニルホスホン酸(PVPA)、図4Cに示すポリスチレンスルホン酸(PSSA)、図4Dに示すデオキシリボ核酸(DNA)等が挙げられる。

【0029】
アルカリ金属イオンとして、例えば、Li、Na、K、Rb、及びCsから成る群から選ばれる1種以上の金属イオンが挙げられる。これらのアルカリ金属イオンを用いる場合、プロトン伝導材料のイオン伝導率が、低温、及び高温において一層高くなる。

【0030】
上記の添加剤を含む場合、プロトン伝導材料は、例えば、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む溶液に、さらに添加剤を加えることで得られる。
(1-3)相対密度
本開示の燃料電池用電解質の相対密度は75%以上である。相対密度が75%以上であることにより、燃料電池用電解質のガスシール性が高い。相対密度は、80%以上であることがより好ましく、90%上であることが特に好ましい。これらの場合、燃料電池用電解質のガスシール性が一層高い。相対密度の測定方法は、後述する実施例に記載した方法である。

【0031】
(1-4)燃料電池用電解質の用途
燃料電池用電解質は、燃料電池の構成要素とすることができる。例えば、図1に示すように、燃料電池用電解質1の両側に、電極3、5を取りつけ、図2に示す燃料電池の単セル7を製造することができる。

【0032】
2.燃料電池用電解質の製造方法
燃料電池用電解質の製造方法では、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含む溶液と、多孔質部材とを接触させ、多孔質部材から溶液の溶媒を除去する。溶液に含まれていた金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子により、プロトン伝導材料が形成される。そのプロトン伝導材料は、多孔質部材に支持されている。プロトン伝導材料は、前記「(1-2)プロトン伝導材料」の項で述べた構成を有する。

【0033】
溶液の溶媒として、例えば、水、エタノール等が挙げられる。溶液を調製する方法として、例えば、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子と、溶媒とを混合する方法が挙げられる。

【0034】
溶液と多孔質部材とを接触させる態様として、例えば、溶液を多孔質部材に滴下する態様、多孔質部材を溶液に浸漬する態様、溶液を多孔質部材に塗布する態様、溶液を多孔質部材に噴霧する態様等が挙げられる。

【0035】
多孔質部材から溶液の溶媒を除去する態様として、自然乾燥させる態様、加熱する態様、送風する態様、減圧する態様等が挙げられる。
燃料電池用電解質の製造方法の一例を図3に示す。まず、ZnO、リン酸、及びアゾールに水を加えて溶液を調製する。ZnOは金属イオン源である。調製された溶液中にはZnのイオンが存在する。リン酸はオキソアニオンに対応する。アゾールはプロトン配位性分子に対応する。

【0036】
次に、その溶液8を多孔質部材9に滴下する。次に、乾燥させることにより溶液8の溶媒を除去し、燃料電池用電解質1を完成する。燃料電池用電解質1において、プロトン伝導材料11が、多孔質部材9に支持されている。

【0037】
製造された燃料電池用電解質の相対密度は、75%以上であることが好ましい。この場合、製造された燃料電池用電解質のガスシール性が一層高くなる。
3.実施例
(3-1)実施例1
ZnO、1、2、4-トリアゾール、リン酸、及び水を、表1における「実施例1」の列に示す配合量で混合し、原料溶液S1を作成した。

【0038】
【表1】
JP2018206587A_000003t.gif
図5に示すように、メンブレンフィルター13を15mm角に切り、図示しないテフロン板上に載せて、四方の角をテープ15で固定した。このメンブレンフィルター13は、メルクミリポア製の親水化テフロンメンブレンフィルターである。メンブレンフィルター13は、樹脂から成る多孔質部材に対応する。

【0039】
次に、メンブレンフィルター13に、原料溶液S1を113μL滴下し、80℃で3時間乾燥させた。上記の滴下と乾燥とを3回繰り返して燃料電池用電解質を作製した。この燃料電池用電解質では、メンブレンフィルター13にプロトン伝導材料が支持されている。燃料電池用電解質の相対密度d(%)を、以下の式(1)を用いて算出した。

【0040】
【数1】
JP2018206587A_000004t.gif
式(1)におけるWは燃料電池用電解質の質量である。Wは未処理のメンブレンフィルター13の質量である。W、Wの単位はgである。式(1)におけるVCPは、未処理のメンブレンフィルター13における気孔の体積と、プロトン伝導材料の体積との和である。VCPの単位はmLである。VCPは、式(2)により算出される。式(2)においてVは、燃料電池用電解質の体積である。Vの単位はmLである。Vは、式(3)により算出される。式(3)におけるLは、燃料電池用電解質の厚さである。Lの単位はcmである。式(3)におけるAは、燃料電池用電解質の面積である。Aの単位はcmである。

【0041】
式(2)におけるVは、未処理のメンブレンフィルター13における、樹脂の体積である。Vの単位はmLである。Vは、式(4)により算出される。式(4)におけるAは、未処理のメンブレンフィルター13の面積である。Aの単位はcmである。式(4)におけるLは、未処理のメンブレンフィルター13の厚さである。Lの単位はcmである。式(4)におけるPは、未処理のメンブレンフィルター13における気孔率(%)である。式(1)におけるdmatは、結晶構造から求めたプロトン伝導材料の材料密度である。dmatの単位はg/mLである。

【0042】
図6に示すように、上で作成した燃料電池用電解質17の両面に電極19を貼り付け、膜電極接合体21を作製した。電極19は、市販の燃料電池用白金担持カーボン電極であって、7mm径に打ち抜かれたものである。また、集電体23及びガスケット25を取り付けた。

【0043】
膜電極接合体21における片側の電極19に3.8%水素を60mL毎分の流量で供給するとともに、反対側の電極19に乾燥空気を60mL毎分の流量で供給しながら、膜電極接合体21を120℃に加熱した。この状態で、両方の電極19間の電圧を測定した。この電圧は開回路電圧である。開回路電圧の測定結果を上記表1に示す。

【0044】
また、空気を供給している電極19側の排ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、水素濃度を測定した。水素濃度が高いほど、燃料電池用電解質17を介してリークした水素ガスが多い。水素濃度の測定結果を上記表1に示す。

【0045】
また、両方の電極19を用いて、燃料電池用電解質17の導電率を測定した。導電率の測定結果を上記表1に示す。
(3-2)実施例2
ZnO、1、2、4-トリアゾール、リン酸、及び水を、表1における「実施例2」の列に示す配合量で混合し、混合物を80℃で乾燥させることでプロトン伝導材料の粉を得た。得られたプロトン伝導材料の粉0.1gを100mlの水に溶かし、原料溶液S2を作成した。

【0046】
図5に示すように、メンブレンフィルター13を15mm角に切り、図示しないテフロン板上に載せて四方の角をテープ15で固定した。このメンブレンフィルター13は、実施例1と同様のものである。
次に、メンブレンフィルター13に、原料溶液S2を600μL滴下し、80℃で3時間乾燥させた。上記の滴下と乾燥とを3回繰り返して燃料電池用電解質を作製した。この燃料電池用電解質では、メンブレンフィルター13にプロトン伝導材料が支持されている。

【0047】
得られた燃料電池用電解質を用いて、実施例1と同様に、相対密度d、開回路電圧、水素濃度、及び導電率を測定した。測定結果を上記表1に示す。
(3-3)実施例3
ZnO、1、2、4-トリアゾール、リン酸、及び水を、表1における「実施例3」の列に示す配合量で混合し、混合物を80℃で乾燥させることでプロトン伝導材料の粉を得た。得られたプロトン伝導材料の粉0.1gを100mlの水に溶かし、原料溶液S3を作成した。

【0048】
図5に示すように、メンブレンフィルター13を15mm角に切り、図示しないテフロン板上に載せて四方の角をテープ15で固定した。このメンブレンフィルター13は、実施例1と同様のものである。
次に、メンブレンフィルター13に、原料溶液S3を600μL滴下し、80℃で3時間乾燥させた。上記の滴下と乾燥とを3回繰り返して燃料電池用電解質を作製した。この燃料電池用電解質では、メンブレンフィルター13にプロトン伝導材料が支持されている。

【0049】
得られた燃料電池用電解質を用いて、実施例1と同様に、相対密度d、開回路電圧、水素濃度、及び導電率を測定した。測定結果を上記表1に示す。
(3-4)比較例
ZnO、1、2、4-トリアゾール、リン酸、及び水を、表1における「比較例」の列に示す配合量で混合し、混合物を80℃で乾燥させることでプロトン伝導材料の粉を得た。

【0050】
得られたプロトン伝導材料の粉1gを20mLのエタノールに懸濁させた。この懸濁液を50mLのポリエチレンポットに入れ、そこにジルコニアボール5mm径を10g加え、100rpmの速度でボールミルを行った。ジルコニアボールを液から取り出し、原料溶液Rを得た。

【0051】
図5に示すように、メンブレンフィルター13を15mm角に切り、図示しないテフロン板上に載せて四方の角をテープ15で固定した。このメンブレンフィルター13は、実施例1と同様のものである。
次に、メンブレンフィルター13に、原料溶液Rを120μL滴下し、80℃で3時間乾燥させた。上記の滴下と乾燥とを3回繰り返して燃料電池用電解質を作製した。

【0052】
得られた燃料電池用電解質を用いて、実施例1と同様に、相対密度d、開回路電圧、水素濃度、及び導電率を測定した。測定結果を上記表1に示す。
4.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。

【0053】
(1)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。

【0054】
(2)上述した燃料電池用電解質の他、当該燃料電池用電解質を構成要素とする燃料電池、燃料電池の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1…燃料電池用電解質、8…溶液、9…多孔質部材、11…プロトン伝導材料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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