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Specification :(In Japanese)異常検知装置、通信装置、異常検知方法、プログラム及び記録媒体

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Oct 17, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)異常検知装置、通信装置、異常検知方法、プログラム及び記録媒体
IPC (International Patent Classification) G01V   1/00        (2006.01)
FI (File Index) G01V 1/00 E
Demand for international preliminary examination (In Japanese)
Total pages 45
Application Number P2018-552986
International application number PCT/JP2017/042333
International publication number WO2018/097272
Date of international filing Nov 27, 2017
Date of international publication May 31, 2018
Application number of the priority 2016230526
Priority date Nov 28, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】梅野 健
【氏名】岩田 卓也
Applicant (In Japanese)【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100114557、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 英仁
【識別番号】100078868、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 登夫
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 2G105
F-term 2G105AA03
2G105BB01
2G105MM03
Abstract (In Japanese) 地上の観測局が衛星から受信した信号の観測データに基づいて、コンピュータは、観測局と衛星との間の電離圏における全電子数の観測開始時からの変化量を算出する。コンピュータは、電離圏における全電子数の観測開始時からの変化量の時間変化に基づいて、次に算出される全電子数の変化量を推定し、推定した全電子数の変化量と、実際に算出された全電子数の変化量との差異(推定誤差)を算出する。コンピュータは、各観測局について算出した推定誤差と、各観測局の近傍の所定数の観測局について算出した推定誤差との相関値を算出する。コンピュータは、観測局毎に算出した相関値が所定閾値以上である場合、この観測局の近傍の所定数の観測局についても相関値が所定閾値以上であれば、この観測局と衛星との間の電離圏に異常発生と判定する。
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
地上に設置された複数の観測局のそれぞれが衛星から受信する信号に係る情報から、各観測局と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出する電子数算出部と、
前記電子数算出部が前記観測局毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に前記電子数算出部によって算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に前記電子数算出部が算出した変化量との差異を算出する差異算出部と、
前記差異算出部が前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局と所定の位置関係にある第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する相関値算出部と、
前記相関値算出部が前記観測局毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定する判定部と、
異常が発生していると判定した場合に通報する通報部と
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記相関値算出部は、前記差異算出部が前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局から所定距離を隔てた前記第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記相関値算出部は、前記差異算出部が前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局の近傍で、前記電子数算出部が算出した変化量が所定値以上異なる前記第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記相関値算出部は、前記差異算出部が前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局の近傍の前記第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記相関値算出部が前記観測局毎に算出した前記相関値が前記所定閾値以上である場合に、前記観測局の近傍の第2所定数の観測局のそれぞれについて前記相関値算出部が算出した前記相関値が前記所定閾値以上であるときは、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記電子数算出部が前記観測局毎に、前記第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、前記複数個の変化量の時間変化を示す近似式を算出し、算出した近似式に基づいて、次に前記電子数算出部によって算出される変化量を推定する推定部
を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記差異算出部は、前記電子数算出部が前記観測局毎に、前記第1の所定時間に続く第2の所定時間に亘って前記所定時間間隔で算出した変化量と、前記電子数算出部による変化量の算出タイミングに対して前記推定部が前記近似式に基づいて推定した変化量との差異を算出し、
前記相関値算出部は、前記差異算出部が前記算出タイミングに対して各観測局について算出した前記差異と、前記第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記相関値算出部は、いずれかの前記観測局x0における時刻Tでの前記相関値C(T)を、以下の式1に基づいて算出することを特徴とする請求項7に記載の異常検知装置。
【数1】
JP2018097272A1_000004t.gif
ただし、xi は前記第1所定数の観測局のいずれかを示し、
x0,t0は観測局x0 における時刻t0での前記差異を示し、
xi,t0は観測局xi における時刻t0での前記差異を示す。
また、任意の時刻をtとし、前記第1の所定時間をtsampleとし、前記第2の所定時間をttestとし、時刻Tは任意の時刻tから時間tsample及びttestが経過した時刻を示す。更に、Mは前記第1所定数を示し、Nは第2の所定時間ttestに亘って算出した全電子数の観測開始時からの変化量の個数を示し、Δtは全電子数の観測開始時からの変化量を算出する時間間隔であり、Δt=ttest/(N-1)で示される。
【請求項9】
前記相関値算出部は、前記差異算出部が各観測局について算出した前記差異と、前記第1所定数の観測局のうちの2つの観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項10】
前記相関値算出部が前記観測局毎に算出した時刻Tでの前記相関値の中央値med(T)及び標準偏差σ(T)を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記中央値med(T)及び標準偏差σ(T)に基づいて、各観測局の前記相関値C(T)の前記中央値med(T)に対する相対値η(T)を、以下の式に基づいて算出する相対値算出部とを備え、
η(T)=(C(T)-med(T))/σ(T)
前記判定部は、前記相対値算出部が算出した前記相対値が所定閾値以上である場合に、前記観測局の近傍の第2所定数の観測局のそれぞれについて前記相対値算出部が算出した前記相対値が前記所定閾値以上であるときは、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項1から9までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項11】
前記観測局のそれぞれが前記衛星から受信した信号に対して独立成分分析を実行する独立成分分析部
を備えることを特徴とする請求項1から10までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項12】
前記通報部は、前記判定部が前記複数の観測局のうちの所定の割合以上の観測局に対して、異常が発生していると判定した場合、通報する処理を実行しない
ことを特徴とする請求項1から11までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると継続して判定した時間が所定時間に達した場合に、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していることを確定する
ことを特徴とする請求項1から12までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項14】
前記信号に係る情報は、周波数が異なる2つの信号のそれぞれの位相であり、
前記電子数算出部は、前記2つの信号の位相差に基づいて前記大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を算出する
ことを特徴とする請求項1から13までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項15】
過去の観測データに基づいて、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生しているか否かの判断基準である前記所定閾値を特定する特定部
を備えることを特徴とする請求項1から14までのいずれかひとつに記載の異常検知装置。
【請求項16】
複数の観測位置のそれぞれに係る情報及び前記観測位置のそれぞれで衛星から受信する信号に係る情報から、各観測位置と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出する電子数算出部と、
前記電子数算出部が前記観測位置毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に前記電子数算出部によって算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に前記電子数算出部が算出した変化量との差異を算出する差異算出部と、
前記差異算出部が前記観測位置毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測位置と所定の位置関係にある第1所定数の観測位置について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する相関値算出部と、
前記相関値算出部が前記観測位置毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測位置と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定する判定部と、
異常が発生していると判定した場合に通報する通報部と
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれかひとつに記載の異常検知装置から通報された情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した情報を通知する通知部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項18】
異常検知装置が、
地上に設置された複数の観測局のそれぞれが衛星から受信する信号に係る情報から、各観測局と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出し、
前記観測局毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に算出した変化量との差異を算出し、
前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局と所定の位置関係にある第1所定数の観測局について算出した前記差異との相関値を算出し、
前記観測局毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定し、
異常が発生していると判定した場合に通報する
処理を実行することを特徴とする異常検知方法。
【請求項19】
異常検知装置が、
複数の観測位置のそれぞれに係る情報及び前記観測位置のそれぞれで衛星から受信する信号に係る情報から、各観測位置と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出し、
前記観測位置毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に算出した変化量との差異を算出し、
前記観測位置毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測位置と所定の位置関係にある第1所定数の観測位置について算出した前記差異との相関値を算出し、
前記観測位置毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測位置と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定し、
異常が発生していると判定した場合に通報する
処理を実行することを特徴とする異常検知方法。
【請求項20】
コンピュータに、
地上に設置された複数の観測局のそれぞれが衛星から受信する信号に係る情報から、各観測局と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出し、
前記観測局毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に算出した変化量との差異を算出し、
前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局と所定の位置関係にある第1所定数の観測局について算出した前記差異との相関値を算出し、
前記観測局毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定し、
異常が発生していると判定した場合に通報する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
複数の観測位置のそれぞれに係る情報及び前記観測位置のそれぞれで衛星から受信する信号に係る情報から、各観測位置と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出し、
前記観測位置毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に算出した変化量との差異を算出し、
前記観測位置毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測位置と所定の位置関係にある第1所定数の観測位置について算出した前記差異との相関値を算出し、
前記観測位置毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測位置と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定し、
異常が発生していると判定した場合に通報する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項20又は21に記載のプログラムが記録してあることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置、通信装置、異常検知方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
地震の発生を早期に通知する地震速報が行われている。地震が発生すると、震源からP波(Primary Wave)及びS波(Secondary Wave)と呼ばれる地震波(揺れ)が伝わってくる。P波(初期微動)及びS波(主要動)は伝わる速度が異なるので、先に伝わるP波を感知した時点で、S波が伝わってくる前に地震速報にて地震の発生を通知することができる。具体的には、震源に近い場所に設置された地震計でP波が感知された時点で、P波の観測データから震源の位置及び規模(マグニチュード)が推定され、推定された震源の位置及び規模に基づいて各地でのS波の到達時刻及び震度が予測されて通知される。
【0003】
また、近年、地震の発生と、超高層大気と呼ばれる電離圏における電子数の変動との関係についての研究が行われている。例えば、非特許文献1では、地震発生の約1時間前から地震発生の約30分後までの時間帯において、震源の上空の電離圏における電子数が、その前後の時間帯における電離圏の電子数の変動と比較して異常に増加していたことが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Heki, K., “Ionospheric electron enhancement preceding the 2011 Tohoku-Oki earthquake”, Geophysical Research Letters, Vol. 38, L17312 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、地震発生の前後における電離圏の電子数の変動に基づいて、地震発生の前後約1時間半における電子数の異常変動(地震の発生)を検知している。地震の発生を事前に予測する場合、地震発生前のデータのみを用いて電離圏における電子数の異常変動を検知する必要がある。しかし、電離圏の電子数は、日や季節の自然変化、太陽フレア等の宇宙天気によっても変動するので、地震発生前のデータのみに基づいて、電離圏における電子数の異常変動を精度よく検知することは困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地震発生前のデータのみに基づいて、電離圏における電子数の異常変動を精度よく検知することを可能にする異常検知装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る異常検知装置は、地上に設置された複数の観測局のそれぞれが衛星から受信する信号に係る情報から、各観測局と前記衛星との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を所定時間間隔で算出する電子数算出部と、前記電子数算出部が前記観測局毎に、第1の所定時間に亘って算出した複数個の変化量に基づいて、次に前記電子数算出部によって算出される変化量を推定し、推定した変化量と、次に前記電子数算出部が算出した変化量との差異を算出する差異算出部と、前記差異算出部が前記観測局毎に算出した前記差異と、それぞれの前記観測局と所定の位置関係にある第1所定数の観測局について前記差異算出部が算出した前記差異との相関値を算出する相関値算出部と、前記相関値算出部が前記観測局毎に算出した前記相関値が所定閾値以上である場合に、前記観測局と前記衛星との間の全電子数の変化に異常が発生していると判定する判定部と、異常が発生していると判定した場合に通報する通報部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様にあっては、地震発生前(地震が発生していないとき)の大気中の電子数の変動に基づいて、電子数の異常変動を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1のコンピュータ及び通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】観測データを説明するための模式図である。
【図3】制御部によって実現される機能を示すブロック図である。
【図4A】TEC値算出部が算出する電子数を説明するための模式図である。
【図4B】TEC値算出部が算出する電子数を説明するための模式図である。
【図5】TEC値算出部が算出する電子数を説明するための模式図である。
【図6】TEC値算出部が算出したTEC値の時間変化を示すグラフである。
【図7A】TEC値算出部が算出したTEC値の時間変化及び相関値算出部が算出した相関値の時間変化を示すグラフである。
【図7B】TEC値算出部が算出したTEC値の時間変化及び相関値算出部が算出した相関値の時間変化を示すグラフである。
【図8】異常判定部による判定結果を示す模式図である。
【図9】コンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態2の異常検知システムの構成例を示すブロック図である。
【図11】観測局コンピュータ及び中央コンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施形態3のコンピュータの制御部によって実現される機能を示すブロック図である。
【図13】実施形態4のコンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図14A】実施形態4のコンピュータが行う処理を説明するための模式図である。
【図14B】実施形態4のコンピュータが行う処理を説明するための模式図である。
【図14C】実施形態4のコンピュータが行う処理を説明するための模式図である。
【図15】実施形態5のコンピュータの制御部によって実現される機能を示すブロック図である。
【図16】実施形態5のコンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】実施形態6のコンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】異常判定部による判定結果を示す模式図である。
【図19】実施形態7のコンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】参考データDBの構成例を示す模式図である。
【図21】コンピュータが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて具体的に説明する。

【0011】
(実施形態1)
実施形態1に係る異常検知装置について説明する。実施形態1では、本開示のプログラムを、例えばコンピュータにインストールして実行することにより、本開示の異常検知装置が実現される。

【0012】
図1は、実施形態1のコンピュータ及び通信装置の構成例を示すブロック図である。コンピュータ1は、例えばパーソナルコンピュータ、ワークステーション、スーパーコンピュータ等である。具体的には、コンピュータ1は、制御部10、記憶部11、メモリ12、通信部13等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。コンピュータ1は、これらの各部のほかに、キーボード、マウス等を含む操作部、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示部を備えていてもよい。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサを含む。制御部10は、記憶部11に記憶してある制御プログラムを適宜メモリ12に展開して実行することにより、コンピュータ1が行う種々の制御処理を行う。

【0013】
記憶部11は、例えばハードディスク、SSD(Solid State Drive)等である。記憶部11は、制御部10が実行する各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶する。記憶部11が記憶する制御プログラムには異常検知プログラム11aが含まれ、記憶部11が記憶するデータには観測データデータベース(以下、観測データDBという)11bが含まれる。なお、異常検知プログラム11a及び観測データDB11bは、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory )又はDVD-ROM(Digital Versatile Disc-ROM)等の記録媒体によって提供されるものでもよい。この場合、制御部10は、読取装置(図示せず)を用いて記録媒体から異常検知プログラム11a及び観測データDB11bを読み取って記憶部11に記憶させる。また、異常検知プログラム11a及び観測データDB11bは、インターネット等のネットワークN経由で提供されるものでもよい。この場合、制御部10は、異常検知プログラム11a及び観測データDB11bを、通信部13を介して他のコンピュータからダウンロードして記憶部11に記憶させる。なお、異常検知プログラム11a及び観測データDB11bの一方を記録媒体から取得し、他方をネットワークN経由で取得してもよいことは言うまでもない。

【0014】
メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等である。メモリ12は、記憶部11に記憶してある制御プログラムを制御部10が実行する際に発生するデータを一時的に記憶する。
通信部13は、ネットワークNに接続するためのインタフェースであり、ネットワークNを介して、通信装置100を含む他のコンピュータと通信を行う。通信部13による通信は、ケーブルを介した有線通信でもよいし、無線通信でもよい。

【0015】
ここで、観測データDB11bに記憶される観測データについて説明する。図2は、観測データを説明するための模式図である。観測データは、地上(地表)に設置された観測局2が、宇宙空間に配置された衛星3から受信する信号(電波)に関するデータである。例えば、衛星3が異なる周波数の2つの信号L1,L2を送信しており、観測局2が信号L1,L2を受信した各時点での位相が観測データとして用いられる。なお、信号L1,L2として、例えば周波数がそれぞれ1.5GHz及び1.2GHzの信号を用いることができる。

【0016】
現在、地表からの高度が約2万Kmの位置で約30個のGPS(Global Positioning System)衛星3が地球を周回している。また日本には、約1300箇所にGPS衛星3からの信号を受信する観測局2が設置されており、観測局2によるGEONET(GPS Earth Observation NETwork )が構築されている。GEONETは国土交通省の国土地理院によって運営されており、GEONET(各観測局2)によって収集された観測データは一般に公開されている。よって、GEONETによって収集されたデータのうちで、観測局2が信号L1,L2を受信した各時点での位相を観測データとして用いることができる。
また、日本の上空には高度約36000kmの位置で複数の準天頂衛星が準天頂軌道上を移動している。複数の準天頂衛星は、常に1機の準天頂衛星が日本の天頂(真上)付近に存在するように配置されている。よって、観測局2が準天頂衛星から受信した信号L1,L2の各受信時点での位相を観測データに用いることもできる。日本以外の国もそれぞれの上空に衛星を配置しており、例えば観測局2がインドに設置されている場合、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System )におけるIRNSS衛星を衛星3に用いることができる。観測局2が受信できる信号L1,L2の送信が可能であれば、衛星3はどのような衛星でもよい。

【0017】
実施形態1の観測データDB11bには、例えば日本中に設置された全ての観測局2について、各観測局2が所定時間間隔(例えば30秒毎)で受信した信号L1,L2の位相と受信時刻とが対応付けて記憶してある。

【0018】
通信装置100は、例えば携帯電話、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等である。具体的には、通信装置100は、制御部101、記憶部102、メモリ103、通信部104、通知部105等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。
制御部101は、CPU又はMPU等のプロセッサを含み、記憶部102に記憶してある制御プログラムを適宜メモリ103に展開して実行することにより、通信装置100が行う種々の制御処理を行う。

【0019】
記憶部102は、例えばハードディスク、SSD、フラッシュメモリ等であり、制御部101が実行する各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶する。メモリ103は、例えばRAM、フラッシュメモリ等であり、記憶部102に記憶してある制御プログラムを制御部101が実行する際に発生するデータを一時的に記憶する。
通信部104は、ネットワークNに接続するためのインタフェースであり、ネットワークNを介して、例えばコンピュータ1と通信を行う。通信部104による通信は、ケーブルを介した有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
通知部105は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示部、ランプ、ブザー、スピーカ等を含み、制御部101からの指示に従って、表示部への所定メッセージの表示、ランプの点灯又は点滅、ブザーの鳴動、スピーカによる音声出力等を行うことにより、通信装置100のユーザに所定の状況を通知する。

【0020】
次に、コンピュータ1の制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって実現される機能について説明する。図3は、制御部10によって実現される機能を示すブロック図である。制御部10は、記憶部11に記憶してある異常検知プログラム11aを実行することにより、TEC(Total Electron Content)値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10d、相関値算出部10e、相対値算出部10f、異常判定部10g、通報部10hの各機能を実現する。

【0021】
TEC値算出部(電子数算出部)10aは、観測データDB11bに記憶してある観測データに基づいて、観測局2のそれぞれと衛星3との間における大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を算出する。具体的には、TEC値算出部10aは、各観測局2が衛星3から受信した信号L1,L2の位相に基づいて、各観測局2と衛星3との間の全電子数の観測開始時からの変化量を算出する。衛星3から送信される信号(電波)には大気中の電子による遅延が生じ、電子の数が多いほど遅延が大きくなる。また、電子による遅延の大きさは信号の周波数によっても異なるので、同じ衛星3から受信した異なる周波数の信号L1,L2の遅延時間の差によって、大気中の全電子数の観測開始時からの変化量を算出できる。
実施形態1の観測データは、所定時間間隔(例えば30秒毎)で各観測局2が受信した信号L1,L2の位相である。よって、TEC値算出部10aが観測データに基づいて電子数の算出処理を順次行うことにより、各観測局2と衛星3との間における大気中の電子数の変化量が所定時間間隔(例えば30秒毎)で算出されることになる。

【0022】
図4A,図4B及び図5は、TEC値算出部10aが算出する電子数を説明するための模式図である。図4A,図4B及び図5の上側には地球の断面の一部が示され、図5の下側には上空から見た地球の一部(地図)が示されている。
TEC値算出部10aが算出する電子数の単位にはTECU(Total Electron Content unit)が用いられる。1TECUは、図4A及び図4Bに示すように観測局2と衛星3とを結ぶ半径1mの円柱C内に1×1016個の電子が存在することを表す。即ち、TEC値算出部10aが算出する電子数は、観測局2と衛星3とを結ぶ半径1mの円柱C内に存在する全電子数の観測開始時からの変化量(TEC値)である。なお、衛星3は軌道上を移動しているので、図4A及び図4Bに示すように、衛星3の位置に応じて円柱Cの容積は変化する。
大気中の電子は高度約300km付近で最も密度が高く、この領域は電離圏と呼ばれている。また、円柱C内に存在する電子数は、円柱Cが電離圏と交差する領域R内に存在する電子数とほぼ同じであると考えられる。よって、TEC値算出部10aが算出する全電子数の観測開始時からの変化量は、観測局2と衛星3とを結ぶ円柱Cが電離圏と交差する領域Rにおける全電子数の観測開始時からの変化量(TEC値)として扱うことができる。

【0023】
ここで、TEC値算出部10aが算出するTEC値の電離圏における領域Rの真下の位置(経度及び緯度)は、観測局2の位置(経度及び緯度)に一致しない場合がある。領域Rの真下の位置とは、領域Rを鉛直下方向に下ろした地表の位置である。例えば図4Bに示すように観測局2の真上(鉛直上方向)に衛星3が存在する場合、領域Rの真下の位置は観測局2の位置に一致する。一方、図4A及び図5に示すように観測局2の真上に衛星3が存在しない場合、領域Rの真下の位置は観測局2の位置に一致しない。図4Aでは、領域Rの真下の位置は観測局2の位置よりも右側にずれている。なお、領域Rの真下の位置(場所)をSIP(Sub-Ionospheric point )いう。また以下では、例えばSIPの上空の電離圏におけるTEC値を、SIPにおけるTEC値という場合もある。

【0024】
観測局2の位置(経度及び緯度)は予め分かっている。また、衛星3の高度及び衛星3の真下の位置(経度及び緯度)の情報は、観測局2が衛星3から受信する信号に含まれている。よって、これらの情報を用いてSIPの情報(経度及び緯度)が算出できる。TEC値算出部10aは、各観測局2と衛星3との間におけるTEC値を算出すると共に、算出したTEC値に対応するSIPの情報(経度及び緯度)も算出する。なお、図5の下側の図(地図)中に、各TEC値に対応して算出されたSIPがプロットされており、これにより、時間経過と共に衛星3が移動することに伴ってSIPも移動することが分かる。
TEC値算出部10aは、算出したTEC値及びSIPの情報を、例えば元データである観測データの受信時刻に対応付けて記憶部11に記憶させる。なお、TEC値及びSIPの情報は、観測データDB11bに記憶されてもよいし、記憶部11に作成された別のデータベースに記憶されてもよい。

【0025】
図6は、TEC値算出部10aが算出したTEC値の時間変化を示すグラフである。図6の横軸は時間(例えば協定世界時又は日本標準時)を示し、縦軸はTEC値算出部10aが算出したTEC値を示す。図6中の実線Aは、ある観測局2について、任意の時刻(t)から時刻(t+tsample+ttest)までの時間に亘ってTEC値算出部10aが所定時間間隔で算出したTEC値をプロットしたものである。

【0026】
TEC値推定部(推定部)10bは、観測局2(SIP)毎に、TEC値算出部10aが第1の所定時間(以下ではサンプル時間tsampleという)に亘って算出した複数個のTEC値に基づいて、サンプル時間に続く第2の所定時間(以下ではテスト時間ttestという)に亘ってTEC値算出部10aが算出するTEC値を推定する。なお、TEC値推定部10bが推定するTEC値は、各観測局2と衛星3とにおけるSIPでのTEC値である。
サンプル時間は例えば2時間とすることができ、テスト時間は例えば0.25時間(15分)とすることができるが、これらの時間に限定されない。なお、サンプル時間を2時間とし、テスト時間を0.25時間とし、TEC値算出部10aによるTEC値の算出間隔(観測局2による信号L1,L2の受信間隔)を30秒とした場合、TEC値算出部10aは、サンプル時間内に240個のTEC値を算出し、テスト時間内に30個のTEC値を算出する。

【0027】
TEC値推定部10bは、近似式算出部10cを有する。近似式算出部10cは、観測局2毎に、サンプル時間内に算出された複数個のTEC値の時間変化を示す近似式を最小二乗法によって算出する。近似式は、例えば7次多項式関数を用いることができるが、これに限定されず、5次多項式関数、3次フーリエ級数、7次ガウス関数等を用いることもできる。図6中の破線Bは、ある観測局2について、近似式算出部10cが算出した近似式に基づく各時刻でのTEC値を示している。
TEC値推定部10bは、近似式算出部10cが算出した近似式に基づいて、テスト時間内においてTEC値算出部10aがTEC値を算出するタイミング(以下、算出タイミングという)のそれぞれに対して、TEC値算出部10aが算出するTEC値を推定する。図6中の破線Bにおいて、テスト時間の部分は、TEC値推定部10bによって推定されたTEC値(推定TEC値)を示す。

【0028】
推定誤差算出部(差異算出部)10dは、観測局2(SIP)毎に、テスト時間内の各算出タイミングについて、TEC値算出部10aが算出したTEC値と、TEC値推定部10bによる推定TEC値との差異(以下、推定誤差という)を算出する。
TEC値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10dは、それぞれの観測局2の観測データ毎に処理を行う。よって、TEC値算出部10aが算出したTEC値及びSIPの情報、TEC値推定部10bによる推定TEC値、推定誤差算出部10dが算出した推定誤差は、観測データDB11bに記憶してある各観測局2の観測データに対応付けて、観測データDB11bに記憶させることができる。なお、各データは、観測データDB11bに記憶させる必要はなく、観測局2毎に記憶部11に記憶させればよい。

【0029】
相関値算出部10eは、テスト時間内の各算出タイミングについて推定誤差算出部10dが算出した各観測局2(各SIP)における推定誤差に基づいて処理を行う。
相関値算出部10eは、テスト時間内の各算出タイミングについて、複数の観測局2のうちの1つを中央観測局とし、この中央観測局の近傍の第1所定数(例えば30個)の観測局2を周辺観測局とする。周辺観測局には、中央観測局との位置が近い順に第1所定数の観測局2が選択されることが好ましい。そして、相関値算出部10eは、中央観測局について推定誤差算出部10dが算出した推定誤差と、周辺観測局のそれぞれについて推定誤差算出部10dが算出した推定誤差のそれぞれとの相関値を算出する。

【0030】
相関値算出部10eは、中央観測局x0 における時刻Tでの相関値C(T)を、例えば以下の式1に基づいて算出する。
【数1】
JP2018097272A1_000003t.gif
ただし、x0:中央観測局、xi :周辺観測局のいずれか、
x0,t0:中央観測局x0 における時刻t0での推定誤差、
xi,t0:周辺観測局xi における時刻t0での推定誤差、
t:任意の時刻、tsample:サンプル時間(第1の所定時間)、
ttest:テスト時間(第2の所定時間)、M:周辺観測局の数(第1所定数)、
T:時刻tから時間tsample及びttestが経過した時刻、
N:テスト時間内にTEC値算出部10aが算出したTEC値の個数、
Δt:TEC値の算出タイミングの時間間隔(Δt=ttest/(N-1))

【0031】
相関値算出部10eは、全ての観測局2について、各観測局2を中央観測局として上述の処理を行い、テスト時間内の算出タイミング毎に観測局2のそれぞれにおける相関値C(T)を算出する。なお、相関値C(T)を算出する際に用いる中央観測局における推定誤差と、周辺観測局のそれぞれにおける推定誤差とは、同一の衛星3から受信した観測データに基づいて算出された値を用いることが好ましい。
各観測局2間の距離は予め分かっているので、各観測局2を中央観測局とした場合に周辺観測局として選択される観測局2は予め分かる。よって、各観測局2について、各観測局2を中央観測局とした場合に周辺観測局とされる第1所定数の観測局2を予め記憶部11に記憶しておいてもよい。なお、周辺観測局の数(第1所定数)は例えば30個とすることができるが、この数に限定されない。

【0032】
図7A及び図7Bは、TEC値算出部10aが算出したTEC値の時間変化及び相関値算出部10eが算出した相関値の時間変化を示すグラフである。図7Aは、地震が発生していないとき(地震発生前)のTEC値及び相関値の時間変化を示している。図7Aの左側はTEC値の時間変化を示すグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸はTEC値算出部10aが算出したTEC値を示す。図7Aの右側は相関値の時間変化を示すグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は相関値算出部10eが算出した相関値を示す。図7Bは、地震発生(時間5:45)の前後でのTEC値及び相関値の時間変化を示している。図7Aと同様に、図7Bの左側はTEC値の時間変化を示すグラフであり、右側は相関値の時間変化を示すグラフである。
図7Aに示すように、TEC値の時間変化が、衛星3の移動に伴う通常の変化である場合、推定誤差算出部10dが算出する推定誤差はほぼ0であり、この場合に相関値算出部10eが算出する相関値は、0に近い小さい値であり、変化も少ない。一方、図7Bに示すように、TEC値の時間変化に異常が生じた場合、推定誤差算出部10dが算出する推定誤差が大きくなり、この場合に相関値算出部10eが算出する相関値は大きく変化する。即ち、相関値算出部10eが算出する相関値を観察することにより、TEC値の異常変化を検知することができる。

【0033】
上記の式1に示すように、実施形態1では、中央観測局x0における時刻Tでの相関値C(T)は、テスト時間内の算出タイミングのそれぞれでの中央観測局x0における推定誤差と周辺観測局xi における推定誤差との積の総和を、積の個数で割った値(平均値)である。即ち、相関値算出部10eは、同時刻における2点(中央観測局x0及び周辺観測局xi )での推定誤差の相関値を算出する。
なお、算出すべき相関値は2点間の相関値に限らず、例えば3点間の相関値を用いることもできる。この場合、例えば、中央観測局における推定誤差と、いずれか2つの周辺観測局における推定誤差との積の総和を、積の個数で割った平均値を、相関値に用いることができる。

【0034】
相対値算出部10fは、時刻Tについて相関値算出部10eが算出した全ての観測局2(中央観測局)における相関値に基づいて処理を行う。
相対値算出部(算出部)10fは、時刻Tについて相関値算出部10eが算出した各観測局2(SIP)における相関値の中央値med(T)及び標準偏差σ(T)を算出する。そして、相対値算出部10fは、算出した中央値med(T)及び標準偏差σ(T)を用いて、各観測局2における相関値C(T)が中央値med(T)とどの程度異なるかを示す相対値η(T)を、例えば以下の式2に基づいて算出する。
η(T)=(C(T)-med(T))/σ(T) …(式2)

【0035】
異常判定部10gは、時刻Tについて相対値算出部10fが算出した全ての観測局2(全てのSIP)における相対値η(T)に基づいて処理を行う。
異常判定部10gは、相対値算出部10fが算出した各観測局2(各SIP)の相対値がそれぞれ所定閾値(例えば3.5)以上であるか否かを判定する。そして、異常判定部10gは、相対値が所定閾値以上である観測局2(SIP)を、SIPにおけるTEC値が異常変化している可能性がある観測局2(以下では異常観測局2という)として抽出する。図8は、異常判定部10gによる判定結果を示す模式図である。図8に示す地図には、観測局2が異常観測局2として抽出されたSIPに黒三角のマークが付与され、観測局2が異常観測局2として抽出されなかったSIPに白丸のマークが付与されている。
大地震が発生する約1時間前から、震源に近いSIPでは、電離圏のTEC値が異常変化することが知られている。よって、各SIPの相対値が所定閾値未満である場合、即ち、各SIPにおける相関値が、相関値の中央値と変わらない場合、TEC値が衛星3の移動に伴う通常変化しかしていない状況であるか、通常変化よりも大きいが、大地震の発生以外の要因による変化しかしていない状況である可能性が高い。従って、各SIPの相対値が所定閾値以上であるか否かに応じて、各SIPにおけるTEC値が異常変化しているか否かを判定することにより、判定の正確性を確保することができる。なお、所定閾値は、大地震の発生によってTEC値に異常変化が生じているか否かを判定できる値であれば、どのような値でもよい。

【0036】
実施形態1では、各SIPでのTEC値が異常変化しているか否かの判定に、各SIP(観測局2)において算出した相対値η(t)を用いるが、相関値算出部10eが算出した各SIPにおける相関値を用いることもできる。この場合、各SIPにおける相関値が所定閾値(例えば3.5σ)以上である場合に、各SIPでのTEC値が異常変化していると判定することができる。

【0037】
異常判定部10gは、異常観測局2として抽出された観測局2について、近傍の第2所定数(例えば4個)の観測局2も異常観測局2として抽出されたか否かを判断する。即ち、近傍の観測局2も、SIPにおけるTEC値が異常変化している可能性があると判定されたか否かを判断する。大地震の発生前に生じるTEC値の異常変化は、震源近傍の上空の電離圏で顕著である。従って、1つのSIP(観測局2)だけでなく近傍の複数のSIP(観測局2)においてもTEC値が異常変化している可能性が高い。よって、近傍の複数の観測局2も異常観測局2として抽出されていた場合、この観測局2(SIP)におけるTEC値は確実に異常変化していると判定できる。従って、異常判定部10gは異常発生を確定する。なお、近傍の観測局2の数(第2所定数)は4個に限らない。
通報部10hは、異常判定部10gが異常発生を確定した場合、異常が発生している(TEC値が異常変化している)観測局2(SIP)に関する情報を、例えば通信部13を介して通信装置100に通報する。

【0038】
通報を受けた通信装置100では、通信部104が、コンピュータ1から通報された情報を受信し、制御部101が、通信部104にて受信した情報を通知部105にて通信装置100のユーザに通知する。例えば、通知部105は、制御部101からの指示に従って、TEC値が異常変化している観測局2(SIP)を通知するためのメッセージを表示部に表示し、又は、前記メッセージをスピーカにて音声出力する。なお、通知部105は、ランプの点灯又は点滅、ブザーの鳴動によって、TEC値の異常発生を通知する構成でもよい。

【0039】
実施形態1では、コンピュータ1の制御部10が異常検知プログラム11aを実行することにより上述した各機能が実現される。このほかに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて、上述した機能の一部が実現される構成でもよい。例えば、TEC値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10d、相関値算出部10eを1つ又は複数のFPGAにて実現してもよい。

【0040】
次に、コンピュータ1が行う処理について説明する。図9は、コンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートである。以下の処理は、コンピュータ1の記憶部11に記憶してある異常検知プログラム11aに従って制御部10によって実行される。観測データDB11bには各観測局2が衛星3から受信した信号(電波)に関する観測データ、具体的には、異なる周波数の2つの信号L1,L2を受信した各時点での位相が記憶されているものとする。

【0041】
コンピュータ1の制御部10(TEC値算出部10a)は、観測データDB11bに記憶してある観測データに基づいて、観測局2毎に、各観測局2と衛星3との間における大気中(電離圏)のTEC値を算出する(S1)。なお、制御部10は、観測局2毎に所定時間間隔(例えば30秒毎)でTEC値を算出する。制御部10は、観測データDB11bに記憶してある全ての観測データに基づくTEC値を順次算出する。また、観測データDB11bに新たに観測データが記憶された場合、制御部10は、所定のタイミングで、新たに記憶された観測データに基づくTEC値を順次算出する。制御部10は、TEC値と共に、このTEC値に対応するSIPの情報(経度及び緯度)も算出しており、算出したTEC値及びSIPの情報は記憶部11(例えば観測データDB11b)に順次記憶される。

【0042】
次に制御部10(近似式算出部10c)は、観測局2(SIP)毎に、ある時刻をサンプル時間の開始時刻とし、サンプル時間内に算出された複数個のTEC値の時間変化を示す近似式を最小二乗法によって算出する(S2)。そして制御部10(TEC値推定部10b)は、算出した近似式に基づいて、サンプル時間に続くテスト時間におけるTEC値の算出タイミングのそれぞれに対応する推定TEC値を算出する(S3)。次に制御部10(推定誤差算出部10d)は、観測局2(SIP)毎に、テスト時間内の各算出タイミングについて、ステップS1で算出されたTEC値と、ステップS3で算出された推定TEC値との推定誤差を算出する(S4)。

【0043】
次に制御部10(相関値算出部10e)は、テスト時間内の各算出タイミングについて、観測局2のそれぞれを中央観測局とし、中央観測局の近傍の第1所定数の観測局2を周辺観測局とし、上述の式1に基づいて、それぞれの観測局2(中央観測局)における相関値を算出する(S5)。
次に制御部10(相対値算出部10f)は、各算出タイミングに対して算出された各観測局2(各中央観測局)における相関値の中央値及び標準偏差を算出する(S6)。そして制御部10は、算出した中央値及び標準偏差を用いて、各観測局2(各中央観測局)における相関値の中央値に対する相対値(相関値が中央値とどの程度異なるかを示す値)を、上述の式2に基づいて算出する(S7)。

【0044】
次に制御部10(異常判定部10g)は、算出された各観測局2(各SIP)における相対値がそれぞれ所定閾値以上であるか否かに基づいて、各SIPにおけるTEC値が異常変化しているか否かを判定する(S8)。制御部10は、相対値が所定閾値以上である観測局2を異常観測局2として抽出する。
次に制御部10は、異常観測局2として抽出した観測局2について、近傍の第2所定数の観測局2も抽出されているか否かを判定する。即ち、近傍の観測局2に対応するSIPにおけるTEC値も異常変化しているか否かを判定する。近傍の第2所定数の観測局2も抽出されている場合、制御部10は、この観測局2に対応するSIPにおけるTEC値が異常変化していることを確定する。

【0045】
制御部10は、異常観測局2として抽出した各観測局2において、SIPにおけるTEC値が異常変化していることが確定されたか否かを判断する(S9)。いずれの観測局2についても確定されなかった場合(S9:NO)、制御部10は処理を終了する。いずれかの観測局2について異常変化していることが確定された場合(S9:YES)、制御部(通報部10h)10は、異常発生が確定された観測局2(SIP)に関する情報を、例えば通信装置100に通報し(S10)、処理を終了する。
制御部10は、例えば所定時間毎(例えば30秒毎)の各時刻をそれぞれサンプル時間の開始時刻とし、ステップS2~S10の処理を行う。これにより、各SIPにおけるTEC値の異常変化を早期に検知できる。

【0046】
コンピュータ1からの通報を受けた通信装置100では、通信部104が、通報された情報を受信し、制御部101が、通信部104にて受信した情報に基づいて、いずれの観測局2(SIP)におけるTEC値に異常が発生していることを通知部105にて通知する。

【0047】
実施形態1では、観測局2が衛星3から受信した信号(直接波)が観測データに用いられる。観測データとしては、例えば地上の送信アンテナから送信された信号が電離圏で反射された後に地上の受信アンテナで受信される構成において、受信アンテナで受信された信号(反射波)が用いられる場合がある。実施形態1のように直接波を用いる場合、反射波を用いる場合と比較して、通信経路において受信信号に加わるノイズが少なく、精度の高い観測データを得ることができる。よって、精度の高い観測データを用いることにより、電離圏のTEC値の変化を精度よく検知できる。また、直接波を用いることにより、観測局2の位置と衛星3の位置とに基づいて、電離圏における観測位置(SIP)を容易に特定できる。

【0048】
実施形態1では、あるSIPについて算出した相対値が所定閾値(例えば3.5)以上である場合、又は算出した相関値が所定閾値(例えば3.5σ)以上である場合に、このSIPにおけるTEC値が異常変化している可能性があると判定する。そして、TEC値が異常変化している可能性があると判定したSIPの近傍の第2所定数のSIPにおけるTEC値も異常変化している可能性があると判定された場合に、このSIPにおけるTEC値が確実に異常変化していると確定する。これにより、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知でき、誤通報を抑制できる。

【0049】
各SIPにおけるTEC値が異常変化していると確定する方法は、上述の方法に限らない。例えば、各SIPにおけるTEC値が異常変化している可能性があると判定された回数(算出タイミングの回数)に基づいて、各SIPにおけるTEC値の異常変化を確定してもよい。即ち、各SIPにおいて所定時間に亘ってTEC値が異常変化している可能性があると判定された場合に、このSIPにおけるTEC値の異常変化を確定することもできる。

【0050】
また、TEC値が異常変化している可能性があると判定されたSIP(観測局2)の数が、複数の観測局2のうちの一定の割合以上(例えば30%以上)であった場合に、検知されたTEC値の異常は、大地震の発生に伴う異常ではなく宇宙天気、日や季節の自然変化による異常と確定し、コンピュータ1が通報処理を行わないようにしてもよい。地震発生以外の要因で生じる電離圏(TEC値)の異常は、観測可能な観測局2のうちの一定の割合以上の観測局2で検知されることが知られている。よって、一定の割合以上の観測局2で同時にTEC値の異常が検知された場合に、大地震の発生に伴う異常ではないと確定することにより、地震発生以外の要因で生じるTEC値の異常を排除できる。よって、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知でき、通報することができる。

【0051】
実施形態1では、電離圏におけるTEC値の異常変化を早期に且つ精度よく検知できる。大地震が発生する約1時間前から、電離圏におけるTEC値が異常変化することが知られている。よって、コンピュータ1が検知した電離圏におけるTEC値の異常変化を早期に通報することができる。また、コンピュータ1が検知した電離圏におけるTEC値の異常変化を、地震発生前に、これから発生する可能性の高い大地震の震源の予測に利用できる。例えば、TEC値が異常変化している電離圏(SIP)と震源との位置関係、各SIPにおける地盤の情報等を予め過去のデータから導き出しておき、これらの情報を用いることにより震源の場所を予測することが可能となる。図8に示す判定結果を用いた場合、九州の南東端から更に南東の海上のSIPにおけるTEC値が異常変化しているので、この箇所の近傍を震源とする地震が発生する可能性が高いと予測できる。よって、例えば、通報先の通信装置100において、コンピュータ1から通報された情報に基づいて、地震発生前に地震の発生及び震源を予測し、予測した情報を緊急速報に用いる場合には、例えば地震発生の30分程度前に緊急速報を発信することが可能となる。

【0052】
(実施形態2)
上述した実施形態1の異常検知装置における変形例について説明する。実施形態1では、1つのコンピュータ1を用いて全ての処理を行う構成について説明した。これに対して、実施形態2では、実施形態1のコンピュータ1が行っていた処理を複数のコンピュータを用いて分散して行う構成について説明する。
図10は、実施形態2の異常検知システムの構成例を示すブロック図である。実施形態2の異常検知システムは、各観測局2に設置された複数の観測局コンピュータ5と、1つの中央コンピュータ4とを備える。観測局コンピュータ5及び中央コンピュータ4は、例えばパーソナルコンピュータ、ワークステーション、スーパーコンピュータ等である。実施形態2では、本開示の異常検知プログラムの一部(推定誤差算出プログラム51a)がそれぞれの観測局コンピュータ5にインストールされ、残り(異常検知プログラム41a)が中央コンピュータ4にインストールされており、全体として実施形態1のコンピュータ1と同様の処理が行われる。

【0053】
観測局コンピュータ5は、制御部50、記憶部51、メモリ52、通信部53等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部50は、CPU又はMPU等のプロセッサを含み、記憶部51に記憶してある制御プログラムを適宜メモリ52に展開して実行することにより、観測局コンピュータ5が行う種々の制御処理を行う。記憶部51は、例えばハードディスク、SSD等であり、制御部50が実行する各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶する。記憶部51が記憶する制御プログラムには推定誤差算出プログラム51aが含まれ、記憶部51が記憶するデータには観測データDB51bが含まれる。

【0054】
メモリ52は、例えばRAM、フラッシュメモリ等であり、記憶部51に記憶してある制御プログラムを制御部50が実行する際に発生するデータを一時的に記憶する。
通信部53は、ネットワークNに接続するためのインタフェースであり、ネットワークNを介して、他のコンピュータと通信を行う。通信部53による通信は、ケーブルを介した有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
観測データDB51bに記憶される観測データの内容は、実施形態1の観測データと同一であるが、観測局コンピュータ5が設置されている観測局2が衛星3から受信した信号(電波)に関するデータのみである。

【0055】
観測局コンピュータ5の制御部50は推定誤差算出プログラム51aを実行することにより、実施形態1のコンピュータ1の制御部10が実現する機能のうちのTEC値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10dの各機能を実現する。なお、観測局コンピュータ5の制御部50が実現するTEC値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10dは、自身の観測局コンピュータ5が設置されている観測局2による観測データに基づく処理のみである。よって、例えばTEC値算出部10aは、自身の観測局コンピュータ5が設置されている観測局2と衛星3との間におけるTEC値のみを算出する。実施形態2のTEC値推定部10b、推定誤差算出部10dは、実施形態1と同様の処理を行う。

【0056】
観測局コンピュータ5の制御部50は、テスト時間内の各算出タイミングについて推定誤差算出部10dが算出した推定誤差を、通信部53から中央コンピュータ4へ送信する。なお、制御部50は、テスト時間内の各算出タイミング(観測データの各受信時刻)と、TEC値算出部10aが算出したSIPの情報と、推定誤差とを対応付けて中央コンピュータ4へ送信する。

【0057】
中央コンピュータ4は、制御部40、記憶部41、メモリ42、通信部43等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部40は、CPU又はMPU等のプロセッサを含み、記憶部41に記憶してある制御プログラムを適宜メモリ42に展開して実行することにより、中央コンピュータ4が行う種々の制御処理を行う。記憶部41は、例えばハードディスク、SSD等であり、制御部40が実行する各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶する。記憶部41が記憶する制御プログラムには異常検知プログラム41aが含まれ、記憶部41が記憶するデータには推定誤差データベース(以下、推定誤差DBという)41bが含まれる。

【0058】
メモリ42は、例えばRAM、フラッシュメモリ等であり、記憶部41に記憶してある制御プログラムを制御部40が実行する際に発生するデータを一時的に記憶する。
通信部43は、ネットワークNに接続するためのインタフェースであり、ネットワークNを介して、他のコンピュータと通信を行う。通信部43による通信は、ケーブルを介した有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
推定誤差DB41bには、各観測局2に対応付けて、各観測局コンピュータ5から受信した、テスト時間内の各算出タイミング、SIPの情報、及び推定誤差が記憶される。制御部40は、各観測局コンピュータ5から各情報を受信する都度、観測局2に対応付けて推定誤差DB41bに記憶させる。

【0059】
中央コンピュータ4の制御部40は異常検知プログラム41aを実行することにより、実施形態1のコンピュータ1の制御部10が実現する機能のうちの相関値算出部10e、相対値算出部10f、異常判定部10g、通報部10hの各機能を実現する。実施形態2の相関値算出部10eは、各観測局2から受信して推定誤差DB41bに記憶された推定誤差に基づいて、テスト時間内の各算出タイミングについて、各観測局2(中央観測局)における相関値を算出する。実施形態2の相対値算出部10f、異常判定部10g、通報部10hは、実施形態1と同様の処理を行う。

【0060】
観測局コンピュータ5及び中央コンピュータ4は、上述した各部のほかに、キーボード、マウス等を含む操作部、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示部を備えていてもよい。

【0061】
次に、実施形態2の異常検知システムにおいて観測局コンピュータ5及び中央コンピュータ4が行う処理について説明する。図11は、観測局コンピュータ5及び中央コンピュータ4が行う処理の手順を示すフローチャートである。図11では、左側に観測局コンピュータ5が行う処理を、右側に中央コンピュータ4が行う処理をそれぞれ示す。各観測局コンピュータ5の観測データDB51bには、各観測局コンピュータ5が設置されている観測局2が衛星3から受信した信号(電波)に関する観測データが記憶されているものとする。

【0062】
観測局コンピュータ5の制御部50は、図9に示すように実施形態1のコンピュータ1が行うステップS1~S4の処理と同様の処理を行う(S21~S24)。なお、観測局コンピュータ5は、観測データDB51bに記憶してある観測データに基づいて、自身の観測局コンピュータ5が設置されている観測局2と衛星3との間における電離圏(SIP)の各値(TEC値、近似式、推定TEC値、推定誤差)を算出する。
制御部50は、ステップS24で算出した推定誤差を、通信部53から中央コンピュータ4へ送信する(S25)。

【0063】
中央コンピュータ4の制御部40は、各観測局コンピュータ5から受信した推定誤差を、観測局2毎に推定誤差DB41bに記憶する(S26)。
そして、中央コンピュータ4の制御部40は、図9に示すように実施形態1のコンピュータ1が行うステップS5~S10の処理と同様の処理を行う(S27~S32)。

【0064】
上述したように、実施形態1のコンピュータ1が行っていた処理を、観測局コンピュータ5及び中央コンピュータ4に分散させた場合であっても、実施形態1と同様の効果が得られる。よって、実施形態2においても、電離圏におけるTEC値の変化を精度よく検知でき、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知できる。
また、実施形態2では、各観測局2で実行可能な処理を観測局コンピュータ5が行うことにより、中央コンピュータ4における処理負担が軽減できる。

【0065】
(実施形態3)
上述した実施形態1における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態3の異常検知装置は、実施形態1のコンピュータ1によって実現できる。よって、実施形態3のコンピュータ1の構成についての説明を省略する。
図12は、実施形態3のコンピュータ1の制御部10によって実現される機能を示すブロック図である。実施形態3のコンピュータ1においても、制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって、TEC値算出部10a、TEC値推定部10b、推定誤差算出部10d、相関値算出部10e、相対値算出部10f、異常判定部10g、通報部10hの各機能を実現する。これらの各部は実施形態1と同様の処理を行う。

【0066】
実施形態3のコンピュータ1では、制御部10は更に、独立成分分析部10iの機能を実現する。独立成分分析部10iは、観測データDB11bに記憶してある観測データに対して、衛星3から送信された信号の成分と、通信経路において信号に加わったノイズの成分とに分離する分離処理を行う。よって、実施形態3のTEC値算出部10aは、独立成分分析部10iによって処理された観測データに基づいてTEC値の算出を行う。
このように、TEC値の算出に用いる観測データに独立成分分析を行うことにより、観測局2が受信した信号からノイズ成分を除去することができ、より精度のよい観測データを得ることができる。よって、このような観測データを用いることにより、電離圏のTEC値の変化を精度よく検知できる。

【0067】
実施形態3の構成は、実施形態2にも適用可能である。即ち、実施形態2において、観測局コンピュータ5が、観測データDB51bに記憶してある観測データに対して、独立成分分析部10iによる処理を行った後に、TEC値算出部10aによるTEC値の算出処理を行う構成とすることができる。この場合にも、ノイズが除去された精度の高い観測データを得ることができるので、電離圏のTEC値の変化を精度よく検知できる。
このような構成とした場合でも、上述の実施形態1,2と同様の動作を実現できるので、同様の効果が得られる。

【0068】
(実施形態4)
上述した実施形態3における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態4の異常検知装置は、実施形態3のコンピュータ1によって実現でき、制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって、図12に示す各機能を実現する。よって、実施形態4のコンピュータ1の構成及び各機能が行う処理についての説明を省略する。実施形態4のコンピュータ1では、相関値算出部10eが、実施形態3とは若干異なる処理を行う。相関値算出部10eは、複数の観測局2のそれぞれを中央観測局とし、中央観測局及びその周辺観測局のそれぞれについて推定誤差算出部10dが算出した推定誤差の相関値を算出する。ここで、上述した実施形態3の相関値算出部10eは、中央観測局の近傍の第1所定数(例えば30個)の観測局2を周辺観測局としている。具体的には、中央観測局との位置が近い順に第1所定数の観測局2が周辺観測局に選択されていた。これに対して、実施形態4の相関値算出部10eは、中央観測局と所定の位置関係にある第1所定数(例えば3個又は4個)の観測局2を周辺観測局とする。具体的には、中央観測局から所定距離を隔てた第1所定数の観測局2が周辺観測局に選択される。

【0069】
次に、実施形態4のコンピュータ1が行う処理について説明する。図13は、実施形態4のコンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートであり、図14A乃至図14Cは、実施形態4のコンピュータ1が行う処理を説明するための模式図である。なお、図13は図9中のステップS1の処理の前にステップS41の処理を追加し、ステップS4,S5の処理の間にステップS42の処理を追加したものであり、図13では図9中のステップS6~S10の図示を省略する。

【0070】
実施形態4のコンピュータ1では、制御部10(独立成分分析部10i)は、観測データDB11bに記憶してある観測局2毎の観測データに対して独立成分分析を行う(S41)。これにより、制御部10は、観測データを、衛星3から送信された信号の成分と、通信経路において信号に加わったノイズの成分とに分離し、衛星3から送信された信号の成分を抽出し、ノイズ成分が除去された観測データを生成する。ノイズ成分が除去された観測データは、一旦記憶部11に記憶されてもよい。制御部10は、独立成分分析が行われてノイズ成分が除去された観測データに基づいて、図9中のステップS1~S4の処理を行う。

【0071】
次に制御部10は、観測局2のそれぞれを中央観測局とした場合の各中央観測局に対する周辺観測局を特定する(S42)。例えば、制御部10は、図14Aに示すように、中央観測局2aから一定距離(例えば50km又は80km)離れた観測局2を3つ選択し、周辺観測局2bとする。このとき、3つの周辺観測局2bが略正三角形の頂点に位置する場所にある観測局2を選択することが好ましい。また、制御部10は、図14Bに示すように、中央観測局2aから一定距離(例えば50km又は80km)離れた観測局2を4つ選択し、周辺観測局2bとしてもよい。このとき、4つの周辺観測局2bが略正方形の頂点に位置する場所にある観測局2を選択することが好ましい。また、制御部10は、図14Cに示すように、中央観測局2aを中心とした線分上に一定間隔(例えば50km又は80km)で配置された複数の観測局2を周辺観測局2bとしてもよい。図14Cでは、4つの観測局2を周辺観測局2bとした場合の例を示すが、4つに限らず5つ以上であってもよい。なお、図14Cでは、中央観測局2a及び4つの周辺観測局2bが線分上に配置されている状態を示すが、所定幅を有する線分上に一定間隔で配置された観測局2を周辺観測局2bに選べばよい。中央観測局2aに対する周辺観測局2bの位置及び数(第1所定数)は、図14A~図14Cに示した例に限らず、それぞれの中央観測局2aと所定の位置関係にある観測局2を周辺観測局2bとすることができる。

【0072】
なお、中央観測局2aから一定距離離れた観測局2を周辺観測局2bとする場合、周辺観測局2bの数は3つ又は4つに限らないが、均一の数であることが望ましい。また、中央観測局2aから例えば50km又は80km(一定距離)離れた観測局2を周辺観測局2bとすることができるが、これらの距離に限らない。例えば各観測局2におけるTEC値が所定値以上異なる値となる観測局2を中央観測局2a及び周辺観測局2bとしてもよい。具体的には、例えば、中央観測局2aの近傍の観測局2のうちで、それぞれの観測局2におけるTEC値が、中央観測局2aにおけるTEC値と所定値以上異なる観測局2を所定数(第1所定数)選択し、選択した観測局2を周辺観測局2bとしてもよい。また、各観測局2で受信した信号が異なる信号(類似していない信号)である観測局2を中央観測局2a及び周辺観測局2bとしてもよい。具体的には、例えば、中央観測局2aの近傍の観測局2のうちで、それぞれの観測局2が受信した信号と、中央観測局2aが受信した信号との類似度を算出し、類似度が所定値未満である信号を受信した観測局2を所定数(第1所定数)選択し、選択した観測局2を周辺観測局2bとしてもよい。なお、信号の類似度は、例えば中央観測局2a及びそれぞれの観測局2が受信した信号の位相(観測データ)に基づく単位ベクトルの内積によって算出することができ、内積が所定値未満である場合に、信号が類似していない(異なる)と判断してもよい。

【0073】
そして制御部10(相関値算出部10e)は、中央観測局についてステップS4で算出した推定誤差と、ステップS42で特定した周辺観測局についてステップS4で算出した推定誤差と、上述の式1とに基づいて、それぞれの中央観測局における相関値を算出する(S5)。その後、制御部10は、ステップS6以降の処理を行う。なお、それぞれの観測局2を中央観測局とした場合の周辺観測局は、予め決定されて、例えば記憶部11に記憶されていてもよい。この場合、制御部10は、図13中のステップS42の処理を行わず、各中央観測局と、各中央観測局に対して予め決定されている周辺観測局とにおける推定誤差の相関値を算出すればよい。

【0074】
実施形態4においても、実施形態1~3と同様の効果が得られる。即ち、実施形態4においても、電離圏におけるTEC値の変化を精度よく検知でき、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知できる。
また実施形態4では、TEC値の算出に用いる観測データに独立成分分析を行うことにより、観測局2が受信した信号からノイズ成分を除去して、より精度のよい観測データを得ることができる。このような観測データを用いることにより、各観測局2について算出した推定誤差の相関値を算出する際に、中央観測局に対する周辺観測局の数(第1所定数)を少なくできる。即ち、中央観測局における推定誤差と、少ない数(例えば3つ又は4つ)の周辺観測局における推定誤差との相関値を用いて、TEC値の異常変化を検知できる。従って、観測局2の設置箇所が少なく、観測局2間の間隔が広い地域であっても、TEC値の異常変化を精度よく検知できるので、異常検知装置の利用可能範囲が広がる。

【0075】
(実施形態5)
上述した実施形態4における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態5の異常検知装置は、実施形態4のコンピュータ1によって実現できる。よって、実施形態4のコンピュータ1の構成についての説明を省略する。図15は、実施形態5のコンピュータ1の制御部10によって実現される機能を示すブロック図である。実施形態5のコンピュータ1の制御部10が異常検知プログラム11aを実行した場合、実施形態4と同様の機能を実現する。よって、各機能が行う処理についての説明を省略する。なお、実施形態5では、独立成分分析部10iは、推定誤差算出部10dが算出した推定誤差に対して独立成分分析を行う。

【0076】
次に、実施形態5のコンピュータ1が行う処理について説明する。図16は、実施形態5のコンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、図16は図9中のステップS4,S5の処理の間に、ステップS71,S72の処理を追加したものであり、図16では図9中のステップS6~S10の図示を省略する。

【0077】
実施形態5のコンピュータ1の制御部10は、図9中のステップS1~S4の処理を行う。そして制御部10(独立成分分析部10i)は、観測局2(SIP)毎に算出された推定誤差(複数局)に対して独立成分分析を行う(S71)。なお、制御部10は、複数の観測局2の推定誤差(複数局データ)を受けて独立成分分析を行う。これにより、制御部10は、観測局2毎に算出された推定誤差を、衛星3から送信された信号に基づく成分と、衛星3からの通信経路において加わったノイズに基づく成分とに分離する。よって、衛星3から送信された信号に基づく成分が抽出され、ノイズに基づく成分が除去された推定誤差が生成される。次に制御部10は、観測局2のそれぞれを中央観測局とした場合の各中央観測局に対する周辺観測局を特定する(S72)。ここでは、制御部10は、図13中のステップS42と同様の処理を行う。

【0078】
そして制御部10(相関値算出部10e)は、中央観測局についてステップS71で独立成分分析を行った推定誤差と、ステップS72で特定した周辺観測局についてステップS71で独立成分分析を行った推定誤差と、上述の式1とに基づいて、それぞれの中央観測局における相関値を算出する(S5)。その後、制御部10は、ステップS6以降の処理を行う。

【0079】
実施形態5においても、実施形態1~4と同様の効果が得られる。即ち、実施形態5においても、電離圏におけるTEC値の変化を精度よく検知でき、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知できる。また実施形態5では、各観測局2におけるTEC値に基づいて算出した推定誤差に独立成分分析を行うことにより、ノイズ成分を除去した推定誤差を得ることができる。このような推定誤差を用いることにより、推定誤差の相関値を算出する際に、中央観測局に対する周辺観測局の数(第1所定数)を少なくできる。即ち、中央観測局における推定誤差と、少ない数(例えば3つ又は4つ)の周辺観測局における推定誤差との相関値を用いて、TEC値の異常変化を検知できる。従って、観測局2の設置箇所が少なく、観測局2間の間隔が広い地域であっても、TEC値の異常変化を精度よく検知できるので、異常検知装置の利用可能範囲が広がる。

【0080】
(実施形態6)
上述した実施形態1における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態6の異常検知装置は、実施形態1のコンピュータ1によって実現できる。上述した実施形態1では、各SIPでのTEC値が異常変化しているか否かの判定に、各SIP(観測局2)において算出した相対値η(t)を用いた。実施形態6では、相関値算出部10eが算出した各SIPにおける相関値を用いて、各SIPでのTEC値が異常変化しているか否かを判定する。実施形態6のコンピュータ1は、制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって、図3に示す各機能のうち、相対値算出部10f以外の各機能を実現する。よって、実施形態6のコンピュータ1の構成及び各機能が行う処理についての説明を省略する。

【0081】
実施形態6のコンピュータ1では、異常判定部10gが、実施形態1とは若干異なる処理を行う。実施形態6の異常判定部10gは、時刻Tについて相関値算出部10eが算出した全ての観測局2(中央観測局)における相関値に基づいて処理を行う。異常判定部(判定部)10gは、相関値算出部10eが算出した各観測局2(各SIP)の相関値がそれぞれ所定閾値(例えば3.5σ)以上であるか否かを判定する。そして、異常判定部10gは、相関値が所定閾値以上である場合、この観測局2(SIP)におけるTEC値が異常変化していると判定する。

【0082】
次に、実施形態6のコンピュータ1が行う処理について説明する。図17は、実施形態6のコンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、図17は図9に示す処理からステップS6,S7の処理を削除したものである。
実施形態6のコンピュータ1において、制御部10は、図9中のステップS1~S5と同様の処理を行う。そして制御部10(異常判定部10g)は、各算出タイミングに対して算出された各観測局2(各中央観測局)における相関値がそれぞれ所定閾値以上であるか否かに基づいて、各中央観測局(各SIP)におけるTEC値が異常変化しているか否かを判定する(S8)。観測局2における相関値が所定閾値以上である場合、制御部10は、この観測局2に対応するSIPにおけるTEC値が異常変化していることを確定する。

【0083】
そして制御部10は、ステップS9以降の処理を行う。具体的には、制御部10は、各観測局2に対応するSIPにおけるTEC値が異常変化していることが確定されたか否かを判断する(S9)。そして、いずれかの観測局2について異常変化していることが確定された場合(S9:YES)、制御部10は、異常発生が確定された観測局2(SIP)に関する情報を通報する(S10)。

【0084】
実施形態6においても、観測局2が衛星3から受信した信号(直接波)を観測データとして用いるので、電離圏におけるTEC値の変化を精度よく検知でき、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化を精度よく検知できる。また実施形態6においても、実施形態1で述べた各構成の変更が可能である。実施形態6の構成は、実施形態2~5にも適用可能である。即ち、実施形態2~5のコンピュータ1(異常検知装置)を、相関値算出部10eが算出した各SIPにおける相関値を用いて、各SIPでのTEC値が異常変化しているか否かを判定する構成としてもよい。このような構成とした場合であっても同様の効果が得られる。

【0085】
(実施形態7)
上述した実施形態1における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態7の異常検知装置は、実施形態1のコンピュータ1によって実現でき、制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって、図3に示す各機能を実現する。よって、実施形態7のコンピュータ1の構成及び各機能が行う処理についての説明を省略する。実施形態7のコンピュータ1では、異常判定部10gが、実施形態1とは若干異なる処理を行う。実施形態7の異常判定部10gは、相対値算出部10fが時刻Tについて全ての観測局2(全てのSIP)における相対値を算出した場合、算出された各観測局2(各SIP)の相対値がそれぞれ所定閾値(例えば3.5)以上であるか否かを判定する。そして、異常判定部10gは、相対値が所定閾値以上である観測局2(SIP)を、SIPにおけるTEC値が異常変化している可能性がある観測局2(異常観測局2)として抽出する。ここまでの処理は実施形態1と同じである。

【0086】
図18は、異常判定部10gによる判定結果を示す模式図である。図18に示す地図には、観測局2が異常観測局2として抽出されたSIPに黒三角のマークが付与され、観測局2が異常観測局2として抽出されなかったSIPに白丸のマークが付与されている。電離圏のTEC値は、大地震の発生に伴って異常変化するだけでなく、宇宙天気、日や季節の自然変化に伴って異常変化することが知られている。また、地震発生以外の要因で生じる電離圏(TEC値)の異常は、図18に示すように、観測可能な観測局2のうちの一定の割合以上の観測局2で検知されることが知られている。

【0087】
よって、実施形態7の異常判定部10gは、異常観測局2として抽出した観測局2(SIP)の割合を算出し、算出した割合が一定の割合未満(例えば30%未満)であるか否かに応じて、検知したTEC値の異常が大地震の発生に伴う異常であるか否かを判定する。具体的には、異常判定部10gは、算出した割合が一定の割合未満である場合、検知したTEC値の異常が大地震の発生に伴う異常であると判定し、算出した割合が一定の割合以上である場合、検知したTEC値の異常が大地震の発生に伴う異常でないと判定する。また、異常観測局2の割合として、例えば、異常判定部10gは、日本列島に設置された観測局2の総数に対して、異常観測局2として抽出した観測局2の割合を算出する。また、異常判定部10gは、関東地方、近畿地方等の地方毎に、各地方に設置された観測局2の数に対する異常観測局2の割合を算出してもよいし、予め区分された領域毎に異常観測局2の割合を算出してもよい。

【0088】
異常判定部10gが異常観測局2の割合が一定の割合以上であると判断した場合、即ち、検知したTEC値の異常は大地震の発生に伴う異常ではない場合、通報部10hは通報を行わない。一方、異常判定部10gが異常観測局2の割合が一定の割合未満であると判断した場合、即ち、検知したTEC値の異常は大地震の発生に伴う異常である場合、異常判定部10gは、実施形態1と同様の処理を行う。具体的には、異常判定部10gは、異常観測局2として抽出された観測局2について、近傍の第2所定数(例えば4個)の観測局2も異常観測局2として抽出されたか否かを判断する。そして、近傍の複数の観測局2も異常観測局2として抽出されていた場合、異常判定部10gは、この観測局2(SIP)におけるTEC値は大地震の発生に伴って異常変化していると確定する。この場合、通報部10hは通報を行う。

【0089】
次に、実施形態7のコンピュータ1が行う処理について説明する。図19は、実施形態7のコンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、図19は図9中のステップS8,S9の処理の間にステップS51,S52の処理を追加したものであり、図19では図9中のステップS1~S7の図示を省略する。
実施形態7のコンピュータ1において、制御部10は、図9中のステップS1~S8と同様の処理を行う。そして制御部10(異常判定部10g)は、相対値が所定閾値以上であり、TEC値が異常変化していると判定された観測局2(異常観測局2)の割合を算出し(S51)、算出した割合が一定の割合未満であるか否かを判断する(S52)。算出した割合が一定の割合未満であると判断した場合(S52:YES)、制御部10は、検知したTEC値の異常は大地震の発生に伴う異常であるとして、ステップS9以降の処理を行う。算出した割合が一定の割合以上であると判断した場合(S52:NO)、制御部10は、検知したTEC値の異常は大地震の発生に伴う異常ではないとして、処理を終了する。

【0090】
実施形態7では、TEC値が異常変化している可能性があると判定されたSIP(異常観測局2)の割合が一定の割合以上(例えば30%以上)であった場合に、検知されたTEC値の異常は、大地震の発生に伴う異常ではないとして通報処理を行わない。よって、一定の割合以上の観測局2で同時にTEC値の異常が検知された場合に、大地震の発生に伴う異常ではないと確定することにより、地震発生以外の要因で生じるTEC値の異常を通報対象の異常から排除できる。これにより、大地震の発生に伴うTEC値の異常変化のみを精度よく検知でき、通報することができる。

【0091】
実施形態7の構成は、実施形態2~6にも適用可能であり、実施形態2~6に適用した場合であっても同様の効果が得られる。なお、実施形態6に適用した場合、異常判定部10gは、相関値算出部10eが時刻Tについて算出した各観測局2(各SIP)の相関値がそれぞれ所定閾値(例えば3.5σ)以上であるか否かを判定する。そして、異常判定部10gは、相関値が所定閾値以上である観測局2(SIP)を、SIPにおけるTEC値が異常変化している可能性がある観測局2(異常観測局2)として抽出する。そして、異常判定部10gは、抽出した異常観測局2(SIP)の割合を算出し、算出した割合が一定の割合以上(例えば30%以上)であった場合、検知したTEC値の異常は大地震の発生に伴う異常ではないと判定する。異常判定部10gが、検知したTEC値の異常は地震発生に伴う異常ではないと判定した場合、通報部10hによる通報は行われない。一方、異常観測局2(SIP)の割合が一定の割合未満であった場合、異常判定部10gは、検知したTEC値の異常は地震発生に伴う異常であると判定する。

【0092】
(実施形態8)
上述した実施形態1における異常検知装置の変形例について説明する。実施形態8の異常検知装置は、実施形態1のコンピュータ1によって実現でき、制御部10が異常検知プログラム11aを実行することによって、図3に示す各機能を実現する。よって、実施形態8のコンピュータ1の構成及び各機能が行う処理についての説明を省略する。実施形態8のコンピュータ1は、異常判定部10gにおいて各観測局2が異常観測局2であるか否かを判定する際の判定基準(所定閾値)を最適化できるように構成されている。具体的には、異常判定部10gが、相対値算出部10fが算出した各観測局2(各SIP)の相対値に基づいて、各SIPにおけるTEC値が異常変化しているか否か(異常観測局2であるか否か)を判定するための閾値が最適化される。

【0093】
図20は、参考データDBの構成例を示す模式図である。参考データDBには複数の参考データが蓄積されている。図20に示す参考データは、各観測局2が異常観測局2であるか否かを判定する際に用いた判定基準(閾値)と、この判定基準を用いてTEC値の異常変化が検知されたか否かを示す情報(異常検知の有無)と、実際に地震が発生したか否かを示す情報(地震発生の有無)とを含む。参考データに含まれる判定基準及び異常検知の有無の情報は、過去の観測データに基づいて、異なる閾値を用いてTEC値が異常変化しているか否かを判定することにより生成される。また、参考データに含まれる地震発生の有無は、コンピュータ1のユーザ(例えば地震の観測者)によって入力される。なお、参考データに、TEC値の分布、TEC値に基づいて算出された各観測局2の相対値の分布等を含めてもよい。

【0094】
コンピュータ1は、参考データDBに蓄積された参考データを用いることにより、相対値算出部10fが算出した各観測局2(各SIP)の相対値に基づいて、各観測局2が異常観測局2であるか否かを異常判定部10gが判定する際の最適な閾値(判定基準)を特定する。そして、コンピュータ1は、特定した最適な閾値を次回からの処理に用いる。このように判定基準を最適化することにより、地震の発生に伴うTEC値の異常変化をより精度よく検知できる。また、検知対象の場所に応じて最適な閾値を設定できるので、各場所の自然環境等も考慮した判定基準の設定が可能となる。

【0095】
実施形態8の構成は、実施形態2~7にも適用可能であり、実施形態2~7に適用した場合であっても同様の効果が得られる。なお、実施形態6に適用した場合、コンピュータ1は、異常判定部10gが、相関値算出部10eが算出した各観測局2(各SIP)の相関値に基づいて、各SIPにおけるTEC値が異常変化しているか否か(異常観測局2であるか否か)を判定するための閾値を最適化できる。

【0096】
上述した実施形態1~8における異常検知装置の更なる変形例について説明する。実施形態1~8の異常検知装置は、例えば地表における地磁気を観測する地磁気観測装置(図示せず)と組み合わせて用いることができる。地磁気観測装置は、例えば地磁気センサを有し、地磁気センサによって地表における地磁気を検知し、検知した地磁気の状態が正常であるか異常が発生しているか等を観測する。例えば、地磁気観測装置は、所定時間間隔で地表の地磁気を検知し、検知した地磁気の値と直近の検知値との差異が所定値以上となった場合、又は、検知した地磁気の経時的変化に異常が生じた場合、地表の地磁気に異常が発生していると判断する。そして、地磁気観測装置は、地磁気に異常が発生していると判断した場合、実施形態1~8の異常検知装置(コンピュータ1)に通知する。コンピュータ1は、地磁気観測装置から地磁気の異常を通知された場合に、上述した実施形態1~8の処理を行う。

【0097】
図21は、コンピュータ1が行う処理の手順を示すフローチャートである。なお、図21は図9中のステップS1の処理の前にステップS61の処理を追加したものであり、図21では図9中のステップS2~S10の図示を省略する。コンピュータ1の制御部10は、例えば地磁気観測装置からの通知に基づいて、地磁気観測装置によって地表における地磁気の異常が検知されたか否かを判断する(S61)。地表での地磁気の異常が検知されていないと判断した場合(S61:NO)、制御部10は待機する。地磁気の異常が検知されたと判断した場合(S61:YES)、制御部10は、図9中のステップS1以降の処理を行う。即ち、制御部10は、観測データに基づいてTEC値が異常変化しているか否かの検知処理を行う。

【0098】
例えば大地震が発生する数週間前から地表における地磁気等に異常が発生することが知られている。よって、地表における地磁気に異常が発生していることを検知した場合に、衛星3から受信した観測データに基づいてTEC値が異常変化しているか否かの検知処理を行ってもよい。この場合、地震発生に伴うTEC値の異常変化を効率良く検知できる。また、地表における地磁気の代わりに、電離圏による反射波を用いて、地表に異常が発生しているか等を判断してもよい。例えば、地上の送信アンテナからVLF(Very Low Frequency)等の長波の電波を発信し、この電波を電離圏で反射された後に地上の受信アンテナで受信する。このように受信した反射波において、例えば受信した反射波の強度又は周波数等に変化が生じた場合に、地表に何らかの異常が発生していると判断できる。

【0099】
上述した実施形態1~8において、観測データは、地上に設置された観測局2が衛星3から受信した信号(電波)に関するデータのほかに、自動車、電車、船舶等の移動体に搭載された受信機が衛星3から受信した信号(電波)に関するデータであってもよい。例えば移動体に、観測局2と同様に、宇宙空間に配置された衛星3から送信された異なる周波数の信号(例えば1.5GHz及び1.2GHzの周波数の信号)を受信できる受信機を搭載する。そして各受信機が、2つの信号を受信した各時点での位相を観測データとして用いることができる。なお、各受信機は、観測データを取得した際に、この時点での現在位置を示す情報(観測位置に係る情報)を取得しておき、観測データに対応付けて記憶する。これにより、観測データを取得した場所(観測位置)を把握でき、複数の観測位置のそれぞれに係る情報と、それぞれの観測位置で受信した衛星からの信号に係る情報とを対応付けて記憶できる。このような観測データを用いた場合であっても、それぞれの観測位置と衛星との間における大気中のTEC値を算出でき、TEC値の異常変化を検知できる。このような構成とした場合、観測局2の設置箇所が少ない地域であっても、移動体に搭載された受信機が受信した観測データを用いてTEC値の異常変化を検知できるので、異常検知装置の利用可能範囲が広がる。また、船舶に搭載した受信機が受信した観測データを用いることにより、海上でも地上と同様に、TEC値の異常変化の検知処理が可能となる。なお、このような観測データを用いる場合、所定範囲内(例えば直径が数kmの円形領域内)の観測位置で取得した観測データを、同一の観測位置で取得した観測データとして扱ってもよい。例えば、各受信機が連続して観測データを取得しており、観測データと共に取得した観測位置が直近(直前)の観測位置から所定距離(例えば数km)以上離れていない場合は、直近の観測位置を今回の観測位置としてもよい。

【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 コンピュータ
2 観測局
3 衛星
10 制御部
11 記憶部
10a TEC値算出部
10b TEC値推定部
10d 推定誤差算出部
10e 相関値算出部
10f 相対値算出部
10g 異常判定部
10h 通報部
10i 独立成分分析部
11a 異常検知プログラム
11b 観測データDB
100 通信装置
104 通信部
105 通知部

Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4A】
3
(In Japanese)【図4B】
4
(In Japanese)【図5】
5
(In Japanese)【図6】
6
(In Japanese)【図7A】
7
(In Japanese)【図7B】
8
(In Japanese)【図8】
9
(In Japanese)【図9】
10
(In Japanese)【図10】
11
(In Japanese)【図11】
12
(In Japanese)【図12】
13
(In Japanese)【図13】
14
(In Japanese)【図14A】
15
(In Japanese)【図14B】
16
(In Japanese)【図14C】
17
(In Japanese)【図15】
18
(In Japanese)【図16】
19
(In Japanese)【図17】
20
(In Japanese)【図18】
21
(In Japanese)【図19】
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(In Japanese)【図20】
23
(In Japanese)【図21】
24