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明細書 :ラビリンチュラ類の珪藻捕食を利用した有用物質の製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6815624号 (P6815624)
公開番号 特開2017-051187 (P2017-051187A)
登録日 令和2年12月25日(2020.12.25)
発行日 令和3年1月20日(2021.1.20)
公開日 平成29年3月16日(2017.3.16)
発明の名称または考案の名称 ラビリンチュラ類の珪藻捕食を利用した有用物質の製造法
国際特許分類 C12N   1/10        (2006.01)
C12N   1/12        (2006.01)
C12P   7/64        (2006.01)
FI C12N 1/10
C12N 1/12 A
C12N 1/12 C
C12P 7/64
請求項の数または発明の数 10
微生物の受託番号 IPOD FERM P-22313
IPOD FERM P-22314
全頁数 19
出願番号 特願2016-177575 (P2016-177575)
出願日 平成28年9月12日(2016.9.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 ▲1▼平成28年3月10日 http://sourui.org/annual_meeting/JSP_40th/index.html http://sourui.org/annual_meeting/JSP_40th/materials/JSP40_program.pdfを通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲2▼平成28年3月20日 日本藻類学会第40回大会 東京2016 日本歯科大学 生命歯学部において文書(スライド)をもって発表
特許法第30条第2項適用 ▲3▼平成28年3月10日 藻類 第64巻 第1号、P60、日本藻類学会にて発表
特許法第30条第2項適用 ▲4▼平成28年6月29日 http://syst.bio.konan-u.ac.jp/labybase/labysympo/を通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲5▼平成28年7月9日 第3回ラビリンチュラ・シンポジウム-オーランチオキトリウムとその仲間たちの生物学と産業応用 甲南大学 平生記念セミナーハウスにおいて文書(スライド)をもって発表
特許法第30条第2項適用 ▲6▼平成28年5月25日 http://onlinereg.ru/protist-2016を通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲7▼平成28年6月6日 Moscow Forum《PROTIST-2016》 Lomonosov Moscow State University,Moscow,Russiaにおいてポスターにて発表
特許法第30条第2項適用 ▲8▼平成28年6月3日 Protistology An International Journal Volume 10 Number 2 2016、P25、MONOMAX Congresses & Incentivesにて発表
特許法第30条第2項適用 ▲9▼平成28年5月21日 http://protistology.ifmo.ru/ http://protistology.ifmo.ru/num10_2/num10_2.htm http://protistology.ifmo.ru/num10_2/abstracts_10-2.pdfを通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲10▼平成28年8月9日 水圏微生物研究フォーラム 2016 東京大学大気海洋研究所共同利用研究集会 東京大学大気海洋研究所 講堂においてポスターにて発表
特許法第30条第2項適用 ▲11▼平成28年3月25日 コンタ研究会第三回研究集会 筑波大学 下田臨海実験センターにおいて文書(スライド)をもって発表
特許法第30条第2項適用 ▲12▼平成28年9月8日 2016年 日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会 熊本県立大学において文書(スライド)をもって発表
特許法第30条第2項適用 ▲13▼平成28年9月7日 2016年 日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会 講演要旨集 第38頁にて発表
特許法第30条第2項適用 ▲1▼平成27年3月10日 日本藻類学会、藻類 第63巻第1号 P53にて発表
特許法第30条第2項適用 ▲2▼平成27年3月21日 日本藻類学会第39回大会 福岡2015 九州大学箱崎キャンパスにおいてポスターにて発表
特許法第30条第2項適用 ▲3▼平成27年3月11日 http://sourui.org/annual_meeting/39th.html http://sourui.org/annual_meeting/JSP_39th/materials/JSP39_program-2.pdfを通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲4▼平成27年3月20日 日本藻類学会第39回大会 福岡2015 第74頁(P53)にて発表
特許法第30条第2項適用 ▲5▼平成27年5月31日 第17回マリンバイオテクノロジー学会大会 東京海洋大学 品川キャンパスにおいて文書(スライド)をもって発表
特許法第30条第2項適用 ▲6▼平成27年5月10日 http://marinebiotechnology.jp/mbt2015-HP/ http://marinebiotechnology.jp/mbt2015-HP/ORAL.pdf を通じて発表
特許法第30条第2項適用 ▲7▼平成27年5月30日 第17回マリンバイオテクノロジー学会大会 講演要旨集、第90頁にて発表
特許法第30条第2項適用 ▲8▼平成27年7月 4日 ラビリンチュラ・シンポジウム-オーランチオキトリウムとその仲間たちの生物学と産業応用 日本科学未来館においてポスターにて発表
特許法第30条第2項適用 ▲9▼平成27年6月25日 http://syst.bio.konan-u.ac.jp/labybase/labysympo/を通じて発表
優先権出願番号 2015178481
優先日 平成27年9月10日(2015.9.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年8月22日(2019.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】397022911
【氏名又は名称】学校法人甲南学園
発明者または考案者 【氏名】本多 大輔
【氏名】浜本 洋子
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査官 【審査官】宮岡 真衣
参考文献・文献 特表2011-510627(JP,A)
SAKATA T. et.al.,Fisheries Science,vol.66 (2000),pp84-90
坂田泰造 et. al.,南西諸島の沿岸環境におけるラビリンチュラ類の分布と有機物分解,南太平洋海域調査研究報告,vol.42 (2005),pp21-24
岩崎英雄,微小藻類のビタミン要求,水産増殖,vol.16, no.4 (1968),pp.171-178
調査した分野 C12N 1/00-1/38
C12P 7/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
アプラノキトリウム属のラビリンチュラ類微生物をスケレトネマ属の珪藻と共に培地中で培養することを含む、ラビリンチュラ類微生物の培養方法。
【請求項2】
ラビリンチュラ類微生物が、受託番号FERM P-22313で表されるアプラノキトリウム属微生物、および受託番号FERM P-22314で表されるアプラノキトリウム属微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物またはスケレトネマ属の珪藻との二員培養によって増殖が促進する活性を有するその変異体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培地が、ビタミン類以外の有機物を含有しない培地である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
培養が開放系で行われる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法を行うことにより、アプラノキトリウム属のラビリンチュラ類微生物に目的化合物を産生させた後、目的化合物を回収することを含む、目的化合物の製造方法。
【請求項6】
目的化合物が、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、及びドコサペンタエン酸からなる群から選択されるものである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法により培養物を得ることを含む、培養物の製造方法。
【請求項8】
培養物がドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
アプラノキトリウム属のラビリンチュラ類微生物とスケレトネマ属の珪藻との混合培養物。
【請求項10】
受託番号FERM P-22313で表されるアプラノキトリウム属微生物、および受託番号FERM P-22314で表されるアプラノキトリウム属微生物からなる群から選択される微生物またはスケレトネマ属の珪藻との二員培養によって増殖が促進する活性を有するその変異体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンチュラ類の新規の培養方法、及びそれを利用してラビリンチュラ類が産生する有用物質を製造する方法、等に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋の原生生物ラビリンチュラ類については、ドコサヘキサエン酸(DHA)などの高度不飽和脂肪酸、スクワレンやアスタキサンチンなどの抗酸化色素、セルラーゼなどの分解酵素など、様々な有用物質の生産能力のあることが知られている(非特許文献1~5)。ラビリンチュラ類の培養には、グルコースなどの糖や、ペプトン、酵母エキスなどが用いられており、細菌類が混入するとラビリンチュラ類は増殖できないため、無菌的な環境での培養が必要であった(非特許文献6)。
【0003】
また、生育状態の良い珪藻類に対するラビリンチュラ類の捕食性については、非特許文献7にのみ報告があるが、この論文では、写真として示された生物がラビリンチュラ類であるという根拠が乏しく、ラビリンチュラ類であっても、Schizochytrium sp.として同定されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yokochi et al. (1998) Appl Microbiol biotechnol 49:72-76
【非特許文献2】Taoka et al. (2009) Bicosci.Biotechnol.Biochem 73:180-182
【非特許文献3】Kaya et al. (2011) Bicosci.Biotechnol.Biochem 75:2246-2248
【非特許文献4】Bremer and Talbot (1995) Hydrobiologia 295:89-95
【非特許文献5】Raghukumar (2008) Mar Biotechnol 10:631-640
【非特許文献6】Porter,(1990) Phylum Labyrinthulomycota. In: Margulis L, Corliss JO, Melkonian M, Chapman DJ (eds) Handbook of Protoctista. Jones and Bartlett, Boston, pp 388-398
【非特許文献7】Gaertner,(1979) Veroeff. Inst. Meeresforsch. Bremerh. 18: 29-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラビリンチュラ類の培養液に含まれる有機物は、比較的高価であり、その産業応用の障壁の一つになっていた。また、無菌的なタンクなどによる培養が必須であることは、そのタンクの培養環境の維持などにもコストがかかるという欠点があった。
【0006】
本発明は、経済性や効率性に優れたラビリンチュラ類の培養方法、及び、そのような培養方法を利用して、ラビリンチュラ類が産生する有用物質を安価に製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ラビリンチュラ類の幅広い系統群からの株と珪藻との二員培養を行い、珪藻類を餌として捕食させてラビリンチュラ類を増殖させることができることを見出した。本発明者らはまた、該二員培養において、特にアプラノキトリウム属微生物の増殖速度が大きいことを見出した。本発明者らは更に、該二員培養において著しく増殖速度が大きいアプラノキトリウム属の2つの新規株を取得することに成功した。本発明者らはこれらの知見に基づいて更に検討を進め、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は即ち、以下の通りである。
[1]ラビリンチュラ類微生物を珪藻と共に培地中で培養することを含む、ラビリンチュラ類微生物の培養方法。
[2]ラビリンチュラ類微生物が、アプラノキトリウム属、オブロンギキトリウム属、シゾチトリウム属、トラウストキトリウム属、オーランチオキトリウム属、unidentified thraustochytrid 1 (UT1)、unidentified thraustochytrid 2a (UT2a)、及びunidentified thraustochytrid 3c (UT3c)からなる群から選択される属の微生物である、上記[1]に記載の方法。
[3]ラビリンチュラ類微生物が、受託番号FERM P-22313で表されるアプラノキトリウム属微生物、および受託番号FERM P-22314で表されるアプラノキトリウム属微生物からなる群から選択される少なくとも1種の微生物またはその変異体を含む、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]珪藻が、スケレトネマ科の珪藻である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]培地が、ビタミン類以外の有機物を含有しない培地である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]培養が開放系で行われる、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法を行うことにより、ラビリンチュラ類微生物に目的化合物を産生させた後、目的化合物を回収することを含む、目的化合物の製造方法。
[8]目的化合物が、ドコサヘキサエン酸、エイコペンタエン酸、及びドコサペンタエン酸からなる群から選択されるものである、上記[7]に記載の方法。
[9]上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法により培養物を得ることを含む、培養物の製造方法。
[10]培養物がドコサヘキサエン酸及びエイコペンタエン酸を含む、上記[9]に記載の方法。
[11]受託番号FERM P-22313で表されるアプラノキトリウム属微生物、および受託番号FERM P-22314で表されるアプラノキトリウム属微生物からなる群から選択される微生物またはその変異体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的安価な培養による増殖法が確立している珪藻類を餌として捕食させて、ラビリンチュラ類を増殖できる。
特に、珪藻類の培養は微量のビタミン類以外の有機物を含有しない無機的成分の培地を用いて行うことが可能であり、この場合、細菌類が培養中に混入しても培地中に実質的に有機物がないために細菌類は大きな増殖量にはならず、珪藻類の増殖の方が大きくなるので、よりコストのかからない開放系での培養を実現できる。
珪藻類とラビリンチュラ類を混合培養することによって、例えば、魚類にとって必須脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)の混合飼料を作製できる(DHAはラビリンチュラ類が、EPAは珪藻類が主に蓄積する脂質である)。
特に、アプラノキトリウム属のラビリンチュラ類は、珪藻類の捕食の速度や、ラビリンチュラ類自体の増殖速度が大きい。珪藻類を栄養源とした時の増殖速度は、ラビリンチュラ類の中でも、最も応用的な物質生産で注目されているオーランチオキトリウム属に比べた場合、約50倍にもなり得、非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の培養10日目におけるラビリンチュラ細胞数を系統群ごとに示す図である。(a)、(b)は異なる実験に対応しており、それぞれ単独培養及び二員培養の場合の細胞数(左)、並びに単独培養の場合の細胞数を1とした時の二員培養の場合の細胞数の相対値(右)を示す。
【図2】実施例1の培養10日目に計測したSkeletonema細胞数の結果を共培養したラビリンチュラの系統群ごとに示す図である。左は細胞数、右は割合を、状態のよいSkeletonemaと状態の悪いSkeletonemaに区別して示す。
【図3】実施例2におけるSkeletonema単独培養、Aplanochytrium+Skeletonema二員培養、及びAplanochytrium単独培養について、状態のよいSkeletonemaの割合及びAplanochytrium個体数の計測結果を経時的に示す図である。
【図4】AplanochytriumによるSkeletonemaからの栄養摂取を示す光学顕微鏡写真である。
【図5】実施例3の培養10日目におけるラビリンチュラ細胞数をAplanochytrium kerguelense及び別の株(Aplanochytrium sp.)について示す図である。左は単独培養及び二員培養の場合の細胞数、右は単独培養の場合の細胞数を1とした時の二員培養の場合の細胞数の相対値を示す。
【図6】実施例4の培養10日目におけるラビリンチュラ細胞数を系統群ごとに示す図である。各系統群について、ラビリンチュラ類単独培養、および二員培養の場合の細胞数を示している。
【図7】実施例4の培養10日目に計測したSkeletonema細胞数の結果を、共培養したラビリンチュラの系統群ごとに状態のよいSkeletonemaと状態の悪いSkeletonemaに区別して示す図である。
【図8】実施例5におけるSkeletonema単独培養、Aplanochytrium+Skeletonema二員培養、及びAplanochytrium単独培養について、状態のよいSkeletonemaの割合及びAplanochytrium個体数の計測結果を経時的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(培養方法)
本発明はラビリンチュラ類の新規の培養方法(以下、本発明の培養方法ともいう。)を提供する。本発明の培養方法は、ラビリンチュラ類微生物を珪藻と共に培地中で培養することを含む。

【0012】
本明細書において、ラビリンチュラ類微生物は限定されず、ストラメノパイル界ラビリンチュラ門に属するあらゆる微生物が包含される。本発明のために用い得るラビリンチュラ類微生物の種類は特定の生物分類体系によって何ら限定されるものではないが、本発明の説明のために非限定的に例示する目的でラビリンチュラ類微生物の種類をより詳細に説明すると以下の通りである。ラビリンチュラ類微生物は、ラビリンチュラ綱のラビリンチュラ目(Labyrinthulales)又はヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)に属する微生物であってよい。ラビリンチュラ目微生物としては、ラビリンチュラ科(Labyrinthulaceae)ラビリンチュラ(Labyrinthula)属のあらゆる種[例:マクロシスティス(macrocystis)、等]の微生物が挙げられる。ヤブレツボカビ目微生物としては、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriaceae)のアプラノキトリウム(Aplanochytrium)属[種の例:ケルグエレンセ(kerguelense)(ケルグエレンシス(kerguelensis)と呼ばれることもある。)、ストッキノイ(stocchinoi)、ヨルケンシス(yorkensis)、ハリオチジス(haliotidis)、ミヌツム(minutum)、サリエンス(saliens)、スキゾキトロプス(schizochytrops)、等]、アルソルニア(Althornia)属[種の例:クロウチイ(crouchii)、等]、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属[種の例:マリヌム(marinum)、等]、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属[種の例:リマチヌム(limacinum)、マングロベイ(mangrovei)、等]、オブロンギキトリウム(Oblongichytrium)属[種の例:ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、ミヌツム(minutum)、等]、シゾチトリウム(Schizochytrium)属[種の例:アグレガツム(aggregatum)、リマチヌム(limacinum)、等]、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属[種の例:キンネイ(kinnei)、アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、アグレガツム(aggregatum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)、等]、シチョイドキトリウム(Sicyoidochytrium)属[種の例:ミヌツム(minutum)、等]、ウルケニア(Ulkenia)属[種の例:アモエボイデア(amoeboidea)、ビスルゲンシス(visurgensis)、プロフンダ(profunda)、等]、パリエチキトリウム(Parietichytrium)属[種の例:サルカリアヌム(sarkarianum)、等]、ボトリオキトリウム(Botryochytrium)属[種の例:ラジアツム(radiatum)等]、等の微生物が挙げられる。ラビリンチュラ類微生物はまた、unidentified thraustochytrid 1 (UT1)、unidentified thraustochytrid 2a (UT2a)、又はunidentified thraustochytrid 3c (UT3c)の属の微生物であってもよい(Ueda et al. (2015 AQUATIC MICROBIAL ECOLOGY 74: 187-204))。

【0013】
本発明の培養方法において使用し得る具体的なラビリンチュラ株としては、例えば以下の寄託された株が挙げられるが、これらに限定されるものではない:Labyrinthula sp. AN-1565、Labyrinthula sp. N8、Labyrinthula sp. N12、Labyrinthula sp. L59、Labyrinthula sp. L72、Aplanochytrium kerguelense KMPB N-BA-107、Aplanochytrium sp. PR24-1、Aplanochytrium sp. SEK602、Aplanochytrium sp. SEK717、Aurantiochytrium immobile N1-27、Aurantiochytrium immobile 08-047-01yD1 (SEK605)、Aurantiochytrium limacinum IFO 32693、Aurantiochytrium mangrovei RCC 893、Aurantiochytrium sp. KH105、Aurantiochytrium sp. BURABG162、Aurantiochytrium sp. NBRC 103268、Aurantiochytrium sp. NBRC 103269、Aurantiochytrium sp. NBRC 102990、Aurantiochytrium sp. NBRC 102614、Aurantiochytrium sp. N1-27、Oblongichytrium multirudimentale KMPB N-BA-107、Oblongichytrium minutum KMPB N-BA-77、Oblongichytrium sp. NBRC 102618、Oblongichytrium sp. 1b 1110-15S-01m (SEK710)、Schizochytrium aggregatum ATCC 28209、Schizochytrium sp. NBRC 102617、Schizochytrium sp. NBRC 102615、Schizochytrium sp. NBRC 102616、Schizochytrium sp. KK17-3、Thraustochytrium kinnei KMPB 1694d、Thraustochytrium kinnei 261-01m (SEK618)、Thraustochytrium aureum ATCC 34304、Thraustochytrium striatum ATCC 24473、Thraustochytrium aggregatum KMPB N-BA-110、Thraustochytrium pachydermum KMPB N-BA-114、Thraustochytrium sp. C9G、Sicyoidochytrium minutum SEK 354、Sicyoidochytrium minutum NBRC 102979、Sicyoidochytrium minutum NBRC 102975、Ulkenia amoeboidea NBRC 104106、Ulkenia visurgensis BURAAA 141、Ulkenia visurgensis ATCC 28208、Ulkenia profunda KMPB N 3077、Ulkenia profunda BUTRBG 111、Parietichytrium sarkarianum NBRC 104108、Parietichytrium sarkarianum SEK 364、Parietichytrium sp. NBRC 102964、Parietichytrium sp. F3-1、Botryochytrium radiatum #16、Botryochytrium radiatum NBRC 104107、Botryochytrium sp. BUTRBC 143、Botryochytrium sp. #29、unidentified thraustochytrium 1 155-02m (SEK691)、unidentified thraustochytrium 2a 310-08m (SEK694)、unidentified thraustochytrium 3c 1107-15S-04m (SEK702)。上記のAplanochytrium sp. SEK602、およびAplanochytrium sp. SEK717は、本発明者らが見出したアプラノキトリウム属の新規株であり、それぞれ受番号FERM-22313(寄託日:2016年9月2日)および受番号FERM-22314(寄託日:2016年9月2日)として、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている。

【0014】
本発明の培養方法にために好ましいラビリンチュラ類微生物としては、アプラノキトリウム属(種の例:ケルグエレンセ、ストッキノイ、ヨルケンシス、ハリオチジス、ミヌツム、サリエンス、スキゾキトロプス、等)の微生物(株の例:Aplanochytrium kerguelense KMPB N-BA-107、Aplanochytrium sp. PR24-1、Aplanochytrium sp. SEK602、Aplanochytrium sp. SEK717等)が挙げられる。アプラノキトリウム属のラビリンチュラ類は、珪藻類の捕食の速度や、ラビリンチュラ類自体の増殖速度が大きい。珪藻類を栄養源とした時の増殖速度は、例えばオーランチオキトリウム属のラビリンチュラ類と比べた場合、約50倍にもなり得る。なかでも、Aplanochytrium sp. SEK602およびAplanochytrium sp. SEK717は、本発明の培養方法において著しく大きい増殖速度を示し、特に好ましい微生物として挙げられる。

【0015】
ラビリンチュラ類微生物は、珪藻との共培養に供する前に前培養に供してもよい。前培養は自体公知の方法により行うことができる。前培養で用いられる培地の種類は特に限定されるものではなく、対象とするラビリンチュラ類微生物が生育可能な培地であれば公知のいずれの培地を用いてもよい。培地の形状も特に限定されず、液体培地、固形培地、又は半固形培地であってよい。培地の成分も特に限定されず、炭素源(例:グルコース、ラクトース等)、窒素源(例:ポリペプトン等)、ビタミンやミネラル(例:酵母エキス等)等を含有し得る。あるいは、培養の間に炭素源を添加してもよいし、予め添加し、更に培養の間に培地に補充してもよい。培地の具体例としては、d-GPY培地(50%海水1Lあたりグルコース2.0g、ポリペプトン1.0g、酵母エキス0.5g、寒天15.0g; Yokoyama and Honda, (2007) Mycoscience 48:329-341)、GY培地(日本水産学会誌, 68巻, 5号, 674-678 (2002))等が挙げられる。培地のpHは使用する微生物の種類に応じて適宜選択できるが、通常5-10、好ましくは6-9の範囲内である。
培養条件は特に限定されないが、典型的には、上記のような培地に通常6.0×103~1.0×104cells/L程度の密度でラビリンチュラ類微生物を接種し、通常20~35℃にて、通常1日~2週間、好ましくは3~10日間程度培養する。培養は静置培養であってもよいし、必要に応じて通気撹拌培養や振とう培養を行ってもよい。

【0016】
遊走子を形成する系統群のラビリンチュラ類微生物を用いる場合、通常、前培養後に遊走子形成の誘導を行う。誘導は、例えば、上述したようなd-GPY等の寒天培地にラビリンチュラ類微生物を塗布し、室温で1~2日間静置し、そこに人工海水(例えば、1Lの蒸留水中、NaCl 30g、KCl 0.7g、MgCl2・6H2O 10.8g、MgSO4・7H2O 5.4g、CaCl2・2H2O 1gを含有するHerbst人工海水)を加えて室温で0~2時間静置することにより行うことができる。
一方、遊走子を形成しない系統群のラビリンチュラ類微生物を用いる場合、適宜人工海水を補充しながら前培養液を遠心分離(例えば、2500rpm、1分間、25℃の条件)して上澄みを除く処理を数回行うことにより、不純物を除去する工程を含んでもよい。

【0017】
本明細書において、珪藻の種類は限定されず、珪藻植物門(Bacillariophyta)に属するあらゆる藻類を本発明の培養方法において用い得る。本発明のために用い得る珪藻の種類は特定の生物分類体系によって何ら限定されるものではないが、本発明の説明のために非限定的に例示する目的で珪藻の種類をRound, Crawford & Mann (Cambridge University Press, 1990)の分類に従ってより詳細に説明すると以下の通りである。珪藻は、コアミケイソウ綱(Coscinodiscophyceae)、オビケイソウ綱(Fragilariophyceae)、又はクサリケイソウ綱(Bacillariophyceae)に属する珪藻であり得る。

【0018】
コアミケイソウ綱の珪藻としては、クリサンテモディスクス目(Chrysanthemodiscales)(例えば、クリサンテモディスクス科(Chrysanthemodiscaceae)等)、タルケイソウ目(Melosirales)(例えば、タルケイソウ科(Melosiraceae)、ステファノピクシス科(Stephanopyxidaceae)、エンディクティア科(Endictaceae)、ヒアロディスクス科(Hyalodiscaceae)等)、パラリア目(Paraliales)(例えば、パラリア科(Paraliaceae)等)、アウラコセイラ目(Aulacoseirales)(例えば、アウラコセイラ科(Aulacoseiraceae)等)、オルトセイラ目(Orthoseirales)(例えば、オルトセイラ科(Orthoseiraceae)等)、コアミケイソウ目(Coscinodisales)(例えば、コアミケイソウ科(Coscinodiscaceae)、ロケラ科(Rocellaceae)、アウラコディスクス科Aulacodiscaceae)、ゴスレリエラ科(Gossleriellaceae)、ヘミディスクス科(Hemidiscaceae)、ヘリオペルタ科(Heliopeltaceae)等)、エトモディスクス目(Ethmodiscales)(例えば、エトモディスクス科(Ethmodiscaceae)等)、スティクトキクルス目(Stictocyclales)(例えば、スティクトキクルス科(Stictocyclaceae)等)、アステロランプラ目(Asterolampales)(例えば、アステロランプラ科(Asterolampraceae)等)、クモノスケイソウ目(Arachnoidiscales)(例えば、クモノスケイソウ科(Arachnoidiscaeae)等)、スティクトディスクス目(Stictodiscales)(例えば、スティクトディスクス科(Stictodiscaceae)等)、コレトロン目(Corethrales)(例えば、コレトロン科(Corethraceae)等)、ツツガタケイソウ目(Rhizosoleniales)(例えば、ツツガタケイソウ科(Rhizosoleniaceae)、ピクシラ科(Pyxillaceae)等)、タラシオシーラ目(Thalassiosirales)(例えば、タラシオシーラ科(Thallasiosiraceae)、スケレトネマ科(Skeletonemataceae)、ステファノディスクス科(Stephanodiscaceae)、ラウデリア科(Lauderiaceae)等)、ミカドケイソウ目(Triceratiales)(例えば、ミカドケイソウ科(Triceratiaceae)、プラギオグランマ科(Plagiogrammaceae)等)、イトマキケイソウ目(Biddulphiales)(例えば、イトマキケイソウ科(Biddlphiaceae)等)、ヘミアウルス目(Hemiaulales)(例えば、ヘミアウルス科(Hemiaulaceae)、ベレロケア科(Bellerocheaceae)、ストレプトテカ科(Streptothecaceae)等)、アナウルス目(Anaulales)(例えば、アナウルス科(Anaulaceae)等)、リトデスミウム目(Lithodesmiales)(例えば、リトデスミウム科(Lithodesmiaceae)等)、キマトシラ目(Cymatosirales)(例えば、キマトシラ科(Cymatosiraceae)、ルティラリア科(Rutilariaceae)等)、ツノケイソウ目(Chaetocerotales)(例えば、ツノケイソウ科(Chaetocerotaceae、アカントケラス科(Acanthocerataceae)、ジャバラケイソウ科(Atthyeyaceae)等)、レプトキリンドゥルス目(Leptocylindales)(例えば、レプトキリンドゥルス科(Leptocylindraceae)等)等に属する珪藻が挙げられる。

【0019】
オビケイソウ綱の珪藻としては、オビケイソウ目(Fragilariales)(例えば、オビケイソウ科(Fragilariaceae)等)、ヌサガタケイソウ目(Tabellariales)(例えば、ヌサガタケイソウ科(Tabellariaceae)等)、リクモフォラ目(Licmophorales)(例えば、リクモフォラ科(Licmophoraceae)等)、ラフォネイス目(Rhaphoneidales)(例えば、ラフォネイス科(Rhaphoneidaceae)、プサモディスクス科(Psammodiscaceae)等)、アルディソネア目(Ardissoneales)(例えば、アルディッソネア科(Ardissoneaceae)等)、トクサリウム目(Toxariales)(例えば、トクサリウム科(Tosariaceae)等)、タラシオネマ目(Thalassionematales)(例えば、タラシオネマ科(Thalassionemataceae)等)、ラブドネマ目(Rhabdonematales)(例えば、ラブドネマ科(Rhabdonemataceae)等)、ストリアテラ目(Striatellales)(例えば、ストリアテラ科(Striatellaceae)等)、キクロフォラ目(Cyclophorales)(例えば、キクロフォラ科(Cyclophoraceae)、エントフィラ科(Entophylaceae)等)、クリマコスフェニア目(Climacospheniales)(例えば、クリマコスフェニア科(Climacospheniaceae)等)、プロトラフィス目(Protoraphidiales)(例えば、プロトラフィス科(Protoraphidaceae)等)等に属する珪藻が挙げられる。

【0020】
クサリケイソウ綱の珪藻としては、イチモンジケイソウ目(Eunotiales)(例えば、イチモンジケイソウ科(Eunotiaceae)、ペロニア科(Peroneiaceae)等)、リレラ目(Lyrellales)(例えば、リレラ科(Lyrellaceae)等)、マストグロイア目(Mastogloiales)(例えば、マストグロイア科(Mastogloiaceae)等)、ディクチオネイス目(Dictyoneidales)(例えば、ディクチオネイス科(Dictyoneidaceae)等)、クチビルケイソウ目(Cymbellales)(例えば、マガリクサビケイソウ科(Rhoicospheniaceae)、アノメオネイス科(Anomoeoneidaceae)、クチビルケイソウ科(Cymbellaceae)、クサビケイソウ科(Gomphonemataceae)等)、ツメケイソウ目(Achnanthales)(例えば、ツメケイソウ科(Achnanthaceae)、コメツブケイソウ科(Cocconeidaceae)、アクナンチディウム科(Achnanthidaceae)等)、フナガタケイソウ目(Naviculales)(例えば、ベルケレイア科(Berkeleyaceae)、カビヌラ科(Caviculaceae)、コスミオネイス科(Cosmioneidaceae)、スコリオネイス科(Scolioneidaceae)、ディアデスミス科(Diadesmidaceae)、アミバリケイソウ科(Amphipleuraceae)、ブラキシラ科(Brachysiraceae)、ネイディウム科(Neidiaceae)、スコリオトロピス科(Scoliotropidaceae)、セラフォラ科(Sellaphoraceae)、ハネケイソウ科(Pinnulariaceae)、ファエオダクチルム科(Phaeodactylaceae)、エリマキケイソウ科(Diploneidaceae)、フナガタケイソウ科(Naviculaceae)、メガネケイソウ科(Pleurosigmataceae)、イカノフネケイソウ科(Plagiotropidaceae)、ジュウジケイソウ科(Stauroneidaceae)、プロスキニア科(Proschkiniaceae)等)、タラシオフィーサ目(Thalassiophysales)(例えば、カテヌラ科(Catenulaceae)、タラシオフィーサ科(Thalassiophysaceae)等)、クサリケイソウ目(Bacillariales)(例えば、クサリケイソウ科(Bacillariaceae)等)、クシガタケイソウ目(Rhopalodiales)(例えば、クシガタケイソウ科(Rhopalodiaceae)等)、コバンケイソウ目(Surirellales)(例えば、ヨジレケイソウ科(Entomoneidaceae)、アウリキュラ科(Auriculaceae)、コバンケイソウ科(Surirellaceae)等)等に属する珪藻が挙げられる。

【0021】
上記の珪藻のうち、スケレトネマ科の珪藻は世界中の海域に分布し、入手が容易であることから本発明の培養方法において好ましく使用され得る。スケレトネマ科の珪藻としては、例えばスケレトネマ(Skeletonema)属又はデトヌラ(Detonula)属の珪藻が挙げられ、より具体的には、例えば、スケレトネマ属のマリノイ(marinoi)種、ドウルニイ(dohrnii)種、又はマリノイ種とドウルニイ種の混合の株(例えば、株番号NIES-324)が挙げられる。また、タラシオシーラ科やジュウジケイソウ科(例えば、Fistulifera属)の珪藻も好ましいものとして挙げられる(田中 剛 (2012) 生物工学, 90: 392-395)。

【0022】
珪藻は、ラビリンチュラ類微生物との共培養に供する前に前培養に供してもよい。前培養は自体公知の方法により行うことができる。前培養で用いられる培地の種類は特に限定されるものではなく、藻類を培養するために用いられる自体公知の培地を使用することができる。培地としては、天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。好ましい培地としては、例えば、f/2培地、PES培地、IMK培地等が挙げられる。培地は、珪藻の生育促進の観点から、窒素源(例:NaNO3、KNO3、Ca(NO3)2、NH4NO3、(NH4)2SO4等)、リン源(例:K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4等)、金属塩(例:NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、Na2SO4、K2SO4、MgSO4、Na2CO3、NaHCO3、Na2SiO3、H3BO3、MnCl2、MnSO4、FeCl3、FeSO4、CoCl2、ZnSO4、CuSO4、Na2MoO4等)、ビタミン類(例:ビオチン、ビタミンB12、チアミンHCl、ニコチン酸、イノシトール、葉酸等)等を含有することができる。雑菌の繁殖を抑制するという観点から、培地はビタミン類(好ましくは0.5 mg/L未満、例えば100 μg/L程度)以外の有機物を含有しないことが好ましい。培地のpHは使用する珪藻の種類に応じて適宜選択できるが、通常5-10、好ましくは6-9の範囲内である。使用する培地は、雑菌の繁殖抑制、珪藻の生育促進の観点から、オートクレーブ、フィルターろ過等により殺菌して使用することが好ましい。
培養条件は特に限定されないが、典型的には、上記のような培地に通常6.0×103~1.0×104cells/L程度の密度で珪藻を接種し、通常20~35℃にて、通常1~4週間、好ましくは10日~2週間程度培養する。培養は静置培養であってもよいし、必要に応じて通気撹拌培養や振とう培養を行ってもよい。

【0023】
前培養後の珪藻は、ラビリンチュラ類微生物との共培養に供する前に洗浄してもよい。洗浄は、適宜培地を補充しながら前培養液を遠心分離(例えば、2500rpm、1分間、25℃の条件)して上澄みを除く処理を数回行うことにより行うことができる。

【0024】
以上のようにして用意したラビリンチュラ類微生物及び珪藻を本発明による共培養に供することができる。好ましい実施形態において、アプラノキトリウム属のラビリンチュラと、スケレトネマ科、タラシオシーラ科、又はジュウジケイソウ科の珪藻とが共培養される。

【0025】
共培養は、フラスコ(例えば、50ml容量)、タンク(例えば、アース株式会社製のサンライトタンク(100-200l容量))、屋外の珪藻培養槽(例えば、10-1000kl容量)等を使用して様々なスケールで行うことができる。珪藻の培養は微量のビタミン類以外の有機物を含有しない無機的成分の培地を用いて行うことが可能であり、これにより混入した細菌類の繁殖を抑制できるので、野外タンク等を用いた珪藻の培養が既に漁業の現場で広く行われている。本発明の培養方法によれば、ラビリンチュラ類は珪藻を餌として捕食して増殖できるので、微量のビタミン類以外の有機物を含有しない無機的成分の培地を用いてラビリンチュラ類を増殖させることが可能である。従って、好ましい実施形態において、共培養の工程は開放系で行われる。本明細書において、開放系の培養とは、培養容器が密閉用の蓋をされていない状態で行われる培養を意味する。

【0026】
共培養は、ラビリンチュラ類微生物と珪藻とが培地中に共存し、ラビリンチュラ類微生物が生育できる限り、その様式は問わない。好ましい実施形態において、珪藻が生育している容器内にラビリンチュラ類微生物が接種されることにより、培養が開始される。培養で用いられる培地の種類は特に限定されるものではなく、海洋生物の培養のために一般に使用される培地を適宜用いることができる。培地としては、天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。好ましい培地としては、例えば、f/2培地、PES培地、IMK培地等が挙げられる。培地は、ラビリンチュラ類微生物の生育促進の観点から、窒素源(例:NaNO3、KNO3、Ca(NO3)2、NH4NO3、(NH4)2SO4等)、リン源(例:K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4等)、金属塩(例:NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、Na2SO4、K2SO4、MgSO4、Na2CO3、NaHCO3、Na2SiO3、H3BO3、MnCl2、MnSO4、FeCl3、FeSO4、CoCl2、ZnSO4、CuSO4、Na2MoO4等)、ビタミン類(例:ビオチン、ビタミンB12、チアミンHCl、ニコチン酸、イノシトール、葉酸等)等を含有することができる。また、培地は、珪藻に対してのみ成長を阻害すると考えられる珪酸質を枯渇した培地であってもよい。雑菌の繁殖を抑制するという観点から、培地はビタミン類(好ましくは0.5 mg/L未満、例えば100 μg/L程度)以外の有機物を含有しないことが好ましい。培地のpHは使用するラビリンチュラ類微生物及び珪藻の種類に応じて適宜選択できるが、通常5-10、好ましくは6-9の範囲内である。使用する培地は、雑菌の繁殖抑制、ラビリンチュラ類微生物の生育促進の観点から、オートクレーブ、フィルターろ過等により殺菌して使用することが好ましい。
培養条件は特に限定されないが、典型的には、上記のような培地中に、通常、珪藻:ラビリンチュラ類微生物=3000~5000cells:500~10,000cellsの範囲内の存在比となるようラビリンチュラ類微生物と珪藻とを共存させ、通常20~35℃にて、通常3日~2週間、好ましくは1週間~10日間程度培養する。培養は静置培養であってもよいし、必要に応じて通気撹拌培養や振とう培養を行ってもよい。

【0027】
上記の培養により、培養の経過につれてラビリンチュラ類微生物は効果的に増殖し、例えば、培養開始時と比較して培養開始の10日後において10倍以上、100倍以上、250倍以上、500倍以上、又は1000倍以上に個体数が増加し得、またラビリンチュラ類微生物単独培養の場合と比較して、培養開始の10日後において5倍以上、10倍以上、25倍以上、50倍以上、又は100倍以上、個体数が増加し得る。

【0028】
(製造方法)
本発明はまた、本発明の培養方法を用いることによる、ラビリンチュラ類微生物により産生される有用化合物(即ち、目的化合物)の製造方法(以下、本発明の製造方法Iともいう。)を提供する。本発明の製造方法Iは、本発明の培養方法を行うことにより、ラビリンチュラ類微生物が菌体内又は培養液中に目的化合物を産生するので、培養物、培養上清画分、菌体含有画分、菌体破砕物、菌体抽出液、菌体不溶性画分等として該目的化合物を回収することにより行うことができる。

【0029】
目的化合物は、用いるラビリンチュラ類微生物により産生され得るものである限り、限定されない。目的化合物としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)等の高度不飽和脂肪酸、アスタキサンチン、β-カロテン等の抗酸化色素、セルラーゼ、タンナーゼ、リグニン分解酵素等の分解酵素、スクワレン等が挙げられる。

【0030】
目的化合物の回収は自体公知の方法に従って行うことができる。例えば、菌体内に蓄積した脂質や脂肪酸等を得るために、遠心分離法やろ過等により培養物から分離した菌体を超音波処理等により破砕した後、クロロホルム、ヘキサン、ブタノール等の適当な有機溶媒による溶媒抽出を行うことができる。あるいは、菌体内又は培養液中に産生された目的化合物を得るために、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、硫安分画、硫酸ナトリウム分画、塩化ナトリウム分画等の塩析、透析、又は等電点電気泳動等の常法を適宜用いて、あるいは組み合わせることができる。

【0031】
本発明はまた、本発明の培養方法を行うことにより培養物を得ることを含む、培養物の製造方法(以下、本発明の製造方法IIともいう。)を提供する。従って、本発明は更に、本発明の製造方法IIによって得られる培養物も提供する。該培養物は、ラビリンチュラ類微生物により産生される物質、及び珪藻類により産生される物質を同時に含み得る。ラビリンチュラ類微生物により産生される物質としては、上述の通り、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)等の高度不飽和脂肪酸、アスタキサンチン、β-カロテン等の抗酸化色素、セルラーゼ、タンナーゼ、リグニン分解酵素等の分解酵素、スクワレン等が挙げられる。一方、珪藻類により産生される物質としては、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。本発明の製造方法IIにより得られる培養物は、珪藻類が産生する物質(例えばEPA)だけでなく、ラビリンチュラ類の産生する物質(例えばDHA)も強化されているので、魚類用の餌料、強化剤等として有用である。

【0032】
(微生物)
本発明はまた、本発明の培養方法のために有用な新規のラビリンチュラ類微生物(以下、本発明の微生物ともいう。)を提供する。該微生物は、本明細書においてAplanochytrium sp. SEK602およびAplanochytrium sp. SEK717と呼称されるアプラノキトリウム属微生物であり、これらはそれぞれ受番号FERM-22313(寄託日:2016年9月2日)および受番号FERM-22314(寄託日:2016年9月2日)として、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている。

【0033】
本発明の微生物は、上記のAplanochytrium sp. SEK602株またはAplanochytrium sp. SEK717株の変異体であってもよい。該変異体は、上記のAplanochytrium sp. SEK602株またはAplanochytrium sp. SEK717株に由来する菌株であり、かつ本発明による二員培養により効率的に増殖できるものである限り、特に限定されない。該変異体は、その18S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列が元となる菌株(即ち、Aplanochytrium sp. SEK602株またはAplanochytrium sp. SEK717株)の18S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列と同一(即ち、100%一致)であるか、あるいは実質的に同一(例えば、後述するような、変異原性物質等の存在下での変異により作製した場合)であり得る。該変異体はまた、元となる菌株と類似の形態的、生理学的特徴を示し得る。

【0034】
本明細書中で用いられる場合、「元となる菌株の18S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一」のヌクレオチド配列とは、比較されるヌクレオチド配列が少なくとも99%以上、好ましくは99.2%以上、より好ましくは99.5%以上のヌクレオチド配列同一性を有することをいう。ヌクレオチド配列の同一性は自体公知の方法により決定することができ、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。

【0035】
該変異体は、例えば、元となる菌株を改変処理することにより作製できる。このような改変処理としては、例えば、変異原性物質等の存在下での変異、元となる菌株の有用性を高め得る遺伝子(例えば、増殖能の増大、および/または目的化合物の産生能の増大をもたらす遺伝子)の導入、および元となる菌株が保有する遺伝子の破壊、ならびにこれらの操作の組合せなどが挙げられる。

【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1:各種系統群からのラビリンチュラ株と珪藻との二員培養の比較解析
本実施例に用いたラビリンチュラ株の詳細を以下に示す。
【実施例】
【0038】
【表1】
JP0006815624B2_000002t.gif
【実施例】
【0039】
上記の各株の前培養は、細口試験管内のd-GPY培地(Glucose 2.0 g, Polypepton 1.0 g, Yeast extract 0.5 g, (Agar) 15.0 g, Sea Water 500 ml, Distilled Water 500 ml)中、表1に記載の培養温度にて1週間静置することにより行った。
【実施例】
【0040】
珪藻株としては、Skeletonema marinoi-dohrnii complex NIES-324株を用いた。珪藻株の前培養は、200 mlマイヤーフラスコ内のAC済みf/2培地(NaNO3 7.5 mg, NaH2PO4・2H2O 0.6 mg, Vitamin B12 0.05 μg, Biotin 0.05 μg, Thiamine HCl 10 μg, Na2SiO3・9H2O 1 mg, f/2 metals* 0.1 mL, Sea Water 99.9 mL; f/2 metals*: Na2EDTA・2H2O 440 mg, FeCl3・6H2O 316 mg, CoSO4・7H2O 1.2 mg, ZnSO4・7H2O 2.1 mg, MnCl2・4H2O 18 mg, CuSO4・5H2O 0.7 mg, Na2MoO4・2H2O 0.7 mg, Distilled water 100 ml)中、25℃で2週間静置することにより行った。
【実施例】
【0041】
二員培養は以下の通りに行った。
本実施例では、珪藻に対してのみ成長を阻害すると考えられる珪酸質を枯渇した培地(-Si f/2培地: NaNO3 7.5 mg, NaH2PO4・2H2O 0.6 mg, Vitamin B12 0.05 μg, Biotin 0.05 μg, Thiamine HCl 10 μg, f/2 metals 0.1 mL, Herbst人工海水** 99.9 mL; Herbst人工海水**: NaCl 30 g, KCl 0.7 g, MgCl2・6H2O 10.8 g, MgSO4・7H2O 5.4 g, CaCl2・2H2O 1 g, Distilled water 1000 ml)を使用した。
(1) Skeletonema の洗浄
1. Skeletonema(30 ml)をファルコン(容量50 ml)にいれる
2. 遠心分離機にかける 2500rpm 2min 25℃
3. 上澄みを除く
4. f/2培地を30ml加える
5. 遠心分離機にかける 2500rpm 2min 25℃
6. 上澄みを除く
7. -Si f/2培地とSkeletonema前培養液が1:1になるように、6のSkeletonema細胞を加える
(2-1) Skeletonema細胞の分注(二員培養+Skeletonema単独培養用)
1. (1)で用意したSkeletonema細胞をマイヤー(容量50ml)に30mlずつ分注する
(2-2) -Si f/2培地の分注(ラビリンチュラ類単独培養用)
1. -Si f/2培地をマイヤー(容量50ml)に30mlずつ分注する
(3-1) ラビリンチュラ類の用意(遊走子を形成する系統群)
1. d-GPY寒天培地上にラビリンチュラ類を塗布する
2. Herbst人工海水で遊走子を誘導する
3. 倒立顕微鏡で遊走子の誘導を確認後、接種に用いる
【実施例】
【0042】
【表2】
JP0006815624B2_000003t.gif
【実施例】
【0043】
(3-2) ラビリンチュラ類の用意(遊走子を形成しない系統群)
1. 前培養液(30ml)をファルコン(50ml)にいれる
2. 遠心分離機にかける 2500rpm 1min 25℃
3. 上澄みを除く
4. Herbst人工海水を30ml加える
5. 遠心分離機にかける 2500rpm 1min 25℃
6. 上澄みを除く
7. Herbst人工海水を30ml加える
(4) ラビリンチュラ類の接種
1. (3)で用意したラビリンチュラ類細胞を、(2)で用意した培地にそれぞれ接種する。30mlの培地に対して1ml接種する
(5) 二員培養の条件
1. 表1に記載の培養温度にて10日間静置することにより行う
【実施例】
【0044】
単独培養及び二員培養のそれぞれについて培養後のラビリンチュラ類の個体数を計測し、これらを比較した。結果を図1に示す。いずれの系統群についても、二員培養により、単独培養の場合と比較してより効率的にラビリンチュラ細胞が増殖し、これは特にAplanochytrium kerguelenseについて顕著であった。
また、Skeletonemaについて状態のよい細胞の割合を計測した。結果を図2に示す。ラビリンチュラ類との共培養によりSkeletonemaの状態の悪化が観察された。
【実施例】
【0045】
実施例2:Aplanochytriumと珪藻の二員培養の経時的な観察
本実施例において、ラビリンチュラ株としてAplanochytrium kerguelense KMPB N-BA-107株を用い、珪藻株としてSkeletonema marinoi-dohrnii complex NIES-324株を用いた。ラビリンチュラ株の前培養は、細口試験管内のd-GPY培地(組成は上述の通り)中、室温で1週間静置することにより行い、珪藻株の前培養は、200 mlマイヤーフラスコ内のAC済みf/2培地(組成は上述の通り)中、25℃で2週間静置することにより行った。
【実施例】
【0046】
二員培養は以下の通りに行った。
本実施例では、系統群ごとの比較において、珪藻が死滅する前にラビリンチュラ類による栄養摂取がみられたため、珪酸質を含むf/2培地(組成は上述の通り)を使用して実験を行った。
(1) Skeletonema の洗浄
1. Skeletonema(30ml)をファルコン(容量50ml)にいれる
2. 遠心分離機にかける 2500rpm 2min 25℃
3. 上澄みを除く
4. f/2培地を30ml加える
5. 遠心分離機にかける 2500rpm 2min 25℃
6. 上澄みを除く
7. f/2培地とSkeletonema前培養液が1:1になるように、6のSkeletonema細胞を加える
(2-1) Skeletonema細胞の分注(二員培養+Skeletonema単独培養用)
1. (1)で用意したSkeletonema細胞をマイヤー(容量50ml)に30mlずつ分注する
(2-2) f/2培地の分注(ラビリンチュラ類単独培養用)
1. f/2培地をマイヤー(容量50ml)に30mlずつ分注する
(3) ラビリンチュラ類の用意
1. 前培養液(30ml)をファルコン(50ml)にいれる
2. 遠心分離機にかける 2500rpm 1min 25℃
3. 上澄みを除く
4. 海水を30ml加える
5. 遠心分離機にかける 2500rpm 1min 25℃
6. 上澄みを除く
7. 海水を30ml加える
(4) ラビリンチュラ類の接種
1. (3)で用意したラビリンチュラ類細胞を、(2)で用意した培地にそれぞれ接種する。30mlの培地に対して1ml接種する
(5) 二員培養の条件
1. 室温にて10日間静置することにより行う
【実施例】
【0047】
単独培養及び二員培養のそれぞれについて、ラビリンチュラ類の個体数及び状態のよいSkeletonema細胞の割合を培養開始時、及び培養の2, 4, 6, 8, 10日目に計測した。結果を図3に示す。二員培養の経過に伴い、Aplanochytriumの個体数が増加する一方、状態のよい珪藻の割合が減少することが観察された。
【実施例】
【0048】
更に、二員培養中、Aplanochytriuimの外質ネットが付着する前及び後のSkeletonemaを光学顕微鏡で観察したところ、外質ネットの付着によってSkeletonemaの葉緑体の色がぬけることが観察された(図4)。このことは、Aplanochytriumは外質ネットで生きたSkeletonemaに接触し、積極的に栄養を摂取していることを示唆しており、海洋の主要な一次生産者である珪藻を“捕食する”という、生態系でのラビリンチュラ類の役割を認識できた。
【実施例】
【0049】
実施例3:Aplanochytrium属の別の株を用いた二員培養の解析
Aplanochytrium kerguelense KMPB N-BA-107株に加えてAplanochytrium属の別の株も用いた以外は実施例2と同様にしてSkeletonema marinoi-dohrnii complex NIES-324株との二員培養を行い、培養後のラビリンチュラ類の個体数を計測した。結果を図5に示す。二員培養の10日目において、別の株ではAplanochytrium kerguelenseよりも更に高い細胞数の増加が認められた。
【実施例】
【0050】
実施例4:新規のアプラノキトリウム属微生物株を用いた二員培養の解析
本実施例に用いたラビリンチュラ株の詳細を以下に示す。
【実施例】
【0051】
【表3】
JP0006815624B2_000004t.gif
【実施例】
【0052】
なお、表3に記載のAplanochytrium sp.の株であるSEK602、SEK717、1209-15S-01m、および1209-15B-01mはいずれも、本発明者らにより見出された新規株である。SEK602株およびSEK717株は、それぞれ受番号FERM-22313(寄託日:2016年9月2日)および受番号FERM-22314(寄託日:2016年9月2日)として、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(IPOD)に寄託されている。
【実施例】
【0053】
珪藻株としては、実施例1と同様にSkeletonema marinoi-dohrnii complex NIES-324株を用いた。各株の前培養、珪藻株の前培養、および二員培養は実施例1に記載の通りに行った。なお、表3に記載のApplanochytrium sp.の株はいずれも遊走子を形成しない系統群である。
【実施例】
【0054】
単独培養及び二員培養のそれぞれについて培養後のラビリンチュラ類の個体数を計測し、これらを比較した。結果を図6に示す。いずれの系統群についても、二員培養により、単独培養の場合と比較してより効率的にラビリンチュラ細胞が増殖し、これは特にAplanochytrium kerguelenseについて顕著であった。なかでも、Aplanochytrium sp. SEK602株およびSEK717株は著しく大きい増殖速度を示した。
また、Skeletonemaについて状態のよい細胞の割合を計測した。結果を図7に示す。ラビリンチュラ類との共培養によりSkeletonemaの状態の悪化が観察された。なかでも、Aplanochytrium sp. SEK602株またはSEK717株との共培養により、状態の悪いSkeletonemaの割合が顕著に増加した。
【実施例】
【0055】
実施例5:Aplanochytriumと珪藻の二員培養の経時的な観察
本実施例において、ラビリンチュラ株としてAplanochytrium sp. KMPB N-BA-107株を用い、珪藻株としてSkeletonema marinoi-dohrnii complex NIES-324株を用いた。ラビリンチュラ株の前培養、珪藻株の前培養、および二員培養は、実施例2に記載の通りに行った。
【実施例】
【0056】
単独培養及び二員培養のそれぞれについて、ラビリンチュラ類の個体数及び状態のよいSkeletonema細胞の割合を培養開始時、及び培養の2, 4, 6, 8, 10日目に計測した。結果を図8に示す。二員培養の経過に伴い、Aplanochytriumの個体数が増加する一方、状態のよい珪藻の割合が減少することが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
珪藻類は魚介類の飼料として既に産業として生産されており、また漁業者は野外タンクなどで培養を行っている。そこに、生きているラビリンチュラ類を接種することで、珪藻類が産生するEPAだけでなく、ラビリンチュラ類の産生するDHAも強化した飼料とすることができる。
魚類の養殖場などでは、食べられずに海底に溜まった餌の残りがヘドロ化することが問題となっている。ラビリンチュラ類を生きたまま接種することで、ラビリンチュラ類が餌の残りを分解する効果も期待できる。
珪藻類は無機培地によって増殖するため、開放されたプール状の培養施設でも生産することができる。ここに、生きているラビリンチュラ類を接種することで、燃料などのさらに有用な物質を安価に生産できる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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