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明細書 :免疫賦活因子産生促進用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年5月30日(2019.5.30)
発明の名称または考案の名称 免疫賦活因子産生促進用組成物
国際特許分類 A61K  31/713       (2006.01)
A61K   9/48        (2006.01)
A61K   9/20        (2006.01)
A61K   9/14        (2006.01)
A61K   9/08        (2006.01)
A61K   9/10        (2006.01)
A61K  36/48        (2006.01)
A61K  36/81        (2006.01)
A61K  36/899       (2006.01)
A61K  35/76        (2015.01)
A61P  31/12        (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61K  39/39        (2006.01)
A61P  31/16        (2006.01)
A23L  33/13        (2016.01)
FI A61K 31/713
A61K 9/48
A61K 9/20
A61K 9/14
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 36/48
A61K 36/81
A61K 36/899
A61K 35/76
A61P 31/12
A61P 31/14
A61P 35/00
A61P 37/04
A61K 39/39
A61P 31/16
A23L 33/13
国際予備審査の請求
全頁数 24
出願番号 特願2018-531876 (P2018-531876)
国際出願番号 PCT/JP2017/027638
国際公開番号 WO2018/025793
国際出願日 平成29年7月31日(2017.7.31)
国際公開日 平成30年2月8日(2018.2.8)
優先権出願番号 2016151836
2017021008
優先日 平成28年8月2日(2016.8.2)
平成29年2月8日(2017.2.8)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】藤田 尚志
【氏名】加藤 博己
【氏名】中崎 鉄也
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B018
4C076
4C085
4C086
4C087
4C088
Fターム 4B018MD18
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要約 本発明によれば、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを含有する、免疫賦活因子産生促進用組成物により、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等の多様な疾患を予防及び改善することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを含有する、免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項2】
前記植物がトウガラシ属植物、イネ属植物、又はソラマメ属植物である、請求項1に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項3】
前記ゲノム二本鎖RNAの長さが8~20 kbpである、請求項1又は2に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項4】
前記ゲノム二本鎖RNAが直鎖状である、請求項1~3のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項5】
医薬組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項6】
経鼻製剤形態である、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項7】
経口製剤形態である、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項8】
食品組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項9】
免疫賦活用組成物として用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項10】
抗ウイルス用組成物として用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項11】
前記ウイルスがRNAウイルスである、請求項10に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項12】
アジュバントとして用いられる、請求項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
【請求項13】
がんの予防又は改善用組成物として用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活因子産生促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性疾患全般に対して有効な治療法は確立されておらず、通常、それぞれのウイルス性疾患に応じた治療法が採られている。例えば、C型肝炎等に対してはインターフェロン療法が、インフルエンザ等の特定のウイルス性疾患に対しては抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ等)の投与が行われている。ただ、副作用のリスク、コスト等の観点から、インターフェロン療法を予防目的で継続的に利用することは困難である。また、現状の抗ウイルス薬は合成低分子化合物を有効成分とするものであり、コスト等の観点から、やはり予防目的で継続的に利用することは困難である。
【0003】
がんに対しては、DNA合成等に作用してがん細胞の増殖を抑制することを目的とする抗がん剤療法、免疫を活性化してがん細胞の増殖を抑制することを目的とするインターフェロン療法等の薬物療法が行われている。ただ、副作用のリスクやコスト等の観点から、インターフェロン療法を予防目的で継続的に利用することは困難である。また、現状の抗がん剤は、通常は合成低分子化合物、抗体等を有効成分とするものであり、コスト等の観点から、やはり予防目的で継続的に利用することは困難である。
【0004】
多発性硬化症についても、ウイルス性疾患、がん等と同様に、低分子化合物、インターフェロン等による治療が行われているが、副作用のリスク、コスト等の観点から、予防目的で継続的に利用することは困難である。
【0005】
このように、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等に対しての様々な疾患に対して広範囲に適用可能であり、さらにこれらの疾患の予防にも利用可能(すなわち副作用のリスクが少なく、低コスト)な治療法は知られていない。
【0006】
一方、エンドルナウイルスは、植物、特にピーマン、イネ等の日常的に摂取している食用植物に存在していることが報告されている(非特許文献1、非特許文献2等)。ある種のRNAウイルスは、MDA5、RIG-I等を介するシグナル伝達経路を通じてインターフェロン産生を誘導し、その結果、生体内の免疫賦活化を起こすといわれている。しかし、エンドルナウイルスとウイルス性疾患との関連については知られていない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Journal of General Virology (2011), 92, 2664-2673.
【非特許文献2】Journal of General Virology (2011), 92, 2674-2678.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等の種々の疾患に対する予防及び改善法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAがインターフェロン等の免疫賦活因子の産生促進作用を有することを見出した。さらに、該二本鎖RNAにより、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等の幅広い疾患の予防及び改善が可能であることをも見出した。本発明者らはこのような知見に基づき、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する:
項1. 植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを含有する、免疫賦活因子産生促進用組成物.
項2. 前記植物がトウガラシ属植物、イネ属植物、又はソラマメ属植物である、項1に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項3. 前記ゲノム二本鎖RNAの長さが8~20 kbpである、項1又は2に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項4. 前記ゲノム二本鎖RNAが直鎖状である、項1~3のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項5. 医薬組成物である、項1~4のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項6. 経鼻製剤形態である、項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項7. 経口製剤形態である、項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項8. 食品組成物である、項1~4のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項9. 免疫賦活用組成物として用いられる、項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項10. 抗ウイルス用組成物として用いられる、項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項11. 前記ウイルスがRNAウイルスである、項10に記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項12. アジュバントとして用いられる、項1~5のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
項13. がんの予防又は改善用組成物として用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の免疫賦活因子産生促進用組成物.
【0011】
また、本発明は、下記の態様も包含する:
項14. 植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを動物又はヒトに適用することを含む、免疫賦活因子産生促進方法.
項15. 免疫賦活因子産生促進のための、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA.
項16. 免疫賦活因子産生促進用組成物の製造のための、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAの使用.
項17. 免疫賦活因子産生促進のための、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAの使用.
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを用いることより、インターフェロン等の免疫賦活因子の産生を促進させ、これにより体内の免疫を賦活することができる。よって、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、免疫賦活因子産生促進作用、免疫賦活作用に基づく種々の用途(例えば、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等の予防及び改善、アジュバント等)に利用することができる。また、抗ウイルス用に用いる場合は、幅広い種類のウイルスに対して適用することも可能である。
【0013】
さらに、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、植物(特に食用植物)に含まれている成分であるので、その安全性は高いと考えられる。また、本発明によれば、植物から効率的に該二本鎖RNAを精製することも可能である。したがって、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、より安全且つより低コストで利用することが可能であり、ウイルス性疾患、がん、多発性硬化症等等の疾患の予防目的で継続的に利用することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例2のin vitro免疫賦活因子産生試験1の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。
【図2】実施例3のin vivo免疫賦活因子産生試験1の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。
【図3】実施例4のin vivo免疫賦活因子産生試験2の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。「京鈴RNA」は実施例1で得られたtotal RNAを示す。
【図4】実施例5のウイルス感染試験1の結果を示す。左側の図の縦軸は生存率を示し、右側の図の縦軸は体重を示す。横軸は、感染後の経過日数を示す。「Green pepper」は実施例1で得られたtotal RNAを投与した場合を示す。
【図5】実施例6のウイルス感染試験2の結果を示す。左側の図の縦軸は生存率を示し、右側の図の縦軸は体重を示す。横軸は、感染後の経過日数を示す。「Green pepper」は実施例1で得られたtotal RNAを投与した場合を示す。
【図6】実施例7のウイルス感染試験3の結果を示す。縦軸は生存率を示す。横軸は、感染後の経過日数を示す。「京鈴RNA」は実施例1で得られたtotal RNAを示す。
【図7】実施例10のin vitro免疫賦活因子産生試験2の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。「dsRNA」は実施例8で得られたtotal RNAを示す。
【図8】実施例11のin vivo免疫賦活因子産生試験3の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。横軸は投与後の経過時間を示す。
【図9】実施例12のウイルス感染試験4の結果を示す。縦軸は生存率を示し、横軸は、感染後の経過日数を示す。「dsRNA treated」は実施例8のRNAを投与した場合を示し、「PR/8 control」は実施例8のRNAに代えて水を投与した場合を示す。
【図10】実施例13のウイルス感染試験5の結果を示す。上側の図の縦軸は体重を示し、下側の図の縦軸は生存率を示す。横軸は、感染後の経過日数を示す。「GP」及び「Green pepper」は実施例1で得られたtotal RNAを投与した場合を示す。
【図11】実施例14のin vivo免疫賦活因子産生試験4の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。各グラフ中、左側のカラムは野生型マウスの結果を示し、右側のカラムはMAD5及びTRIFのダブルノックアウトマウスの結果を示す。
【図12】実施例15の毒性試験の結果を示す。縦軸は体重を示し、横軸は初回投与からの経過日数を示す。
【図13】実施例16のがん治療/予防効果の評価試験の結果を示す。縦軸は、腫瘍の大きさを示し、横軸は、メラノーマ細胞の皮下注射からの経過日数を示す。「dsRNA (-)」は比較例1のtotal RNAを投与した場合を示し、「dsRNA (+)」は実施例1のtotal RNAを投与した場合を示す。
【図14】実施例17の多発性硬化症治療/予防効果の評価試験の結果を示す。縦軸は、多発性硬化症モデルとなる実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の臨床スコアを示し、横軸はミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG)投与(day 0)からの経過日数を示す。「GP」は実施例1で得られたtotal RNAを投与した場合を示す。
【図15】実施例19のin vivo免疫賦活因子産生試験4の結果を示す。縦軸は相対発現量を示す。横軸中、「mock」は水を投与した場合を示し、「RNA(個体1)」及び「RNA(個体2)」は、実施例1で得られたtotal RNAを投与した場合について、2頭のマイクロミニブタの結果をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0016】
本発明は、その一態様において、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを含有する、免疫賦活因子産生促進用組成物(本明細書において、「本発明の組成物」と示すこともある)に係る。以下、これについて説明する。

【0017】
1.植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA
以下に、本発明の組成物の有効成分である「植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA」について説明する。

【0018】
植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、植物に含まれるエンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAである限り特に制限されない。

【0019】
エンドルナウイルスを含む植物は、種々知られている。該植物の例としては、Capsicum annuum(トウガラシ)、Capsicum frutescens(キダチトウガラシ)、Capsicum baccatum(アヒ・アマリージョ)、Capsicum chinense(シネンセ種)等のトウガラシ属植物; Oryza sativa(品種としては、例えばKoshihikari等)等のイネ属植物; ソラマメ属植物等が挙げられる。エンドルナウイルスを含むCapsicum annuumの品種としては、例えばCalifornia Wonder、Yolo Wonder、Kyousuzu、Kyounami、Kyoumidori、Ace、Suigyokunigou、High Green、Jumbo Colour、Marengo、Avelar、Casca Dura、King Arthur、VR-4、Magda、Bonnie’s Green Bell、Red Bell、Chocolate Beauty Sweet、Pimento Sweet、Cayenne Long Red Thick、Super Cayenne等が挙げられる。エンドルナウイルスを含むCapsicum frutescensの品種としては、例えばGreenleaf、LSU、PI 159239、PI 193470等が挙げられる。エンドルナウイルスを含むCapsicum baccatumの品種としては、例えばMonk’s Hat、PI 238061、PI 633752、PI 260549、PI 215699、PI 260590、PI 260543、PI 441589、PI 257135、PI 337524、PI 337522、C00754 (AVRDC)、C01218 (AVRDC)、C01527 (AVRDC)、C01300 (AVRDC)等が挙げられる。エンドルナウイルスを含むCapsicum chinenseの品種としては、例えばPI 159236、PI 315008、PI 315023、PI 315024、PI 273426、C00943 (AVRDC)、C00949 (AVRDC)等が挙げられる。

【0020】
植物に含まれるエンドルナウイルスは、通常、キャプシドで覆われておらず、ゲノムである二本鎖RNAから構成されている。本発明においては、この二本鎖RNAを有効成分として利用する。

【0021】
本発明において有効成分として利用するゲノム二本鎖RNAは、エンドルナウイルスのゲノム全長であってもよいし、その断片であってもよい。ただ、免疫賦活因子産生促進作用をより効率的に発揮できるという観点から、該ゲノム二本鎖RNAの長さは、より長い方が望ましく、例えば8~20 kbp、好ましくは10~18 kbp、より好ましくは12~16 kpbである。

【0022】
本発明において有効成分として利用するゲノム二本鎖RNAの形状は、特に制限されないが、通常は直鎖状である。

【0023】
本発明において有効成分として利用するゲノム二本鎖RNAの配列は特に制限されない。本発明においては、2つの異なる植物から精製したエンドルナウイルスゲノム二本鎖RNAが、すなわち互いに配列の異なるゲノム二本鎖RNAが、免疫賦活因子産生促進作用を有することを見出している。このため、この免疫賦活因子産生促進効果は、植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAの配列に依存しない効果であると考えられる。

【0024】
2.製造方法
以下に、本発明の組成物の有効成分である「植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA」の製造方法について説明する。

【0025】
本発明の組成物の有効成分である「植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA」は、エンドルナウイルスを含む植物細胞から核酸(特にRNA)を精製する方法により得ることができる。例えば、細胞溶解工程、除タンパク工程、核酸濃縮工程、核酸可溶化工程等を適宜組み合わせて精製することができる。

【0026】
材料である植物細胞は、エンドルナウイルスを含む植物の細胞である限り特に制限されない。安全性の観点から、植物細胞は、好ましくは食用植物の細胞であり、より好ましくは食用植物の食用部位(例えば果実、種子、或いはこれらの一部分)の細胞である。また、より低コストに目的物を得ることができるという観点から、食用部位であっても、通常であれば廃棄される部位(例えば、イネの種子(米)の糠等)の細胞を用いることが望ましい。

【0027】
細胞溶解工程は、植物細胞の細胞膜を壊すことができる限りにおいて特に制限されず、公知の方法を各種採用することができる。例えば、界面活性剤を含む溶液と混合する工程が挙げられる。界面活性剤は、特に制限されず各種界面活性剤を使用することができるが、核膜を壊さない程度の強さの界面活性剤が好ましい。これにより、細胞のゲノムDNAの混入を防ぐことが可能となり、より高い純度でエンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを得ることができる。このような界面活性剤としては、好ましくはデオキシコール酸ナトリウムが挙げられる。界面活性剤の濃度はその種類によって適宜調整されるものであるが、例えばデオキシコール酸ナトリウムの場合であれば例えば0.2~1%程度、好ましくは0.3~0.7%程度の濃度を採用することができる。また、後述の方法4の場合であれば0.15~0.35%程度の濃度を採用することが好ましい。混合後は、遠心分離等により不溶成分を除去することが望ましい。

【0028】
除タンパク工程は、タンパク質を不溶化させることができる限りにおいて特に制限されず、公知の方法を各種採用することができる。例えば、フェノール、クロロホルム、フェノール及びクロロホルムを含有する混合溶媒等の有機溶媒と混合する工程が挙げられる。混合後は、通常、遠心分離等により不溶化タンパク質を除去する。除タンパク工程は、必要に応じて複数回(例えば2~4回)行ってもよい。

【0029】
核酸濃縮工程は、核酸を遠心分離等により沈殿させることができる限りにおいて特に制限されず、公知の方法を各種採用することができる。例えばアルコール沈殿、塩析等が挙げられる。アルコール沈殿に用いるアルコールとしては、特に制限されず、例えばエタノール、イソプロパノール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。塩析に用いる塩としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは塩化リチウムが挙げられる。核酸濃縮工程は、必要に応じてアルコール沈殿と塩析を組み合わせて複数回(例えば2~3回)行ってもよい。

【0030】
核酸可溶化工程は、核酸濃縮工程により得られる沈殿に含まれる核酸(特に二本鎖RNA)を可溶化できる限りにおいて特に制限されず、公知の方法を各種採用することができる。例えば、核酸濃縮工程により得られる沈殿をキレート剤含む溶液で懸濁する工程が挙げられる。キレート剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸水素三ナトリウム等が挙げられる。

【0031】
上記工程に加えて、必要に応じて他の工程、例えば洗浄工程(例えば、エタノール水溶液によるリンス等)、さらなる精製工程(例えばゲルろ過等の各種クロマトグラフィー等)等を組み合わせてもよい。

【0032】
本発明の組成物の有効成分である「植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA」を得る具体的な方法としては、例えば除タンパク工程、アルコール沈殿の順に行う方法(方法1)、細胞溶解工程、除タンパク工程、アルコール沈殿、塩析の順に行う方法(方法2)、細胞溶解工程、アルコール沈殿(好ましくはポリエチレングリコール沈殿)及び塩析、除タンパク工程、アルコール沈殿の順に行う方法(方法3)、細胞溶解工程、アルコール沈殿、核酸可溶化工程、アルコール沈殿の順に行う方法(方法4)等が挙げられる。

【0033】
これらの中でも、方法3は、1回目のアルコール沈殿により溶液量を減らすことができ、これにより除タンパク工程で用いる有機溶媒の量も減らすことができるので、より大スケールで行うのに適している。

【0034】
また、方法4は、エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを粘性のあるペースト状の沈殿として得ることが可能である。この沈殿を凍結乾燥等によって粉末にすることにより、該二本鎖RNAを長期保存することが可能になる。なお、方法4においては、2回のアルコール沈殿の内、1回目のアルコール沈殿におけるアルコール濃度を比較的低く(例えば、アルコール濃度を10~30%、好ましくは15~25%に)し、2回目のアルコール沈殿におけるアルコール濃度を比較的高く(例えば、アルコール濃度を50~80%、好ましくは60~75%、より好ましくは60~70%に)することが好ましい。

【0035】
3.用途
以下に、本発明の組成物の用途について説明する。なお、以下、本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合には、「改善」を「治療」に読み替えることができる。

【0036】
植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、免疫賦活因子産生促進作用を有することから、免疫賦活因子産生促進用の各種組成物(医薬組成物、食品組成物、口腔用組成物等)への利用が可能である。植物由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAは、これをそのまま、あるいは慣用の成分とともに各種組成物となし、動物およびヒトに適用(例えば、投与、摂取、接種等)することができる。

【0037】
本発明の組成物は、インターフェロン(例えば、IFN-β1、IFNα4等)、インターフェロン応答因子(例えば、ISG56、BST2、IFITM3、CXCL1、CXCL2、Pai-1等)、サイトカイン(例えば、IL-1β、IL6、TNFα等)、インターフェロン誘導遺伝子(例えば、Cxcl10等)等の免疫賦活因子の産生を促進することができる。これにより、本発明の組成物は体内の免疫を賦活することができる。よって、本発明の組成物は、免疫賦活用組成物として用いることができる。

【0038】
本発明の組成物は、抗ウイルス用組成物(ウイルス感染症の予防又は改善用組成物)として用いることもできる。これは、本発明の組成物の上記作用(免疫賦活因子産生促進作用及び免疫賦活作用)に基づくものであると考えられており、このため本発明の組成物は、ウイルスの種類を問わず、種々のウイルスに対して抗ウイルス作用を発揮できると考えられる。

【0039】
対象ウイルスとしては、特に制限されないが、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型、B型等)、風疹ウイルス、エボラウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、アルボウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ノロウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、ポリオウイルス、SARSウイルス、肝炎ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス等)黄熱ウイルス、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、ニパウイルス、Bウイルス、リッサウイルス、ライノウイルス等が挙げられる。これらの中でも、インフルエンザウイルス、脳心筋炎ウイルス等のRNAウイルスが好ましく挙げられる。

【0040】
本発明の組成物は、免疫賦活因子産生促進用、免疫賦活作用があることから、アジュバントとしても用いることができる。

【0041】
本発明の組成物は、免疫賦活因子産生促進用、免疫賦活作用があることから、各種疾患、例えば多発性硬化症(MS)、がん等の予防又は改善用に用いることもできる。

【0042】
予防又は改善対象のがんとしては、特に制限されず、例えば皮膚がん、多発性骨髄腫、肺がん、胃がん、肝臓がん、食道がん、すい臓がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、胆道がん、腎がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、白血病、骨腫瘍、骨肉種、軟部腫瘍、悪性リンパ腫、咽頭がん、頭頸部のがん、小児がん等が挙げられる。

【0043】
本発明の組成物の形態は、特に限定されず、本発明の組成物の用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。

【0044】
形態としては、用途が医薬組成物、健康増進剤、栄養補助剤(サプリメント等)等である場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)、点鼻剤、吸入剤、肛門坐剤、挿入剤、浣腸剤、ゼリー剤、注射剤、貼付剤、ローション剤、クリーム剤などの非経口摂取に適した製剤形態(非経口製剤形態)が挙げられる。非経口製剤形態の中でも、点鼻製剤形態が好ましい。

【0045】
形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキー等が挙げられる。

【0046】
形態としては、用途が口腔用組成物である場合は、例えば液体(溶液、乳液、懸濁液等)、半固体(ゲル、クリーム、ペースト等)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体等)等の任意の形態、より具体的には、歯磨剤(練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨等)、洗口剤、塗布剤、貼付剤、口中清涼剤、食品(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチ等)等が挙げられる。

【0047】
本発明の組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、医薬組成物、食品組成物、口腔用組成物等に配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。

【0048】
本発明の組成物中の有効成分の含有量は、用途、使用態様、適用対象、適用対象の状態等に左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.0001~95重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。

【0049】
本発明の組成物の適用(例えば、投与、摂取、接種等)量は、薬効を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分である本発明の化合物の重量として、一般に経口投与の場合には一日あたり0.1~1000 mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5~50 mg/kg体重であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01~100 mg/kg体重、好ましくは0.1~10 mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2~3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例1:ピーマン(Capsicum annuum L. 'grossum', Kyosuzu)からのtotal RNA精製 エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを細胞内に含むことが知られているピーマン(品種名:京鈴)からtotal RNAを精製した。具体的には以下のように行った。
【実施例】
【0052】
ピーマン栽培品種である京鈴を、圧縮搾り低速ジューサー(イキイキ酵素くん、オデオコーポレーション社製)を用いて粉砕し、2,000 rpmで遠心して、上清を除いた。得られた沈殿物がすべて溶けるまでRNase free waterを加え、それに対して、フェノール・クロロホルム溶液(TE 飽和フェノール:クロロホルム=1:1)等量を加えて激しく攪拌した後、遠心(4℃、2,380 g(遠心力)、15分間)して上清を回収した。得られた上清の1/10量に対して塩水溶液、及び2倍量の100 %エタノールを添加し、混合した後、-80℃で15分間静置した。遠心(4℃、2,380 g(遠心力)、15分間)して、上清を除去した後、沈殿を70%エタノール水溶液で洗浄した。残った溶媒を減圧乾燥により除去して、total RNAを得た。このtotal RNAを核酸が1000 ng/μLになるようにRNase free waterで溶かした。total RNAをアガロースゲル電気泳動して、約14.7 kbの二本鎖RNA(エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA)が含まれていることを確認した。また、該二本鎖RNA量は、全核酸の約0.058%(w/w)であった。
【実施例】
【0053】
比較例1:ピーマン(Capsicum annuum L. 'grossum', Miogi)からのtotal RNA精製 エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを細胞内に含まないことが知られているピーマン(品種名:みおぎ)から、実施例1と同様にしてtotal RNAを精製した。
【実施例】
【0054】
実施例2:in vitro免疫賦活因子産生試験1
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)から肺繊維芽細胞を採取し、6 cmディッシュ上で定法に従って3日間培養した。その後、1x105 cells/wellとなるように12-well plateへ播種し、1晩培養した培地に、実施例1又は比較例1のtotal RNA水溶液(核酸:1000 ng/μL)又は水を50μL/dish添加し、24時間培養した。培養後、インターフェロン応答性遺伝子(ISG56及びCXCL10)のmRNA発現量を、定量的RT-PCRで測定した。結果を図1に示す。
【実施例】
【0055】
図1に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により、インターフェロン応答性遺伝子の発現が増加した。
【実施例】
【0056】
実施例3:in vivo免疫賦活因子産生試験1
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=3)に対して、RNase free waterで100mg/mlに調製したペントバルビタールナトリウム15μLを500μLのPBSで希釈したもの(=1.5mg/body)を腹腔内注射することにより麻酔をかけた。実施例1のtotal RNA水溶液(核酸:1000 ng/μL)を経鼻投与(12.5μL、25μL、又は50μL/body)した。投与後、マウスの鼻を指ではじき、仰向けに静置することで確実に肺に投与サンプルが行き届くようにした。投与から24時間後に肺を採取し、肺におけるインターフェロン(IFN-β1)及びインターフェロン応答性遺伝子(ISG56)のmRNA発現量を、定量的RT-PCRで測定した。結果を図2に示す。
【実施例】
【0057】
図2に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により、濃度依存的に、インターフェロン及びインターフェロン応答性遺伝子の発現が増加した。
【実施例】
【0058】
実施例4:in vivo免疫賦活因子産生試験2
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=3)に対して、実施例1のtotal RNA水溶液を、実施例3と同様にして経鼻投与(50μL/body)した。一方で、6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=3)に対して、経口投与(300μL/body)とする以外は実施例3と同様にして、実施例1のtotal RNA水溶液の投与を行った。投与から24時間後に各臓器(肺、大腸、小腸、胃、肝臓、及び脾臓)を採取し、各臓器におけるインターフェロン応答性遺伝子(ISG56)のmRNA発現量を、定量的RT-PCRで測定した。結果を図3に示す。
【実施例】
【0059】
図3に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により、各組織におけるインターフェロン応答性遺伝子の発現が増加した。
【実施例】
【0060】
実施例5:ウイルス感染試験1(経鼻投与)
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=7)に対して、実施例1のtotal RNA水溶液を、実施例3と同様にして経鼻投与(30μL/body)した。投与から1日後、1.3×107 pfu/μL×50μL/bodyのインフルエンザAウイルス(H1N1)を経鼻投与により感染させた。感染から1日後、実施例1のtotal RNA水溶液を、実施例3と同様にして経鼻投与(30μL/body)した。感染から一定期間に亘って、マウスの生存率、及び体重を計測した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0061】
図4に示されるように、インフルエンザAウイルス感染による生存率の低下及び体重減少が、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により抑制された。
【実施例】
【0062】
実施例6:ウイルス感染試験2(経鼻投与)
感染させるウイルスとして強毒性インフルエンザAウイルス(H5N1)を用いる以外は、実施例5と同様にして試験した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0063】
図5に示されるように、強毒性インフルエンザAウイルス感染による生存率の低下及び体重減少が、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により抑制された。
【実施例】
【0064】
実施例7:ウイルス感染試験3(経口投与)
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)に対して、ウイルス感染前日(Day-1)の午後に、実施例1のtotal RNA水溶液を経口投与(300μL/body)した。翌日(Day0)の午前に、3.2×107pfu/head (200μL)の脳心筋炎ウイルス(EMCV)を経口投与により感染させた。感染日(Day0)の午後及び感染日の翌日(Day1)に、実施例1のtotal RNA水溶液を経口投与(300μL/body)した。感染から一定期間に亘って、マウスの生存率を計測した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0065】
図6に示されるように、脳心筋炎ウイルス感染による生存率の低下が、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により抑制された。
【実施例】
【0066】
実施例8:米糠(Oryza sativa, Koshihikari(品種))からの二本鎖RNA精製
エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAを細胞内に含むことが知られている米(コシヒカリ)の糠から二本鎖RNAを精製した。具体的には以下のように行った。
【実施例】
【0067】
コシヒカリ(品種)の米糠60 gに0.5%DOC緩衝液(組成:285ml of 5M NaCl and 3MNaOAc (pH 5.2) + 15ml of 10%デオキシコール酸ナトリウム(DOC))300 mLを添加して混合した後、遠心(4℃、10000 rpm、15分間)して上清を回収した。上清に等量のフェノールを加えて激しく攪拌した後、遠心(4℃、8000 rpm、10分間)して上清を回収した。このフェノール抽出操作を2回繰り返した。上清に等量のフェノール・クロロホルム溶液を加えて激しく攪拌した後、遠心(4℃、3500 rpm、3分間)して上清を回収した。上清に等量のイソプロパノールを添加して攪拌した後、遠心(4℃、10000 rpm、30分間)して上清を除去した。沈殿を70%エタノール水溶液で洗浄し、10 mM TE緩衝液に溶解した。得られた溶液に、塩化リチウムを終濃度2.25 Mになるように添加して混合した後、氷上で2時間静置してから遠心(4℃、15000 rpm、15分間)して上清を回収した。上清に、塩化リチウムを終濃度4 Mになるように添加して混合した後、氷上で2時間静置してから遠心(4℃、15000 rpm、35分間)した。上清を除去して、RNAを得た。RNAをアガロースゲル電気泳動して、約14 kbの二本鎖RNA(エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA)が含まれていることを確認した。
【実施例】
【0068】
実施例9:米糠(Oryza sativa, koshihikari(品種))からの二本鎖RNA精製
コシヒカリ(品種)の米糠60 gに0.5%DOC緩衝液15 mLを添加して混合した後、遠心(4℃、10000 rpm、15分間)して上清を回収した。上清に、終濃度1.6 Mになるように塩化ナトリウムを加え、更に終濃度6.5%になるようにPEG#6000を加えて攪拌した後、氷上で2時間静置してから遠心(4℃、10000 rpm、60分間)して上清を除去した。沈殿を70%エタノール水溶液で2回洗浄して風乾した後、5 mL TE緩衝液に溶解した。得られた溶液に等量のフェノールを加えて激しく攪拌した後、遠心(4℃、8000 rpm、10分間)して上清を回収した。このフェノール抽出操作を2回繰り返した。上清に等量のクロロホルムを加えて激しく攪拌した後、遠心(4℃、3500 rpm、3分間)して上清を回収した。上清に等量のイソプロパノールを添加して攪拌した後、遠心(4℃、10000 rpm、30分間)して上清を除去した。沈殿を1 mLの超純粋に溶解し、ゲルろ過(Sepharose 4B)により、約14 kbの二本鎖RNAを精製した。
【実施例】
【0069】
実施例10:in vitro免疫賦活因子産生試験2
マウス胎児線維芽細胞を、6 well plateディッシュ上で定法に従って培養した。培地に、実施例8のRNA水溶液(二本鎖RNAを0.25μg含有)又はPolyIC 1μgをリポフェクトアミンと共に添加(/dish)し、6時間培養した。培養後、インターフェロン(IFN-β1)及びインターフェロン応答性遺伝子(ISG56)のmRNA発現量を、定量的RT-PCRで測定した。結果を図7に示す。
【実施例】
【0070】
図7に示されるように、米糠由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例8)により、インターフェロン及びインターフェロン応答性遺伝子の発現が増加した。
【実施例】
【0071】
実施例11:in vivo免疫賦活因子産生試験3
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)に対して、実施例8のRNA水溶液(二本鎖RNAを20μg含有)を、実施例3と同様にして経鼻投与した。投与後0、4、8、及び24時間後に肺を摘出して、各種mRNA発現量を定量的RT-PCRで測定した。結果を図8に示す。
【実施例】
【0072】
米糠由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例8)の経鼻投与により肺においてインターフェロン(例えば、IFN-β1、IFNα4等)、インターフェロン応答因子(例えば、ISG56、BST2、IFITM3、CXCL1、CXCL2、Pai-1等)、サイトカイン(例えば、IL-1β、IL6、TNFα等)の産生をも促進することができることが示された(図8)。
【実施例】
【0073】
実施例12:ウイルス感染試験4(経鼻投与)
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=5)に対して、実施例8のRNA水溶液(二本鎖RNAを20μg含有)を、実施例3と同様にして経鼻投与した。投与から8時間後、実施例3と同様にしてインフルエンザAウイルス(H1N1)を経鼻投与により感染させると共に、実施例8のRNA水溶液(二本鎖RNAを20μg含有)を実施例3と同様にして経鼻投与した。感染から一定期間に亘って、マウスの生存率、及び体重を計測した。結果を図9に示す。
【実施例】
【0074】
図9に示されるように、インフルエンザAウイルス感染による生存率の低下が、米糠由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例8)により抑制された。
【実施例】
【0075】
実施例13:ウイルス感染試験5(経鼻投与)
マウスとしてMAD5及びTRIFのダブルノックアウトマウス(n=5)を用いる以外は、実施例5と同様にして試験した。結果を図10に示す。
【実施例】
【0076】
図10に示されるように、MAD5及びTRIFのダブルノックアウトマウスにおいては、インフルエンザAウイルス感染による生存率の低下が、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)に回復しなかった。このことから、エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAの効果は、MAD5及び/又はTRIFを介したシグナル伝達経路を通じた効果であることが示唆された。
【実施例】
【0077】
実施例14:in vivo免疫賦活因子産生試験4
マウスとしてMAD5及びTRIFのダブルノックアウトマウス(n=5)を用い、肺の採取を8時間後に行う以外は、実施例3と同様にして試験した。結果を図11に示す。
【実施例】
【0078】
図11に示されるように、野生型マウスにおいて見られるピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)によるインターフェロン及びインターフェロン応答性遺伝子の発現上昇が、MAD5及びTRIFのダブルノックアウトマウスにおいては起こらなかった。このことから、エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNAの効果は、MAD5及び/又はTRIFを介したシグナル伝達経路を通じた効果であることが示唆された。
【実施例】
【0079】
実施例15:毒性試験
6週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=5)に対して、実施例1のtotal RNA水溶液を、実施例3と同様にして経鼻投与(30μL/body)した。この投与を2回/週のペースで続け、マウスの体重の変化を計測した。結果を図12に示す。
【実施例】
【0080】
図12に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)を投与した場合の体重変化は、代わりに水を投与した場合の体重変化と同程度であった。
【実施例】
【0081】
実施例16:がん治療/予防効果の評価試験
8週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=各群6、計12)に対して、1×106個のメラノーマ細胞(B16-F110細胞)を皮下注射した。皮下注射から1日経過後から、二本鎖RNA 250μgを含む実施例1のtotal RNA水溶液を、2回/週の頻度で腹空内投与した。皮下注射から、1日~数日毎に腫瘍の大きさを測定した。結果を図13に示す。
【実施例】
【0082】
図13に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)を投与した場合は、腫瘍の拡大をほぼ完全に抑制することができた。
【実施例】
【0083】
実施例17:多発性硬化症治療/予防効果の評価試験
8週齢のC57BL/6Jマウス(♀)(n=17)に対して、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG、200μg)及び百日咳毒素(p-toxin、0.5μg)を投与した(day 0)。MOG投与(day 0)から2日後(day 2)、百日咳毒素(p-toxin、0.5μg)を投与した。これら2回の投与により、多発性硬化症モデルとなるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)を誘発した。全体(n=17)の内の9匹に対してのみ、MOG投与(day 0)から7、8、及び9日目(day 7,8,9)に、二本鎖RNA 30μgを含む実施例1のtotal RNA水溶液を経鼻投与した。MOG投与(day 0)から、1日~数日毎に臨床スコア(0 : normal (症状なし)、1 : decreasing muscle tonus in tail(尾トーシス低下)、2 : complete paralysis in tail(尾完全麻痺)、3 : gait abnormality (歩行異常)、4 : hind-limb paralysis (後肢完全麻痺))を評価した。結果を図14に示す。
【実施例】
【0084】
図14に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)を投与した場合は、EAEの臨床スコアの悪化を抑制することができた。
【実施例】
【0085】
実施例18:米糠(Oryza sativa, koshihikari(品種))からの二本鎖RNA精製
コシヒカリ(品種)の米糠200 gに0.25%コール酸ナトリウム液(組成:0.1M NaCl、0.25%コール酸ナトリウム)2000 mLを添加して混合した後、遠心(4℃、3500 rpm、10分間)又は4℃で放置した。遠心又は放置後、上清(乳白色・白濁)を回収した。上清に、1/4容積のエタノールを添加して撹拌し、氷上で60分間放置してから、遠心(4℃、3500 rpm、20分間)して上清を除去した。沈殿にRNA可溶化溶液(組成:0.1M NaCl、キレート剤(50mM クエン酸ナトリウム、あるいは50mMエチレンジアミン四酢酸水素三ナトリウム))200 mLを添加して、懸濁した。懸濁液を遠心(4℃、10000 rpm、10分間)して上清を回収した。上清に、2倍容積のエタノールを添加して撹拌し、氷上で60分間放置してから、遠心(4℃、3500 rpm、20分間)して上清を除去した。得られた沈殿がエンドルナウイルス二本鎖RNAを含むことを確認した。なお、得られた沈殿は粘性のあるペースト状であり、これを凍結乾燥等によって粉末化することにより、エンドルナウイルス二本鎖RNAを長期保存することができる。
【実施例】
【0086】
実施例19:in vivo免疫賦活因子産生試験4
5 kgのマイクロミニブタを麻酔し、実施例1のtotal RNA水溶液(ピーマン由来のRNA(全RNA)を4 mg含む)を経鼻投与した。投与から24時間後に肺を採取し、肺におけるインターフェロン誘導遺伝子(Cxcl10)のmRNA発現量を、定量的RT-PCRで測定した。結果を図15に示す。図15中、「RNA(個体1)」、「RNA(個体2)」は、2頭のマイクロミニブタの結果をそれぞれ示す。
【実施例】
【0087】
図15に示されるように、ピーマン由来エンドルナウイルスのゲノム二本鎖RNA(実施例1)により、インターフェロン誘導遺伝子の発現が増加した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
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【図14】
13
【図15】
14