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明細書 :近傍界測定装置及び近傍界測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-211245 (P2019-211245A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 近傍界測定装置及び近傍界測定方法
国際特許分類 G01R  29/10        (2006.01)
H04L  27/26        (2006.01)
FI G01R 29/10 B
H04L 27/26 114
G01R 29/10 E
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-105113 (P2018-105113)
出願日 平成30年5月31日(2018.5.31)
発明者または考案者 【氏名】布施 匡章
【氏名】野田 華子
【氏名】原田 博司
【氏名】水谷 圭一
【氏名】横山 梨一
出願人 【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100072604、【弁理士】、【氏名又は名称】有我 軍一郎
【識別番号】100140501、【弁理士】、【氏名又は名称】有我 栄一郎
審査請求 未請求
要約 【課題】被測定アンテナの近傍界での振幅分布及び位相分布を、測定信号の切り替えを行うことなく広帯域にわたって取得できる近傍界測定装置及び近傍界測定方法を提供する。
【解決手段】被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号を受信するプローブアンテナ12と、走査ラインごとにプローブアンテナ12で受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信部15と、マルチキャリア信号がプローブアンテナ12により受信された際の測定平面P上におけるプローブアンテナ12の位置に対応付けて複素ベースバンド信号を記憶する記憶部16と、記憶部16に記憶された複素ベースバンド信号から、複数のサブキャリアに含まれるRSを抽出する抽出部17と、抽出部17により抽出されたRSの振幅変動量及び位相変動量を算出する振幅位相変動量算出部18と、を備える。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
サブフレームが時系列に複数並んで1フレームが構成され、前記サブフレームが複数のサブキャリアに既知の基準信号を含むマルチキャリア信号を送信する被測定アンテナ(100)に対して近傍界測定を行う近傍界測定装置(1)であって、
前記マルチキャリア信号を受信するプローブアンテナ(12)と、
前記プローブアンテナを近傍界の測定平面上で移動させるプローブ走査機構(13)と、
前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナが連続的に移動されている状態で、前記プローブアンテナで受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信部(15)と、
前記マルチキャリア信号が前記プローブアンテナにより受信された際の前記測定平面上における前記プローブアンテナの位置と、時系列に並んだ各前記サブフレームとを対応付けて前記複素ベースバンド信号を記憶する記憶部(16)と、
前記記憶部に記憶された前記複素ベースバンド信号から、各前記サブフレームの前記複数のサブキャリアに含まれる前記基準信号を抽出する抽出部(17)と、
前記抽出部により抽出された前記基準信号の振幅変動量及び位相変動量を算出する振幅位相変動量算出部(18)と、
前記振幅位相変動量算出部により算出された前記振幅変動量と、前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出する振幅位相算出部(20)と、を備えることを特徴とする近傍界測定装置。
【請求項2】
前記プローブ走査機構(13)は、前記プローブアンテナを第1の軸、又は、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿って移動させる機構を有し、
前記受信部は、前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナを前記第1の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる走査を前記第2の軸の複数の箇所について繰り返す第1の走査と、前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナを前記第2の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる第2の走査と、のいずれかが実行されている状態で、前記マルチキャリア信号を前記複素ベースバンド信号に変換し、
前記第1の走査に関して前記振幅位相変動量算出部により算出された前記位相変動量を、前記第2の走査に関して前記振幅位相変動量算出部により算出された前記位相変動量に応じて補正する位相結合部(19)を更に備え、
前記振幅位相算出部は、前記振幅位相変動量算出部により算出された前記振幅変動量と、前記位相結合部により補正された前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出することを特徴とする請求項1の近傍界測定装置。
【請求項3】
前記マルチキャリア信号がOFDM信号であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の近傍界測定装置。
【請求項4】
前記抽出部は、
前記第1の軸の方向又は前記第2の軸の方向への走査ラインごとに得られた前記複素ベースバンド信号の系列を前記記憶部から読み出し、読み出した前記複素ベースバンド信号の系列のOFDM変調のシンボルタイミングを推定することにより、各前記サブフレームの先頭位置を検出する先頭位置検出部(17a)と、
前記先頭位置検出部により検出された前記先頭位置に基づいて、前記サブフレームごとにOFDMシンボルを切り出し、切り出した前記OFDMシンボルに対してFFT処理を行うことにより、前記基準信号を抽出するFFT処理部(17b)と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の近傍界測定装置。
【請求項5】
前記先頭位置検出部は、前記記憶部に記憶された前記複素ベースバンド信号の系列の中で、前記第1の軸の方向又は前記第2の軸の方向への走査ラインごとに最も振幅の大きいデータを含む所定範囲のデータに対して、OFDM変調のシンボルタイミングを推定することを特徴とする請求項4に記載の近傍界測定装置。
【請求項6】
前記振幅位相算出部により算出された振幅及び位相の値を用いて、遠方界の指向性を算出する遠方界指向性算出部(21)を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の近傍界測定装置。
【請求項7】
サブフレームが時系列に複数並んで1フレームが構成され、前記サブフレームが複数のサブキャリアに既知の基準信号を含むマルチキャリア信号を送信する被測定アンテナ(100)に対して近傍界測定を行う近傍界測定方法であって、
前記マルチキャリア信号を受信するプローブアンテナ(12)を近傍界の測定平面上で移動させるプローブ走査ステップ(S2,S8,S9)と、
前記プローブ走査ステップにより前記プローブアンテナが連続的に移動されている状態で、前記プローブアンテナで受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信ステップ(S3,S10)と、
前記マルチキャリア信号が前記プローブアンテナにより受信された際の前記測定平面上における前記プローブアンテナの位置と、時系列に並んだ各前記サブフレームとを対応付けて前記複素ベースバンド信号を記憶する記憶ステップ(S4,S11)と、
前記記憶ステップにより記憶された前記複素ベースバンド信号から、各前記サブフレームの前記複数のサブキャリアに含まれる前記基準信号を抽出する抽出ステップ(S5,S12)と、
前記抽出ステップにより抽出された前記基準信号の振幅変動量及び位相変動量を算出する振幅位相変動量算出ステップ(S6,S13)と、
前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記振幅変動量と、前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出する振幅位相算出ステップ(S15)と、を含むことを特徴とする近傍界測定方法。
【請求項8】
前記プローブ走査ステップは、前記プローブアンテナを第1の軸、又は、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿って移動させるステップであり、
前記受信ステップは、前記プローブアンテナを前記第1の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる走査を前記第2の軸の複数の箇所について繰り返す第1の走査と、前記プローブアンテナを前記第2の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる第2の走査と、のいずれかが実行されている状態で、前記マルチキャリア信号を前記複素ベースバンド信号に変換し、
前記第1の走査に関して前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記位相変動量を、前記第2の走査に関して前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記位相変動量に応じて補正する位相結合ステップ(S14)を更に含み、
前記振幅位相算出ステップは、前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記振幅変動量と、前記位相結合ステップにより補正された前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出することを特徴とする請求項7の近傍界測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、近傍界測定装置及び近傍界測定方法に関し、特に、アンテナの特性を近傍界測定法を用いて測定する近傍界測定装置及び近傍界測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナの指向性を算出するため、アンテナの電界強度分布を近傍界領域で近傍界測定法(Near Field Measurement:NFM)により測定する装置として、図8に示すように、被測定アンテナ200の近傍で測定用アンテナ31を走査し、2次元の測定平面P内の近傍の電界を測定する近傍界測定装置10が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
NFMは、アンテナ近傍における電磁界の位相及び振幅を測定し、電磁界理論に基づいた計算処理(2次元逆フーリエ変換処理)を行うことで、被測定アンテナの遠方界での指向性を算出する手法である。
【0004】
従来、NFMでは、位相及び振幅を同時に測定可能なVNA(Vector Network Analyzer)32が用いられていたため、基本的には単一周波数の信号(CW信号)を用いて測定することが一般的であった。
【0005】
しかしながら、従来のNFMではVNA32を被測定アンテナ200に接続して測定を行うため、アンテナと一体化した基地局に対しては指向性の測定が困難であった。また、Massive MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれるアレーアンテナは、多数のアンテナ素子から構成されているため、実装面積やコストの点から、VNA32を接続可能なアンテナコネクタを設けず、アンテナが一体化した基地局設計が主流となると考えられる。
【0006】
そのため、VNA32などの測定器をアンテナに接続する測定ではなく、アンテナから単一周波数のCW(Continuous Wave)信号を送信し、それをSA(Spectrum Analyzer)などの測定器を用いて受信することで、指向性算出に必要な近傍界の位相・振幅情報を得る手法が研究されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-196763号公報
【特許文献2】特許第3491038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、CW信号を用いる上記の方法では、一度に単一周波数におけるアンテナの指向性しか算出できない。例えば、次世代無線方式(5G)では100MHzを超える広帯域な信号の利用が検討されており、アンテナの指向性の周波数特性の把握も重要となるが、CW信号を用いた測定では、アンテナの指向性の周波数特性を算出するためにCW信号の周波数を変えながら繰り返し測定する必要があり、非効率であるという課題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、被測定アンテナの近傍界での振幅分布及び位相分布を、測定信号の切り替えを行うことなく広帯域にわたって取得できる近傍界測定装置及び近傍界測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る近傍界測定装置は、サブフレームが時系列に複数並んで1フレームが構成され、前記サブフレームが複数のサブキャリアに既知の基準信号を含むマルチキャリア信号を送信する被測定アンテナに対して近傍界測定を行う近傍界測定装置であって、前記マルチキャリア信号を受信するプローブアンテナと、前記プローブアンテナを近傍界の測定平面上で移動させるプローブ走査機構と、前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナが連続的に移動されている状態で、前記プローブアンテナで受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信部と、前記マルチキャリア信号が前記プローブアンテナにより受信された際の前記測定平面上における前記プローブアンテナの位置と、時系列に並んだ各前記サブフレームとを対応付けて前記複素ベースバンド信号を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記複素ベースバンド信号から、各前記サブフレームの前記複数のサブキャリアに含まれる前記基準信号を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記基準信号の振幅変動量及び位相変動量を算出する振幅位相変動量算出部と、前記振幅位相変動量算出部により算出された前記振幅変動量と、前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出する振幅位相算出部と、を備える構成である。
【0011】
この構成により、本発明に係る近傍界測定装置は、被測定アンテナの近傍界での振幅分布及び位相分布を測定信号を切り替えることなく広帯域にわたって取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る近傍界測定装置においては、前記プローブ走査機構は、前記プローブアンテナを第1の軸、又は、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿って移動させる機構を有し、前記受信部は、前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナを前記第1の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる走査を前記第2の軸の複数の箇所について繰り返す第1の走査と、前記プローブ走査機構により前記プローブアンテナを前記第2の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる第2の走査と、のいずれかが実行されている状態で、前記マルチキャリア信号を前記複素ベースバンド信号に変換し、前記第1の走査に関して前記振幅位相変動量算出部により算出された前記位相変動量を、前記第2の走査に関して前記振幅位相変動量算出部により算出された前記位相変動量に応じて補正する位相結合部を更に備え、前記振幅位相算出部は、前記振幅位相変動量算出部により算出された前記振幅変動量と、前記位相結合部により補正された前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出する構成であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る近傍界測定装置においては、前記マルチキャリア信号がOFDM信号であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明に係る近傍界測定装置は、OFDM信号の複数のサブキャリアに含まれる基準信号を用いて近傍界測定を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る近傍界測定装置においては、前記抽出部は、前記第1の軸の方向又は前記第2の軸の方向への走査ラインごとに得られた前記複素ベースバンド信号の系列を前記記憶部から読み出し、読み出した前記複素ベースバンド信号の系列のOFDM変調のシンボルタイミングを推定することにより、各前記サブフレームの先頭位置を検出する先頭位置検出部と、前記先頭位置検出部により検出された前記先頭位置に基づいて、前記サブフレームごとにOFDMシンボルを切り出し、切り出した前記OFDMシンボルに対してFFT処理を行うことにより、前記基準信号を抽出するFFT処理部と、を含む構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る近傍界測定装置は、被測定アンテナから送信されたOFDM信号の複素ベースバンド信号から、複数のサブキャリアに含まれる基準信号を抽出することができる。
【0017】
また、本発明に係る近傍界測定装置においては、前記先頭位置検出部は、前記記憶部に記憶された前記複素ベースバンド信号の系列の中で、前記第1の軸の方向又は前記第2の軸の方向への走査ラインごとに最も振幅の大きいデータを含む所定範囲のデータに対して、OFDM変調のシンボルタイミングを推定する構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る近傍界測定装置は、被測定アンテナから送信されたOFDM信号に含まれる基準信号を精度良く抽出することができる。
【0019】
また、本発明に係る近傍界測定装置は、前記振幅位相算出部により算出された振幅及び位相の値を用いて、遠方界の指向性を算出する遠方界指向性算出部を更に備える構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る近傍界測定装置は、被測定アンテナを物理的に接続することなく、被測定アンテナから送信されたマルチキャリア信号に対して近傍界測定法を用いた測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる。
【0021】
また、本発明に係る近傍界測定方法は、サブフレームが時系列に複数並んで1フレームが構成され、前記サブフレームが複数のサブキャリアに既知の基準信号を含むマルチキャリア信号を送信する被測定アンテナに対して近傍界測定を行う近傍界測定方法であって、前記マルチキャリア信号を受信するプローブアンテナを近傍界の測定平面上で移動させるプローブ走査ステップと、前記プローブ走査ステップにより前記プローブアンテナが連続的に移動されている状態で、前記プローブアンテナで受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信ステップと、前記マルチキャリア信号が前記プローブアンテナにより受信された際の前記測定平面上における前記プローブアンテナの位置と、時系列に並んだ各前記サブフレームとを対応付けて前記複素ベースバンド信号を記憶する記憶ステップと、前記記憶ステップにより記憶された前記複素ベースバンド信号から、各前記サブフレームの前記複数のサブキャリアに含まれる前記基準信号を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにより抽出された前記基準信号の振幅変動量及び位相変動量を算出する振幅位相変動量算出ステップと、前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記振幅変動量と、前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出する振幅位相算出ステップと、を含む構成である。
【0022】
この構成により、本発明に係る近傍界測定方法は、被測定アンテナの近傍界での振幅分布及び位相分布を測定信号を切り替えることなく広帯域にわたって取得することができる。
【0023】
また、本発明に係る近傍界測定方法においては、前記プローブ走査ステップは、前記プローブアンテナを第1の軸、又は、前記第1の軸に直交する第2の軸に沿って移動させるステップであり、前記受信ステップは、前記プローブアンテナを前記第1の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる走査を前記第2の軸の複数の箇所について繰り返す第1の走査と、前記プローブアンテナを前記第2の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる第2の走査と、のいずれかが実行されている状態で、前記マルチキャリア信号を前記複素ベースバンド信号に変換し、前記第1の走査に関して前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記位相変動量を、前記第2の走査に関して前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記位相変動量に応じて補正する位相結合ステップを更に含み、前記振幅位相算出ステップは、前記振幅位相変動量算出ステップにより算出された前記振幅変動量と、前記位相結合ステップにより補正された前記位相変動量に基づいて、前記マルチキャリア信号の前記測定平面における振幅及び位相を算出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、被測定アンテナの近傍界での振幅分布及び位相分布を測定信号を切り替えることなく広帯域にわたって取得できる近傍界測定装置及び近傍界測定方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】FDD方式のLTEの無線フレームの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る近傍界測定装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る近傍界測定装置が備えるプローブ走査機構による測定平面上での走査を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る近傍界測定装置が備える先頭位置検出部による同期処理を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る近傍界測定装置が備える先頭位置検出部によるサブフレームの先頭の検出処理を説明するための図である。
【図6】測定平面上においてRSを受信可能な位置を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る近傍界測定装置を用いる近傍界測定方法の処理を示すフローチャートである。
【図8】従来の近傍界測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る近傍界測定装置及び近傍界測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態に係る近傍界測定装置は、例えば複数のアンテナ素子を含むMassive-MIMOアンテナなどのアレーアンテナを備える基地局から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界の指向性を算出するものである。

【0027】
本実施形態の近傍界測定装置により測定される無線信号は、例えば、サブフレームが時系列に複数並んで1フレームが構成され、サブフレームが複数のサブキャリアに既知の基準信号を含むマルチキャリア信号である。このようなマルチキャリア信号の例としては、FDD(Frequency Division Duplex)方式のLTE(Long-Term Evolution)の下りリンクで採用されているCP-OFDM(Cyclic Prefix-based OFDM)信号、上りリンクで採用されているDFTs-OFDM信号、あるいはGFDMやFBMCなどが挙げられる。

【0028】
図1(a)に示すように、FDD方式のLTEの無線フレームは、そのフレーム長が10msであり、1msのサブフレーム10個で構成される。1サブフレームは更に2つのスロットで構成され、各スロットはCP(Cyclic Prefix)を含むいくつかのOFDMシンボルで構成される。例えば、ノーマルCPの1スロットは7個のOFDMシンボルで構成される。また、LTEではサブキャリア間隔として15kHzが用いられ、シンボル時間は66.7μsである。ノーマルCPのCP長は4.7μs(先頭シンボルのみ5.1μs)である。本実施形態では、簡単のため先頭シンボルを含む全てのCP長を4.7μsに統一している。

【0029】
LTEの下りリンク伝送での物理リソース構成を図1(b)に示す。1OFDMシンボル内の1サブキャリアに対応する物理リソースを1リソースエレメント(Resource Element:RE)と呼び、REを1スロット×12サブキャリアでブロック化したものをリソースブロック(Resource Block:RB)と呼ぶ。LTEの下りリンクでは、6個から110個までのRBを割り当て可能であり、それにより柔軟な伝送帯域幅を実現している。なお、本実施形態では1OFDMシンボル当たりのサブキャリア数が300、つまりRBを25個割り当てたOFDMを想定している。この場合、伝送帯域幅は5MHzであり、サンプリング周波数は7.68MHzである。

【0030】
LTE方式では、各サブキャリアのチャネル変動(位相及び振幅変動)を推定するため、下りリンク基準信号(Reference Signal:RS)と呼ばれる既知の基準シンボルがREに割り当てられており、受信端末はこのRSを用いてチャネル推定を行う。下りリンクでは3種類のRSが定義されている。その中で、セル固有のRSは全ての下りリンクサブフレームで送信されており、下りリンク信号の全帯域にわたって等間隔に配置されている。具体的にはセル固有のRSは、図1(b)に示すように、各RBに4つ、第1OFDMシンボルと第5OFDMシンボルに6サブキャリア間隔で配置されている。セルによって用いるRS配置及びRS系列は異なる。本実施形態では、RS配置は図1(b)に示す配置であり、また、RS系列の変調方式はQPSKである。

【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、支持部11と、プローブアンテナ12と、プローブ走査機構13と、走査制御部14と、受信部15と、記憶部16と、抽出部17と、振幅位相変動量算出部18と、位相結合部19と、振幅位相算出部20と、遠方界指向性算出部21と、表示部22と、操作部23と、制御部24と、を備える。

【0032】
支持部11は、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aが所定方向に向くように、基地局110を支持するようになっている。ここで、被測定アンテナ100は、例えば基地局110と一体化したMassive-MIMOアンテナなどのアレーアンテナである。

【0033】
プローブアンテナ12は、被測定アンテナ100の近傍界領域の所定の測定平面P内において、被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号の電磁波を受信するようになっている。測定平面Pは、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aに対して、被測定アンテナ100から送信されるマルチキャリア信号の3波長程度離れた距離で平行に設けられる。測定平面Pのサイズは、例えば500mm×500mmである。

【0034】
例えば、プローブアンテナ12は、マイクロ波又はミリ波帯の所定周波数範囲の電磁波を伝搬させる導波路を有し、先端が開放された導波管である。このような導波管としては、導波路の断面形状が長方形の方形導波管や、導波路の断面形状が両側部の高さに対して中央部の高さが小となるダブルリッジ導波管を用いることができる。

【0035】
プローブ走査機構13は、走査制御部14からの制御信号に応じて、プローブアンテナ12を被測定アンテナ100の電磁波放射面100aに対向する近傍界の測定平面P上で第1の軸、又は、第1の軸に直交する第2の軸に沿って移動させる機構を有している。具体的には、プローブ走査機構13は、プローブアンテナ12を第1の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる走査を第2の軸の複数の箇所について繰り返す第1の走査と、プローブアンテナ12を第2の軸に沿って所定距離だけ連続的に移動させる第2の走査と、を実行する。例えば、第1の軸の方向はX軸方向であり、第2の軸の方向はY軸方向である。また、例えば、プローブ走査機構13による走査速度は90mm/sであり、X軸方向の走査時間は6秒である。

【0036】
図3は、測定平面P上でのプローブ走査機構13による走査を説明するための図である。プローブ走査機構13によるX軸方向の走査(第1の走査)のY軸方向の間隔(ΔY)は、従来のNFM測定技術と同様、測定周波数(変調波の場合、変調周波数帯域の上限)の波長の1/2以下であることが必要である。また、プローブ走査機構13によるY軸方向の走査(第2の走査)は、測定平面Pの中央付近を縦断して、X軸方向の全ての走査ラインと交差するように行われる。

【0037】
プローブ走査機構13による走査速度が90mm/sの場合には、マルチキャリア信号の1サブフレームが、1msの期間に測定平面P上の90μmの範囲にわたってプローブアンテナ12に連続的に受信されることになる。

【0038】
走査制御部14は、プローブ走査機構13に対して、上記の第1の走査及び第2の走査を実行させる制御を行うようになっている。また、走査制御部14は、測定平面P内のプローブアンテナ12が存在する位置の位置情報を受信部15や記憶部16に送出するようになっている。

【0039】
受信部15は、プローブ走査機構13により上記の第1の走査又は第2の走査が実行されてプローブアンテナ12が連続的に移動されている状態で、プローブアンテナ12で受信されたマルチキャリア信号をアナログのベースバンド信号にダウンコンバートした後に直交検波し、直交検波したアナログのベースバンド信号をアナログディジタル変換(A/D)によってディジタルの複素ベースバンド信号に変換する受信処理を行うようになっている。受信部15は、スペクトラムアナライザやオシロスコープなどにより構成することが可能である。

【0040】
記憶部16は、マルチキャリア信号がプローブアンテナ12により受信された際の測定平面P上の位置と、時系列に並んだ各サブフレームとを対応付けて、受信部15により受信処理された複素ベースバンド信号を記憶するようになっている。

【0041】
抽出部17は、先頭位置検出部17aと、FFT処理部17bとを含み、記憶部16に記憶された複素ベースバンド信号から、各サブフレームの複数のサブキャリアに含まれるRSを抽出するようになっている。RSをサブフレームから取り出すには、シンボルタイミングの同期、つまりサブフレームの先頭を見つける必要がある。

【0042】
先頭位置検出部17aは、プローブ走査機構13による第1の軸の方向又は第2の軸の方向への走査ラインごとに受信部15により得られた複素ベースバンド信号の系列を記憶部16から読み出し、読み出した複素ベースバンド信号の系列のOFDM変調のシンボルタイミングを同期処理により推定することにより、各サブフレームの先頭位置を検出するようになっている。

【0043】
図1(a)に示すように、LTEの無線フレームでは、シンボルタイミングの同期のために、プライマリ同期信号(Primary Synchronization Signal:PSS)と呼ばれる符号系列が用いられている。FDD方式の場合、PSSは5サブフレームおきに挿入されており、同期処理(相関処理等)によりPSSが存在するフレームの先頭位置を検出することができる。

【0044】
具体的に説明すると、PSSは0番目と5番目のサブフレームの1スロット目の最後のOFDMシンボルにおいて中心に位置する73サブキャリアに挿入されている。この73サブキャリアのうち両端の5サブキャリアには複素信号における"0"が割り当てられている。一方、中心の63サブキャリアには時間領域と周波数領域で電力が一定なZC(Zadoff-Chu)系列が用いられているため、あらかじめZC系列をOFDM変調した系列をリファレンスとし、被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号の系列との相互相関を取ることで、フレームの先頭位置を検出することができる。

【0045】
図4は、先頭位置検出部17aによる同期処理を説明するためのグラフである。本来のCP-OFDM信号ではPSSが5サブフレームおきに挿入されているが、この例では、全サブフレームにPSSが挿入されたマルチキャリア信号を用いている。図4(a)は、このマルチキャリア信号の複素ベースバンド信号の4000サブフレーム分の波形を示している。図4(b)は、時間軸でのPSSの波形を示している。図4(c)は、図4(a)の波形と図4(b)の波形の相互相関の波形を示している。図4(c)において一定間隔のピークが存在することから、先頭位置検出部17aにより正しく同期ができることが分かる。

【0046】
近傍界測定装置1においては、1走査ラインにつき、走査時間T秒間にわたってCP-OFDM信号をキャプチャしたデータが得られる。同期は、既に述べたとおり先頭位置検出部17aにて受信系列とPSSとの相互相関を取ることで行われる。

【0047】
しかしながら、全受信系列に対して同期処理を行うと莫大な計算量になる。また、被測定アンテナ100の特性によっては、被測定アンテナ100とプローブアンテナ12間の位置関係により振幅レベルが低くなる場合もある。

【0048】
そこで、十分な同期精度を得られるように、先頭位置検出部17aは、記憶部16に記憶されたCP-OFDM信号の複素ベースバンド信号の系列の中で、第1の軸の方向又は第2の軸の方向への走査ラインごとに最も振幅の大きいデータを含む所定範囲のデータを取り出し、それらの系列に対してPSSとの相互相関処理を行い、まず1サブフレームの先頭を特定する。ここで、「所定範囲のデータ」とは、例えば、各走査ラインに関して最も振幅の大きいデータの前後1ms分のデータである。

【0049】
具体的には、先頭位置検出部17aは、特定された先頭の情報と、サブフレームにおいて第7OFDMシンボルにPSSが挿入されているという情報に基づき、相互相関の値が最大となった時間から7OFDMシンボルに相当する時間(実際にはデータ数)を遡ることで、図5の上段に示すように1サブフレームの先頭を特定する。

【0050】
さらに、先頭位置検出部17aは、走査時間T秒間の系列の中での任意のサブフレームの先頭を求めた後、サブフレーム長が1msであることを利用して、図5の下段に示すように受信したT×1000個のサブフレームの先頭を検出する。

【0051】
このようにして、図6に示すように、測定平面P上においてRSを受信できる位置が分かる。なお、図6は、プローブ走査機構13による走査速度を90mm/sとした場合の、測定平面P上のX軸方向の走査ライン上におけるRSの配置を示している。Y軸方向の走査ライン上におけるRSの配置も同様である。

【0052】
FFT処理部17bは、先頭位置検出部17aにより検出された各サブフレームの先頭位置に基づいて、サブフレームごとにOFDMシンボルを切り出し、切り出したOFDMシンボルからCPを除去する。さらに、FFT処理部17bは、CPが除去されたOFDMシンボルをFFT処理により復調して、任意のRSを抽出するようになっている。

【0053】
振幅位相変動量算出部18は、抽出部17により抽出されたRSのチャネル変動量、すなわち振幅変動量及び位相変動量を算出するようになっている。受信部15により受信処理された複素ベースバンド信号の帯域内には等間隔でRSが配置されているため、振幅位相変動量算出部18は、このRSを用いて振幅変動量及び位相変動量を推定することで、一度に複数の周波数における振幅位相分布を取得することができる。

【0054】
ここで、第i番目のOFDMシンボルの第k番目のサブキャリアにおいて、既知のRSをs(k,i)、受信部15により受信処理された複素ベースバンド信号のRS(受信シンボル)をr(k,i)とすると、その受信シンボルのチャネル変動量h(k,i)は下記の式(1)で表される。
【数1】
JP2019211245A_000003t.gif

【0055】
式(1)において、A(k,i)は振幅変動量、θ(k,i)は位相変動量である。すなわち、h(k,i)は、NFMに必要となる相対的な振幅位相分布として利用することができる。つまり、h(k,i)を測定平面P上で取得し、近傍界遠方界変換を行うことで、第k番目のサブキャリアの周波数における指向性を求めることができる。さらに、内挿補間・外挿補間を用いれば、任意のサブキャリア周波数における指向性も算出することが可能である。

【0056】
例えば、振幅位相変動量算出部18は、1サブフレームにつき1つのRSを取り出してチャネル変動を計算する。走査時間T秒間でプローブアンテナ12により受信されるサブフレームはT×1000個であるため、T×1000個のチャネル変動系列が得られる。上記で述べたように、このチャネル変動系列はNFMにおける振幅位相分布とみなすことができる。

【0057】
また、振幅位相変動量算出部18が1サブフレームの中で使用するRSは、例えば、PSSが割り当てられたシンボルに最も近い第8OFDMシンボルのRSであるが、その他のRSであってもよい。なお、振幅位相変動量算出部18は、各走査ラインについて得られた振幅変動量及び位相変動量のデータを、測定周波数の波長の1/2以下を保つ範囲で適宜間引いて、後段の位相結合部19や振幅位相算出部20に出力してもよい。

【0058】
位相結合部19は、第1の走査に関して振幅位相変動量算出部18により算出された位相変動量を、第2の走査に関して振幅位相変動量算出部18により算出された位相変動量に応じて補正する位相結合処理を行うようになっている。

【0059】
例えば、位相結合部19は、X軸方向の各走査ラインに関して図3中の黒丸で示す位置で得られた位相変動量が、Y軸方向の走査ラインに関して図3中の黒丸で示す位置で得られた位相変動量exp(jθ(y))に一致するように、X軸方向の走査ラインごとに位相変動量を同一の位相量で回転させる処理を行う。

【0060】
なお、受信部15は、走査制御部14から出力されるプローブアンテナ12の位置情報の信号をマルチキャリア信号の取り込みのトリガ信号としている。しかしながら、トリガ信号の遅延や、プローブ走査機構13の精度や、受信部15のトリガディレイなどにより、プローブアンテナ12の位置情報を受信部15が正確に取得できず、Y軸方向の走査ライン上で位相変動量が得られた位置において、X軸方向の走査ライン上での位相変動量を正しく抽出できない場合がある。このような場合には、位相結合部19による上記の位相結合処理において若干の誤差が生じることになる。

【0061】
そこで、位相結合部19は、Y軸方向の走査ライン上での振幅変動量と、Y軸方向の走査ラインと交差するX軸方向の走査ライン上での振幅変動量との誤差(遅延量)を相互相関処理により算出するようになっていてもよい。位相結合部19は、算出した遅延量を用いて再度、Y軸方向の走査ラインに関して得られた位相変動量から、各X軸方向の走査ラインにおける位相変動量のデータを抽出し直すことで、位相結合の精度を向上させることができる。

【0062】
振幅位相算出部20は、振幅位相変動量算出部18により算出された振幅変動量と、位相結合部19により補正された位相変動量に基づいて、被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号の測定平面Pにおける振幅及び位相を算出するようになっている。すなわち、振幅位相変動量算出部18及び位相結合部19により得られた振幅変動量及び位相変動量は既知のRSに対する相対値であるため、振幅位相算出部20は、これらの値を適宜換算して振幅及び位相として出力する。

【0063】
遠方界指向性算出部21は、走査制御部14から出力されたプローブアンテナ12の位置情報と、振幅位相算出部20により算出された振幅及び位相の値とを用いて、遠方界の指向性を算出するようになっている。ここでは、公知の近傍界/遠方界変換法の数値計算を行うことにより遠方界の電界強度分布を推定して、被測定アンテナ100の遠方界での指向性を求めることができる。

【0064】
表示部22は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部24からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、被測定アンテナ100の電磁波放射面100aにおける振幅及び位相の測定結果や、被測定アンテナ100の遠方界における指向性の算出結果などが含まれる。さらに、表示部22は、測定条件などを設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。

【0065】
操作部23は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部22の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部23は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。

【0066】
制御部24は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、近傍界測定装置1を構成する上記各部の動作を制御する。

【0067】
なお、抽出部17、振幅位相変動量算出部18、位相結合部19、振幅位相算出部20、及び遠方界指向性算出部21は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、制御部24による所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、抽出部17、振幅位相変動量算出部18、位相結合部19、振幅位相算出部20、及び遠方界指向性算出部21は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。

【0068】
以下、本実施形態の近傍界測定装置1を用いる近傍界測定方法について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。

【0069】
まず、被測定アンテナ100はマルチキャリア信号を送信する(ステップS1)。

【0070】
次に、プローブ走査機構13は、プローブアンテナ12を被測定アンテナ100の電磁波放射面100aに対向する近傍界の測定平面P上で第1の軸の方向(例えばX軸方向)に1走査ライン分連続的に移動させる走査を開始する(プローブ走査ステップS2)。

【0071】
次に、受信部15は、プローブ走査ステップS2によりプローブアンテナ12が連続的に移動されている状態で、プローブアンテナ12で受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する(受信ステップS3)。

【0072】
次に、記憶部16は、マルチキャリア信号がプローブアンテナ12により受信された際の測定平面P上におけるプローブアンテナ12の位置と、時系列に並んだ各サブフレームとを対応付けて複素ベースバンド信号を記憶する(記憶ステップS4)。

【0073】
次に、抽出部17は、第1の軸の方向への走査ラインごとに得られた複素ベースバンド信号の系列を記憶部16から読み出し、読み出した複素ベースバンド信号の系列から、各サブフレームの複数のサブキャリアに含まれるRSを抽出する(抽出ステップS5)。

【0074】
次に、振幅位相変動量算出部18は、抽出ステップS5により抽出されたRSの振幅変動量及び位相変動量を算出する(振幅位相変動量算出ステップS6)。

【0075】
次に、制御部24は、第1の軸の方向の全ての走査ラインについて走査が完了したか否かを判断する(ステップS7)。否定判断の場合にはステップS8に進み、肯定判断の場合にはステップS9に進む。

【0076】
ステップS8においてプローブ走査機構13は、第1の軸の方向に直交する第2の軸の方向にプローブアンテナ12を移動させて、プローブアンテナ12を次の第1の軸の方向の走査ライン上に配置し(プローブ走査ステップS8)、ステップS2に戻る。

【0077】
ステップS9においてプローブ走査機構13は、プローブアンテナ12を測定平面P上で第2の軸の方向(例えばY軸方向)に1走査ライン分連続的に移動させる走査を開始する(プローブ走査ステップS9)。

【0078】
次に、受信部15は、プローブ走査ステップS9によりプローブアンテナ12が連続的に移動されている状態で、プローブアンテナ12で受信されたマルチキャリア信号をディジタルの複素ベースバンド信号に変換する(受信ステップS10)。

【0079】
次に、記憶部16は、マルチキャリア信号がプローブアンテナ12により受信された際の測定平面P上におけるプローブアンテナ12の位置と、時系列に並んだ各サブフレームとを対応付けて複素ベースバンド信号を記憶する(記憶ステップS11)。

【0080】
次に、抽出部17は、第2の軸の方向への走査ラインごとに得られた複素ベースバンド信号の系列を記憶部16から読み出し、読み出した複素ベースバンド信号の系列から、各サブフレームの複数のサブキャリアに含まれるRSを抽出する(抽出ステップS12)。

【0081】
次に、振幅位相変動量算出部18は、抽出ステップS12により抽出されたRSの振幅変動量及び位相変動量を算出する(振幅位相変動量算出ステップS13)。

【0082】
次に、位相結合部19は、第1の軸の方向への走査ラインに関して振幅位相変動量算出ステップS6により算出された位相変動量を、第2の軸の方向への走査ラインに関して振幅位相変動量算出ステップS13により算出された位相変動量に応じて補正する(位相結合ステップS14)。

【0083】
次に、振幅位相算出部20は、振幅位相変動量算出ステップS6により算出された振幅変動量と、位相結合ステップS14により補正された位相変動量に基づいて、被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号の測定平面Pにおける振幅及び位相を算出する(振幅位相算出ステップS15)。

【0084】
次に、遠方界指向性算出部21は、振幅位相算出ステップS15により算出された振幅及び位相の値を用いて、遠方界の指向性を算出する(遠方界指向性算出ステップS16)。

【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、測定信号としてマルチキャリア信号を使用し、近傍界の測定平面P上でプローブアンテナ12を連続的に走査させることにより、被測定アンテナ100の近傍界での振幅分布及び位相分布を測定信号を切り替えることなく広帯域にわたって取得することができる。

【0086】
また、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、測定信号としてOFDM信号を使用することにより、OFDM信号の複数のサブキャリアに含まれるRSを用いて近傍界測定を行うことができる。

【0087】
また、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、先頭位置検出部17a及びFFT処理部17bにより、被測定アンテナ100から送信されたOFDM信号の複素ベースバンド信号から、複数のサブキャリアに含まれるRSを抽出することができる。

【0088】
また、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、各走査ラインに関して得られた最も振幅の大きいデータを含む所定範囲のデータを用いてOFDM変調のシンボルタイミングを推定するため、被測定アンテナ100から送信されたOFDM信号に含まれるRSを精度良く抽出することができる。

【0089】
また、本実施形態に係る近傍界測定装置1は、被測定アンテナ100を物理的に接続することなく、被測定アンテナ100から送信されたマルチキャリア信号に対して近傍界測定法を用いた測定を行い、遠方界の電界強度分布を算出することができる。

【0090】
また、本実施形態の近傍界測定装置により測定される無線信号は、他にもTDD(Time Division Duplex)方式の信号などにも適用可能である。

【0091】
また、本実施形態の基地局110は、被測定アンテナ100と送信機が一体となったものを示すものとする。
【符号の説明】
【0092】
1 近傍界測定装置
11 支持部
12 プローブアンテナ
13 プローブ走査機構
14 走査制御部
15 受信部
16 記憶部
17 抽出部
17a 先頭位置検出部
17b FFT処理部
18 振幅位相変動量算出部
19 位相結合部
20 振幅位相算出部
21 遠方界指向性算出部
100 被測定アンテナ
100a 電磁波放射面
110 基地局
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7