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明細書 :通信制御方法、通信システム及び事前学習補助装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6714279号 (P6714279)
公開番号 特開2018-148297 (P2018-148297A)
登録日 令和2年6月9日(2020.6.9)
発行日 令和2年6月24日(2020.6.24)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 通信制御方法、通信システム及び事前学習補助装置
国際特許分類 H04W  36/24        (2009.01)
FI H04W 36/24
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2017-039126 (P2017-039126)
出願日 平成29年3月2日(2017.3.2)
審査請求日 平成31年1月18日(2019.1.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】宮武 遼
【氏名】淺井 裕介
【氏名】中平 勝也
【氏名】守倉 正博
【氏名】西尾 理志
【氏名】岡本 浩尚
個別代理人の代理人 【識別番号】110003199、【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100151002、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 剛之
【識別番号】100201673、【弁理士】、【氏名又は名称】河田 良夫
審査官 【審査官】石原 由晴
参考文献・文献 岡本 浩尚, 外4名,深度画像を用いた機械学習によるRSSI推定手法の検討,2016年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1 B-5-113,2016年 9月,383頁
岡本 浩尚、外3名,ミリ波通信制御のためのオンライン機械学習を用いた深度画像からのスループット推定,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115 No.473 IEICE Technical Report,2016年 3月,第115巻,47-52頁
調査した分野 H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
特許請求の範囲 【請求項1】
端末と無線通信を行う複数の基地局と、前記端末と前記複数の基地局との通信環境を撮影する撮像装置と、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置と、前記基地局制御装置用の事前学習データを生成する事前学習補助装置とを有する通信システムにおける通信制御方法であって、
前記事前学習補助装置が、
前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する処理と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて、複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する処理と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて、前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力する処理とを実行し、
前記基地局制御装置が、
前記撮像装置により撮影した距離情報を含む撮影画像と、前記撮影画像に対応する通信環境において前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質とを取得する処理と
記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、前記事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定する処理と、
前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択する処理とを実行する
とを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御方法において、
前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記仮想画像の生成と当該仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定とを行い、生成された前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係を学習する
ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項3】
端末と無線通信を行う複数の基地局と、前記端末と前記複数の基地局との通信環境を撮影する撮像装置と、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置と、前記基地局制御装置用の事前学習データを生成する事前学習補助装置とを有する通信システムにおいて、
前記事前学習補助装置は、
前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する空間モデル生成部と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する画像生成部と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力するシミュレーション部とを備え
前記基地局制御装置は、
前記撮像装置により撮影した距離情報を含む撮影画像と、前記撮影画像に対応する通信環境において前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質を取得して、前記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、前記事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定する学習推定部と、
前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択する統合制御部とを備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の通信システムにおいて、
前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記空間モデル生成部による前記三次元空間モデルの構築と、前記画像生成部による前記仮想画像の生成と、前記シミュレーション部による前記仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定と、前記学習推定部による生成された前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係の学習と、を行う
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の通信システムにおいて、
前記空間モデル生成部は、前記複数の基地局が通信を開始する前に前記撮影画像を取得して、前記撮影画像に含まれる距離情報をベースに通信環境を解析し、解析した情報を元に複数の前記三次元空間モデルを構築する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
端末と無線通信を行う複数の基地局の通信環境を撮像装置により撮影した画像で距離情報を含む撮影画像と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質とを取得して、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置に対して、事前学習データを生成する事前学習補助装置において、
前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する空間モデル生成部と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する画像生成部と、
前記三次元空間モデルの各々に基づいて前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力するシミュレーション部とを備え
前記基地局制御装置は、
記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、当該事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定し、前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択す
とを特徴とする事前学習補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の事前学習補助装置において、
前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記空間モデル生成部による前記三次元空間モデルの構築と、前記画像生成部による前記仮想画像の生成と、前記シミュレーション部による前記仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定と、を行い、
前記基地局制御装置に、前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係学習させる
ことを特徴とする事前学習補助装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の事前学習補助装置において、
前記空間モデル生成部は、前記複数の基地局が通信を開始する前に前記撮影画像を取得して、前記撮影画像に含まれる距離情報をベースに通信環境を解析し、解析した情報を元に複数の前記三次元空間モデルを構築する
ことを特徴とする事前学習補助装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御方法、通信システム及び事前学習補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波通信は次世代無線通信における高速かつ大容量の通信を実現するための技術として期待されている(例えば、非特許文献3参照)。例えばミリ波を使用する無線通信規格のIEEE 802.11adでは1Gbit/s以上の超高速通信が可能である。しかし、ミリ波は水分や酸素による減衰が大きく直進性が高いため、見通し通信路が人体などの遮蔽物により遮蔽されると受信信号電力が大きく低下するという問題がある(例えば、非特許文献4参照)。
【0003】
このような見通し通信路の遮蔽問題の解決手法として、通信路の遮蔽発生時に端末の接続する基地局を通信品質の良い他の基地局に切り替えるハンドオーバ制御や、回折波や反射波などをより強く受信できる方向にアンテナの指向性を切り替える指向性制御などの技術が提案されている(例えば、非特許文献5参照)。しかし、通信中の基地局が通信路の遮蔽を検知後にハンドオーバを制御するシステムにおいて、素早く通信品質の良い基地局に切り替えるためには、事前に端末と全基地局間の通信品質の情報を取得する必要がある。例えば通信品質の情報を取得するために制御信号を用いる方法が知られているが、制御信号を送受信する必要があるため、本来のデータ送受信に用いる通信帯域が圧迫されるという問題がある。ここで、通信品質の情報は、例えば基地局と端末とが通信するときのスループットでもよいし、或いは受信信号電力(RSSI(Received Signal Strength Indicator))や誤り率など通信の状態を把握できる指標であれば他の情報であってもよい。
【0004】
そこで、ミリ波通信における見通し通信路の遮蔽問題を解決するために、本願の発明者により、距離情報を含む画像(深度画像と称する)を取得可能なRGB-D(RGB and Depth)カメラを用いたミリ波通信システムが検討されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。ここで、深度画像は、撮影される画像内の被写体(人物や物体等)とカメラとの間の実際の距離(奥行とも呼ばれる)を示す情報を含み、カメラと被写体との距離を取得することができる。非特許文献2では、ハンドオーバ先の基地局を決定するときに、非通信中の基地局と端末間の通信品質をRGB-Dカメラの深度画像から推定することにより、通信品質の情報を取得するための通信を行う必要がなくなり、通信帯域を圧迫することなくハンドオーバ先の基地局を選択する指標が取得可能となる。例えば図7に示すミリ波通信システム800の場合、RGB-Dカメラを使用するカメラCA1及びカメラCA2により通信環境を撮影する。そして、基地局制御装置801の学習推定部902は、カメラCA1及びカメラCA2から得られた画像(静止画像や動画像)から基地局BS1,基地局BS2,端末ST1,端末ST2及び遮蔽物などの位置を把握し、現在の通信環境や将来の通信環境を推定・予測する。そして、基地局制御装置801の統合制御部901は、推定・予測データに基づいて制御信号を出力して基地局BS1及び基地局BS2を制御し、基地局BS1と基地局BS2との間のハンドオーバ制御や各基地局のアンテナ指向性制御を行う。
【0005】
図8は、図7に示すミリ波通信システム800の統合制御部901と学習推定部902の動作例を示す。図8において、学習推定部902は、学習推定部LE1と学習推定部LE2とを有する。学習推定部LE1は、通信中のミリ波基地局BS1から通信品質(実測通信品質)を取得すると共に、RGB-DカメラCA1からRGB-D画像(距離情報を含む撮影画像(又は実画像と称する))を取得して、撮影画像と実測通信品質との対応関係を学習する(学習フェーズ)。一方、学習推定部LE2は、RGB-DカメラCA2から取得するRGB-D画像の情報を元に機械学習によりミリ波端末STと非通信中のミリ波基地局BS2の通信品質を推定する(推定フェーズ)。そして、統合制御部901は、学習推定部LE1から受け取る実測通信品質と、学習推定部LE2が推定した推定通信品質とに基づいて、ミリ波端末STと通信を行うのに適したミリ波基地局を判別し、制御信号により適切なミリ波基地局への切り替え(ハンドオーバ)やミリ波基地局のアンテナの指向性制御などを行う。
【0006】
このようにして、ミリ波通信システム800では、通信帯域を圧迫することなく、見通し通信路の遮蔽を含むミリ波通信環境の変化による通信品質の低下が回避される。また、非通信中の基地局と端末との間の通信品質情報が深度画像から推定されるので、通信品質を測定するための無線制御信号を送受信する必要がない。また、非特許文献2では、オンライン機械学習アルゴリズムのAROW(Adaptive Regularization Of Weight vectors(例えば、非特許文献6参照))を用い、フレーム送受信中にRGB-Dカメラから得られる深度画像とスループットとの対応モデルを学習した後、そのモデルを用いて新たな深度画像から回帰手法によりスループットを推定する例が記載されている。しかし、このようなスループット推定法においては、推定モデルを構築するために多くのデータを必要とするので、実際にスループット推定を行うまでに時間がかかってしまうという問題がある。さらに、学習時に撮影されなかったような発生頻度の低いRGB-D画像が撮影された場合、通信品質の推定精度が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Y.Oguma,R.Arai,T.Nishio,K.Yamamoto,and M.Morikura,“Proactive base station selection based on human blockage prediction using RGB-D cameras for mmWave communications,”Proc.IEEE GLOBECOM 2015,pp.1-6,San Diego,CA,USA,Dec.2015.
【非特許文献2】岡本浩尚 他,“ミリ波通信制御のためのオンライン機械学習を用いた深度画像からのスループット推定,”信学技報,SR2015-96,Mar.2016.
【非特許文献3】P.Wang,Y.Li,L.Song,and B.Vucetic,“Multi-gigabit mil-limeter wave wireless communications for 5G:From fixed access to cellular networks,”IEEE Commun.Mag.,vol.53,no.1,pp.168-178,Jan.2015.
【非特許文献4】S.Collonge,G.Zaharia,and G.E.Zein,“Influence of the hu-man activity on wide-band characteristics of the 60GHz in-door radio channel,”IEEE Trans.Wireless Commun.,vol.3,no.6,pp.2396-2406,Nov.2004.
【非特許文献5】B.Gao,Z.Xiao,C.Zhang,L.Su,D.Jin,and L.Zeng,“Double-link beam tracking against human blockage and device mobility for 60-GHz WLAN,”Proc.IEEE WCNC 2014,pp.323-328,I端末nbul,Turkey,April 2014.
【非特許文献6】K.Crammer,O.Dekel,J.Keshet,S.Shalev-Shwartz,and Y.Singer,“Online passive-aggressive algorithms,”J.Mach.Learn.Res.,vol.7,pp.551-585,Dec.2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の通信品質の推定方法では、実際の通信環境で学習した情報に基づいて推定モデルに対する通信品質の推定を行うため、推定モデルを構築するために多くのデータを必要とし、実際に通信品質の推定を行うまでに時間を要するという問題がある。また、実際に発生頻度の低い通信環境における学習量が少ないので推定精度が向上せず、通信環境の変化に柔軟に対応することが難しいという問題もある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明では、システムの初期動作段階や発生頻度の低い通信環境における通信品質の推定精度を向上することができる通信制御方法、通信システム及び事前学習補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、端末と無線通信を行う複数の基地局と、前記端末と前記複数の基地局との通信環境を撮影する撮像装置と、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置と、前記基地局制御装置用の事前学習データを生成する事前学習補助装置とを有する通信システムにおける通信制御方法であって、前記事前学習補助装置が、前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する処理と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて、複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する処理と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて、前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力する処理とを実行し、前記基地局制御装置が、前記撮像装置により撮影した距離情報を含む撮影画像と、前記撮影画像に対応する通信環境において前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質とを取得する処理と、前記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、前記事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定する処理と、前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択する処理とを実行することを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記仮想画像の生成と当該仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定とを行い、生成された前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係を学習することを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、端末と無線通信を行う複数の基地局と、前記端末と前記複数の基地局との通信環境を撮影する撮像装置と、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置と、前記基地局制御装置用の事前学習データを生成する事前学習補助装置とを有する通信システムにおいて、前記事前学習補助装置は、前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する空間モデル生成部と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する画像生成部と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力するシミュレーション部とを備え前記基地局制御装置は、前記撮像装置により撮影した距離情報を含む撮影画像と、前記撮影画像に対応する通信環境において前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質を取得して、前記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、前記事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定する学習推定部と、前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択する統合制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記空間モデル生成部による前記三次元空間モデルの構築と、前記画像生成部による前記仮想画像の生成と、前記シミュレーション部による前記仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定と、前記学習推定部による生成された前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係の学習と、を行うことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第3の発明又は第4の発明において、前記空間モデル生成部は、前記複数の基地局が通信を開始する前に前記撮影画像を取得して、前記撮影画像に含まれる距離情報をベースに通信環境を解析し、解析した情報を元に複数の前記三次元空間モデルを構築することを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、端末と無線通信を行う複数の基地局の通信環境を撮像装置により撮影した画像で距離情報を含む撮影画像と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質とを取得して、機械学習を用いて前記複数の基地局を制御する基地局制御装置に対して、事前学習データを生成する事前学習補助装置において、前記端末、前記複数の基地局、前記撮像装置、及び遮蔽物を配置した複数の仮想的な通信環境の三次元空間モデルを構築する空間モデル生成部と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて複数の仮想画像を生成し、前記基地局制御装置に出力する画像生成部と、前記三次元空間モデルの各々に基づいて前記仮想画像の各々に対応する通信環境での前記複数の基地局と前記端末との通信品質を伝搬シミュレーションにより推定し、前記仮想画像と対応付けて前記基地局制御装置に出力するシミュレーション部とを備え前記基地局制御装置は、前記撮影画像と前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質との対応関係、及び、当該事前学習補助装置から入力した前記仮想画像と推定された通信品質との対応関係の双方を学習して、前記端末と非通信中の基地局との間の通信品質を推定し、前記端末と非通信中の基地局との間の推定された通信品質の情報と、前記端末と通信中の基地局が実測した通信品質の情報とに基づいて、前記端末の通信に適した基地局を選択することを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、前記複数の基地局が通信を開始する前に、前記空間モデル生成部による前記三次元空間モデルの構築と、前記画像生成部による前記仮想画像の生成と、前記シミュレーション部による前記仮想画像に対応する通信環境での通信品質の推定と、を行い、前記基地局制御装置に、前記仮想画像と推定された前記通信品質との対応関係学習させることを特徴とする。
【0017】
第8の発明は、第6の発明又は第7の発明において、前記空間モデル生成部は、前記複数の基地局が通信を開始する前に前記撮影画像を取得して、前記撮影画像に含まれる距離情報をベースに通信環境を解析し、解析した情報を元に複数の前記三次元空間モデルを構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る通信制御方法、通信システム及び事前学習補助装置は、システムの初期動作段階や発生頻度の低い通信環境における通信品質の推定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る通信システム100の適用例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る通信システム100の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る通信システム100の構成及び動作の詳細を示す図である。
【図4】本実施形態に係る通信システム100の処理の一例を示す図である。
【図5】比較例の通信システム800の処理の一例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る通信システム100の効果の一例を示す図である。
【図7】比較例の通信システム800の構成例を示す図である。
【図8】比較例の通信システム800の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る通信方法、通信システム及び事前学習補助装置の実施形態について説明する。

【0021】
図1は、本実施形態に係る通信システム100の適用例を示す。図1の例では、通信システム100は、基地局BS1、基地局BS2、端末ST1、端末ST2、カメラCA1及びカメラCA2を有する。図1に示す通信システム100は、例えばイベント会場などにおいて直進性の高いミリ波を用いた無線LANなどの通信サービスを提供する場合に適している。図1の例では、例えば会場内に設置された基地局BS1及び基地局BS2は、入場者(歩行者)が保持する端末ST1及び端末ST2と通信を行う。また、RGB-D画像など距離情報を含む画像を撮影する撮像装置(カメラCA1及びカメラCA2) が会場内の壁面などに設置され、通信システム100は、撮影された画像の距離情報に基づいて、基地局BS1、基地局BS2、端末ST1、端末ST2、遮蔽物及び歩行者などの位置などを把握することができる。そして、基地局BS1及び基地局BS2と端末ST1及び端末ST2との間の通信品質を実測又は推定することで、通信システム100は、端末STの位置に応じた基地局BSのアンテナ指向性の制御や端末STとの通信に適した基地局BSへのハンドオーバ制御などを行う。

【0022】
ここで、以降の説明において、基地局BS1及び基地局BS2に共通の説明を行う場合は基地局BSと表記する。同様に、端末ST1及び端末ST2に共通の説明を行う場合は端末STと表記し、カメラCA1及びカメラCA2に共通の説明を行う場合はカメラCAと表記する。

【0023】
図1に示す例では、会場内に様々な遮蔽物があり、且つ、端末STを持った歩行者や端末STを持たない歩行者が動き回るため、基地局BSと端末STとの間の通信環境は時々刻々と変化する。そのため、通信システムにおいて、端末STがどの基地局BSと通信すればよいかを判断して基地局BS間で適切にハンドオーバさせる制御が難しい。例えば図1において、基地局BS1と端末ST1との見通し通信直線が他の歩行者に遮蔽された場合、基地局BS1と端末ST1との間の通信品質が劣化する。しかし、基地局BS2と端末ST1との通信品質が基地局BS1と端末ST1との間の通信品質よりも良好であると推定できれば基地局BS1から基地局BS2へハンドオーバすることにより、端末ST1の通信品質を良好に保つことができる。このためには、端末ST1と基地局BS1とが通信中に端末ST1と非通信中の基地局BS2の通信品質を推定し、基地局BS1で実測した実測通信品質と、基地局BS2の推定通信品質とを比較して、通信品質の良い方の基地局BSを選択する制御を行う必要がある。ところが、従来は、非通信中の基地局BSの通信品質を推定するための無線制御信号を送受信したり、実際の通信環境の撮影画像を用いて学習した通信品質を用いていたので、学習するのに時間がかかったり、学習量の少ないシステム起動時や発生頻度の少ない通信環境などにおける推定精度が低くなってしまうという問題があった。そこで、本実施形態に係る通信システム100では、仮想的に生成した仮想画像と仮想画像に対する通信品質とを計算して、システムを起動する前から通信環境の事前学習を行うことにより、非通信中の基地局BSの通信品質を精度高く推定することができる。

【0024】
図2は、本実施形態に係る通信システム100の構成例を示す。本実施形態に係る通信システム100は、基地局制御装置101、事前学習補助装置102、基地局BS1、基地局BS2、カメラCA1及びカメラCA2を有する。なお、基地局BS1及び基地局BS2は、端末ST1又は端末ST2と通信する。ここで、本実施形態に係る通信システム100は、カメラCAの撮影画像又は事前学習補助装置102が生成する仮想画像と、基地局BSが実測する実測通信品質又は事前学習補助装置102が推定する仮想画像に対する通信品質との対応モデルを機械学習により蓄積して、基地局BSの通信品質を推定し、基地局BS間のハンドオーバを行うシステムである。ここで、仮想画像は、カメラCAの実際の撮像範囲に対応した仮想空間モデルの画像であって、撮影画像と同様の形式の距離情報を含む。仮想画像の距離情報は、仮想空間モデル上でのカメラCAと被写体となる各物体との位置関係に基づいて生成され、カメラCAから仮想画像に含まれる各物体までの距離をそれぞれ示す。

【0025】
基地局制御装置101は、カメラCAが撮影する距離情報を含む撮影画像と、端末STと通信中の基地局BSが実測する通信品質情報と、後述する事前学習補助装置102が求めた距離情報を含む仮想画像及び仮想画像に対する通信品質情報とに基づいて、基地局BSのアンテナ指向性制御やハンドオーバ制御などを行う。

【0026】
事前学習補助装置102は、仮想的な三次元空間モデルを構築して距離情報を含む仮想画像を生成し、生成した仮想画像における無線の伝搬シミュレーションを行って通信品質を推定する。そして、事前学習補助装置102は、生成した仮想画像と、仮想画像に対する通信品質情報と、を基地局制御装置101に出力する。

【0027】
このようにして、基地局制御装置101は、カメラCAから得られる実際の撮影画像に対応する端末STと通信中の基地局BSから得られる実測通信品質情報と、事前学習補助装置102から得られる仮想画像に対応する通信品質情報と、に基づいて、現在の通信品質や将来の通信品質を推定・予測する。そして、基地局制御装置101は、推定・予測データに基づいて制御信号により基地局BS1及び基地局BS2を制御し、基地局BS1と基地局BS2との間のハンドオーバ制御や各基地局BSのアンテナ指向性制御などを行う。

【0028】
このように本実施形態に係る通信システム100は、システム起動前から仮想画像と仮想画像に対する通信品質との対応関係を学習して蓄積しておくことにより、システムの初期動作段階や発生頻度の低い通信環境における基地局BSの通信品質の推定精度を向上することができる。

【0029】
図3は、本実施形態に係る通信システム100の詳細な構成及び動作を示す。なお、図3において、図2と同符号のブロックは、図2と同一又は同様に動作する。

【0030】
図3において、基地局制御装置101は、統合制御部201及び学習推定部202を有する。また、事前学習補助装置102は、三次元空間モデル生成部301、画像生成部302及び伝搬シミュレーション部303を有する。さらに、基地局BS1は、通信制御部402_1及び通信品質測定部401_1を有し、同様に、基地局BS2は、通信制御部402_2及び通信品質測定部401_2を有する。ここで、以降の説明において、通信品質測定部401_1及び通信品質測定部401_2に共通の説明を行う場合は通信品質測定部401と表記する。同様に、通信制御部402_1及び通信制御部402_2に共通の説明を行う場合は通信制御部402と表記する。

【0031】
先ず、基地局BSの動作について説明する。

【0032】
通信品質測定部401は、通信中の端末STとの間の通信品質を実測し、実測した実測通信品質の情報を学習推定部202に出力する。

【0033】
通信制御部402は、統合制御部201から受け取る制御信号により、アンテナ指向性制御やハンドオーバ制御などを行う。例えば基地局BS1から基地局BS2へハンドオーバする場合、統合制御部201は、基地局BS1の通信制御部402_1に制御信号を出力して端末ST1との通信を停止するように指令すると共に、基地局BS2の通信制御部402_2に制御信号を出力して端末ST1との通信を開始するように指令する。或いは、統合制御部201は、端末ST1と通信中の基地局BS1の通信制御部402_1に制御信号を出力し、端末ST1の動きに応じて基地局BS1のアンテナの指向性を制御する。

【0034】
次に、基地局制御装置101について説明する。

【0035】
統合制御部201は、通信システム100が有する複数の基地局BSを制御する。例えば統合制御部201は、学習推定部202から受け取る通信品質情報に基づいて、端末STの位置に応じた基地局BSのアンテナ指向性の制御や端末STとの通信に適した基地局BSへのハンドオーバ制御などを行う。例えば本実施形態では、端末ST1と通信中の基地局BS1の実測通信品質情報と、学習推定部202が推定した非通信中の基地局BS2の推定通信品質情報とに基づいて、通信品質が良好な基地局BSにハンドオーバする制御を行う。例えば、通信品質情報としてスループットを用いる場合、端末ST1と通信中の基地局BS1の実測スループットが100Mbpsで、学習推定部202が推定した非通信中の基地局BS2の推定スループットが150Mbpsである条件下では、統合制御部201は、基地局BS1と端末ST1との通信の停止と、基地局BS2と端末ST1との通信の開始とを各基地局BSに指令して基地局BS1から基地局BS2へのハンドオーバを行う。

【0036】
学習推定部202は、カメラCAにより出力される距離情報を含む撮影画像と、端末STと通信中の基地局BSが実測した通信品質との対応関係や、事前学習補助装置102により生成される仮想画像と、仮想画像に対応する通信品質との対応関係、などを学習し、例えば内部の記憶装置などに蓄積する。図3の例では、点線501で示したように、撮影画像(1)に対応する実測通信品質(1)、撮影画像(2)に対応する実測通信品質(2)、撮影画像(3)に対応する実測通信品質(3)、仮想画像(1)に対応するシミュレーションで推定した通信品質(1)、同様に、仮想画像(2)に対応する通信品質(2)、仮想画像(3)に対応する通信品質(3)などが学習推定部202の記憶装置などに蓄積されている。学習推定部202は、学習して蓄積された情報に基づいて、非通信中の基地局BSの通信品質の推定を行い、通信中の基地局BSが実測した実測通信品質と非通信中の基地局BSの推定通信品質とを統合制御部201に出力する。ここで、学習推定部202は、通信品質の推定に機械学習を用いるので、学習データ量が多いほど推定精度が向上する。つまり、本実施形態に係る学習推定部202は、実際の学習データが得られたときと同様に、事前学習補助装置102により仮想的に生成された大量の学習データに基づいて学習できるので、通信品質の推定精度が向上する。なお、学習推定部202で用いる機械学習アルゴリズムには、回帰に拡張したAROWを用いる。以下、簡単にAROWについて説明する。例えば、時刻tにおいて得られた実測スループットをst、深度画像をAROWの入力用に変換した配列を(it)とする。学習フェーズにおいてAROWは正規化したスループットrt=st/ηと変換後の深度画像(it)の対応を学習する。ここで、ηはスループットの正規化係数であり、rtは0から1の値を取る。推定フェーズにおいては、AROWは(it)からrt'を推定し、学習器はst'=ηrt'を出力する(例えば、非特許文献6参照)。なお、カメラから得た深度画像をAROWの入力となる1次元2値配列に変換する手順は以下のとおりである。まず、計算量を削減するため、深度画像の解像度をH×W画素(H,W:正の整数)へと変換する。その後、深度画像の最大値がDとなるように各画素の深度値を正規化する。具体的には、画素座標を(x,y)で表記すると(x:H以下の整数、y:W以下の整数)、座標(x,y)にある画素の深度値をdx,yとし、全ピクセルについて[dx,y]番目([]は床関数を示す)の値が1、それ以外が0となるDサイズの2値配列を作成する。例えばDが10段階(10個の0で表す)、dx,yが3.3の場合、床関数[3.3]=3となるので、10個の0のうち3番目に1が立ち、その他が0となる2値配列(0010000000)が得られる。このような処理を全画素に対して行って各画素の2値配列を求め、最後に、それぞれの画素の2値配列を連結することで、AROWの入力である深度画像の配列(it)が得られる。そして、得られた深度画像の配列(it)を入力としてAROWの処理が行われ、推定スループットst'が出力される。

【0037】
このようにして、本実施形態に係る通信システム100は、AROWによる機械学習により、スループットなどの通信品質を推定する。

【0038】
次に、事前学習補助装置102について説明する。なお、事前学習補助装置102は、コンピュータなどの計算機により構成され、予め決められたプログラムに従って、三次元空間モデルの生成や仮想画像の生成及び伝搬シミュレーションなどを実行する。

【0039】
三次元空間モデル生成部301は、先ず、学習を行うモデルの基地局BS、端末ST、カメラCAの位置などを決定する。その後、人体や遮蔽物などの物体の3Dモデルを仮想空間上に配置し、三次元空間モデル(3Dモデル)を生成する。

【0040】
なお、三次元空間モデルを生成する条件(イベント会場の形状、基地局BS、端末ST、カメラCA、人体や物などの配置など)は、予め外部から与えておいてもよいし、図3の点線矢印で示したように、三次元空間モデル生成部301がカメラCA1及びカメラCA2の撮影画像を受け取って、撮影画像に含まれる距離情報をベースに会場の形状や配置などを解析し、解析した情報を元に自動的に三次元空間モデルを生成するようにしてもよい。このようにして生成された三次元空間モデルは、画像生成部302及び伝搬シミュレーション部303へ出力される。なお、三次元空間モデル生成部301は、端末STを持つ人や遮蔽物などの位置を仮想的に替えた様々なモデルを生成する。これにより、事前学習補助装置102は、仮想画像と通信品質との対応関係を示すデータを大量に生成することができる。

【0041】
画像生成部302は、三次元空間モデル生成部301が生成する三次元空間モデルにおいて、カメラCAから見た場合の画像(仮想画像)をコンピュータグラフィクスの技術を用いて生成する。

【0042】
伝搬シミュレーション部303は、電波伝播モデルに基づき、三次元空間モデル生成部301により生成された三次元空間モデルにおける端末STと基地局BSとの間の通信品質を計算により推定する。

【0043】
このようにして、事前学習補助装置102は、仮想画像と、仮想画像に対応する通信品質の情報との対応を示すデータを計算機シミュレーションにより大量に生成することができる。これにより、学習推定部202は、学習に必要な通信環境の画像に対応する通信品質の情報を大量に得ることができ、非通信中の基地局BSの通信品質の推定精度を向上することができる。特に、実測による撮影画像と通信品質との対応関係のデータが得られていないシステム起動時や、現実に発生する頻度が低い通信環境に対しても、仮想画像と仮想画像に対応する通信品質の情報との対応を示すデータに基づいて、基地局BSの通信品質を精度高く推定することができる。

【0044】
図4は、本実施形態に係る通信システム100の処理の一例を示す。なお、図4において、点線で囲んだ処理以外の処理は、基地局制御装置101又は事前学習補助装置102により実行される。また、ステップS101からステップS107までの処理が事前学習補助装置102で実行される処理である。図4の例では、先ずステップS109で基地局BS1が端末ST1との通信を開始し、以降のステップで基地局BS1から基地局BS2へハンドオーバする場合の処理を行う。以下、各処理について順番に説明する。

【0045】
ステップS101において、事前学習補助装置102で生成するモデルの数をカウントするためのカウンタN(Nは整数)が0に初期化される。なお、事前学習補助装置102におけるカウンタに関する制御(例えばカウンタNのカウントアップやカウント値の判別など)は、例えば、事前学習補助装置102に含まれる各ブロックの動作を制御する制御部(不図示)で実行される。ここで、Nのカウント値は、生成されるモデルの数に相当する。

【0046】
ステップS102において、三次元空間モデル生成部301は、カメラCA、基地局BS、端末ST、歩行者などの遮蔽物を配置した三次元空間モデルを仮想的に構築する。

【0047】
ステップS103において、画像生成部302は、三次元空間モデル生成部301が構築した仮想空間モデルに基づいて仮想画像を生成する。仮想画像は、カメラCAの実際の撮像範囲に対応した仮想空間モデルの画像であって、撮影画像と同様の形式の距離情報を含む。仮想画像の距離情報は、仮想空間モデル上でのカメラCAと被写体となる各物体との位置関係に基づいて生成され、カメラCAから仮想画像に含まれる各物体までの距離をそれぞれ示す。

【0048】
ステップS104において、伝搬シミュレーション部303は、仮想空間モデルを用いた伝搬シミュレーションにより、ステップS103で生成される仮想画像に対応する仮想空間モデルでの基地局BSの通信品質を計算する。なお、複数の基地局BSのそれぞれについて端末STとの間の通信品質を計算する。

【0049】
ここで、ステップS103の処理とステップS104の処理は、並列に実行してもよいし、直列に順番(ステップS103の次にステップS104又はステップS104の次にステップS103)に行ってもよい。但し、ステップS103で生成される仮想画像と、ステップS104で計算される通信品質とは、ステップS102で生成される同じ三次元空間モデルに対する仮想画像と通信品質である。

【0050】
ステップS105において、学習推定部202は、ステップS104で求めたシミュレーションによる通信品質と、ステップS103で生成した仮想画像との対応関係を学習する。なお、図3で説明したように、対応関係の学習データは、例えば学習推定部202に蓄積される。

【0051】
ステップS106において、事前学習補助装置102は、カウンタNをカウントアップする(N=N+1)。

【0052】
ステップS107において、事前学習補助装置102は、カウンタNが予め設定された最大のモデル数Nmaxになったか否かを判別する。そして、N=Nmaxの場合はステップS108及びステップS109の処理に進み、N≠Nmaxの場合はステップS102の処理に戻って同様の処理を繰り返す。

【0053】
ここで、以下のステップS108の処理とステップS109及びステップS110の処理は、並列に実行される。

【0054】
ステップS108において、カメラCA(カメラCA1又はカメラCA2)により実際に通信環境を撮影した撮影画像(仮想画像に対する実画像)を取得する。取得された撮影画像は、学習推定部202のステップS111及びステップS112の処理で用いられる。

【0055】
ステップS109において、基地局BS1は、端末ST1と通信する。この状態は、図3に示した例に相当し、この時点で端末ST1と通信中の基地局BSは基地局BS1であり、基地局BS2は端末ST1と非通信中である。

【0056】
ステップS110において、基地局BS1は、通信中の端末ST1との間の通信品質を実測した実測通信品質を学習推定部202に出力し、学習推定部202のステップS111の処理で用いられる。

【0057】
ここで、以下で説明するステップS111及びステップ112の処理と、ステップS113及びステップS114の処理とは並列に実行される。

【0058】
ステップS111において、学習推定部202は、基地局BS1の実測通信品質と撮影画像との対応関係を学習して蓄積する。

【0059】
ステップS112において、学習推定部202は、基地局BS1の実測通信品質の情報を統合制御部201に出力し、統合制御部201のステップS115の処理で用いられる。

【0060】
ステップS113において、ステップS111の処理と並行して、学習推定部202は、蓄積された学習データを参照して、カメラCAの撮影画像から端末ST1と非通信中の基地局BS2の通信品質を推定する。

【0061】
ステップS114において、学習推定部202は、端末ST1と非通信中の基地局BS2の推定通信品質の情報を統合制御部201に出力し、統合制御部201のステップS115の処理で用いられる。

【0062】
ステップS115において、統合制御部201は、端末ST1と通信中の基地局BS1の実測通信品質の情報と端末ST1と非通信中の基地局BS2の推定通信品質の情報とに基づいて、端末ST1と通信を行う基地局BSを選択する。例えば、通信品質情報としてスループットを用いる場合、端末ST1と通信中の基地局BS1の実測スループットが100Mbpsで、学習推定部202が推定した非通信中の基地局BS2の推定スループットが150Mbpsである条件下で、統合制御部201は、基地局BS2を選択する。逆に、端末ST1と通信中の基地局BS1の実測スループットが180Mbpsで、学習推定部202が推定した非通信中の基地局BS2の推定スループットが150Mbpsである場合、統合制御部201は、基地局BS1を選択する。このようにして、統合制御部201は、学習推定部202から受け取る情報に基づいて、端末ST1との通信に適した基地局BSを決定する。

【0063】
ステップS116において、統合制御部201は、ステップS115の処理で決定した基地局BSの情報(例えば基地局BSの名称や固有番号など基地局BSを特定する情報)を全ての基地局BSに通知する。これにより、各基地局BSは、どの基地局BSが端末ST1と通信するのかを知ることができる。そして、新たに端末ST1と通信を開始するハンドオーバ先の基地局BSは、端末ST1との通信を開始する処理を行うことができ、端末ST1と現在通信中のハンドオーバ元の基地局BSは、通信中の端末ST1との通信を停止する処理を行うことができる。

【0064】
ステップS117において、基地局BS1は、統合制御部201の指令により、端末ST1との通信を終了する。

【0065】
ステップS118において、基地局BS2は、統合制御部201の指令により、端末ST1との通信を開始する。

【0066】
ここで、ステップS117及びステップS118の処理が終了すると、再び、ステップS108及びステップS109の処理に戻って同様の動作を繰り返す。なお、図4に示したフローチャートでは、ステップS101からステップS107までの事前学習処理がシステム動作の開始前に実行される例を示してあるが、システム動作が開始された後のステップS108からステップS118までの処理が繰り返し行われている期間においても、ステップS101からステップS107までの学習処理を並行して実行するようにしてもよい。これにより、学習推定部202は、システム動作中においても、仮想画像と仮想画像に対応する通信環境での通信品質との対応関係を学習できるので、学習データ量を増やすことができ、通信品質の推定精度を更に向上することができる。

【0067】
このように、本実施形態に係る通信システム100は、各基地局BSが端末STと通信を開始する前に仮想的な様々な通信環境における仮想画像とそのときの通信品質を推定して、仮想画像と通信品質との対応関係を大量に学習しておくことにより、実測による学習データが少ない通信環境においても精度の良い通信品質の推定が可能になる。なお、事前学習補助装置102は、通信開始後においても、三次元空間モデルの生成を行い、仮想画像の生成と仮想画像における通信品質を推定し、仮想画像と仮想画像に対応する通信品質との対応関係を示すデータを学習推定部202に出力するようにしてもよい。

【0068】
図5は、従来技術で説明した比較例の通信システム800の処理の一例を示す。なお、図5において、図4と同符号のブロックは、図4と同様の処理を行う。図5の比較例の処理が本実施形態の処理と異なる点は、ステップS101からステップS107までの事前学習の処理を行わないことである。このため、例えばステップS113の処理において、学習推定部202が端末ST1と非通信中の基地局BS2の通信品質を推定する際に参照する蓄積された学習データの量に違いが生じる。例えば本実施形態に係る通信システム100では、図4で説明したように、事前学習処理によって多数のデータが蓄積されているので、非通信中の基地局BS2の通信品質を推定する精度が事前学習しない場合に比べて高くなる。これに対して、図5に示した比較例の場合、例えばシステム起動時や発生頻度の少ない通信環境における学習データ量が無い又は少ないので、非通信中の基地局BS2の通信品質を推定する精度が事前学習する場合に比べて低くなる。

【0069】
図6は、通信品質推定誤差の時間変化の一例を示し、横軸が時間t、縦軸が通信品質推定誤差をそれぞれ示す。ここで、通信品質推定誤差は、学習推定部202が推定する通信品質と実際の通信環境における通信品質との誤差である。例えば通信品質としてスループットを用いる場合、学習推定部202の推定するスループットが200Mbpsで、実際の通信環境におけるスループットが180Mbpsの場合、誤差は約10%となる。なお、誤差が小さいほど推定精度が高く、誤差が大きいほど推定精度が低いことを示す。

【0070】
図6において、通信品質推定誤差は、事前学習を開始していない時刻T1より前の段階では比較例及び本実施形態ともに同じである。ここで、本実施形態では、基地局BSが動作を開始する前に事前学習を行うことにより、基地局BSの動作開始時の通信品質推定誤差を小さくすることができるが、比較例では、基地局BSの動作開始時に通信品質推定誤差が大きなところから学習を行う必要がある。

【0071】
例えば図6において、本実施形態に係る事前学習補助装置102及び学習推定部202は、通信システム100が動作を開始する時刻T2よりも前の時刻T1から事前学習を開始する。そして、事前学習補助装置102は、時刻T1からT2までの事前学習期間において、仮想画像の生成と、仮想画像における端末STと基地局BSとの通信品質を伝搬シミュレーションにより推定する。そして、学習推定部202は、事前学習補助装置102が出力する仮想画像と、仮想画像に対する通信品質との対応関係を学習する。このようにして、学習推定部202は、基地局BSが動作を開始する前の事前学習期間に学習データを蓄積していくので、事前学習期間が長くなるほどより多くの学習データが蓄積される。これにより、推定精度が向上し、通信品質推定誤差は小さくなる。

【0072】
ここで、事前学習を行わない比較例の通信システムの場合、システム動作が開始された時刻T2から実際に撮影された撮影画像と実測の通信品質との対応関係を学習し始めるので、学習データの蓄積が少ない時刻T2直後の通信品質推定誤差は大きく、学習データの蓄積が増えるのに従って通信品質推定誤差が小さくなっていく。

【0073】
これに対して、本実施形態に係る通信システム100の場合、システム動作が開始された時刻T2の時点で既に仮想画像により学習したデータが蓄積されているので、基地局BSの動作開始時点及び動作開始後における通信品質推定誤差は比較例よりも小さい。

【0074】
このように、本実施形態に係る通信システム100では、基地局BSが通信を開始し、学習推定部202が実際の撮影画像と実測の通信品質情報との対応関係の学習を開始する前に、事前に同様の学習を行うための事前学習補助装置102を用いて事前学習を行う。これにより実際に基地局が通信を始める前に通信環境に対応する仮想画像と通信品質との対応関係を学習させておくことができるため、各基地局BSの通信品質を通信開始直後から精度高く推定することができる。

【0075】
以上、実施形態で説明してきたように、本願発明に係る通信方法、通信システム及び事前学習補助装置は、通信環境の画像から通信品質を推定する機械学習のために必要な多くのデータを実際に基地局が通信を開始する前に仮想的に生成して学習するので、基地局の動作直後から精度の高い通信品質の推定が可能である。

【0076】
また、発生頻度の少ない通信環境に対しても、計算機シミュレーションにより予め学習を行っておくことができるので、推定精度を向上させることができる。

【0077】
なお、本願発明に係る通信方法、通信システム及び事前学習補助装置は、通信環境の画像から通信品質を推定するので、直進性の高いミリ波などの無線通信を用いる場合に特に有効である。また、展示会など、ミリ波基地局を短期的なホットスポットとして使用したり、設置場所や周囲の通信環境が短期的に変化する場合などにおいては、通信環境に応じた通信品質を学習をする時間が十分に得られない可能性が高く、本願発明に係る通信方法、通信システム及び事前学習補助装置は特に有用である。
【符号の説明】
【0078】
100,800・・・通信システム;101,801・・・基地局制御装置;102・・・事前学習補助装置;201,901・・・統合制御部;202,902・・・学習推定部;303・・・伝搬シミュレーション部;301・・・三次元空間モデル生成部;302・・・画像生成部;401,401_1,401_2・・・通信品質測定部;402,402_1,402_2・・・通信制御部;ST,ST1,ST2・・・端末;BS,BS1,BS2・・・基地局;CA,CA1,CA2・・・カメラ;LE1,LE2・・・学習推定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7