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Specification :(In Japanese)複合材料の製造方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2018-141213A
Date of publication of application Sep 13, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)複合材料の製造方法
IPC (International Patent Classification) B22F   9/24        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
C08J   7/00        (2006.01)
C08L 101/14        (2006.01)
C08K   3/08        (2006.01)
B23K  26/352       (2014.01)
FI (File Index) B22F 9/24 Z
B22F 1/00 K
B22F 1/00 L
B22F 9/24 E
B22F 9/24 B
C08J 7/00 302
C08J 7/00 CER
C08J 7/00 CEZ
C08L 101/14
C08K 3/08
B23K 26/352
Number of claims or invention 6
Filing form OL
Total pages 15
Application Number P2017-036904
Date of filing Feb 28, 2017
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】中嶋 隆
Applicant (In Japanese)【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4E168
4F073
4J002
4K017
4K018
F-term 4E168DA02
4E168DA23
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4J002BE021
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4K017AA03
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4K018BA20
4K018BB04
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4K018KA32
4K018KA70
Abstract (In Japanese)【課題】短時間、かつ、簡便な工程により高分子及び金属粒子を含む複合材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る高分子及び金属粒子を含む複合材料の製造方法は、高分子と、金属化合物と、溶媒とを含む原料から膜を形成する第1工程、及び、前記膜に中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを照射する第2工程を備える。
【選択図】なし
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
高分子及び金属粒子を含む複合材料の製造方法において、
高分子と、金属化合物と、溶媒とを含む原料から膜を形成する第1工程、及び、
前記膜に中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを照射する第2工程、
を備える複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記レーザーは炭酸ガスレーザーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属化合物は、金属塩である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属粒子は、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記高分子は、水溶性高分子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記原料は還元剤を含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子及び金属粒子を含む複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料に金属粒子を含んで形成される複合材料は、高分子材料単独、あるいは金属粒子単独では発現できない機能を有し得ることから、近年、盛んにその研究が行われている。特に金属粒子がナノオーダーサイズになると特有の機能が発揮されることから、屈折率、透過率等の光学特性;引張り強さ、弾性等の機械特性;絶縁性、導電性等の電気特性;耐熱特性等が向上することが期待される。
【0003】
ナノサイズの金属粒子を含む複合材料は、種々の方法で形成できることが知られている。例えば、あらかじめ調製した金属ナノ粒子をマトリックス成分である高分子材料と組み合わせて成膜する方法、あるいは、イオン注入又はアニールによりマトリックス成分である高分子材料中でナノ粒子を生成させて成膜する方法等が一般的に知られている。前者の方法では、成膜するまで金属ナノ粒子がマトリックス内で凝集しない状態を維持することが難しいのに対し、後者の方法では、マトリックス中に生成する金属ナノ粒子の規則性を制御しやすく、金属ナノ粒子の偏り及び凝集を抑制しやすいという利点がある。
【0004】
例えば、非特許文献1には、あらかじめYAGレーザー照射によって調製した銀ナノ粒子懸濁液を、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液に加え、この水溶液を用いて固体表面上に成膜することで、銀ナノ粒子を含むPVA膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Hindawi Publishing Corporation Journal of Nanomaterials Volume 2013, Article ID 897043, 10 pages http://dx.doi.org/10.1155/2013/897043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来法のように高分子溶液にナノ粒子を分散させて成膜する方法では、金属ナノ粒子どうしの凝集及び偏在が発生し、均一に金属ナノ粒子が分散した状態で成膜することは困難であった。また、前述したように、高分子材料中でナノ粒子を生成させて成膜する方法では、加熱等の工程が必要であり、金属ナノ粒子の生成に時間がかかるという問題に加えて、高分子材料自体が熱劣化する等の問題も有していた。この点、熱アニールに代えて、UV照射又はYAGレーザー照射等の方法も考えられる。しかし、この方法では熱アニールよりも時間短縮は可能であるものの、UV又はYAGレーザーの高エネルギーの作用によって、高分子材料を劣化させるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、短時間、かつ、簡便な工程により高分子及び金属粒子を含む複合材料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のレーザーを照射して金属粒子を生成させる方法を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.高分子及び金属粒子を含む複合材料の製造方法において、
高分子と、金属化合物と、溶媒とを含む原料から膜を形成する第1工程、及び、
前記膜に中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを照射する第2工程、
を備える複合材料の製造方法。
項2.前記レーザーは炭酸ガスレーザーである、項1に記載の製造方法。
項3.前記金属化合物は、金属塩である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記金属粒子は、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.前記高分子は、水溶性高分子である、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.前記原料は還元剤を含まない、項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製造方法は、短時間、かつ、簡便な工程により高分子及び金属粒子を含む複合材料を製造することができることから、複合材料の製造に適した方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の製造フローを説明する概略図である。
【図2】実施例1~8で得られた複合薄膜の測定結果であり、(A)は消光スペクトル、(B)はAFM画像、(C)はX線回折の測定結果を示す。
【図3】実施例9~14で得られた複合薄膜の測定結果であり、(A)は消光スペクトル、(B)はAFM画像、(C)はX線回折の測定結果を示す。
【図4】実施例15~18で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果を示す。
【図5】比較例1~3で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果を示す。
【図6】実施例1~3及び20~27で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果を示す。
【図7】実施例28~31で得た複合薄膜の消光スペクトルの測定結果を示す。
【図8】比較例4~6で得た複合薄膜の消光スペクトルの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0013】
本発明の高分子及び金属粒子を含む複合材料の製造方法は、高分子と、金属化合物と、溶媒とを含む原料から膜を形成する第1工程、及び、前記膜に中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを照射する第2工程を備える。

【0014】
第1工程では、高分子及び金属化合物含む膜が形成され、第2工程でのレーザー照射によって、高分子中で金属化合物が還元されて金属粒子が生成し、これにより複合材料が製造される。以下、各工程について順に詳述する。

【0015】
1.第1工程
第1工程は成膜工程であり、所定の原料を使用して成膜を行う工程である。

【0016】
前記原料は、高分子と、金属化合物と、溶媒とを含む。

【0017】
前記金属化合物は、金属粒子の前駆体となり得る材料である。金属化合物の種類は特に限定されず、例えば、公知の金属化合物を広く使用することができる。

【0018】
金属化合物において、金属の種類は特に限定されない。例えば、金属としては、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種以上とすることができる。

【0019】
金属化合物は、例えば、金属塩とすることができる。金属塩は、無機物の塩又は有機物の塩とすることができる。

【0020】
金属塩の具体例として、金属の塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩等の無機塩、あるいは、金属アルコキシド等の有機酸塩等を挙げることができる。金属塩は錯体が形成されていてもよい。また、金属塩は水和物であってもよい。その他、金属化合物は、金属の酸化物、過酸化物、有機過酸化物等であってもよい。金属化合物は、1種の金属のみを含むことができるし、あるいは、2種以上の金属を含もことができる。

【0021】
使用する金属化合物の具体例として、硝酸銀、硝酸銅、テトラクロロ金(III)酸四水和物等を挙げることができる。

【0022】
金属化合物は、1種のみを使用することができるし、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することもできる。

【0023】
前記高分子は、複合材料のマトリックスとなり得る材料である。高分子の種類は特に限定されず、例えば、公知の高分子材料を広く使用することができる。

【0024】
高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、セルロース、ポリペプチド、ポリアミノ酸、ポリスチレン、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル、ポリスチレン、ポリアルキレンテレフタレート、メラミン、ポリウレタン、尿素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を例示することができる。また、高分子は、導電性ポリマーを使用することもでき、例えば、公知の導電性ポリマーとすることができる。これらの高分子は、さらに置換基等を有することもできる。

【0025】
高分子は、水溶性高分子及び非水溶性高分子のいずれも使用することができる。水溶性高分子としては、公知の材料を広く使用でき、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。

【0026】
高分子は、2種以上の構成単位で形成されたコポリマーとすることもできる。この場合、例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー等が挙げられる。

【0027】
高分子の重量平均分子量は特に限定されず、例えば、成膜することができる範囲の重量平均分子量とすることができる。例えば、高分子の重量平均分子量は5,000~2,000,000とすることができ、この場合、第1工程での成膜を行いやすく、得られる複合材料の強度も低くなりにくい。高分子の重量平均分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましく、15,000~500,000であることがより好ましい。

【0028】
使用する高分子の形態は特に限定されず、粉末状、ペレット状、種々の形態とすることができる。また、高分子は、溶液又は分散液の状態であってもよい。

【0029】
高分子は、1種のみを使用することができるし、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することもできる。

【0030】
原料として使用する溶媒の種類は、特に限定されない。例えば、溶液から成膜をするために使用されている公知の溶媒を広く使用することができる。特に、高分子及び金属化合物の両方の溶解性に優れる溶媒が好適に使用され得る。

【0031】
例えば、高分子及び金属塩が水溶性であれば、溶媒は、水、アルコール又はこれらの混合物を挙げることができる。また、高分子及び金属塩が非水溶性であれば、溶媒は、各種の有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、炭化水素、エステル、ケトン、芳香族化合物、アミド等の骨格を有する有機化合物を挙げることができる。

【0032】
高分子、金属化合物及び溶媒のそれぞれ使用量は、成膜が可能な範囲内で適宜調整することができる。例えば、高分子100質量部あたり、金属化合物を0.1~500質量部とすることができる。この場合、十分な量の金属粒子が形成され、かつ、金属粒子が高分子マトリックス中により均一に分散しやすい。高分子100質量部あたり、金属化合物を10~200質量部とすることがより好ましく、50~130質量部とすることが特に好ましい。

【0033】
原料は、金属化合物及び高分子が溶媒に溶解していることが好ましい。この場合、第2工程で生成する金属粒子が高分子マトリックス中に均一に分散して存在しやすい。

【0034】
原料における高分子及び金属化合物の濃度は、例えば、成膜性が損なわれない範囲で適宜調整することができる。原料における高分子及び金属化合物の総濃度は、0.001~100g/Lとすることができ、0.01~80g/Lとすることが好ましく、0.05~70g/Lとすることが特に好ましい。

【0035】
原料を調製する方法は特に制限されない。例えば、高分子と、金属化合物と、溶媒とを準備し、これらを所定の量で混合して原料を調製することができる。例えば、溶媒に固体状の高分子及び金属化合物を添加し、必要に応じて撹拌等を行うことで溶液を調製し、この溶液を原料として使用することができる。また、高分子及び金属化合物を別々に溶媒に溶解させてから両者を混合することで原料を調製することもできる。

【0036】
原料には、本発明の効果が阻害されない限りはその他の成分が含まれ得る。例えば、分散安定剤、光安定剤、防腐剤、着色剤等の添加剤を挙げることができる。

【0037】
前記原料は、必要に応じて公知の還元剤を含むことができる。この場合、第2工程での金属化合物の還元が促進されて、金属粒子が形成されやすくなる。

【0038】
しかし、本発明の製造方法では、特定のレーザーを照射して金属粒子を形成させることから、還元剤が存在しなくとも速やかに金属粒子が形成され得る。

【0039】
従って、本発明の製造方法では第1工程で使用する原料は還元剤を含まないようにすることができる。還元剤を含有しないことで、低コストが実現しやすく、また、得られる複合材料の純度も向上しやすい。

【0040】
第1工程で膜を形成するための方法は特に限定されない。例えば、公知の成膜方法を採用することができる。例えば、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、バーコーティング法、ダイコーティング法等の成膜方法を挙げることができる。その他、例えば、真空蒸着装置、スパッタリング装置、CVD装置等を使用して成膜することもできる。

【0041】
成膜は、例えば、基板上にすることができる。基板は特に限定されず、成膜に使用されている公知の基板を広く使用することができる。基板としては、ガラス基板、樹脂基板、シリコン基板、金属基板等を挙げることができる。

【0042】
成膜後の膜厚は特に限定されず、目的とする複合材料の厚みに応じて適宜調節することができる。例えば、成膜後の膜厚は100nm~10μmとすることができる。

【0043】
第1工程で形成される膜は、高分子をマトリックスとし、高分子マトリックスに金属化合物が含まれている。

【0044】
なお、成膜に使用する基板には、原料の成膜を実施する前に、あらかじめ他の材料で皮膜を形成しておくこともでき、この皮膜上に、第1工程で使用する原料を用いて成膜することができる。このような皮膜は、例えば、原料に含まれる溶媒に不溶又は難溶性の材料で形成させることが好ましい。この場合、第2工程を経て得られる複合材料は、いわゆる自立膜として得ることができる。

【0045】
詳述すると、まず、基板上に本発明で使用する原料以外の他の材料で皮膜をあらかじめ形成する(ここでは、これを第1層と表記する)。さらに、この第1層上に後記第2工程を経て複合材料を形成する(ここでは、これを第2層と表記する)。次いで、第1層及び第2層で形成された積層体を、基板から剥離させる。剥離させた積層体を溶媒に浸漬する。ここで使用する溶媒は、第2層に含まれる高分子は溶解せずに、第1層を溶解するものである。これにより、第1層のみが溶媒に溶解して第2層から分離するので、第2層のみを、すなわち本発明の製造方法で得られる複合材料のみを得ることができ、自立膜として得ることができる。従って、第1層はいわゆるセパレータとして機能する。

【0046】
例えば、原料に含まれる高分子が水溶性高分子であって、溶媒が水、アルコール等の水系溶媒であれば、第1層としては、例えば、水系溶媒に不溶の材料で形成することができ、例えば、成膜性及び各種有機溶媒への溶解性に優れる点でポリスチレンが例示される。この場合、自立膜を得るために使用する溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族形溶媒が挙げられる。

【0047】
2.第2工程
第2工程は、レーザー照射工程であって、第1工程で形成した膜に、中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを照射する工程である。この特定波長のレーザーが照射されることで、膜中の金属化合物が還元され、金属粒子が形成される。

【0048】
中赤外線波長は、2.5~4μm程度の波長をいい、遠赤外線波長は、4~1000μm、好ましくは4~100μm程度の波長をいう。

【0049】
第2工程で使用するレーザーは中赤外線波長又は遠赤外線波長であれば、特に限定されない。中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーとしては、炭酸ガスレーザーを例示することができる。炭酸ガスレーザーは、炭酸ガスを媒質として使用し、前記波長領域の連続波又はパルス波で構成されるレーザーである。

【0050】
中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーは、UV又はYAGレーザー等のような高い光子エネルギーを有していない。このため、中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを使用すれば、UV又はYAGレーザー等の照射に比べて、レーザー照射による材料の劣化が生じにくい。

【0051】
また、中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーは、UV又はYAGレーザー等に比べてビーム径が大きい。このため、中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを使用すれば、UV又はYAGレーザー等の照射に比べて、照射ターゲットとなる材料に対して幅広い範囲にわたってレーザーを照射しやすくなる。その結果、高分子マトリックス中に金属粒子がより均一に存在しやすくなり、金属粒子の凝集及び偏在を抑制しやすい。

【0052】
中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを得るための装置は特に限定されず、公知の装置を使用して得ることができる。例えば、公知の炭酸ガスレーザー照射装置を第2工程で使用することができる。

【0053】
レーザーの照射条件は特に限定されない。例えば、照射時間は、製造時間が長くなり過ぎない範囲で適宜調整することができる。中赤外線波長又は遠赤外線波長のレーザーを使用するので、他のレーザーを使用する場合に比べて短時間の照射とすることができる。例えば、照射時間は0.1~300秒とすることができ、1~150秒とすることが好ましく、5~30秒とすることがより好ましい。

【0054】
レーザーの照射出力も特に限定されず、例えば、0.5~3Wとすることができ、0.5~1.5Wとすることがより好ましい。

【0055】
レーザー照射により、高分子中に含まれる金属化合物が還元され、金属粒子が生成する。ここで生成する金属粒子の金属の種類は、金属化合物に含まれる金属の種類と同じである。従って、例えば、金属粒子は、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である。

【0056】
第2工程でのレーザー照射によって、基板上に複合材料が形成される。複合材料は、例えば、薄膜状、フィルム状等に基板上に形成され得る。

【0057】
第2工程で得られた複合材料は基板からはがして使用してもよいし、基板に形成された状態で使用してもよい。また、前述のようにセパレータを使用して複合材料を形成させれば、複合材料をいわゆる自立膜として使用しやすい。

【0058】
3.複合材料
第1工程及び第2工程をこの順に経ることによって、複合材料が形成される。この複合材料は、高分子及び金属粒子を含む。複合材料では、高分子マトリックス中に金属粒子が分散して存在し得る。

【0059】
本発明の製造方法では、高分子マトリックス中に存在する金属粒子の平均粒子径は、例えば、0.1~500nm、好ましくは1~100nm、より好ましくは1~50nmとなり得る。ここでいう平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡による直接観察によって無作為に50個を選択し、これらの円相当径を計測して算術平均した値をいう。

【0060】
金属粒子の平均粒子径は、第1工程及び第2工程の条件に応じて調整することが可能である。例えば、第1工程の原料に使用する金属化合物の濃度を変更することで、金属粒子の平均粒子径を調節することができる。あるいは、第2工程のレーザー照射条件を変更することでも、金属粒子の平均粒子径を調節することができる。

【0061】
金属粒子は、高分子マトリックス中に均一分散しやすい。すなわち、金属粒子は、高分子マトリックス中で凝集及び偏在が発生しにくい。

【0062】
また、第1工程及び第2工程を経て製造される複合材料は、例えば、単位体積あたりの金属粒子の個数が、従来の製造方法で得られた複合材料よりも多くなり得る。これは、短時間の特定波長レーザーの照射及びレーザーのビーム径が大きいことに起因すると推測される。

【0063】
本発明の製造方法では、短時間、かつ、簡便な工程により高分子及び金属粒子を含む複合材料を製造することができる。特に、金属粒子がより均一に分散し、また、従来のレーザーアニールや熱アニールによる製造方法と比べて、材料に与えるダメージも顕著に低減されることから、強度等の諸物性の低下も生じにくい。そのため、本発明の製造方法で得られた複合材料は、機能性薄膜として各種の用途に使用でき、例えば、精密電子部品の部材、コーティング用フィルム、光学部材等の保護膜等の使用に好適である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
図1に示す製造フローに従って、複合材料の製造を行った。まず、基板の事前準備として、カバーガラスに、ポリスチレン(PS)のトルエン溶液を500μL滴下し、1000rpmで10秒の条件でスピンコートを行い、PS薄膜をカバーガラスに形成した。前記ポリスチレンのトルエン溶液は、ポリスチレンを0.375g,トルエンを3mL使用して調製した。
【実施例】
【0066】
一方、ポリビニルアルコール(PVA)0.125gを水2mLに加えて25℃で保持し、撹拌機により1500rpmで20分間撹拌してPVA溶液を得た。得られたPVA溶液を95℃に保持した状態で、撹拌機により1500rpmで45分間撹拌しつつ、そこへ硝酸銀溶液を加え、引き続き1500rpmで10分間撹拌し、原料を得た。硝酸銀溶液は、硝酸銀を0.16g、水を1mL使用して調製した。
【実施例】
【0067】
このように調製した原料を前述のカバーガラス上に形成したPS薄膜表面に500μL滴下し、500rpmで5秒、次いで4000rpmとして10秒のスピンコートを順に行うことで、膜を形成した。
【実施例】
【0068】
この膜に炭酸ガスレーザー(10.6μm、ピーク出力60W、繰り返し2.5kHz、パルス時間幅100-400μs)を照射出力1W、照射時間5秒で照射した。これにより、PS薄膜上に高分子(PVA)中に金属粒子(銀ナノ粒子)が分散してなる複合材料が複合薄膜として得られた。
【実施例】
【0069】
その後、PS薄膜と複合薄膜とが積層されてなる積層体を、カバーガラスから剥がし、この積層体を市販のOHPフィルム上に載せ、トルエンを加えて積層体を浸漬させた。これにより、積層体のPS薄膜部分のみが溶解し、複合薄膜を単独で、すなわち自立膜として得ることができた。
【実施例】
【0070】
(実施例2)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0071】
(実施例3)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0072】
(実施例4)
炭酸ガスレーザーの照射出力を1.5Wに変更したこと以外は実施例2と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0073】
(実施例5)
炭酸ガスレーザーの照射出力を2Wに変更したこと以外は実施例2と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0074】
(実施例6)
炭酸ガスレーザーの照射時間を20秒に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0075】
(実施例7)
炭酸ガスレーザーの照射出力を1.5Wに変更したこと以外は実施例6と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0076】
(実施例8)
炭酸ガスレーザーの照射出力を2Wに変更したこと以外は実施例6と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0077】
(実施例9)
硝酸銀0.16gの代わりにテトラクロロ金(III)酸四水和物0.16gに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。この複合薄膜は、高分子(PVA)中に金属粒子(金ナノ粒子)が分散してなる複合薄膜であった。
【実施例】
【0078】
(実施例10)
炭酸ガスレーザーの照射時間を3秒に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0079】
(実施例11)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0080】
(実施例12)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例9と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0081】
(実施例13)
炭酸ガスレーザーの照射出力を1.5Wに変更したこと以外は実施例11と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0082】
(実施例14)
炭酸ガスレーザーの照射出力を2Wに変更したこと以外は実施例11と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0083】
(実施例15)
ポリビニルアルコール(PVA)0.125gの代わりにポリエチレングリコール(PEG、重量平均分子量2万)0.125g及びエチレングリコール0.013gの混合物に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。この複合薄膜は、高分子(PEG)中に金属粒子(銀ナノ粒子)が分散してなる複合薄膜であった。
【実施例】
【0084】
(実施例16)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例15と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0085】
(実施例17)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例15と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0086】
(実施例18)
炭酸ガスレーザーの照射時間を120秒に変更したこと以外は実施例15と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0087】
(実施例19)
炭酸ガスレーザーの照射時間を120秒に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0088】
(実施例20)
PVA溶液中の硝酸銀の濃度を1/2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0089】
(実施例21)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例20と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0090】
(実施例22)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例20と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0091】
(実施例23)
炭酸ガスレーザーの照射時間を120秒に変更したこと以外は実施例20と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0092】
(実施例24)
PVA溶液中の硝酸銀の濃度を1/4に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0093】
(実施例25)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例24と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0094】
(実施例26)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例24と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0095】
(実施例27)
炭酸ガスレーザーの照射時間を120秒に変更したこと以外は実施例24と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0096】
(実施例28)
ポリビニルアルコール(PVA)0.125gの代わりにポリエチレングリコール(PEG、重量平均分子量2万)0.125gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。この複合薄膜は、高分子(PEG)中に金属粒子(銀ナノ粒子)が分散してなる複合薄膜であった。
【実施例】
【0097】
(実施例29)
炭酸ガスレーザーの照射時間を10秒に変更したこと以外は実施例28と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0098】
(実施例30)
炭酸ガスレーザーの照射時間を40秒に変更したこと以外は実施例28と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0099】
(実施例31)
炭酸ガスレーザーの照射時間を120秒に変更したこと以外は実施例28と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0100】
(比較例1)
炭酸ガスレーザーの代わりにYAGレーザー(Nd:YAGレーザー、10ns、10Hz、第2高調波(532nm))を使用して、パルスのフルエンスを約150mJ/cm-2、照射回数を100ショットとして10分間照射したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0101】
(比較例2)
照射回数を600ショットとしたこと以外は、比較例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0102】
(比較例3)
照射回数を6000ショットとしたこと以外は、比較例1と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0103】
(比較例4)
炭酸ガスレーザーの照射を行わず、膜をオーブンにより90℃で120分間加熱したこと以外は実施例28と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0104】
(比較例5)
炭酸ガスレーザーの照射を行わず、膜をオーブンにより130℃で30分間加熱したこと以外は実施例28と同様の方法で複合薄膜を得た。
【実施例】
【0105】
図2は、実施例1~8で得られた複合薄膜の測定結果であり、(A)は消光スペクトル、(B)はAFM画像、(C)はX線回折の測定結果を示す。なお、図2(A)及び(C)において、「ブランク1」の表記は、実施例1において、炭酸ガスレーザーを照射する前の膜の測定結果である。なお、消光スペクトルの測定には、OCEAN OPTICS社の「USB2000+」を、AFM画像の観察には、キーエンス社の「VN-8010」を、X線回折の測定にはRIGAKU社の「RINT-TTRIII」を使用した。
【実施例】
【0106】
図2(A)、(C)から、銀ナノ粒子に由来するピークの出現が認められた。また、図2(B)から、ナノ粒子の存在が確認された。
【実施例】
【0107】
図3は、実施例9~14で得られた複合薄膜の測定結果であり、(A)は消光スペクトル、(B)はAFM画像、(C)はX線回折の測定結果を示す。なお、図2(A)及び(C)において、「ブランク2」の表記は、実施例11において、炭酸ガスレーザーを照射する前の膜の測定結果である。
【実施例】
【0108】
図3(A)、(C)から、金ナノ粒子に由来するピークの出現が認められた。また、図2(B)から、ナノ粒子の存在が確認された。
【実施例】
【0109】
図4は、実施例15~18で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果である。なお、図4において、「ブランク3」の表記は、実施例15において、炭酸ガスレーザーを照射する前の膜の測定結果である。
【実施例】
【0110】
図4から、銀ナノ粒子に由来するピークの出現が認められた。
【実施例】
【0111】
図5は、比較例1~3で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果である。銀ナノ粒子形成は認められるものの、図5と図1の結果とを対比すると、図5のピーク強度は明らかに図1よりも小さい。この結果は、比較例1~3のようにYAGレーザーを10分(600秒)照射しても、炭酸ガスレーザーを短時間照射した場合に比べて銀ナノ粒子の生成量が少ないことを示している。
【実施例】
【0112】
図6は、実施例1~3及び19~27で得られた複合薄膜の消光スペクトルの測定結果であり、(A)は実施例1~3及び19、(B)は実施例20~23、(C)は実施例24~27の測定である。いずれも銀ナノ粒子の形成が確認された。
【実施例】
【0113】
また、各消光スペクトル内に挿入したAFM像に示しているように、硝酸銀(金属化合物)の濃度及び照射時間によって、銀ナノ粒子の平均粒子径が異なることがわかった。この結果は、製造条件によって、金属粒子の平均粒子径を制御できること示している。
【実施例】
【0114】
図7は、実施例28~31で得た複合薄膜の消光スペクトルの測定結果である。図7中、「ブランク4」の表記は、実施例28において、炭酸ガスレーザーを照射する前の膜の測定結果である。いずれも銀ナノ粒子の形成が確認されたことから、エチレングリコールが存在せずとも炭酸ガスレーザーによる還元が起こって、金属粒子が形成されることがわかった。なお、PEGをポリエチレンオキサイド(PEO、重量平均分子量50万)に代えても同様の傾向が見られた。
【実施例】
【0115】
図8は、比較例4~6で得た複合薄膜の消光スペクトルの測定結果である。いずれも銀ナノ粒子の形成は確認されなかったことから、熱アニールでは、金属粒子が生成しにくいことがわかった。
【実施例】
【0116】
以上の各実施例及び比較例の結果から、本発明の製造方法では、YAGレーザーの照射及び熱アニール等の方法に比べると、極めて短時間で金属粒子を含む複合材料を製造できることがわかる。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
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