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明細書 :プロトン伝導体および燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6726633号 (P6726633)
公開番号 特開2018-147628 (P2018-147628A)
登録日 令和2年7月1日(2020.7.1)
発行日 令和2年7月22日(2020.7.22)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 プロトン伝導体および燃料電池
国際特許分類 H01B   1/08        (2006.01)
H01M   8/1016      (2016.01)
H01M   8/10        (2016.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI H01B 1/08
H01M 8/1016
H01M 8/10 101
H01B 1/06 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2017-039623 (P2017-039623)
出願日 平成29年3月2日(2017.3.2)
審査請求日 令和元年6月11日(2019.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】板倉 智也
【氏名】平松 秀彦
【氏名】北川 進
【氏名】堀毛 悟史
個別代理人の代理人 【識別番号】110001472、【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
審査官 【審査官】太田 一平
参考文献・文献 特開2005-158646(JP,A)
特開2014-116276(JP,A)
特開2016-004621(JP,A)
特開2017-033704(JP,A)
調査した分野 H01M 8/00 - 8/0297
H01M 8/08 - 8/2495
H01B 1/00 - 1/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct


特許請求の範囲 【請求項1】
金属イオンと配位子が配位結合で連続的につながった配位高分子と、リン酸との複合体であり、
前記リン酸は、前記金属イオンと配位結合しているリン酸と、前記金属イオンと配位結合していないリン酸とを含んでおり、
前記金属イオンを構成する金属はCrであり、
前記配位高分子はCr-MIL-101であり、
前記複合体は、前記金属イオンに対して5等量のリン酸を含んでおり、
固形物であるプロトン伝導体。
【請求項2】
請求項1に記載のプロトン伝導体を電解質膜(130)として備える燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン伝導体およびこれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、固体高分子型燃料電池システムの低コスト化、システムの簡素化の観点で、100℃以上の作動温度でかつ無加湿という条件で作動する燃料電池が望まれている。無加湿で燃料電池を作動させるためには、プロトン伝導体が重要な役割を果たす。リン酸は有望なプロトンキャリアであることから、リン酸を含むリン酸含有構造体がプロトン伝導体として好適であると考えられる。
【0003】
リン酸含有構造体としては、リン酸と他の構成要素との化学結合で構造体を形成するもの(例えば、ホスホシリケートガラス、リン酸ガラス、金属リン酸塩)があるが、耐水性に課題があり、さらにイオン伝導性が低い。また、化学的に安定なマトリックス材にリン酸を導入することで、リン酸含有構造体を生成することが提案されている(例えば、非特許文献1、2)。このようなマトリックス材は、毛細管現象を利用できる細孔を有しており、プロトン伝導体の材料として有望である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2012,134(38),pp15640-15643
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,2014,136(18),pp6570-6573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マトリックス材にリン酸をドープして生成したリン酸含有構造体は、細孔とリン酸との相互作用が小さく、リン酸が溶出するという問題がある。また、有効なプロトン伝導パスが形成されておらず、プロトン伝導性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、リン酸を含む構造体からなるプロトン伝導体において、イオン伝導性を向上させ、さらに構造の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、金属イオンと配位子が配位結合で連続的につながった配位高分子と、リン酸との複合体からなるプロトン伝導体であり、リン酸は、金属イオンと配位結合しているリン酸と、金属イオンと配位結合していないリン酸とを含んでおり、金属イオンを構成する金属はCrであり、配位高分子はCr-MIL-101であり、複合体は、金属イオンに対して5等量のリン酸を含んでおり、固形物であることを特徴とする。

【0008】
本発明のプロトン伝導体によれば、部分的に金属イオンと配位結合している配位子を外して金属イオンに配位サイトを設け、部分的に金属イオンに配位したリン酸を導入している。これにより、金属イオンと配位結合しているリン酸と、金属イオンと配位結合していないリン酸との間の水素結合ネットワークが増大することから、プロトン伝導体のプロトン伝導率を向上させることができる。
【0009】
また、配位高分子に導入されたリン酸の間で水素結合の数が増えるので、リン酸間の相互作用を増大させることができる。この結果、配位高分子からリン酸が溶出することを抑制でき、プロトン伝導体の構造を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の概念図である。
【図2】プロトン伝導体の基本的構成を示す図である。
【図3】第1実施例のプロトン伝導体を赤外吸収分光法(IR)で分析した結果を示す図である。
【図4】第1実施例のプロトン伝導体をX線吸収微細構造解析(XAFS)で分析した結果を示す図である。
【図5】第1実施例のプロトン伝導体をX線散乱で分析した結果を示す図である。
【図6】第1実施例のプロトン伝導体をラマン分光法で分析した結果を示す図である。
【図7】各実施例および各比較例で生成したプロトン伝導体のイオン伝導率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。

【0012】
燃料電池セル100は、燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(空気中の酸素)との電気化学反応を利用して電気エネルギーを出力する。燃料電池セル100を基本単位とし、複数枚積層したスタック構造として使用することができる。

【0013】
図1に示すように、燃料電池セル100は、カソード極110、アノード極120、電解質膜130を備えている。なお、カソード極110は空気極ともいい、アノード極120は水素極ともいう。

【0014】
燃料電池セル100に水素および空気といった反応ガスが供給されると、以下に示すように、水素と酸素とが電気化学反応して、電気エネルギーを出力する。

【0015】
(アノード極側) H2→2H++2e-
(カソード極側) 2H++1/2O2+2e-→H2
この際、アノード極120では、水素が触媒反応によって、電子(e-)とプロトン(H+)に電離され、プロトン(H+)は電解質膜130を移動する。一方、カソード極110では、アノード極120側から移動してきたプロトン(H+)、外部から流通してきた電子、および空気中の酸素(O2)が反応して、水が生成される。

【0016】
カソード極110は、電解質膜130の空気極側の面に密着して配置されたカソード側触媒層111と、カソード側触媒層111の外側に配置されたカソード側拡散層112によって構成されている。

【0017】
アノード極120は、電解質膜130の水素極側の面に密着して配置されたアノード側触媒層121と、アノード側触媒層121の外側に配置されたアノード側拡散層122によって構成されている。

【0018】
各触媒層111、121は、カーボン担体に電気化学反応を促進する触媒(白金等)を担持させたカーボン担持白金触媒等で形成され、各拡散層112、122は、カーボンクロス等で形成されている。

【0019】
電解質膜130は、金属イオン、配位子及びリン酸を含んだプロトン伝導体で構成されている。プロトン伝導体は、金属イオンと配位子が配位結合で連続的につながった配位高分子とリン酸の複合体である。

【0020】
プロトン伝導体に含まれる金属イオンは特に限定されるものではないが、配位高分子にリン酸を導入した際の構造安定性の観点から、3価の遷移金属(例えばV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni)からなる金属イオンが好ましい。

【0021】
配位子は、金属イオンと配位結合する部分としてカルボシル基(-COOH)あるいはホスホン酸基(-PO(OH)2)を2以上有している有機化合物である。具体的には、配位子の基本骨格として、例えばシュウ酸、アセチレンジカルボン酸、フマル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、1,4-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレンを好適に用いることができる。また、配位子の基本骨格は、配位結合に関与しないアミノ基、カルボキシル基、ホスホン基、スルホン基などの官能基を有していてもよい。

【0022】
Crとテレフタル酸が配位結合した配位高分子としては、Cr-MIL-101(組成式:Cr3OF(H2O)2(C8443)やCr-MIL-53(組成式:Cr(OH)(C844))を例示することができる。また、Feとトリメシン酸が配位結合した配位高分子としては、Fe-MIL-100(組成式:Fe3O(OH)(H2O)2(C9362)を例示することができる。

【0023】
図2は、本実施形態のプロトン伝導体の基本的な構成を示している。本実施形態では、金属イオンと配位子が配位結合で連続的につながった配位高分子を生成し、この配位高分子にリン酸を導入することでプロトン伝導体を生成する。

【0024】
金属イオンと配位子が配位結合で連続的につながった配位高分子は、例えば水熱合成によって得ることができる。配位高分子は多孔体であり、内部に多数の細孔を有する金属有機複合体(MOF)として構成されている。この配位高分子にリン酸を導入することで本実施形態のプロトン伝導体を得ることができる。例えば大気圧中で配位高分子とリン酸を混合することで、配位高分子にリン酸を導入することができる。

【0025】
本実施形態では、配位高分子に導入するリン酸を高濃度かつ配位高分子に含まれる金属元素(例えば、CrやFe)に対して過剰にしている。例えば、濃度85%程度のリン酸を配位高分子に含まれる金属元素に対して4~5等量だけ配位高分子に導入することが望ましい。

【0026】
このように、配位高分子に対して高濃度かつ過剰にリン酸を導入することで、生成するプロトン伝導体は配位高分子を構成する配位子と金属イオンの配位結合が一部外れた状態となる。図2右側に示すプロトン伝導体では、破線部分が配位子と金属イオンとの配位結合が外れた部分を示している。

【0027】
配位子と金属イオンの配位結合が外れた部分では、リン酸の一部が金属イオンと配位結合している。つまり、プロトン伝導体を構成するリン酸には、金属イオンと配位結合しているリン酸と、金属イオンと配位結合していないリン酸が含まれることとなる。金属イオンと配位結合しているリン酸と、金属イオンと配位結合していないリン酸は、水素結合している。

【0028】
以上説明した本実施形態のプロトン伝導体によれば、部分的に金属イオンと配位結合している配位子を外して金属イオンに配位サイトを設け、部分的に金属イオンに配位したリン酸を導入している。これにより、金属イオンと配位結合しているリン酸と、金属イオンと配位結合していないリン酸との間の水素結合ネットワークが増大することから、プロトン伝導体のプロトン伝導率を向上させることができる。

【0029】
また、配位高分子に導入されたリン酸の間で水素結合の数が増えるので、リン酸間の相互作用を増大させることができる。この結果、配位高分子からリン酸が溶出することを抑制でき、プロトン伝導体の構造を安定化させることができる。
【実施例】
【0030】
(第1実施例)
次に、本発明の第1実施例について説明する。本第1実施例のイオン伝導体は、金属イオンとしてCrイオンを用い、配位子としてテレフタル酸を用いている。
【実施例】
【0031】
まず、オートクレーブに硝酸クロム九水和物、テレフタル酸、フッ酸を入れ、水を溶媒として用い、水熱合成を行った。水熱合成は、220℃で6時間行った。
【実施例】
【0032】
次に、水熱合成で得られた生成物を濾過して固形物を回収してエタノールで洗浄し、80℃で乾燥させた。これにより、粉末状態の配位高分子Cr-MIL-101を得ることができた。
【実施例】
【0033】
次に、乳鉢にCr-MIL-101と85%リン酸を加え、大気中で10分間混合した。リン酸の量は、Cr-MIL-101に含まれるCrに対して5等量とした。混合後、150℃で3時間真空乾燥を行った。これにより、プロトン伝導体の固形物を得ることができた。
【実施例】
【0034】
次に、第1実施例で生成したプロトン伝導体の分子構造を赤外吸収分光法(IR)によって分析した結果を図3を用いて説明する。図3では、第1実施例のプロトン伝導体、Cr-MIL-101、リン酸、テレフタル酸のスペクトルを示している。
【実施例】
【0035】
図3の実線の丸で囲んだ部分に示すように、第1実施例のプロトン伝導体のスペクトルは、テレフタル酸に含まれた配位結合していないカルボシル基を示すピークと近似したピークを有している。このため、第1実施例のプロトン伝導体は配位結合していないカルボキシル基を有している。また、図3の破線の丸で囲んだ部分に示すように、第1実施例のプロトン伝導体のIRスペクトルは、Cr-MIL-101に含まれた配位結合しているカルボシル基を示すピークと近似したピークを有している。このため、第1実施例のプロトン伝導体は配位結合しているカルボキシル基を有している。
【実施例】
【0036】
以上のことから、第1実施例のプロトン伝導体は、配位結合しているカルボシル基と配位結合していていないカルボシル基を有していることが確認できた。つまり、第1実施例のプロトン伝導体は、カルボシル基とCrの配位結合の一部が外れている。
【実施例】
【0037】
次に、第1実施例で生成したプロトン伝導体の分子構造をX線吸収微細構造解析(XAFS)によって分析した結果を図4を用いて説明する。図4では、第1実施例のプロトン伝導体、Cr-MIL-101、Cr(NO33・9H2Oのスペクトルを示している。図4に示すスペクトルは、Crと他の元素との配位結合を示している。
【実施例】
【0038】
図4の表におけるCN(1st)は、Crに配位しているO元素の数を示している。図4に示すように、Cr-MIL-101ではCrに配位しているO元素が5.59個であるのに対し、第1実施例のプロトン伝導体ではCrに配位しているO元素が5.81個である。
【実施例】
【0039】
上述したように、第1実施例のプロトン伝導体は、テレフタル酸のカルボキシル基とCrの配位結合が一部外れている。図4に示すように、第1実施例のプロトン伝導体は、テレフタル酸のO元素とCrの配位結合が外れていないCr-MIL-101と、Crに配位しているO元素の数が同程度となっている。
【実施例】
【0040】
このため、第1実施例のプロトン伝導体では、Crがテレフタル酸のO元素以外のO元素と配位結合していると考えられる。具体的には、第1実施例のプロトン伝導体では、テレフタル酸と配位結合が外れたCrがリン酸のO元素とも配位結合していると考えられる。
【実施例】
【0041】
次に、本第1実施例で生成したプロトン伝導体の分子構造をX線散乱によって分析した結果を図5を用いて説明する。図5では、第1実施例のプロトン伝導体と、Cr-MIL-101のスペクトルを示している。図5の縦軸はX線散乱をフーリエ変換して得られた還元二体分布関数であり、距離rの位置に原子が存在する確率を示している。
【実施例】
【0042】
Cr-MIL-101において、Crを中心とする構造単位CBU(Cluster Building Unit)の大きさは6~7Å程度である。第1実施例のプロトン伝導体は、Cr-MIL-101と比較してピークが小さくなっているものの、CBU内の相関が残っている。
【実施例】
【0043】
また、第1実施例のプロトン伝導体は、Cr-MIL-101と比較してピークが小さくなっているものの、配位子であるテレフタル酸の大きさに相当する周期的な相関も残っている。
【実施例】
【0044】
以上のことから、第1実施例のプロトン伝導体には、配位高分子(Cr-MIL-101)の骨格が部分的に残存していることが確認できた。
【実施例】
【0045】
次に、第1実施例で生成したプロトン伝導体の分子構造をラマン分光法によって分析した結果を図6を用いて説明する。図6では、第1実施例のプロトン伝導体、Cr-MIL-101、テレフタル酸、リン酸のスペクトルを示している。
【実施例】
【0046】
図6において実線の丸で示すように、第1実施例のプロトン伝導体には、配位結合していないリン酸を示すピークが現れている。また、図6において破線の丸で示すように、第1実施例のプロトン伝導体には、配位結合しているリン酸を示すピークが出現している。つまり、第1実施例のプロトン伝導体には、Crに配位結合していないリン酸と、Crに配位結合しているリン酸が含まれていることが確認できた。
【実施例】
【0047】
以上の図3~図6の分析結果により、第1実施例で生成したプロトン伝導体は、配位高分子の基本構造を有し、Crに配位結合したリン酸と、Crに配位結合していないリン酸が含まれていることが確認できた。
【実施例】
【0048】
(第2、第3実施例)
次に、本発明の第2、第3実施例について説明する。本第2、第3実施例のイオン伝導体は、金属イオンとしてCrイオンを用い、配位子としてテレフタル酸を用いている。
【実施例】
【0049】
まず、オートクレーブに硝酸クロム九水和物、テレフタル酸、フッ酸を入れ、水を溶媒として用い、水熱合成を行った。水熱合成は、220℃で3日間行った。
【実施例】
【0050】
次に、水熱合成で得られた生成物を濾過して固形物を回収し、固形物を溶媒としてのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、150℃で20時間熱処理を行った。
【実施例】
【0051】
次に、熱処理で得られた生成物から固形物を回収し、250℃で1時間乾燥させた。これにより、粉末状態の配位高分子Cr-MIL-53を得ることができた。
【実施例】
【0052】
次に、乳鉢にCr-MIL-53と85%リン酸を加え、大気中で10分間混合した。第2実施例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して4等量とし、第3実施例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して5等量とした。混合後、150℃で3時間真空乾燥を行った。これにより、プロトン伝導体の固形物を得ることができた。
【実施例】
【0053】
(第4実施例)
次に、本発明の第4実施例について説明する。本第4実施例のイオン伝導体は、金属イオンとしてFeイオンを用い、配位子としてトリメシン酸を用いている。
【実施例】
【0054】
まず、マイクロ波合成用耐圧ガラスチューブに塩化鉄(III)六水和物、トリメシン酸を入れ、水を溶媒として用い、マイクロ波合成を行った。マイクロ波合成は、130℃で5分30秒間行った。
【実施例】
【0055】
次に、マイクロ波合成で得られた生成物を遠心分離によって粉末を回収し、この粉末を水で洗浄し、80℃で加熱して乾燥処理を行った。これにより、粉末状態の配位高分子Fe-MIL-100を得ることができた。
【実施例】
【0056】
次に、乳鉢にFe-MIL-100と85%リン酸を加え、大気中で10分間混合した。リン酸の量をFe-MIL-100に含まれるFeに対して4等量とした。混合後、150℃で3時間真空乾燥を行った。これにより、プロトン伝導体の固形物を得ることができた。
【実施例】
【0057】
(第1~第4比較例)
次に、第1~4比較例について説明する。本第1~第4比較例のイオン伝導体は、金属イオンとしてCrイオンを用い、配位子としてテレフタル酸を用いている。本第1~第4比較例は、上記第2、第3実施例に対して、Cr-MIL-53に加えるリン酸の量が異なっている。
【実施例】
【0058】
第1比較例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して1等量とし、第2比較例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して2等量とし、第3比較例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して3等量とし、第4比較例ではリン酸の量をCr-MIL-53に含まれるCrに対して6等量とした。
【実施例】
【0059】
第1~第3比較例(1~3等量)では、固形物を得ることができた。これに対し、第4比較例(6等量)では、生成物はペースト状態であり、固形物を得ることができなかった。
【実施例】
【0060】
(第5比較例)
次に、第5比較例について説明する。本第5実施例のイオン伝導体は、金属イオンとしてCrイオンを用い、配位子としてテレフタル酸を用いている。本第5比較例は、配位高分子の形成とリン酸の導入を同時に行うように試みた例である。
【実施例】
【0061】
まず、乳鉢に、硝酸クロム九水和物、テレフタル酸、85%のリン酸を入れ、大気中で10分間混合した。リン酸の量を硝酸クロム九水和物に含まれるCrに対して5等量とした。混合後、150℃で3時間真空乾燥を行った。
【実施例】
【0062】
第5比較例では、生成物はペースト状態であり、固形物を得ることができなかった。
【実施例】
【0063】
(各実施例および各比較例のイオン伝導率)
次に、各実施例および各比較例で生成したプロトン伝導体のイオン伝導率を図7を用いて説明する。イオン伝導率の測定は、固形物が得られた第1~第4実施例、第1~第3比較例に対して行った。
【実施例】
【0064】
図7では、上記背景技術で非特許文献1として挙げた「J.Am.Chem.Soc.,2012,134(38),pp15640-15643」に記載されたプロトン伝導体のイオン伝導率(以下、従来技術のイオン伝導率という)を破線で示している。図7の横軸は、絶対温度の逆数となっている。
【実施例】
【0065】
図7に示すように、第1~第4実施例で生成した各プロトン伝導体は、イオン伝導率が従来技術のイオン伝導率を上回っている。温度変化に対するイオン伝導率の変動は各実施例で相違しており、第1実施例のプロトン伝導体が温度変化に対するイオン伝導率の変動が最も小さくなっている。
【実施例】
【0066】
また、第2比較例、第3比較例で生成したプロトン伝導体は、イオン伝導率が従来技術のイオン伝導率を下回った。なお、第1比較例で生成したプロトン伝導体のイオン伝導率は、10-8S/cm以下であり、図7には図示されていない。
【実施例】
【0067】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0068】
例えば、上記実施形態では、本発明のプロトン伝導体を燃料電池100の電解質膜130として適用した例について説明したが、これに限らず、本発明のプロトン伝導体を水蒸気電解や水素分離膜など燃料電池以外の用途に用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 燃料電池
130 電解質膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6