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明細書 :無線通信システムおよび無線通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-017938 (P2020-017938A)
公開日 令和2年1月30日(2020.1.30)
発明の名称または考案の名称 無線通信システムおよび無線通信方法
国際特許分類 H04W  16/14        (2009.01)
H04W  74/08        (2009.01)
H04W  84/12        (2009.01)
FI H04W 16/14
H04W 74/08
H04W 84/12
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2018-233794 (P2018-233794)
出願日 平成30年12月13日(2018.12.13)
優先権出願番号 2018133473
優先日 平成30年7月13日(2018.7.13)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】アベセカラ ヒランタ
【氏名】中平 俊朗
【氏名】篠原 笑子
【氏名】村上 友規
【氏名】石原 浩一
【氏名】林 崇文
【氏名】松井 宗大
【氏名】山本 高至
【氏名】尹 博
出願人 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100151002、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 剛之
【識別番号】100201673、【弁理士】、【氏名又は名称】河田 良夫
審査請求 未請求
テーマコード 5K067
Fターム 5K067AA13
5K067AA28
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG09
要約 【課題】他セル無線局の受信信号強度を閾値判定するだけではなく、過去データを基に送信を開始する/しないを学習し、効率的に送信を実施してスループットの向上を可能にする。
【解決手段】共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信システムにおいて、無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機と送信する場合の伝送レートを選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する制御手段を備える。
【選択図】 図3
特許請求の範囲 【請求項1】
共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信システムにおいて、
前記無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機を選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する制御手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信システムにおいて、
前記無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機と送信する場合の伝送レートを選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する制御手段を備えた
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記通信特性は、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間またはスループットに相当する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記学習テーブルは、前記チャネル状態に対して前記通信動作としてフレームを送信したときの送信結果に基づいて、前記チャネル状態と前記通信動作と前記通信特性との関係を更新する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信方法において、
前記無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機を選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信方法において、
前記無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機と送信する場合の伝送レートを選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の無線通信方法において、
前記通信特性は、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間またはスループットに相当する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の無線通信方法において、
前記学習テーブルは、前記チャネル状態に対して前記通信動作としてフレームを送信したときの送信結果に基づいて、前記チャネル状態と前記通信動作と前記通信特性との関係を更新する
ことを特徴とする無線通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)の稠密環境において、各無線局のCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)制御に起因するスループットの低下を改善する無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやスマートフォン等の持ち運び可能で高性能な無線端末の普及により企業や公共スペースだけではなく、一般家庭でもIEEE802.11標準規格の無線LANが広く使われるようになっている。IEEE802.11標準規格の無線LANには、 2.4GHz帯を用いるIEEE802.11b/g/n 規格の無線LANと、5GHz帯を用いるIEEE802.11a/n/ac規格の無線LANがある。
【0003】
IEEE802.11b規格やIEEE802.11g規格の無線LANでは、2400MHzから2483.5MHz間に5MHz間隔で13チャネルが用意されている。ただし、同一場所で複数のチャネルを使用する際は、干渉を避けるためスペクトルが重ならないようにチャネルを使用すると最大で3チャネル、場合によっては4チャネルまで同時に使用できる。
【0004】
IEEE802.11a規格の無線LANでは、日本の場合は、5170MHzから5330MHz間と、5490MHzから5710MHz間で、それぞれ互いに重ならない8チャネルおよび11チャネルの合計19チャネルが規定されている。なお、IEEE802.11a規格では、チャネル当たりの帯域幅が20MHzに固定されている。
【0005】
無線LANの最大伝送速度は、IEEE802.11b規格の場合は11Mbps であり、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格の場合は54Mbps である。ただし、ここでの伝送速度は物理レイヤ上での伝送速度である。実際にはMAC(Medium Access Control )レイヤでの伝送効率が50~70%程度であるため、実際のスループットの上限値はIEEE802.11b規格では5Mbps 程度、IEEE802.11a規格やIEEE802.11g規格では30Mbps 程度である。また、伝送速度は、情報を送信しようとする無線局が増えればさらに低下する。
【0006】
一方で、有線LANでは、Ethernet(登録商標)の100Base-T インタフェースをはじめ、各家庭にも光ファイバを用いたFTTH(Fiber to the home)の普及から、 100Mbps ~1Gbps 級の高速回線の提供が普及しており、無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められている。
【0007】
そのため、2009年に標準化が完了したIEEE802.11n規格では、これまで20MHzと固定されていたチャネル帯域幅が最大で40MHzに拡大され、また、空間多重送信技術(MIMO:Multiple input multiple output)技術の導入が決定された。IEEE802.11n規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で 600Mbps の通信速度を実現可能である。
【0008】
さらに、2013年に標準化が完了したIEEE802.11ac規格では、チャネル帯域幅を80MHzや最大で 160MHz(または80+80MHz)まで拡大することや、空間分割多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)を適用したマルチユーザMIMO(MU-MIMO)送信方法の導入が決定している。IEEE802.11ac規格で規定されているすべての機能を適用して送受信を行うと、物理レイヤでは最大で約 6.9Gbps の通信速度を実現可能である。
【0009】
また、現在策定中のIEEE802.11ax規格では、上記の20MHz,40MHz,80MHz, 160MHz,80+80MHzのチャネルを細かいサブチャネルに分け、フレームの送受信ができるOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access) が規定される見込みである。OFDMAを用いると、上記チャネルを細かいサブチャネルに分けてリソースユニット単位で複数の無線局による同時送信が可能となる。さらに、IEEE802.11ax規格では、キャリアセンス閾値(CCA閾値)制御により周辺の他セルからの干渉を抑えつつ通信機会を増大する機能が規定される見込みである(非特許文献1)。
【0010】
IEEE802.11規格の無線LANは、 2.4GHz帯または5GHz帯の免許不要な周波数帯で運用するため、IEEE802.11規格の無線基地局は、無線LANセル(BSS:Basic Service Set )を形成する際に、自無線基地局で対応可能な周波数チャネルの中から1つの周波数チャネルを選択して運用する。
【0011】
自セルで使用するチャネル、帯域幅およびそれ以外のパラメータの設定値および自無線基地局において対応可能なその他のパラメータは、定期的に送信するBeaconフレームや、無線端末から受信するProbe Request フレームに対するProbe responseフレーム等に記載し、運用が決定された周波数チャネル上でフレームを送信し、配下の無線端末および周辺の他無線局に通知することで、セルの運用を行っている。
【0012】
無線基地局において、周波数チャネルや帯域幅およびその他のパラメータの選択および設定方法には、次の4つの方法がある。
(1) 無線基地局の製造メーカで設定されたデフォルトのパラメータ値をそのまま使用する方法
(2) 無線基地局を運用するユーザが手動で設定した値を使用する方法
(3) 各無線基地局が起動時に自局において検知する無線環境情報に基づいて自律的にパラメータ値を選択して設定する方法
(4) 無線LANコントローラなどの集中制御局で決定されたパラメータ値を設定する方法
【0013】
また、同一場所で同時に使えるチャネル数は、通信に用いるチャネル帯域幅によって、 2.4GHz帯の無線LANでは3つ、5GHz帯の無線LANでは2つ,4つ,9つ,または19のチャネルになるので、実際に無線LANを導入する際には無線基地局が自BSS内で使用するチャネルを選択する必要がある(非特許文献2)。
【0014】
チャネル帯域幅を40MHz、80MHz、 160MHzまたは80+80MHzと広くする場合、5GHz帯において同一場所で同時に使えるチャネル数は、チャネル帯域幅が20MHzで19チャネルだったものが、9チャネル、4チャネル、2チャネルと少なくなる。すなわち、チャネル帯域幅が増加するにつれて、使えるチャネル数が低減することになる。
【0015】
使用可能なチャネル数よりもBSS数が多い無線LANの稠密環境では、複数のBSSが同一チャネルを使うことになる(OBSS:Overlapping BSS )。そのため無線LANでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いて、キャリアセンスによりチャネルが空いているときにのみデータの送信を行う自律分散的なアクセス制御が使われている。
【0016】
具体的には、送信要求が発生した無線局は、まず所定のセンシング期間(DIFS:Distributed Inter-Frame Space )だけキャリアセンスを行って無線媒体の状態を監視し、この間に他の無線局による送信信号が存在しなければ、ランダム・バックオフを行う。無線局は、引き続きランダム・バックオフ期間中もキャリアセンスを行うが、この間にも他の無線局による送信信号が存在しない場合に、チャネルの利用権を得る。なお、他の無線局による送受信は、予め設定されたキャリアセンス閾値よりも大きな信号を受信するか否かで判断される。チャネルの利用権を得た無線局は、同一BSS内の他の無線局にデータを送信し、またそれらの無線局からデータを受信できる。このようなCSMA/CA制御を行う場合、同一チャネルを使用する無線LANの稠密環境では、キャリアセンスによりチャネルがビジーになる頻度が高くなるためスループットが低下する。したがって、周辺環境をモニタリングし、使用するチャネル、送信電力値、キャリアセンス閾値、減衰値、OFDMAリソースユニット、収容トラヒック量や、環境情報に応じて同時送信の選定などを適切に実施することが重要になる。
【0017】
無線基地局におけるチャネルの選択などの上記パラメータの選択方法は、IEEE802.11標準規格で定まっていないため、各ベンダーが独自の方法を採用している。
【先行技術文献】
【0018】

【非特許文献1】Robert Stacey,“Specification Framework for TGax, ”2016年.
【非特許文献2】守倉正博、久保田周治監修、「802.11高速無線LAN教科書」改訂三版、インプレスR&D、2008年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
高効率無線LAN規格(IEEE802.11ax)では、BSSカラーを用いて帰属セルを識別する新たな仕組みが導入される予定である。フレーム送信待ちの送信局において、自セルと異なるBSSカラーの信号を検出すると当該信号の受信信号強度を計測し、その受信信号強度が閾値以下であれば、当該フレーム送信元の他セル無線局との干渉(与干渉および被干渉)の影響は少ないと判断し、送信待ちフレームの送信を開始する。
【0020】
しかし、送受信局における無線環境が異なる場合は、上記手順に従って信号送信を開始しても受信局にて当該フレームの正常受信ができない可能性があり、結果的にフレームの再送が必要となる。以下、図8を参照して説明する。
【0021】
図8において、自セルの送信局と受信局とは別に、自セルの受信局に近い位置に他のOBSS1のSTAと、自セルの送信局に近い位置に他のOBSS2のSTAがあり、送信局では他のOBSS1,OBSS2の各STAからの信号を検出する。
【0022】
送信局は自セルの受信局宛のフレームを組み立て(S21)、キャリアセンスを行い、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを取得する(S22)。その信号が他のOBSS1,OBSS2の信号であれば、その受信信号強度と閾値OBSS PDとを比較する(S23)。ここで、受信信号強度が閾値OBSS PD以上であれば送信待機し(S24)、閾値OBSS PD未満であれば送信を開始する(S25)。
【0023】
ここで、送信局が他のOBSS1の信号を検出し、その受信信号強度が閾値OBSS
PD未満であれば送信を開始するが、当該OBSS1の信号は受信局に近いため干渉となり、送信局からの信号を受信局で正常受信ができない可能性がある。逆に、送信局は他のOBSS2の信号を検出し、その受信信号強度が閾値OBSS PD以上であれば送信待機するが、当該OBSS2の信号は受信局から遠いため干渉とならず、送信局からの信号を受信局で正常受信できる可能性がある。なお、送信局における受信信号強度がCCA-ED(-62dBm)以上であれば、自セルおよび他のOBSSの信号に拘らず送信待機となる。
【0024】
閾値OBSS PDをCCA-SD(-82dBm)からCCA-ED(-62dBm)の範囲で変更した場合のスループット(受信パケット数/秒)の例を図6に示す。
【0025】
例えば、図6(1) に示す通信距離とスループットの例では、OBSS数を5とすると、通信距離が 1.5mでは、CCA閾値が-67dBmの場合のスループットが最大であるが、通信距離が5mになると、CCA閾値が-77dBmの場合のスループットが最大になる。
【0026】
このように、高効率無線LAN規格(IEEE802.11ax)では、他のOBSSに対するCCA閾値(OBSS PD)が任意に設定可能であっても固定であれば、必ずしも最大のスループットが得られるとは限らない。
【0027】
本発明は、他セル無線局の受信信号強度を閾値判定するだけではなく、送信する場合の伝送レートを含む過去データを基に送信を開始する/しないを学習し、効率的に送信を実施してスループットの向上を可能にする無線通信システムおよび無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
第1の発明は、共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信システムにおいて、無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機を選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する制御手段を備える。
【0029】
第2の発明は、共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信システムにおいて、無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機と送信する場合の伝送レートを選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する制御手段を備える。
【0030】
第1または第2の発明の無線通信システムにおいて、通信特性は、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間またはスループットに相当する。
【0031】
第1または第2の発明の無線通信システムにおいて、学習テーブルは、チャネル状態に対して通信動作としてフレームを送信したときの送信結果に基づいて、チャネル状態と通信動作と通信特性との関係を更新する。
【0032】
第3の発明は、共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信方法において、無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機を選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する処理を行う。
【0033】
第4の発明は、共用周波数帯上で複数の無線局が送信する無線通信方法において、無線局は、キャリアセンスによりフレームの送信/待機と送信する場合の伝送レートを選択する通信動作選択時に、検出した信号の受信信号強度と帰属セルを含むチャネル状態と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対する通信特性を予め学習した学習テーブルを参照し、該チャネル状態に対する通信特性が最大となる通信動作を選択する処理を行う。
【0034】
第3または第4の発明の無線通信方法において、通信特性は、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間またはスループットに相当する。
【0035】
第3または第4の発明の無線通信方法において、学習テーブルは、チャネル状態に対して通信動作としてフレームを送信したときの送信結果に基づいて、チャネル状態と通信動作と通信特性との関係を更新する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、共用無線周波数帯を用いる無線局が密集している環境において、過去の送信結果に基づいて送信成功率を最大化する学習を行うため、無線端末局および無線基地局における送信機会が増加し、スループットが向上する。また、不要な再送が減るため周波数利用効率が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明における無線局の構成例を示す図である。
【図2】本発明における無線局の処理手順例1を示すフローチャートである。
【図3】本発明における無線局の処理手順例2を示すフローチャートである。
【図4】処理手順例1に対応する学習テーブルの例を示す図である。
【図5】処理手順例2に対応する学習テーブルの例を示す図である。
【図6】通信距離とスループットの関係を示す図である。
【図7】通信距離とスループットの関係を示す図である。
【図8】従来の無線通信システムの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明における無線局の構成例を示す。ここでは、本発明の送信制御を行う制御手段に係わる各部を示すが、この各部は無線基地局APまたは無線端末局STAのいずれかにあってもよく、また無線基地局APと無線端末局STAの双方にあってもよい。

【0039】
図1において、無線局は、自セルの無線局とデータ送受信を行う無線通信部11と、自セルおよび他セルに属する無線局の無線環境情報(受信信号強度)を取得する無線環境情報取得部12と、学習テーブル保持部13と、無線環境情報に応じた適切なパラメータ(CCA閾値)を算出して設定するパラメータ制御部14と、キャリアセンスによりアクセス権を獲得するアクセス権獲得部15とにより構成される。

【0040】
図2は、本発明における無線局の処理手順例1を示す。
図2において、送信局は自セルの受信局宛のフレームを組み立てる(S1)。その後にキャリアセンスを行い、チャネル状態として検出した信号の受信信号強度と帰属セルを取得する(S2)。次に、学習テーブルを参照し、チャネル状態(受信信号強度と帰属セル)に対して、各通信動作(送信/待機)を選択した場合の通信特性(待機時間、スループット)に基づいて、通信動作を決定する(S3)。すなわち、通信特性が最大となる通信動作として、フレームの送信待機を決定するか(S4)、またはフレームの送信開始を決定する(S5)。さらに、送信開始を決定した場合には、その送信時間と送信結果に基づいて、学習テーブルのチャネル状態と通信動作に対する通信特性を更新する(S6)。一方、フレームの送信待機の場合には、待機した時間に基づいて学習テーブルのチャネル状態と通信動作に対する通信特性を更新する(S7)。

【0041】
図3は、本発明における無線局の処理手順例2を示す。
図3において、送信局は自セルの受信局宛のフレームを組み立て、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数を取得する(S11)。その後にキャリアセンスを行い、チャネル状態として検出した信号の受信信号強度と帰属セルを取得する(S12)。次に、学習テーブルを参照し、チャネル状態(受信信号強度と帰属セル)と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対して、各通信動作(送信/待機)を選択した場合の通信特性(待機時間、スループット)に基づいて、通信動作を決定する(S13)。すなわち、通信特性が最大となる通信動作として、フレームの送信待機を決定するか(S14)、またはフレームの送信開始および伝送レートを決定する(S15)。さらに、送信開始を決定した場合には、その送信時間と送信結果に基づいて、学習テーブルのペイロード長、MAC層再送回数、チャネル状態と通信動作に対する通信特性を更新する(S16)。一方、フレームの送信待機の場合には、待機した時間に基づいて、学習テーブルのペイロード長、MAC層再送回数、チャネル状態と通信動作に対する通信特性を更新する(S17)。

【0042】
本発明の無線通信システムにおいて、フレーム送信待ちの送信局は、自セルにおいて予め規定された初期戦略に基づき、チャネル状態(受信信号強度と帰属セル)に対する通信動作(フレームを送信する/しない)を選択し、その結果として得られた通信特性(待機時間、スループット)を更新し、チャネル状態と通信動作と通信特性を関連付けた学習テーブルを完成する「学習フェーズ」と、チャネル状態に対して通信特性が最大となる通信動作を学習テーブルを参照して選択することで、無線リソースの最適利用を実施する「実行フェーズ」から構成される。

【0043】
以下、図2の処理手順例1および図4の学習テーブルに基づいて具体的に説明する。
チャネル状態sの時に通信動作aを実施した場合に得られる通信特性をQ(s,a) とし(Q値)、次式により過去のQ値を用いて現在のQ値の更新を行うことで学習テーブルを完成させる(Q学習)。ここで、αは学習率、Rは通信特性(待機時間、スループット)の瞬時測定値である。
Q(s,a) ←Q(s,a) +α[R-Q(s,a)]

【0044】
なお、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間が短いほど高い通信特性が得られるものとする。チャネル状態sの時に、学習テーブルの情報に基づいて、Q値が最大となる通信動作を行うことで、通信動作の最適化が可能となる。

【0045】
例えば、図4に示す学習テーブルにおいて、チャネル状態s1が「OBSS1のフレームを検出し、かつ、受信信号電力<-62dBm」の時には、「送信する(通信特性:-400 )」 よりも「待機する(通信特性:-200 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。また、チャネル状態s2が「OBSS2のフレームを検出し、かつ、受信信号電力<-62dBm」の時には、「待機する(通信特性:-100 )」 よりも「送信する(通信特性:-50)」 方の通信特性が高く、通信動作aとして送信する。これが、図8に示す状況に相当し、受信信号電力が-62dBm未満の場合に、OBSS1のフレームであれば待機し、OBSS2のフレームであれば送信する。

【0046】
また、チャネル状態s3が「空き状態」の時には、「待機する(通信特性:-100 )」 よりも「送信する(通信特性:0)」 方の通信特性が高く、通信動作aとして送信する。また、チャネル状態s4が「任意のOBSSのフレームを検出し、かつ、受信信号電力≧-62dBm」の時には、「送信する(-Inf(無限大)」 よりも「待機する(通信特性:-100 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。また、チャネル状態s5が「自BSSのフレームを検出」の時には、「送信する(-Inf(無限大)」 よりも「待機する(通信特性:-100 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。

【0047】
次に、図3の処理手順例2および図5の学習テーブルに基づいて具体的に説明する。
チャネル状態をωCH、送信しようとするフレームのペイロード長をL、MAC層再送回数をωRTの時に、例えば待機、6Mbit/s または54Mbit/s で送信などの通信動作aを実施した場合に得られる通信特性をQL(ωRT,ωCH,a)とし(Q値)、次式により過去のQ値を用いて現在のQ値の更新を行うことで学習テーブルを完成させる(Q学習)。
L(ωRT,ωCH,a)
←(1-α)QL(ωRT,ωCH,a)+α[R+γmax QL(ω'RT,ω'CH,a')]

【0048】
ここで、αは学習率、γは割引率(区間[0,1) に属する0.99など)、Rは待機時間または送信にかかる時間に負号を付けたものであり、ω'RT,ω'CHは、通信動作a' を実施した後の状態値であり、max QL は通信動作a' における最大値である。MAC層再送回数ωRTは、送信失敗すると1増加、送信成功すると0にリセットする。伝送レートは、受信成功率やスループット、送信にかかる時間などに大きく関与するので、制御対象としている。

【0049】
なお、フレーム送信を開始するまでに待機した待機時間が短いほど、またはスループットが高いほど高い通信特性が得られるものとする。チャネル状態ωCH、送信しようとするフレームのペイロード長L、MAC層再送回数ωRTが与えられた時に、対応する学習テーブルの情報に基づいて、Q値が最大となる通信動作を行うことで、通信動作の最適化が可能となる。

【0050】
図5に示す学習テーブルは、送信しようとするフレームのペイロード長が0~500 バイトの範囲、MAC層再送回数が0に対するものとする。ペイロード長またはMAC層再送回数が異なるフレームに対しては、別の学習テーブルが参照される。

【0051】
チャネル状態が「OBSS1のフレームを検出し、かつ、受信信号電力<-62dBm」の時には、「6Mbit/s で送信する(通信特性:-450 )」 、「54Mbit/s で送信する(通信特性:-500 )」 よりも「待機する(通信特性:-200 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。

【0052】
また、チャネル状態が「OBSS2のフレームを検出し、かつ、受信信号電力<-62dBm」の時には、「待機する(通信特性:-200 )」 よりも「54Mbit/s で送信する(通信特性:-100 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして54Mbit/s で送信する。これが、図6に示す状況に相当し、受信信号電力が-62dBm未満の場合に、OBSS1のフレームであれば待機し、OBSS2のフレームであれば54Mbit/s で送信する。

【0053】
また、チャネル状態が「空き状態」の時には、「待機する(通信特性:-Inf(無限大)」 よりも「54Mbit/s で送信する(通信特性:-50)」 方の通信特性が高く、通信動作aとして54Mbit/s で送信する。

【0054】
また、チャネル状態が「任意のOBSSのフレームを検出し、かつ、受信信号電力≧-62dBm」の時には、「送信する(-Inf(無限大)」 よりも「待機する(通信特性:-200 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。

【0055】
また、チャネル状態が「自BSSのフレームを検出」の時には、「送信する(-Inf(無限大)」 よりも「待機する(通信特性:-200 )」 方の通信特性が高く、通信動作aとして待機する。

【0056】
図4および図5に示す学習テーブルの通信特性は、学習フェーズにおいて、送信した場合の送信結果に応じて逐次更新される。なお、実行フェーズにおいても学習テーブルの通信特性の更新を行ってもよい。

【0057】
図6および図7は、通信距離とスループットの関係を示す計算機シミュレーション結果を示す。
図6(1) は、通信距離に対するスループット(受信パケット数/秒)を示し、OBSS数は5とする。図6(2) は、OBSS数に対するスループットを示し、通信距離は 2.5mとする。

【0058】
図7(1) は、OBSS数が4で、ペイロード長が12000bit、再送回数が0における通信距離に対するスループット(受信パケット数/秒)を示す。図7(2) は、OBSS数が4で、ペイロード長が4608bit 、再送回数が0における通信距離に対するスループット(受信パケット数/秒)を示す。

【0059】
上述したように、他のOBSSに対するCCA閾値(OBSS PD)が任意に設定可能であっても固定であれば、必ずしも最大のスループットが得られるとは限らない。それに対して、本発明による学習テーブルに基づき、チャネル状態(受信信号強度と帰属セル)と、送信しようとするフレームのペイロード長とMAC層再送回数に対して、通信特性(待機時間、スループット)が最大となる通信動作(フレームを送信する/しない)を選択すれば、常に安定した高いスループットを得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
11 無線通信部
12 無線環境情報取得部
13 学習テーブル保持部
14 パラメータ制御部
15 アクセス権獲得部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7