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明細書 :振動検出装置および振動検出システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-034319 (P2020-034319A)
公開日 令和2年3月5日(2020.3.5)
発明の名称または考案の名称 振動検出装置および振動検出システム
国際特許分類 G01N  29/24        (2006.01)
G01H  17/00        (2006.01)
G01N  29/04        (2006.01)
FI G01N 29/24
G01H 17/00 D
G01N 29/04
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-158984 (P2018-158984)
出願日 平成30年8月28日(2018.8.28)
発明者または考案者 【氏名】林 高弘
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100110847、【弁理士】、【氏名又は名称】松阪 正弘
【識別番号】100136526、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 勉
【識別番号】100136755、【弁理士】、【氏名又は名称】井田 正道
審査請求 未請求
テーマコード 2G047
2G064
Fターム 2G047AA06
2G047AA10
2G047AB01
2G047AB07
2G047AC12
2G047BC07
2G047CA04
2G047DB03
2G047GA18
2G047GD02
2G047GG47
2G047GJ02
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064DD23
要約 【課題】人が対象物に近づくことなく長期間に亘って対象物の振動を検出する。
【解決手段】振動検出システム1は、主装置11と、振動検出装置12とを含む。
振動検出装置12は、対象物9上または対象物9に近接して設置される。主装置11は、対象物9から離れた位置に配置され、パルス状のレーザ光を走査しつつ対象物9に照射する。振動検出装置12は、レーザ光の照射により対象物9に生じる振動を検出する。振動検出装置12は、検出した振動を電波信号にて主装置11に送信する。振動検出装置12は発電部を含む。主装置11から発電部へのレーザ光の照射により振動検出装置12に電力が蓄積される。これにより、人が対象物9に近づくことなく長期間に亘って振動検出装置12は対象物9の振動を検出することができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物上または対象物に近接して設置され、前記対象物へのレーザ光の照射により前記対象物に生じる振動を検出する振動検出装置であって、
前記対象物の振動を電気信号に変換する振動検出部と、
前記電気信号を示す電波信号を送出する送信部と、
光を受けることにより前記光を電力に変換し、前記振動検出部および前記送信部に前記電力を供給する発電部と、
を備えることを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動検出装置であって、
前記振動検出部が、MEMSマイクロフォンを含むことを特徴とする振動検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の振動検出装置であって、
前記発電部が、前記レーザ光を受けて発電を行うことが可能であることを特徴とする振動検出装置。
【請求項4】
対象物にレーザ光を照射して前記対象物に生じる振動を検出する振動検出システムであって、
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の振動検出装置と、
前記レーザ光を出射するレーザと、
前記送信部からの前記電波信号を受信する受信部と、
を備えることを特徴とする振動検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の振動検出システムであって、
前記対象物上の前記レーザ光の照射位置を移動する照射位置移動部をさらに備えることを特徴とする振動検出システム。
【請求項6】
請求項5に記載の振動検出システムであって、
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の他の振動検出装置をさらに備え、
前記振動検出装置および前記他の振動検出装置が、前記レーザ光の照射可能範囲内に設置され、
前記振動検出装置および前記他の振動検出装置の前記発電部が、前記レーザ光を受光して発電を行うことを特徴とする振動検出システム。
【請求項7】
対象物にレーザ光を照射して前記対象物に生じる振動を検出する振動検出システムであって、
請求項1または2に記載の振動検出装置と、
前記レーザ光を出射するレーザと、
前記発電部に向けて前記レーザ光とは波長が異なるレーザ光を出射することにより、前記発電部に発電を行わせる他のレーザと、
前記送信部からの前記電波信号を受信する受信部と、
を備えることを特徴とする振動検出システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物にレーザ光を照射することにより対象物に生じる振動を検出する技術に関連する。振動の検出結果は、例えば、対象物における内部損傷の検出に利用される。
【背景技術】
【0002】
近年、大型構造物の経年劣化が顕在化してきており、非破壊にてそれらの内部損傷を検査する様々な手法が提案されている。非破壊検査の一つとして、例えば、特許文献1および2に開示される検査方法では、パルス状のレーザ光を走査しつつ対象物に照射し、対象物に生じた振動の変化を超音波探触子にて検出することにより、内部損傷が検出される。
【0003】
また、対象物に生じた振動を、レーザドップラー振動計を用いて非接触にて検出する手法も提案されている。しかし、レーザドップラー振動計は対象物の表面にて反射した光を受光して計測を行うため、表面の向きや性状が一様でない対象物に対しては利用困難である。そこで、非特許文献1に示すように、対象物にマイクロフォンを近づけ、対象物の振動を音波として検出することにより、対象物の表面状態の影響を受けることなく非接触にて損傷を検出する技術が提案されている。非特許文献2では、当該技術において複数のマイクロフォンを用いることにより、測定精度を向上する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-175340号公報
【特許文献2】特開2011-43416号公報
【0005】

【非特許文献1】Atsuya Maeda and Takahiro Hayashi, "Defect Imaging from a Remote Distance by Using Scanning Laser Source Tchnique with Acoustic Microphones", Materials Transactions, The Japan Institute of Metals and Materials, Vol. 59, No. 2 (2018) pp.320-323
【非特許文献2】前田篤弥、林高弘、「レーザ・シリコンマイクロフォンを用いた薄板内損傷の非接触画像化」、超音波TECHNO、日本工業出版株式会社、2018.5-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1および2に記載の手法において、マイクロフォンの設置場所によっては、マイクロフォンへの電源線を配置することができず、かつ、人が電池交換のためにマイクロフォンに容易に近づけない状況が想定される。この場合、レーザ光の照射による対象物の振動に基づいて長期間に亘って対象物の異常を監視することが困難となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、人が対象物に近づくことなく長期間に亘って対象物の振動を検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、対象物上または対象物に近接して設置され、前記対象物へのレーザ光の照射により前記対象物に生じる振動を検出する振動検出装置に向けられている。振動検出装置は、前記対象物の振動を電気信号に変換する振動検出部と、前記電気信号を示す電波信号を送出する送信部と、光を受けることにより前記光を電力に変換し、前記振動検出部および前記送信部に前記電力を供給する発電部とを備える。
【0009】
好ましくは、前記振動検出部は、MEMSマイクロフォンを含む。また、好ましくは、前記発電部は、前記レーザ光を受けて発電を行うことが可能である。
【0010】
本発明は、上記振動検出装置を含む振動検出システムにも向けられている。振動検出システムは、前記レーザ光を出射するレーザと、前記送信部からの前記電波信号を受信する受信部とをさらに備える。好ましくは、振動検出システムは、前記対象物上の前記レーザ光の照射位置を移動する照射位置移動部をさらに備える。
【0011】
好ましい形態では、振動検出システムでは、前記振動検出装置および他の振動検出装置が、前記レーザ光の照射可能範囲内に設置され、前記振動検出装置および前記他の振動検出装置の前記発電部が、前記レーザ光を受光して発電を行う。
【0012】
振動検出システムの他の好ましい形態では、振動検出システムは、上記振動検出装置と、前記レーザ光を出射するレーザと、前記発電部に向けて前記レーザ光とは波長が異なるレーザ光を出射することにより、前記発電部に発電を行わせる他のレーザと、前記送信部からの前記電波信号を受信する受信部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、人が対象物に近づくことなく長期間に亘って対象物の振動を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】振動検出システムを示す図である。
【図2】主装置の構成を示す図である。
【図3】主装置の制御部の機能構成を示す図である。
【図4】振動検出装置の構成を示す図である。
【図5】振動検出装置の一部の構成要素の接続関係を示す図である。
【図6】振動検出システムの動作の流れを示す図である。
【図7】主装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る振動検出システム1を示す図である。振動検出システム1は、対象物9にパルス状のレーザ光を照射する。以下の説明における「パルス状のレーザ光」は、連続波レーザを矩形波にて振幅変調することにより得られてもよく、高周波パルスレーザを矩形波にて振幅変調することにより、実質的にパルス状のバースト波(すなわち、高周波パルスの集合がパルス状に出力される状態)として得られてもよい。1つのパルス状の連続波またはバースト波が持続する時間は、1~10ms程度である。レーザ光の照射により対象物9に局所的かつ急峻な温度変化が生じ、対象物9に振動が生じる。振動検出システム1は、レーザ光の照射位置を走査しつつ対象物9に生じる振動を検出し、検出結果に基づいて対象物9に存在する内部損傷を検出する。図1では、対象物9がパイプである場合を例示している。パイプ内には流体が流れる。対象物9内における摩耗による薄肉部やクラック等の損傷の有無が、振動検出システム1により確認される。

【0016】
振動検出システム1は、主装置11と、複数の振動検出装置12とを含む。複数の振動検出装置12は、対象物9上に設置される。振動検出装置12は、必ずしも対象物9に接している必要はなく、対象物9に近接して設置されてもよい。例えば、対象物9であるパイプが固定されるフレームや壁に振動検出装置12が設置されてもよい。対象物9と振動検出装置12との間の距離は特に限定されないが、好ましくは、0~数cmである。主装置11は、対象物9から離れて配置され、対象物9にパルス状のレーザ光を照射する。レーザ光の照射により、対象物9に弾性波である振動が生じる。振動検出装置12は、対象物9の振動を検出する。検出された振動は、電波信号を利用して振動検出装置12から主装置11に送信される。主装置11では、レーザ光の照射位置と対象物9の振動との関係が取得され、損傷の有無を判定する。

【0017】
本実施の形態では、主装置11は、自動運転台としての機能を有する。すなわち、主装置11は、自ら移動可能である。これにより、主装置11は広範囲に亘って対象物9にレーザ光を照射することができる。図1の符号91a,91bは、主装置11が特定の位置に配置された状態で、主装置11がレーザ光を走査しつつ照射する範囲を示す。範囲91aにレーザ光を走査しつつ照射する間に、範囲91aと重なる対象物9、すなわち、上側のパイプ上に配置された3つの振動検出装置12が振動を検出する。振動検出装置12からの信号を主装置11が受信することにより、範囲91aにおける損傷の有無が確認される。同様に、範囲91bにレーザ光を走査しつつ照射する間に、範囲91bと重なる対象物9、すなわち、下側のパイプ上に配置された3つの振動検出装置12が振動を検出する。振動検出装置12からの信号を主装置11が受信することにより、範囲91bにおける損傷の有無が確認される。

【0018】
図2は、主装置11の構成を示す図である。主装置11は、レーザ光を出射するレーザ21と、対象物9上のレーザ光の照射位置を移動する照射位置移動部22と、振動検出装置12からの電波信号を受信する受信部23と、制御部24とを含む。レーザ21は、パルス状のレーザ光を出射する。レーザ光の波長は、例えば、1096nmである。対象物9に振動を生じさせることができるのであれば、様々な波長のレーザ光が利用可能である。

【0019】
照射位置移動部22は、レーザ光の対象物9上の照射位置を二次元に移動、すなわち、走査する。照射位置移動部22は、典型的には、2つのガルバノミラーの組合せである。受信部23は、本実施の形態では、近距離無線通信規格であるBluetooth(登録商標)を利用して、振動検出装置12から振動の検出結果を取得する。

【0020】
主装置11は、車輪111を有し、図示省略の駆動源からの駆動力により車輪111を回転させることにより移動する。これにより、主装置11は、レーザ光を対象物9の様々な部位に照射することができる。もちろん、主装置11の位置は固定であってもよく、作業者により運搬されることにより主装置11は移動してもい。

【0021】
図3は、主装置11の制御部24の機能構成を示す図である。制御部24は、コンピュータや専用の電気回路等により構成される。図示を省略するが、制御部24と、レーザ21、照射位置移動部22および受信部23との間には、専用のインターフェイスが設けられる。制御部24は、照射制御部241と、測定結果取得部242と、比較部243と、記憶部244とを含む。照射制御部241は、レーザ21からのレーザ光の出射を制御する。本実施の形態では、連続波レーザまたは高周波パルスレーザをパルス状に振幅変調する矩形波の周波数(以下、「パルス周波数」という。)は10kHzである。好ましくは、レーザ光のパルス周波数は20kHz以下の可聴域である。レーザ光のパルス周波数は20kHz以下には限定されないが、後述するように、振動の検出や送信に、可聴域にて使用される安価な回路を用いる場合は、20kHz以下のパルス状のレーザ光が使用される。照射制御部241は、照射位置移動部22を制御することにより、レーザ光の照射位置を制御する。測定結果取得部242は、受信部23からの信号および照射制御部241からの信号を受けて、照射位置と振動との関係を測定結果として取得する。測定結果取得部242は、複数の振動検出装置12による測定結果を合成して最終的な測定結果を取得する。比較部243は、記憶部244に予め準備されている参照情報と、最終的な測定結果とを比較することにより、対象物9に損傷が存在するか否かを判断する。

【0022】
図4は、振動検出装置12の構成を示す図である。図5は、振動検出装置12の一部の構成要素の接続関係を示す図である。振動検出装置12は、ケーシング301を有し、ケーシング301内に主基板302が固定される。ケーシング301の下面には、磁石303が取り付けられる。磁石303が対象物9の磁性体部を吸着することにより、振動検出装置12が対象物9に取り付けられる。もちろん、対象物9が磁性体部を有しない場合は、接着剤や固定具を用いて振動検出装置12は対象物9に固定される。既述のように、振動検出装置12は対象物9に接する必要はなく、対象物9に近接する位置にて対象物9や対象物9以外の部材に固定されてもよい。

【0023】
ケーシング301は直方体状であり、上面および4つの側面に発電部33が取り付けられる。ケーシング301の大きさは、例えば、一辺が30mmである。ただし、専用の回路を設計することにより、コイン状の振動検出装置12も可能である。発電部33は、光を受けることにより当該光を電力に変換する。発電部33は、いわゆる太陽電池であるが、振動検出装置12がトンネルや地下空間等に設置される場合は、後述するように、太陽光以外の光を利用して発電が行われる。発電部33をケーシング301の5面に設けることにより、振動検出装置12に様々な方向から光が照射される場合であっても発電を行うことができる。発電部33は、ケーシング301の5面の全てに設けられる必要はない。ケーシング301の形状も直方体には限定されない。発電部33はケーシング301の表面上に固定される必要はなく、例えば、発電部33の端部がヒンジ等の向き変更構造を介してケーシング301に結合され、発電部33の向きが変更可能とされてもよい。これにより、振動検出装置12の設置後に後述のレーザ光や他の光を発電部33が効率よく受光することができる。

【0024】
主基板302上には、振動検出部31と、送信部32と、蓄電部34とが設けられる。蓄電部34としては様々な二次電池が利用可能である。本実施の形態では、蓄電部34として、電気二重層コンデンサであるスーパーキャパシタが利用される。図5に示すように、蓄電部34は、図示省略の充電回路を介して発電部33からの電力を蓄積する。蓄電部34からの電力は、図示省略の電圧安定回路を介して主基板302上の振動検出部31および送信部32等の様々な回路に供給される。すなわち、発電部33は、振動検出部31および送信部32に間接的に電力を供給する。

【0025】
図4に示すように、ケーシング301の対象物9と対向する面には、開口310が設けられる。図4では、1つの開口310のみを描いているが、実際には、紙面に垂直な方向に離れて2つの開口310が設けられる。ケーシング301内には、開口310に対向する位置に振動検出部31が配置される。振動検出部31は、2つの開口310にそれぞれ対向する2つのMEMSマイクロフォン311を含む。2つのMEMSマイクロフォン311は、紙面に垂直な方向に離れて配置される。換言すれば、振動検出部31は、2チャンネルのマイクロフォンを含む。振動検出部31は、1チャンネルまたは3チャンネル以上のマイクロフォンでもよい。

【0026】
MEMSマイクロフォン311は、Micro-Electrical-Mechanical Systemsの技術を利用したシリコンマイクロフォンである。MEMSマイクロフォン311は、音波を受けて振動する薄膜であるメンブレンを有し、メンブレンの振動による静電容量の変化を電気信号に変換する。MEMSマイクロフォン311としては、20kHz以下の音波を取得する通常のマイクロフォンが使用される。MEMSマイクロフォン311として、20kHz以上の超音波も取得できるものが採用されてもよい。

【0027】
なお、振動検出部31として、他の機構が採用されてもよい。例えば、対象物9に探針を接触させ、探針の振動が電気信号に変換されてもよい。振動検出部31としては、対象物9の振動を電気信号に変換する様々な構成が採用可能である。

【0028】
図5に示すように、送信部32は、振動検出部31からの電気信号を受けて、当該電気信号を示す電波信号を送出する。既述のように、本実施の形態では、Bluetoothの技術を用いて振動を示す信号が送出される。MEMSマイクロフォン311およびBluetoothを利用することにより、民生品用として入手可能なオーディオ用の回路を用いて2チャンネルの信号を容易に送出することができる。その結果、振動検出装置12の製造コストを削減することができる。

【0029】
図6は、振動検出システム1の動作の流れを示す図である。振動検出装置12が太陽光や照明光が照射される場所に配置される場合、蓄電部34は常に充電された状態になっている。換言すれば、振動検出装置12は常に能動化されている。一方、振動検出装置12がトンネルや地下空間等の暗所に設置される場合、発電部33として、レーザ21からのレーザ光を受けて発電を行うことが可能であるものが利用される。制御部24が照射位置移動部22を制御することにより、主装置11から振動検出装置12の発電部33にレーザ光が一定時間照射される。これにより、蓄電部34に電力が蓄積され、振動検出装置12が能動化される(ステップS11)。

【0030】
次に、主装置11から対象物9に向かってパルス状のレーザ光が照射され、対象物9に振動が生じる。また、レーザ光の照射位置は予め定められた領域内で走査される。振動は振動検出装置12の位置まで対象物9内を伝搬する。振動検出装置12の振動検出部31は、対象物9から空気中に漏れ出す振動を検出する。検出された振動は、送信部32から電波信号として送出され、主装置11の受信部23にて受信される(ステップS12)。

【0031】
主装置11では、振動検出装置12毎に、照射位置と振動との関係を測定結果として取得する。1つの振動検出装置12は2つのMEMSマイクロフォン311を有するため、2つのMEMSマイクロフォン311の信号の平均を用いて1つの振動検出装置12の測定結果が取得される。これにより、ノイズが低減される。さらに、複数の振動検出装置12による複数の測定結果を合成して、最終的な測定結果を取得する。測定結果は様々な手法にて合成されてよい。合成には、例えば、重み付け平均が利用される。

【0032】
既述のように、比較部243は、記憶部244内の参照情報と測定結果とを比較することにより、対象物9に損傷が存在するか否かを判断する(ステップS13)。具体的には、比較部243は、対象物9上の各位置にレーザ光を照射した際に生じる振動のスペクトルのうち、レーザ光のパルス周波数に対応する部位の振幅が、参照情報が示す値や周囲から得られる振幅から大きく相違する場合に損傷が存在すると判断する。対象物9がパイプの場合、減肉や応力腐食割れ等の損傷が検出される。

【0033】
振動検出システム1では、振動検出装置12の電池交換が不要であるため、人が対象物9に近づくことなく長期間に亘って対象物9の振動を検出して内部損傷の検査を行うことができる。また、振動検出装置12は、一旦設置された後は放置されてよいため、人が容易に近づくことができない場所に振動検出装置12を設置することもできる。振動検出装置12の位置は前回の測定時の位置と完全に一致するため、損傷検出を正確に行うことができる。さらに、主装置11を自動運転台に設けることにより、プラントや設備等における定期的な検査を無人で自動的に行うことも可能となる。これにより、プラントや設備の信頼性および健全性が向上し、独自ルールの検査作業の緩和や検査を定める法令の見直しにも貢献することができる。

【0034】
振動検出システム1では、レーザ光を利用するため、主装置11が1つの場所に配置された状態で、広範囲に存在する複数の振動検出装置12と通信が行われることが好ましい。例えば、図1に示す主装置11の配置において、6個の振動検出装置12がレーザ光の照射可能範囲内に位置し、主装置11がレーザ光を用いて6個の振動検出装置12の発電を行って振動検出装置12を能動化させてから、範囲91a,91bにおける損傷の検出作業が行われることが好ましい。一般的に表現すれば、複数の振動検出装置12がレーザ光の照射可能範囲内に設置され、レーザ21および照射位置移動部22を利用して、これらの発電部33がレーザ光を受光して発電を実行することが好ましい。

【0035】
図7は主装置11の構成の他の例を示す図である。図7の主装置11は、図3に示す構成に発電用レーザ21aが追加されたものである。他の構成要素および動作は図3と同様である。照射位置移動部22は、発電用レーザ21aの照射位置の移動にも利用される。

【0036】
図7の主装置11は、レーザ21からのレーザ光の波長が、発電部33による発電に適さない場合に採用される。レーザ21からのレーザ光は対象物9に振動を生じさせるためのみに利用される。一方、発電用レーザ21aからのレーザ光の波長は、レーザ21からのレーザ光の波長と異なる。発電用レーザ21aからのレーザ光は、発電部33に照射され、発電部33での発電のみに利用される。これにより、対象物9における振動の発生と、発電部33による発電とを効率よく行うことができる。

【0037】
なお、主装置11にもう1つの照射位置移動部が追加され、この照射位置移動部が発電用レーザ21aの照射位置の移動に利用される場合、対象物9に振動を発生させる間、常に、発電用レーザ21aから発電部33にレーザ光を照射することも可能となる。この場合、振動検出装置12から蓄電部34を省くことも可能である。これにより、振動検出装置12の製造コストを削減することができる。

【0038】
図3に示す主装置11は、発電用レーザ21aを有しないため、図7の場合に比べて構造を簡素化することができる。一方、図7に示す主装置11では、対象物9にて振動を発生させるためのレーザ光の波長が発電に適さない場合であっても、遠隔から振動検出装置12にエネルギーを供給することができる。

【0039】
上記振動検出システム1では、様々な変更が可能である。

【0040】
発電部33は、いわゆる太陽電池には限定されず、光エネルギーを電力に変換することができるのであれば、様々な他のデバイスが利用されてよい。例えば、発電部33としてフォトダイオードが採用されてもよい。蓄電部34としては、電力を蓄積することができるのであれば、様々な二次電池が採用可能である。

【0041】
Bluetooth技術による送信距離が不十分である場合、送信部32として、例えば、アナログFMトランスミッターを採用することも可能である。これにより、安価に長距離を送信することができる。

【0042】
照射位置移動部22は、レーザ光を走査することができるのであれば、他の様々なデバイスが利用されてよい。例えば、ポリゴンミラーやMEMSを利用した走査デバイスが採用されてもよい。上記実施の形態では、レーザ光の照射位置は二次元に走査されるが、走査は一次元のみであってもよい。さらには、レーザ光の照射位置が走査されない場合であっても、レーザ光が照射される位置から発生する振動の経時変化を測定することにより、その位置での損傷の発生を検出することが可能である。すなわち、レーザ光を走査させない振動検出システム1も可能である。

【0043】
測定結果と比較される参照情報は、好ましくは、振動検出装置12が対象物9に設置された直後に測定を行って取得されたもの、すなわち、損傷が存在しない場合の振動を示す情報である。しかし、参照情報としては他の様々なものが採用可能である。例えば、測定を一定期間ごとに行い、前回の測定結果を参照情報として利用してもよい。さらに、過去に取得した測定結果の全てを参照情報として利用してもよい。参照情報として、損傷が存在する場合に得られると予想される情報が準備されてもよい。

【0044】
振動検出システム1は、薄肉の金属部材における損傷検出に適している。また、レーザ光による発電を行う場合は、トンネルや地下空間等の暗所における損傷検出に適している。検出される損傷は、パイプやタンク等の板状の金属部材における浸食や亀裂には限定されず、溶接部分の腐食や亀裂の検出にも利用可能である。さらに、対象物9は、金属には限定されず、様々な構造物が検査対象となり得る。例えば、橋梁床板、トンネル内壁等の鉄筋コンクリート、鉄骨、モルタル等における亀裂、剥離等の検査に利用可能である。振動検出システム1は、近年問題となっている老朽化した大型構造物の信頼性向上にも役立てることができる。

【0045】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、様々な対象物における損傷の検査に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 振動検出システム
9 対象物
12 振動検出装置
21 レーザ
21a 発電用レーザ
22 照射位置移動部
23 受信部
31 振動検出部
32 送信部
33 発電部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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