TOP > 国内特許検索 > 低密度ゲル体とその製造方法 > 明細書

明細書 :低密度ゲル体とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年11月21日(2019.11.21)
発明の名称または考案の名称 低密度ゲル体とその製造方法
国際特許分類 C08G  16/06        (2006.01)
C08G  65/331       (2006.01)
FI C08G 16/06
C08G 65/331
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 32
出願番号 特願2018-566140 (P2018-566140)
国際出願番号 PCT/JP2018/003660
国際公開番号 WO2018/143431
国際出願日 平成30年2月2日(2018.2.2)
国際公開日 平成30年8月9日(2018.8.9)
優先権出願番号 2017019933
優先日 平成29年2月6日(2017.2.6)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】中西 和樹
【氏名】金森 主祥
【氏名】長谷川 丈二
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
審査請求 未請求
テーマコード 4J005
4J033
Fターム 4J005AA04
4J005BA00
4J005BB01
4J005BC00
4J005BD00
4J033GA05
4J033HB00
要約 本開示の低密度ゲル体は、フェノール樹脂から構成される骨格を有する。骨格は、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、骨格における上記ブロックポリマーの含有率は45質量%未満である。本開示の低密度ゲル体では、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性が両立している。本開示の低密度ゲル体の一例は、1MPa以上のヤング率、および圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
フェノール樹脂から構成される骨格を有し、
前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、
前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が45質量%未満である低密度ゲル体。
【請求項2】
前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が5~30質量%である請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項3】
前記骨格は、複数の分岐部を有するとともに隣接する前記分岐部が直線状に接続された構造を有する請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項4】
前記フェノール樹脂がレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂である請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項5】
前記ブロックポリマーが疎水部と親水部とを有する請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項6】
前記ブロックポリマーがポリエーテル鎖を有する請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項7】
1MPa以上のヤング率、および圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有する請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項8】
圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元率が80%以上である請求項1に記載の低密度ゲル体。
【請求項9】
フェノール系単量体およびアルデヒド単量体と、疎水部および親水部を有する非架橋高分子であるブロックポリマーと、親水性溶媒と、を含む溶液系において、
前記フェノール系単量体と前記アルデヒド単量体との縮合重合を進行させることにより、前記重合によるフェノール樹脂の形成と前記溶液系の相分離とを進行させて、
前記フェノール樹脂に富み、前記ブロックポリマーを含有する骨格相と、前記親水性溶媒に富む溶液相と、から構成されるゲルを形成するゲル化工程と;
前記ゲルを非酸化性雰囲気下において熱処理して、前記フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格内に前記ブロックポリマーを含有する低密度ゲル体を形成する熱処理工程と;を含む、低密度ゲル体の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理工程において、前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が45質量%未満である前記低密度ゲル体を形成する、請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
【請求項11】
前記ゲル化工程において形成した前記ゲルの骨格相が、前記溶液系に形成された前記ブロックポリマーのミセル構造を反映した形状を有する、請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
【請求項12】
前記ゲル化工程と前記熱処理工程との間に、前記ゲル化工程で形成した前記ゲルを乾燥する乾燥工程をさらに含む、請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
【請求項13】
前記溶液系が水系である請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
【請求項14】
前記ブロックポリマーがポリエーテル鎖を有する請求項9に記載の低密度ゲル体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低密度ゲル体とその製造方法に関する。より具体的に本発明は、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性が両立した低密度ゲル体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルおよびキセロゲルをはじめとする低密度ゲル体は、固相のゲル体であって、空孔率が高く、その名称に示されているように低密度である。低密度ゲル体は、特徴的な特性、例えば、小さい比重、高い比表面積、低い熱伝導率(高い断熱性)を示す。これらの優れた特性により、低密度ゲル体には、例えば、断熱材、遮音材、担持体などの種々の用途への応用が期待される。しかし、従来の低密度ゲル体は、低密度であるが故に上記優れた特性を示す一方で、低密度であるが故に脆い(柔軟性が低い)。この脆さが、低密度ゲル体の種々の用途への応用の障害となっている。
【0003】
非特許文献1,2には、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂の骨格を有する、柔軟性が改善されたエアロゲルが開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Schwan et al., "Flexibilisation of resorcinol-formaldehyde aerogels", Journal of Materials Chemistry A, 2013, vol.1, pp.13462-13468
【非特許文献2】Schwan et al., "New soft and spongy resorcinol-formaldehyde aerogels", The Journal of Supercritical Fluids, vol.107, 2016, pp.201-208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1,2に開示のエアロゲルが有する柔軟性は未だ十分ではない。低密度ゲル体におけるさらなる柔軟性の改善が求められる。
【0006】
また、低密度ゲル体の種々の用途への応用のためには、改善された柔軟性とともに機械的強度の確保が重要である。機械的強度は、例えば弾性率である。しかし、弾性率と柔軟性とは、一般に、トレードオフの関係にある。高い空孔率を有する低密度ゲル体においてはとりわけ、弾性率と柔軟性とを両立させることが困難である。実際、非特許文献1,2に開示のエアロゲルでは、柔軟性こそ改善されているものの、弾性率が大きく低下している(各文献の表1を参照)。
【0007】
Cao et al., "Super-compressible foamlike carbon nanotube films", Science, vol.310, 2005, pp.1307-1310には、弾性率および柔軟性が両立した材料が開示されている。しかし、この文献が開示する材料は低密度ゲル体ではない。また、当該材料は、カーボンナノチューブが一方向(膜厚方向)に配列した非常に特殊な構造を有しているためフィルム以外の形態を取ることができず、その用途が著しく制限される。当該材料の工業的な製造も困難である。
【0008】
本発明の目的の一つは、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体とその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、
フェノール樹脂から構成される骨格を有し、
前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、
前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が45質量%未満である低密度ゲル体、
を提供する。
【0010】
別の側面から見て、本開示は、
フェノール系単量体およびアルデヒド単量体と、疎水部および親水部を有する非架橋高分子であるブロックポリマーと、親水性溶媒と、を含む溶液系において、
前記フェノール系単量体と前記アルデヒド単量体との縮合重合を進行させることにより、前記重合によるフェノール樹脂の形成と前記溶液系の相分離とを進行させて、
前記フェノール樹脂に富み、前記ブロックポリマーを含有する骨格相と、前記親水性溶媒に富む溶液相と、から構成されるゲルを形成するゲル化工程と;
前記ゲルを非酸化性雰囲気下において熱処理して、前記フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格内に前記ブロックポリマーを含有する低密度ゲル体を形成する熱処理工程と;を含む、低密度ゲル体の製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性が両立した低密度ゲル体とその製造方法が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の低密度ゲル体の一例における骨格の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
【図2】製造例1~3で作製した前駆ゲル体および実施例1~3で作製した低密度ゲル体の骨格のSEM像を示す図である。
【図3】製造例2で作製した前駆ゲル体および実施例2で作製した低密度ゲル体の赤外分光測定(FT-IR)の評価結果を示す図である。
【図4】製造例2で作製した前駆ゲル体、実施例2で作製した低密度ゲル体、および比較例1~3で作製した低密度ゲル体の熱重量分析(TG-DTA)の評価結果を示す図である。
【図5】製造例2で作製した前駆ゲル体、実施例2で作製した低密度ゲル体、および比較例1~3で作製した低密度ゲル体の13C-核磁気共鳴(NMR)の評価結果を示す図である。
【図6】実施例2で作製した低密度ゲル体の表面における水の接触状態および接触角、ならびに時間の経過(接触から1秒後、10秒後および20秒後)によるこれらの変化を示す図である。
【図7】製造例2で作製した前駆ゲル体、実施例2で作製した低密度ゲル体、および比較例1~3で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図8】製造例1で作製した前駆ゲル体、および実施例1で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図9】製造例3で作製した前駆ゲル体、および実施例3で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図10】製造例1で作製した前駆ゲル体、および実施例1で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図11】製造例2で作製した前駆ゲル体、および実施例2で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図12】製造例3で作製した前駆ゲル体、および実施例3で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図13A】製造例1で作製した前駆ゲル体について、圧縮試験前後の状態を示す図である。
【図13B】実施例1で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験前後の状態を示す図である。
【図14】実施例2で作製した低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す図である。
【図15】実施例2で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験前後の状態を示す図である。
【図16】実施例2で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験を繰り返し実施したときの応力-歪み曲線の変化を示す図である。
【図17】実施例2で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験を繰り返し実施したときの応力-歪み曲線の変化を示す図である。
【図18】実施例2で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験を繰り返し実施したときの応力-歪み曲線の変化と、実施後の当該ゲル体をアルコールに浸漬し、乾燥させることによる圧力-歪み曲線の変化とを示す図である。
【図19】実施例1~3で作製した低密度ゲル体について、圧縮試験を繰り返し実施したときのエネルギー吸収量およびエネルギー減衰効率の変化と、実施後の当該ゲル体をアルコールに浸漬し、乾燥させることによるこれらの変化とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の第1態様に係る低密度ゲル体は、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が45質量%未満である。

【0014】
本開示の第2態様に係る低密度ゲル体では、第1態様に係る低密度ゲル体において、前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が5~30質量%である。

【0015】
本開示の第3態様に係る低密度ゲル体では、第1または第2態様に係る低密度ゲル体において、前記骨格は、複数の分岐部を有するとともに隣接する前記分岐部が直線状に接続された構造を有する。

【0016】
本開示の第4態様に係る低密度ゲル体では、第1~第3のいずれかの態様に係る低密度ゲル体において、前記フェノール樹脂がレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂である。

【0017】
本開示の第5態様に係る低密度ゲル体では、第1~第4のいずれかの態様に係る低密度ゲル体において、前記ブロックポリマーが疎水部と親水部とを有する。

【0018】
本開示の第6態様に係る低密度ゲル体では、第1~第5のいずれかの態様に係る低密度ゲル体において、前記ブロックポリマーがポリエーテル鎖を有する。

【0019】
本開示の第7態様に係る低密度ゲル体では、第1~第6のいずれかの態様に係る低密度ゲル体において、1MPa以上のヤング率、および圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有する。

【0020】
本開示の第8態様に係る低密度ゲル体では、第1~第7のいずれかの態様に係る低密度ゲル体において、圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元率が80%以上である。

【0021】
本開示の第9態様に係る低密度ゲル体の製造方法は:
フェノール系単量体およびアルデヒド単量体と、疎水部および親水部を有する非架橋高分子であるブロックポリマーと、親水性溶媒と、を含む溶液系において、
前記フェノール系単量体と前記アルデヒド単量体との縮合重合を進行させることにより、前記重合によるフェノール樹脂の形成と前記溶液系の相分離とを進行させて、
前記フェノール樹脂に富み、前記ブロックポリマーを含有する骨格相と、前記親水性溶媒に富む溶液相と、から構成されるゲルを形成するゲル化工程と;
前記ゲルを非酸化性雰囲気下において熱処理して、前記フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格内に前記ブロックポリマーを含有する低密度ゲル体を形成する熱処理工程と;を含む。

【0022】
本開示の第10態様に係る低密度ゲル体の製造方法では、第9態様に係る低密度ゲル体の製造方法の前記熱処理工程において、前記骨格における前記ブロックポリマーの含有率が45質量%未満である前記低密度ゲル体を形成する。

【0023】
本開示の第11態様に係る低密度ゲル体の製造方法では、第9または第10態様に係る低密度ゲル体の製造方法において、前記ゲル化工程において形成した前記ゲルの骨格相が、前記溶液系に形成された前記ブロックポリマーのミセル構造を反映した形状を有する。

【0024】
本開示の第12態様に係る低密度ゲル体の製造方法は、第9~第11のいずれかの態様に係る低密度ゲル体の製造方法において、前記ゲル化工程と前記熱処理工程との間に、前記ゲル化工程で形成した前記ゲルを乾燥する乾燥工程をさらに含む。

【0025】
本開示の第13態様に係る低密度ゲル体の製造方法では、第9~第12のいずれかの態様に係る低密度ゲル体の製造方法において、前記溶液系が水系である。

【0026】
本開示の第14態様に係る低密度ゲル体の製造方法では、第9~第13のいずれかの態様に係る低密度ゲル体の製造方法において、前記ブロックポリマーがポリエーテル鎖を有する。

【0027】
[低密度ゲル体]
本開示の低密度ゲル体は、骨格(framework)と空孔(気孔)とを有する固相のゲル体である。骨格および空孔はいずれも連続相であり、互いに入り組んでゲル体内に分布している。低密度ゲル体の密度(比重)は、例えば0.5g/cm3以下であり、0.2g/cm3以下、さらには0.15g/cm3以下でありうる。密度の下限は限定されないが、例えば0.05g/cm3以上である。低密度ゲル体の空孔率は、例えば70%以上であり、75%以上、80%以上、85%以上、さらには90%以上でありうる。空孔率の上限は限定されないが、例えば96%以下である。

【0028】
本開示の低密度ゲル体の骨格は、フェノール樹脂から構成される。また、骨格は、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有する。骨格におけるブロックポリマーの含有率は、45質量%未満である。本開示の低密度ゲル体は、低い密度および高い空孔率を有しながらも、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性が両立したゲル体である。

【0029】
骨格がフェノール樹脂から構成されることは、本開示の低密度ゲル体が高い弾性率を有することに寄与する。フェノール樹脂は高度に3次元架橋された架橋高分子であり、力学的に強固な骨格構造を構築しうるためである。また、本開示の低密度ゲル体は、非架橋高分子であるブロックポリマー(以下、「ブロックポリマー(A)」と記載する)を骨格内に含有する。骨格内のブロックポリマー(A)は、フェノール樹脂に比べて柔軟であり、本開示の低密度ゲル体が高い柔軟性を有することに寄与する。本開示の低密度ゲル体の骨格は、フェノール樹脂とブロックポリマー(A)とが複合化された骨格でありうる。

【0030】
骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率は45質量%未満であり、5~30質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率が45質量%以上では、低密度ゲル体の弾性率が低下する。また、圧縮に対する形状の復元性(recovery property)が低下することがある。骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率が0質量%では、低密度ゲル体の柔軟性が低下し、例えば、低い圧縮率の圧縮によって破壊されるゲル体となる。

【0031】
フェノール樹脂は、フェノール系単量体とアルデヒド単量体との縮合重合により形成される樹脂である。フェノール樹脂は、これらの単量体に由来する分子構造が3次元の網目状に結合した架橋構造を有する。

【0032】
フェノール系単量体は、例えば、フェノール、レゾルシノール、フロログルシノール、クレゾール、アミノフェノールである。汎用性、コストおよび安全性の観点から、フェノール系単量体は、好ましくは、レゾルシノールである。アルデヒド単量体は、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラールであり、好ましくは、ホルムアルデヒドである。

【0033】
フェノール樹脂は、例えば、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、フロログルシノール-ホルムアルデヒド樹脂であり、汎用性およびコストの観点から、好ましくは、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂である。

【0034】
フェノール樹脂におけるフェノール系単量体とアルデヒド単量体との反応モル比は、フェノール系単量体1モルに対して、アルデヒド単量体が、例えば1モル以上20モル以下であり、好ましくは1.5モル以上10モル以下であり、より好ましくは2モル以上4モル以下である。反応モル比がこれらの範囲にある場合、低密度ゲル体の弾性率および柔軟性をより高いレベルで両立できる。

【0035】
フェノール樹脂は、2種以上のフェノール系単量体および/または2種以上のアルデヒド単量体の縮合重合により形成される樹脂であってもよい。また、フェノール樹脂は、フェノール系単量体およびアルデヒド単量体に由来する分子構造以外の分子構造を含みうる。当該分子構造は、例えば、アルデヒド単量体と重合可能である単量体(フェノール系単量体を除く)に由来する分子構造であり、より具体的な例は、メラミン、フルフリルアルコールなどに由来する分子構造である。これらのフェノール樹脂は、例えば、本開示の製造方法において溶液系の組成を調整することにより形成できる。

【0036】
ブロックポリマー(A)は、非架橋高分子である限り限定されない。非架橋高分子は、架橋構造を有さない高分子である。ブロックポリマー(A)は、線形高分子(linear polymer)であってもよい。線形高分子は、分岐を有していても、いなくてもよい。ブロックポリマー(A)が線形高分子である場合、低密度ゲル体の弾性率および柔軟性をより高いレベルで両立できる。

【0037】
ブロックポリマー(A)は、親水部と疎水部とを有していてもよい。換言すれば、ブロックポリマー(A)は、両親媒性であってもよい。親水部および疎水部を有するブロックポリマー(A)を骨格内に含有する低密度ゲル体は、例えば、本開示の製造方法により形成できる。親水部は、例えば、ブロックポリマー(A)が有する親水性セグメント(親水鎖)である。疎水部は、例えば、ブロックポリマー(A)が有する疎水性セグメント(疎水鎖)である。

【0038】
親水部と疎水部とを有するブロックポリマー(A)は、溶液系において(溶液系に含まれている状態で)界面活性剤として機能するポリマーであってもよい。溶液系は、典型的には、水系である。界面活性剤は、例えば、非イオン性界面活性剤である。界面活性剤は、カチオン性および/またはアニオン性の官能基を有していてもよい。ブロックポリマー(A)は、溶液系において界面活性剤として機能する分子構造を有していてもよいし、溶液系においてミセル構造を形成する分子構造を有していてもよい。ミセル構造は、例えば、共有結合以外の結合、例えば水素結合、により誘起された秩序を有する超分子(supramolecular)構造である。超分子構造の具体例は、棒状ミセル構造、リオトロピック液晶構造である。

【0039】
ブロックポリマー(A)は、ポリエーテル鎖を有していてもよい。ブロックポリマー(A)がポリエーテル鎖を有する場合、ポリエーテル鎖の酸素原子とフェノール樹脂のヒドロキシ基との間で水素結合が形成される。これにより、フェノール樹脂の骨格とブロックポリマー(A)との相互作用をより強くすることができ、低密度ゲル体の弾性率および柔軟性をより高いレベルで両立できる。ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)鎖、ポリプロピレンオキシド(PPO)鎖、ポリブチレンオキシド(PBO)などのポリオレフィンオキシド鎖である。ポリエーテル鎖は、側鎖を有していても、いなくてもよい。なお、PEO鎖は親水性(親水鎖)、PPO鎖およびPBO鎖は疎水性(疎水鎖)である。

【0040】
ブロックポリマー(A)は、ポリエーテル鎖以外に疎水部として、アルキル鎖、アルキルフェニル鎖、ポリスチレン(PSt)鎖、ポリブタジエン鎖、ポリイソブチレン鎖、ポリイソプレン鎖を有していてもよい。アルキル鎖は、例えば、C1225鎖、C1429鎖、C1633鎖、C1837鎖である。アルキルフェニル鎖は、例えば、C8Ph(EO)8、C12Ph(EO)18である。Phはフェニル基であり、EOはエチレンオキサイド基である。ブロックポリマー(A)は、ポリエーテル鎖以外に親水部として、ポリメタクリル酸(PMA)鎖、ポリアクリル酸鎖、ポリビニルピリジン鎖、ポリビニルアルコール鎖、ポリアクリルアミド鎖、ポリフェニルキノリン鎖を有していてもよい。

【0041】
ブロックポリマー(A)は、例えば、ジブロックポリマー、トリブロックポリマーであり、典型的にはトリブロックポリマーである。

【0042】
ブロックポリマー(A)は、例えば、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド(PEO/PPO/PEO)、ポリエチレンオキシド/ポリブチレンオキシド/ポリエチレンオキシド(PEO/PBO/PEO)、ポリスチレン/ポリメタクリル酸/ポリブチレンオキシド(Pst/PMA/PBO)、ポリエチレンオキシド/ポリメチルメタクリレート(PEO/PMMA)、ポリスチレン/ポリエチレンオキシド(PS/PEO)、ポリスチレン/ポリ(4-ビニルピリジン)(PS/P4VP)、ポリエチレンオキシド/ε-カプロラクトン(PEO/PCL)である。PEO/PPO/PEOは、水系の溶液系において、超分子構造であるミセル構造を比較的容易に形成しうる。

【0043】
PEO/PPO/PEOであるブロックポリマー(A)の各PEO鎖におけるPEOユニット数は、例えば10以上140以下であり、PPO鎖におけるPPOユニット数は、例えば10以上80以下である。

【0044】
骨格は、本発明の効果が得られる限り、フェノール樹脂およびブロックポリマー(A)以外の任意の材料を含むことができる。当該材料は、例えば、本開示の製造方法における溶液系が含みうる材料である。

【0045】
本開示の低密度ゲル体の骨格は、網目構造を有する。本開示の低密度ゲル体の骨格は、複数の分岐部を有するとともに隣接する分岐部が直線状に接続された構造(構造A)を有していてもよい。この場合、上述した骨格の組成に加えて、骨格の構造(形状)も、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性の両立に寄与する。より具体的には、構造Aを有する骨格では、分岐部が関節部として機能することで全体として伸縮可能なラティス構造が構築されており、復元性の高い圧縮が可能となっている可能性がある。

【0046】
図1に、本開示の低密度ゲル体の一例の骨格を示す。図1に示すように、当該ゲル体の骨格1は、複数の分岐部2を有しており、かつ、隣接する分岐部2が直線状に接続されている。図1に示す骨格1において、隣接する分岐部2間の区間3は直線状である。

【0047】
構造Aにおいて、ある1つの分岐部2と、当該分岐部2に隣接する全ての分岐部2とが接続されている必要はない。また、構造Aにおいて、区間3は厳密に直線である必要はない。構造Aにおいて、分岐部2と隣接する分岐部2とを接続する全ての骨格が直線状であるとは限らない。

【0048】
構造Aにおいて、隣接する分岐部2を接続する骨格1の形状(区間3の形状)は、例えば棒状である。区間3の形状は、断面(骨格が延びる方向に垂直な方向の断面)が円(略円を含む)である円柱状であってもよい。隣接する分岐部2を接続する骨格1の表面は必ずしも滑らかである必要はなく、凹凸を有していてもよい。構造Aでは、骨格1の中心線が分岐部2間で直線状であればよい。

【0049】
骨格の径は、例えば100nm~5μmであり、150nm~2μm、200nm~1μmであってもよい。

【0050】
骨格において隣接して接続された分岐部間の距離は、例えば0.5~20μmであり、1~10μm、1.5~5μmでありうる。

【0051】
本開示の低密度ゲル体における空孔径は、例えば10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下である。空孔径は、例えば、電子顕微鏡による観察および/または水銀圧入法による細孔分布測定により求めることができる。本開示の低密度ゲル体の平均空孔径は、例えば、1~5μmである。

【0052】
本開示の低密度ゲル体は、エアロゲルまたはキセロゲルでありうる。エアロゲルおよびキセロゲルの名称の相違は、湿潤ゲルから固相の低密度ゲル体を形成する際の乾燥手法の相違に由来する。超臨界乾燥により形成した固相の低密度ゲル体をエアロゲル、常圧乾燥により形成した固相の低密度ゲル体をキセロゲルと、一般に称する。本開示の低密度ゲル体は、両立した弾性率および柔軟性を有する、すなわち常圧乾燥による形成が可能である、ことから、キセロゲルでありうる。本開示の低密度ゲル体は、さらに別の乾燥手法、例えば凍結乾燥法、により形成した他の名称、例えばクライオゲル、の低密度ゲル体でありうる。

【0053】
本開示の低密度ゲル体は、低密度および高空孔率でありながらも高い弾性率を有しうる。弾性率(ヤング率)は、例えば1MPa以上であり、低密度ゲル体の構成によっては、5MPa以上、10MPa以上、25MPa以上、50MPa以上、75MPa以上、さらには100MPa以上でありうる。弾性率の上限は限定されないが、例えば、500MPa以下である。低密度ゲル体の弾性率は、一軸圧縮による応力-歪み曲線の測定により求めることができる。

【0054】
本開示の低密度ゲル体は、低密度および高空孔率でありながらも高い強度を有しうる。強度は、一軸圧縮による応力-歪み曲線の測定により求めた0.2%耐力にして、例えば0.1MPa以上であり、低密度ゲル体の構成によっては、0.3MPa以上、0.5MPa以上、1MPa以上、1.5MPa以上、さらには2.0MPa以上でありうる。0.2%耐力の上限は限定されないが、例えば、10MPa以下である。

【0055】
本開示の低密度ゲル体は、低密度および高空孔率でありながらも高い柔軟性を有しうる。より具体的には、本開示の低密度ゲル体は、例えば、圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有し、低密度ゲル体の構成によっては、圧縮率60%、70%、80%、さらには90%の一軸圧縮に対する復元性を有する。なお、一軸圧縮における圧縮速度は限定されないが、例えば、0.1mm/分~2000mm/分とすることができ、特に記載がない限り、これ以降に示す一軸圧縮においても同様である。

【0056】
本明細書における「一軸圧縮に対する復元性」とは、ある方向に特定の圧縮率で一軸圧縮されたときに破壊されず、かつ圧縮力が取り除かれたときに、圧縮により生じた歪みを回復できる特性を意味する。一軸圧縮により破壊されるか否かは、評価対象物をある方向に一軸圧縮して得た応力-歪み曲線(当該曲線の「応力」は圧縮応力であり、当該曲線の「歪み」は圧縮率とすることができる)に破壊による破断点が生じるか否かにより判断できる。ただし、歪みは、100%回復される(圧縮前の初期状態にまで回復される)必要はない。圧縮力が取り除かれたときに圧縮(圧縮率)が残った状態であってもよく、最終的に低密度ゲル体に残った圧縮率(%)を100%から引いた値を、評価対象物の復元率(%)とすることができる。復元率(recovery rate)も低密度ゲル体の柔軟性の指標となり、復元率が高いほど低密度ゲル体の柔軟性が高い。

【0057】
本開示の低密度ゲル体では、圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元率が、例えば80%以上であり、低密度ゲル体の構成によっては、85%以上、90%以上、95%以上、さらには97%以上でありうる。また、低密度ゲル体の構成によっては、圧縮率60%、70%、80%、さらには90%の一軸圧縮に対する復元率において同様の数値範囲をとりうる。

【0058】
本開示の低密度ゲル体は、高い弾性率および高い柔軟性に基づき、低密度および高空孔率でありながらも、圧縮変形に対する高いエネルギー吸収特性を有しうる。弾性率のみが高い材料では、圧縮変形に伴う破壊により、高いエネルギー吸収特性を達成できない。また、柔軟性のみが高い材料では、圧縮変形に対する応力の低さと限界まで容易に圧縮される点とにより、高いエネルギー吸収特性を達成できない。より具体的には、本開示の低密度ゲル体では、圧縮率50%の一軸圧縮に対するエネルギー吸収量が、例えば1J/g以上であり、低密度ゲル体の構成によっては、1.5J/g以上、4J/g以上、5J/g以上、さらには8J/g以上でありうる。また、圧縮率80%の一軸圧縮に対するエネルギー吸収量が、例えば5J/g以上であり、低密度ゲル体の構成によっては、10J/g以上、20J/g以上、さらには30J/g以上でありうる。

【0059】
本開示の低密度ゲル体は、低い熱伝導率を有しうる。熱伝導率は、例えば20mWm-1-1以下であり、低密度ゲル体の構成によっては、15mWm-1-1以下、さらには12mWm-1-1以下でありうる。低密度ゲル体の熱伝導率は、JIS A1412(定常法)の規定に準拠して評価することができる。

【0060】
本開示の低密度ゲル体は、骨格のフェノール樹脂に基づく撥水性を有しうる。本開示の低密度ゲル体では、その表面における水の接触角を例えば120°以上、低密度ゲルの構成によっては130°以上、さらには140°以上とすることができる。

【0061】
本開示の低密度ゲル体では、これらの特性が同時に達成されうる。例えば、上述した弾性率(ヤング率)の範囲と復元性とが同時に達成される。より具体的な低密度ゲル体の例は、1MPa以上のヤング率、および圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有する。

【0062】
これらの特性に着目すると、本開示の低密度ゲル体の一形態は、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、上述した特性の少なくとも一つを満たす低密度ゲル体である。より具体的な一例は、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、1MPa以上のヤング率、および圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元性を有する低密度ゲル体である。別の一例は、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、前記骨格が、非架橋高分子であるブロックポリマーを当該骨格内に含有し、圧縮率50%の一軸圧縮に対する復元率が80%以上である低密度ゲル体である。

【0063】
また、本開示の低密度ゲル体では、骨格を構成するフェノール樹脂に基づき、耐薬品性、難燃性、耐熱性、耐水性、耐湿性などの特性も期待される。

【0064】
本開示の低密度ゲル体の形状は限定されない。弾性率および柔軟性が両立していること、フェノール樹脂という一般的な樹脂により骨格が構成されていること、および本開示の製造方法に示すように1ポットによる製造が可能であることなどにより、本開示の低密度ゲル体は様々な形状をとることができる。形状は、例えば、粒子、シート、または直方体およびディスクのようなバルク(塊状)である。本開示の低密度ゲル体は、シートおよびバルクのようなモノリス体であってもよい。モノリス体である低密度ゲル体は、その弾性率および柔軟性の両立と相まって、粒子状である従来の低密度ゲル体に比べて取扱が容易である。また、モノリス体である低密度ゲル体では、粒子を凝集、成形することで特定の形状とした従来の低密度ゲル体に比べて、特性の均一性を向上できる。さらに、弾性率および柔軟性が両立していることから、大きなサイズのモノリス体とすることもできる。常圧乾燥による乾燥手法を採用できることは、本開示の低密度ゲル体の工業的な製造を視野に入れることができることを意味する。骨格を構成するフェノール樹脂が安価である点も、本開示の低密度ゲル体の工業的な製造を支持している。

【0065】
本開示の低密度ゲル体は、その柔軟性に基づき、切断、切削などの機械的加工によって、形状を比較的容易に変化させることができる。

【0066】
本開示の低密度ゲル体の用途は限定されない。用途は、例えば、クッション(cushioning material)、緩衝材(shock-absorbing material)、保護材である。弾性率および柔軟性の両立によって高いエネルギー吸収特性を有しうることを考慮すると、防弾チョッキなどのボディアーマーへの使用、および/または宇宙産業用の衝撃吸収剤への使用なども視野に入る。骨格を構成するフェノール樹脂が安価であること、形状の自由度が高いこと、低密度、すなわち非常に軽量、であることも、これらの用途への強い訴求力となる。

【0067】
弾性高分子(エラストマー)では、一般に、圧縮による変形(圧縮変形)の繰り返しによって、弾性率および強度が徐々に低下する。この傾向は、Mullins効果として知られている。しかし、本開示の低密度ゲル体では、上述した復元率の高さから、圧縮変形による弾性率および強度(例えば0.2%耐力)の低下が抑制される。このため、用途にもよるが、繰り返しの使用が可能である。

【0068】
また、本開示の低密度ゲル体では、圧縮変形により弾性率および強度が低下した場合にも、骨格を膨潤する溶媒と骨格とを接触させ、その後、乾燥させることにより、骨格に蓄積された歪みの解放による弾性率および強度のある程度の回復、すなわち低密度ゲル体の再生、が可能となることがある。

【0069】
骨格を膨潤する溶媒は、典型的には、骨格を構成するフェノール樹脂を膨潤する溶媒である。溶媒は、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、トルエン、ヘキサンである。アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールである。

【0070】
溶媒と骨格との接触は、例えば、溶媒への低密度ゲル体の浸漬、低密度ゲル体への溶媒の塗布および/または噴霧などにより実施できる。乾燥手法は限定されず、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体であることから、常圧乾燥を採用することもできる。

【0071】
これらの方法は、低密度ゲル体の回復方法(再生方法)でもある。すなわち、これらの方法は、低密度ゲル体の骨格と、当該骨格を膨潤する溶媒とを接触させ、その後、乾燥させることにより低密度ゲル体を回復させる(再生する)方法である。また、この方法は、使用済み、あるいは使用中の低密度ゲル体に対して、当該ゲル体の初期状態における特性を評価するために利用できる。

【0072】
本開示の低密度ゲル体は、例えば、以下に示す本開示の製造方法により形成できる。本開示の低密度ゲル体は、本開示の製造方法により得た低密度ゲル体でありうる。

【0073】
[低密度ゲル体の製造方法]
本開示の製造方法は:
フェノール系単量体およびアルデヒド単量体と、疎水部および親水部を有する非架橋高分子であるブロックポリマー(A)と、親水性溶媒と、を含む溶液系において、
フェノール系単量体とアルデヒド単量体との縮合重合を進行させることにより、当該重合によるフェノール樹脂の形成と溶液系の相分離とを進行させて、
フェノール樹脂に富み、ブロックポリマー(A)を含有する骨格相と、親水性溶媒に富む溶液相と、から構成されるゲルを形成するゲル化工程と;
ゲル化工程を経て形成したゲルを非酸化性雰囲気下において熱処理して、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、当該骨格内にブロックポリマー(A)を含有する低密度ゲル体を形成する熱処理工程と;を含む。

【0074】
本開示の製造方法により、本開示の低密度ゲル体を形成できる。

【0075】
(ゲル化工程)
ゲル化工程では、フェノール系単量体およびアルデヒド単量体と、特定のブロックポリマー(A)と、親水性溶媒とを含む溶液系において、双方の単量体の縮合重合を進行させることにより、当該重合によるフェノール樹脂の形成と、溶液系の相分離とを進行させて、骨格相と溶液相とから構成されるゲル(湿潤ゲル)を形成する。ゲル化工程において形成するゲルの骨格相は、フェノール系単量体とアルデヒド単量体との縮合重合体であるフェノール樹脂に富んでおり、ブロックポリマー(A)をさらに含有する。溶液相は、上記溶液系の溶媒に富んでいる。溶液相における上記縮合重合体およびブロックポリマー(A)の濃度は骨格相における濃度に比べて低い。ゲル化工程では、ゾル-ゲル法によるゲルの形成が進行する。

【0076】
相分離は、重合により誘起され、重合と同時に進行する相分離、典型的にはスピノーダル相分離、である。このような相分離過程を経て生じたゲルの骨格相および溶液相は、連続相である両相が互いに絡み合った構造を有する。

【0077】
これに加えて、ゲル化工程における上記溶液系では、疎水部および親水部を有するブロックポリマー(A)が界面活性剤として働くことで、超分子構造でありうるミセル構造が形成される。ミセル構造は、溶液系におけるフェノール系単量体およびアルデヒド単量体の分布に作用する。このため、これら単量体の重合により形成された骨格相は、ブロックポリマー(A)のミセル構造をテンプレートとする形状を有する。また、両単量体およびフェノール樹脂に対するミセル構造の相互作用により、ゲル化工程により形成されたゲルの骨格相はブロックポリマー(A)をさらに含有する。上述した骨格の構造Aも、ブロックポリマー(A)のミセル構造が両単量体およびフェノール樹脂に対して相互作用することにより形成されると考えられる。また、ミセル構造との相互作用によってフェノール樹脂の疎水部分が骨格の表面に露出するため、得られた低密度ゲル体が疎水性を示しうると考えられる。

【0078】
すなわち、ゲル化工程において、溶液相と、溶液系に形成されたブロックポリマー(A)のミセルの形態(ミセル構造)を反映した形状を有する骨格相と、から構成される湿潤ゲルを形成しうる。ゲル化工程において形成したゲルの骨格相は、溶液系に形成されたブロックポリマー(A)のミセル構造を反映した形状を有しうる。

【0079】
フェノール系単量体、アルデヒド単量体、およびブロックポリマー(A)は、本開示の低密度ゲル体の説明において上述したとおりである。

【0080】
親水性溶媒は、任意の混合比で水と混合可能な溶媒である。親水性溶媒は、例えば、水、アルコール、アミド、エーテル、ジメチルスルホキシドである。親水性溶媒は、ブロックポリマー(A)のミセル構造を損なわない溶媒が好ましい。この観点から、アルコールは、例えばトリエチレングリコールである。アミドは、例えばN,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミドである。エーテルは、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサンである。汎用性、コストおよび安全性に加え、弾性率および柔軟性がより高いレベルで両立する骨格の形成が可能である観点から、親水性溶媒は、水およびアルコールの混合溶媒が好ましい。溶液系は、典型的には水系である。

【0081】
溶液系におけるフェノール系単量体の濃度、フェノール系単量体に対するアルデヒド単量体のモル比、ブロックポリマー(A)の種類および濃度、ならびに溶液系が含みうる後述の添加剤の種類および濃度の制御により、得られる低密度ゲル体の骨格の形状、ならびに密度、空孔率、弾性率、柔軟性といった特性の制御が可能である。

【0082】
溶液系におけるフェノール系単量体の濃度は、例えば1.5~10質量%であり、1.7~8質量%、2~6質量%であってもよい。フェノール系単量体の濃度は、例えば、得たいフェノール樹脂の組成、および得たい低密度ゲル体の特性に応じて調整できる。

【0083】
溶液系におけるフェノール系単量体に対するアルデヒド単量体のモル比(反応モル比)は、例えば1~20であり、1.5~10、2~4であってもよい。当該モル比は、例えば、得たいフェノール樹脂の組成、および得たい低密度ゲル体の特性に応じて調整できる。

【0084】
溶液系は、2種以上のフェノール系単量体および/または2種以上のアルデヒド単量体を含みうる。また、溶液系は、アルデヒド単量体と重合可能である単量体(フェノール系単量体を除く)をさらに含むことができる。当該単量体は、例えば、メラミン、フルフリルアルコールである。

【0085】
溶液系におけるブロックポリマー(A)の濃度は、安定した上記ミセル構造の形成のために、例えば1~10質量%であり、2~7質量%、4~6質量%であってもよい。

【0086】
溶液系は、2種以上のブロックポリマー(A)を含みうる。

【0087】
溶液系は、必要に応じて添加剤を含みうる。添加剤は、例えば、重合触媒、ミセル安定剤である。

【0088】
重合触媒は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸である。溶液系は、使用する溶媒の量により異なるが、合計で例えば0.1~5質量%程度、重合触媒を含むことができる。溶液系における重合触媒の濃度が高いほど、ゲル化時間が短くなる傾向を示す。

【0089】
ミセル安定剤は、例えば、トリメチルベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリイソプロピルベンゼンなどのアルキルベンゼン類;ベンジルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールなどのアルコール類、好ましくは疎水部の比較的大きなこれらのアルコール類、である。溶液系は、合計で例えば4~20質量%程度、ミセル安定剤を含むことができる。

【0090】
ゲル化工程は、1ポット反応による実施が可能である。

【0091】
(熱処理工程)
熱処理工程では、ゲル化工程を経て形成されたゲルを非酸化性雰囲気下において熱処理して、フェノール樹脂から構成される骨格を有し、当該骨格内にブロックポリマー(A)を含有する低密度ゲル体を形成する。

【0092】
熱処理工程では、非酸化性雰囲気下における熱処理により、骨格内に含まれるブロックポリマー(A)の含有率を、骨格がブロックポリマー(A)を依然として含有する範囲で制御する。この熱処理工程を経て、はじめて、弾性率および柔軟性の両立した低密度ゲル体が得られる。得られる低密度ゲル体は、構造Aを骨格の構造として有する低密度ゲル体でありうる。

【0093】
熱処理工程では、例えば、骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率が45質量%未満である低密度ゲル体を形成する。熱処理工程では、当該含有率が5~30質量%である低密度ゲル体を形成することが好ましく、当該含有率が5~15質量%である低密度ゲル体を形成することがより好ましい。これらの場合、弾性率および柔軟性がより高いレベルで両立した低密度ゲル体が得られる。

【0094】
形成した低密度ゲル体の骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率は、熱処理条件、例えば、熱処理温度および熱処理時間、により制御できる。熱処理温度が高いほど、また、同じ熱処理温度であれば熱処理時間が長いほど、当該含有率を低下させることができる。

【0095】
熱処理温度は、例えば、270℃以上420℃以下である。熱処理温度の下限は、280℃以上、さらには300℃以上であってもよく、300℃を超えてもよい。熱処理温度の上限は、400℃以下、さらには370℃以下であってもよい。熱処理温度は、280℃以上370℃以下が好ましい。熱処理温度が過度に高い場合、骨格中のブロックポリマー(A)が完全に除去されて、骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率が0質量%となることがある。熱処理温度が過度に低い場合、骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率を低減できないことがある。

【0096】
熱処理時間は、例えば1~300分であり、好ましくは10~120分であり、より好ましくは20~40分である。

【0097】
熱処理工程の熱処理は、非酸化性雰囲気下で実施する。非酸化性雰囲気とは、酸素および空気などの酸化性ガスを実質的に含まない雰囲気である。「実質的に含まない」とは、熱処理対象物であるゲルから放出される酸素、および/または熱処理装置の構造上避けることができない酸素の含有を、例えば10ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.2ppm以下の含有率で許容する趣旨である。

【0098】
非酸化性雰囲気は、例えば、不活性ガス雰囲気、還元性ガスを含む雰囲気でありうる。不活性ガスは、例えば、窒素、希ガスである。還元性ガスは、例えば、水素、メタンである。

【0099】
酸化性雰囲気で熱処理工程を実施した場合、骨格中のブロックポリマー(A)が完全に除去されることで、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体が得られない。

【0100】
熱処理工程は、ゲル化工程において形成した湿潤ゲルに対して実施してもよい。この場合、湿潤ゲルの溶液相から溶媒が除去されることによる空孔の形成と、湿潤ゲルの骨格相から溶媒が除去されることによる骨格の形成と、当該骨格内に含まれるブロックポリマー(A)の含有率の制御とが進行して、低密度ゲル体が形成される。このような熱処理は、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体が形成されるが故に実施可能である。

【0101】
ただし、熱処理温度を考慮すると、熱処理工程におけるゲル骨格の損傷をより確実に防ぐために本開示の製造方法は、ゲル化工程と熱処理工程との間に、ゲル化工程で形成したゲルを乾燥する乾燥工程をさらに含むことが好ましい。この場合、乾燥工程において、湿潤ゲルの溶液相から溶媒が除去されることによる空孔の形成と、湿潤ゲルの骨格相から溶媒が除去されることによる骨格の形成とが進行して、固相の乾燥ゲル(前駆ゲル体)が形成される。そして、乾燥工程後の熱処理工程において、前駆ゲル体の骨格内に含まれるブロックポリマー(A)の含有率の制御が行われ、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体が形成される。なお、前駆ゲル体において、溶媒が完全に除去されている必要は必ずしもない。

【0102】
乾燥工程における乾燥温度は、ゲル化工程で使用した溶媒の種類(湿潤ゲルが含む溶媒の種類)により異なるが、例えば20~100℃であり、好ましくは25~40℃である。必要に応じて、乾燥工程を実施する前に、ゲルに含まれる溶媒をより低沸点の溶媒に置換してもよく、この場合、乾燥工程をより確実に実施できる。

【0103】
乾燥工程の乾燥温度は熱処理工程の熱処理温度に比べて低いため、乾燥工程により形成された前駆ゲル体の骨格におけるブロックポリマー(A)の含有率は、通常、ゲル化工程により形成された湿潤ゲルにおける当該含有率とほぼ同じとなる。このため、前駆ゲル体では、弾性率および柔軟性の両立は達成されていない。

【0104】
乾燥工程および熱処理工程は、連続的に実施してもよい。

【0105】
本開示の製造方法は、上記低密度ゲル体が得られる限り、これまで説明した以外の任意の工程を含むことができる。当該工程は、例えば洗浄工程である。

【0106】
本開示の製造方法では、弾性率および柔軟性が両立した低密度ゲル体が形成されること、および1ポットによる低密度ゲル体の形成が可能であることなどにより、形成する低密度ゲル体の形状の自由度を高くできる。このため本開示の製造方法では、フィルムに限られることなく、より形状の自由度が高い成形体として低密度ゲル体を形成できる。成形体は、例えば、モノリス体である。また、形成された低密度ゲル体についても、その柔軟性に基づき、切断、切削などの機械的加工によって形状を比較的容易に変化させることができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【実施例】
【0108】
最初に、本実施例において形成した低密度ゲル体の評価方法を示す。
【実施例】
【0109】
[骨格の形状]
低密度ゲル体の骨格の形状は、走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM-6060S、加速電圧20kV)により評価した。
【実施例】
【0110】
[骨格の組成]
低密度ゲル体の骨格の組成は、当該ゲル体に対する赤外分光測定(FT-IR)、熱重量測定(TG-DTA)、および13C-核磁気共鳴(13C-NMR)により評価した。
【実施例】
【0111】
FT-IRは、赤外分光光度計(島津製作所製、IRAffinity-1)を用い、評価対象物を1質量%程度含むKBrの錠剤を作製して、波数400~4000cm-1の範囲で実施した。
【実施例】
【0112】
TG-DTAは、熱機械分析装置(リガク製、Thermo plus EVO TG8120)を用い、空気を100mL/分の流量で流しながら、25~800℃の範囲で実施した。
【実施例】
【0113】
13C-NMRは、核磁気共鳴装置(Bruker製、Advance III 800)を用い、18.8Tの磁場中で、繰り返し時間を200秒、試料の回転速度を15kHzとして実施した。
【実施例】
【0114】
[表面における水の接触角]
低密度ゲル体の表面における水の接触角は、全自動接触角計(協和界面科学製、Drop Master型番DM-561Hi)を用い、5μLの水滴を評価対象物の表面に滴下した1、10および20秒後の静止画像から評価した。
【実施例】
【0115】
[応力-歪み特性]
低密度ゲル体の応力-歪み特性は、力学試験機(島津製作所製、EZGraph)を用い、直方体(およそ10mm(幅)×10mm(奥行)×15mm(高さ))の形状に加工した評価対象物を、0.5~1000mm/分の圧縮速度で高さ方向に一軸圧縮することにより評価した。得られた応力-歪み曲線(圧縮応力-圧縮率曲線)から、評価対象物である低密度ゲル体の弾性率(ヤング率)、0.2%耐力、復元率、およびエネルギー吸収特性を評価した。
【実施例】
【0116】
0.2%耐力は、応力-歪み曲線において、塑性歪みが0.2%になるときの応力(圧縮力)に相当する値である。
【実施例】
【0117】
復元率は、評価対象物における一軸圧縮力を印加する方向の長さについて、圧縮力を印加する前の長さL1に対する、圧縮力の印加後、圧縮力を取り除いたときに最終的に達する長さL2の比L2/L1である。復元率は、応力-歪み曲線に示された低密度ゲル体のヒステリシスにおいて、印加した圧縮力を取り除いたときに最終的に到達するポイントの歪み(圧縮率)の値を100%から引いた値に相当する。
【実施例】
【0118】
エネルギー吸収量は、応力-歪み曲線内の面積に相当する。
【実施例】
【0119】
[空孔率]
低密度ゲル体の空孔率は、以下のように評価した。
【実施例】
【0120】
低密度ゲル体のバルク密度を、式:バルク密度=評価対象物の質量/評価対象物の体積により求めた。これとは別に、低密度ゲル体の骨格密度を、ピクノメーター(Quantachrom Instruments製、Pentapyc 5200e)を用い、ヘリウムガスを使用して求めた。次に、低密度ゲル体の空孔率を、式:空孔率=(1-バルク密度/骨格密度)×100(%)より求めた。
【実施例】
【0121】
(製造例1~3:前駆ゲル体の形成)
製造例1~3では、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂から骨格が構成され、当該骨格がブロックポリマー(A)としてPEO/PPO/PEOを含有する前駆ゲル体を形成した。各製造例では、使用したトリエチレングリコールおよび塩酸の量を変化させた。
【実施例】
【0122】
最初に、PEO/PPO/PEO(シグマアルドリッチ製、Pluronic(登録商標)F-127)3.0gを、トリエチレングリコールおよび塩酸(濃度1mol/L)の混合溶媒に溶解させた。次に、1,3,5-トリメチルベンゼン3.0mLおよびベンジルアルコール3.0mLを混合溶媒にさらに加えて溶解させた後、2.2gのレゾルシノールを加えて溶解させ、さらにホルムアルデヒド水溶液(濃度37質量%)6.0mLを加えて室温で30分撹拌した。次に、全体を60℃に昇温して24~48時間、ゲル化およびエージングを進行させた。このようにして形成された湿潤ゲルをアルコール(イソプロパノール)で洗浄および溶媒置換し、25℃で1週間乾燥させて、キセロゲルである前駆ゲル体を得た。
【実施例】
【0123】
各製造例で使用したトリエチレングリコールの量および塩酸の量を以下の表1に示す。
【実施例】
【0124】
【表1】
JP2018143431A1_000003t.gif
【実施例】
【0125】
(実施例1~3、比較例1~3)
実施例1~3および比較例1~3では、製造例1~3で製造した前駆ゲル体を以下の表2に示す条件で熱処理(熱処理時間30分)して、キセロゲルである低密度ゲル体を得た。各実施例および比較例における熱処理条件を表2に示す。
【実施例】
【0126】
【表2】
JP2018143431A1_000004t.gif
【実施例】
【0127】
製造例1~3の前駆ゲル体の骨格の形状、および実施例1~3の低密度ゲル体の骨格の形状を図2に示す。図2に示すように、製造例1~3の前駆ゲル体および実施例1~3の低密度ゲル体の骨格は、上述した構造Aを有していた。骨格の構造は、350℃の熱処理によっても失われることなく維持されていた。
【実施例】
【0128】
また、図2に示すように、ゲル化工程の溶液系における塩酸の濃度、およびトリエチレングリコール(TEG)の濃度により、低密度ゲル体の骨格の径および分岐部間の距離が制御可能であることが確認された。
【実施例】
【0129】
次に、製造例2の前駆ゲル体、および実施例2の低密度ゲル体のFT-IR評価結果を図3に、製造例2の前駆ゲル体、実施例2の低密度ゲル体、および比較例1~3の低密度ゲル体のTG-DTA評価結果を図4に、製造例2の前駆ゲル体、実施例2の低密度ゲル体、および比較例1~3の低密度ゲル体の13C-NMR評価結果を図5に、それぞれ示す。なお、図3には、別途測定したRF樹脂およびPEO/PPO/PEOのFT-IR評価結果を併せて示す。
【実施例】
【0130】
図3(FT-IR)および図5(13C-NMR)に示すように、熱処理前の前駆ゲル体(製造例2)では、かなりの量のPEO/PPO/PEOがゲル骨格に含まれていることが確認された。また、250℃で熱処理した比較例1では、骨格中のPEO/PPO/PEOの量が熱処理前の製造例2とさほど変わらない一方で、350℃で熱処理した実施例2では、骨格中のPEO/PPO/PEOの量の低下が確認された。ただし、実施例2では、PEO/PPO/PEOが熱処理後も骨格中に残留していた。そして、450℃で熱処理した比較例2、および熱処理温度が280℃ながらも空気を含む雰囲気で熱処理した比較例3では、前駆ゲル体の骨格に含まれていたPEO/PPO/PEOが完全に除去されていた。図4に示すTG-DTAの結果にもこの状況が反映されている。各製造例、実施例および比較例間におけるTG-DTAの結果の相違は、骨格におけるPEO/PPO/PEOの含有率の相違に基づくと考えられる。TG-DTAの評価結果に基づく、製造例2、実施例2および比較例1~3のゲル骨格におけるPEO/PPO/PEOの含有率を以下の表3に示す。また、実施例1~3のゲル骨格におけるPEO/PPO/PEOの含有率は7~10質量%の範囲にあった。
【実施例】
【0131】
【表3】
JP2018143431A1_000005t.gif
【実施例】
【0132】
次に、図6に、実施例2の低密度ゲル体の表面における水の接触状態を示す。図6に示すように、実施例2の低密度ゲル体の表面における水の接触角は144~145°であった。また、水滴を当該表面に配置した後20秒経過しても接触角は変化しなかった。
【実施例】
【0133】
次に、図7に、製造例2の前駆ゲル体、実施例2の低密度ゲル体、および比較例1~3の低密度ゲル体の応力-歪み曲線(圧縮条件:最大圧縮率50%、圧縮速度0.5mm/分)を示す。図7に示すように、450℃で熱処理を実施した比較例2、および熱処理温度が280℃ながらも空気を含む雰囲気で熱処理を実施した比較例3では、いずれも低密度ゲル体ながら高い弾性率が得られたが、高弾性である従来の低密度ゲル体と同様に柔軟性が低くて脆く、比較例2は圧縮率10%未満で、比較例3は圧縮率30%程度で、それぞれゲル体が破壊された。一方、熱処理を実施する前の製造例2、および250℃で熱処理を実施した比較例1では、圧縮率50%においてもゲル体は破壊されず、圧縮力を取り除くことにより形状が復元したが、比較例2および比較例3に比べて弾性率が大きく低下した。なお、比較例1では、製造例2に比べて僅かながら復元速度が向上する傾向が見られた。これらに対し実施例2では、比較例2および比較例3と同様の高い弾性率が得られるとともに、圧縮率50%においてもゲル体は破壊されず、圧縮力を取り除くことによって形状が復元した。さらに、復元率が99%と、製造例2の95%に比べて向上した。すなわち実施例2の低密度ゲル体では、各製造例の前駆ゲル体および比較例の低密度ゲル体ではみられない弾性率および柔軟性の両立が達成された。
【実施例】
【0134】
次に、図8に、製造例1の前駆ゲル体および実施例1の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。また、図9に、製造例3の前駆ゲル体および実施例3の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。いずれも圧縮条件は、最大圧縮率50%、圧縮速度0.5mm/分である。
【実施例】
【0135】
図8,9に示すように、実施例1,3では高い弾性率が得られるとともに、圧縮率50%においてもゲル体は破壊されず、圧縮力を取り除くことによって形状が復元した。さらにその復元率は、それぞれ熱処理前の製造例1,3に比べて大きく向上し、98%以上となった。すなわち実施例1,3の低密度ゲル体では、各製造例の前駆ゲル体および比較例の低密度ゲル体ではみられない弾性率および柔軟性の両立が達成された。
【実施例】
【0136】
次に、図10に、圧縮条件を最大圧縮率80%、圧縮速度0.5mm/分としたときの、製造例1の前駆ゲル体および実施例1の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。図11に、同圧縮条件における製造例2の前駆ゲル体および実施例2の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。図12に、同圧縮条件における製造例3の前駆ゲル体および実施例3の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。図13Aおよび図13Bに、同圧縮条件における製造例1の前駆ゲル体および実施例1の低密度ゲル体の圧縮試験前後の状態を示す。図13Aは製造例1、図13Bは実施例1である。図13Aおよび図13Bにおいて、左から、圧縮試験前のゲル体の状態、最大圧縮時(圧縮率80%)のゲル体の状態、および圧縮試験後のゲル体の状態が示されている。
【実施例】
【0137】
図10~12に示すように、実施例1~3では高い弾性率が得られるとともに、圧縮率80%においてもゲル体は破壊されず、圧縮力を取り除くことによって形状が復元した。さらにその復元率は、それぞれ熱処理前の製造例1~3に比べて大きく向上し、93%以上となった。すなわち、実施例1~3の低密度ゲル体では、各製造例の前駆ゲル体および比較例の低密度ゲル体ではみられない弾性率および柔軟性の両立が達成された。また、図13から、製造例1のゲル体と実施例1のゲル体との間の復元率の相違がより理解できる。
【実施例】
【0138】
製造例1~3、実施例1~3および比較例1~3のゲル体の密度(mg/cm3)、空孔率(%)、弾性率(ヤング率);(MPa)、0.2%耐力(MPa)、復元率(最大圧縮率50%および80%)を以下の表4に、エネルギー吸収量(単位体積あたり、および単位質量あたり)、散逸エネルギー(ゲル内で減衰したエネルギー);(単位体積あたり、および単位質量あたり)、ならびにエネルギー減衰効率を以下の表5に示す。
【実施例】
【0139】
【表4】
JP2018143431A1_000006t.gif
【実施例】
【0140】
【表5】
JP2018143431A1_000007t.gif
【実施例】
【0141】
表5に示すように、実施例1~3の低密度ゲル体は、優れた力学エネルギー吸収特性を示した。
【実施例】
【0142】
次に、図14に、圧縮条件を最大圧縮率90%、圧縮速度0.5mm/分としたときの実施例2の低密度ゲル体の応力-歪み曲線を示す。また、図15に、同圧縮条件における実施例2の低密度ゲル体の圧縮試験前後の状態を示す。図15の左から、圧縮試験前のゲル体の状態、最大圧縮時(圧縮率90%)のゲル体の状態、および圧縮試験後のゲル体の状態が示されている。
【実施例】
【0143】
図14に示すように、最大圧縮率を90%とした場合においても実施例2の低密度ゲル体には破壊が発生せず、また、80%以上の高い復元率が得られることが確認された。
【実施例】
【0144】
これらとは別に、実施例1~3の低密度圧縮ゲル体について、圧縮条件を最大圧縮率80%、圧縮速度1000mm/分としたときの応力-歪み曲線を評価したが、このような高速の圧縮条件下においても実施例1~3の低密度ゲル体は、圧縮速度を0.5mm/分としたときと同様の弾性率および柔軟性を示した。このことから、実施例1~3の低密度ゲル体は、物体の衝突などにより生じた衝撃に対する応答性も良好であることが確認された。
【実施例】
【0145】
次に、図16に、実施例2の低密度ゲル体について、最大圧縮率50%および圧縮速度0.5/秒(1秒間で評価対象物の長さL1を半分とする圧縮速度)の条件の圧縮試験を繰り返し実施したときの応力-歪み曲線の変化を示す。また、図17に、実施例2の低密度ゲル体について、最大圧縮率80%および圧縮速度0.5/秒の条件の圧縮試験を繰り返し実施したときの応力-歪み曲線の変化を示す。図16および17に示すように、実施例2の低密度ゲル体において、圧縮試験を繰り返すことにより、柔軟性は保たれるものの徐々に0.2%耐力および復元率が低下する傾向が観察された。
【実施例】
【0146】
しかし、図18に示すように、実施例2の低密度ゲル体について最大圧縮率80%、圧縮速度0.5/秒の圧縮試験を10回繰り返した後、当該ゲル体をイソプロピルアルコールに1分浸漬し、その後、乾燥させることによって、機械的特性(0.2%耐力および復元率)が回復することが確認された。
【実施例】
【0147】
また、実施例1~3の低密度ゲル体について、最大圧縮率70%および圧縮速度0.5/秒の条件の圧縮試験を繰り返し実施するとともに、圧縮試験10回ごとに1回、当該ゲル体を上記アルコールへの浸漬および乾燥に付すことを連続的に実施したところ、圧縮試験の回数を重ねてもエネルギー減衰効率が高い値を維持するとともに、アルコールへの浸漬および乾燥によりエネルギー吸収量が回復することが確認された。
【実施例】
【0148】
本発明は、その意図及び本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味及び範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の低密度ゲル体は、弾性率および柔軟性というトレードオフの関係にある特性が両立するという、従来の低密度ゲル体にはない優れた特性を有する。本発明の低密度ゲル体は、この特性に着目した種々の用途への応用が期待される。
【0150】
[符号の説明]
1 骨格
2 分岐部
3 区間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13A】
12
【図13B】
13
【図14】
14
【図15】
15
【図16】
16
【図17】
17
【図18】
18
【図19】
19