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明細書 :グラフトポリマーの製造方法、グラフトポリマー、グラフトポリマーの開始剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-145262 (P2018-145262A)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 グラフトポリマーの製造方法、グラフトポリマー、グラフトポリマーの開始剤
国際特許分類 C08F 265/06        (2006.01)
FI C08F 265/06
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2017-039800 (P2017-039800)
出願日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明者または考案者 【氏名】辻井 敬亘
【氏名】榊原 圭太
【氏名】後藤 淳
【氏名】宮本 充彦
【氏名】小松 弘人
【氏名】實川 拓也
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
個別代理人の代理人 【識別番号】100120868、【弁理士】、【氏名又は名称】安彦 元
審査請求 未請求
テーマコード 4J026
Fターム 4J026AA48
4J026AC23
4J026BA27
4J026BB01
4J026DA02
4J026DA12
4J026DB02
4J026DB11
4J026FA04
4J026GA01
要約 【課題】ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位を開始剤として用いることでより安定的にリビングラジカル重合を進行が可能なグラフトポリマーの製造方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を、有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させることによりグラフトポリマーを製造する方法。
JP2018145262A_000015t.gif
[Rは連結基(エーテル、アミド或いはエステルを含有/非含有のアルキレン又は芳香環)]
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を、有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させることによりグラフトポリマーを製造することを特徴とするグラフトポリマーの製造方法。
【化11】
JP2018145262A_000012t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
ここでR1:連結基(エーテル結合、アミド結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基、芳香族基)
2 、R3、R4、R5、R6 :水素原子、芳香族基、脂肪族基
n=1~5
【請求項2】
アミン化合物、ホスフィン化合物、ホスホネート化合物、ホスホニウム塩、ヨウ化イミド化合物、又はアンモニウム化合物の何れかからなる有機触媒により上記リビングラジカル重合させることを特徴とする請求項1記載のグラフトポリマーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のグラフトポリマーの製造方法により製造されたことを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項4】
請求項1又は2記載のグラフトポリマーの製造方法におけるビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる開始剤として使用され、下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有することを特徴とするグラフトポリマーの開始剤。
【化12】
JP2018145262A_000013t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
【請求項5】
有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる開始剤として使用され、下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有することを特徴とするグラフトポリマーの開始剤。
【化13】
JP2018145262A_000014t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
ここでR1: -COO-(CH2)a-OCO-
2 、R3、R4、R5、R6 :水素原子、脂肪族基
a=2~5
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位からなる開始剤に対して安価で安定な有機触媒を使用することで容易にリビングラジカル重合させ、グラフトポリマーを製造するためのグラフトポリマーの製造方法、その製造方法により製造されるグラフトポリマー、並びにグラフトポリマーの開始剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年より高分子構造の精密制御に基づく各種高機能性材料の開発が行われている。中でもラジカル重合の反応性の高さを利用することで多種多様なビニル系モノマーの重合も可能となり、よりイノベーティブな機能性材料の開発も実現できるようになっている。
【0003】
このラジカル重合の中で特にリビングラジカル重合は、安定な共有結合種から可逆的にラジカル種を生成させる重合反応である。リビングラジカル重合過程は、開始反応と成長反応のみで構成され、連鎖移動反応を伴わないことから、それぞれ長さの揃ったポリマーが得られ、しかも開始剤の成長末端を失活させるような副反応を伴わないことから、その成長末端は重合中において成長し続け、あたかもいきているようなポリマーを作り出すことが可能となる。即ち、このリビングラジカル重合は、リビング重合とラジカル重合のそれぞれの優れた特性を併せ持つものであり、より高度な機能を持つ高分子材料の開発に用いることが可能となる。
【0004】
ところで、このようなリビングラジカル重合では、遷移金属触媒やラジカル開始剤として、危険でかつ合成が難しい過酸化物を使用せざるを得ない場合もある。このため、リビングラジカル重合を安全でかつ容易に進行させるため、繰り返し単位を主鎖中とする開始剤としてのポリマーに対し、安価で安定な有機触媒を接触させる必要がある。
【0005】
従来より、開始基を有する化学構造を繰り返し単位としたポリマーにリビングラジカル重合させる技術として、例えば特許文献1、2に記載の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-18556号公報
【特許文献2】特開2014-117672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このリビングラジカル重合を進行させることでグラフトポリマーを製造する際には、より安定的にリビングラジカル重合を進行させることが特に要求される。ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位を用いることでより安定的にリビングラジカル重合を進行させることができることは理論上予想できるものの、上述した特許文献1、2の開示技術において開始剤として、ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位を繰り返し単位としたポリマーを用いる技術は、特段開示されていなく、また特許文献1、2の開示技術以外にも特段検証されていないのが現状であった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位を開始剤として用いることでより安定的にリビングラジカル重合を進行させることが可能なグラフトポリマーの製造方法、その製造方法により製造されるグラフトポリマー、並びにグラフトポリマーの開始剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヨウ素開始基を含有するモノマー構造単位を開始剤として用いてリビングラジカル重合を進行させるべく鋭意検討を行った。その結果、開始剤として以下の式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を用いることにより、より安定的にリビングラジカル重合を進行させてグラフトポリマーを製造することができることを見出した。
【0010】
即ち、第1発明に係るグラフトポリマーの製造方法は、下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を、有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させることによりグラフトポリマーを製造することを特徴とする。
【0011】
【化1】
JP2018145262A_000002t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
【0012】
ここでR1:連結基(エーテル結合、アミド結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基、芳香族基)
2 、R3、R4、R5 、R6:水素原子、芳香族基、脂肪族基
n=1~5
【0013】
また、第2発明に係るグラフトポリマーの製造方法は、アミン化合物、ホスフィン化合物、ホスホネート化合物、ホスホニウム塩、ヨウ化イミド化合物、又はアンモニウム化合物の何れかからなる有機触媒により上記リビングラジカル重合させることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係るグラフトポリマーは、第1又は第2発明に記載のグラフトポリマーの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0015】
第4発明に係るグラフトポリマーの開始剤は、第1又は第2発明に記載のグラフトポリマーの製造方法におけるビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる開始剤として使用され、下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有することを特徴とする。
【0016】
【化2】
JP2018145262A_000003t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
【0017】
第5発明に係るグラフトポリマーの開始剤は、有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる開始剤として使用され、下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有することを特徴とする。
【化3】
JP2018145262A_000004t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)
ここでR1: -COO-(CH2)aOCO-
2 、R3、R4、R5、R6 :水素原子、脂肪族基
a=2~5
【発明の効果】
【0018】
上述した構成からなる本発明によれば、安定的にリビングラジカル重合を進行させることができ、ひいてはグラフトポリマーを安定的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るグラフトポリマーの製造方法について詳細に説明する。

【0020】
本発明を適用したグラフトポリマーの製造方法は、式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を、有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる。

【0021】
【化4】
JP2018145262A_000005t.gif
・・・・・・・・・・・・(1)

【0022】
ここでR1は連結基である。特にこのR1は、エーテル結合、アミド結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基、芳香族基である。またR2 、R3、R4、R5 、R6は、水素原子、芳香族基、脂肪族基等であり、n=1~5である。

【0023】
この開始剤としての化合物には、ヨウ素開始基を有する構造単位が連続することが前提となる。

【0024】
このような式(1)に示される開始剤としての化合物と反応させるビニル系モノマー(ラジカル重合性モノマー)は、有機ラジカルの存在下にラジカル重合を行い得る不飽和結合を有するモノマーをいう。すなわち、本発明の重合方法には、従来から、リビングラジカル重合を行うことが公知である任意のモノマーを用いることができる。

【0025】
より具体的には、いわゆるビニル系モノマーと呼ばれるモノマーを用いることができる。ビニル系モノマーとは、一般式(2):
CHR7=CR89 (2)
(式中、R7、R8及びR9はそれぞれ水素原子又は有機基を示す。)
で表されるモノマーの総称である。なお、一般式(1)で表されるモノマーは、以下において、例示されるモノマーを包含する。

【0026】
ビニル系モノマーとしては、スチレン及びその誘導体(R7及びR8が水素原子、R9が置換基を有していてもよいフェニル基);アクリル酸(R7及びR8が水素原子、R9がカルボキシル基);アクリルアミド(R7及びR8が水素原子、R9が基-CONH2)及びその誘導体;アクリレート(アクリル酸エステル又はアクリル酸塩);メタクリル酸(R7が水素原子、R8がメチル基、R9がカルボキシル基)(MAA);メタクリルアミド(R7が水素原子、R8がメチル基、R9が基-CONH2)(MAAm)及びその誘導体;メタクリレート(メタクリル酸エステル又はメタクリル酸塩)を好適に使用することができる。

【0027】
スチレン及びその誘導体の具体例としては、スチレン(St);o-、m-又はp-メトキシスチレン;o-、m-又はp-t-ブトキシスチレン;o-、m-又はp-クロロメチルスチレン;o-、m-又はp-クロロスチレン;o-、m-又はp-ヒドロキシスチレン;o-、m-又はp-スチレンスルホン酸及びその誘導体;o-、m-又はp-スチレンスルホン酸ナトリウム;o-、m-又はp-スチレンボロン酸およびその誘導体等を挙げることができる。

【0028】
アクリルアミド及びその誘導体の具体例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。

【0029】
アクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デカニルアクリレート、ラウリルアクリレート等のアルキルアクリレート;ベンジルアクリレート等のアリールアルキルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;グリシジルアクリレート等のエポキシアルキルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート等のシクロアルキルアクリレート;2-メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のポリアルキレングリコールアクリレート;メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールアクリレート;2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート等のジアルキルアミノアルキルアクリレート;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等を挙げることができる。アルキルアクリレートのアルキル基にフッ素原子が置換したフルオロアルキルアクリレート、アルキルアクリレートのアルキル基にトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基が置換した化合物も使用できる。また、2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチルアクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、2-(N-エチル-N-メチル-N-水素化アミノ)エチルアクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)n-)塩等のイオン液体製のアクリレートを用いることができる。

【0030】
メタクリルアミド及びその誘導体の具体例としては、メタクリルアミド(MAAm)、N-イソプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド等を挙げることができる。

【0031】
メタクリレートの具体例としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デカニルメタクリレート(LMA)、ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;ベンジルメタクリレート(BzMA)等のアリールアルキルメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;グリシジルメタクリレート等のエポキシアルキルメタクリレート;シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキルメタクリレート;2-メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等のヒドロキシアルキルメタクリレート;ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコールメタクリレート;メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)等のアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート;2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)等のジアルキルアミノアルキルメタクリレート;3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート等のアルコキシシリルアルキルメタクリレート;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。アルキルメタクリレートのアルキル基にフッ素原子が置換した2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート(HFBMA)等のフルオロアルキルメタクリレート、アルキルメタクリレートのアルキル基にトリス(トリアルキルシロキシ)シリル基が置換した3-[[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(MOPES)等の化合物も使用できる。また、2-(N,N-ジエチル-N-メチルアミノ)エチルメタクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、2-(N-エチル-N-メチル-N-水素化アミノ)エチルメタクリレート+/トリフルオロスルホニルイミニウム(N(CF3SO22-)塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)n-)塩、N-エチル-N-メチルピロリジニウムメタクリレート+/フルオロハイドロジェネーション((FH)n-)塩等のイオン液体性のメタクリレートを用いることができる。

【0032】
本発明では、R8及びR9が共にカルボキシル基又はカルボキシレートを有する基である場合でも、好適に反応が進行する。具体的には、イタコン酸(ITA)、イタコン酸ジメチル(Me2ITA)、イタコン酸モノブチル(BuITA)等のイタコン酸、そのモノアルキルエステル及びそのジアルキルエステルを挙げることができる。

【0033】
本発明には、2つ以上の二重結合(ビニル基、イソプロペニル基等)を有するモノマーも使用可能である。具体的には、例えば、ジエン系化合物(例えば、ブタジエン、イソプレン等)、アリル基を2つ有する化合物(例えば、ジアリルフタレート等)、メタクリル基を2つ有する化合物(例えば、エチレングリコールジメタクリレート)、アクリル基を2つ有する化合物(例えば、エチレングリコールジアクリレート)等である。

【0034】
本発明には、上述した以外のビニル系モノマーを使用することもできる。具体的には、例えばビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル)、上記以外のスチレン誘導体(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン)、N-ビニル化合物(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、マレイン酸及びその誘導体(例えば、無水マレイン酸)、ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニル)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1又は2-ブテン、1-ヘキセン、シクロヘキセン)等である。

【0035】
これらのラジカル重合性モノマーは単独で使用してもよいし、また、2種以上を併用してもよい。2種類以上のモノマーを使用する際は、反応開始時に同時に添加してもよく、又は重合の進行に伴い逐次添加してもよい。

【0036】
有機触媒の例としては、ヨウ素化合物からヨウ素原子を引き抜いて炭素ラジカルを生じさせうる化合物であり、大きく分類して有機リン化合物、有機窒素化合物、有機酸素化合物、有機硫黄化合物等からなる。

【0037】
有機リン化合物は、大きく分類してホスフィン化合物、ホスホネート化合物、ホスホニウム塩、ホスファゼニウム塩等からなる。

【0038】
ホスフィン化合物としてトリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等、ホスホネート化合物としてメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジフェニルエステル等、ホスホニウム塩としてメチルトリブチルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド等、ホスファゼニウム塩としてヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド等、ホスファイト化合物としてジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジフェニルホスファイト等である。

【0039】
有機窒素化合物は、大きく分類してアミン類、イミド類、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、アンモニウム塩類、ヨウ化アミン類、ヨウ化イミド類等からなる。

【0040】
アミン類は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、ジフェニルアミン等である。イミド類は、コハク酸イミド等である。またイミダゾリウム塩類は、1-メチル-3-メチル-イミダゾリウムヨーダイド、 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド等である。ピリジニウム塩類は、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨーダイド等である。アンモニウム塩類は、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムトリヨーダイド、テトラブチルアンモニウムブロモジヨーダイド等である。ヨウ化アミン類は、ヨウ化ジフェニルアミン等である。ヨウ化イミド類は、ヨウ化コハク酸イミド、ヨウ化マレイミド、ヨウ化フタルイミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン等である。

【0041】
有機酸素化合物は、大きく分類してフェノール類、アルコール類、フラン類等からなる。フェノール類は、2,4,6-トリメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノール、2,6-ジメチル-4-シアノフェノール、4-ニトロフェノール、フェノール、ビタミンE、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、4-t-ブチルカテコール、2-メトキシヒドロキノン、ヒドロキシヒドロキノン等である。アルコール類は、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、ビタミンC等である。フラン類は、フラン、オリゴフラン、ポリフラン等である。

【0042】
有機硫黄化合物は、大きく分類してチオフェン類、スルホニウム塩類等からなる。チオフェン類は、チオフェン、オリゴチオフェン、ポリチオフェン等である。スルホニウム塩類は、トリブチルスルホニウムヨーダイド等である。

【0043】
上述したリビングラジカル重合反応は、例えば以下の式(3)に示す化学式により表すことができる。

【0044】
【化5】
JP2018145262A_000006t.gif
・・・・・・・・・・・・・・(3)
m=2~10000

【0045】
式(1)で示される開始剤に、ラジカル重合性ポリマーを有機触媒下で反応させることにより、式(3)で示されるグラフトポリマーが生成することとなる。

【0046】
なお生成されるグラフトポリマーの化学構造式は、上述した式(3)に記載の構造と異なるものであってもよい。特にこの生成されるポリマーは、単独重合体(ホモポリマー)であってもよいし、共重合体(コポリマー、ターポリマー等)であってもよい。また生成される共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。

【0047】
このような式(1)で示される化合物を開始剤としてリビングラジカル重合反応を進行させることで、より安定的にグラフトポリマーを生成させることが可能となる。特に本発明によれば、リビングラジカル重合において開始剤や触媒として危険な過酸化物を用いる必要もなくなることから安全に反応を進行させることが可能となる。

【0048】
なお、本発明に係るリビングラジカル重合反応を進行させる上で、反応温度は特に限定されるものではないが、0℃~180℃が望ましく、より好適には30℃~120℃が望ましい。またこの反応温度は更に好適には40℃~80℃とされていることが望ましい。また反応時間は、30分~24時間の範囲で各反応に好適なものを適宜選択することができる。

【0049】
また本発明に係るリビングラジカル重合反応を無溶媒下で進行させるようにしてもよいが、溶媒を用いてもよい。かかる場合における反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限は無くいかなる溶媒を用いるようにしてもよい。この反応溶媒の例としては、従来におけるリビングラジカル重合に用いられていた溶媒をそのまま使用するようにしてもよい。具体的には、例えば水、エタノール等の各種アルコール類、エチレンカーボネート等のカーボネート類、酢酸ブチル等のエステル類、N,N-ジメチル 2-メトキシエチルアミド(DMMEA)、ジメチルホルアミド(DMF)等のアミド類、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)等のエーテル類等を用いることができる。

【0050】
また本発明に係るリビングラジカル重合反応の反応条件としては、空気が存在する条件下で行ってもよい。また必要に応じて窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で反応させるようにしてもよい。

【0051】
本発明を適用したグラフトポリマーの製造方法において、ヨウ素開始基を有する構造単位が連続する開始剤としてのヨウ素化ビニル系モノマー、ラジカル重合性モノマー及び有機触媒の混合物に対して、更に別の開始剤を加えて重合反応を行う態様としてもよい。

【0052】
この場合、別の開始剤としては、ラジカル反応に使用する公知のラジカル開始剤を使用することができる。この公知のラジカル開始剤の例としては、アゾ系ラジカル開始剤、過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。アゾ系ラジカル開始剤の具体例としては、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V65)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V70)、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V601)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V59)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(V40)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド](VF096)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAm110)が挙げられる。過酸化物系ラジカル開始剤の具体例としてはベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート(BPB)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート(PERKADOX16)、過酸化水素、過酸化二硫酸カリウムが挙げられる。これらのラジカル開始剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。

【0053】
また本発明は、式(3)に基づいて生成されるグラフトポリマーや、式(1)に示される開始剤として具現化されるものであってもよいことは勿論である。

【0054】
特に有機触媒によりビニル系モノマーとリビングラジカル重合させる開始剤として具現化される場合には下記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖中に有するものとする。

【0055】
【化6】
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・・・・・・・・・・・・(1)
ここでR1: -COO-(CH2)a-OCO-
2 、R3、R4、R5、R6 :水素原子、芳香族基、脂肪族基
a=2~5

【0056】
またR1:連結基(エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基、芳香族基)は、より好ましくは下記一般式(A)(式中、Z1,Z2は互いに独立に酸素原子、又は下記一般式(B)とされていてもよい。ここで、 R10は直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を示し、 R11は水素原子、又は脂肪族基を示す。

【0057】
【化7】
JP2018145262A_000008t.gif
・・・・・・・・・・・・・・一般式(A)

【0058】
【化8】
JP2018145262A_000009t.gif
・・・・・・・・・・・・・・一般式(B)

【0059】
またR1:連結基は、一般式(C)として具現化されるものであってもよい(式中Arは置換されていてもよい芳香族基を示す)。

【0060】
【化9】
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・・・・・・・・・・・・・・一般式(C)

【0061】
2、R3、R4、R5、R6、R11における脂肪族基は、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基を有する。脂肪族基が置換されている場合には、置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1又は複数である。

【0062】
また、脂肪族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0063】
2、R3、R4、R5、R6、R11における芳香族基は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、ビナフチリル基、アズレニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フラレニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。

【0064】
この芳香族基は置換されていてもよく、この場合の置換基の数は、置換可能であれば特に制限は無く、1又は複数である。

【0065】
また、芳香族基について置換してもよい基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1~12のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。

【0066】
以下、実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。下記実施例における分子量分布の測定方法は以下の通りである。

【0067】
[分子量分布測定]
分子量分布指数(以下、PDIと省略する)は、PDI=Mw/Mnにより示される数値である。ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。以下に示すMnとPDIは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC;Shodex社製GPC-101)を用い、10mmol/L臭化リチウムN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液あるいはテトラヒドロフラン(THF)を溶出液と用いた、標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算分子量である。

【0068】
式(1)で表される繰り返し単位が化4である化合物を合成した。 化4に表される繰り返し単位を主鎖中に有する化合物を、以下、PHEMA-EMA-Iと称する。PHEMA-EMA-Iの繰り返し単位の分子量は357である。実施例に先立ち、原料であるポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(以下、PHEMAと略記)の製造方法を参考例にて説明する。

【0069】
[主鎖ポリマー(PHEMA)の製造(参考例)]
撹拌機、温度計及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMDGと略記)を11質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)を100質量部、ヨウ素を0.2質量部、テトラn-ブチルアンモニウムヨージド(以下、Bu4NIと略記)を2.8質量部、開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)〔商品名:V-70(以下、V-70と略記)、和光純薬社製〕を1.5質量部添加した。そして、窒素ガスを導入しながら撹拌し、50℃に加温した。反応系を50℃に保ちながら3時間重合した。上記反応混合物を、貧溶媒であるヘキサンを用いて、再沈回収により精製し、PHEMAを得た。得られたPHEMAについては10mmol/L臭化リチウムN,N-ジメチルホルムアミド溶液を溶離液によるポリメチルメタクリレート換算でGPCにて分子量を測定した。

【0070】
上記参考例を基に作製したPHEMAを原料として、実施例1、実施例2においてPHEMA-EMA-Iの製造方法を説明する。

【0071】
【化10】
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・・・・・・・・・・・(4)
【実施例1】
【0072】
[主鎖ポリマー(PHEMA)への重合開始基の導入 第1法]
磁気撹拌子を入れた反応装置に、PHEMA(Mn=23000、PDI=1.41)を2g、ピリジン30mLを添加した後に、2‐ブロモイソブチリルブロミドを17.7g加えて20℃で30分撹拌した。上記反応混合物を、ろ過後に貧溶媒である水を用いて、再沈回収により精製した。次に、得られた析出物を5gはかり取り、アセトン15mL、ヨウ化ナトリウム(以下、NaIと略記)6.3gを加えた。そして、80℃で窒素雰囲気下、13.5時間撹拌した。生成する臭化ナトリウムをろ過した後、反応混合物を、貧溶媒である1重量%重亜硫酸ナトリウム水溶液を用いて、再沈回収により精製し、PHEMA-EMA-Iを収量3.9gで得た。THF溶媒によるGPCにて分子量を測定したところ、ポリメチルメタクリレート換算で、Mnが27000、PDIが1.51であった。
【実施例1】
【0073】
1H-NMR(400MHz、CDCl3)δ:4.33(t、2H)、4.21(t、2H)、2.12(s、6H)、2.03‐1.39(m、2H)、1.22‐0.81(m、3H)。
【実施例2】
【0074】
[主鎖ポリマー(PHEMA)への重合開始基の導入 第2法]
磁気撹拌子を入れた反応装置に、塩化メチレン200mL、PHEMA(Mn=17400、PDI=1.73)を20.8g、ピリジンを15.8g添加した後に、2‐ブロモイソブチリルブロミド44.1gと塩化メチレン50mLの混合物を加えて30分撹拌した。上記反応混合物を、ろ過後に貧溶媒であるメタノールを用いて、再沈回収により精製した。次に、得られた析出物を乾燥させた後に20gはかり取り、アセトニトリル140mL、NaI32.2gを加えた。そして、80℃で窒素雰囲気下、17時間撹拌した。生成する臭化ナトリウムをろ過した後、反応混合物を、貧溶媒であるメタノールを用いて、再沈回収により精製し、PHEMA-EMA-Iを収量20.3gで得た。THF溶媒によるGPCにて分子量を測定したところ、ポリメチルメタクリレート換算で、Mnが50000、PDIが1.4であった。
【実施例2】
【0075】
1H-NMR(400MHz、CDCl3)δ:4.33(t、2H)、4.18(t、2H)、2.10(s、6H)、2.03‐1.58(m、2H)、1.52‐0.62(m、3H)。
【実施例3】
【0076】
実施例3で重合開始基を導入したPHEMA-EMA-Iを基にしたグラフトポリマーの製造法を説明する。
【実施例3】
【0077】
[グラフトポリマーの製造]
モノマーとして、ヘキシルメタクリレート(HMA)を7.1534g、ヨウ化アルキルとして、PHEMA-EMA-I(Mn=27000、PDI=1.51)を0.300g、触媒として、テトラブチルアンモニウムヨーダイド(以下、Bu4NIと略記)を0.1522g、溶媒として、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMDGと略記)を4.9689g、100mLナスフラスコ中で混合し、アルゴンにて残存酸素を置換し、この反応溶液を80℃に加熱することにより重合反応を行った。反応時間は、6時間であった。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、モノマーの重合率は44%だった。THF溶媒によるGPCにて分子量を測定したところ、ポリメチルメタクリレート換算で、Mnが300000、PDIが3.3であった。