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明細書 :脳梗塞の処置用の医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-019734 (P2020-019734A)
公開日 令和2年2月6日(2020.2.6)
発明の名称または考案の名称 脳梗塞の処置用の医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/4418      (2006.01)
A61K  38/49        (2006.01)
A61P   7/02        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 31/4418
A61K 38/49
A61P 7/02
A61P 9/10
A61P 43/00 121
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2018-143437 (P2018-143437)
出願日 平成30年7月31日(2018.7.31)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
発明者または考案者 【氏名】垣塚 彰
【氏名】木下 久徳
【氏名】眞木 崇州
【氏名】高橋 良輔
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
【識別番号】100138911、【弁理士】、【氏名又は名称】櫻井 陽子
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
4C086
Fターム 4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC21
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA54
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZC75
要約 【課題】本願の課題は、脳梗塞の処置方法を提供することである。
【解決手段】脳梗塞の処置用の式(I)の化合物、当該化合物を含む医薬組成物、当該化合物を使用することを含む脳梗塞の処置用医薬の製造方法、脳梗塞の処置用医薬の製造における当該化合物の使用、または、当該化合物または医薬組成物を投与することを含む脳梗塞の処置方法を提供する。脳梗塞には、例えば、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞または心原性脳塞栓症が含まれる。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2020019734A_000009t.gif
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)-アルキル-カルボキシル、C(O)-アルキレン-カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0~4から選択される整数である〕
の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、脳梗塞の処置用の医薬組成物。
【請求項2】
Raが、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキルおよびアルコキシから成る群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物が、
4-アミノ-3-(6-フェニルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-(6-p-トルイルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-(6-m-トルイルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-(6-o-トルイルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-(6-ビフェニル-2-イルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
3-[6-(2-アセチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]-4-アミノナフタレン-1-スルホン酸;
3-[6-(3-アセチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]-4-アミノナフタレン-1-スルホン酸;
3-[6-(4-アセチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]-4-アミノナフタレンスルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2,4-ジクロロフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-トリフルオロメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-トリフルオロメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-クロロフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3-クロロフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-クロロフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-メトキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-メトキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-イソプロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-イソプロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-フェノキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3-メトキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2,3-ジメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2,5-ジメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3,5-ジメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3-トリフルオロメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-{4-[5-(1-アミノ-4-スルホナフタレン-2-イルアゾ)ピリジン-2-イル]フェニル}-4-オキソブチル酸;
4-アミノ-3-(6-ビフェニル-3-イルピリジン-3-イルアゾ)ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3-シアノフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-シアノフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレンスルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-ベンゾイルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-プロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(5-フルオロ-2-プロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-フルオロ-6-プロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-プロポキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(5-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-ブトキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-ヘキシルオキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-ブチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-ヒドロキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-{6-[2-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニル]ピリジン-3-イルアゾ}ナフタレン-1-スルホン酸;
4-{2-[5-(1-アミノ-4-スルホナフタレン-2-イルアゾ)ピリジン-2-イル]フェノキシ}ブチル酸;
4-アミノ-3-{6-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ピリジン-3-イルアゾ}ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2-イソブトキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4-メチルビフェニル-2-イル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4’-クロロ-4-メチルビフェニル-2-イル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(4,3’,5’-トリメチルビフェニル-2-イル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3’-クロロ-4-メチルビフェニル-2-イル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(2,6-ジメチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
4-アミノ-3-[6-(3-ホルミル-2-イソプロポキシ-5-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;および、
4-アミノ-3-[6-(3-ホルミル-2-ブトキシ-5-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸;
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物が、4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
脳梗塞が、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞または心原性脳塞栓症である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
脳梗塞後の再灌流時に投与される、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
脳梗塞の発症から約8時間以内に投与される、請求項1~6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
脳梗塞の発症から約4.5時間以内に投与される、請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
血栓溶解剤と併用される、請求項1~8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
血栓溶解剤がtPAである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
静脈内投与される、請求項1~10のいずれかに記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願は、脳梗塞の処置用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞は、一般に、脳動脈の閉塞または狭窄により脳虚血が生じ、脳組織が酸素または栄養の不足のため壊死または壊死に近い状態になることを特徴とする疾患である。脳梗塞には、脳内小動脈病変が原因の「ラクナ梗塞」、頸部ないし頭蓋内の比較的大きな動脈のアテローム硬化が原因の「アテローム血栓性脳梗塞」、心疾患による「心原性脳塞栓症」等の病型が含まれる。脳梗塞は、死亡率の高い疾患であり、また、一旦発症すると後遺症を残す可能性が高く、患者のQOL、福祉および医療経済面でも大きな課題となっている。
【0003】
急性期の脳梗塞に対しては、組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:tPAまたはt-PA)による血栓溶解治療が第一選択である。プラスミノーゲンは、血管内に出来た血栓を強力に溶解する酵素である。脳の動脈に生じた血栓により脳梗塞が起こった後にtPAを投与することにより、血栓を溶解し、血液の流れを回復させる治療が行われている(血栓溶解療法)。tPA治療により自立して生活できるまで回復する患者は40-50%と報告されている。しかしながら、発症からtPA投与までの時間が長く経過した場合には、脳出血を引き起こすことがあり、発症後4.5時間以内の患者にしか使用できない。また、最近、発症から8時間以内の治療可能な患者に機械的血栓回収療法により血栓を除去する血管内治療を行うことも実施されつつある。いずれにしても更なる治療改善率が臨床現場から強く望まれており、新たな治療法を開発することは極めて重要である。
【0004】
ある種の4-アミノ-ナフタレン-1-スルホン酸誘導体は、VCP(valosin-containing protein)ATPase阻害活性を有し、様々な疾患に対する治療効果が期待されている(特許文献1)。特に、眼疾患およびレプチン抵抗性の処置または予防に有効であることが知られている(特許文献2~5)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2012/014994号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2012/043891号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2014/129495号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2015/129809号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2015/033981号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の目的は、脳梗塞の処置用の医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、VCP調節剤が大脳皮質ニューロンの保護効果を有し、脳梗塞の処置に有効であることを見出した。
【0008】
従って、ある態様では、本願は、式(I):
【化1】
JP2020019734A_000003t.gif
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)-アルキル-カルボキシル、C(O)-アルキレン-カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0~4から選択される整数である〕
の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、脳梗塞の処置用の医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、脳梗塞の処置用の医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】初代大脳皮質ニューロンを用いるインビトロ実験の手順を示す。
【図2】酸素グルコース欠乏(OGD)処理後のニューロンのKUS121存在下および非存在下での生存能を示す。
【図3】OGD処理後のニューロンにおける、KUS121存在下および非存在下でのMAP2陽性面積を示す。
【図4】OGD処理後のニューロンにおける、KUS121存在下および非存在下でのATPレベルを示す。
【図5】ツニカマイシン処理後のニューロンにおける、KUS121存在下および非存在下でのC/EBP相同タンパク質(CHOP)発現量を示す。
【図6】マウスを用いるインビボ実験の手順を示す。
【図7】一過性限局的脳虚血を誘導した後、KUS121または媒体を投与したC57BL/6マウスの、ロータロッド上の滞在時間を示す。
【図8】一過性限局的脳虚血を誘導した後、KUS121または媒体を投与したC57BL/6マウスの脳における、梗塞体積を示す。
【図9】KUS121または媒体を投与した後、一過性限局的脳虚血を誘導したCB-17マウスの脳における、梗塞体積を示す。
【図10】KUS121または媒体を投与した後、一過性限局的脳虚血を誘導したCB-17マウスの大脳皮質におけるNeuNの発現量を示すウェスタンブロットの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。例えば、「約20」は、「18~22」を含むものとする。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば、「約20~30」は、「18~33」を含むものとする。

【0012】
特に具体的な定めのない限り、本開示で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本開示で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本開示において、一般的な理解に優先する。

【0013】
「アルキル」は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する、1価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。アルキルは、例えば直鎖および分枝鎖ヒドロカルビル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびネオペンチルを意味するが、これらに限定されない。

【0014】
基の接頭語「置換」は、当該基の1個以上の水素原子が、同一または異なる指定する置換基によって置換されていることを意味する。

【0015】
「アルキレン」は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する、2価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。アルキレン基は、分枝鎖および直鎖ヒドロカルビル基を含む。

【0016】
「アルコキシ」は、-O-アルキル(ここで、アルキルは本開示に定義されている)の基を意味する。アルコキシは、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシおよびn-ペントキシを意味するが、これらに限定されない。

【0017】
「アリール」は1個の環(例えばフェニル)または複数の縮合環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する6~14個の炭素原子の1価芳香族性炭素環式基を意味する。アリール基は典型的には、フェニルおよびナフチルを含む。
「アリールオキシ」は、-O-アリール(ここで、アリールは本開示に定義されている)の基を意味し、例えばフェノキシおよびナフトキシを含む。

【0018】
「シアノ」は、-CNの基を意味する。
「カルボキシル」または「カルボキシ」は-COOHまたはその塩を意味する。
「カルボキシエステル」は、-C(O)O-アルキル(ここで、アルキルは本開示に定義されている)の基を意味する。
「ハロ」は、ハロゲン、特に、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
「ヒドロキシ」は-OHの基を意味する。

【0019】
特に定めのない限り、本開示において明示的に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部分を命名し、次いで結合点に向かって隣接する官能基を命名して行う。例えば、置換基「アリールアルキルオキシカルボニル」は、(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を意味する。

【0020】
式(I)の化合物には、置換パターンによっては、エナンチオマーまたはジアステレオマーが存在し得る。式(I)の化合物は、ラセミ体であってもよく、既知方法で立体異性的に純粋な成分に分離したものであってもよい。ある種の化合物は、互変異性体であり得る。

【0021】
「エステル」は、インビボで加水分解され得るエステルを意味し、人体で容易に分解されて親化合物またはその塩を放出するものを含む。好適なエステル基は、例えば、薬学的に許容し得る脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸に由来するもの(ここで、各アルキルまたはアルケニル基は、例えば6個以下の炭素原子を有する)を含む。具体的なエステルの例には、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルが含まれる。
「オキシド」は、ヘテロアリール基の窒素環原子が酸化され、N-オキシドを形成しているものを意味する。

【0022】
「薬学的に許容し得る塩」は、式(I)の化合物の無機または有機酸との塩であり得る。好ましい塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸または硫酸との塩、または、有機カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸またはナフタレンジスルホン酸との塩である。

【0023】
また、薬学的に許容し得る塩は、常套の塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウムまたはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムまたはマグネシウム塩)、または、アンモニアまたは有機アミン(例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、ジヒドロアビエチルアミン、メチルピペリジン、L-アルギニン、クレアチン、コリン、L-リジン、エチレンジアミン、ベンザチン、エタノールアミン、メグルミンまたはトロメタミン)から誘導されるアンモニウム塩、特にナトリウム塩であり得る。

【0024】
「溶媒和物」は、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成している式(I)の化合物を意味する。好適な溶媒和物は水和物である。

【0025】
本開示において「式(I)の化合物」に言及する場合、文脈中で不適切でない限り、そのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩および溶媒和物も包含することを意図する。

【0026】
ある実施態様では、式(I)中、Raは、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキルおよびアルコキシから成る群から選択される。
ある実施態様では、式(I)中、Raは、それぞれ独立して、ハロおよびアルキルから成る群から選択される。
ある実施態様では、式(I)中、Raは2個存在し、一方がハロであり、他方がアルキルである。

【0027】
ある実施態様において、式(I)の化合物は、下記の表1の化合物から選択される:
【表1-1】
JP2020019734A_000004t.gif

【0028】
【表1-2】
JP2020019734A_000005t.gif

【0029】
【表1-3】
JP2020019734A_000006t.gif

【0030】
ある実施態様では、医薬組成物の有効成分は、下記式
【化2】
JP2020019734A_000007t.gif
で表される4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸、または、そのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、特にナトリウム塩が好ましい。

【0031】
式(I)の化合物、特に、上記の化合物の特性および合成方法は、国際公開第2012/014994号パンフレット(特許文献1)に詳細に記載されている。

【0032】
本開示において、「脳梗塞」は、脳虚血に起因する脳の損傷を意味し、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞および心原性脳塞栓症を含むが、これらに限定されない。脳虚血の原因としては、脳血栓、脳栓塞、血管攣縮、低血圧、低酸素血症などが挙げられるが、これらに限定されない。本開示において、神経障害、高次機能障害、感情障害等の脳梗塞に関連する症状または脳梗塞の後遺症も、脳梗塞の用語に含まれるものとする。

【0033】
本開示において、「処置」は、疾患または症状の治癒、寛解、緩和、改善および/または一時的寛解を目的とするいかなる医学的介入も包含する。例えば、「処置」は、疾患の進行の遅延もしくは停止、病変の退縮もしくは消失、または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的介入を包含する。

【0034】
疾患の処置の対象としては、動物、典型的には哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)、特にヒトが挙げられる。

【0035】
医薬組成物の投与方法は特に限定されないが、経口投与、非経腸投与、注射、輸液等の一般的な投与経路を経ることができ、組成物は、各投与経路に適する剤形であり得る。髄腔内投与および硬膜外投与、または脳室への投与も可能である。ある実施態様では、医薬組成物は静脈内に投与される。

【0036】
経口投与の剤形としては、顆粒剤、細粒剤、粉剤、被覆錠剤、錠剤、坐剤、散剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、チュアブル剤、液剤、懸濁剤、乳濁液などが挙げられる。また注射による投与の剤形としては、静脈注射用、点滴投与用、活性物質の放出を延長する製剤等などの医薬製剤一般の剤形を採用することができる。静脈注射用または点滴投与用の剤形としては、水性および非水性の注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、等張化剤等を含んでもよい);ならびに水性および非水性の注射懸濁液(懸濁剤、増粘剤等を含んでもよい)が挙げられる。注射用の投与形は、密閉したアンプルやバイアル中に提供されてもよく、凍結乾燥物として提供され、使用直前に滅菌液体(例えば、注射用水)を加えて調製してもよい。注射溶液または懸濁液を、粉末、顆粒または錠剤から調製してもよい。

【0037】
これらの剤形は、常法により製剤化することによって製造される。さらに製剤上の必要に応じて、医薬的に許容し得る各種の製剤用物質を配合することができる。製剤用物質は製剤の剤形により適宜選択することができるが、例えば、緩衝化剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等が挙げられる。

【0038】
医薬組成物の投与量および投与回数は、有効量の式(I)の化合物が対象に投与されるように、投与対象の動物種、健康状態、年齢、体重、投与経路、投与形態等に応じて当業者が適宜設定できる。ある状況での有効量は、日常的な実験によって容易に決定することができ、通常の臨床医の技術および判断の範囲内である。例えば、約0.001~約1000mg/kg体重/日、約0.01~約300mg/kg体重/日、あるいは約0.1~約100mg/kg体重/日の式(I)の化合物を投与し得る。例えば、医薬組成物は単回投与してもよく、複数回投与してもよく、持続投与してもよい。

【0039】
ある実施態様では、医薬組成物は、脳梗塞の急性期に投与される。「急性期」とは、脳梗塞の発症から14日以内の期間を意味する。本開示の医薬組成物は、対象が脳梗塞を発症した後、例えば、対象が脳梗塞を発症した後に速やかに、例えば、発症から約3時間以内、約4.5時間以内、約6時間以内、約8時間以内、約12時間以内または約24時間以内に投与され得る。本開示では、脳虚血の原因(例えば、脳動脈の閉塞または狭窄)が発生した時点を、脳梗塞の発症の時点とみなすことを意図する。ある実施態様では、医薬組成物は、脳梗塞の急性期に単回または複数回投与される。ある実施態様では、医薬組成物は、脳梗塞の急性期の全体または一部にわたって持続的に投与される。ある実施態様では、医薬組成物は、脳梗塞による炎症が生じる前に投与される。炎症の有無は、例えば、血中CRPまたはIL-1βなどの炎症性マーカーにより判定することができる。

【0040】
ある実施態様では、医薬組成物は、閉塞した血管の再灌流処置(例えば、血栓溶解剤の投与または外科手術による)の直前または直後に投与され得る。「再灌流処置の直前」は、再灌流処置の数分ないし数十分前、例えば、約60分前、約30分前、約20分前、約15分前、約10分前、約5分前または約3分前から再灌流処置までの時点を意味する。「再灌流処置の直後」は、再灌流処置から、再灌流処置の数分ないし数十分後、例えば、約60分後、約30分後、約20分後、約15分後、約10分後、約5分後または約3分後までの時点を意味する。ある実施態様では、医薬組成物は、再灌流処置と同時に投与される。あるいは、医薬組成物を持続投与している間に再灌流処置を行ってもよい。

【0041】
ある実施態様では、急性期に1回、約1~約1000mg/kg体重、約5~約500mg/kg体重、約10~約300mg/kg体重、約25~約200mg/kg体重、例えば約100mg/kg体重の式(I)の化合物を静脈内投与し得る。

【0042】
式(I)の化合物は、単独で、または、1種またはそれ以上のさらなる有効成分、特に、脳梗塞の処置用の有効成分と併用できる。併用に適する有効成分には、例えば、血栓溶解剤(例えば、tPA、rtPA(例えば、アルテプラーゼ、モンテプラーゼ、パミテプラーゼ、デスモテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)、ウロキナーゼ)、抗血小板薬(例えば、オザグレルナトリウム、アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール)、選択的トロンビン阻害薬(例えば、アルガトロバン)、ヘパリン、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、脳保護薬(例えば、エダラボン)、高張グリセロール、高張マンニトール、血管拡張薬、抗炎症薬、スタチン系薬剤等、特にrtPA、特にアルテプラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。

【0043】
成分を「併用する」ことは、全成分を含有する投与剤形の使用および各成分を別個に含有する投与剤形の組合せの使用のみならず、それらが脳梗塞の処置のために使用される限り、各成分を同時に、または、いずれかの成分を遅延して投与することも意味する。2種またはそれ以上のさらなる有効成分を併用することもできる。

【0044】
式(I)の化合物の投与に加えて、薬物療法以外の治療法を実施することもできる。適する治療法には、例えば、機械的血栓回収療法、開頭外減圧療法、緊急頸動脈内膜剥離術、急性期再開通療法、急性期頸部頸動脈血行再建術(血管形成術/ステント留置術)等の外科手術、遺伝子治療、再生医療等が含まれる。

【0045】
ある態様では、脳梗塞の処置を必要としている対象に式(I)の化合物を投与することを含む、脳梗塞の処置方法が提供される。
ある態様では、脳梗塞の処置に使用するための式(I)の化合物が提供される。
ある態様では、脳梗塞を処置するための式(I)の化合物の使用が提供される。
ある態様では、脳梗塞の処置用の医薬組成物の製造における、式(I)の化合物の使用が提供される。

【0046】
例えば、下記の実施態様が提供される。
[1]式(I):
【化3】
JP2020019734A_000008t.gif
〔式中、
Raはハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキル、アリール、ハロまたはアルキル置換アリール、アルコキシ、ヒドロキシまたはカルボキシ置換アルコキシ、アリールオキシ、ハロまたはアルキル置換アリールオキシ、CHO、C(O)-アルキル、C(O)-アリール、C(O)-アルキル-カルボキシル、C(O)-アルキレン-カルボキシエステルおよびシアノから成る群から選択され、
mは0~4から選択される整数である〕
の化合物またはそのエステル、オキシド、薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む、脳梗塞の処置用の医薬組成物。
[2]Raが、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ハロ置換アルキルおよびアルコキシから成る群から選択される、第1項に記載の医薬組成物。
[3]Raが、それぞれ独立して、ハロおよびアルキルから成る群から選択される、第1項または第2項に記載の医薬組成物。
[4]Raが2個存在し、一方がハロであり、他方がアルキルである、第1項~第3項のいずれかに記載の医薬組成物。
[5]式(I)の化合物が表1に記載の化合物から選択される、第1項~第4項のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]式(I)の化合物が、4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸である、第1項~第5項のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸ナトリウム塩を含む、第1項~第6項のいずれかに記載の医薬組成物。
[8]脳梗塞が、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞または心原性脳塞栓症である、第1項~第7項のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]脳梗塞がラクナ梗塞である、第1項~第8項のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]脳梗塞の急性期に投与される、第1項~第9項のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]脳梗塞後の再灌流処置の直前または直後に投与される、第1項~第10項のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]脳梗塞後の再灌流処置と同時に投与される、第1項~第10項のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]再灌流処置が血栓溶解剤の投与である、第11項または第12項に記載の医薬組成物。
[14]再灌流処置が外科手術である、第11項または第12項に記載の医薬組成物。
[15]単回投与される、第1項~第14項のいずれかに記載の医薬組成物。
[16]複数回投与される、第1項~第14項のいずれかに記載の医薬組成物。
[17]持続投与される、第1項~第14項のいずれかに記載の医薬組成物。
[18]脳梗塞の発症から約24時間以内に投与される、第1項~第17項のいずれかに記載の医薬組成物。
[19]脳梗塞の発症から約12時間以内に投与される、第1項~第18項のいずれかに記載の医薬組成物。
[20]脳梗塞の発症から約8時間以内に投与される、第1項~第19項のいずれかに記載の医薬組成物。
[21]脳梗塞の発症から約6時間以内に投与される、第1項~第20項のいずれかに記載の医薬組成物。
[22]脳梗塞の発症から約4.5時間以内に投与される、第1項~第21項のいずれかに記載の医薬組成物。
[23]脳梗塞の発症から約3時間以内に投与される、第1項~第22項のいずれかに記載の医薬組成物。
[24]約1~約1000mg/kg体重の式(I)の化合物を投与するための、第1項~第23項のいずれかに記載の医薬組成物。
[25]約5~約500mg/kg体重の式(I)の化合物を投与するための、第1項~第24項のいずれかに記載の医薬組成物。
[26]約10~約300mg/kg体重の式(I)の化合物を投与するための、第1項~第25項のいずれかに記載の医薬組成物。
[27]約25~約200mg/kg体重の式(I)の化合物を投与するための、第1項~第26項のいずれかに記載の医薬組成物。
[28]血栓溶解剤と併用される、第1項~第27項のいずれかに記載の医薬組成物。
[29]血栓溶解剤がtPAである、第28項に記載の医薬組成物。
[30]血栓溶解剤がアルテプラーゼである、第28項または第29項に記載の医薬組成物。
[31]静脈内投与される、第1項~第30項のいずれかに記載の医薬組成物。

【0047】
本開示で引用するすべての文献は、出典明示により本開示の一部とする。
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱せずに、変更することができる。さらに、下記の実施例は、すべて非限定的な実施例であり、本発明を説明するためだけに供されるものである。
【実施例1】
【0048】
材料と方法
初代ニューロン培養
大脳ニューロン培養を、17日齢のスプラーグドーリーラット胚(清水実験材料)から、以前に記載された方法を使用して調製した(Maki T, et al, Annals of Clinical and Translational Neurology, 2014 Aug;1(8):519-33)。これを簡潔に説明する。皮質を取り出し、分離させた。細胞を、5%熱不動化ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、ポリ-D-リジンで被覆されたディッシュ上に、細胞200,000~250,000個/cmの密度で播種した。播種の24時間後、培地を0.5mMグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび2%B27サプリメントを含む神経基礎(Neurobasal)(NB)培地に替えた。培養したニューロンを、播種の14日後に実験に使用した。
【実施例1】
【0049】
酸素グルコース欠乏
培地を、グルコースを含まないDMEMに替えた。次いで、細胞を、Anaero Pack を備えた密封 Anaero コンテナ(三菱ガス化学)に1.5~2時間置いた。酸素グルコース欠乏の後、細胞を通常の培地に移し、正常酸素圧の5%COインキュベーターに戻した。
【実施例1】
【0050】
細胞生存試験
細胞生存能をCell Counting Kit-8 (CCK-8) アッセイ(同仁化学研究所)により評価した。CCK-8アッセイは、水溶性テトラゾリウム塩である2-(2-メトキシ-4-ニトロフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム一ナトリウム塩(WST-8)が、電子伝達体の存在下でデヒドロゲナーゼにより還元されると、水溶性ホルマザン染料に変換されることに基づく。細胞を10%CCK-8溶液と1~2時間37℃でインキュベートした。次いで、培養培地の吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した(測定波長450nm、参照波長630nm)。
【実施例1】
【0051】
免疫細胞化学
細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、続いて4%パラホルムアルデヒド(PFA)で15分間処理した。さらにPBSで2回洗浄した後、PBS/0.1%Tweenとインキュベートし(10分間)、3%BSA/PBSでブロックした(室温で1時間)。細胞をMAP2に対する一次抗体(1:1000、Sigma Aldrich、M1406)と、4℃で終夜インキュベートした。続いて、PBSで洗浄した後、二次抗体と室温で1時間インキュベートした。最後に、核をDAPIで対比染色した。
【実施例1】
【0052】
ATPアッセイ
ルシフェラーゼ化学発光をベースとする細胞のATP測定試薬(東洋インキ製造)により、製造業者のプロトコールに従って、細胞溶解物中のATPレベルを測定した。これを簡潔に説明する。製造業者により提供された溶解溶液100μLを、96ウェルプレートの各ウェル中の細胞に添加した。室温で5分間インキュベートした後、溶液のアリコートの発光をルミノメーターで測定した。
【実施例1】
【0053】
ウェスタンブロット
細胞を回収し、10%2-メルカプトエタノール(ナカライテスク)および1%プロテアーゼ阻害剤(ナカライテスク)を含むRIPAバッファー(20mM HEPES-KOH pH7.4、150mM NaCl、2mM EDTA、1%Nonidet-P40、1%デオキシコール酸ナトリウム)中で溶解した。切り出された脳のサンプルを、2-メルカプトメタノールおよびプロテアーゼ阻害剤を含むRIPAバッファー中でホモジナイズした。サンプルを超音波処理し、4℃、15,000rpmで15分間遠心分離し、上清を回収した。タンパク質(15~20μg/レーン)をロードし、5~20%SDS-PAGEで分離し、フッ化ポリビニリデン膜(Millipore)に移した。一次抗体は、以下の通りである:β-アクチン(1:5000、Sigma Aldrich、A5441)、CHOP(1:1000、Cell Signaling Technology、L63F7)、NeuN(1:2000、Merck Millipore、ABN78)、VCP(1:500、ABGENT、AP6920b)。増強された化学発光(ナカライテスク)による可視化のために、HRP標識二次抗体(Santa Cruz Biotechnology)を使用した。
【実施例1】
【0054】
マウス
成体のオスのC57BL/6(C57BL/6NJcl)およびCB-17(CB-17/lcr-+/+Jcl)マウス(6~7週齢)を、清水実験材料および日本クレアからそれぞれ購入した。食物と水を自由に摂取させた。
【実施例1】
【0055】
脳卒中手術
以前に記載された方法(Kasahara Y, Ihara M, Nakagomi T, et al. A highly reproducible model of cerebral ischemia/reperfusion with extended survival in CB-17 mice. Neuroscience Research, 2013 Jul;76(3):163-8)をわずかに改変して、CB-17マウスにおいて、遠位中大脳動脈閉塞(遠位MCAO)を実施した。これを簡潔に説明する。4%イソフルラン(Pfizer)の吸入により全身麻酔を誘導し、1.5%イソフルランの吸入により維持した。マウスを側臥位に置き、左眼球と左外耳道の間で皮膚を切開した。左唾液腺および側頭筋の一部を切除し、頭蓋骨を通して中大脳動脈(MCA)が見えるようにした。頭蓋骨に穿頭孔を作った。次いで、MCAを分離し、モノフィラメントナイロン糸で一過性に閉塞させた。22分間の閉塞の後、ナイロン糸の除去によりMCA血流を回復させた。手術の間、直腸温をモニターし、フィードバック制御された加熱パッドで36.0~37.2℃に維持した。
【実施例1】
【0056】
C57BL/6マウスでは、以前に記載された方法(Doyle KP, Fathali N, Siddiqui MR, et al. Distal hypoxic stroke: a new mouse model of stroke with high throughput, low variability and a quantifiable functional deficit. Journal of Neuroscience Methods, 2012 May 30;207(1):31-40)をいくらか改変して、低酸素による遠位MCAOを実施した。ナイロン糸による遠位MCAの閉塞の後に、10%酸素および90%窒素を含む大型チャンバーにマウスを入れた。30分間の低酸素条件の後、ナイロン糸を除去し、正常酸素圧条件に戻した。偽手術は、遠位MCAの閉塞以外は、脳卒中手術と同じであった。
【実施例1】
【0057】
脳卒中体積の評価
虚血の24時間後にマウスを深く麻酔し、PBSおよび4%PFAで経心的に灌流した。脳を取り出し、4%PFA中で48時間の後固定を行った。脳がバイアルの底に沈むまで、20%スクロース中でさらに凍結保護した。ニッスル染色のために、クライオスタットで脳を連続的に切断し、スライド上で600μm毎に厚さ20μmの切片にした(十字縫合に対して、前後に+2.0、+1.4、+0.8、+0.2、-0.4、-1.0および-1.6mm)。切片をクレシルバイオレット液中で15分間インキュベートし、70%メタノール中で5秒間脱水した。その後、スライドをマウント媒体で被覆した。各切片の同側半球の面積と梗塞の面積を、NIH imageJ ソフトウエアを用いて測定した。測定値に切片間の距離(600μm)を乗じ、脳全体で合計し、体積の測定値を得た。
【実施例1】
【0058】
加速ロータロッド試験
虚血の24時間後、マウスを加速ロータロッド装置(4分間かけて0rpmから40rpmに加速する)に乗せた。マウスが回転する円柱の上に居られる時間を測定した。3回試行し、落下までの最大の潜時を使用した。
【実施例1】
【0059】
KUS121の投与
国際公開第2012/014994号(特許文献1)に記載の方法により製造した4-アミノ-3-[6-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)ピリジン-3-イルアゾ]ナフタレン-1-スルホン酸ナトリウム塩(KUS121またはKUSと称する)を、5%Cremophor EL(Sigma)を含むPBSに溶解し、20μg/μLの溶液を作製した。限局的虚血脳卒中マウスモデルに、KUS121溶液を静脈内および腹腔内で投与した(各々、KUS121 100mg/kgおよび50mg/kg)。
【実施例1】
【0060】
統計分析
断りの無い限り、すべての値を平均±SEで表した。ダネットの検定(細胞生存試験)およびスチューデントのt検定(細胞生存試験以外の試験)を使用して統計分析を行った。p<0.05の差異を統計的有意差とみなした。
【実施例1】
【0061】
結果
KUS121はATP枯渇を防止することにより酸素グルコース欠乏条件下で初代大脳皮質ニューロンを保護する
初代大脳皮質ニューロンを用いるインビトロ実験の手順を図1に示す。KUS121の虚血条件下でのニューロン保護効果を評価するために、KUS121の存在下および非存在下で、酸素グルコース欠乏(OGD)処理後に細胞生存試験を実施した(図1上)。OGDをラットの大脳皮質初代ニューロン培養で2時間実施し、続いて21%Oおよびグルコース含有培地で22時間回復させた。対照ニューロンは、21%O、グルコース含有培地で24時間維持した。OGDへの暴露は初代大脳皮質ニューロンの細胞死を引き起こした。しかしながら、100μMおよび200μMのKUS121が実験中に存在すると、OGD処理後のニューロンの生存能は有意に改善された(媒体(DMSO)で18.1±1.9%、100μM KUSで43.5±3.1%、200μM KUSで42.4±3.7%;p<0.001)(図2)。さらに、100μMのKUS121は、MAP2陽性面積を媒体(DMSO)と比較して有意に増加させた(媒体(DMSO)で0.87±0.13%、100μM KUSで2.64±0.41%;p<0.05)(図3)。DMSO、または、OGD処理をしない場合のKUS121は、ニューロンの生存能に影響を与えなかった。
【実施例1】
【0062】
KUS121は病的状況においてATP枯渇を防止できると報告されているので、KUS121がOGD処理された初代大脳皮質ニューロンでも同様の効果を示すか否かを調べた。1.5時間のOGD処理後に、ルシフェラーゼをベースとするアッセイにより細胞のATPレベルを測定した。KUSによる処理は、ATPレベルを高めた(媒体(DMSO)で14.3±1.1%、100μM KUSで28.0±2.3%;p<0.001)(図4)。DMSO、または、OGD処理をしない場合のKUS121は、ATPレベルに対して効果がなかった。これらのデータは、KUS121がATP枯渇を防止することにより酸素グルコース欠乏条件下で初代大脳皮質ニューロンを保護することを示唆する。
【実施例1】
【0063】
KUS121はERストレス誘導条件下で初代大脳皮質ニューロンを保護する
虚血後にはERストレスが惹起されるので、初代大脳皮質ニューロンがツニカマイシンで処理されたときのKUS121の保護効果を試験した(図1下)。ツニカマイシン処理はERストレスを引き起こすことが知られている。C/EBP相同タンパク質(CHOP)はERストレスに誘導される細胞死の中心的なメディエーターであり、ERストレス下で上方調節される。大脳皮質ニューロンを0.25μg/mLツニカマイシンに6時間暴露した。KUS121は、ツニカマイシン処理した初代大脳皮質ニューロンにおいてCHOPの発現を抑制した(図5)。
【実施例1】
【0064】
KUS121による処置は運動機能を改善し、脳梗塞体積を低減する
マウスを用いるインビボ実験の手順を図6に示す。脳虚血に対するKUS121の効果を評価するために、C57BL/6マウスで一過性限局的脳虚血を誘導した。左中大脳動脈の遠位の閉塞の直後にKUS121を投与した(図6上)。閉塞の24時間後、KUS121は、媒体と比較して、ロータロッド上の滞在時間を有意に延長した(媒体(5%Cremophor)で134.5±18.4秒、KUSで201.0±21.8秒;p<0.05)(図7)。加えて、梗塞体積はKUS121処置により顕著に減少した(媒体(5%Cremophor)で8.8±0.63%、KUSで4.7±1.70%;p<0.05)(図8)。
【実施例1】
【0065】
神経保護効果をCB-17マウスで確認した。虚血直前のKUS121の投与(図6下)は、梗塞体積を低減した(媒体(5%Cremophor)で11.8±0.60%、KUSで5.74±1.64%;p<0.05)(図9)。さらに、大脳皮質のウェスタンブロットは、ニューロンマーカーであるNeuNの発現がKUS121により保存されることを明らかにした(図10)。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、これまで利用されてこなかった作用機序による脳梗塞の処置方法を提供するものであり、医療の分野で利用され得る。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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