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明細書 :超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-208971 (P2019-208971A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラム
国際特許分類 A61B   8/14        (2006.01)
FI A61B 8/14
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2018-109266 (P2018-109266)
出願日 平成30年6月7日(2018.6.7)
発明者または考案者 【氏名】喜屋武 弥
【氏名】黒木 裕士
【氏名】中川 泰彰
【氏名】向井 章悟
出願人 【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504136993
【氏名又は名称】独立行政法人国立病院機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C601
Fターム 4C601BB09
4C601DD10
4C601EE09
4C601EE10
4C601JB36
4C601JB48
4C601JC06
4C601JC09
要約 【課題】被爆を伴うことなく軟骨下骨の病変を評価するための、超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラムを提供する。
【解決手段】被検体9の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、被検体9の内部から反射されたエコー信号を受信する送受信装置2に接続される超音波解析装置3であって、エコー信号から超音波画像データを生成する画像データ生成部と、超音波画像データから軟骨下骨の表面位置を検出する表面位置検出部と、軟骨下骨の表面位置を基準にして、超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定する領域設定部と、領域におけるテクスチャ特徴量を算出する特徴量算出部と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信する送受信装置に接続される超音波解析装置であって、
前記エコー信号から超音波画像データを生成する画像データ生成部と、
前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出する表面位置検出部と、
前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定する領域設定部と、
前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出する特徴量算出部と、
を備える超音波解析装置。
【請求項2】
前記テクスチャ特徴量が、画像データのテクスチャ解析における、エントロピーおよび相関の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の超音波解析装置。
【請求項3】
前記領域設定部は、前記軟骨下骨の前記表面位置から前記超音波の音軸に沿う方向に、隣り合うように前記領域を複数設定し、
前記特徴量算出部は、複数の前記領域の各々について前記テクスチャ特徴量を算出する、請求項2に記載の超音波解析装置。
【請求項4】
前記領域が、前記軟骨下骨の表層部位に対応する第1の領域と、前記第1の領域よりも深部に位置する第2の領域とを含む、請求項3に記載の超音波解析装置。
【請求項5】
前記方向に沿った前記第1の領域の厚みが、0.3mm~0.45mmの範囲内であり、
前記方向に沿った前記第2の領域の厚みが、0.3mm~0.45mmの範囲内である、請求項4に記載の超音波解析装置。
【請求項6】
前記特徴量算出部が、前記第1の領域について前記エントロピーを算出し、前記第2の領域について前記相関を算出する、請求項4または5に記載の超音波解析装置。
【請求項7】
前記画像データ生成部が、前記軟骨下骨の表面が平坦になるように、前記超音波画像データを再配列する、請求項1から6のいずれかに記載の超音波解析装置。
【請求項8】
前記テクスチャ特徴量を出力する出力部をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載の超音波解析装置。
【請求項9】
被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信するステップと、
前記エコー信号から超音波画像データを生成するステップと、
前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出するステップと、
前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定するステップと、
前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出するステップと、
を含む、超音波解析方法。
【請求項10】
被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信する送受信装置に接続されるコンピュータに、
前記エコー信号から超音波画像データを生成するステップと、
前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出するステップと、
前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定するステップと、
前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出するステップと、
を実行させるための、超音波解析プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によって被検体の内部を解析する超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症(osteoarthritic: OA)は、軟骨の摩耗が要因となって関節が変形し、関節に炎症や痛みを生じる疾患である。変形性関節症が進行すると、関節本来の滑らかな動きが阻害され可動域も制限される。特に膝関節の軟骨がすり減ると、起立や歩行等の日常動作に支障が生じ、クオリティ・オブ・ライフが著しく低下することから、変形性関節症を簡便に診断する手法が期待されている。
【0003】
軟骨の状態を解析する装置としては、例えば特許文献1に記載の超音波解析装置がある。特許文献1に記載の超音波解析装置は、膝の表面に当接された超音波プローブから超音波信号を送信し、膝の内部で反射したエコー信号を超音波プローブで受信する。超音波解析装置は、受信したエコー信号から軟骨の状態を解析する。
【0004】
近年では、変形性関節症を早期に発見するために、軟骨の下層に位置する軟骨下骨の病変を評価する試みがなされている。X線マイクロCT(Micro computed tomography: Micro-CT)装置による測定によると、変形性関節症に伴う軟骨下骨の病変として、骨の微細構造に変化が起こることが知られている。骨の微細構造の変化を表す軟骨下骨のマイクロCTパラメータとしては、例えば、軟骨下骨プレート内の空隙率、軟骨下骨の厚さ、および海綿骨領域の骨密度等がある。超音波プローブによるエコー信号の振幅に基づいて軟骨下骨を評価する技術としては、例えば非特許文献1および2の技術がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-305号公報
【0006】

【非特許文献1】Aula AS, Toyras J, Tiitu V, Jurvelin JS., “Simultaneous ultrasound measurement of articular cartilage and subchondral bone”, Osteoarthritis Cartilage, 2010, Vol.18, p1570-6.
【非特許文献2】Liukkonen J, Hirvasniemi J, Joukainen A, Penttila P, Viren T, Saarakkala S, Kroger H, Jurvelin JS, Toyras J., “Arthroscopic ultrasound technique for simultaneous quantitative assessment of articular cartilage and subchondral bone: an in vitro and in vivo feasibility study”, Ultrasound Med Biol, 2013, Vol.39, p1460-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線CTによる測定は、関節の被爆を伴う。超音波プローブによる測定は、関節の被爆を伴わないが、軟骨-軟骨下骨境界からの超音波の絶対振幅は、軟骨下骨の上部に位置する軟骨および軟部組織等の上部組織において減衰の影響を受けるため、軟骨下骨の病変を反映するパラメータとしては正確性に欠けている。また、平均値としての軟骨-軟骨下骨境界からの超音波振幅は、上部組織における超音波減衰量が考慮されれば、軟骨下骨の病変を反映するパラメータとして適していると考えられるが、軟骨下骨のさらに下部に位置する海綿骨領域等の骨の微細構造の分布特性を反映する最適なパラメータではない。
【0008】
本発明は、被爆を伴うことなく軟骨下骨の病変を評価するための、超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波解析装置は、被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信する送受信装置に接続される超音波解析装置であって、前記エコー信号から超音波画像データを生成する画像データ生成部と、前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出する表面位置検出部と、前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定する領域設定部と、前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出する特徴量算出部と、を備える。
【0010】
本発明に係る超音波解析装置によると、軟骨下骨の病変を被爆を伴うことなく評価することができる。超音波解析装置が軟骨下骨の領域について計算するテクスチャ特徴量は、骨(海綿骨)の微細構造の変化を反映している。よって、ユーザは、テクスチャ特徴量に基づいて軟骨下骨の病変を評価することができ、変形性関節症を早期に発見することが可能となる。
【0011】
本発明に係る超音波解析方法は、被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信するステップと、前記エコー信号から超音波画像データを生成するステップと、前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出するステップと、前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定するステップと、前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出するステップと、を含む。
【0012】
本発明に係る超音波解析プログラムは、被検体の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、前記被検体の内部から反射されたエコー信号を受信する送受信装置に接続されるコンピュータに、前記エコー信号から超音波画像データを生成するステップと、前記超音波画像データから前記軟骨下骨の表面位置を検出するステップと、前記軟骨下骨の前記表面位置を基準にして、前記超音波画像データにおいて、解析対象の領域を設定するステップと、前記領域におけるテクスチャ特徴量を算出するステップと、を実行させるための、超音波解析プログラムである。本発明に係る超音波解析プログラムは、例えばCD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能な非一時的な有体の記録媒体に記録されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被爆を伴うことなく軟骨下骨の病変を評価するための、超音波解析装置、超音波解析方法および超音波解析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波解析システムのブロック図である。
【図2】被検体である膝の内部構造と超音波プローブとを概略的に示す図である。
【図3】信号処理部の機能ブロック図である。
【図4】振幅強度画像を用いて軟骨下骨の表面位置検出を行う方法を模式的に説明するための図である。
【図5】軟骨下骨表面で整列された二次元の振幅強度画像(軟骨下骨表面位置より深い領域)を模式的に示す図である。
【図6】本実施形態に係る超音波解析方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】軟骨下骨表面で整列された三次元の振幅強度画像を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。

【0016】
以下に説明する本発明の一実施形態では、被検体の一例として人の膝の内部を解析対象とし、解析に用いる超音波画像として、膝の内部の二次元の断面画像を取得することとする。また、超音波画像を表すデータとして、超音波エコー信号の振幅強度データを取得することとする。なお、以下に説明する本発明の実施形態は一例であり、本発明において、被検体の関節は膝に限定されることはなく、超音波画像も二次元の断面画像に限定されることはなく、超音波画像も振幅強度データに限定されることはない。

【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波解析システム1のブロック図である。図2は、被検体である膝の内部構造と超音波プローブとを概略的に示す図である。

【0018】
本発明の一実施形態に係る超音波解析システム1は、送受信装置2と、送受信装置2に接続される超音波解析装置3と、駆動機構4とを備える。駆動機構4は、送受信装置2の構成に応じて任意の構成とすることができる。

【0019】
送受信装置2は、被検体9の内部にある軟骨下骨を含む骨軟骨に向けて超音波を送信し、被検体9の内部から反射されたエコー信号を受信する装置であり、超音波プローブ21と、パルサー/レシーバ22と、A/D変換部23とを備える。

【0020】
超音波プローブ21は、本実施形態では単素子プローブであり、被検体9である膝の表面に沿って、一次元状に(図2に示すx方向またはy方向に)機械的に走査される。本実施形態では、超音波プローブ21は図2に示すx方向に走査されることとする。振動子は、被検体9の表面から被検体9の内部に向けて所定の時間間隔で超音波を送信する。送信された超音波は被検体9の内部で反射され、振動子は反射されたエコー信号を受信する。

【0021】
超音波プローブ21は、図2に示すように、送受信面側の端面が膝表面95(軟部組織93の表面)に当接され、送受信面側の端面から超音波を送信して、膝の内部を探索する。軟部組織93は、軟骨91よりも被検体9の表面側に存在する部位である。軟骨91は、解析対象である軟骨下骨94に付着しており、軟骨下骨94は、骨(海綿骨)92に結合した組織である。以下の説明では、膝表面95から骨92側内部へ向かう方向を深度方向と呼び、深度方向を、直行座標系でいうz方向(x方向およびy方向に直交する方向)とする。なお、深度方向zの位置は、被検体9の内部を進行する超音波が時間tに進行する距離で表すことができる。深度方向zと時間tとの間の変換には、例えば軟部組織93においては1540m/sの仮定音速を、軟骨91の部分においては1620m/sの仮定音速をそれぞれ用いることができる。

【0022】
超音波プローブ21の振動子から深度方向へ送信された超音波は、被検体9の内部(例えば、軟部組織93または骨92等)で反射される。超音波プローブ21の振動子は、反射されたエコー信号を受信する。超音波解析装置3は、超音波プローブ21が受信したエコー信号に基づいて、軟骨下骨94等を含む被検体9の内部の振幅強度データD(超音波画像)を生成する。超音波解析装置3は、エコー信号の振幅強度が表されている超音波画像を出力部34等に出力して、軟骨下骨94の状態等を画像でユーザに確認させることができる。

【0023】
パルサー/レシーバ22は、超音波帯域の周波数で構成される搬送波をパルス状に波形成形して送信パルスを生成し、生成した送信パルスを超音波プローブ21に出力する。これにより、超音波プローブ21の振動子から被検体9の深度方向に超音波が送信される。パルサー/レシーバ22は、超音波プローブ21の振動子が受信した、被検体9の内部からのエコー信号を受信する。

【0024】
A/D変換部23は、パルサー/レシーバ22から送信されるエコー信号をアナログ-デジタル変換して、超音波解析装置3に送信する。

【0025】
超音波解析装置3は、入力部31と、制御部32と、信号処理部33と、出力部34とを備える。

【0026】
本実施形態では、超音波解析装置3は公知のパーソナルコンピュータで構成されており、ハードウェアの構成として、データ処理を行うCPU等のプロセッサと、プロセッサがデータ処理の作業領域に使用するメモリと、処理データを記録する記録部と、各部の間でデータを伝送するバスと、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部(以下、I/F部と記す)とを備えている。任意の機能として、超音波解析装置3は、インターネット等のネットワークを介して外部サーバと接続することもできる。

【0027】
入力部31は、ユーザからの操作の入力を受け付ける。例示的には、入力部31は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成することができる。

【0028】
本実施形態では、制御部32および信号処理部33の各機能ブロックは、記録部またはメモリに予め記録されているコンピュータプログラムをプロセッサが実行することによりソフトウェア的に実現されるが、集積回路上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現されてもよい。

【0029】
制御部32は、超音波解析システム1全体の動作を制御する機能ブロックである。例えば制御部32は、入力部31を介して超音波解析処理の実行に関する指示をユーザから受信すると、送受信装置2、超音波解析装置3、および駆動機構4に制御信号を送信して、これら各部の動作を制御する。制御部32と接続された各部は、制御部32からの指示に沿って連動して動作する。

【0030】
信号処理部33は、デジタル形式に変換されたエコー信号を送受信装置2から取り込んで、後述する各種処理を実行し、解析対象の領域におけるテクスチャ特徴量を出力する機能ブロックである。信号処理部33の詳細については図3を参照して後述する。

【0031】
出力部34は、信号処理部33から出力されるテクスチャ特徴量を出力する。例示的には、出力部34は、モニタまたはプリンタ等で構成することができる。

【0032】
駆動機構4は、制御部32からの制御信号を受信して、超音波プローブ21を機械的に走査する。

【0033】
図3は、信号処理部33の機能ブロック図である。信号処理部33は、画像データ生成部331と、表面位置検出部332と、領域設定部333と、特徴量算出部334とを備える。

【0034】
画像データ生成部331は、送受信装置2において生成されたエコー信号のデータから、被検体9の内部の超音波画像データUSを生成する。本実施形態では、超音波画像データUS(x,z)は、エコー信号の振幅強度データD(x,z)である。振幅強度データD(x,z)には、エコー信号の振幅の強度が、被検体9の内部の深度方向zおよび走査方向xで表される各座標毎に示されている。

【0035】
画像データ生成部331は、A/D変換部23から送信されるエコー信号のデータを、所定の時間間隔でサンプリングすることにより離散データ化する。この離散データ化されたエコー信号がエコーデータとなる。これにより、被検体9の深度方向に所定間隔でデータサンプリングされたエコーデータが得られる。さらに、画像データ生成部331は、得られたエコーデータに包絡検波処理および対数圧縮処理を施すことにより、振幅強度データD(x,z)を生成する。生成した振幅強度データD(x,z)は、例えば記録部に記録する。

【0036】
本実施形態では、画像データ生成部331は、振幅強度データD(x,z)の再配列処理を行うことができる。軟部組織93および軟骨91の厚さは、膝関節の部位毎に異なっており、膝表面95から軟骨下骨94の表面位置までの深さも、走査方向xの位置毎に異なっている。画像データ生成部331は、後述する表面位置検出部332により検出された軟骨下骨94の表面位置に基づいて、軟骨下骨94の表面が平坦になるように、振幅強度データD(x,z)を再配列する。膝関節の部位毎に変化している軟部組織93および軟骨91の厚さに基づいて、振幅強度データD(x、z)を再配列することにより、ユーザは、より高精度な解析結果に基づいて、軟骨下骨の病変を評価することができる。なお、再配列処理により振幅強度データD(x,z)の深度方向の座標が変化するので、再配列後の振幅強度データは、振幅強度データD(x,z’)と表現する。同様に、再配列後の超音波画像データは、超音波画像データUS(x,z’)と表現する。

【0037】
表面位置検出部332は、生成された振幅強度データD(x,z)から、超音波プローブ21の走査方向であるx方向に沿って、z方向の軟骨下骨94の表面位置を検出する。軟骨下骨94の表面位置とは、軟骨91と軟骨下骨94との境界位置である。以下では、x方向に対するz方向の軟骨下骨94の表面位置を検出する方法について説明する。

【0038】
図4は、振幅強度画像を用いて軟骨下骨の表面位置検出を行う方法を模式的に説明するための図である。本実施形態では、表面位置検出部332は、振幅強度データD(x,z)を用いて、以下に説明する方法でコストマップを作成することにより、深度方向における軟骨下骨94の表面位置を検出する。図4に示すように、表面位置検出部332は、深度方向に沿って隣接する2つの領域Nfw,Nbwを設定する。領域Nbwは、深度方向において皮膚側に位置し、領域Nfwは、領域Nbwよりも内部側(骨92側)に位置する。なお、設定する領域Nfw,Nbwの大きさは適宜変更が可能である。

【0039】
領域Nfw,Nbwのそれぞれには、複数の振幅強度データD(x,z)が含まれている。まず、表面位置検出部332は、領域Nfw,Nbw内にある振幅強度データD(x,z)から、領域Nfw,Nbwのそれぞれについて、振幅レベルの平均値を算出する。次に、表面位置検出部332は、領域Nfw内の振幅レベルの平均値から、領域Nbw内の振幅レベルの平均値を減算し、算出結果をコスト値として例えば記録部に記録する。表面位置検出部332は、コスト値の算出処理を、領域Nfw,Nbwの位置を深度方向に変化させながら繰り返し行うことによりコストマップを生成し、生成したコストマップを例えば記録部に記録する。

【0040】
被検体9である膝に超音波を送信した場合、軟部組織93および軟骨91では超音波は反射せず、得られるエコー信号は微小または無となる。これに対し、軟骨下骨94で反射したエコー信号は、振幅が高くなる。したがって、例えば、2つの領域Nfw,Nbwの一方が軟骨下骨94に位置している場合には、振幅レベルの平均値の差分は大きい。これに対し、2つの領域Nfw,Nbwの両方が軟骨下骨94に位置していない場合には、振幅レベルの平均値の差分は小さい。これを利用して、表面位置検出部332は、記録部に記録したコストマップから、振幅レベルの差分が大きい領域Nfw,Nbwの位置を、深度方向における軟骨下骨94の表面位置として検出する。

【0041】
さらに本実施形態では、領域設定部333は、軟骨下骨94の表面位置を基準にして、振幅強度データD(x,z)において、解析対象の領域を設定する。

【0042】
図5は、軟骨下骨表面で整列された二次元の振幅強度画像(軟骨下骨表面位置より深い領域)を模式的に示す図である。図5には、テクスチャ特徴量を算出しようとする解析対象の領域51,52が示されている。

【0043】
本実施形態では、領域設定部333は、軟骨下骨94の表面位置から超音波の音軸に沿う方向に、所定の厚さを有する解析対象の領域を複数設定する。本実施形態では、図5に示すように、軟骨下骨94の表層部位に対応する第1の領域51と、第1の領域51よりも深部に位置する第2の領域52とを設定する。

【0044】
第1の領域51の例示的な厚みは、好ましくは約0.3mm~約0.45mmの範囲内である。仮定音速の値として3635m/s(皮質骨音速)を用いると、超音波エコーが進行する時間tは、好ましくは約0.15μs~約0.25μsとなる。また、第2の領域52の例示的な厚みは、好ましくは約0.3mm~約0.45mmの範囲内である。仮定音速の値として2500m/s(骨梁、骨髄の平均的な音速)を用いると、超音波エコーが進行する時間tは、好ましくは約0.25μs~約0.35μsの範囲内である。設定する第1の領域51および第2の領域52の厚みは適宜変更が可能である。

【0045】
特徴量算出部334は、振幅強度画像のテクスチャ解析を行い、領域設定部により設定された解析対象の領域についてテクスチャ特徴量を算出する。

【0046】
テクスチャ特徴量とは、対象とする画像の質感(texture)に関する特徴を表す値である。本実施形態では、グレーレベル同時生起行列(Gray Level Co-occurrence Matrix: GLCM)によるテクスチャ特徴量を算出する。テクスチャ特徴量の一例としては、例えば、エントロピー(Entropy)、相関(Correlation)、分散(Sum Variance)、コントラスト(Contrast)、平均(Sum Average )等がある。これらテクスチャ特徴量は、例えば以下に例示する3つの文献(Albregtsen 2008, Conners, et al. 1984, Haralick, et al. 1973)を参照することにより、画像データから計算することができる。また、画像データからテクスチャ特徴量を計算する公知のソフトウェアモジュールとしては、例えば米国のMathWorks(登録商標)社から提供されているMATLAB(登録商標)等が挙げられる。
Albregtsen F., “Statistical texture measures computed from gray level coocurrence matrices”, Image Processing Laboratory, Department of Informatics, University of Oslo, 2008; 5.
Conners RW, Trivedi MM, Harlow CA., “Segmentation of a high-resolution urban scene using texture operators”, Comp Vis Graph Image Process, 1984, Vol.25, pp273-310.
Haralick RM, Shanmugam K, Dinstein IH., “Textural features for image classification”, Systems Man Cybernetics IEEE Transactions, 1973, pp610-21.

【0047】
本実施形態では、これら種々のテクスチャ特徴量のうち、エントロピーおよび相関(コリレーション)を算出する。特徴量算出部334は、振幅強度データD(x,z)内の第1の領域51について、エントロピーENTL1および相関CORL1を算出し、第2の領域52について、エントロピーENTL2および相関CORL2を算出する。

【0048】
テクスチャ特徴量として、エントロピーは、対象とする画像の情報量を表しており、相関は、対象とする画像内において隣接する複数の画素間の相関性を表している。振幅強度データD(x,z)においてこれらテクスチャ特徴量が示す意味は次の通りである。

【0049】
すなわち、振幅強度データD(x,z)内の解析対象とする領域において、エントロピー値の変化は空隙率の変化を反映しており、相関値の変化はエコー信号の連続性を反映している。より具体的には、第1の領域51のエントロピーENTL1の増大は、軟骨下骨94の表層部位の空隙率の増大を示している。第2の領域52の相関CORL2の減少は、軟骨下骨プレート厚さの増大、軟骨下骨94の深層部位の後方に位置する海綿骨領域の骨密度の増大を示している。

【0050】
これらテクスチャ特徴量は、骨(海綿骨)92の微細構造の変化を反映している。これにより、ユーザは、テクスチャ特徴量に基づいて軟骨下骨94の病変を評価することができ、変形性関節症を早期に発見することが可能となる。

【0051】
図6は、本実施形態に係る超音波解析方法における処理の流れを示すフローチャートである。

【0052】
本実施形態では、入力部31の操作を介して制御部32が解析処理の実行を開始する指示を受けると、超音波解析システム1は図6に示す処理を実行する。

【0053】
ステップS1において、送受信装置2は、超音波プローブ21の振動子から超音波を送信し、被検体9の内部で反射されたエコー信号を、超音波プローブ21の振動子で受信する。送受信装置2は、受信したエコー信号をデジタル変換して、超音波解析装置3の信号処理部33に送信する。

【0054】
なお、被検体9の内部に超音波を送信する際に、超音波の音軸が、軟骨91の表面または軟骨下骨94の表面に対して略垂直または所定角度の範囲内となるように、超音波プローブ21の当接角度(音軸の角度)を調整して、超音波プローブ21を膝表面95に当接させることが好ましい。

【0055】
ステップS2において、信号処理部33の画像データ生成部331は、エコー信号から振幅強度データD(x、z)(すなわち、超音波画像データUS(x、z))を生成し、生成した振幅強度データDを例えば記録部に記録する。

【0056】
ステップS3において、表面位置検出部332は、ステップS2において生成した振幅強度データD(x、z)を用いて、軟骨下骨94の表面位置を検出する。まず、表面位置検出部332は、振幅強度データD(x、z)を用いてコストマップを作成し、作成したコストマップを例えば記録部に記録する。次に、表面位置検出部332は、作成したコストマップに基づいて、振幅レベルの差分が大きくなる位置を軟骨下骨94の表面位置として検出し、検出した軟骨下骨94の表面位置を例えば記録部に記録する。

【0057】
ステップS4において、画像データ生成部331は、ステップS3において検出した軟骨下骨94の表面位置に基づいて、軟骨下骨94の表面が平坦になるように、振幅強度データD(x、z)を再配列する。再配列後の振幅強度データD(x、z’)は、例えば記録部に記録する。

【0058】
ステップS5において、領域設定部333は、軟骨下骨94の表面位置を基準にして、振幅強度データD(x、z’)において解析対象の領域を設定する。解析対象の領域の一例としては、図5に例示するように、軟骨下骨94の表層部位に対応する第1の領域51と、第1の領域51よりも深部に位置する第2の領域52とである。

【0059】
ステップS6において、特徴量算出部334は、振幅強度データD(x、z’)のテクスチャ解析を行い、ステップS5において設定した解析対象の領域について、テクスチャ特徴量を算出する。テクスチャ特徴量は、画像データのテクスチャ解析における、エントロピーおよび相関の少なくともいずれかを算出する。

【0060】
ステップS7において、出力部34は、算出されたテクスチャ特徴量を出力する。好ましくは、出力部34は、例えば図5に例示するように、テクスチャ特徴量を、解析対象とした領域の情報と共に、振幅強度データD(x、z’)に対応させて出力する(例えば、モニタに重ねて表示する)ことが好ましい。また好ましくは、出力部34は、予め測定されているテクスチャ特徴量の標準値を、ステップS6において算出した被検体9についてのテクスチャ特徴量と共に、出力する(例えば、標準値と算出したテクスチャ特徴量とを同一画面上に並べて表示する)ことが好ましい。テクスチャ特徴量の標準値は、軟骨下骨94に病変が生じていない、正常であることが確認されている被検体9について予め測定を行うことにより取得し、例えば記録部に記録しておけばよい。ユーザは、エントロピーの増大から、軟骨下骨の表層部位の空隙率が増大していることを把握することができ、相関の増大から、軟骨下骨の表層部位の後方に位置する海綿骨領域の骨密度が増大していることを把握することができる。

【0061】
以上、本発明に係る超音波解析システム1の超音波解析装置3によると、軟骨下骨94の病変を被爆を伴うことなく評価することができる。超音波解析装置3が軟骨下骨94の領域について計算するテクスチャ特徴量は、骨(海綿骨92)の微細構造の変化を反映している。よって、ユーザは、テクスチャ特徴量に基づいて軟骨下骨94の病変を評価することができ、変形性関節症を早期に発見することが可能となる。

【0062】
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。

【0063】
上記実施の形態では、表面位置検出部332は軟骨下骨94の表面位置を検出しているが、これに加えて軟骨91の表面位置を検出し、軟骨下骨94の表面位置をより高精度に検出してもよい。軟部組織93の内部と軟骨91の内部とでは音速が異なっている。よって、軟骨91の表面位置を検出すると、軟部組織93の領域と軟骨91の領域とのそれぞれについてより正確な仮定音速を用いて、軟骨下骨94の表面位置を検出することができる。軟骨91の内部の仮定音速としては、例えば1620m/sを用いることができる。表面位置検出部332が軟骨91の表面位置を検出する方法は、軟骨下骨94の表面位置を検出する方法と同様である。すなわち、表面位置検出部332は、コストマップを作成して、軟骨91と軟部組織93との境界位置を検出する。

【0064】
図4を参照して詳細に説明する。表面位置検出部332は、所定領域内に含まれる振幅強度データD(x,z)を記録部から抽出して使用する。所定領域とは、表面位置検出部332が検出した軟骨下骨94の表面位置から、深度方向の軟部組織93側に、厚さThを有する領域である。厚さThは、一般的に想定される人間の測定部位(軟骨91)の厚さの最大値である。表面位置検出部332は、想定される軟骨91の厚さの最大値に応じて、深度方向の探索範囲を決定する。そして、表面位置検出部332は、抽出した領域内の振幅強度データD(x,z)から、図4での説明と同様に、2つの領域(例えば、Cfw,Cbwと表現する)を設定する。表面位置検出部332は、2つの領域Cfw,Cbwのそれぞれについて、振幅レベルの平均値の差分を算出し、算出結果をコストマップのデータとして記録部に記録する。

【0065】
既に説明したように、軟骨91では超音波は反射せず、得られるエコー信号は微小または無となる。よって、軟骨下骨94の表面位置を検出する方法と同様に、表面位置検出部332は、記録部に記録したコストマップから、振幅レベルの差分が大きい領域Cfw,Cbwの位置を、深度方向における軟骨91の表面位置として決定する。

【0066】
さらに、軟骨91の表面位置の検出とあわせて、軟部組織93、軟骨91および軟骨下骨94の3層モデルでの超音波の屈折を考慮した、超音波入射角度のより高精度な推定を行ってもよい。超音波入射角度の推定は、例えば表面位置検出部332が行うことができる。

【0067】
さらに、超音波プローブ21の音場特性によって決まる指向特性(例えば、-6dB指向角)に基づいて、所定の入射角の範囲内の領域を選定して使用してもよい。例えば、表面位置検出部332が、超音波が送信された位置における軟骨91の表面(または軟骨下骨94の表面)の法線方向と、超音波の音軸とがなす角度を算出する。すなわち、表面位置検出部332は、超音波が送信された位置に対応する表面位置における法線ベクトルを算出し、算出した法線ベクトルと、超音波プローブ21が送信する超音波の音軸とがなす角度を算出する。表面位置検出部332は、深度方向zに対する法線ベクトルの角度θxを算出する。この角度θxが、軟骨表面(または軟骨下骨表面)に対する、超音波の音軸の入射角である。そして、例えば画像データ生成部331が、振幅強度データD(x、z)のうち、例えば-6dBの範囲内に含まれる角度θxの範囲内のデータを、より高精度な振幅強度データD(x、z)として選定して使用する。このような、超音波プローブ21の音場特性によって決まる指向特性に基づいて、所定の入射角の範囲内の領域を選定する方法は、後述するように、三次元の振幅強度データD(x,y,z’)についても適用することができる。

【0068】
さらに、超音波プローブ21が形成する音場の特性を補正してもよい。例えば、水中等の均質な媒質下での、超音波プローブ21の基本的な音響特性を予め計測しておき、振幅強度やエコースペクトルが深度に応じて変化する特性を排除してもよい。これにより、測定系に依存する振幅特性を低減することができる。

【0069】
上記実施の形態では、解析に用いる振幅強度画像として二次元の断面画像を取得しているが、三次元の断面画像を取得して、三次元の断面画像を解析してもよい。三次元の断面画像を解析する方法には、種々の態様がある。

【0070】
図7は、軟骨下骨表面で整列された三次元の振幅強度画像を模式的に示す図である。例えば、図7に示すように、取得した三次元の振幅強度データD(x,y,z’)から、x-z’平面に平行に、複数の二次元の振幅強度データD(x,z’)を切り出して作成し、切り出した複数の二次元の振幅強度データD(x,z’)のそれぞれについて、解析対象の領域を設定し、テクスチャ特徴量を計算してもよい。またこの際に、例示的に二次元の断面画像を用いて上記説明した、超音波プローブ21の音場特性によって決まる指向特性に基づいて、所定の入射角の範囲内の領域を選定して使用してもよい。すなわち、三次元の振幅強度データD(x,y,z’)から切り出した複数の二次元の振幅強度データD(x,z’)のそれぞれについて、例えば画像データ生成部331が、振幅強度データD(x,z’)のうち、例えば-6dBの範囲内に含まれる角度θxの範囲内のデータを、より高精度な振幅強度データD(x,z’)として選定して使用する。

【0071】
また例えば、切り出した複数の二次元の振幅強度データD(x,z’)を、例えば図中y軸方向に重ね合わせることで平均化し、平均化した二次元の振幅強度データDAVE(x,z’)について、解析対象の領域を設定し、テクスチャ特徴量を計算してもよい。平均化するために重ね合わせる方向も、図中y軸方向に限定されない。またこの際に、例示的に二次元の断面画像を用いて上記説明した、超音波プローブ21の音場特性によって決まる指向特性に基づいて、所定の入射角の範囲内の領域を選定して使用してもよい。すなわち、平均化した二次元の振幅強度データDAVE(x,z’)について、例えば画像データ生成部331が、振幅強度データDAVE(x,z’)のうち、例えば-6dBの範囲内に含まれる角度θxの範囲内のデータを、より高精度な幅強度データDAVE(x,z’)として選定して使用する。

【0072】
三次元の断面画像を取得する方法にも種々の態様がある。例えば、単素子のプローブを用いて、駆動機構4によりプローブをx方向およびy方向に走査してもよい。また例えば、二次元の断面画像用のプローブを用い、プローブの走査方向に直交するように、駆動機構4によりプローブをx方向またはy方向に走査してもよい。また例えば、三次元画像用のプローブを用い、駆動機構4を用いない構成としてもよい。

【0073】
上記実施の形態では、解析対象の領域として、超音波の音軸に沿う方向に、第1の領域51および第2の領域52の2つの領域を設定しているが、解析対象の領域の数は2つに制限されない。解析対象とする領域は、超音波の音軸に沿う方向に少なくとも1つ設定すればよい。

【0074】
上記実施の形態では、算出するテクスチャ特徴量として、エントロピーおよび相関の2つの特徴量を算出しているが、算出するテクスチャ特徴量の数は2つに制限されない。解析対象とする領域の数に応じて、テクスチャ特徴量は少なくとも1つ算出すればよい。

【0075】
上記実施の形態では、単素子プローブを駆動機構4により一次元状に機械的に走査することにより、二次元の断面画像を取得しているが、二次元の断面画像を取得する構成はこれに限定されない。例えば、一方向(例えば図2に示すx方向)に配列された複数の振動子を有している、二次元の断面画像用のプローブを用いてもよい。この場合、駆動機構4は超音波解析システム1の構成から省いてもよい。

【0076】
画像データ生成部331は、振幅強度データD(x,z)をさらに処理し、以降の処理に、振幅強度データD(x,z)に代えて、以下に例示する処理を施した処理済みの振幅強度データD(x,z)を用いてもよい。

【0077】
例えば、画像データ生成部331は、振幅強度データD(x,z)の移動平均を取り、平滑した振幅強度データDm(x,z)を生成してもよい。走査方向および深度方向への振幅強度データの連続性が悪い場合であっても、この平滑化処理により、軟骨下骨94の表面位置の検出精度を向上させることができる。

【0078】
さらに、画像データ生成部331は、平滑した振幅強度データDm(x,z)のうち、所定のしきい値レベルを越える信号強度をしきい値レベル以下に抑制した振幅強度データDcomp(x,z)を生成してもよい。このコンプレッサ処理により、ノイズ等の不要な高エコー振幅を抑制することができる。

【0079】
また、表面位置検出部332は、計算の処理時間を短縮するために、振幅強度データD(x,z)からデータ数を間引いて、間引いた振幅強度データD(x,z)を解析に用いてもよい。

【0080】
また、上記実施の形態では、表面位置検出部332は、深度方向に沿って隣接する2つの領域Nfw,Nbwを設定して、軟骨下骨94の表面位置を検出しているが、これに代えて、ダイクストラ法(最小コスト経路探索)を用いて軟骨下骨94の表面位置を検出してもよい。例えば、x方向の互いに異なる複数の位置x1,x2,x3の順に位置検出を行う場合を考える。例えば位置x2において位置検出を行うときは、その直前の位置x1において検出した軟骨下骨94の表面位置から、深度方向に所定の範囲を設定し、設定したその範囲内において、軟骨下骨94の表面位置を検出する。これにより、探索時間を短縮することができ、誤検出を抑制することができる。

【0081】
上記実施形態では、超音波解析装置3は送受信装置2と直接接続されているが、これらは有線または無線ネットワークで通信可能に接続されていてもよい。駆動機構4についても同様に、超音波解析装置3と有線または無線ネットワークで通信可能に接続されていてもよい。

【0082】
上記実施形態では、超音波解析装置3は一体の装置として実現されているが、超音波解析装置3は一体の装置である必要はなく、プロセッサ、メモリ、記録部等が別所に配置され、これらが有線または無線ネットワークで接続されていてもよい。入力部31および出力部34についても、プロセッサ、メモリ、記録部等と同じ箇所に配置される必要は必ずしもなく、それぞれ別所に配置されて互いに有線または無線ネットワークで通信可能に接続されていてもよい。

【0083】
上記実施形態では、超音波解析装置3の制御部32および信号処理部33の各機能ブロックは、単一のプロセッサで実行されているが、これら各機能ブロックは単一のプロセッサで実行される必要は必ずしもなく、複数のプロセッサで分散して処理されてもよい。また、プロセッサに代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)が処理を行ってもよいし、例えばGPU(Graphics Processing Unit)をアクセラレータとして用いて、プロセッサが行う並列演算処理を補助してもよい。すなわちプロセッサが行う処理とは、プロセッサまたはFPGAが、GPU等のアクセラレータを用いて行う処理も含むことを意味する。

【0084】
上記実施形態では、超音波プローブ21を用いて超音波エコー信号の振幅強度データDを取得し、振幅強度データDに設定した解析対象の領域について、テクスチャ特徴量を算出しているが、テクスチャ特徴量を算出する対象の画像データは、振幅強度データDに制限されない。例示した振幅モード以外の他のモードにより取得した超音波画像について、解析対象の領域を設定し、テクスチャ特徴量を算出してもよい。または、関節の被爆を伴うものの、超音波プローブ21を用いずに、X線CTにより関節の二次元または三次元の断面画像を取得し、解析対象とする領域を設定し、テクスチャ特徴量を算出することもできる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例では、ユーザが病変を評価しようとする対象である、膝関節内部の軟骨下骨の領域について、X線マイクロCT装置を用いた測定によるマイクロCTパラメータと、超音波を用いた測定に基づいて算出されるテクスチャ特徴量のパラメータとの対応性について検証を行った。被検体として同一の軟骨下骨のサンプルに対し、マイクロCTパラメータとテクスチャ特徴量パラメータとをそれぞれ算出し、測定手段が異なるこれらパラメータ間の相関性を算出した。各パラメータを算出する軟骨下骨の領域は、表層部位(L)および深層部位(L)の2つの領域とした。
【実施例】
【0086】
X線マイクロCT装置(SMX-100CT-SV3 TypeII、島津製作所、日本)を用いて、各領域について、マイクロCTパラメータとして次の3つのパラメータを算出した。
・軟骨下骨プレート内の空隙率(P
・軟骨下骨の厚さ(Tpl
・海綿骨領域の骨密度(BV/TVTb
【実施例】
【0087】
また、上記実施形態に示した本発明の超音波解析システムを用いて、各領域について、テクスチャ特徴量パラメータとして、次の2つのパラメータを算出した。これら2つのパラメータは、軟骨下骨表面に並行な方向(x方向)および垂直な方向(z方向)のそれぞれについて算出した。
・エントロピー(ENT)
・相関(COR)
【実施例】
【0088】
マイクロCTパラメータとテクスチャ特徴量パラメータとの間の相関性を表す指標として、ピアソンの相関係数を算出した。算出結果を表1に示す。
【実施例】
【0089】
【表1】
JP2019208971A_000003t.gif
【実施例】
【0090】
表中、テクスチャ特徴量パラメータのエントロピーENTおよび相関CORについて、添え字Lは軟骨下骨の表層部位を示し、添え字Lは表層部位よりも深部に位置する深層部位を示している。添え字XおよびZは、同時生起行列計算時に注目する2点の方向を示している。
【実施例】
【0091】
表層部位(L)については、エントロピー(ENTL1XおよびENTL1Z)が空隙率(P)と有意な正の相関を示している。よって、表層部位について算出されるテクスチャ特徴量のエントロピーENTL1は、軟骨下骨の空隙率を良く反映している。表層部位についてのエントロピーENTL1の増大は、軟骨下骨の表層部位の空隙率の増大を示している。
【実施例】
【0092】
深層部位(L)については、相関(CORL2XおよびCORL2Z)が軟骨下骨プレート厚さ(Tpl)と有意な負の相関を示している。x方向の相関(CORL2X)については、特に厚さ(Tpl)を良く反映している。z方向の相関(CORL2Z)については、海綿骨領域の骨密度(BV/TVTb)と有意な負の相関を示している。よって、深層部位について算出されるテクスチャ特徴量の相関CORL2は、軟骨下骨の厚みおよび海綿骨領域の骨密度を良く反映している。深層部位についての相関CORL2の増大は、海綿骨領域の骨密度の増大を示している。
【符号の説明】
【0093】
1 超音波解析システム
2 送受信装置
3 超音波解析装置
4 駆動機構
9 被検体
21 超音波プローブ
22 レシーバ
23 変換部
31 入力部
32 制御部
33 信号処理部
34 出力部
51 解析対象の領域(表層部位)
52 解析対象の領域(深層部位)
91 軟骨
92 骨(海綿骨)
93 軟部組織
94 軟骨下骨
95 膝表面
331 画像データ生成部
332 表面位置検出部
333 領域設定部
334 特徴量算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6