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明細書 :多脚ロボットの登攀動作制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-136817 (P2019-136817A)
公開日 令和元年8月22日(2019.8.22)
発明の名称または考案の名称 多脚ロボットの登攀動作制御方法
国際特許分類 B25J   5/00        (2006.01)
B25J  13/00        (2006.01)
FI B25J 5/00 E
B25J 13/00 Z
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2018-022300 (P2018-022300)
出願日 平成30年2月9日(2018.2.9)
発明者または考案者 【氏名】大塚 敏之
【氏名】大山 和晃
【氏名】土井 将弘
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707BS14
3C707WA03
3C707WA14
3C707WA23
要約 【課題】多脚ロボットにおけるロバストかつリアルタイムな登攀動作を実現する技術を提供する。
【解決手段】登攀動作制御方法は、ポテンシャル場に基づいて多脚ロボット1がホールドするホールドの評価値であるホールド評価値を算出する工程(S130)と、目標登攀速度と多脚ロボットの各脚の先端の登攀方向における速度との差分を多脚ロボットの登攀動作開始時刻から現在時刻まで積分して得られる可変重みに、各脚の先端の登攀方向における速度を掛け合わせることで各脚の先端の登攀方向における速度の評価値である速度評価値を算出する工程(S140)と、少なくともホールド評価値と速度評価値を加算して得られる評価関数に基づいて非線形モデル予測制御を実行する(S160)ことにより、多脚ロボット1の登攀動作を制御する工程(S170)と、を含む。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、に基づいて算出された前記複数のホールドのポテンシャル場と、予め設定された登攀速度の目標値である目標登攀速度と、に基づいて前記壁面を登攀する多脚ロボットの登攀動作制御方法であって、
前記ポテンシャル場に基づいて前記多脚ロボットがホールドするホールドの評価値であるホールド評価値を算出する工程と、
前記目標登攀速度と前記多脚ロボットの各脚の先端の登攀方向における速度との差分を前記多脚ロボットの登攀動作開始時刻から現在時刻まで積分して得られる可変重みに、各脚の先端の登攀方向における速度を掛け合わせることで各脚の先端の登攀方向における速度の評価値である速度評価値を算出する工程と、
少なくとも前記ホールド評価値と前記速度評価値を加算して得られる評価関数に基づいて非線形モデル予測制御を実行することにより、前記多脚ロボットの登攀動作を制御する工程と、
を含む、多脚ロボットの登攀動作制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多脚ロボットの登攀動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヤモリの足を模擬した接着部材を足先に取り付けることで、壁面や木を登れるようにしたヤモリロボットを開示している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2017-35747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人を模擬したロボットであって人間と同程度の運動能力を有するヒューマノイドロボットは、人間の生活環境や人間の活動できない過酷な環境下で人間に代わって活動することで人間の活動を助けることが期待されている。
【0005】
しかしながら、ヒューマノイドロボットは現状未だ研究段階にあり、人間の生活環境下ですら満足に活動することが難しいとされている。ヒューマノイドロボットが多様な環境下で活動するためにも、ヒューマノイドロボットの移動能力を拡張することが大きな課題となっている。
【0006】
そこで、本願発明の発明者らは、ヒューマノイドロボットの移動能力を拡張すべく、特に、ヒューマノイドロボットの登攀(とうはん)動作を研究している。登攀動作とは、ヒューマノイドロボットがホールドと呼ばれる突起や窪みに手足の先端をかけて支持点とし、壁面を登る動作を意味する。端的に言えば、登攀動作とは、ヒューマノイドロボットがホールドと呼ばれる突起や窪みをホールドして支持点とし、壁面を登る動作を意味する。具体的に言えば、登攀動作とは、ヒューマノイドロボットがホールドと呼ばれる突起や窪みに手足の先端をかけるか又は手足の先端で掴むなどして支持点とし、壁面を登る動作を意味する。この登攀動作は、単に壁面の登攀のみならず、屋内の急な階段や梯子の昇り降り、山岳地や災害現場などに代表される二足歩行が困難な場所での移動などへの応用が期待されている。
【0007】
ヒューマノイドロボットに代表される多脚ロボットの登攀動作の技術分野においては、複数のホールドをどのように選択して登攀するかという点が大きな課題となっている。この技術分野においては、準静的(平衡状態を維持したままある状態から別の状態へ移行すること)なモデルでロボットの脚軌道を生成し、実際に四脚ロボットに壁面を登らせている先行研究(T.Bretl, “Motion Planning of Multi-Limbed Robots Subject to Equilibrium Constraints: The Free-Climbing Robot Problem”, The International Journal of Robotics Research, Vol. 25, No. 4, pp.317-342(2006))がある。しかしながら、この研究では、実際に四脚ロボットに壁面を登らせる前に、登攀時に使用するホールドの経路設計や動作設計が必要とされる。また、実際に四脚ロボットに登攀動作を実行させた際に、事前に作成された経路設計や動作設計が実態とうまく整合せず、四脚ロボットの登攀動作が失敗することがある。
【0008】
また、別の論文(Ruixiang Zhang, Jean-Claude Latombe : Capuchin: A Free-Climbing Robot,
International Journal of Advanced Robotic Systems, Vol. 10, No. 194, pp. 1-18(2013))は、ホールドの選択と順番を計画するプランナーの技術を開示している。この論文では、オンラインでプランニングを行うため、支持点が滑るなどした場合にも登攀動作の継続が可能であり、上記研究よりも頑健性が高い。しかしながら、サンプリングベースのプランニングを行うため、リアルタイム性はなく、一歩登るたびに一旦停止して次の支持点を算出する、というように間欠的な動作しか行えず、登攀速度を全く無視した制御となり、登攀完了までに長い時間がかかってしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、多脚ロボットにおけるロバストかつリアルタイムな登攀動作を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点によれば、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、に基づいて算出された前記複数のホールドのポテンシャル場と、予め設定された登攀速度の目標値である目標登攀速度と、に基づいて前記壁面を登攀する多脚ロボットの登攀動作制御方法であって、前記ポテンシャル場に基づいて前記多脚ロボットがホールドするホールドの評価値であるホールド評価値を算出する工程と、前記目標登攀速度と前記多脚ロボットの各脚の先端の登攀方向における速度との差分を前記多脚ロボットの登攀動作開始時刻から現在時刻まで積分して得られる可変重みに、各脚の先端の登攀方向における速度を掛け合わせることで各脚の先端の登攀方向における速度の評価値である速度評価値を算出する工程と、少なくとも前記ホールド評価値と前記速度評価値を加算して得られる評価関数に基づいて非線形モデル予測制御を実行することにより、前記多脚ロボットの登攀動作を制御する工程と、を含む、多脚ロボットの登攀動作制御方法が提供される。以上の方法によれば、多脚ロボットにおけるロバストかつリアルタイムな登攀動作が実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多脚ロボットにおけるロバストかつリアルタイムな登攀動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】多脚ロボットの模式図である。
【図2】多脚ロボットの制御装置のブロック図である。
【図3】ポテンシャル場を示す図である。
【図4】多脚ロボットの制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図4を参照して、本発明の一実施形態に係る多脚ロボット1について説明する。図1に示すように、多脚ロボット1は、x-y平面上の10自由度10リンクを有するロボットである。即ち、多脚ロボット1は、腰関節から見て上方にリンクL1、リンクL2、リンクL3、リンクL4、リンクL5を有している。リンクL1は腰関節に接続し、上方に延びている。リンクL2及びリンクL4はリンクL1の上端に接続している。リンクL3はリンクL2の上端に、リンクL5はリンクL4の上端に、それぞれ接続している。同様に、多脚ロボット1は、腰関節から見て下方にリンクL6、リンクL7、リンクL8、リンクL9、リンクL10を有している。リンクL6は腰関節に接続し、下方に延びている。リンクL7及びリンクL9はリンクL6の下端に接続している。リンクL8はリンクL7の下端に、リンクL10はリンクL9の下端に、それぞれ接続している。

【0014】
図2に示すように、多脚ロボット1は、入力インターフェース2、制御装置3、複数の駆動モータ4を備えている。

【0015】
入力インターフェース2は、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、多脚ロボット1の登攀速度の目標値である目標登攀速度と、を制御装置3に入力するためのインターフェースである。

【0016】
複数の駆動モータ4は、多脚ロボット1の各関節に設けられ、各関節を回転駆動する。

【0017】
制御装置3は、複数の駆動モータ4を制御することで、多脚ロボット1の登攀動作を制御する。制御装置3は、中央演算処理器としてのCPU10(Central Processing Unit)と、読み書き自由のRAM11(Random Access Memory)、読み出し専用のROM12(Read Only Memory)を備えている。そして、CPU10がROM12に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで、制御プログラムは、CPU10などのハードウェアを、ポテンシャル場生成部13、ポテンシャル場記憶部14、目標登攀速度記憶部15、評価値算出部16、モデル予測制御部17、登攀動作制御部18として機能させる。

【0018】
ポテンシャル場生成部13は、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、に基づいて算出された複数のホールドのポテンシャル場を生成する。

【0019】
ポテンシャル場記憶部14は、ポテンシャル場生成部13が生成したポテンシャル場を記憶する。

【0020】
目標登攀速度記憶部15は、入力された目標登攀速度を記憶する。

【0021】
評価値算出部16は、後述する評価関数を構成する各評価値を算出する。

【0022】
モデル予測制御部17は、非線形モデル予測制御を実行し、評価区間における制御入力ベクトルを算出する。

【0023】
登攀動作制御部18は、モデル予測制御部17が算出した制御入力ベクトルの初期値に基づいて複数の駆動モータ4を制御する。

【0024】
以下、制御装置3の詳細な動作について、具体的な数式と共に説明する。

【0025】
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【0026】
壁面上に設置された複数のホールドを使って多脚ロボット1が壁面を登攀させることが本実施形態の目的である。本来であれば、多脚ロボット1の手足の先端や各ホールドの形状及び材質などによって掴んだときに発生できる力やトルクが決まる。しかしながら、本実施形態では簡単のためにそれらをホールドの「安定性」という既知の観測値として扱うものとする。即ち、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、は多脚ロボット1のオペレータにより入力インターフェース2を介して制御装置3に入力される。また、多脚ロボット1の登攀速度の目標値である目標登攀速度も多脚ロボット1のオペレータにより入力インターフェース2を介して制御装置3に入力され、目標登攀速度記憶部15に記憶される。これらの情報に基づいて非線形モデル予測制御により多脚ロボット1が自律的に経路選択と動作生成を行うように登攀動作の問題を以下のように最適制御問題として定式化する。

【0027】
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【0028】
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【0029】
上記式(3)のスカラー値関数Lは、3つの項で構成される。

【0030】
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【0031】
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【0032】
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【0033】
(2.制御手法)
次に、モデル予測制御部17は、上記1.で定式化した最適制御問題を、非線形モデル予測制御(NMPC)で制御する。非線形モデル予測制御の概要については以下の通りである。

【0034】
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【0035】
以上により、壁面に設けられた複数のホールドを用いて多脚ロボット1が壁面を登攀するに際し、多脚ロボット1がポテンシャル場に基づいて自律的に経路選択を行うと共に姿勢移動や各手足(各脚)の置き替えの動作生成を行う汎用的な登攀動作制御方法が実現される。具体的には、上記経路選択及び動作生成を含めた登攀動作全体を1つの最適制御問題として取り扱い、非線形モデル予測制御による単一の制御則で登攀動作を制御するものとした。従って、多脚ロボット1が登攀中に一歩ずつ停止するようなことがなく、高速な登攀動作が可能となる。また、多脚ロボット1の現在の状態ベクトルに基づいて動作生成が行われるため、高いロバスト性も期待できる。

【0036】
以下、図4を参照して、多脚ロボット1の制御フローを説明する。

【0037】
ステップS100:
先ず、多脚ロボット1のオペレータが、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報を入力インターフェース2を介して制御装置3に入力する。

【0038】
ステップS110:
次に、多脚ロボット1のオペレータが、多脚ロボット1の登攀速度の目標値である目標登攀速度を入力インターフェース2を介して制御装置3に入力する。目標登攀速度は目標登攀速度記憶部15に記憶される。

【0039】
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【0040】
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【0041】
JP2019136817A_000014t.gifJP2019136817A_000015t.gif

【0042】
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【0043】
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【0044】
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【0045】
ステップS180:
次に、制御装置3は、登攀が完了したか判定する。登攀が完了したら(S180:YES)、制御装置3は処理を終了する。登攀が完了していなかったら(S180:NO)、制御装置3は処理をステップS130に戻す。

【0046】
以上に、本実施形態における多脚ロボット1の登攀動作制御方法を説明した。上記実施形態は以下の特徴を有している。

【0047】
即ち、多脚ロボット1の登攀動作制御方法は、壁面に設けられた複数のホールドの座標情報と、各ホールドをホールドした際にそのホールドにおいて発生し得る力及びトルクを示す安定性情報と、に基づいて算出された複数のホールドのポテンシャル場と、予め設定された登攀速度の目標値である目標登攀速度と、に基づいて壁面を登攀する多脚ロボットの登攀動作を制御するものである。登攀動作制御方法は、ポテンシャル場に基づいて多脚ロボット1がホールドするホールドの評価値であるホールド評価値を算出する工程(S130)と、目標登攀速度と多脚ロボットの各脚の先端の登攀方向における速度との差分を多脚ロボットの登攀動作開始時刻から現在時刻まで積分して得られる可変重みに、各脚の先端の登攀方向における速度を掛け合わせることで各脚の先端の登攀方向における速度の評価値である速度評価値を算出する工程(S140)と、少なくともホールド評価値と速度評価値を加算して得られる評価関数に基づいて非線形モデル予測制御を実行する(S160)ことにより、多脚ロボット1の登攀動作を制御する工程(S170)と、を含む。以上の方法によれば、多脚ロボット1におけるロバストかつリアルタイムな登攀動作が実現される。

【0048】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0049】
1 多脚ロボット
3 制御装置
13 ポテンシャル場生成部
16 評価値算出部
17 モデル予測制御部
18 登攀動作制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3