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明細書 :加熱装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-057485 (P2019-057485A)
公開日 平成31年4月11日(2019.4.11)
発明の名称または考案の名称 加熱装置
国際特許分類 H05B   6/62        (2006.01)
H05B   6/80        (2006.01)
FI H05B 6/62
H05B 6/80 Z
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2018-017324 (P2018-017324)
出願日 平成30年2月2日(2018.2.2)
優先権出願番号 2017181071
優先日 平成29年9月21日(2017.9.21)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】三谷 友彦
【氏名】西尾 大地
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000970、【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3K090
Fターム 3K090AA02
3K090AA11
3K090AB20
3K090PA00
要約 【課題】複数の被加熱物を同時に加熱できるとともに、被加熱物を閉空間に配置しなくても加熱できる加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱装置10は、平面導体112を有する共振器11と、平面導体122を有する共振器12と、を備え、平面導体112と平面導体122とは、間隔をあけて配置され、互いに電磁界結合し、平面導体112と平面導体122との間に、被加熱物を配置するための空間13が形成される。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
第1面状導体を有する第1共振器と、
第2面状導体を有する第2共振器と、を備え、
前記第1面状導体と前記第2面状導体とは、間隔をあけて配置され、互いに電磁界結合し、
前記第1面状導体と前記第2面状導体との間に、被加熱物を配置するための空間が形成される、加熱装置。
【請求項2】
前記第1共振器は、前記第1面状導体に対向する第1グランド導体を有し、
前記第2共振器は、前記第2面状導体に対向する第2グランド導体を有し、
前記第1グランド導体と前記第2グランド導体とは互いに対向する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1グランド導体から前記第2グランド導体に向かう方向において、前記第1面状導体は前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、前記第2面状導体は前記第1面状導体と前記第2グランド導体との間に配置される、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1面状導体と前記第2面状導体とは互いに対向する、請求項1から3の何れかに記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第2共振器は複数設けられ、
前記第1面状導体の主面の法線の方向から平面視して、前記複数の第2共振器の第2面状導体の位置は前記第1面状導体の位置からずれている、請求項1から3の何れかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1共振器および前記第2共振器は複数設けられ、
前記複数の第1共振器の第1面状導体は互いに電磁界結合し、
前記複数の第2共振器の第2面状導体は互いに電磁界結合する、請求項1から5の何れかに記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第1面状導体は給電線に接続され、前記第2面状導体は開放される、請求項1から6の何れかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1共振器および前記第2共振器は半波長共振器である、請求項1から7の何れかに記載の加熱装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を電磁界で加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界を利用した最も一般的な加熱装置は電子レンジである。電子レンジは、日常生活で使用されるとともに、化学実験のような専門的な用途にも使用されている。また、空洞共振器内に被加熱物を挿入して加熱する加熱装置も多数知られている。例えば、特許文献1には、マグネトロンで発生させたマイクロ波を加熱室内に照射することにより、加熱室内の被処理材を加熱するマイクロ波加熱装置が開示されている。特許文献2には、空洞共振器内に発生させた定在波の腹に発熱体を配置することで、空洞共振器内の発熱体を効率良く加熱するマイクロ波加熱装置が開示されている。
【0003】
また、電磁界を利用した給電方式として、非特許文献1,2に開示されているような電磁界結合型のワイヤレス給電技術が知られている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-301764号公報
【特許文献2】特開2006-140063号公報
【0005】

【非特許文献1】A. Kurs et. al, “Wireless power transfer via strongly coupledmagnetic resonances”, Science Magazine, 317, pp.83-86, 2007
【非特許文献2】篠原真毅監修、「電界磁界結合型ワイヤレス給電技術 電磁誘導・共鳴送電の理論と応用」、科学技術出版、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空洞共振器を利用した従来の加熱装置は、基本的に、1つの被加熱物に対してしか加熱を行うことができず、複数の被加熱物を同時に加熱できない。このため、特に化学実験の用途において、試料の加熱に膨大な時間が費やされることになる。
【0007】
一方、電子レンジのような加熱装置は複数の被加熱物を同時に加熱できる。しかし、そのような加熱装置では、電磁波が漏洩して通信機器や人体に悪影響を与えることを防止するために、電磁波の照射領域を金属で囲む必要がある。
【0008】
本発明の目的は、複数の被加熱物を同時に加熱できるとともに、被加熱物を閉空間に配置しなくても加熱できる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の加熱装置は、第1面状導体を有する第1共振器と、第2面状導体を有する第2共振器と、を備え、前記第1面状導体と前記第2面状導体とは、間隔をあけて配置され、互いに電磁界結合し、前記第1面状導体と前記第2面状導体との間に、被加熱物を配置するための空間が形成される。
【0010】
この構成では、複数の被加熱物を同時に加熱できる。このため、特に化学実験の用途において実験時間の大幅な短縮が得られる。また、加熱装置外への電磁界の漏洩が少ないため、被加熱物を閉空間に配置しなくても、被加熱物を加熱できる。
【0011】
また、前記第1共振器は、前記第1面状導体に対向する第1グランド導体を有し、前記第2共振器は、前記第2面状導体に対向する第2グランド導体を有し、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体とは互いに対向してもよい。この構成では加熱装置を簡易に実現できる。
【0012】
また、前記第1グランド導体から前記第2グランド導体に向かう方向において、前記第1面状導体は前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間に配置され、前記第2面状導体は前記第1面状導体と前記第2グランド導体との間に配置されてもよい。
【0013】
また、前記第1面状導体と前記第2面状導体とは互いに対向してもよい。
【0014】
また、前記第2共振器は複数設けられ、前記第1面状導体の主面の法線の方向から平面視して、前記複数の第2共振器の第2面状導体の位置は前記第1面状導体の位置からずれていてもよい。この構成では複数の同じ被加熱物を同時に均一に加熱できる。
【0015】
また、前記第1共振器および前記第2共振器は複数設けられ、前記複数の第1共振器の第1面状導体は互いに電磁界結合し、前記複数の第2共振器の第2面状導体は互いに電磁界結合してもよい。この構成でも複数の同じ被加熱物を同時に均一に加熱できる。
【0016】
また、前記第1面状導体は給電線に接続され、前記第2面状導体は開放されてもよい。この構成では加熱装置の加熱特性がさらに向上する。
【0017】
また、前記第1共振器および前記第2共振器は、例えば半波長共振器である。この構成では加熱装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の被加熱物を同時に加熱できるとともに、被加熱物を閉空間に配置しなくても加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1の実施形態に係る加熱装置10の斜視図である。
【図2】図2(A)は加熱装置10の平面図である。図2(B)は加熱装置10のA1-A1断面図である。
【図3】図3は、試料22が配置された加熱装置10の斜視図である。
【図4】図4(A)は、試料22が配置された加熱装置10の平面図である。図4(B)は、試料22が配置された加熱装置10のA2-A2断面図である。
【図5】図5(A)は、加熱装置10の等価回路30を示す回路図である。図5(B)は、等価回路30を変形して得られる等価回路40を示す回路図である。図5(C)は、端子P1,P2から等価回路40側を見た入力インピーダンスZiを示す回路図である。
【図6】図6(A)はSパラメータS11の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。図6(B)はSパラメータS21の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】図7(A)は、共振器11と共振器12との間の電界分布のシミュレーション結果を示す斜視図である。図7(B)は、共振器11と共振器12との間のポインティングベクトルのシミュレーション結果を示す断面図である。
【図8】図8は、加熱装置10の電力特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】図9は、純水の複素比誘電率の実部εr′および誘電正接tanδの温度特性を示す図である。
【図10】図10(A)および図10(B)は、図12(A)および図12(B)に示すように試料22と誘電体基板111,121との配置関係を変化させた場合における、SパラメータS11の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】図11(A)および図11(B)は、図12(A)および図12(B)に示すように試料22と誘電体基板111,121との配置関係を変化させた場合における、SパラメータS11の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図12(A)は、試料22と誘電体基板111,121との配置関係を説明するための平面図である。図12(B)は、試料22と誘電体基板111,121との配置関係を説明するための側面図である。
【図13】図13(A)は、加熱装置10から100mm離れた位置における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。図13(B)は、加熱装置10から100mm離れた位置における磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図14】図14(A)は第2の実施形態に係る加熱装置50の平面図である。図14(B)は加熱装置50のB-B断面図である。
【図15】図15は、加熱装置10,50における試料22の吸収電力のシミュレーション結果を示す図である。
【図16】図16(A)は、加熱装置10,50で試料22を加熱した場合の試料22の温度の時間変化の実験結果の一例を示す図である。図16(B)は、図16(A)に示す試料22の温度の時間変化から推定される試料22の推定吸収電力の時間変化を示す図である。
【図17】図17(A)は、加熱装置10による加熱時の試料22の内部の電界分布のシミュレーション結果を示す断面図である。図17(B)は、加熱装置50による加熱時の試料22の内部の電界分布のシミュレーション結果を示す断面図である。
【図18】図18は第3の実施形態に係る加熱装置60の斜視図である。
【図19】図19(A)は加熱装置60の平面図である。図19(B)は加熱装置60のC1-C1断面図である。
【図20】図20は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60の斜視図である。
【図21】図21(A)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60の平面図である。図21(B)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60のC2-C2断面図である。
【図22】図22(A)は第3の実施形態の変形例に係る加熱装置70の平面図である。図22(B)は加熱装置70のD-D断面図である。
【図23】図23は、加熱装置60,70で試料22A,22Bを加熱した場合の試料22A,22Bの温度の時間変化の実験結果の一例を示す図である。
【図24】図24は第4の実施形態に係る加熱装置80の斜視図である。
【図25】図25(A)は加熱装置80の平面図である。図25(B)は加熱装置80のE1-E1断面図である。
【図26】図26は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80の斜視図である。
【図27】図27(A)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80の平面図である。図27(B)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80のE2-E2断面図である。
【図28】図28は、加熱装置80の電力特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図29】図29は、加熱装置80で試料22A,22Bを加熱した場合の試料22A,22Bの温度および反射電力の時間変化の実験結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。

【0021】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る加熱装置10の斜視図である。図2(A)は加熱装置10の平面図である。図2(B)は加熱装置10のA1-A1断面図である。図1および図2(A)では同軸ケーブル14,15の図示を省略している。

【0022】
加熱装置10は方形平板状の共振器11,12を備える。共振器11は本発明の「第1共振器」の一例である。共振器12は本発明の「第2共振器」の一例である。共振器11,12は、マイクロストリップ構造を有する半波長共振器である。共振器11と共振器12とは互いに略同じ構造を有する。共振器11と共振器12とは、所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。共振器11,12には、それぞれ、同軸ケーブル14,15が接続されている。加熱装置10に高周波電力が供給されると、共振器11と共振器12とは互いに電磁界結合する。

【0023】
共振器11は、誘電体基板111、平面導体112およびグランド導体113を有する。平面導体112は本発明の「第1面状導体」の一例である。グランド導体113は本発明の「第1グランド導体」の一例である。

【0024】
誘電体基板111およびグランド導体113は、それぞれ、方形平板状である。平面導体112は矩形平板状である。平面導体112の長手方向の寸法は、加熱装置10に使用される高周波の誘電体基板111中の波長の1/2に略等しい。平面導体112は誘電体基板111の一方主面の略中央に形成されている。グランド導体113は誘電体基板111の他方主面の略全面に形成されている。平面導体112とグランド導体113とは誘電体基板111を介して互いに対向している。

【0025】
平面導体112には同軸ケーブル14の内導体141が接続されている。内導体141は本発明の「給電線」の一例である。内導体141は、グランド導体113に形成された開口114内を通り、次に誘電体基板111内を通って、平面導体112まで延伸している。平面導体112と内導体141との接続部は入力端115を構成する。入力端115は、平面導体112の主面の法線の方向から平面視して、平面導体112の中心点から平面導体112の長手方向に距離Dci離間している。グランド導体113には同軸ケーブル14の外導体142が接続されている。平面導体112は同軸ケーブル14の内導体141を介して高周波電源(図示せず)に接続される。加熱装置10に使用される高周波は、例えば2.45GHz帯のマイクロ波であるが、これに限定されない。グランド導体113は同軸ケーブル14の外導体142に接続される。加熱装置10の入力端115側において、入力端115から加熱装置10側を見た入力インピーダンスが例えば50Ωになるように、インピーダンス整合をとる。

【0026】
共振器12は、誘電体基板121、平面導体122およびグランド導体123を有する。平面導体122は本発明の「第2面状導体」の一例である。グランド導体123は本発明の「第2グランド導体」の一例である。

【0027】
誘電体基板121およびグランド導体123は、それぞれ、方形平板状である。平面導体122は矩形平板状である。平面導体122の長手方向の寸法は、加熱装置10に使用される高周波の誘電体基板121中の波長の1/2に略等しい。平面導体122は誘電体基板121の一方主面の略中央に形成されている。グランド導体123は誘電体基板121の他方主面の略全面に形成されている。平面導体122とグランド導体123とは誘電体基板121を介して互いに対向している。

【0028】
平面導体122には同軸ケーブル15の内導体151が接続されている。同軸ケーブル15の内導体151は、グランド導体123に形成された開口124内を通り、次に誘電体基板121内を通って、平面導体122まで延伸している。平面導体122と内導体151との接続部は出力端125を構成する。出力端125は、平面導体122の主面の法線の方向から平面視して、平面導体122の中心点から平面導体122の長手方向に距離Dcо離間している。グランド導体123には同軸ケーブル15の外導体152が接続されている。平面導体122は、同軸ケーブル15の内導体151を介して、図示されていない負荷(終端器)に接続される。グランド導体123は同軸ケーブル15の外導体152に接続される。加熱装置10の出力端125側において、出力端125から加熱装置10側を見た入力インピーダンスが例えば50Ωになるように、インピーダンス整合をとる。

【0029】
誘電体基板111における平面導体112が形成された主面と、誘電体基板121における平面導体122が形成された主面とは所定間隔を隔てて対向している。誘電体基板111と誘電体基板121との間隔は、スペーサー(図示せず)により確保されてもよいし、誘電体基板111,121を支持する支持部材(図示せず)により確保されてもよい。平面導体112と平面導体122とは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。平面導体112と平面導体122とは、平面導体112の主面の法線の方向から平面視して、略一致している(略完全に重なっている)。平面導体112と平面導体122との間には、被加熱物を配置するための空間13が形成されている。加熱装置10に高周波電力が供給されると、共振器11の平面導体112と共振器12の平面導体122とは電磁界結合する。この電磁界結合では、電界結合の寄与が磁界結合の寄与より大きい。

【0030】
図3は、試料22が配置された加熱装置10の斜視図である。図4(A)は、試料22が配置された加熱装置10の平面図である。図4(B)は、試料22が配置された加熱装置10のA2-A2断面図である。図3および図4(A)では同軸ケーブル14,15の図示を省略している。試料22は本発明の「被加熱物」の一例である。試料22は、例えば、水、有機溶媒である。試験管21内の試料22は、加熱時に、平面導体112と平面導体122との間の空間13に配置される。試験管21は支持部材(図示せず)により支持される。試料22の少なくとも一部は平面導体112,122の長手方向の端付近に配置されることが好ましい。

【0031】
なお、空間13には複数の被加熱物が配置されてもよい。例えば、平面導体112,122の長手方向の一方端に1つの被加熱物が配置され、平面導体112,122の長手方向の他方端にもう1つの被加熱物が配置されてもよい。また、空間13に平面導体112,122の短手方向に沿って複数の被加熱物が配置されてもよい。

【0032】
加熱装置10では、高周波電源(図示せず)から同軸ケーブル14の内導体141を介して入力端115に高周波電力が供給されると、共振器11の平面導体112と共振器12の平面導体122とが電磁界結合する。この電磁界結合に寄与し、平面導体112と平面導体122との間の空間13に生じる電磁界によって、試料22が加熱される。

【0033】
図5(A)は、加熱装置10の等価回路30を示す回路図である。等価回路30では、共振器11と共振器12との間の電磁界結合を電界結合で近似している。また、等価回路30では被加熱物の影響を考慮していない。等価回路30は共振回路31,32を備える。共振回路31,32を構成する各インダクタは共にインダクタンスLを有する。共振回路31,32を構成する各キャパシタはキャパシタンスCを有する。共振回路31,32を構成する各キャパシタは互いに相互容量Cmで電界結合する。共振回路31は端子P1,P2により高周波電源(図示せず)に接続される。共振回路32は、インピーダンスZを有する負荷に接続される。共振回路31は加熱装置10の共振器11の等価回路である。共振回路32は加熱装置10の共振器12の等価回路である。

【0034】
図5(B)は、等価回路30を変形して得られる等価回路40を示す回路図である。等価回路40は共振回路41,42を備える。共振回路41,42を構成する各インダクタは共にインダクタンスLを有する。共振回路41,42を構成する各キャパシタはキャパシタンスC-Cmを有する。共振回路41と共振回路42とは、キャパシタンスCmを有するキャパシタを介して接続されている。

【0035】
図5(C)は、端子P1,P2から等価回路40側を見た入力インピーダンスZiを示す回路図である。周波数ω=1/√LCの場合における入力インピーダンスZiは1/(ωCm)2Zになる。このように、共振より、入力インピーダンスZiに対する共振回路31,32のキャパシタの影響が消滅する。

【0036】
次に、下記の加熱装置10のシミュレーションまたは実験の結果が得られたシミュレーションまたは実験の条件について説明する。但し、下記の加熱装置10のシミュレーションまたは実験の結果に関して、ここで述べる条件とは異なる条件下でシミュレーションまたは実験を行った場合には、その都度、適用した条件について述べる。なお、以後、ここで述べる条件を基本条件と称する。

【0037】
図2(A)および図2(B)に示すような加熱装置10の設定パラメータを下記のように設定した。

【0038】
誘電体基板111,121のx軸方向の寸法 Dsx=100mm
誘電体基板111,121のy軸方向の寸法 Dsy=100mm
誘電体基板111,121のz軸方向の寸法 Dsz=0.8mm
平面導体112,122のx軸方向の寸法 Dcx=10mm
平面導体112,122のy軸方向の寸法 Dcy=38.5mm
誘電体基板111と誘電体基板121との間の距離 h=20mm
平面導体112の中心点と入力端115との間の距離 Dci=8mm
平面導体122の中心点と出力端125との間の距離 Dcо=8mm
誘電体基板111,121の複素比誘電率の実部 2.53
使用周波数 2.45GHz
ここで、平面導体112の短手方向をx軸方向とし、平面導体112の長手方向をy軸方向とし、平面導体112の主面の法線の方向をz軸方向としている。

【0039】
また、図3、図4(A)および図4(B)に示すように、試験管21内の試料22を空間13に配置した。試験管21の内径Raを11.8mmとし、試験管21の外径Rbを15mmとし、そして、試料22を4.3mLの純水とした。

【0040】
図6(A)はSパラメータS11の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。図6(B)はSパラメータS21の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。ここで、距離Dciを様々な値に変化させ、距離Dcоを距離Dciと同じ値に変化させた。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。また、入力端115側を第1端子対側とし、出力端125側を第2端子対側として、Sパラメータを計算した。

【0041】
図6(A)および図6(B)に示すように、SパラメータS11,S21の絶対値に双峰性が現れている。このことから、共振器11の平面導体112と共振器12の平面導体122とが電磁界結合していることがわかる。

【0042】
また、使用周波数である2.45GHzにおいて、距離Dciが長くなるにつれて、SパラメータS11の絶対値が小さくなり、SパラメータS21の絶対値が大きくなる傾向にある。一方、距離Dciが10mmである場合、SパラメータS11の絶対値に双峰性が現れない。このため、距離Dci,Dcоを8mmに定めることが好ましい。

【0043】
図7(A)は、共振器11と共振器12との間の電界分布のシミュレーション結果を示す斜視図である。図7(B)は、共振器11と共振器12との間のポインティングベクトルのシミュレーション結果を示す断面図である。ここで、加熱装置10の空間13に試験管21および試料22を配置しなかった。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図7(A)に示すように、平面導体112,122の長手方向の端付近で、電界が大きくなる。図7(B)に示すように、平面導体112,122の長手方向の端付近で、エネルギーフローが大きくなる。このため、上記のように、平面導体112,122の長手方向の端付近に被加熱物の少なくとも一部が配置されることが好ましい。

【0044】
図8は、加熱装置10の電力特性のシミュレーション結果を示す図である。ここで、図9に示す純水の複素比誘電率の実部εr′および誘電正接tanδを用いた。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図8において、「試料の吸収電力」は試料22に吸収される電力である。「反射電力」は入力端115で反射される電力である。「透過電力」は入力端115側から出力端125側に透過する電力である。「漏洩電力」は加熱装置10から漏洩する電力である。「基板等の吸収電力」は、誘電体基板111,121および試験管21に吸収される電力である。図8において、試料の吸収電力、反射電力、透過電力、漏洩電力、および基板等の吸収電力を、入力端115に入力された入力電力に対する割合で表している。

【0045】
試料22の温度が20℃の場合、入力電力の約70%が試料22に吸収される。試料22の温度が高くなるにつれて、試料22の吸収電力が低下する。この低下は、試料22の温度が変化すると、試料22の誘電特性が変化し、その結果、インピーダンス整合の状態が変化するために起こる。また、試料22の温度にかかわらず、漏洩電力の割合は入力電力の20%以下である。この結果から、加熱時に加熱装置10の外部に漏洩する電磁界が少ないことがわかる。

【0046】
図10(A)、図10(B)、図11(A)および図11(B)は、図12(A)および図12(B)に示すように試料22と誘電体基板111,121との配置関係を変化させた場合における、SパラメータS11の絶対値のシミュレーション結果を示す図である。ここで、試料22の温度を20℃に設定した。図11(A)において、誘電体基板111と誘電体基板121との間の距離hを変化させた。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。また、入力端115側を第1端子対側とし、出力端125側を第2端子対側として、Sパラメータを計算した。

【0047】
なお、図12(A)は、試料22と誘電体基板111,121との配置関係を説明するための平面図である。図12(B)は、試料22と誘電体基板111,121との配置関係を説明するための側面図である。図12(A)および図12(B)では、グランド導体113,123および同軸ケーブル14,15の図示を省略している。

【0048】
図10(A)は、基準の配置から試料22がx軸の周りに角度θx回転した配置、および、基準の配置から試料22がz軸の周りに角度θz回転した配置における、SパラメータS11の絶対値を示している。ここで、図12(A)および図12(B)に示すように、平面導体122の主面の法線の方向から見て平面導体122の中心点に一致し、かつ、平面導体112および平面導体122から等しく離間するように、座標軸の原点Oを定めている。図10(A)に示すように、試料22がz軸の周りに回転した配置におけるSパラメータS11の絶対値は、基準の配置におけるSパラメータS11から殆ど変化していない。一方、試料22がx軸の周りに回転した配置におけるSパラメータS11の絶対値は、基準の配置におけるSパラメータS11から変化している。

【0049】
図10(B)は、基準の配置から試料22がx軸方向に距離Wx平行移動した配置、基準の配置から試料22がy軸方向に距離Wy平行移動した配置、および基準の配置から試料22がz軸方向に距離Wz平行移動した配置における、SパラメータS11の絶対値を示している。図10(B)に示すように、試料22がx軸またはy軸方向に平行移動した配置におけるSパラメータS11の絶対値は、基準の配置におけるSパラメータS11の絶対値から殆ど変化していない。一方、試料22がz軸方向に平行移動した配置におけるSパラメータS11の絶対値は、基準の配置におけるSパラメータS11の絶対値から変化している。

【0050】
図11(A)は、誘電体基板111と誘電体基板121との間の距離hを変化させた場合のSパラメータS11の絶対値を示している。図11(A)に示すように、距離hが基準値から変化すると、SパラメータS11の絶対値が変化している。

【0051】
図11(B)は、誘電体基板121がx軸方向に距離Subx平行移動した配置、および、誘電体基板121がy軸方向に距離Suby平行移動した配置における、SパラメータS11の絶対値を示している。図11(B)に示すように、誘電体基板121がx軸およびy軸方向に平行移動した配置におけるSパラメータS11の絶対値は、基準の配置におけるSパラメータS11の絶対値から殆ど変化していない。

【0052】
図10(A)、図10(B)、図11(A)および図11(B)に示すように、SパラメータS11の絶対値は、試料22および誘電体基板111,121の配置のx,y軸方向のずれに殆ど影響されないが、試料22および誘電体基板111,121の配置のz軸方向のずれに影響される。これは、試料22が平面導体112または122に近づくことで、インピーダンス整合の状態が変化するために生じる。このため、加熱時に被加熱物を支持する支持部材は、z軸方向において被加熱物を正確に配置できるものであることが好ましい。

【0053】
図13(A)は、加熱装置10から100mm離れた位置における電界分布のシミュレーション結果を示す図である。図13(B)は、加熱装置10から100mm離れた位置における磁界分布のシミュレーション結果を示す図である。ここで、加熱装置10に30Wの入力電力を入力し、試料22の温度を80℃に設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。

【0054】
図13(A)および図13(B)に示すように、加熱装置10から100mm離れた位置において、電界の大きさは137V/m以下であり、磁界の大きさは0.365A/m以下である。このため、加熱装置10は、入力電力が30W以下の場合、電波防護指針に規定された管理指針を満たす。

【0055】
第1の実施形態では、共振器11と共振器12とを対向するように配置し、共振器11と共振器12とを電磁界結合させ、そして、共振器11と共振器12との間に被加熱物を配置する。これにより、被加熱物を電磁界で加熱できる。

【0056】
また、共振器11と共振器12との間に複数の被加熱物を配置することで、複数の被加熱物を同時に加熱できる。このため、特に化学実験の用途において実験時間の大幅な短縮が得られる。このように、加熱装置10は、特に化学実験の用途として有効であり、複数かつ少量の被加熱物を同時に加熱する装置としての利用が期待される。

【0057】
また、加熱装置10の外部への電磁界の漏洩が少ないため、被加熱物を閉空間に配置しなくても、被加熱物を加熱できる。このため、例えば、共振器11と共振器12との間に被加熱物を順次通すことで、複数の被加熱物を連続的に加熱できる。従って、加熱装置10は流れ作業の用途に有効である。また、平面導体112と平面導体122との間の空間13より被加熱物が大きい場合でも、平面導体112と平面導体122との間に被加熱物の一部分を配置することで、被加熱物のその一部分を加熱できる。

【0058】
また、共振器11と共振器12との電磁界結合において電界結合の寄与が大きい。このため、被加熱物が誘電体である場合に、被加熱物による電力の吸収効率が高い。従って、水、有機溶媒のような誘電体を電力効率良く加熱できる。

【0059】
《第2の実施形態》
図14(A)は第2の実施形態に係る加熱装置50の平面図である。図14(B)は加熱装置50のB-B断面図である。加熱装置50では、平面導体122に同軸ケーブルの内導体が接続されていない。即ち、平面導体122は開放されている。

【0060】
図15は、加熱装置10,50における試料22の吸収電力のシミュレーション結果を示す図である。ここで、図9に示す純水の複素比誘電率の実部εr′および誘電正接tanδを用いた。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図15において、試料22の吸収電力は、入力端115に入力された入力電力に対する割合で表されている。加熱装置50では、加熱装置10に比べて、試料22に吸収される吸収電力の割合が向上している。

【0061】
図16(A)は、加熱装置10,50で試料22を加熱した場合の試料22の温度の時間変化の実験結果の一例を示す図である。ここで、加熱装置10,50に入力する入力電力を10Wに設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。加熱装置50では、加熱装置10に比べて、加熱特性が向上している。また、加熱装置50では、試料22の温度が5分で80℃以上(雰囲気温度からの温度差55K以上)に上昇している。

【0062】
図16(B)は、図16(A)に示す試料22の温度の時間変化から推定される試料22の推定吸収電力の時間変化を示す図である。ここで、Pest=mc(dT/dt)+hS(T-T0)+εσsS(T4-T04)を用いて、試料22の推定吸収電力を計算した。上記の式の各変数または定数は下記のように定義されている。

【0063】
推定吸収電力 Pest
試料温度 T
試料質量 m=4.3g
試料比熱 c=4.17J/g/K
試料表面積 S=1.74×10-32
熱伝達率 h=4.6W/m/K
雰囲気温度 T0=300K
シュテファン=ボルツマン定数 σs=5.67×10-8W/m2/K4
放射係数 ε=0.96
また、上記の式において、簡単のため、試験管21からの放熱および伝熱は考慮されていない。

【0064】
加熱装置50では、試料22の温度が低温の場合、入力電力の約90%が試料22に吸収されている。また、図16(B)に示す結果からも、加熱装置50では、加熱装置10に比べて、加熱特性が向上していることがわかる。なお、図15に示すシミュレーション結果と、図16(B)に示す実験結果との間に幾分誤差が生じているが、これらの結果は同じ傾向を示している。

【0065】
図17(A)は、加熱装置10による加熱時の試料22の内部の電界分布のシミュレーション結果を示す断面図である。図17(B)は、加熱装置50による加熱時の試料22の内部の電界分布のシミュレーション結果を示す断面図である。ここで、試料22の温度を25℃に設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図17(A)および図17(B)では、試料22の内部の電界の振幅が最大になるときの電界分布を示している。

【0066】
図17(A)に示すように、出力端125がインピーダンス整合されている場合でも、出力端125から試料22側への反射が10%程度発生するため、定在波が立つ。図17(B)に示すように、平面導体122が開放されている場合、透過電力が存在しないため、より大きな定在波が立つ。この傾向は加熱装置50の加熱効率の上昇に寄与している。

【0067】
このように、第2の実施形態に係る加熱装置50では、平面導体122が開放されることで、加熱特性がさらに向上する。

【0068】
《第3の実施形態》
図18は第3の実施形態に係る加熱装置60の斜視図である。図19(A)は加熱装置60の平面図である。図19(B)は加熱装置60のC1-C1断面図である。

【0069】
加熱装置60は共振器61A,61B,61C,62A,62B,62Cを備える。共振器61A,61B,61C,62A,62B,62Cは、マイクロストリップ構造を有する半波長共振器である。共振器61Aと共振器62Aとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。共振器61Bと共振器62Bとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。共振器61Cと共振器62Cとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。即ち、加熱装置60には、共振器から構成される対が3つ設けられている。なお、共振器から構成される対は3つ以上設けられてもよい。

【0070】
加熱装置60は、誘電体基板111、平面導体112A,112B,112Cおよびグランド導体113を備える。共振器61A,61B、61Cは、それぞれ、平面導体112A,112B,112Cが誘電体基板111を介してグランド導体113と対向することにより形成される。共振器61A,61B、61Cは誘電体基板111およびグランド導体113を共用している。

【0071】
平面導体112A,112B,112Cは、矩形平板状であり、互いに略同一形状である。平面導体112A,112B,112Cは誘電体基板111の一方主面に形成され、グランド導体113は誘電体基板111の他方主面に形成されている。平面導体112Cは誘電体基板111の上記主面の略中央に配置されている。平面導体112Aは平面導体112Cの短手方向の一方側に所定間隔を隔てて配置され、平面導体112Bは平面導体112Cの短手方向の他方側に所定間隔を隔てて配置されている。平面導体112Aと平面導体112Cとの間の距離は、平面導体112Bと平面導体112Cとの間の距離に略等しい。換言すると、平面導体112A,112B,112Cは平面導体112Cの短手方向に沿って整列している。平面導体112Cには同軸ケーブル14の内導体141が接続されている。平面導体112Cと内導体141との接続部は入力端115を構成する。なお、入力端は複数設けられてもよい。例えば、平面導体112A,112B,112Cのそれぞれに入力端が設けられてもよい。

【0072】
加熱装置60は、誘電体基板121、平面導体122A,122B,122Cおよびグランド導体123を備える。共振器62A,62B、62Cは、それぞれ、平面導体122A,122B,122Cが誘電体基板121を介してグランド導体123と対向することにより形成される。共振器62A,62B、62Cは誘電体基板121およびグランド導体123を共用している。

【0073】
平面導体122A,122B,122Cは、矩形平板状であり、互いに略同一形状である。平面導体122A,122B,122Cは誘電体基板121の一方主面に形成され、グランド導体123は誘電体基板121の他方主面に形成されている。平面導体122Cは誘電体基板121の上記主面の略中央に配置されている。平面導体122Aは平面導体122Cの短手方向の一方側に所定間隔を隔てて配置され、平面導体122Bは平面導体122Cの短手方向の他方側に所定間隔を隔てて配置されている。平面導体122Aと平面導体122Cとの間の距離は、平面導体122Bと平面導体122Cとの間の距離に略等しい。換言すると、平面導体122A,122B,122Cは平面導体122Cの短手方向に沿って整列している。平面導体122Cには同軸ケーブル15の内導体151が接続されている。平面導体122Cと内導体151との接続部は出力端125を構成する。なお、出力端は複数設けられてもよい。例えば、平面導体112A,112B,112Cのそれぞれに入力端が設けられたことに対応して、平面導体122A,122B,122Cのそれぞれに出力端が設けられてもよい。

【0074】
平面導体112Aと平面導体122Aとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。平面導体112Aと平面導体122Aとの間には、被加熱物を配置するための空間13Aが形成されている。平面導体112Bと平面導体122Bとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。平面導体112Bと平面導体122Bとの間には、被加熱物を配置するための空間13Bが形成されている。平面導体112Cと平面導体122Cとは所定間隔を隔てて互いに対向するように配置されている。加熱装置60に高周波電力が供給されると、共振器61A,61B,61C,62A,62B,62Cの平面導体112A,112B,112C,122A,122B,122Cは互いに電磁界結合する。

【0075】
図20は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60の斜視図である。図21(A)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60の平面図である。図21(B)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置60のC2-C2断面図である。試験管21A内の試料22Aは、加熱時に、平面導体112Aと平面導体122Aとの間の空間13Aに配置される。試験管21B内の試料22Bは、加熱時に、平面導体112Bと平面導体122Bとの間の空間13Bに配置される。試験管21A,21Bは支持部材(図示せず)により支持される。

【0076】
加熱装置60では、高周波電源(図示せず)から入力端115に高周波電力が供給されると、共振器61A,61B,61C,62A,62B,62Cの平面導体112A,112B,112C,122A,122B,122Cは互いに電磁界結合する。平面導体112Aと平面導体122Aとの間の空間13Aに生じる電磁界によって、試料22Aが加熱される。平面導体112Bと平面導体122Bとの間の空間13Bに生じる電磁界によって、試料22Bが加熱される。

【0077】
図22(A)は第3の実施形態の変形例に係る加熱装置70の平面図である。図22(B)は加熱装置70のD-D断面図である。加熱装置70では、平面導体122Cに同軸ケーブルの内導体が接続されず、平面導体122Cが開放されている。加熱装置70の他の構成は加熱装置60の構成と同様である。

【0078】
図23は、加熱装置60,70で試料22A,22Bを加熱した場合の試料22A,22Bの温度の時間変化の実験結果の一例を示す図である。ここで、加熱装置60,70に入力する入力電力を10Wに設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図23に示すように、加熱装置60,70のどちらの場合でも、試料22A,22Bは互いに略均一に加熱されている。

【0079】
第3の実施形態では、加熱装置60の構造の対称性から、空間13A,13Bに生じる電磁界の分布が互いに略同じになる。このため、空間13A,13Bに配置される互いに同じ被加熱物は略等しい電力を吸収する。従って、複数の同じ被加熱物を同時に均一に加熱できる。

【0080】
《第4の実施形態》
図24は第4の実施形態に係る加熱装置80の斜視図である。図25(A)は加熱装置80の平面図である。図25(B)は加熱装置80のE1-E1断面図である。

【0081】
加熱装置80は、第2の実施形態の変形例に係る加熱装置70から平面導体112A,112B,122Cを除いた構成と略同様である。加熱装置80は、共振器81,82A,82Bを備える。共振器81,82A,82Bは、マイクロストリップ構造を有する半波長共振器である。共振器81と共振器82A,82Bとは、共振器81の主面の法線の方向において所定間隔を隔てて配置されている。共振器82Aと共振器82Bとは、共振器81の主面に平行な方向において所定間隔を隔てて配置されている。共振器81は、共振器81の主面の法線の方向から平面視して、共振器82Aと共振器82Bとの間に配置されている。

【0082】
加熱装置80は、誘電体基板111と、誘電体基板111の一方主面に形成された箔状の平面導体112と、誘電体基板111の他方主面に形成された箔状のグランド導体113とを備える。共振器81は、平面導体112が誘電体基板111を介してグランド導体113と対向することにより形成される。平面導体112と同軸ケーブル14の内導体141との接続部は入力端115を構成する。

【0083】
加熱装置80は、誘電体基板121と、誘電体基板121の一方主面に形成された箔状の平面導体122A,122Bと、誘電体基板121の他方主面に形成された箔状のグランド導体123とを備える。共振器82A,82Bは、それぞれ、平面導体122A,122Bが誘電体基板121を介してグランド導体123と対向することにより形成される。共振器82A,82Bは、誘電体基板121およびグランド導体123を共用している。平面導体122A,122Bは、同軸ケーブルの内導体に接続されておらず、開放されている。

【0084】
誘電体基板111における平面導体112が形成された主面と、誘電体基板121における平面導体122A,122Bが形成された主面とは所定間隔を隔てて対向している。換言すると、グランド導体113とグランド導体123とは所定間隔を隔てて対向している。グランド導体113からグランド導体123に向かう方向において、平面導体112はグランド導体113とグランド導体123との間に配置され、平面導体122A,112Bは平面導体112とグランド導体123との間に配置されている。

【0085】
平面導体112の主面の法線の方向から平面視して、複数の共振器82A,82Bの平面導体122A,122Bの位置は共振器81の平面導体112の位置からずれている。平面導体112は、平面導体112の主面の法線の方向から平面視して、平面導体122Aと平面導体122Bとの間に配置され、平面導体122A,122Bと重なっていない。

【0086】
平面導体112と平面導体122Aとの間には、被加熱物を配置するための空間83Aが形成されている。平面導体112と平面導体122Bとの間には、被加熱物を配置するための空間83Bが形成されている。加熱装置80に高周波電力が供給されると、共振器81,82A,82Bの平面導体112,122A,122Bは互いに電磁界結合する。

【0087】
図26は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80の斜視図である。図27(A)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80の平面図である。図27(B)は、試料22A,22Bが配置された加熱装置80のE2-E2断面図である。試験管21A内の試料22Aは、加熱時に、平面導体112と平面導体122Aとの間の空間83Aに配置される。試験管21B内の試料22Bは、加熱時に、平面導体112と平面導体122Bとの間の空間83Bに配置される。

【0088】
図28は、加熱装置80の電力特性のシミュレーション結果を示す図である。ここで、図9に示す純水の複素比誘電率の実部εr′および誘電正接tanδを用いた。平面導体112,122A,122Bのy軸方向の寸法Dcyを40mmに設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。図28において、「試料の吸収電力」は試料22A,22Bに吸収される電力である。「反射電力」は入力端115で反射される電力である。「漏洩電力」は加熱装置80から漏洩する電力である。「基板等の吸収電力」は、誘電体基板111,121および試験管21A,21Bに吸収される電力である。図28において、試料の吸収電力、反射電力、漏洩電力、および基板等の吸収電力を、入力端115に入力された入力電力に対する割合で表している。

【0089】
試料22A,22Bの温度が50℃のとき、試料22A,22Bの吸収電力が大きくなり、入力電力の約86%が試料22A,22Bに吸収される。このため、図29の実験結果にも示されるように、試料22A,22Bの温度が50℃のとき、加熱速度が上昇する。試料22A,22Bの温度が50℃のとき、反射電力は入力電力の約8%まで抑制される。また、試料22A,22Bの温度にかかわらず、漏洩電力の割合は入力電力の4%以下に抑制される。

【0090】
図29は、加熱装置80で試料22A,22Bを加熱した場合の試料22A,22Bの温度および反射電力の時間変化の実験結果の一例を示す図である。ここで、平面導体112,122A,122Bのy軸方向の寸法Dcyを40mmに設定した。加熱装置80に入力する入力電力を10Wに設定した。他の条件については上記基本条件と同様に設定した。

【0091】
試料22Aの温度変化と試料22Bの温度変化とは略一致しており、試料22A,22Bは互いに略均一に加熱されている。また、試料22A,22Bの温度が50℃付近のとき、加熱速度が上昇することが実験でも示された。試料22A,22Bの温度が50℃付近のとき、反射電力が入力電力の約8%まで抑制されることが実験でも示された。

【0092】
第4の実施形態では、第3の実施形態と比較して、被加熱物による高周波電力の吸収効率が向上する。また、第3の実施形態と比較して、より高い精度で複数の同じ被加熱物を同時に均一に加熱できる。また、第3の実施形態と比較して、共振器の数を減らしても、また共振器が対をなさなくても、複数の被加熱物を加熱できる。

【0093】
なお、上記の実施形態では、マイクロストリップ構造の半波長共振器を例示したが、共振器の構造はこれに限定されない。例えば、上記の共振器を構成する誘電体基板は必須ではない。換言すると、誘電体基板を空気で置き換えることで上記の共振器の構造を変更してもよい。

【0094】
また、上記の実施形態では、平面導体を有する共振器を例示したが、共振器は、上記の平面導体に代えて、曲面状の導体、屈曲された平面導体などを有してもよい。また、共振器は、上記の平面導体に代えて、面状部分とそれ以外の部分とが一体的に形成されてなる導体を有してもよい。この場合、当該導体の面状部分が本発明の「面状導体」に相当する。また、上記の実施形態では、平板状のグランド導体および誘電体基板を例示したが、グランド導体および誘電体基板は、曲面状でもよいし、屈曲していてもよい。

【0095】
また、第1から第3の実施形態では、被加熱物を配置するための空間を挟む平面導体が互いに真正面で対向する例を示したが、当該平面導体は互いにずれていてもよい。特に、第3の実施形態で当該平面導体を互いにずらした構成は、部分的に第4の実施形態と同様の構成を有するので、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。

【0096】
最後に、上記の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
10,50,60,70,80…加熱装置
11,12,61A,61B,61C,62A,62B,62C,81,82A,82B…共振器
13,13A,13B,83A,83B…空間
14,15…同軸ケーブル
21,21A,21B…試験管
22,22A,22B…試料
30,40…等価回路
31,32,41,42…共振回路
111,121…誘電体基板
112,122,112A,112B,112C,122A,122B,122C…平面導体
113,123…グランド導体
114,124…開口
115…入力端
125…出力端
141,151…内導体
142,152…外導体
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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