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明細書 :高次高調波発生材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-219610 (P2019-219610A)
公開日 令和元年12月26日(2019.12.26)
発明の名称または考案の名称 高次高調波発生材料
国際特許分類 G02F   1/355       (2006.01)
G02F   1/37        (2006.01)
C07C 211/04        (2006.01)
C07F   7/24        (2006.01)
FI G02F 1/355 501
G02F 1/37
C07C 211/04
C07F 7/24
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-118830 (P2018-118830)
出願日 平成30年6月22日(2018.6.22)
発明者または考案者 【氏名】金光 義彦
【氏名】廣理 英基
【氏名】田原 弘量
【氏名】阿波連 知子
【氏名】板谷 治郎
【氏名】石井 順久
【氏名】夏 沛宇
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2K102
4H006
4H049
Fターム 2K102AA07
2K102AA08
2K102AA32
2K102AA33
2K102AA34
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC02
2K102CA28
2K102DA01
2K102DD10
2K102EB20
4H006AA03
4H006AB92
4H049VN04
4H049VP01
4H049VQ36
4H049VR33
4H049VR51
4H049VS36
4H049VU29
4H049VW06
要約 【課題】簡便で廉価な方法で作製可能であり、効率的に高次高調波を発生させることができる材料を提供する。
【解決手段】ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物からなる高次高調波発生材料。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、一般式RxMyXz[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。Mは同一又は異なって、遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。xは0.8~1.2を示す。yは0.8~1.2を示す。zは2.8~3.2を示す。]で表される化合物である
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物からなる高次高調波発生材料。
【請求項2】
波長1μm~1mmの入射光を照射することで高次高調波を発生する材料である、請求項1に記載の高次高調波発生材料。
【請求項3】
前記入射光がパルスレーザーである、請求項2に記載の高次高調波発生材料。
【請求項4】
前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が結晶材料である、請求項1~3のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
【請求項5】
前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、一般式(1):
RxMyXz (1)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。Mは同一又は異なって、遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。xは0.8~1.2を示す。yは0.8~1.2を示す。zは2.8~3.2を示す。]
で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、請求項5に記載の高次高調波発生材料。
【請求項7】
前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みが10nm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料を用いた高次高調波発生デバイス。
【請求項9】
入射光を発生させる光源と、
前記入射光を透過又は反射させることにより高次高調波を発生させる高次高調波発生材料と、
を備える、請求項8に記載の高次高調波発生デバイス。
【請求項10】
前記入射光がパルスレーザーである、請求項9に記載の高次高調波発生デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高次高調波発生材料に関する。
【背景技術】
【0002】
高次高調波発生技術は、所望の波長の光から異なる波長の光へと変換することが可能であり、それによって様々な応用展開が期待されている。例えば、広帯域で高輝度な高次高調波は精密な分光計測(化学種、生体分子の識別等)が可能であり、材料の電子状態を調べる光電子分光技術等の分光分析技術への応用が期待されている。また、高次高調波は、深紫外領域の波長の光による水の殺菌や、高輝度な青色の光による細胞の分化の制御を可能とするために再生医療、短波長の高次高調波成分を検出光としたナノスケール空間分解能を有するデバイス検査装置への応用も期待されている。他にも、高次高調波は、異なる時数の高調波成分の光の位相が固定されており、任意の時間波形の光を生成可能であるために光信号処理技術への応用や、極限的に短い時間幅(アト秒等)の光パルスを生成可能であるために化学反応やレーザー加工の機構解明への適用も期待されている。
【0003】
このような高次高調波発生方法としては、一般的には、所定の気体分子にレーザーを照射することで高次高調波を発生させる方法が知られている。しかしながら、気体分子は希薄であるため高次高調波の発生効率が低いうえに、当該気体分子を閉じ込めるためのセルが必要となり、結果的にデバイスの大型化が避けられず、ナノスケール化が困難であるうえに取扱い性にも難がある。
【0004】
このため、固体を用いた高次高調波発生方法が求められている。このような状況下、酸化亜鉛にレーザーを照射することで高次高調波を発生させる方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、酸化亜鉛を使用した場合、試料自体が非常に厚いため、高次高調波の発生に用いる光パルスが時間的に広がったり、位相不整合によって発生効率を低減してしまったりするばかりか、発生した高次高調波も酸化亜鉛自身によって吸収され、放射効率が低減してしまう。また、酸化亜鉛の結晶作製には1000℃を超える高温が必要であり廉価な材料とは言えないため大量生産には不向きであり実用化を阻む要因となっている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Nature Phys. 7, 138 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、簡便で廉価な方法で作製可能であり、効率的に高次高調波を発生させることができる材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、パルスレーザー等の光を照射することにより、高次高調波を効率的に発生させることができることを見出した。このハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、溶液法で合成することができ、薄膜化も容易であるうえに、薄くても高次高調波を効率的に発生させることができることから用途展開しやすい。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物からなる高次高調波発生材料。
項2.波長1μm~1mmの入射光を照射することで高次高調波を発生する材料である、項1に記載の高次高調波発生材料。
項3.前記入射光がパルスレーザーである、項2に記載の高次高調波発生材料。
項4.前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が結晶材料である、項1~3のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
項5.前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物が、一般式(1):
RxMyXz (1)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。Mは同一又は異なって、遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。xは0.8~1.2を示す。yは0.8~1.2を示す。zは2.8~3.2を示す。]
で表される化合物である、項1~4のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
項6.前記一般式(1)におけるRが、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)である、項5に記載の高次高調波発生材料。
項7.前記ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みが10nm以上である、項1~6のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料。
項8.項1~7のいずれか1項に記載の高次高調波発生材料を用いた高次高調波発生デバイス。
項9.入射光を発生させる光源と、
前記入射光を透過又は反射させることにより高次高調波を発生させる高次高調波発生材料と、
を備える、項8に記載の高次高調波発生デバイス。
項10.前記入射光がパルスレーザーである、項9に記載の高次高調波発生デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パルスレーザー等の光を照射することにより、高効率に高次高調波を発生させることができる高次高調波発生材料を簡便で廉価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の高次高調波発生デバイスの一例を示す概略図である。(a)透過配置、(b)反射配置をそれぞれ示す。
【図2】実施例で使用した本発明の高次高調波発生材料(材料)の写真を示す。
【図3】多結晶薄膜及び単結晶試料の高次高調波発生(HHG)スペクトルを示す。3種のMAPbX3薄膜試料(X= Cl(黄色曲線)、Br(赤色曲線)、I(青色曲線))、バルク試料(MAPbCl3(緑色曲線))についての高次高調波発生(HHG)スペクトル。 明確にするために曲線はオフセットされている。挿入図は、ペロブスカイト結晶構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。

【0011】
1.高次高調波発生材料
本発明の高次高調波発生材料は、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物からなる。従来の酸化亜鉛等の無機結晶材料は高温(約1000℃)での結晶成長が必要であり、その薄膜化には精密な機械的研磨が必要であり、高コスト性のため大量生産には不向きであった。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、室温付近における化学合成で容易に作製可能であるため、酸化亜鉛等の従来の無機結晶材料と比較して、格段に簡便、廉価な試料作製が可能である。そのうえ、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、スピンコート等の塗布法によって薄膜化も可能であるため、生じた高次高調波が高次高調波発生材料自体に吸収されることを抑制することができ、効率的な高次高調波発生も実現することができる。

【0012】
なお、本明細書において、高次高調波とは、パルスレーザー等の光を入射光として、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物に照射することで発生する、入射光のn分の1の波長の短波長光を意味する。この入射光のn分の1の波長の短波長光をn次高調波と呼び、通常nが2以上である2次以上の高調波を高次高調波と呼ぶ。より高次の高調波ほど強度が小さく観測されにくい。

【0013】
本発明において、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、入射光を透過させて高次高調波を検出する場合は高い透過性の観点から薄い単結晶材料や薄膜多結晶材料であることが好ましいが、入射光を反射させて高次高調波を検出する場合は分厚い単結晶材料も好適に使用することができる。つまり、単結晶材料や多結晶材料に依らず、またいずれの厚さにも依らず採用することができる。

【0014】
上記のようなハロゲン化金属ペロブスカイト化合物としては、例えば、一般式(1):
RxMyXz (1)
[式中、Rは同一又は異なって、1価のカチオンを示す。Mは同一又は異なって、遷移金属を示す。Xは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。xは0.8~1.2を示す。yは0.8~1.2を示す。zは2.8~3.2を示す。]
で表される化合物が挙げられる。

【0015】
一般式(1)において、Rは1価のカチオンであり、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、-R1NH3+又は-CR2(NH2)2+で表されるカチオン(R1はアルキル基を示す。R2は水素原子又はアルキル基を示す。)等が挙げられる。R1及びR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等のC1-4アルキル基が好ましい。なかでも、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、メチル基が好ましい。

【0016】
上記R1及びR2としては、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、R1はメチル基が好ましく、R2は水素原子が好ましい。つまり、Rとしては、-CH3NH3+又は-CH(NH2)2+であることが好ましい。ただし、二次元構造の層状ペロブスカイト化合物とする場合は、R1及びR2として長鎖アルキル基(特に炭素数2~18の鎖状アルキル基)を採用することが好ましい。

【0017】
なお、Rで示される1価のカチオンとしては、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて採用することもできる。

【0018】
一般式(1)において、Mは、Bサイトを構成する金属カチオンを意味する。このMで示される遷移金属としては、例えば、Pb、Sn、Ge、Bi、Sb等が挙げられる。なかでも、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、Pbが好ましい。これらの遷移金属は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0019】
一般式(1)において、Xで示されるハロゲン原子としては、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、臭素原子、塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。特に、全てが塩素原子であることが好ましい。これらのハロゲン原子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0020】
一般式(1)において、xは0.8~1.2であり、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0021】
一般式(1)において、yは0.8~1.2であり、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、0.9~1.1が好ましい。

【0022】
一般式(1)において、zは2.8~3.2であり、より効率的に高次高調波を発生させやすいとともに、上記nがより大きい次数の高次高調波を発生させやすい観点から、2.9~3.1が好ましい。

【0023】
このような条件を満たすハロゲン化金属ペロブスカイト化合物としては、例えば、CH3NH3PbBr3(以下、「MAPbBr3」と言うこともある)、CH3NH3PbI3(以下、「MAPbI3」と言うこともある)、CH3NH3PbCl3(以下、「MAPbCl3」と言うこともある)、CH(NH2)2PbBr3(以下、「FAPbBr3」と言うこともある)、CH(NH2)2PbI3(以下、「FAPbI3」と言うこともある)、CH(NH2)2PbCl3(以下、「FAPbCl3」と言うこともある)等が好適に使用できる。これらのハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。

【0024】
上記のようなハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の形状は、特に制限されない。例えば、バルク構造(三次元構造)のペロブスカイト化合物としてもよいし、Rとして長鎖アルキル基(特に炭素数2~18の鎖状アルキル基)を含むカチオンを採用して二次元構造の層状ペロブスカイト化合物としてもよい。また、前記バルク構造のペロブスカイト化合物と前記層状ペロブスカイト化合物との混合物であってもよい。さらには、これらのみに限定されることはなく、ワイヤー状、ロッド状等の一次元構造のペロブスカイト化合物や、一次元構造のペロブスカイト化合物と前記バルク構造のペロブスカイト化合物、前記層状ペロブスカイト化合物等との混合物とすることもできる。

【0025】
上記のとおり、従来の酸化亜鉛等の無機結晶材料は高温(約1000℃)での結晶成長が必要であり、その薄膜化には精密な機械的研磨が必要であり、高コスト性のため大量生産には不向きであった。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は室温付近における化学合成で作製可能であり、スピンコート等の塗布法によって薄膜化も可能である。このため、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みは容易に調整することが可能であり、適宜調整することにより、特に効率的な高次高調波発生も実現することができる。ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みは、10nm以上が好ましく、10nm~10mmがより好ましく、10nm~300nmがさらに好ましい。なお、本発明において、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みとは、高次高調波を発生させる際に使用する入射光の光路長を意味する。このため、例えば、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の形状がワイヤー状又はロッド状である場合において光路が長手方向に沿っている場合は、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物の厚みは当該長手方向の長さを意味する。

【0026】
以上のようなハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、市販品又は公知の化合物を使用することができる。なお、このようなハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、近年、多結晶薄膜やナノ結晶の他、溶液成長技術によっても、大きな高品質ペロブスカイト単結晶も合成されている。大きな単結晶を合成できることは、より高強度の高次高調波を発生させることを可能にし様々な用途展開を実現しやすい材料である。

【0027】
以上のようなハロゲン化金属ペロブスカイト化合物は、高次高調波発生材料として使用することができる。本発明において、高次高調波発生材料とは、高次高調波を発生させる際に使用する入射光を入れることにより、高次高調波を発生させることができる材料を意味する。

【0028】
入射光としては、本発明の高次高調波発生材料を透過させる場合には、本発明の高次高調波発生材料のバンドギャップより小さいエネルギーを有する光を用いることが好ましい。例えば、CH3NH3PbBr3のバンドギャップ(約2.35eV)に対応する波長は約530nmであるため、波長が約1.1μm以上である光を用いることが好ましい。また、CH3NH3PbCl3のバンドギャップ(約3.15eV)に対応する波長は約400nmであるため、波長が約0.8μm以上である光を用いることが好ましい。また、CH3NH3PbI3のバンドギャップ(約1.61eV)に対応する波長は約770nmであるため、波長が約1.5μm以上である光を用いることが好ましい。このように、入射光の波長は、ハロゲン化金属ペロブスカイト化合物のバンドギャップに対応する波長より2倍以上大きくすることが好ましい。一方、本発明の高次高調波発生材料を反射させる場合には、本発明の高次高調波発生材料のバンドギャップより大きいエネルギーを有する光を用いることも可能であり、適宜選択することができる。なお、入射光の波長は可変であり、入射光の波長を調整することにより、得られる高次高調波の波長も自在に変更することができる。例えば、より短い波長の入射光を使用すれば、波長の短い(高エネルギーの)高次高調波を発生させることが可能である。なお、検出される高次高調波は、使用する検出器の測定感度にも依存するが、深紫外を超える極紫外(XUV)の高次高調波を発生させることも可能である。なお、入射光としては、ゼナートンネリング過程によって電子をバンド間励起し、励起された電子をバンド内で加速できるほど高強度であるという観点から、レーザー光が好ましく、パルスレーザー光がより好ましい。このような観点から、入射光としてパルスレーザーを用いる場合は、パルス幅は1ナノ秒より短いことが好ましく、1フェムト秒より短いことがより好ましい。

【0029】
このような本発明の高次高調波発生材料は、特に次数の大きい高次高調波を発生させることも可能である。例えば、次数が7~15次、特に9~13次の高次高調波を発生させることも可能である。このような高次高調波の波長は、例えば、2~6eV(620~210nm)が好ましく、2.5~5eV(500~250nm)がより好ましい。これにより、広帯域で高輝度なコヒーレントな光源開発が可能になる。また、薄くしても高次高調波を発生させることが可能であることから、このような本発明を基にした光源は、一例として、分子種や生体材料の識別、固体材料の電子状態を同定する光電子分光技術への応用が可能である。また、同様に、本発明を基にした光源から発する深紫外や青色の光は、それぞれ水の滅菌や殺菌処理への応用、細胞の分化制御といった再生医療応用も可能である。さらに、異なる波長を持つ各高次高調波成分は、お互いに光の位相が固定されたコヒーレントな光源である。このため、お互いに足し合わせ干渉させることによって任意の光電場を生成することが可能であり超高速光通信のための光信号生成や、レーザー加工や化学反応を制御するアト秒レーザーパルス技術への応用も可能である。

【0030】
2.高次高調波発生デバイス
本発明の高次高調波発生デバイスは、上記した本発明の高次高調波発生材料を用いたデバイスである。

【0031】
この本発明の高次高調波発生デバイスは、特に制限されないが、例えば図1(a)に示されるように、入射光2を発生させる光源1と、前記入射光を透過させることにより高次高調波を発生させる高次高調波発生材料3とを備えることが好ましい。高次高調波発生材料3としては上記した本発明の高次高調波発生材料を用いることが好ましく、他の構成は従来から公知の構成とすることができる。

【0032】
図1(a)に示されるように、光源1から照射された入射光2が高次高調波発生材料3を透過することにより高次高調波4が発生する。この際、高次高調波発生材料3を透過後の光には、入射光と高次高調波の双方が含まれ得るが、例えば分光器により高次高調波のみを検出することが可能である。また、分光器により、次数の異なる高次高調波を分離し、特定の波長の高次高調波を得ることも可能である。なお、入射光2は、より適切に高次高調波を発生させるために、レーザー光、特にパルスレーザー光が好ましい。

【0033】
この本発明の高次高調波発生デバイスにおいて、使用する入射光2は、特に制限されるわけではないが、高次高調波発生材料3を透過する光が好ましい。この際使用する入射光2の詳細は、上記したものを採用できる。

【0034】
なお、以上で説明した高次高調波発生デバイスにおいては、高次高調波発生材料3を透過することによって発生した高次高調波4を検出することを説明したが、本発明ではそれのみに限定されず、図1(b)に示されるように、高次高調波発生材料3に反射されることによって発生する高次高調波4を検出することも可能である。例えば、光源1から照射された入射光2が高次高調波発生材料3によって反射されることにより高次高調波4が発生する。この際、高次高調波発生材料3に反射された後の光には、入射光が単に反射された光と高次高調波の双方が含まれ得るが、例えば分光器により高次高調波のみを検出することが可能である。また、分光器により、次数の異なる高次高調波を分離し、特定の波長の高次高調波を得ることも可能である。なお、入射光2は、より適切に高次高調波を発生させるために、レーザー光、特にパルスレーザー光が好ましい。

【0035】
この本発明の高次高調波発生デバイスにおいて、使用する入射光2は、特に制限されるわけではないが、高次高調波発生材料3を反射する光が好ましい。この際使用する入射光2の詳細は、上記したものを採用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
本実施例で使用した結晶(薄膜)は、以下のようにして合成した。
【実施例】
【0038】
ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)及び臭化鉛メチルアンモニウム(MAPbBr3)は、1Mのペロブスカイト溶液(溶媒はDMF: DMSO= 4: 1(体積比))を調製した。各前駆体溶液は50℃にて攪拌し完全溶解を確認後、フィルター(ポアサイズ0.45μm)にてろ過した。薄膜は、各前駆体溶液を用いスピンコート法にて作製した。スピニング時間の終わりに貧溶媒のトルエンを滴下し、続いてアニールを行うことで、目的の薄膜を得た。
【実施例】
【0039】
塩化鉛メチルアンモニウム(MAPbCl3)については、0.5Mのペロブスカイト溶液(溶媒はDMF: DMSO= 1: 1(体積比))を調製した。MAPbCl3の結晶は、前駆体溶液を用い貧溶媒(トルエン)拡散法にて行った。この貧溶媒はトルエンに限らす、塩化メチレンやクロロベンゼンなどの貧溶媒でも行うことが可能である。適量の前駆体溶液を入れたバイアル(蓋無し)を、トルエンを入れた更に大きいバイアルの中に静置し蓋をすることで、トルエンの蒸気が前駆体溶液に拡散浸透するようにした。
【実施例】
【0040】
得られた薄膜の写真を図2に示す。
【実施例】
【0041】
本実施例では、3種類の無機有機ハイブリッドペロブスカイト化合物(MAPbX3; X= Cl, Br, I)多結晶薄膜試料に強い中赤外(MIR)レーザーパルスを照射し、可視領域から紫外領域の高次高調波(HHs)の発光を示す(図3)。ペロブスカイト化合物の高次高調波発生(HHG)のメカニズムを理解するため、MAPbCl3バルク単結晶試料の高調波強度の結晶方位依存性を測定し、高調波の発生効率が結晶方位の角度異方性を反映した4回対称性を有することを確認した。この実験結果は、励起強度依存性を含む異方性挙動に関する、基本的に半導体ブロッホ方程式に類似したab-initio理論フレームワークに基づく数値シミュレーションによって良好に再現できた。これらの結果は、バンド内寄与の中で、Cl 3p、Pb 6s及Pb 6pの混合物からなる価電子帯最大(VBM)成分が、バンド内寄与が支配的であることを示している。本発明者らは、VBMにおける状態密度が伝導帯よりも大きく、その結果、価電子帯のホールの加速度が高調波発生のための支配的な一因となることを見出した。この結果は、ペロブスカイト化合物の特性により、高調波発生の一因が価電子帯のホールであることを示している。
【実施例】
【0042】
有機ハライド及び金属ハライド塩から結晶化した有機無機ハイブリッド化合物は、ペロブスカイト構造(ABX3; Aは有機カチオン、Bは金属カチオン、Xはハライドアニオン)である。カチオン及びアニオンの両方の置換により、ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは広い範囲にわたって調整可能である。実際に、実験に用いた試料のEgはアニオン交換によって1.61eV(I)から2.35eV(Br)及び3.15eV(Cl)に増加している。励起中赤外(MIR)パルスは、2つのワイヤーグリッド偏光子によってフィルタリングしてパルスエネルギーを調整し、直線偏光を確実にした。これらのパルスは、ペロブスカイト化合物上に集光した。励起光の伝播軸は試料表面に対して垂直とした。サンプルで測定された最大パルスエネルギーは、ナイフエッジ法により得られた370μm(直径1/e2)のスポットサイズを使用して20μJであった。直線偏光に関しては、これは10MV/cmの電界振幅に相当する。生成された高調波は、可視-紫外領域用の電荷結合素子と、近赤外領域用のInGaAsアレイ検出素子とによって測定した。
【実施例】
【0043】
図3は、溶液プロセスによって製造した3種のペロブスカイト薄膜試料(MAPbX3; X= Cl, Br, I; 膜厚200nm)が可視領域から紫外領域までの高次高調波を発生することを示している。奇数の高次高調波が発生していることは、ペロブスカイト結晶構造の反転対称性に由来し、溶液ベースの試料が良好な結晶構造を有することを意味している。より大きいバンドギャップエネルギーEgである3.15eVを有するMAPbCl3試料では、伝搬する高次高調波成分の再吸収が抑制され、13次(光子エネルギー4.6eV)までの高次高調波成分が発生した。なお、実際に観測した高調波の波長は、励起光である波長(3.5μm)に対して、3次: 1.16μm(1.07eV)、5次: 0.7μm(1.77eV)、7次: 0.5μm(2.5eV)、9次: 0.39μm(3.18eV)、11次: 0.32μm(3.9eV)、13次: 0.27μm(4.6eV)であった。同じレーザー励起下で1μmの厚さのGaSe薄膜(高次高調波発生(HHG)が十分に研究されている)を用いて高次高調波発生(HHG)を実行すると、同様の最高次数が得られた。単位厚さ当たりの高調波強度を推定することにより、ペロブスカイト薄膜試料で生成された高次高調波の強度をGaSe薄膜と比較すると、すべての次数に対してペロブスカイト薄膜試料が数倍の高調波が生成されることが分かった。MAPbCl3薄膜試料では、中赤外(MIR)レーザー照射を行った約10分以内では強度低下がほとんどないことを見出した。これは、MAPbCl3薄膜試料中のペロブスカイト構造を支持する有機分子MAがレーザー照射に対する有意な耐性を有し、その結果、高次高調波発生に影響を及ぼすのに十分な試料劣化又は構造変化が誘発されなかったことを意味する。
【符号の説明】
【0044】
1 入射光を発生させる光源
2 入射光
3 高次高調波発生材料
4 高次高調波
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2