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Specification :(In Japanese)ポリマーの製造方法、及びその製造方法によって得られるポリマー

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2018-178028A
Date of publication of application Nov 15, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)ポリマーの製造方法、及びその製造方法によって得られるポリマー
IPC (International Patent Classification) C08F 265/06        (2006.01)
C08F   4/28        (2006.01)
FI (File Index) C08F 265/06
C08F 4/28
Number of claims or invention 16
Filing form OL
Total pages 32
Application Number P2017-082837
Date of filing Apr 19, 2017
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】嶋中 博之
【氏名】村上 賀一
【氏名】田儀 陽一
【氏名】菊池 亜美
【氏名】榊原 圭太
【氏名】辻井 敬亘
Applicant (In Japanese)【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100098707、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 利英子
【識別番号】100135987、【弁理士】、【氏名又は名称】菅野 重慶
【識別番号】100168033、【弁理士】、【氏名又は名称】竹山 圭太
【識別番号】100161377、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 薫
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4J015
4J026
F-term 4J015CA04
4J015CA14
4J026AA45
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4J026DA12
4J026DB02
4J026DB16
4J026DB25
4J026DB32
4J026EA04
4J026FA03
4J026GA01
4J026GA02
Abstract (In Japanese)【課題】所望する複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを、比較的容易に、工業的、産業的に製造することができる技術の提供。
【解決手段】モノマーの重合開始基として機能する特定の有機基を有する有機化合物と、モノマーと、ヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温して、前記有機基から停止反応を伴うラジカル重合が開始する重合手法を利用し、第1の工程で、前記有機化合物の1分子内に2個以上存在する有機基の一部から第1のモノマーの重合を開始して、1種目のポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得、この構造の一部に前記有機基が残存するポリマーを第2の工程で用いる有機化合物として用い、この有機基から第2のモノマーの重合を開始し、この操作を順次行うことで、2種以上の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしているポリマーを製造する方法及び、該方法によって得られたポリマー。
【選択図】なし
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
(1)不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸系モノマーと、(2)前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する下記一般式1で表される構造の基が、1分子内に少なくとも1個導入されている有機化合物と、(3)ヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温することで、前記構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まる重合工程を有するポリマーを得る重合手法を利用して、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている(コ)ポリマーを製造するポリマーの製造方法であって、
前記重合工程を2回以上実施し、
第1段目の工程は、前記(2)の有機化合物として、1分子内に2個以上の重合開始基が導入されている有機化合物を使用し、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物を(2)の有機化合物に導入されている重合開始基の数未満となる量で使用することで、前記2個以上の重合開始基の一部から開始する、前記(1)のモノマーの重合を行って、1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得、得られたポリマーを精製するか或いは精製しない工程であり、
第2段目の工程は、前記(2)の有機化合物として、前記第1段目の工程で得られた1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを使用し、前記第1段目の工程で使用されなかった残余の重合開始基に対し、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物を前記残余の重合開始基の数或いは数未満となる量で使用することで、前記残余の重合開始基の一部又は全部から開始する、前記第1段目の工程で使用した(1)のモノマーとは異なる(1)のモノマーの重合を行って、2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得、得られたポリマーを精製するか或いは精製しない工程であることを特徴とするポリマーの製造方法。
JP2018178028A_000013t.gif(一般式1中、R1は、H又は任意のアルキル基又はアシル基又はアリール基のいずれかを表し、R2は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、Cl又はBrを表し、Yは、O又はNHを表す。)
【請求項2】
さらに、前記第2段目の工程で得られた2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマー中に、前記第1段目の工程及び前記第2段目の工程で使用されなかった残余の重合開始基がある場合に、これを(2)の有機化合物として、残余の重合開始基がなくなるまで、前記第2段目の工程と同様の工程を順次繰り返して、複数種の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている構造の(コ)ポリマーを得る請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記重合工程で、アゾ系ラジカル重合開始剤、過酸化物系ラジカル重合開始剤及び光重合ラジカル重合開始剤のいずれについても使用しない請求項1又は2に記載のポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記重合工程で、さらに、(4)ヨウ素、ヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物および有機塩基を有する化合物の群から選ばれる少なくともいずれかを使用する請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記重合工程の際に、さらに(5)有機溶媒を使用する請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、アルコール系、グリコール系、アミド系、スルホキシド系、尿素系及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項5に記載のポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記一般式1で表される基が、下記一般式2で表される基である請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
JP2018178028A_000014t.gif(一般式2中、Yは、O又はNHを表す。)
【請求項8】
前記2回以上実施する重合工程で、先に実施する重合工程でポリマーを得た後に、該ポリマーの精製をすることなく、次に実施する重合工程で、(2)の有機化合物として該ポリマーを利用し、(3)のヨウ素イオン含有化合物と、先に実施した重合工程で使用したのとは異なる(1)のモノマーを添加して重合する請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記第1段目の工程で用いる前記(2)の有機化合物が、前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーである請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項10】
前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーが、前記重合開始基を有し、且つ、ラジカル重合性基を有するモノマーを構成単位としてなるポリマーである請求項9に記載のポリマーの製造方法。
【請求項11】
前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーが、直鎖状ポリマー、星型ポリマー及び架橋粒子型ポリマーからなる群から選ばれるいずれかのポリマーである請求項9に記載のポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記第1段目の工程で用いる前記(2)の有機化合物が、重合開始基を1分子内に1個有し且つラジカル重合性基を有するラジカル重合性モノマーと、これとは別のラジカル重合性モノマーと、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物とを使用する前記重合手法を利用して得た、2種のポリマーが分岐した内部に重合開始基が複数個残っている星型ポリマーである請求項1~8のいずれか1項に記載のポリマーの製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項のポリマーの製造方法で得られた、(1)のモノマーが重合してなる2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、それぞれ、前記(2)の有機化合物を構成する重合開始基からグラフトしていることを特徴とするポリマー。
【請求項14】
2種類の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
請求項8のポリマーの製造方法で得られた、(1)のモノマーが重合してなる2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、それぞれ、前記(2)の有機化合物を構成する重合開始基からグラフトしており、且つ、少なくとも、前記ポリマー鎖のうちの1種類がA-Bブロックコポリマー鎖で、他の1種類が、該A-BブロックコポリマーのBのポリマーブロックと同様のモノマーからなるポリマー鎖であることを特徴とするポリマー。
【請求項16】
請求項12のポリマーの製造方法で得られた、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、前記星型ポリマーの内部にある複数個の重合開始基からグラフトしている星型ポリマーであることを特徴とするポリマー。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種のポリマー鎖がグラフトしたポリマーの製造方法と、その製造方法によって得られるポリマーに関し、より詳しくは、比較的容易に複数種のアクリル鎖が高質量比で導入されたポリマーを得ることができる産業的に有用な重合法と、構造が所望の状態に制御されたポリマーを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1つの有機化合物に、ポリマー、特に本発明では(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー等のビニル系ポリマーをグラフトさせたい場合は、下記のような方法が行われている。すなわち、グラフトさせたい有機化合物が有する、或いは、予め導入させた官能基と、その官能基と反応しうる基を末端に有するポリマーとを反応させて得る方法や、または、グラフトさせたい有機化合物に重合を開始する基(重合開始基)を導入して、その重合開始基からモノマーを重合させる方法によって、得ている。なお、本発明で規定している「グラフト」とは、その有機化合物の構造中の任意の場所から、ポリマーが伸びている構造を示し、分岐構造は勿論であるが、有機化合物の末端からポリマーが生成している場合も含む。
【0003】
より具体的に述べれば、特にその有機化合物がポリマーである場合は、官能基を有する又は導入されたポリマー(主ポリマー)に、その官能基と反応しうる基を末端等に有するポリマーを反応させて、主ポリマーにポリマーがグラフトしたポリマーを得る「grafting to」法、または、そのポリマーに重合開始基を導入して、その重合開始基からモノマーを重合させてポリマーを得る「grafting from」法、片末端に不飽和結合を有するポリマー(マクロモノマー)、必要に応じて、他の不飽和結合を有するモノマーを併用して重合して、結果として、マクロモノマー由来のポリマーがグラフトしたポリマーを得ることができる「grafting through」法と呼ばれる、それぞれのグラフト方法がある(特許文献1~3)。上記の手法にて、複数種のポリマーがグラフトしたポリマーを得るためには、「grafting to」法や「grafting through」法では、その末端に官能基や不飽和基を有するポリマーを複数種使用することで得ることができるし、「grafting from」法では、その導入した開始基からモノマーを重合して、ポリマーを得た後、その後、さらに、そのポリマーに重合開始基を導入して、その重合開始基から他のモノマーを重合して次のポリマー種を導入するという方法が考えられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4758652号公報
【特許文献2】特許第4813733号公報
【特許文献3】特開2008-274181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したそれぞれのグラフト方法では、下記のような問題がある。まず、「grafting to」法や「grafting through」法では、使用する材料は、末端に官能基を有するポリマーを使用するので、高分子量の末端の反応であるために、反応系中の官能基濃度が低く、その反応性が悪い場合があり、質量的に多くのポリマーを導入できないし、また、その材料のポリマーが反応せず残存してしまう場合がある。さらに、「grafting through」法では、末端のラジカルがカップリングしてしまい、ゲル化や高分子量化してしまい、所望するポリマーを得ることができない場合がある。加えて、これらのグラフト方法にて、複数種のポリマーをグラフト導入しようとすると、煩雑で、所望のポリマーを得ることができない場合があり、工業的や産業的にも不適であり、その手法が確立されていない。このため、本発明が目的とする、1つの有機化合物に、(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー等のビニル系ポリマーをグラフトさせてなる明確な製品は市場には出ていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、所望する複数種の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを、比較的容易に、工業的、産業的に製造することができる技術を提供することにある。本発明のより具体的な目的は、所望するポリマー種をポリマー鎖としてグラフトして、複数種類のポリマー鎖を導入することができ、さらに、そのグラフトしているポリマー鎖の質量比が、そのグラフトしたポリマー全体に対し高質量比であり、その結果、製造したポリマーが、今までにない性能を発揮することができるポリマーになる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、(1)不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸系モノマーと、(2)前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する下記一般式1で表される構造の基が、1分子内に少なくとも1個導入されている有機化合物と、(3)ヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温することで、前記構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まる重合工程を有するポリマーを得る重合手法を利用して、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている(コ)ポリマーを製造するポリマーの製造方法であって、前記重合工程を2回以上実施し、第1段目の工程は、前記(2)の有機化合物として、1分子内に2個以上の重合開始基が導入されている有機化合物を使用し、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物を(2)の有機化合物に導入されている重合開始基の数未満となる量で使用することで、前記2個以上の重合開始基の一部から開始する、前記(1)のモノマーの重合を行って、1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得、得られたポリマーを精製するか或いは精製しない工程であり、第2段目の工程は、前記(2)の有機化合物として、前記第1段目の工程で得られた1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを使用し、前記第1段目の工程で使用されなかった残余の重合開始基に対し、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物を前記残余の重合開始基の数或いは数未満となる量で使用することで、前記残余の重合開始基の一部又は全部から開始する、前記第1段目の工程で使用した(1)のモノマーとは異なる(1)のモノマーの重合を行って、2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得、得られたポリマーを精製するか或いは精製しない工程であることを特徴とするポリマーの製造方法を提供する。
JP2018178028A_000002t.gif(一般式1中、R1は、H又は任意のアルキル基又はアシル基又はアリール基のいずれかを表し、R2は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、Cl又はBrを表し、Yは、O又はNHを表す。)
【0008】
上記の本発明のポリマーの製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。すなわち、さらに、前記第2段目の工程で得られた2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマー中に、前記第1段目の工程及び前記第2段目の工程で使用されなかった残余の重合開始基がある場合に、これを(2)の有機化合物として、残余の重合開始基がなくなるまで、前記第2段目の工程と同様の工程を順次繰り返して、複数種の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている構造の(コ)ポリマーを得ること;前記重合工程で、アゾ系ラジカル重合開始剤、過酸化物系ラジカル重合開始剤及び光重合ラジカル重合開始剤のいずれについても使用しないこと;前記重合工程で、さらに、(4)ヨウ素、ヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物及び有機塩基を有する化合物の群から選ばれる少なくともいずれかを使用すること;前記重合工程の際に、さらに(5)有機溶媒を使用すること;前記有機溶媒が、アルコール系、グリコール系、アミド系、スルホキシド系、尿素系及びイオン液体からなる群から選ばれる少なくともいずれかであること;前記一般式1で表される基が、下記一般式2で表される基であること;が挙げられる。
JP2018178028A_000003t.gif(一般式2中、Yは、O又はNHを表す。)
【0009】
また、上記本発明のポリマーの製造方法の好ましい形態としては、前記2回以上実施する重合工程で、先に実施する重合工程でポリマーを得た後に、該ポリマーの精製をすることなく、次に実施する重合工程で、(2)の有機化合物として該ポリマーを利用し、(3)のヨウ素イオン含有化合物と、先に実施した重合工程で使用したのとは異なる(1)のモノマーを添加して重合すること;前記第1段目の工程で用いる前記(2)の有機化合物が、前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーであること;前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーが、前記重合開始基を有し、且つ、ラジカル重合性基を有するモノマーを構成単位としてなるポリマーであること;前記重合開始基を1分子内に2個以上有するポリマーが、直鎖状ポリマー、星型ポリマー及び架橋粒子型ポリマーからなる群から選ばれるいずれかのポリマーであること;前記第1段目の工程で用いる前記(2)の有機化合物が、重合開始基を1分子内に1個有し且つラジカル重合性基を有するラジカル重合性モノマーと、これとは別のラジカル重合性モノマーと、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物とを使用する前記重合手法を利用して得た、2種のポリマーが分岐した内部に重合開始基が複数個残っている星型ポリマーであること;が挙げられる。
【0010】
本発明は、別の実施形態として、上記いずれかのポリマーの製造方法で得られた、(1)のモノマーが重合してなる2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、それぞれ、前記(2)の有機化合物を構成する重合開始基からグラフトしていることを特徴とするポリマーを提供する。
【0011】
上記本発明のポリマーの好ましい形態としては、2種類の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしていることが挙げられる。
【0012】
本発明は、別の実施形態として、前記した好ましいポリマーの製造方法で得られた、(1)のモノマーが重合してなる2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、それぞれ、前記(2)の有機化合物を構成する重合開始基からグラフトしており、且つ、少なくとも、前記ポリマー鎖のうちの1種類がA-Bブロックコポリマー鎖で、他の1種類が、該A-BブロックコポリマーのBのポリマーブロックと同様のモノマーからなるポリマー鎖であることを特徴とするポリマーを提供する。
【0013】
本発明は、別の実施形態として、前記した好ましいポリマーの製造方法で得られた、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖が、前記星型ポリマーの内部にある複数個の重合開始基からグラフトしている星型ポリマーであることを特徴とするポリマーを提供する。
【0014】
本発明のポリマーは、物の発明に関し、一方で、「請求項1~12のいずれか1項のポリマーの製造方法で得られた」とした製造プロセスにより、物の発明を特定している。本発明のポリマーは、本発明の新規な製造方法を利用することで初めて得られた、所望する2種類以上のポリマー鎖が、上記製造方法に特有の重合手法で用いる(2)の有機化合物に導入されている特有の基からグラフトした構造のものであり、そのグラフトしているポリマー鎖の質量比が、そのグラフトしたポリマー全体に対し高質量比なものとなる。ここで、これら複数のポリマー鎖は、上記製造方法に特有の重合手法で得られる。具体的には、(3)のヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物によって、(2)の有機化合物に導入されている特有の構造の基を、重合開始基として機能させ、該重合開始基から(1)のモノマーをラジカル重合させることで、(2)の有機化合物の重合開始基を起点として(1)のモノマーから構成されるポリマーが成長した構造のポリマー鎖であるが、その構造又は特性により直接特定することは不可能であり、上記したポリマーを得るためのプロセス(製法)によって初めて特定することが可能になる。ポリマーが、分子量の異なる種々のポリマー分子の集合体(混合物)であることは、当該技術分野において周知の事実であり、集合体(混合物)に含まれる個々のポリマー分子の構造や物性を特定することは不可能であるとともに、およそ実際的でもない。上記理由から、本発明のポリマーは、製造プロセスによる特定をしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来、工業的な製造が困難で、煩雑であった、所望する複数種のポリマー鎖がグラフトした構造のポリマーを容易に得ることが可能になる、新規な重合手法を利用したポリマーの製造方法が提供される。本発明で利用する新規な重合手法は簡易的であり、(1)のモノマーの重合開始基として機能する、塩素又は臭素が置換した特定の構造の基を有する(2)の有機化合物と、(1)不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーと、(3)ヨウ素イオンを有する化合物とを、混合、加温(加熱)するだけで、前記構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まり、ポリマーを得ることができる。本発明によれば、この重合方法を巧みに利用し、第1段目の重合工程で、2個以上の特定の構造の基を有する(2)の有機化合物を用い、この基を余らせることで、残余の重合開始基を有する化合物(第1段目の工程でポリマー鎖がグラフトしたのでポリマーである)を得、このポリマーを第2段目の重合工程の(2)の有機化合物として用い、(1)のモノマーとしての(メタ)アクリル酸系モノマーと、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を混合、加温することで、前記重合開始基から重合が始まり、次のポリマー鎖がグラフトする。そして、それぞれの重合工程において、上記操作を繰り返すことで、所望する多種類のポリマー鎖がグラフトしたポリマーを容易に得ることができる。すなわち、重合開始基として機能する(2)の有機化合物の特定の構造の基の数を、所望するポリマー鎖の種類の数以上にして、各段階の重合工程で、混合する(3)のヨウ素イオンを有する化合物の量を適宜にコントロールするだけで、所望する複数種のポリマー鎖がグラフトした多用な構造のポリマーが得られる。さらに、本発明によって提供が可能になるポリマーは、グラフトしているポリマー鎖の質量比がそのポリマー全体に対し、非常に高質量比で導入され、それに加えて、複数種のポリマー鎖がグラフトした構造のポリマーであるので、それぞれのグラフトしたポリマー鎖の性質が出現し、今までにない性能を発揮するものになると考えられる。このため、本発明によって提供されるポリマーは、その用途を様々に展開することができ、今までにない材料であるので、産業界での技術革新となり得ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1段目の工程で得たポリマーを精製せずに、第2段目の工程で(2)の有機化合物として用いた場合の反応を説明するためのイメージ図である。
【図2】第1段目の工程で得たポリマーを精製して、第2段目の工程で(2)の有機化合物として用いた場合の反応を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明者らは、本発明の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、前記した(2)の、モノマーの重合開始基として機能する特定の構造の基(重合開始基)を有する有機化合物と、(1)の、不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーと、(3)の、ヨウ素イオンを有する化合物とを、混合、加温(加熱)するだけで、前記構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まり、ポリマーを得ることができる、従来にない重合手法を見出し、さらに、この新たな重合手法を巧みに利用することで、所望する複数種のポリマー鎖がグラフトした多種多様な構造のポリマーを得ることができることを見出して本発明を達成した。

【0018】
具体的には、本発明の製造方法では、(2)の有機化合物に、特定の構造の基(重合開始基)の数が2個以上であるものを用い、第1段目の工程で、(2)の有機化合物の重合開始基を余らせるように、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を使用して、(1)のモノマーとして、(メタ)アクリル酸系モノマーを重合させて1種目のポリマー鎖をグラフトさせ、ついで、第2段目の工程で、1種目のポリマー鎖がグラフトしているものを(2)の有機化合物とし、これに残存している重合開始基を全て使用するように、或いは、再度、(2)の有機化合物の重合開始基を余らせるように、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を使用して、先に重合させたものとは異なる(1)のモノマーを重合させることで2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖をグラフトさせ、必要に応じて、このステップを繰り返すことで、複数種の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている(コ)ポリマーとすることを可能にしている。すなわち、本発明のポリマーの製造方法は、以下のように構成したことを特徴とする。

【0019】
本発明の第1の特徴は、(1)ラジカル重合性モノマーと、(2)前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する下記一般式1表される構造の基が、1分子内に少なくとも1個導入されている有機化合物と、(3)ヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温(加熱)することで、前記構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まる重合工程を有する、ポリマーを得る重合手法を利用したことにある。
そして、少なくとも、上記重合工程を2回以上実施することで、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている構造の(コ)ポリマーを製造する。

【0020】
JP2018178028A_000004t.gif(一般式1中、R1は、H又は任意のアルキル基又はアシル基又はアリール基のいずれかを表し、R2は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、Cl又はBrを表し、Yは、O又はNHを表す。)

【0021】
上記した一般式1で表される構造の基の中でも、本発明では、特に、重合開始基が、下記一般式2で表される基であることが好ましい。
JP2018178028A_000005t.gif(一般式2中、Yは、O又はNHを表す。)

【0022】
本発明の第2の特徴は、その第1段目の工程で、前記(2)の有機化合物として、1分子内に2個以上の重合開始基が導入されている有機化合物を使用し、前記(3)のヨウ素イオン含有化合物を、(2)の有機化合物に導入されている重合開始基の数未満となる量で使用することで、前記2個以上の重合開始基の一部から開始する、前記(1)のモノマーの重合を行って、1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得たことにある。この第1段目の工程で得られるポリマーは、その構造の一部に、重合開始基が残存する本発明で利用する重合手法における(2)の有機化合物に該当するものになる。

【0023】
本発明の第3の特徴は、その第2段目の工程で、(2)の有機化合物として、第1段目の工程で得られた1種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを使用し、該ポリマー中の、第1段目の工程で使用されなかった残余の重合開始基に対し、(3)のヨウ素イオン含有化合物を前記残余の重合開始基の数或いは数未満となる量で使用することで、前記残余の重合開始基の一部又は全部から開始する、前記第1段目の工程で使用したモノマーとは異なる2種目の(1)のモノマーの重合を行って、2種目の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得た点にある。そして、この第2段目の工程で得られたポリマー中に、それまでの工程で使用されなかった残余の重合開始基がある場合は、それ以降も、先に実施する重合工程で得たポリマーを(2)の有機化合物として、残余の重合開始基がなくなるまで、前記第2段目の工程と同様の工程を順次繰り返して、複数種の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている構造の(コ)ポリマーを得ている。

【0024】
本発明の第4の特徴は、上記した第1段目から順次行う各工程でそれぞれに得られる、次の段の重合工程で(2)の有機化合物に該当するものとして利用されるポリマーを、精製して使用するか、或いは、精製しないで使用するかのいずれかの構成にした点にある。本発明者らの検討によれば、精製しないポリマーを使用した場合には、その前段の工程の重合で得た(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖の末端から、さらに、その段の工程で使用した別のモノマーによる重合が開始し、結果として、そのグラフト鎖が、A-Bブロックコポリマーとなることを見出した。精製したポリマーを使用した場合は、各工程で得られるポリマー鎖は、該当する工程で使用したモノマーで構成されたものになる。

【0025】
まず、上記した第1の特徴である本発明で利用する重合手法について説明する。この重合手法は、(1)不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーと、(2)前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する、本発明で規定する一般式1で表される構造の基が、1分子内に少なくとも1個導入されている有機化合物(以下、「(2)の有機化合物」と呼ぶ場合がある)と、(3)ヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温することで、前記構造の基(重合開始基)から、(1)のモノマーの停止反応を伴うラジカル重合が始まる重合工程を有することを特徴とする。このように、本発明で利用する重合手法は、ラジカル重合開始剤や、リビングラジカル重合に使用する特殊な材料や金属系の触媒を使用せずに、簡単な市販の材料を使用し、しかも厳密な重合条件を必要としない簡便な方法であり、下記の従来技術の課題を解決した有用なものである。

【0026】
不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーは、通常、ラジカルを発生させるために必要なラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合で効率よく得られることから、汎用性が高く、様々なところで使用されている。しかし、通常のラジカル重合法は、有用であるものの、重合が停止してしまうという課題があり、例えば、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーやスターポリマーなど、構造が複雑なポリマーは、通常のラジカル重合する方法によっては得ることができない。これに対し、ポリマーの分子量や構造を制御するために発明されたリビングラジカル重合によれば、構造が複雑な上記したようなポリマーを得ることができる。しかし、リビングラジカル重合では、特殊な化合物を使用したり、金属触媒を使用したりするため、それらの化合物や触媒を除去する必要があり、工業的には煩雑で複数の工程が必要であり、また、その重合条件も、使用するモノマーの精製を必要としたり、窒素雰囲気下で行う必要があるなど、厳密にする必要があるという課題があった。

【0027】
本発明で利用する重合手法は、上記課題に対してなされた新規なものであり、先に述べたように、モノマーの重合開始基として機能する特定の構造の基を有する、汎用で多様な形態とすることが可能な(2)の有機化合物と、モノマーと、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を、混合、加温(加熱)するだけで、前記構造の基から、停止反応を伴うラジカル重合が始まってポリマーを得ることができる、極めて簡便なものである。

【0028】
本発明では、上記した従来の重合方法と異なる構成の新規な重合手法を用い、これを巧みに利用し、別途の成分を用いることなく、使用する(2)に該当する有機化合物の種類や重合開始基の数等と、(2)の有機化合物に対する(3)のヨウ素イオン含有化合物の混合量とを適宜に調整するという極めて簡単な操作で、工業的な製造が困難で、煩雑であった複雑な構造のポリマーを容易に得ることが可能になる。具体的には、例えば、多種類のポリマー鎖が所望の量でグラフトした多分岐ポリマーや、A-Bブロックコポリマー鎖を含む多種類のポリマー鎖がグラフトした多分岐ポリマー、(2)に該当する有機化合物に、重合開始基を複数個もつポリマーを用いることで得られる、多種類のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマーや、複数種星型ポリマー、複数種架橋アクリル微粒子等を得ることができる。以下に、本発明で利用する重合手法を構成する各成分について説明する。

【0029】
[(1)(メタ)アクリル酸系モノマー]
本発明のポリマーの製造方法は、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている(コ)ポリマーを製造することを目的とする。すなわち、結果として、本発明の製造方法で得られるグラフトしているポリマーは、(メタ)アクリル酸系ポリマーである。このため、本発明では、先に説明した新規な重合手法で用いる、(1)の不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸系モノマー(単に、「(1)のモノマー」と記載する場合がある。)を、多種類使用する。なお、本発明で言う「(メタ)アクリル酸系モノマー」とは、後述する(メタ)アクリル酸などの酸モノマーや、(メタ)アクリレートモノマーを総じて呼んでいる。これらのモノマーは極めて汎用なものであり、本発明では、公知のいずれのものも使用でき、特に限定されない。

【0030】
本発明で、特に(メタ)アクリル酸系モノマーを使用することとした理由は、(メタ)アクリル酸系モノマーは、様々なエステル残基を有し、様々な組み合わせにより、多種多様なポリマーとすることができ、得られるポリマーが広範な利用が期待できるものになることと、さらに、本発明で利用する新規な重合手法に最適なモノマーが、(メタ)アクリル酸系モノマー、特にメタクリル酸系モノマーであることによる。なお、本発明では、得られるポリマーの汎用性等を考慮し、(1)のモノマーを(メタ)アクリル酸系モノマーに限定したが、本発明のポリマーの製造方法は、その他の種々のモノマーにも適用できる。

【0031】
本発明で使用する(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、下記のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロパン(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、脂肪族、脂環族、芳香族アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。

【0032】
また、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸系モノマー類、グリコール基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類、(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノ(メタ)アクリレート類、アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシル基、スルホン酸、リン酸)を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類、酸素原子含有の(メタ)アクリル酸系モノマー類、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類、窒素原子含有の(メタ)アクリル酸系モノマー類等を用いることができる。さらに、その他、3個以上の水酸基をもつモノ(メタ)アクリレート類や、ハロゲン原子含有(メタ)アクリレート類や、ケイ素原子含有の(メタ)アクリル酸系モノマー類や、紫外線を吸収する基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類や、α位水酸基メチル置換アクリレート類等も使用できる。また、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物の(メタ)アクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有する(メタ)アクリル酸系モノマー類も必要に応じて使用できる。本発明の製造方法で最終的に得られるポリマーの要求性能に合わせて、上記した汎用のモノマーから適宜に選択して用いればよい。

【0033】
[(2)の有機化合物]
本発明のポリマーの製造方法は、(2)の有機化合物として、前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する一般式1で表される構造の基(重合開始基)が、1分子内に2個以上導入されている有機化合物を用いることで、前記した新たな重合手法によるポリマーの製造を可能にしている。本発明者らは、本発明の目的を達成するために鋭意検討した結果、まず、(2)の有機化合物は、後述する(3)のヨウ素イオン含有化合物と、混合及び加温することで、(2)の有機化合物を構成する構造の基(重合開始基)から停止反応を伴うラジカル重合が始まり、先述した(1)のモノマーの重合開始基として機能してポリマーが得られることを見出した。具体的には、下記一般式1で表せる構造を有する基(以下、「式1の基」とも呼ぶ)の存在下、(1)のモノマーと(3)のヨウ素イオン含有化合物とを混合及び加温すると、これらの基から重合が開始し、結果として、(1)のモノマーがラジカル重合してなる(メタ)アクリル酸系ポリマーになる。

【0034】
本発明では、上記の重合手法を巧みに利用することで、複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得ることを可能にしている。本発明のポリマーの製造方法では、まず、(2)の有機化合物として、1分子内に存在する重合開始基が2個以上である構成のものを用い、第1段目で、「式1の基」のうちの一部のみが重合開始基として機能することとなるように調整した量の、(3)のヨウ素イオン含有化合物を混合及び加温して、その基から重合を開始させて、1種目の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得る。次に、第1段目の重合工程で得られたポリマーに残っている「式1の基」のうちの全部或いは一部が、重合開始基として機能するように、(3)のヨウ素イオン含有化合物を混合及び加温して、第2段目の重合工程を行い、2種目の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトした、2種以上のポリマー鎖がグラフトした構造のポリマーを得る。さらに、得られたポリマーに「式1の基」が残っている場合は、順次、上記と同様の操作を行うことで、重合開始基として機能させた基から、上記したものとは別の種類の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーが得られる。

【0035】
本発明で使用し、本発明を特徴づける(2)の有機化合物は、以下に示す一般式で表せる構造が分子内に導入されていればよく、これらの構造が、(1)のモノマーの重合開始基として機能する。

【0036】
JP2018178028A_000006t.gif(一般式1中、R1は、H又は任意のアルキル基又はアシル基又はアリール基のいずれかを表し、R2は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、Cl又はBrを表し、Yは、O又はNHを表す。)

【0037】
本発明で規定する「式1の基」は、その構造中にXとして、塩素原子(クロロとも呼ぶ)又は臭素原子(ブロモとも呼ぶ)が結合しており、これらの原子が、反応的に、脱離や置換できる基であることが特徴であり、さらに、これらの原子が結合している炭素に、少なくとも1個以上の電子求引基である、エステル基、アミド基などが結合しているものである。

【0038】
本発明の重合方法の反応機構は定かではない。後述する(3)のヨウ素イオン含有化合物のヨウ素が、該重合開始基の塩素又は臭素と置換(ハロゲン置換)して、重合開始基がヨウ素基となって、ついで、熱や他のイオン成分などが作用して酸化還元反応することによってヨウ素ラジカルとして脱離して、ついで、モノマーが重合して、ポリマーがグラフトして重合するのかもしれないし、従来公知のヨウ素移動重合や可逆的移動触媒重合などで得られるのかもしれない。その反応機構は特に限定できるものではなく、本発明の製造方法は、(1)のモノマーと、(2)の、一般式1で表される構造の基を有する有機化合物と、後述する(3)のヨウ素イオン含有化合物とを、混合及び加温するとした操作だけで、複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーの製造を可能にしたことを特徴とする。すなわち、先に述べたように、本発明では、(2)の有機化合物中に2個以上存在している「式1の基」の、重合開始基として機能させる反応数をコントロールすることで、所望する複数種のポリマー鎖を、所望の状態に適宜にグラフトすることを可能にしている。また、「式1の基」の構造中の電子求引基は、前記したハロゲン置換を促進させたり、ヨウ素がラジカルとして脱離しやすくさせたり、そのラジカルを若干安定化させたりするために必要であると考えられる。

【0039】
本発明の製造方法では、このような「式1の基」が分子内に2個以上導入されている構造を有する有機化合物であれば、どのようなものでも使用できる。また、(2)の有機化合物としては、例えば、低分子量化合物、モノマー、ポリマー等のいずれの形態ものも使用できる。以下、「式1の基」について、説明する。

【0040】
「式1の基」としては、例えば、以下に示すような、その構造中にエステル結合やアミド結合を有するものが挙げられる。本発明で用いる「式1の基」が分子内に導入されている(2)の有機化合物は、下記に示したように、エステル結合やアミド結合を介して、塩素原子(Cl)又は臭素原子(Br)を結合させている。

【0041】
「式1の基」としては、例えば、下記のような、β-クロロ又はブロモアルカン酸の、エステル結合又はアミド結合を有する基が挙げられる。
JP2018178028A_000007t.gif

【0042】
例えば、下記のような、β-クロロ又はブロモアリール置換アルカン酸の、エステル結合又はアミド結合を有する基などが挙げられる。
JP2018178028A_000008t.gif

【0043】
例えば、下記のような、クロロ又はブロモ置換アセトアルカン酸の、エステル結合又はアミド結合を有する基などが挙げられる。
JP2018178028A_000009t.gif

【0044】
上記に例示したような「式1の基」の、有機化合物への導入は、任意の方法とすることができ、特に限定されない。例えば、「式1の基」を導入する場合、対応するカルボン酸基含有化合物を、エステル化或いはアミド化することで得られる。また、エポキシ基を有する化合物に、「式1の基」をもつ化合物を反応させることで得られる。また、上記「式1の基」の構造中のX、すなわち、塩素又は臭素が結合している基のところに水酸基が結合している化合物を用い、ハロゲン化リン、濃塩酸や臭化水素酸を使用して該化合物の水酸基部分を塩素や臭素へと置換することで導入してもよい。また、上記「式1の基」の構造中のC-Xの部分に不飽和結合を有する化合物を用い、該不飽和結合に塩化水素や臭化水素を付加させてクロロやブロモを導入してもよい。

【0045】
本発明で用いる(2)の有機化合物としては、「式1の基」が導入されていれば、どのような有機化合物を使用してもよい。本発明者らの検討によれば、「式1の基」の中でも特に、開始重合反応の速度が高く、しかも市販品の化合物で合成が容易にできることから、下記一般式2で表せる構造の基(以下、「式2の基」と呼ぶ)が導入されている有機化合物を用いることが好ましい。
JP2018178028A_000010t.gif(一般式2中、Yは、O又はNHを表す。)

【0046】
上記「式2の基」は、従来公知の材料や方法で得ることができ、「式2の基」が導入された各種の形態の有機化合物も簡便に得ることができる。下記に、「式2の基」が導入された有機化合物が容易に合成できる一例について説明する。2-ブロモイソ酪酸系化合物を原料として、「式2の基」を導入する有機化合物に、そのカルボキシ基及びその誘導体と反応しうる基を有する有機化合物を用い、これらを反応させることによって得られる。その際に使用する化合物は特に限定されない。2-ブロモイソ酪酸系化合物としては、例えば、2-ブロモイソ酪酸、2-ブロモイソ酪酸ブロマイド、無水2-ブロモイソ酪酸が挙げられる。そして、これらの化合物と、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基、エチレンイミン基などの、カルボキシル基系の化合物と反応しうる対となる反応性基を有する有機化合物とを反応させることで、エステル結合、アミド結合にて、「式2の基」を有機化合物に導入することができる。

【0047】
本発明の製造方法で使用する(2)の有機化合物は、前記(1)のモノマーの重合開始基として機能する、上記した「式1の基」、中でもより好ましい「式2の基」(これらを、まとめて「式1又は2の基」と呼ぶ場合がある)が、分子内に2個以上導入されている有機化合物である。先に述べたように、使用する有機化合物としては、どのような形態のものであってもよく、従来公知の有機化合物が使用される。従来公知の有機化合物は種類が非常に多く例示することはできないが、具体例を挙げると、エチレンビス(2-ブロモイソブチラート)、ビス(2-(2’-ブロモイソブチリルオキシ)エチル)ジスルフィド、ビス(2-(2’-ブロモイソブチリルオキシ)ウンデシル)ジスルフィド、ポリエチレングリコールビス(2-ブロモイソブチラート)、1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリロキシメチル)エタン、テトラキス(2-ブロモイソブチリロキシメチル)ペンタエリスリトール、ヘキサキス(2-ブロモイソブチリロキシメチル)ジペンタエリスリトール、などが挙げられる。

【0048】
また、本発明の製造方法で使用する好適な(2)の有機化合物として、ポリマーが挙げられる。すなわち、重合開始基を2個以上有するポリマーを使用することで、より多種類の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖を導入することができ、得られるグラフトコポリマーは、様々な性能を発揮すると考えられる。(2)の有機化合物として用いるポリマーとしては、従来公知のものが使用できる。例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシリコーン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリビニルアルコール、セルロース、キトサン等のポリマーが挙げられる。これらは、単独重合物、それらポリマーのモノマー単位の共重合物、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー等のいずれの構造を有するポリマーであってもよい。本発明では、従来公知の方法で、これらのポリマーに、前記した「式1又は2の基」を2個以上導入させたポリマーを使用する。具体的な例を示すと、前記した2-ブロモイソ酪酸と、グリジドールを反応させて、式2の構造を有するグリセロールモノエステルを、ジオール成分の一つとして合成した、ポリウレタンやポリエステルとして使用したり、カルボン酸自体を、ポリアミドやポリイミドに組み込んだりすることで、(2)の有機化合物に該当するポリマーを得ることができるが、これに限定されない。

【0049】
また、本発明の製造方法で使用する(2)の有機化合物として、「式1又は2の基」の重合開始基を有し、且つ、ラジカル重合性基を有するモノマーを構成単位とするポリマーを用いることも、本発明の好ましい形態である。(2)の有機化合物として、このような重合開始基を有するモノマーを重合し得られたポリマーを使用すると、最終的に得られるポリマーを、(2)のポリマーからポリマー鎖が分岐した構造の、いわゆるグラフトコポリマーとすることができる。その結果、今まで容易に得ることができなかった、グラフトしたポリマー鎖の質量比がポリマー全体に対し高質量比であり、且つ、そのグラフトしているポリマー鎖が複数種である構造のポリマーを、工業的に簡便に且つ安価に得ることが可能になる。

【0050】
さらに、(2)の有機化合物として、下記のようにして得られる、内部に重合開始基が複数個残っている星型ポリマーを用いることも好ましい形態である。このような星型ポリマーは、重合開始基を1分子内に1個有し、且つ、ラジカル重合性基を有するモノマーと、これとは別のラジカル重合性モノマーとを、適宜な量の(3)のヨウ素イオン含有化合物とを混合及び加温することで得ることができる。

【0051】
上記で使用する「式1又は2の基」の重合開始基を有し、且つ、ラジカル重合性基を有するモノマーのラジカル重合性基としては、特に限定はないが、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アクリル基、メタクリル基などの不飽和二重結合を意味する。以下、上記のモノマーを、「式1又は2の基」を有するビニル系モノマーと呼ぶ場合がある。具体的に例示すると、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレートや、ビニル2-ブロモイソ酪酸エステルなどが挙げられる。このような「式1又は2の基」を有するビニル系モノマーを重合して、或いは、他のビニル系モノマーと共重合させることで、本発明で使用する(2)の有機化合物に該当するポリマーとして、好適に使用できる。この方法に限らず、予め、水酸基などを有するモノマーを重合した後、「式1又は2の基」を導入しても、結果として同様のポリマーとなる。他のビニル系モノマーと共重合させる場合、「式1又は2の基」が導入されているモノマーの配合量は任意であり、特に限定されない。

【0052】
その他のモノマーとしては、下記に挙げるようなものを適宜に使用することができる。例えば、前記した(1)のモノマーとして使用する(メタ)アクリル酸系モノマー類;スチレン、ビニルトルエン、ビニルヒドロキシベンゼン、クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルエチルベンゼン、ビニルジメチルベンゼン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ブタジエン、1-ヘキセン、シクロヘキセン、シクロデセン、ジクロロエチレン、クロロエチレン、フロロエチレン、テトラフロロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソシアナトジメチルメタンイソプロペニルベンゼン、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシメチルスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルアミン、アリルアミン、アミノスチレン、ビニルメチルアミン、アリルメチルアミン、メチルアミノスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルベンゾトリアゾール、ビニルカルバゾール、ジメチルアミノスチレン、ジアリルメチルアミン、トリメチルアンモニウムスチレンクロライド、ジメチルラウリルアミノスチレンクロライド、ビニルメチルピリジニルクロライド、ジアリルジメチルアンモニウム塩クロライド、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのモノマーが挙げられる。

【0053】
(2)の有機化合物に該当するポリマーは、従来公知のラジカル重合法で得たものでもよいし、場合によってはイオン重合や配位重合などの手法で得てもよい。通常は、上記したモノマーを使用して、アゾ系化合物や過酸化物を使用した従来のラジカル重合で得たポリマーを用いればよい。さらには、(2)の有機化合物に該当するポリマーを、リビングラジカル重合で得ると、分子量分布を狭くできたり、ブロックコポリマーやスターポリマー(星型ポリマー)等の、様々な構造とすることができるので、最終的に所望するポリマーによっては、ラジカル重合で得たポリマーを用いることが好ましい。リビングラジカル重合の方法の中では、「式1又は2の基」が導入されているモノマーを使用し、ニトロキサイドラジカルを使用するニトロキサイド法(NMP法)や、ジチオエステル化合物などを使用する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT法)や、ヨウ素化合物と有機触媒を使用する可逆的移動触媒重合(RTCP法)などが使用できる。しかし、酸化還元を利用する原子移動ラジカル重合では、モノマーの重合と、クロロ基又はブロモ基からの重合開始があるので、ゲル化してしまう可能性があるので好ましくない。

【0054】
(2)の有機化合物としてポリマーを使用する場合、そのポリマーの構造としては、特に、直鎖状ポリマー、星型ポリマー、架橋粒子型ポリマーのいずれかであることが好ましい。本発明の製造方法によれば、これらの多様な構造のポリマーに、容易に複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマーを導入することができるので、様々な産業用用途に活用できる有用な種々の構造のポリマーを製造することが期待でき、非常に好ましい。

【0055】
上記でいう直鎖状ポリマーとは、前記した「式1又は2の基」を有するモノマーの単独重合体、共重合体、または、A-Bブロックコポリマー、A-B-AやA-B-Cトリブロックコポリマーなども含む。また、星型ポリマーとは、従来公知のデンドリマーや多分岐型ポリマー等を指す。架橋微粒子型ポリマーは、従来公知の懸濁重合や乳化重合、ミニエマルジョン重合などの手法によって得られる、不飽和結合を2個以上有するビニル系モノマーや、お互いに反応する基を有する二種以上のモノマーと、「式1又は2の基」を有するモノマーを少なくとも材料として重合することによって得られるポリマーである。

【0056】
(2)の有機化合物に、直鎖状ポリマーを使用すると、本発明の製造方法で最終的に得られる(メタ)アクリル酸系ポリマーは、グラフトした構造を取るものになる。また、星型ポリマーを使用した場合は、そのデンドリマーなどのポリマーをコアとして、複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がアームとして結合している構造を取るものになる。また、架橋微粒子型ポリマーを使用した場合は、その粒子の表面にポリマー鎖が結合したコアシェル型のポリマーとすることができる。

【0057】
以上のように、本発明では、(2)の有機化合物として、「式1又は2の基」が2個以上導入されている有機化合物を使用する。本発明者らの検討によれば、「式1又は2の基」(重合開始基)が3個以上導入されている有機化合物を使用した方が、不純物のポリマーを少なくできるので、好ましい。重合開始基が2個の(2)の有機化合物を用い、本発明の重合手法で重合した場合、1段目の重合で、1個だけ(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖が結合した構造のポリマーに混じって、2個とも(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖が結合したポリマーや、一つもポリマー鎖がついていない構造のポリマーが得られる。ついで2段目でモノマーを重合した場合、2種類のポリマー鎖が結合した本発明のポリマーが得られるものの、2種類のポリマー鎖が結合していない不純物のポリマーを含有する場合がある。これに対し、重合開始基が3個以上導入されている(2)の有機化合物を用い、本発明の重合手法で重合した場合の方が、2種類のポリマー鎖が結合していない不純物のポリマーが少なくなるので、好ましい。このように構成することで、従来の技術では容易に得ることができなかった構造のポリマーを簡便に、より確実に得ることができる。

【0058】
また、(2)の有機化合物に、導入する重合開始基の量を調整することで、得られるポリマーの分子量をコントロールできる場合があり、このことも本発明で利用する重合手法の特徴である。この重合手法では、(2)の有機化合物に導入された「式1又は2の基」から重合が開始されるので、「式1又は2の基」を含む化合物1molに対して、(1)のモノマーの量を調整することで、製造するポリマーの分子量の調整ができる。しかし、この重合手法による重合は、ラジカル重合のような停止反応を伴い、カップリングして高分子量ができる場合があり、その場合は開始基の量で調整はできない。

【0059】
[(3)ヨウ素イオン含有化合物]
本発明のポリマーの製造方法では、上記した(1)のモノマー、(2)の有機化合物とともに、(3)ヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物を用いることを要す。これらの化合物の作用については、詳細は解明されていないが、この化合物を使用することによって、前記した「式1又は2の基」の臭素或いは塩素がヨウ素に置き換わり、ヨウ素が移動する重合が起こると考えられる。また、この化合物が酸化還元の触媒として作用して重合を進行させる可能性もある。以下、上記した化合物を「ヨウ素化剤」と称す場合がある。

【0060】
具体的には、ヨウ化金属、第四級アンモニウムアイオダイド、第四級ホスホニウムアイオダイド及び第四級アンモニウムトリヨージドからなる群から選ばれる1種以上のヨウ化物塩又はトリヨージド塩であるヨウ素イオン含有化合物を使用する。これらの化合物は、従来公知のものが使用でき、特に限定されない。例示すると、ヨウ化金属としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウムなどが挙げられる。第四級アンモニウムアイオダイドとしては、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイドなどが挙げられる。第四級ホスホニウムアイオダイドとしては、テトラブチルホスホニウムアイオダイド、トリブチルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイドなどが挙げられる。第四級アンモニウムトリヨージドとしては、トリブチルメチルアンモニウムトリヨージドなどが挙げられる。上記に限定されず、ヨウ素イオンを有していれば、どのような化合物でも使用できる。

【0061】
[(4)ヨウ素又はヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物又は有機塩基を有する化合物]
本発明のポリマーの製造方法では、以上で説明した(1)~(3)の材料を使用し、混合及び加温すれば重合が進行し、複数種のポリマー鎖がグラフトしている構造の(コ)ポリマーを得ることができる。本発明者らの検討によれば、上記の材料に加え、さらに、(4)のヨウ素、ヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物及び有機アミン等の有機塩基を有する化合物から選ばれるいずれかを添加し、重合工程を行うことも好ましい形態である。本発明者らの検討によれば、これらの成分をさらに添加することで、本発明で利用する重合手法において生じるラジカル重合の停止反応を防止することができ、高分子量化やゲル化を防止することができる。その作用は不明であるが、ヨウ素やアミノ基がラジカルとなって、成長ラジカルのカップリング防止に寄与するのではないかと考えられる。以下、(4)の成分を、簡易的に「(4)の触媒」と称す場合がある。

【0062】
(4)の触媒としては、ヨウ素、ヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物及び有機塩基を有する化合物であればよく、従来公知の化合物が使用され、それらは特に限定されない。ヨウ素を遊離することができるヨウ化有機化合物としては、ヨウ素が結合していれば熱や光でヨウ素を遊離するので、どのような化合物も使用できる。好ましくは、N-アイオドイミド系化合物であり、より好ましくは、市販品で入手しやすいN-アイオドスクシニルイミド、N-アイオドフタルイミド、N-アイオドシクロヘキサニルイミド、1,3-ジアイオド-5,5-ジメチルヒダントイン、N-アイオドサッカリンなどが挙げられる。また、有機塩基を有する化合物としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ホスファゼン塩基などの従来公知のものが使用できる。

【0063】
これら(4)の触媒の量は任意であり、特に限定されない。好ましくは、併用する重合開始基として機能する(2)の有機化合物の「式1又は2の基」の0.001モル倍~0.1モル倍の範囲で使用される。使用量があまりに多いと、触媒としての作用が十分発揮されず、副反応などが生じる可能性があるので好ましくない。

【0064】
[(5)有機溶媒]
以下に、本発明のポリマーの製造方法に用いることができる他の材料について説明する。本発明のポリマーの製造方法の重合工程は、有機溶媒を使用して重合する溶液重合が好ましい。これは、(1)のモノマー材料に、(3)のヨウ素化剤のようなイオン性の材料を溶解することができない場合があり、一方、(2)の有機化合物の「式1又は2の基」の構造中の塩素又は臭素と、(3)のヨウ素化剤のヨウ素イオンの交換は、前記したようなヨウ素化剤を溶解して行う必要があり、そのためには、下記に挙げるような極性が高い有機溶媒を一部又は全部に使用することが好ましい。具体的には、アルコール系、グリコール系、アミド系、スルホキシド系、尿素系、イオン液体である溶媒を使用することが好ましい。しかし、これらの溶媒は必ずしも必要でなく、例えば、(1)のモノマーに、ヨウ素化剤を溶解するモノマーを使用した場合は、特に有機溶媒を使用せずとも重合できる。一般に使用される有機溶媒としては従来公知の、炭化水素系、ハロゲン系、ケトン系、エステル系、グリコール系などの非極性の溶媒があり、これらの溶媒と併用して、上記したような極性の高い溶媒を使用すればよい。その場合、極性が高い溶媒の比率は任意であり、モノマーを重合して得られる本発明のポリマーを溶解させるように溶媒が選択される。

【0065】
具体的に例示すると、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒;エチレグリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;テトラメチル尿素やジメチルイミダゾリジノン等の尿素系溶媒;イミダゾリウム塩や第四級アンモニウム塩等のイオン液体が挙げられ、単独又は2種以上で使用できる。

【0066】
これらの溶媒の重合時の使用量は、(3)のヨウ素化剤を溶解させればよく、特に限定されない。好ましくは、質量基準で、30%~80%である。30%より少ないと固形分が高すぎて高粘度になってしまう場合があるし、80%より多いと、モノマー濃度が低すぎて重合率が上がらない場合がある。より好ましくは、40%~70%である。

【0067】
本発明のポリマーの製造方法は、基本的には、ラジカルが発生するラジカル重合開始剤を使用しないで済むことに大きな特徴がある。従来、不飽和結合を有するモノマーを重合する場合は、アゾ系や過酸化物系、さらにはチオールなどのラジカルを生成する化合物を使用して重合を行っていた。しかし、本発明で利用する重合手法では、このようなラジカル重合開始剤を使用せずとも、上記した(1)~(3)の材料を混合して、熱にて容易に重合が進む。場合によっては、ラジカル重合開始剤を併用しても、本発明の重合方法によるポリマーが得られると予想されるが、その場合は、ラジカル重合開始剤からの重合も始まる場合があるので、所望する複雑な構造のポリマーを安定して得る目的からは好ましくない。本発明の製造方法では、アゾ系ラジカル重合開始剤、過酸化物系ラジカル重合開始剤及び光重合ラジカル重合開始剤などのラジカル重合開始剤を使用せず重合することが好ましい。

【0068】
[重合工程]
以上が本発明のポリマーの製造方法に必要な材料であって、本発明では、上記した(1)~(3)の材料を混合して、加温(加熱)することで、(2)の有機化合物の有する「式1又は2の基」から(1)のモノマーの重合が進行し、重合を繰り返すことで、2種以上の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしているポリマーを得ることができる。その重合条件としては特に限定はなく、従来公知の方法がとられる。好ましい具体的な条件を列記すると、窒素やアルゴン雰囲気にしたり、バブリングしたりする方が、酸素の影響がなく、よく重合が進行する。また、温度としては、室温以上であればよく、例えば、40℃以上であればよいが、室温程度であると重合時間が多大にかかるので、好ましくは60℃以上、さらには70℃以上で重合させることが、実用の製造の製造時間に適している。また、撹拌速度は特に重合に影響はなく、また、遮光が必ずしも必要ではない。重合率も任意であり、完全にモノマーが消費されていなくてもよい。

【0069】
本発明のポリマーの製造方法は、1種目のポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得る第1段目の工程と、第1段目の工程で得られたポリマーを、(2)の有機化合物として利用して2種目の(1)のモノマーの重合を開始させる第2段目の工程の、少なくとも2回の重合工程を有することを特徴としている。本発明の製造方法では、その際に、第1段目の工程で得られたポリマーを、そのまま、次の第2の工程で用いる(2)の有機化合物として使用してもよいし、貧溶剤に添加して析出させて、精製したポリマー成分を使用してもよい。すなわち、各重合工程後に得られるポリマーの使用形態、使用方法、後処理等は任意であり、従来公知の方法が、それぞれの用途によって使用される。下記に述べるように、特に、後処理で、得られたポリマーの精製を行うか否かで、最終的に得られる2種以上の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしているポリマーの構造が異なるものになるので、この点を考慮することが好ましい。

【0070】
本発明者らの検討によれば、第2段目の工程で、精製しないポリマーを(2)の有機化合物として使用した場合には、第1段目の重合で得た(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖の末端から、さらに第2段目で使用する2種目のモノマーによる重合も開始する。その結果、この第2段目の工程で得られるポリマー鎖は、少なくとも、第1段目の工程で形成された1種目のポリマー鎖(A鎖とする)と、第2段目の工程で形成された2種目のポリマー鎖(B鎖とする)と、さらに、1種目のポリマー鎖であるA鎖の末端から2種目のモノマーの重合が開始することで得られたA-Bブロックコポリマー鎖を有するものとなる。これに対し、第2段目で、精製したポリマーを(2)の有機化合物として使用して重合を開始させた場合は、第2段目の工程で得られる(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖は、ブロックコポリマー鎖になることはなく、2種目のモノマーで構成されたポリマー鎖になる。したがって、第3段目の工程で、第2段目の工程で得たポリマーを精製せずに(2)の有機化合物として使用した場合は、A-B-Cブロックコポリマー鎖や、A-B-Aブロックコポリマー鎖がグラフトしたポリマーが得られる。

【0071】
[複数種類の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖の導入方法]
本発明の製造方法は、2種以上の(メタ)アクリル酸系(コ)ポリマー鎖がグラフトしている(コ)ポリマー、すなわち、(メタ)アクリル酸系ポリマーを、(2)の有機化合物に複数種導入したポリマーを製造することを目的としている。この複数種のポリマー鎖を導入する具体的な方法について、以下に説明する。まず、第1段目の工程で、(2)の有機化合物1分子に存在する重合開始基n個(nは2以上の整数)に対し、(3)のヨウ素イオン含有化合物を適宜な量で使用して、重合開始基のn1個(n1はn未満の整数)分を反応させ、n1個分がモノマーの重合開始基として機能するようにして、ここから(1)のモノマーの重合を行って、1種目の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得る。これをポリマーAと呼ぶ。ついで、第2段目の工程で、得られたポリマーA中の残余の重合開始基n-n1個に対し、(3)のヨウ素イオン含有化合物を適宜な量で使用して、n2個(n2は、さらに重合開始基を余らせたい場合はn-n1個未満、重合開始基を余らせない場合はn-n1)分を反応させて、n2個分がモノマーの重合開始基として機能するようにして、ここから(1)のモノマーの重合を行って、2種目の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしたポリマーを得る。これをポリマーBと呼ぶ。さらに、得られたポリマーBに残った重合開始基がある場合は、上記した第2段目の工程で行ったのと同様の操作を繰り返すことで、全体として複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖がグラフトしているポリマーを得ることができる。

【0072】
より具体的に説明すると、(2)の有機化合物の1分子中に、重合開始基がn個(nは2以上の整数)を有するとする。本発明で利用する重合手法では、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を使用して、重合開始基の臭素や塩素をヨウ素に置換して、そのヨウ素から重合が進行しているものと考えられるので、上記のn個分の重合開始基の塩素又は臭素のうち、全部ではなく、一部をヨウ素に置き換えて、塩素や臭素が置換した重合開始基を余らせて、ヨウ素に置換した基だけからモノマーの重合を開始させて、ポリマーをグラフト導入する。塩素や臭素が置換したままの残った重合開始基については、また、(3)のヨウ素イオンを有する化合物を使用して、その一部から重合を開始させて、また重合開始基を余らせて、次の重合に使用するという操作を行うように構成する。

【0073】
上記において、(2)に該当する有機化合物その重合開始基n個のうち、n1個の塩素又は臭素を置換したい場合は、そのn1個と当モル以下になる(3)のヨウ素イオン含有化合物を配合して使用することが普通であり、好ましい。しかし、(3)のヨウ素イオン含有化合物を当モル以上加えても、例えば、温度、溶媒の溶解度、溶媒に極性や誘電率に基づくイオン解離の影響などで、その塩素又は臭素とヨウ化物イオンの反応がすべて進行しない場合があり、その場合は、反応を、NMR測定やイオンクロマトグラフなどでヨウ素イオン量を追跡して、置換した官能基を定量することで、所望する部分的に開始する重合を行うことができる。従って、このヨウ素イオンを有する化合物の重合開始基に対するモル数は限定されない。好ましくは、前記したように、(2)に該当する有機化合物にn個の重合開始基があった場合、そのn個未満のモル当量の(3)のヨウ素イオン含有化合物を使用する。

【0074】
以上のことから、塩素又は臭素が結合した重合開始基の一部をヨウ素置換して重合を開始してポリマーを得て、この塩素又は臭素の結合した重合開始基を余らせた重合開始基を有するポリマーを順次使用する本発明の製造方法を実施することで、最初の重合工程でグラフトした(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖、2回目の重合工程でグラフトした(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖、残余の塩素又は臭素の結合した重合開始基を有するポリマーとなり、この重合工程を残余の重合開始基がなくなるまで繰り返すことで、複数種の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖が結合したポリマーとなる。この最終のポリマー鎖を導入する際は、好ましくは、重合開始基を余らせないように、最終回の重合工程で、(2)に該当する有機化合物として使用する残余の重合開始基の個数とモル当量以上の、例えば、大過剰のヨウ素イオンが結合した化合物を添加してもよい。大過剰にすることによって、塩素又は臭素が全部ヨウ素置換して、残余の重合開始基は全て重合に寄与することになる。

【0075】
本発明では、第1段目の重合工程で得たポリマーを、そのポリマーの貧溶剤等に析出させて精製して第1回目のポリマーを得、ついで、このポリマーを使用して、第2段目の重合工程で2種目のポリマー鎖を導入し、これを精製して第2回目のポリマーを得てという風に、精製を繰り返して次のモノマーを重合させるという方法で、2種以上のポリマー鎖がグラフトしている本発明のポリマーを製造する。本発明では、第1回目の重合でポリマーを得た後、精製操作をせずに、前記したようなヨウ素イオンを有する化合物と、モノマーを添加して重合することで、第2回目のポリマーを重合し、さらに、この操作を1ポットで繰り返して本発明のポリマーとしてもよい。この場合は、先に述べたように、その重合の末端にヨウ素が、可能性としては塩素や臭素の場合があるかもしれないが、置換していた場合は、その部分から再度重合が進行するので、ブロックコポリマーとして導入することができる。この1ポットの場合は、先のモノマーがほとんど重合して消費されてから、モノマーやヨウ素化剤を添加してもよいし、まだ重合の途中でモノマーやヨウ素化剤を添加して重合してもよい。特に前記した後者の1ポットの場合は、析出等の後処理をしないので、末端が生きている可能性が高く、従って、ブロックコポリマーとして導入されやすいと考えられる。そのブロックコポリマーも、トリブロック、テトラブロックという構造をとることができ、様々な(メタ)アクリル酸系ポリマーが結合したポリマーとすることができる。

【0076】
本発明で目的とする、最終的に得られるポリマーに導入される2種以上の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖の数は、特に限定されず、前記したような方法で繰り返し重合操作を行うことで、多くの種類の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖を導入できる。しかし、工業的、生産性、産業的に現実味のある導入数としては、その工程の回数等から、10種以下、より好ましくは、5種以下である。特に好ましくは、この工程において、1種目の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖を導入した後、ついで2種目のモノマーを添加するという2回の重合操作によって得られるポリマーである。その中でもより好ましいのは、前記した1回目の重合で得たポリマーを精製するという工程のない、1ポットで行う、少なくとも2種類のポリマー鎖がグラフトしているポリマーが、現実的、生産性、コストパフォーマンス的に好適と考えられる。

【0077】
この第1段目の工程と、ついで行う第2段目の工程の、2回の重合を行う方法では、少なくとも2種類のポリマー鎖がグラフトしているポリマーを得ることができる。具体的には、最初の重合で1種類の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖が重合したポリマーを得、ついで、その反応系中にヨウ素イオンを有する化合物とモノマーを添加して重合すると、1ポットで行っているので、末端が生きている場合は、その第1段階で生成したポリマーの末端から次のモノマーが重合してポリマー化し、ブロックコポリマーとすることができる。便宜上、最初のポリマーをAポリマー、ついで次のモノマーが重合して得られるポリマーをBポリマーとすると、前記したブロックコポリマーはA-Bブロックコポリマーとなる。ついで、残余の重合開始基から重合が開始するとBポリマーがグラフトする。従って、A-Bブロックコポリマー、Bのポリマーの少なくとも2種類がグラフトしたポリマーとなる。しかし、場合によっては、末端がハロゲンでない場合があり、その場合は、重合は進行しないので、Aのポリマーが重合しただけとなり、場合によっては、2回のヨウ素化剤、モノマーの使用にも関わらず、3種類の組成の(メタ)アクリル酸系ポリマーが結合したポリマーとなる場合がある。

【0078】
[ポリマー]
本発明のポリマーの製造方法では、以上のような条件の下、先に述べたそれぞれの材料を用意して、上記で説明したような配合等の条件下で、重合開始基を余らせるように、混合及び加温して重合し、ついで、残余の重合開始基を利用して、その重合開始基から重合することで、次の種類のポリマー鎖が導入され、これを繰り返すことで、複数の(メタ)アクリル酸系ポリマー鎖が結合したポリマーを、簡便に作製することができる。

【0079】
具体的には、本発明の方法を利用することで、様々な性質の(メタ)アクリル酸系ポリマー(以下、単にポリマーと称す場合がある)鎖を導入して、様々な性質のポリマー(以下、グラフトコポリマーと称す)を得ることができる。例えば、軟硬質の性質が違う複数のポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;ガラス転移点(Tg)が室温以下、室温、室温以上などとTg種が違うポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;融点が違うポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;屈折率がそれぞれ違うポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;非反応性のポリマー鎖と反応性のポリマー鎖を有するグラフトコポリマー;水に溶解するポリマー鎖と水に不溶なポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;お互いに非相溶なポリマー鎖同士が導入されたグラフトコポリマー;ある物質には相溶するが、ある物質には相溶しない、相溶性が異なるポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;親水性、疎水性のポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;撥水性のポリマー鎖と親水性のポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;撥水性と撥油性のポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;吸水性のポリマー鎖と水に親和性のないポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;低収縮率と高収縮率などモノマーの嵩密度の違うポリマー鎖が導入されたグラフコポリマー;イオン性、ノニオン性などのポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;アニオン性、カチオン性のポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;それぞれの光の吸収波長が異なるポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;光で架橋するポリマー鎖を有するグラフトコポリマー;熱や光で分解、加水分解する、それぞれの分解速度が違う基を有するグラフトコポリマー;色素が結合しているポリマー鎖としていないポリマー鎖とを有するグラフトコポリマー;無機性の基が結合しているポリマー鎖としていないポリマー鎖とを有するグラフトコポリマー;ガス透過性度が違うポリマー鎖が導入されたグラフトコポリマー;熱導電性が異なるポリマー鎖が結合したグラフトコポリマーなど、これらに限定されず、それぞれの性質の組み合わせも可能である。

【0080】
さらに加えては、それぞれの導入されるポリマー鎖の官能基、種類、本数、比率、導入されるモノマー種数等を変えることで、または、導入されるポリマーが同じモノマー種でも分子量を変えることで、または、ポリマー鎖が導入される主のポリマーの種類、分子量などを変えることで、さらには、本発明の如くブロックコポリマーとすることで、本発明を使用すると様々なポリマーの性質を得ることが可能である。

【0081】
その得られるポリマーの使用は、従来公知の用途に使用でき、特に限定されない。例えば、インク、塗料、コーティング、プラスチック、インクジェットインク、カラーフィルター材料などの色材関係材料、エネルギー関係材料、機械部品関係材料、医療機器材料、薬剤関係など、様々な分野に適用でき、その活用が期待される。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、文中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【実施例】
【0083】
[合成例1:2種のポリマー鎖がグラフトした多分岐型ポリマーの合成-1]
撹拌機、還流コンデンサー、温度計及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、溶媒として、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(以下、MDPAと略記)を150部、(2)の有機化合物として、重合開始基を4個有するペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチレート)を2.74部、(1)のモノマーとして、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記)を50.0部、(3)の化合物として、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(以下、TBAIと略記)を3.04部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてトリエチルアミン(以下、TEAと略記)0.37部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は98.5%であった。
【実施例】
【0084】
得られたポリマーについて、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)溶媒の示差屈折計によるGPC装置にて重合物の分子量を測定した結果、ポリスチレン換算の分子量として、数平均分子量(以下、Mnと略記)は12500、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量、以下、PDIと略記)は1.46であった。以下、断りがないかぎり、分子量は、このTHF溶媒による示差屈折計のGPC装置によるポリスチレン換算の分子量値である。また、測定波長254nmの紫外線検出器(以下、UV検出器と略記)を有するGPC測定の結果、微小なピークしか観察されなかった。本ポリマーは、その波長での吸収が弱いためと考えられる。以下、GPCのUV検出器での測定は測定波長254nmで行った。
【実施例】
【0085】
得られた上記ポリマーを1Lのメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、1種目のモノマーのMMAからなる多分岐型ポリマーで、上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有するものになる。これをPBR-1と称す。
【実施例】
【0086】
ついで、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを200部、(2)の有機化合物に該当するPBR-1を50部、(1)のモノマーとして、2種目のモノマーのメタクリル酸ベンジル(以下、BzMAと略記)を50.0部、(3)の化合物として、TBAIを3.04部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.37部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は96.2%、Mnは26400、PDIは1.52であった。また、UV検出器の分子量値は、25700、PDIは1.56であった。先に確認したPBR-1では、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、2種目のモノマー(BzMA)の重合が、PBR-1に残っていた重合開始基から開始されて、モノマー2種からなる多分岐型ポリマー(本例では4分岐)が得られたと考えられる。
【実施例】
【0087】
[合成例2:2種のポリマー鎖がグラフトした多分岐ポリマーの合成-2]
合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを150部、(2)の有機化合物として、重合開始基を6個有するジペンタエリスリトールヘキサキス(2-ブロモイソブチレート)を2.87部、(1)のモノマーとして、MMAを50部、(3)の化合物として、TBAIを3.04部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.37部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は95.8%、Mnは21400、PDIは1.47であった。
【実施例】
【0088】
得られた上記ポリマーをメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、1種目のモノマーのMMAからなる多分岐型ポリマーで、上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有するものになる。これをPBR-2と称す。
【実施例】
【0089】
ついで、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを200部、(2)の有機化合物に該当するPBR-2を50部、(1)のモノマーとして、BzMAを50.0部、(3)の化合物として、TBAIを3.04部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.37部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は95.8%、Mnは46700、PDIは1.59であった。また、UV検出器の分子量値は、46100、PDIは1.61であった。PBR-2は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られたことから、2種目のモノマー(BzMA)の重合が、PBR-1に残っていた重合開始基から開始されて、モノマー2種からなる多分岐型ポリマー(本例では6分岐)が得られたと考えられる。
【実施例】
【0090】
[合成例3-重合開始基を複数個もつポリマーを使用したグラフトコポリマーの合成-1]
(a1)重合開始基含有ポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用し、溶媒としてMDPAを561.0部、ヨウ素を1.0部、ラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)〔商品名:V-70、和光純薬社製〕を3.7部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルを208.0部、N-アイオドスクシンイミドを0.113部添加し、窒素をバブリングしながら、65℃で7時間重合した。その結果、重合率はほぼ100%であり、N,N-ジメチルホルムアミド溶媒のGPC装置にて分子量を測定した結果、Mnが18500、PDIが1.35であった。
【実施例】
【0091】
ついで、ピリジンを189.5部添加し、氷浴で5℃に冷却した。滴下ロートに2-ブロモイソ酪酸ブロマイド459.8部を仕込んで装置に装着し、10℃を超えないように3時間で滴下した後、その温度で2時間放置した。その後、45℃に加温して1時間反応させた。そして室温まで冷却した後、メタノールを561部添加して撹拌した。ついで、別容器に5000gのメタノールを用意し、ディスパーで撹拌しながら、上記溶液を徐々に添加した。ポリマーが析出し、軟質のポリマーを得た。ポリマーを分取し、大量の水中にディスパーで撹拌しながら添加して洗浄し、濾過して、水洗し、50℃の送風乾燥機にて揮発分がなくなるまで乾燥した。その結果、白色の粉末状の固体が得られた。
【実施例】
【0092】
上記で得た白色の粉末状固体は、下記スキームIに示すように、本発明で規定する一般式2の構造の基が側鎖に結合したポリマーとなる。粉末状固体が、その側鎖に「式2の基」が複数個導入されたポリマーであることは、赤外分光光度計(IR)、核磁気共鳴装置(NMR)にて同定することで確認できた。これを開始基ポリマー-1と称する。また、開始基ポリマー-1の分子量をTHF溶媒GPCにて測定したところ、Mnが26000、PDIが1.41であった。
【実施例】
【0093】
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【実施例】
【0094】
(b1)2種のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用して、MDPAを200部、(1)のモノマーとしてMMAを30部、(a1)で調製した、側鎖に「式2の基」が複数個導入された開始基ポリマー-1を5.5部、(3)の化合物としてTBAIを3.33部、有機アミンとしてTEAを0.5部添加し、75℃で8時間重合した。重合が進行し、高粘度の液体となったのでサンプリングし、重合率を測定したところ82%であった。また、Mnが661000、PDIが1.43であった。
【実施例】
【0095】
得られた上記ポリマーをメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、1種目のモノマーのMMAからなるポリマー鎖がグラフトしたコポリマーで、その主鎖構造中に上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有する。これをPBR-3と称す。
【実施例】
【0096】
ついで、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを200部、(2)の有機化合物に該当するPBR-3を30部、(1)のモノマーとして、BzMAを30部、(3)の化合物として、TBAIを3.33部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.5部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は97.2%、Mnは1050400、PDIは1.82であった。また、UV検出器の分子量値は、1020300、PDIは1.88であった。PBR-3は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、2種目のモノマー(BzMA)の重合が、PBR-3に残っていた重合開始基から開始されて、モノマー2種からなるポリマー鎖がそれぞれグラフトした構造のグラフトコポリマーが得られたと考えられる。
【実施例】
【0097】
[合成例4-重合開始基を複数個もつポリマーを使用したグラフトコポリマーの合成-2]
(a2)重合開始基含有ポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用して、MDPAを281.6部、ポバール105(クラレ社製、けん化度98mol%)を70.4部、添加し溶解させた。ついで、ピリジンを189.5部添加し、氷浴で5℃に冷却した。滴下ロートに2-ブロモイソ酪酸ブロマイド459.8部を仕込んで装置に装着し、10℃を超えないように3時間で滴下した後、その温度で2時間放置した。その後、45℃に加温して1時間反応させた。そして室温まで冷却した後、メタノールを561部添加して撹拌した。ついで、別容器に5000gのメタノールを用意し、ディスパーで撹拌しながら、上記溶液を徐々に添加した。ポリマーが析出し、軟質のポリマーを得た。ポリマーを分取し、大量の水中にディスパーで撹拌しながら添加して洗浄し、濾過して、水洗し、50℃の送風乾燥機にて揮発分がなくなるまで乾燥した。その結果、白色の粉末状の固体が得られた。
【実施例】
【0098】
上記で得た白色の粉末状固体は、下記スキームIIに示すように、本発明で規定する一般式2の構造の基が側鎖に結合したポリマーとなる。粉末状固体が、その側鎖に「式2の基」が複数導入されたポリマーであることは、赤外分光光度計(IR)、核磁気共鳴装置(NMR)にて同定することで確認できた。これを開始基ポリマー-2と称する。また、開始基ポリマー-2の分子量をTHF溶媒GPCにて測定したところ、Mnが98600、PDIが1.46であった。
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【実施例】
【0099】
(b2)2種のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用して、MDPAを280部、(1)のモノマーとしてMMAを20部、(a2)で調製した側鎖に「式2の基」が複数個導入された開始基ポリマー-2を27.5部、(3)の化合物としてTBAIを6.66部、有機アミンとしてTEAを1.0部添加し、75℃で8時間重合した。重合が進行し、高粘度の液体となったのでサンプリングし、重合率を測定したところ79%であった。また、Mnが521000、PDIが1.96であった。
【実施例】
【0100】
得られた上記ポリマーをメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、1種目のモノマーのMMAからなるポリマー鎖がグラフトしたコポリマーで、その主鎖構造中に上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有する。これをPBR-4と称す。
【実施例】
【0101】
ついで、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを360部、(2)の有機化合物に該当するPBR-4を20部、(1)のモノマーとして、BzMAを20部、(3)の化合物として、TBAIを3.33部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.5部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は96.2%、Mnは1034500、PDIは2.16であった。また、UV検出器の分子量値は、1020300、PDIは2.18であった。PBR-4は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、2種目のモノマー(BzMA)の重合が、PBR-4に残っていた重合開始基から開始されて、モノマー2種からなるポリマー鎖がそれぞれグラフトした構造のグラフトコポリマーが得られたと考えられる。
【実施例】
【0102】
(b3)3種のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用して、MDPAを200部、MMAを30部、(a1)で調製した側鎖に「式2の基」が複数個導入された開始基ポリマー-1を5.5部、(3)の化合物としてTBAIを2.22部、有機アミンとしてTEA0.33部添加し、75℃で8時間重合した。重合が進行し、高粘度の液体となったのでサンプリングし、重合率を測定したところ89%であった。また、Mnが435000、PDIが1.41であった。
【実施例】
【0103】
得られた上記ポリマーをメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、1種目のモノマーのMMAからなるポリマー鎖がグラフトしたコポリマーで、その主鎖構造中に上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有する。これをPBR-5と称す。
【実施例】
【0104】
ついで、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを340部、(2)の有機化合物に該当するPBR-5を30部、(1)のモノマーとして、BzMAを30部、(3)の化合物として、TBAIを2.22部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.33部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は98.2%、Mnは880400、PDIは1.67であった。また、UV検出器の分子量値は、871300、PDIは1.71であった。PBR-5は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、2種目のモノマー(BzMA)の重合が、PBR-5に残っていた重合開始基から開始されて、モノマー2種からなるポリマー鎖がそれぞれグラフトした構造のグラフトコポリマーが得られたと考えられる。このコポリマーは、その主鎖構造中に上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有する。これをPBR-6と称す。
【実施例】
【0105】
さらに、合成例1の反応装置を使用し、溶媒としてMDPAを340部、(2)の有機化合物に該当するPBR-6を60部、(1)のモノマーとして、メタクリル酸ラウリルを30部、(3)の化合物として、TBAIを2.22部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.33部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は91.5%、Mnは1253400、PDIは1.95であった。また、UVの分子量値は、1196300、PDIは1.99であった。上記のことから、モノマー3種からなるポリマー鎖がそれぞれグラフトした構造のグラフトコポリマーが得られたと考えられる。
【実施例】
【0106】
(b4)2種のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマーの調製
合成例1と同様の装置を使用して、MDPAを300部、(1)のモノマーとしてMMAを30部、(a1)で調製した側鎖に「式2の基」が複数個導入された開始基ポリマー-1を5.5部、(3)の化合物としてTBAIを3.33部、有機アミンとしてTEAを0.5部添加し、75℃で8時間重合した。重合が進行し、高粘度の液体となったのでサンプリングし、重合率を測定したところ81%であった。また、Mnが658000、PDIが1.42であった。得られたポリマー溶液は、メタノールに析出せずに(精製操作をせずに)そのまま次の重合に用いた。1種目のモノマーのMMAからなるポリマー鎖がグラフトしたコポリマーで、その主鎖構造中に上記重合工程で使用されない残余の重合開始基を有するが、精製を操作しなかったため、それ以外に、側鎖の末端にも重合開始基が残ると考えられる。このポリマー溶液をPBR-7と称す。
【実施例】
【0107】
ついで、(1)のモノマーとして、BzMA10部と、メタクリル酸2-ジメチルアミノエチル20部(以下、DMAEMAと略記)とからなる混合モノマー、(3)の化合物として、TBAIを3.33部仕込んだ。そして、窒素をバブリングしながら75℃に加温し、ついで、有機塩基としてTEA0.5部を加え、7時間重合した。得られたポリマーの重合率は98.6%、Mnは973100、PDIは1.89であった。また、UV検出器の分子量値は、967500、PDIは1.92であった。PBR-7は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、追加した混合モノマー(BzMA/DMAEMA)の重合が、PBR-7に残っていた重合開始基から開始されて、グラフト鎖が、MMAとBzMA/DMAEMAから成るA-Bブロックコポリマー鎖と、BzMA/DMAEMAのランダムコポリマー鎖から構成される、これらのポリマー鎖がグラフトしたコポリマーが得られたと考えられる。図1に、この反応のイメージ図を示した。図2に、第1段目の工程の終了時に精製操作を行った場合の反応のイメージ図を示した。
【実施例】
【0108】
[合成例5:第1段目の工程で、重合開始基モノマーを使用して複数個の重合開始基をもつコアポリマーを得、最終的に2種のポリマー鎖がグラフトしたグラフトコポリマー(複数種星型ポリマー)の合成]
まず、合成例1と同様の反応装置に以下のものを仕込み、下記のようにしてコアとなるポリマーを合成した。有機溶剤としてMDPAを200部、「式2の基」の重合開始基を1個有するラジカル重合性モノマーとして、2-(2-ブロモイソブチリロキシ)エチルメタクリレート(BEMAと略記)を10部、(1)のモノマーとしてMMAを90部、(3)の化合物として、TBAIを7.28部仕込んで撹拌し、75℃に加温した。TBAIが溶解し、全体が均一になった後、有機塩基としてTEAを0.36部添加し、上記の温度を維持して7時間重合した。サンプリングし、重合率を測定したところ、ほぼ100%であった。GPCにて分子量を測定したところ、Mnが4700、PDIが1.52であった。また、GPCのUV検出器(吸収波長254nm)ではピークは観測されなかった。以上のようにしてコアポリマー溶液を得た。
【実施例】
【0109】
上記で得られたポリマーをメタノール中に投入しポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、水洗した後、70℃の乾燥機中で十分に乾燥させて、精製した。得られた乾燥状態のポリマーは、内部に「式2の基」(ブロモ開始基)が複数個残った状態のコアとなる分岐したポリマーであり、これをC-1と称す。すなわち、コアとなるポリマーC-1は、材料に使用したBEMAが、ラジカル重合する基と、本発明で規定する重合開始基の、2つの重合性基を有する二官能性のモノマーであることから、C-1の調製の際に、このBEMAを、モノマーのMMAとヨウ素化剤とを使用して重合することで、ラジカル重合と重合開始基からの重合という2つの重合をすることから、BEMAとMMAからなる幾重にも分岐した構造のポリマーとなり、ポリマー内部に複数個の残余の「式2の基」を有するものになると考えられる。また、得られたポリマーC-1をNMRにて測定したところ、MMAのメチル基(3.6ppm付近)のプロトン数、BEMAのエチレン基(4.2、4.4ppm付近)のプロトン数より換算すると、含有重合開始基は、BEMAモノマーとして、ポリマー100g中、0.0174molと算出された。
【実施例】
【0110】
上記と同様の反応装置に、MDPAを500部、(2)の有機化合物に該当するC-1を50部仕込み、80℃に加温し、C-1を全て溶解させた。ついで、(3)の化合物として、TBAIを1.60部添加し、溶解させた後、(1)のモノマーとしてBzMAを176部、ついで、TEAを0.18部添加し、上記の温度を維持して6時間重合した。サンプリングし、重合率を測定したところ、80.6%であった。また、GPCにて分子量を測定したところ、Mnが21000、PDIが1.98であった。また、UV検出器の分子量値は、21400、PDIは2.011であった。C-1は、UV検出器ではほとんどピークが得られなかったのに対し、このポリマーは、UV吸収が大きく見られることから、1種目のモノマー(BzMA)の重合が、コアとなるポリマーのC-1に残っていた重合開始基から開始されていると考えられる。
【実施例】
【0111】
また、分子量が大きくなっていて、且つ、コアとなるポリマーのピークが消失していたことから、コアとなるポリマー内部のブロモ基がアイオド基に変換され、生成した重合開始基、及び、表面のアイオド基から、さらにポリマー鎖が伸びていることが分かった。
【実施例】
【0112】
ついで、(3)の化合物としてTBAIを1.60部添加し、さらに、MMAを100部添加して、上記の温度を維持して、6時間重合した。一部をサンプリングし、重合率を測定したところ、87.2%であった。また、GPC測定したところ、Mnが31500、PDIが2.39であった。また、サンプリング物を前記と同様にして精製し、NMRを測定したところ、BEMAの開始基のピークが検出されなかった。分子量が増大されたことと、重合開始基の喪失から、すなわち、このポリマーは、開始基を有する分岐のコアポリマーであるC-1から、BzMAをグラフトさせて1種類目を導入し、ついで精製せずに、MMAを重合することによって、2種類目のポリマーを導入して得られる、多種類のポリマー鎖がグラフトした星型ポリマーとなっていると推測される。
【実施例】
【0113】
[合成例6:重合開始基を複数個もつポリマー微粒子を使用しての複数種架橋アクリル微粒子の合成]
温度計を取り付けた2リッターの3口丸型フラスコ反応装置に、酢酸エチル670部、ジエチレングリコールジメタクリレート(以下、DEGDMAと略記)65部、「式2の基」の重合開始基(ブロモ基)を1個有するラジカル重合性モノマーであるBEMAを5.7部添加し、緩く栓をして、70℃の湯浴に浸漬させた。別容器に酢酸エチル20部、ラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを2.2部溶解させ、(2)に該当する有機化合物のポリマー微粒子を作製するための開始剤溶液を調製した。ついで、ガラス瓶(丸型フラスコ)の系全体が65℃に達したところで、別容器から開始剤溶液を添加して、その温度で10時間反応させた。その結果、系が白濁し、粒子が凝集して析出した。重合終了後、冷却した。溶液を濾過し、よく酢酸エチルで洗浄し、70℃の送風乾燥機にて乾燥し、白色粉末を69.7部得た。
【実施例】
【0114】
得られた白色粉末は、微粒子状であった。また、収率より、ほぼすべてのモノマーが反応したと考えられることから、得られた白色粉末の重量中における、BEMAの含有量は8.1%、DEGDMAが91.9%の構成となる。また、得られた微粒子をコールターカウンター(ベックマン・コールター社製)で測定したところ、重量平均粒子径は1.84μmであった。以下、断りがない限り、この方法で平均粒子径を測定した。上記で得られた白色粉末は、粉砕機にて粉砕して、100メッシュパスさせた。この、「式2の基」の重合開始基を1個有するラジカル重合性モノマーを重合して得られたポリマーからなる白色粉末を、微粒子B-1と称す。
【実施例】
【0115】
窒素導入装置、冷却管が装着された500mlのセパラブルフラスコに、有機溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略記)を200部、(2)に該当する微粒子B-1を20部、ついで、(3)の化合物としてTBAIを1.18部添加し、75℃に30分で加温した。ついで、75℃に達した時に、(1)のモノマーとしてMMAを40部、有機塩基としてTEAを0.1部添加して、75℃で8時間重合し、冷却した。
【実施例】
【0116】
上記で得られた重合溶液をメチルエチルケトン(以下、MEKと略記)で希釈して、10μmの加圧濾過器でろ過して、固形物を取り出した。また、3000mlのフラスコにメタノール1500g仕込んで、撹拌装置に取り付け、撹拌した。このメタノールに撹拌しながら上記濾過物を添加して撹拌し、これをろ過、メタノールでよく洗浄して、25℃(室温)で12時間、80℃で24時間乾燥させて、精製して白色の塊状物を得た。得られた白色の塊状物(微粒子)の重量平均粒子径は、2.38μmであった。これは、その構造の内部にブロモ基が残った状態の架橋アクリル微粒子である。これを微粒子A-1と称する。
【実施例】
【0117】
ついで、窒素導入装置、冷却管が装着された500mlのセパラブルフラスコに、NMPを200部、(2)に該当する微粒子A-1を30部、ついで、(3)の化合物としてTBAIを0.59部添加し、75℃に30分で加温した。ついで、75℃に達した時に、(1)のモノマーとしてBzMAを30部、有機塩基としてTEAを0.1部添加して、75℃で8時間重合し、冷却した。
【実施例】
【0118】
上記で得られた重合溶液をMEKで希釈して、10μmの加圧濾過器でろ過して、固形物を取り出した。また、3000mlのフラスコにメタノール1500g仕込んで、撹拌装置に取り付け、撹拌した。このメタノールに撹拌しながら上記濾過物を添加して撹拌し、これをろ過、メタノールでよく洗浄して、25℃(室温)で12時間、80℃で24時間乾燥させて、精製して白色の塊状物を得た。得られた白色の塊状物(微粒子)の重量平均粒子径は、2.95μmであった。重合前の微粒子B-1よりも粒子径が大きくなっていることと、微粒子B-1内部に残ったブロモ基がアイオド基に変換され生成した重合開始基、及び、微粒子B-1表面のアイオド基から、さらにポリマーが伸びていることが分かった。以上のことから、複数種架橋アクリル微粒子が得られたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の活用例としては、様々な構造のポリマーを工業的に簡便に製造することができる従来にない新規な方法が提供されることから、今までに使用することができなかった分野への材料としての提供による革新的な技術発展が期待できる。具体的には、接着性、摩擦特性、耐摩耗性、ぬれ性、バリヤー性、特定物質の吸着・分離・輸送特性などの特異性質を有するポリマー材料や、このような特異性質のポリマーで基材表面が処理された各種材料の提供がなされ、その利用が期待される。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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