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Specification :(In Japanese)潤滑材及びSRT材料

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Feb 21, 2019
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)潤滑材及びSRT材料
IPC (International Patent Classification) C10M 109/00        (2006.01)
C10M 111/04        (2006.01)
F16C  33/20        (2006.01)
C10N  20/04        (2006.01)
C10N  20/06        (2006.01)
C10N  30/06        (2006.01)
C10N  40/02        (2006.01)
FI (File Index) C10M 109/00
C10M 111/04
F16C 33/20 A
C10N 20:04
C10N 20:06 Z
C10N 30:06
C10N 40:02
Demand for international preliminary examination (In Japanese)
Total pages 51
Application Number P2018-509698
Article of public order and morality (In Japanese)1.テフロン
International application number PCT/JP2017/013786
International publication number WO2017/171071
Date of international filing Mar 31, 2017
Date of international publication Oct 5, 2017
Application number of the priority 2016073586
Priority date Mar 31, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】辻井 敬亘
【氏名】榊原 圭太
【氏名】渡辺 宏
【氏名】栗原 和枝
【氏名】佐藤 貴哉
【氏名】中野 健
Applicant (In Japanese)【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 3J011
4H104
F-term 3J011AA20
3J011DA01
3J011DA02
3J011QA05
3J011SC01
4H104DA00
Abstract (In Japanese)本発明は、機械の可動部を構成する軸受、シール、ガイド(案内機構)等の機械要素の表面に適用できるSRT材料(潤滑材)を提供する。
潤滑材及びSRT材料。
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
厚膜化ポリマーブラシを含むSRT材料。
【請求項2】
前記SRT材料が摺動機構用である請求項1のSRT材料。
【請求項3】
前記厚膜化ポリマーブラシが500nm以上に厚膜化されており、分子量分布指数が1.5以下の厚膜化ポリマーブラシである、請求項1又は2に記載のSRT材料。
【請求項4】
押し込み量が100nm以上、圧縮弾性率が1MPa以上である、請求項1~3のいずれかに記載のSRT材料。
【請求項5】
前記厚膜化ポリマーブラシが架橋構造を有する、請求項1~4のいずれかに記載のSRT材料。
【請求項6】
潤滑液を含み、摩擦係数(μ)が0.1以下である、請求項1~5のいずれかに記載のSRT材料。
【請求項7】
圧縮弾性率が1MPa以上であり、摩擦係数(μ)が0.1以下であるSRT材料。
【請求項8】
厚膜化ポリマーブラシ及び濃厚ポリマーブラシ効果を発現する成分からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む、請求項7に記載のSRT材料。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑材及びSRT材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高弾性、超低摩擦性、生体適合性等の優れた性質を持つ濃厚ポリマーブラシ(Concentrated Polymer Brush、CPB)の高度階層化についての研究が進められている。
【0003】
更に、表面形成技術の革新による飛躍的な厚膜化の実現及びマクロな系での優れたトライボロジー(Tribology、固体面の接触、摩擦、摩耗、潤滑に関連する諸問題を対象とする科学技術の一分野)特性の実証が試みられている(図1)。
【0004】
本発明者等は、リビングラジカル重合法(Living Radical Polymerization(LRP))により、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のホモポリマーからなるグラフト表面固体(CPB)を作製している(特許文献1)。
【0005】
このグラフト表面固体は、超高感度センサー及び/又は高機能性分離膜等として応用できる。
【0006】
本発明者等は、高分子鎖がグラフトされた表面(CPB)を含む潤滑材を作製している(特許文献2)。この潤滑材は、高分子鎖層の厚みが10~100nmオーダーで低摩擦性を発現し、サブミクロン或いはナノオーダーの平滑性を必要とする摺動部材としても有効である。
【0007】
本発明者等は、摺動面にイオン液体構造を含む高分子グラフト鎖層を形成する摺動部材を作製している(特許文献3)。この摺動部材は、摺動面間の摩擦低減効果を有し、その効果が持続性を有する低摩擦摺動部材となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】日本国特許第3422463号(特開平11-263819号公報)
【特許文献2】日本国特開2006-316169号公報
【特許文献3】日本国特開2014-169787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、SRT材料(潤滑材)を提供する。
【0010】
本発明は、摺動機構用途として有効なSRT材料を提供する。
【0011】
本発明は、機械の可動部を構成する軸受、シール及び/又はガイド(案内機構)等の機械要素の表面に適用できるSRT材料(潤滑材)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、LRPを材料表面からの重合に適用することにより、ブラシ構造の精密制御と高密度化とが達成された濃厚ポリマーブラシ(Concentrated Polymer Brush、以下「CPB」とも記す)を作製し、多様な材料表面への適用手法を確立している。CPBの構造特性は、CPB中の柔軟な高分子鎖が良溶媒中で伸び切り鎖長に匹敵する程高度に伸長配向しており、大きな圧縮抵抗、超低摩擦特性、明確なサイズ排除効果、生体適合性、優れた機械的特性等を発現する。
【0013】
CPBの超低摩擦特性はマイクロトライボロジー計測により実証されている。しかしながら、その膨潤膜厚が通常百nm程度であり、母材(シリコン基板、ガラス基板、各種金属基板等)表面の粗さに適応することと、アブレシブ摩耗(摩擦面間に介在する異物により、その表面が削り取られる摩耗現象)を克服することについては改善の余地がある。
【0014】
従来技術では、CPBのマクロ系(実用系)への適用については改善の余地がある。
【0015】
本発明では、厚膜化されたCPB(以下「厚膜化CPB」とも記す)を潤滑材に適用することで、従来技術では困難だった強靱性(レジリエンシー)と低摩擦性との両立を実現し、機械製品の長寿命化と省エネ化とを目指す。
【0016】
第1群発明:厚膜化CPBを軸としたSRT材料
項1.
厚膜化ポリマーブラシ(厚膜化CPB)を含むSRT材料。
【0017】
項2.
前記SRT材料が摺動機構用である前記項1のSRT材料。
【0018】
項3.
前記厚膜化ポリマーブラシ(厚膜化CPB)が500nm以上に厚膜化されており、分子量分布指数が1.5以下の厚膜化CPBである、前記項1又は2に記載のSRT材料。
【0019】
厚膜化CPBは、500nm以上の厚膜化の例として、600nm~5μm程度の厚膜化が可能である。
【0020】
項4.
押し込み量が100nm以上、圧縮弾性率が1MPa以上である、前記項1~3のいずれかに記載のSRT材料。
【0021】
項5.
前記厚膜化ポリマーブラシ(厚膜化CPB)が架橋構造を有する、前記項1~4のいずれかに記載のSRT材料。
【0022】
項6.
潤滑液を含み、摩擦係数(μ)が0.1以下である、前記項1~5のいずれかに記載のSRT材料。
【0023】
SRT材料の摩擦係数(μ)は0.01以下であることが好ましい。
【0024】
第2群発明:「物性値」を軸としたSRT材料
項7.
圧縮弾性率が1MPa以上であり、摩擦係数(μ)が0.1以下であるSRT材料。
【0025】
本発明のSRT材料は、その発明の概念として、前記圧縮弾性率及び摩擦係数(μ)を満たす場合、必ずしも厚膜化CPBを含む必要が無い。
【0026】
項8.
厚膜化ポリマーブラシ及びCPB効果を発現する成分からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含む、前記項7に記載のSRT材料。
【0027】
本発明が使う語句の説明
本発明のSRT材料(狭概念)は、潤滑材(広概念)の一態様である。潤滑材の一態様である本発明のSRT材料は、軸受、シール又はガイド(案内機構)の用途として有効である。
【0028】
厚膜化CPBの厚膜化の程度及び分子量分布指数
本発明のSRT材料に用いる厚膜化CPBは、高圧、イオン液体溶媒、又はそれらを組み合わせる等した条件の下、表面開始リビングラジカル重合により合成することができる。その際、重合溶液に、遊離開始剤を添加すると、ポリマーブラシ構成鎖と同等の分子量及び分子量分布を有する遊離ポリマーを得ることができる。
【0029】
サイズ排除クロマトグラフィー法を用いて、この遊離ポリマーを分析し、数平均分子量及び分子量分布指数を決定することができる。
【0030】
SRT材料の押し込み量及び圧縮弾性率
SRT材料の押し込み量及び圧縮弾性率の測定は、ナノインデンテーション法又は原子間力顕微鏡(AFM)コロイドプローブ法を用いる。
【0031】
ナノインデンテーション法では、例えば、Nanomechanics iMicro(センサ:inForce50)を用いる。
【0032】
AFMコロイドプローブ法では、例えば、AFMカンチレバーの先端に、直径10μmのシリカプローブ粒子を固定し、JPK instruments社製AFM或いはセイコーインスツルメント社製AFMを用いて、シリコン基板上に形成した厚膜化CPB(例:厚膜化PMMAブラシ)に対するフォースカーブ測定を行う。
【0033】
厚膜化CPBの架橋構造
架橋構造は、物理的架橋構造及び化学的架橋構造を含む。実験例は化学的架橋構造であることが好ましい。厚膜化CPBの架橋構造は、厚膜化CPBの弾性率を制御する。
【0034】
架橋構造として、物理架橋及び化学架橋を導入する方法は、ポリマーブラシ形成時(重合時、その場架橋という)、並びにポスト重合時(後架橋時)、いずれの時でも有用である。
【0035】
SRT材料の摩擦係数(μ)
ボールオンディスク試験には、例えば、Bruker社製トライボ試験機UMT TriboLabを用いる。厚膜化CPBを、良溶媒中、荷重(Fn)0.1~40N、回転速度10~2000rpmで、摩擦力(Fs)を測定する。摩擦係数(μ)は、それらFsとFnの比(Fs/Fn)と定義される。
【0036】
SRT材料の耐久性
厚膜化CPB同士をDEME-TFSI中、荷重1~10Nにて、距離約1200mを摺動する。
【0037】
ボールオンディスク試験において、ボール側(常時摺動面)も評価する。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、高弾性、超低摩擦性等の優れた性質を持つ厚膜化CPBの高度階層化を実現したSRT材料(潤滑材)である。更に、表面形成技術の革新による飛躍的な厚膜化の実現及びマクロ系での優れたトライボロジー特性を実証した。
【0039】
本発明のSRT材料は、圧縮弾性率が1MPa以上であり、摩擦係数(μ)が0.1以下である。
【0040】
本発明の潤滑材及びSRT材料は、軸受、シール、ガイド(案内機構)の摺動部材等として実用機械システムへの応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】表面形成技術の革新による飛躍的な厚膜化の実現及びマクロな系での優れたトライボロジー特性の実証が試みられていることを示す図である。
【図2】CPB系の実現と革新機能の発現を示す図である。
【図3】膨潤CPB層の高反発特性を示す図である。
【図4】膨潤CPB層の超低摩擦・高潤滑特性を示す図である。
【図5】実用表面(マクロ接触システムへの応用)としての課題と可能性を示す図である。
【図6】実用表面(マクロ接触システムへの応用)としての課題と可能性を示す図である。
【図7】CPBによる機械要素技術の革新を示す図である。
【図8】本発明のパラダイムシフトを示す図である。
【図9】摺動面の耐久性を生み出すCPBのレジリエンシーを示す図である。
【図10】ハード系、ソフト(ブラシ・ゲル)系材料の特性比較を示す図である。
【図11】本発明の産業上の利用可能性を示す図である。
【図12】SRT材料を形成する高分子鎖の一例の模式図である。
【図13】SRT材料を形成する高分子鎖の一例の模式図(断面図)である。
【図14】本発明の実施態様を示す図(Fig.1)である。
【図15】本発明の実施態様を示す図(Fig.2)である。
【図16】ストライベック曲線を取得するためのトライボ試験機(Bruker UMT TriboLab)によるボールオンディスク試験の模式図を示す。
【図17】イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのストライベック曲線(荷重:0.1-4N)を示す。
【図18】イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのストライベック曲線(高荷重条件)を示す。
【図19】イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化ポリ(N,N-ジエチル-N-(2-メタクリロイルエチル)-N-メチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド)(PDEMM-TFSI:イオン液体型)ブラシのストライベック曲線(荷重:5N)を示す。
【図20】イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシ及び厚膜化PDEMM-TFSI(イオン液体型)ブラシのストライベック曲線のデータ比較を示す。
【図21】POE系潤滑油(3種類)における厚膜化ポリ(ラウリルメタクリレート)(PLMA)(親油性)ブラシ のストライベック曲線(荷重:0.1N)を示す。
【図22】ナノインデンテーション法により得た、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシの圧縮弾性率の計測結果を示す。
【図23】原子間力顕微鏡コロイドプローブ法により得た、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのフォースカーブ試験の結果を示す。
【図24】架橋ブラシの膨潤度に対する架橋剤濃度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明では、高度なリビングラジカル重合法(LRP)を用いて、厚膜化させた濃厚ポリマーブラシ(厚膜化CPB)を作製した。この厚膜化CPBはマクロ系においても、つまり様々な機械要素に影響される実用的な潤滑システムにおいても、有効に機能する。

【0043】
本発明のSRT材料は、軸受用潤滑材、シール用潤滑材及び/又はガイド(案内機構)用潤滑材として、ソフト(Soft、柔軟性)&レジリエント(Resilient、強靭性)を備えたトライボシステム(Tribosystem(System of tribological components(摩擦や潤滑が高度に制御された総合的な摺動システム)を提供する。

【0044】
この厚膜化CPBを含む技術は、柔軟性と超低摩擦性とを備えた摺動部材に繋がる(図2)。図2は、CPB系の実現及び革新機能の発現を示す図である。

【0045】
SRT材料
本発明では、CPBの柔軟性と超低摩擦性に由来する強靱さ(レジリエンシー)を活用したソフト(Soft)&レジリエント(Resilient)を備えたトライボ(Tribology)システム材料(以下、「SRT材料」とも記す。)を提供する。

【0046】
本発明のSRT材料は、ソフト系材料の特性を活かした機械要素技術であり、高い潤滑性を兼ね備えるCPBを含む。本発明のSRT材料は、大変形性、柔軟性(追従性)、強靱性(回復性)の観点から、トライボロジー(固体面の接触、摩擦、摩耗、潤滑に関連する諸問題を対象とする科学技術の一分野)の基盤材料として、機械への応用が可能である。

【0047】
従来、潤滑材では、低粘度、低速度及び高荷重条件におけるレジリエンシー(強靱性)強化が重要な技術的課題あった。

【0048】
本発明のSRT材料(潤滑材)は、高圧、イオン液体溶媒、又はそれらを組み合わせる等した条件をCPB合成に適用することで、CPBの厚膜化(膜厚500nm以上)を達成し、マクロ計測によるCPB本来のストライベック曲線の取得に初めて成功した。

【0049】
このストライベック曲線は、潤滑面の摩擦係数に及ぼす潤滑材の粘度、平均速度及び垂直荷重の影響を表すもので、潤滑機構と関連し、機械設計の基礎となるデータである。

【0050】
本発明の厚膜化CPBは、その摩擦係数が非ブラシ系の摩擦係数と比較して低速域で顕著に低下しており、その値は10-3オーダーに達した(超低摩擦性)。本発明の厚膜化CPBは、更に、摩擦試験後にも摩耗がほとんど観測されず、厚膜化によりが実用的なCPBを作製することができた(柔軟性及び強靭性)。

【0051】
本発明の厚膜化CPBは、SRT材料(潤滑材や摺動部材)として社会実装が可能である。

【0052】
(1) 厚膜化CPBを含むSRT材料
SRT材料が摺動機構用であることが好ましい。

【0053】
本発明のSRT材料(狭概念)は、潤滑材(広概念)の一態様である。

【0054】
潤滑材の一態様である本発明のSRT材料は、軸受、シール又はガイド(案内機構)の用途(軸受用、シール用又はガイド(案内機構)用)として有効である。

【0055】
含まれる厚膜化CPBは、500nm以上に厚膜化されており、分子量分布指数が1.5以下であることが好ましい。

【0056】
厚膜化CPBは、500nm以上の厚膜化の例として、800nm程度の厚膜化が可能である。

【0057】
SRT材料(潤滑材)は、押し込み量が100nm以上、圧縮弾性率が1MPa以上であることが好ましい。

【0058】
含まれる厚膜化CPBは、架橋構造を有することが好ましい。

【0059】
SRT材料(潤滑材)は、潤滑液を含み、摩擦係数(μ)が0.1以下であることが好ましい。SRT材料の摩擦係数(μ)は0.01以下であることが好ましい。

【0060】
(1-1) 厚膜化CPBを形成する高分子
厚膜化CPBを形成する高分子鎖は、非電解質高分子又は電解質高分子や、疎水性高分子又は親水性高分子が好ましい。

【0061】
非電解質高分子として、ポリ(メチルメタクリレート)(以下「PMMA」とも記す)等が好ましい。

【0062】
電解質高分子としては、PSGMA(poly (sodium sulfonated glycidyl methacrylate))、イオン液体型ポリマー等が好ましい。

【0063】
疎水性高分子としてPMMA等のポリ(アルキル(メタ)アクリレート)が好ましい。

【0064】
親水性高分子としてポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)等のポリ(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、ポリエチレングリコール側鎖を有するポリ(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0065】
親水性高分子は、親水性モノマーを用いて調製してもよく、疎水性モノマーを用いて高分子を調製した後に、この高分子に親水性基を導入することによって調製してもよい。

【0066】
高分子鎖は、1種のモノマーがホモ重合したものや、2種以上のモノマーが共重合したものが好ましい。

【0067】
共重合は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラジエント共重合等である。

【0068】
高分子鎖形成に用いられるモノマーとして、(基材表面に)グラフトする高分子鎖を形成できるものが好ましい。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマー等の付加重合性の二重結合を少なくとも1つ有するモノマーが好ましい。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマー等が好ましい。

【0069】
高分子鎖形成に用いられるモノマーとして、具体的には、次に例示する、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマー、付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマー、疎水性モノマー、親水性モノマー、側鎖にカルボキシル基若しくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマー等を用いることができる。

【0070】
高分子鎖形成に用いられるモノマーとして、特に疎水性モノマー、親水性モノマー等を好適に用いることができる。

【0071】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0072】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0073】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン等が好ましい。

【0074】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリレート-2-アミノエチル、2-(2-ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0075】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、1-(メタ)アクリロキシ-2-フェニル-2-(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)エタン、1-(4-((4-(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等が好ましい。

【0076】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチル-ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0077】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0078】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0079】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0080】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0081】
(メタ)アクリル酸系モノマーとして、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。

【0082】
スチレン系モノマーとして、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、p-クロルスチレン、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-アミノスチレン、p-スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2-(2-ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)スチレン等が好ましい。

【0083】
スチレン系モノマーとして、1-(2-((4-ビニルフェニル)メトキシ)-1-フェニルエトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン等が好ましい。

【0084】
スチレン系モノマーとして、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン等が好ましい。

【0085】
スチレン系モノマーとして、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン等が好ましい。

【0086】
スチレン系モノマーとして、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン等が好ましい。

【0087】
スチレン系モノマーとして、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン等が好ましい。

【0088】
スチレン系モノマーとして、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3-((3,5,7,9,11,13,15-ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン等が好ましい。

【0089】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、フッ素含有ビニルモノマー(ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等)、ケイ素含有ビニル系モノマー(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等が好ましい。

【0090】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、マレイミド系モノマー(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等)等が好ましい。

【0091】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、ニトリル基含有モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基含有モノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド等)、ビニルエステル系モノマー(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等)等が好ましい。

【0092】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、オレフィン類(エチレン、プロピレン等)、共役ジエン系モノマー(ブタジエン、イソプレン等)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニル等)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデン等)、ハロゲン化アリル(塩化アリル等)等が好ましい。

【0093】
付加重合性の二重結合を1つ有する単官能性のモノマーとして、アリルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N-ビニルカルバゾール、メチルビニルケトン、ビニルイソシアナート等が好ましい。

【0094】
例えば、重合性二重結合を1分子中に1つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン等から誘導されたマクロモノマー等が好ましい。

【0095】
疎水性モノマーとして、アクリル酸エステル(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル;フェニルアクリレート等のアリールアクリレート;ベンジルアクリレート等のアリールアルキルアクリレート;メトキシメチルアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレート等)等が好ましい。

【0096】
疎水性モノマーとして、メタクリル酸エステル(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート等のメタクリル酸のアルキルエステル;フェニルメタクリレート等のアリールメタクリレート;ベンジルメタクリレート等のアリールアルキルメタクリレート;メトキシメチルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート等)等が好ましい。

【0097】
疎水性モノマーとして、フマル酸エステル(例、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジアリル等のフマル酸のアルキルエステル等)、マレイン酸エステル(例、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジアリル等のマレイン酸のアルキルエステル等)等が好ましい。

【0098】
疎水性モノマーとして、イタコン酸エステル(例、イタコン酸のアルキルエステル等)、クロトン酸エステル(例、クロトン酸のアルキルエステル等)、メチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、スチレン等が好ましい。

【0099】
疎水性モノマーとして、アルキルスチレン、塩化ビニル、ビニルメチルケトン、ビニルステアレート、ビニルアルキルエーテル、及びそれらの混合物等が好ましい。

【0100】
親水性モノマーとして、ヒドロキシ置換アルキルアクリレート(例、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエトキシエチルアクリレート、ポリエトキシプロピルアクリレート等)等が好ましい。

【0101】
親水性モノマーとして、ヒドロキシ置換アルキルメタクリレート(例、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエトキシエチルメタクリレート、ポリエトキシプロピルメタクリレート等)等が好ましい。

【0102】
親水性モノマーとして、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド(例、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等)、N-アルキルメタクリルアミド(例、N-メチルメタクリルアミド等)等が好ましい。

【0103】
親水性モノマーとして、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アルコキシポリエチレングリコールアクリレート、アルコキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2-グルコシロキシエチルメタクリレート等が好ましい。

【0104】
親水性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、メタクリルアミド、アリルアルコール、N-ビニルピロリドン及びN,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、及びそれらの混合物等が好ましい。

【0105】
側鎖に特定の基を有するモノマーも好適に用いることができる。

【0106】
例えば、側鎖にカルボキシル基若しくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーは、高分子を作製した後に、高分子の側鎖をカルボキシル基又はカルボキシル塩基に転換することにより親水性付与することができる点で好ましい。

【0107】
側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーとして、例えば、1-メトキシエチルアクリレート、1-エトキシエチルアクリレート、1-プロポキシエチルアクリレート、1-(1-メチルエトキシ)エチルアクリレート、1-ブトキシエチルアクリレート、1-(2-メチルプロポキシ)エチルアクリレート、1-(2-エチルヘキソキシ)エチルアクリレート等が好ましい。

【0108】
側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーとして、ピラニルアクリレート、1-メトキシエチルメタクリート、1-エトキシエチルメタクリート、1-プロポキシエチルメトクリート、1-(1-メチルエトキシ)エチルメタクリート、1-ブトキシエチルメタクリート、1-(2-メチルプロポキシ)エチルメタクリート、1-(2-エチルヘキソシキ)エチルメタクリレート等が好ましい。

【0109】
側鎖にカルボキシル基もしくはカルボキシル塩基に容易に転換できる基を有するモノマーとして、ピラニルメタクリート、ジ-1-メトキシエチルマレート、ジ-1-エトキシエチルマレート、ジ-1-プロポキシエチルマレート、ジ-1-(1-メチルエトキシ)エチルマレート、ジ-1-ブトキシエチルマレート、ジ-1-(2-メチルプロポキシ)エチルマレート、ジピラニルマレート等が好ましい。

【0110】
高分子鎖形成に用いられるモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

【0111】
イオン液体モノマーとしては、特に限定されないが、たとえば、下記一般式(1)に示す化合物を重合してなるポリマー等が例示される。

【0112】
【化1】
JP2017171071A1_000002t.gif

【0113】
〔上記一般式(1)中、mは、1以上10以下の整数を示す。

【0114】
nは、1以上5以下の整数を示す。

【0115】
R1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を示す。

【0116】
R2、R3、及びR4は、炭素数1~5のアルキル基を示す。

【0117】
R2、R3、及びR4は、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、R2、R3、及びR4は、2つ以上が連結して環状構造であってもよい。

【0118】
また、Yは一価のアニオンを示す。〕
一価のアニオンYとしては、特に限定されるものではなく、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、AlCl4-、NbF6-、HSO4-、ClO4-、CH3SO3-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO2)2N-、Cl-、Br-、I-等のアニオンを用いることができる。アニオンYの安定性を考慮すると、アニオンYは、特に、BF4-、PF6-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3-、又はCF3CO2-が好適である。

【0119】
上記一般式(1)で表される化合物のなかでも、下記一般式(2)~(9)で表される化合物を特に好適に用いることができる。

【0120】
【化2】
JP2017171071A1_000003t.gif

【0121】
〔上記一般式(2)~(9)中、m、R1、R2、Yは、上記一般式(1)と同様である。

【0122】
また、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
SRT材料(潤滑材)は、高分子鎖を高いグラフト密度でグラフトした表面を用いることによって、高い潤滑性を達成することができる。例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)等の非電解質高分子も好適に用いることができる。

【0123】
(1-2) 厚膜化CPBのグラフト方法
厚膜化CPBを形成する高分子鎖のグラフト方法としては、所望のグラフト密度で高分子鎖のグラフトを行うことができる。

【0124】
グラフトフロム(Grafting-from)法、グラフトトウ(Grafting-to)法等を用いることができ、グラフトフロム法が好ましい。また、疎水性の、又は疎水性化された基材の表面に、疎水性-親水性のジブロック共重合体である高分子鎖(例えば、PMMA-b-PSGMA等)の疎水性部分を接着させる方法も用いることができる(Nature, 425, 163-165 (2003)等参照)。

【0125】
高分子鎖の重合方法として、所望のグラフト密度で高分子鎖の重合を行うことができる方法が好ましく、ラジカル重合法が好ましい。

【0126】
ラジカル重合法としては、
・グラフトされる高分子鎖の分子量及び分子量分布のコントロールがし易い、
・多様な共重合体(例、ランダム共重合体、ブロック共重合体、組成傾斜型共重合体等)のグラフトがし易い
等の点で、リビングラジカル重合(LRP)法が、更に好ましい。

【0127】
リビングラジカル重合法としては、更に原子移動ラジカル重合(ATRP)法が好ましい(J. Am. Chem. Soc., 117, 5614 (1995)、Macromolecules, 28, 7901 (1995)、Science, 272, 866 (1996)、Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)等参照)。

【0128】
ニトロキシド媒介重合法(NMP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法、可逆移動触媒重合法(RTCP)、可逆的錯体形成媒介重合法(RCMP)も可能である。

【0129】
高分子鎖のグラフト方法としては、中でも、リビングラジカル重合を用いたグラフトフロム法による方法(日本国特開平11-263819号公報等参照)が好ましい。

【0130】
ラジカル重合に用いられる触媒としては、ラジカル重合を制御できるものであれば良く、より好ましくは遷移金属錯体を用いる。

【0131】
遷移金属錯体の好ましい例は、周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましい触媒は、銅錯体、ルテニウム錯体、鉄錯体又はニッケル錯体である。

【0132】
中でも、銅錯体が好ましい。1価の銅化合物の例は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅である。

【0133】
金属錯体の配位子としては、例えば、2,2’-ビピリジル若しくはその誘導体、1,10-フェナントロリン若しくはその誘導体、ポリアミン(テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン等)、L-(-)-スパルテイン等の多環式アルカロイド等が好ましい。

【0134】
2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合には、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加するのが好ましい。

【0135】
2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)等も、触媒として好適である。

【0136】
重合反応には溶剤を用いることが好ましい。

【0137】
好ましく用いられる溶剤の例は、炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエン等)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等)、ハロゲン化炭化水素系溶剤(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)等である。

【0138】
好ましく用いられる溶剤の例は、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、カーボネート系溶剤(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)等である。

【0139】
好ましく用いられる溶剤の例は、アミド系溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(HCFC-141b、HCFC-225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(炭素数2~4、5及び6以上のHFCs)、ペルフルオロカーボン系溶剤(ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン)等である。

【0140】
好ましく用いられる溶剤の例は、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶剤(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、水等である。

【0141】
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系若しくは超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行うことができる。

【0142】
高分子鎖のグラフト方法として、グラフトフロム法による方法を用いる場合には、基材表面に重合開始基が存在する必要がある。

【0143】
重合開始基としては、重合が開始できるものが好ましい。ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化スルホニル基等が好ましい。

【0144】
重合開始基は、グラフト密度及びグラフトされた高分子鎖の一次構造(分子量、分子量分布、モノマー配列様式)の制御性の点で、基材表面に物理的若しくは化学的に結合されているのが好ましい。

【0145】
重合開始基の基材表面への導入(結合)方法は、化学吸着法、ラングミュアー・ブロジェット(LB)法等によって行うことができる。

【0146】
例えば、シリコンウエハ(基材)表面へのクロロスルホニル基(重合開始基)の化学結合による固定化は、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン及び/又は2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン等を、シリコンウエハ表面の酸化層と反応させることにより行うことができる。

【0147】
リビングラジカル重合のための重合開始基を基材表面に導入するに当たっては、該重合開始基と該基材結合/親和性基とを有する表面処理剤を用いることが好ましい。この処理剤は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。例えば、以下の式:

【0148】
【化3】
JP2017171071A1_000004t.gif

【0149】
(式中、スペーサー鎖長nは、1~10の整数であることが好ましく、3~8の整数がより好ましく、6が最も好ましい。

【0150】
R1、R2、及びR3のうち最低一つはアルコキシル基或いはハロゲン原子であることが好ましい。例えばR1=R2=R3=OCH2CH3、R1=R2=R3=OCH3等がより好ましい。

【0151】
R4及びR5はC1~C3アルキル、芳香族性官能基等であることが好ましい。例えばR4=R5=CH3がより好ましい。

【0152】
Xは、ハロゲン原子が好ましく、特にBrが好ましい)で示される、
重合開始基含有シランカップリング剤を用いることが好ましい。

【0153】
重合開始基含有シランカップリング剤は、例えばWO2006/087839に記載された方法に従い製造可能である。代表的な重合開始基含有シランカップリング剤には、例えば(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン(BHE)、(2-ブロモ-2-メチル)プロピオニルオキシプロピルトリエトキシシラン(BPE)等が挙げられる。

【0154】
グラフト密度を調整する観点から、重合開始基含有シランカップリング剤に加え、重合開始基を含有しないシランカップリング剤(例えば、一般に使用されるアルキルシランカップリング剤)を使用してもよい。

【0155】
結合基部の原料となる化合物として重合開始基含有シランカップリング剤を使用した場合、水の存在下でシランカップリング剤を加水分解させてシラノールとし、部分的に縮合させてオリゴマー状態とする。この状態で、シリカ表面に水素結合的に吸着させた後、無機-金属系材料を乾燥処理することで脱水縮合反応を起こさせ、重合開始基を当該材料上に形成させてもよい。

【0156】
グラフト密度は、重合開始基含有シランカップリング剤と重合開始基を含有しないシランカップリング剤との割合を調整することで、自在に変更することができる。シランカップリング剤のうちすべてが重合開始基含有シランカップリング剤である場合、以下の重合後に10%を超える表面占有率を達成できる。

【0157】
また、基材表面への重合開始基の導入は、導入される重合開始基の均一性、重合開始基のグラフト密度の制御性等の点で、LB法や気相吸着法を採用することも可能である。

【0158】
LB法においては、まず膜形成材料を適切な溶媒(例、クロロホルム、ベンゼン等)に溶解する。次に、この溶液少量を清浄な液面、好ましくは純水の液面上に展開した後、溶媒を蒸発させるか又は隣接する水相に拡散させて、水面上に膜形成分子による低密度の膜を形成させる。

【0159】
続いて、通常、仕切り板を水面上で機械的に掃引し、膜形成分子が展開している水面の表面積を減少させることにより膜を圧縮して密度を増加させ、緻密な水面上単分子膜を得る。

【0160】
次いで、適切な条件下で、前記水面上単分子膜内を構成する分子の表面密度を一定に保ちながら、単分子層を堆積する基材を、前記水面上単分子膜を横切る方向に浸漬又は引き上げることによって、前記水面上単分子膜を該基材上に移し取り、単分子層を該基材上に堆積する。

【0161】
LB法の詳細及び具体例は、
「福田清成他著、新実験化学講座18巻(界面とコロイド)6章、(1977年)丸善」、
「福田清成・杉道夫・雀部博之編集、LB膜とエレクトロニクス、(1986年)シーエムシー」、或いは
「石井淑夫著、よいLB膜をつくる実践的技術、(1989年)共立出版」
等に記載されている。

【0162】
(1-3) 厚膜化CPBの架橋構造
厚膜化CPBを形成する高分子鎖は、CPB同士での架橋構造を有していることが好ましい。高分子鎖は、基材との結合のための反応性の置換基(架橋基)を有していることが好ましい。

【0163】
架橋基としては、アジド基、ハロゲン基(好ましくはブロモ基)等を挙げることができる。架橋基は、主鎖及びグラフト鎖のいずれに有していてもよい。

【0164】
また、主鎖が有する未反応の前記グラフト鎖との反応基を架橋基として用いることも、グラフト鎖をリビングラジカル重合で形成した際にグラフト鎖の末端に残る反応基を架橋基として用いることもできる。

【0165】
CPB合成時に2官能性モノマーを少量添加することで架橋することも可能である。

【0166】
厚膜化CPBの架橋構造
架橋構造は、物理的架橋構造及び化学的架橋構造を含む。厚膜化CPBの架橋構造は、厚膜化CPBの弾性率を制御する。

【0167】
架橋構造として、物理架橋及び化学架橋を導入する方法は、ポリマーブラシ形成時(重合時、その場架橋という)、並びにポスト重合時(後架橋時)、いずれも時でも有用である。

【0168】
例として、重合時、その場「化学架橋」の例を示す。

【0169】
合成には、厚膜化CPB合成時に、モノマー(単官能性)に加えて、ジビニルモノマー(二官能性、例えば、エチレングリコールジメタクリレート)を適量添加する。

【0170】
溶液中での原子移動ラジカル重合(ATRP)を行う。モノマーに対して1 mol%のジビニルモノマーを添加することにより、ポリマーブラシ層は、基板表面から切り出しても、良溶媒には溶解しない。これにより、厚膜化CPBは、十分に有効な架橋が形成されていることが確認できる。

【0171】
また、良溶媒(例えば、o-ジクロロベンゼン)中、AFMコロイドプローブ法により、ポリマーブラシ層の膨潤度を測定すると、添加架橋剤濃度の増加と共に、膨潤度が低下しており、有効に架橋が形成されたことを示唆する。

【0172】
(1-4) 厚膜化CPBのグラフト密度
厚膜化CPBを形成する高分子鎖のグラフト密度は、高い潤滑性を示すグラフト密度であれば良い。厚膜化CPBを形成する高分子鎖のグラフト密度は、用いられる高分子及び/又は溶媒の種類等によって適宜設定すればよい。

【0173】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の場合、CPBにおける高分子鎖のグラフト密度は、通常0.1鎖/nm2以上、好ましくは0.15鎖/nm2以上、より好ましくは0.2鎖/nm2以上、更に好ましくは0.3鎖/nm2以上、特に好ましくは0.4鎖/nm2以上、最も好ましくは0.45鎖/nm2以上である。

【0174】
ポリ(ラウリルメタクリレート)(PLMA)の場合、CPBにおける高分子鎖のグラフト密度は、通常0.04鎖/nm2以上、好ましくは0.06鎖/nm2以上、より好ましくは0.08鎖/nm2以上、更に好ましくは0.12鎖/nm2以上、特に好ましくは0.16鎖/nm2以上、最も好ましくは0.18鎖/nm2以上である。

【0175】
ポリ(N,N-ジエチル-N-(2-メタクリロイルエチル)-N-メチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド)(PDEMM-TFSI)の場合、CPBにおける高分子鎖のグラフト密度は、通常0.02鎖/nm2以上、好ましくは0.03鎖/nm2以上、より好ましくは0.04鎖/nm2以上、更に好ましくは0.06鎖/nm2以上、特に好ましくは0.08鎖/nm2以上、最も好ましくは0.09鎖/nm2以上である。

【0176】
高分子鎖のグラフト密度は、公知の方法に従って測定することができる。

【0177】
高分子鎖のグラフト密度は、例えば、Macromolecules, 31, 5934-5936 (1998)、Macromolecules, 33, 5608-5612 (2000)、Macromolecules, 38, 2137-2142 (2005)等に記載の方法に従って測定することができる。

【0178】
具体的には、グラフト密度(鎖/nm2)は、グラフト量(W)とグラフト鎖の数平均分子量(Mn)を測定し、次式:
グラフト密度(鎖/nm2)= W(g/nm2)/Mn ×(アボガドロ数)
(式中、Wはグラフト量を表し、Mnは数平均分子量を表す。)
によって求めることができる。

【0179】
グラフト量(W)は、基材がシリコンウエハのような平面基板の場合には、エリプソメトリー法により乾燥状態の膜厚、即ちグラフトされた高分子鎖層の乾燥状態における厚みを測定し、バルクフィルムの密度を用いて、単位面積当たりのグラフト量を算出することにより求めることができる。

【0180】
基材がシリカ粒子等の場合には、赤外吸収分光測定(IR)、熱重量損失測定(TG)、元素分析測定等により測定することができる。

【0181】
数平均分子量(Mn)は、重合時に溶液中に生成するフリーポリマーのMnがグラフト鎖のMnにほぼ等しく、重合時に溶液中に生成するフリーポリマーのMnを用いてもよい。

【0182】
基材がシリカの場合、フッ酸溶液を用いて、グラフト鎖をグラフト点から切り出した後、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により、Mn及びMw/Mnを決定することができる。なお、これらの値は、溶液中に生成するフリーポリマーの値とほぼ等しいことを確認している。

【0183】
日本国特開平11-263819号公報記載の方法、Nature, 425, 163 (2003)記載の方法等に従って測定することができる。

【0184】
具体的には、グラフトされた高分子鎖層の乾燥状態における厚みと高分子鎖の数平均分子量とをプロットしたグラフの傾き(例えば、日本国特開平11-263819号公報参照)、グラフトされた高分子鎖のグラフト量と高分子鎖の数平均分子量とをプロットしたグラフの傾きから、高分子鎖のグラフト密度を求めることができる。

【0185】
(1-5) 厚膜化CPBの占有面積率
厚膜化CPBは、基材表面の面積に対する占有面積率(表面占有率:ポリマー断面積当たりの占有率)で10%以上となるようなグラフト密度で形成されることが好ましく、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。

【0186】
グラフト密度は、グラフト鎖の数平均分子量(Mn)の絶対値、グラフトされたポリマー量、基材の表面積より算出することができる。

【0187】
また、厚膜化CPB層中の表面占有率は、ポリマーの伸びきり形態における繰り返し単位長さ、及びポリマーのバルク密度より断面積を求め、グラフト密度を掛けて算出することができる。

【0188】
表面占有率は、基材表面をグラフト点(1つ目のモノマー)が占める割合という意味になる。最密充填で100%となり、これ以上、グラフトすることはできない。

【0189】
(1-6) 厚膜化CPBの分子量及び分子量分布指数
厚膜化CPBを形成する高分子鎖の数平均分子量(Mn)は、所望の潤滑性を示す分子量が好ましい。

【0190】
厚膜化CPBを形成する高分子鎖の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~10,000,000程度、より好ましくは100,000~10,000,000程度である。

【0191】
分子量分布指数(PDI = Mw/Mn)は、所望の潤滑性を示す分子量分布指数(PDI)が好ましい。分子量分布指数(PDI)は1.5程度以下が好ましく、1.01~1.5程度がより好ましい。

【0192】
(1-7) 厚膜化CPBの厚膜化の程度
厚膜化CPBを形成する高分子鎖の厚膜化は、所望の潤滑性を示す長さが好ましい。

【0193】
厚膜化CPBを形成する高分子鎖の厚膜化は、500nm程度以上が好ましい。厚膜化CPBを形成する高分子鎖の厚膜化は、700nm程度以上(0.7μm以上)より好ましく、800nm程度以上が更に好ましく、1,000nm程度以上(1μm以上)が特に好ましい。

【0194】
高分子鎖の平均分子鎖長さは、例えば高分子鎖の数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定し、これらの測定結果から求めることができる。

【0195】
高分子鎖の数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、フッ化水素酸処理により基材から高分子鎖を切り出し、切り出した高分子鎖を用いてサイズ排除クロマトグラフィー法により測定する方法が挙げられる。

【0196】
或いは、重合時に生成するフリーポリマーが基材に導入された高分子鎖と等しい分子量を有すると仮定し、該フリーポリマーについてサイズ排除クロマトグラフィー法により、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定し、これをそのまま用いる方法を採用することもできる。

【0197】
厚膜化CPBの厚膜化の程度及び分子量分布指数の測定方法
厚膜化CPBは、高圧、イオン液体溶媒、又はそれらを組み合わせる等した条件の下、表面開始リビングラジカル重合により合成することができる。その際、重合溶液に、遊離開始剤を添加すると、これより、ポリマーブラシ構成鎖と同等の分子量及び分子量分布を有する遊離ポリマーを得ることができる。

【0198】
サイズ排除クロマトグラフィー法を用いて、この遊離ポリマーを分析し、数平均分子量及び分子量分布指数を決定することができる。

【0199】
遊離開始剤を含まずに重合する場合、必要に応じて、基板表面からポリマーブラシ構成鎖を切り出し、サイズ排除クロマトグラフィー法を用いて、その数平均分子量及び分子量分布指数を決定することができる。

【0200】
サイズ排除クロマトグラフィー分析では、入手可能な分子量既知の同種単分散の標準試料を用いた較正法、多角度光散乱検出器を用いた絶対分子量評価を行う。

【0201】
グラフト量の定量には、主に、エリプソメトリー法を用いる。表面グラフト層の乾燥膜厚、即ち、グラフト量と、上記の数平均分子量より、グラフト密度を算出することができる。

【0202】
(1-8) 厚膜化CPBに用いられる基材
用いられる基材としては、前述のグラフトフロム法、グラフトトウ法等による高分子鎖のグラフトに用いることができる基材が好ましい。例えば、有機材料、無機材料、金属材料等から適宜選択することができる。疎水性基材及び親水性基材を好適に用いることができる。

【0203】
基材として用いられる固体として、ポリウレタン系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリスチレン系材料、ポリオレフィン系材料、PMMA、PET、酢酸セルロース、シリカ、無機ガラス、紙、プラスチックラミネートフィルム、セラミックス(例、アルミナセラミックス、バイオセラミックス、ジルコニア-アルミナ複合セラミックス等の複合セラミックス等)等が好ましい。

【0204】
基材として用いられる固体として、金属(例、アルミニウム、亜鉛、銅、チタン等)、金属が蒸着された紙、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、多結晶シリコン、及びこれらの複合材料等が好ましい。

【0205】
基材として用いられる疎水性の有機材料として、例えば、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレンアルファオレフィン共重合体等)、シリコン重合体、アクリル重合体(例、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等)、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0206】
基材として用いられる疎水性の有機材料として、フルオロポリマー(例、ポリテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレン-プロピレン、ポリビニルフッ化物等)、ビニル重合体(例、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルケトン等)、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0207】
基材として用いられる疎水性の有機材料として、ビニルモノマー含有共重合体(例、ABS等)、天然及び合成ゴム(例、ラテックスゴム、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン重合体、ポリイソブチレンゴム、エチレン-プロピレンジエン共重合体、ポリイソブチレン-イソプレン等)、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0208】
基材として用いられる疎水性の有機材料として、ポリウレタン(例、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリシロキサンウレタン等)、ポリアミド(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11等)、ポリエステル、エポキシ重合体、セルロース、変性セルロース、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0209】
基材として用いられる親水性の有機材料として、親水性アクリル重合体(例、ポリアクリルアミド、ポリ-2-ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等)、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0210】
基材として用いられる親水性の有機材料として、親水性ビニル重合体(例、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン等)、ポリマレイン酸、ポリ-2-ヒドロキシエチルフマレート、無水マレイン酸、ポリビニルアルコール、及びこれらのコポリマー等が好ましい。

【0211】
基材は、例えばチューブ、シート、ファイバー、ストリップ、フィルム、板、箔、膜、ペレット、粉末、成型品(例、押出し成型品、鋳込み成型品等)等が好ましい。

【0212】
基材は、どのような形態または形状であってもよい。

【0213】
基材の材質として、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、PMMA、PET、酢酸セルロース、シリカ、無機ガラス、アルミニウム、銅、ケイ素、酸化ケイ素等が好ましい。

【0214】
本発明のSRT材料(潤滑材)をシール用途とする場合、前記基材の中でも、基材はゴム(オイルシール用途)、無機酸化物(メカニカルシール用途)等が好ましい。

【0215】
本発明のSRT材料(潤滑材)を軸受用途とする場合、前記基材の中でも、基材は金属(SUS、SUJ2、炭素鋼等)、樹脂(ポリエチレン等)が好ましい。

【0216】
本発明のSRT材料(潤滑材)をガイド(案内機構)用途とする場合、前記基材の中でも、基材は金属(SUS、SUJ2、炭素鋼等)、樹脂(ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフロロエチレン等)等が好ましい。

【0217】
本発明のSRT材料(潤滑材)を摺動部材に用いる場合、鋳鉄、鋼、ステンレス鋼等の鉄、鉄合金、アルミニウム、銅等の非鉄及び非鉄合金、更には、シリコンウエハ、ガラス、石英等の非金属等を用いることが好ましい。

【0218】
(1-9) 厚膜化CPBがグラフトされた表面を有するSRT材料(潤滑材)の作製
本発明のSRT材料(潤滑材)は、例えばシート状の基材の表面に高分子鎖をグラフトして作製することができる。得られたシート状のSRT材料(潤滑材)は、潤滑が必要な物品(例えば、マイクロマシン、人工関節等)等の、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部等)に接着、溶着等公知の方法により固定して用いることができる。

【0219】
SRT材料(潤滑材)は、潤滑が必要とされる物品等の潤滑が必要とされる場所の部材等を基材として、その表面に高分子鎖をグラフトして、潤滑が必要とされる場所の表面に作製してもよい。このように潤滑が必要とされる場所の表面にSRT材料(潤滑材)を作製するのが、SRT材料(潤滑材)を固定する工程が不要である点で好ましい。

【0220】
SRT材料(潤滑材)に用いられる高分子鎖がグラフトされた表面は、例えば、特開平11-263819号公報に記載の方法に準じて作製することもできる。

【0221】
(1-10) SRT材料(潤滑材)の摩擦係数(μ)
SRT材料(潤滑材)の摩擦係数(μ)は、0.1程度以下が好ましい。

【0222】
SRT材料の摩擦係数(μ)は0.01以下であることが好ましい。

【0223】
SRT材料(潤滑材)の摩擦係数(μ)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。

【0224】
SRT材料(潤滑材)をシリコンウエハ等の基材とシリカ粒子(半径R)等のプローブの表面に形成し、プローブをカンチレバーに接着し、良溶媒によって高分子鎖を膨潤させた状態で測定する。カンチレバーのせん断係数(G)、カンチレバーの幅(W)、カンチレバーの厚み(T)、カンチレバーの長さ(L)から、次式:
kL=GWT3/3L
により、カンチレバーのねじれバネ定数kLが算出される(Adv Colloid Interface Sci, 27, 189 (1987)参照)。

【0225】
垂直方向の力(FN、normal force)は次式:
FN=kNΔz
(式中、Δzはカンチレバーの垂直変位を表す。)
によって求めることができる。

【0226】
カンチレバーの角(ねじれ)変位(θL)は、プローブ(シリカ粒子)を、サンプル基質(シリコンウエハ)上で一定の垂直方向の力で負荷を加えた状態で、y方向に一定の速度で往復してスライドさせることにより測定することができる。

【0227】
水平方向の力(FL、lateral force)、すなわち摩擦力は、これらの測定値を用いて、次式:
FL=kLθL/R
によって求めることができ、得られた垂直方向の力(FN)と水平方向の力(FL、lateral force)との関係から、摩擦係数(μ)を求めることができる。

【0228】
SRT材料(潤滑材)の摩擦係数(μ)は、0.1程度以下が好ましく、0.01程度以下がより好ましく、10-3程度以下が更に好ましい。

【0229】
SRT材料の摩擦係数(μ)の測定方法
ボールオンディスク試験には、例えば、Bruker社製トライボ試験機UMT TriboLabを用いる。例として、曲率半径7.79 mmのガラスボールとガラス基板との、両方又は片方に、厚膜化CPBを付与する。これを、良溶媒中、荷重(Fn)0.1~40N、回転速度10~2000rpmで、摩擦力(Fs)を測定する。

【0230】
摩擦係数(μ)は、それらFsとFnの比(Fs/Fn)と定義される。

【0231】
SRT材料の耐久性の測定方法
厚膜化CPB(例:厚膜化PMMAブラシ(Mn=227万、PDI(Mw/Mn) = 1.45、Ld = 820 nm、σ = 0.25 鎖/nm2))同士をDEME-TFSI中、荷重1~10Nにて、距離約1200mを摺動する。

【0232】
本発明のSRT材料を用いると、母材ガラス基板の摩耗は、認められない。

【0233】
ボールオンディスク試験において、ボール側(常時摺動面)も評価する。

【0234】
厚膜化CPB剥離後のボール表面の顕微鏡写真を参考に、評価することができる。

【0235】
(1-11) SRT材料(潤滑材)の押し込み量及び圧縮弾性率
SRT材料(潤滑材)は、押し込み量が100nm程度以上、圧縮弾性率が1MPa程度以上であることが好ましい。

【0236】
本発明のSRT材料は、その発明の概念として、前記圧縮弾性率及び摩擦係数(μ)を満たす場合、必ずしも厚膜化CPBを含む必要が無い。

【0237】
SRT材料(潤滑材)の押し込み量は、AFMやナノインデンターを用いて測定することができる。

【0238】
SRT材料(潤滑材)の押し込み量は、100nm程度以上が好ましく、120nm程度以上がより好ましく、150nm程度以上が更に好ましい。

【0239】
SRT材料(潤滑材)の圧縮弾性率は、AFMやナノインデンターを用いて測定することができる。

【0240】
SRT材料(潤滑材)の圧縮弾性率は、0.1MPa程度以上が好ましく、1MPa程度以上がより好ましく、10MPa程度以上が更に好ましい。

【0241】
一般に、SRT材料(潤滑材)が軸受用途である場合に、面圧が高くなる(図6)。

【0242】
SRT材料(潤滑材)を軸受用途とする場合、圧縮弾性率は0.1MPa程度以上が好ましく、1MPa程度以上がより好ましく、10MPa程度以上が更に好ましい。

【0243】
SRT材料(潤滑材)をシール用途とする場合、圧縮弾性率は0.1MPa程度以上が好ましく、1MPa程度以上がより好ましく、10MPa程度以上が更に好ましい。

【0244】
SRT材料の押し込み量及び圧縮弾性率の測定方法
SRT材料の押し込み量及び圧縮弾性率の測定は、ナノインデンテーション法又は原子間力顕微鏡(AFM)コロイドプローブ法を用いる。

【0245】
ナノインデンテーション法では、例えば、Nanomechanics iMicro(センサ:inForce50)を用いる。

【0246】
例として、BK7基板上に形成した厚膜化CPB(例:厚膜化PMMAブラシ(Mn = 201万、PDI(Mw/Mn) = 1.26、Ld = 913 nm、σ = 0.33鎖/nm2、及びσ* = 0.18))に対して、DEME-TFSIを溶媒として、バーコビッチ圧子によるインデンテーション計測を行う。

【0247】
例として、BK7基板上に形成した厚膜化PMMAブラシに対して、測定モード:定ひずみ速度、ひずみ速度:毎秒0.2%、加振周波数:100 Hz、加振振幅:2 nm、及び表面検知閾値:50 N/mの条件で、圧縮弾性率を計測することができる。

【0248】
AFMコロイドプローブ法では、例えば、AFMカンチレバーの先端に、直径10μmのシリカプローブ粒子を固定し、JPK instruments社製AFM、或いはセイコーインスツルメント社製AFMを用いて、シリコン基板上に形成した厚膜化CPB(例:厚膜化PMMAブラシ)に対するフォースカーブ測定を行う。

【0249】
尚、基板表面からの距離を評価するために、シリコン基板上のポリマーブラシ層の一部を、スクラッチした境界近傍を観察し(AFMイメージング)、段差プロファイルを評価し、フォースカーブのオフセット補正を行う。

【0250】
例として、厚膜化CPB(例:厚膜化PMMAブラシ(Mn= 276万、PDI(Mw/Mn) = 1.15、Ld = 1245 nm、σ = 0.32鎖/nm2、及びσ*= 0.18))に対して、o-ジクロロベンゼンを溶媒として用い、ばね定数(0.57 N/m、3.3 N/m、51 N/m)の異なるカンチレバーを用い、それらの結果を結合して、広い荷重範囲にわたるフォールカーブを図に示す。

【0251】
本発明のSRT材料では、100nm以上の押し込み量が確保され、また、このフォースカーブより、圧縮弾性率を見積もることができる。

【0252】
圧縮弾性率は、フォースカーブから力距離曲線を描き、Hertz接触を仮定し、ヤング率を算出することができる。

【0253】
(1-12) SRT材料(潤滑材)を含む物品
本発明は、厚膜化CPBを形成する高分子鎖がグラフトされた表面を有するSRT材料(潤滑材)を含む物品にも関する。

【0254】
本発明のSRT材料は摺動機構用であることが好ましい。

【0255】
SRT材料(潤滑材)を含む物品として、軸受用途、シール用途及びガイド(案内機構)用途が好ましい。

【0256】
SRT材料(潤滑材)を含む物品は、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部等)の摺動面の両方に、本発明の潤滑材を有するのが好ましい。

【0257】
SRT材料(潤滑材)を含む物品は、例えばシート状の本発明のSRT材料(潤滑材)を、潤滑が必要な物品の、潤滑が必要とされる場所(例えば、摺動部等)に接着、溶着等、公知の方法により固定することによって製造することができる。

【0258】
また、潤滑が必要とされる物品の潤滑が必要とされる場所の部材を基材として、その表面に高分子鎖をグラフトして、潤滑が必要とされる場所の表面に本発明のSRT材料(潤滑材)を作製することによって製造することもできる。

【0259】
このように潤滑が必要とされる物品の潤滑が必要とされる場所の表面にSRT材料(潤滑材)を作製するのが、潤滑材を固定する工程が不要である点で好ましい。

【0260】
(1-13) SRT材料(潤滑材)に含まれる潤滑液
厚膜化CPBを形成する高分子鎖がグラフトされた表面を有するSRT材料(潤滑材)は、潤滑液(溶媒、液体物質)でグラフトされた高分子鎖を膨潤させることにより良好な潤滑性を示す。

【0261】
SRT材料(潤滑材)は、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされているため、その高分子鎖を潤滑液で膨潤させることで伸張され、好ましくは伸びきり鎖にも匹敵するほど高度に伸張される。

【0262】
SRT材料(潤滑材)は、その高分子鎖が潤滑液で膨潤されると、膨潤された高分子鎖層の濃厚溶液系ゆえの大きな浸透圧効果によって大きな荷重を支えることができるものと考えられる。また、接触領域において、局所濃度の増大の解消と(高伸張状態がゆえに得られる)大きなエントロピーゲインのために、グラフトされた高分子鎖は相互侵入せず、収縮して絡み合いを抑制することによって、低摩擦特性が発現すると考えられる。

【0263】
SRT材料(潤滑材)は、このように溶媒中で高分子鎖が伸張されることにより低摩擦特性を発現するので、高分子鎖を膨潤又は伸張させることができる潤滑液中で用いるのが好ましい。

【0264】
高分子鎖を膨潤又は伸張させることができる潤滑液としては、良溶媒が好ましい。

【0265】
良溶媒は、グラフトされた高分子鎖によって異なるので、高分子鎖に応じて適宜選択すればよい。

【0266】
PMMAの高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、トルエン等の非極性溶媒又は疎水性のイオン液体が好ましい。

【0267】
PHEMAの高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、メタノール等の極性溶媒が好ましい。

【0268】
親水性高分子鎖がグラフトされている場合には、良溶媒としては、水を含む水系溶媒が好ましい。

【0269】
SRT材料(潤滑材)は、基材上に形成された高分子鎖に、潤滑液(液体物質)を膨潤させることにより形成される層である。高分子鎖に膨潤させる液体物質としては、高分子グラフト鎖に対して膨潤性を示す化合物が好ましい。

【0270】
不揮発性、難燃性、耐熱性、電気化学的安定性等の観点から、高分子鎖との親和性が高い場合には(特に、高分子鎖が、イオン性の解離基を有するものである場合)、イオン液体が好ましい。

【0271】
イオン液体とは、イオン性液体又は常温溶融塩とも呼称される、イオン伝導性を有する低融点の塩であって、その多くは、カチオンとしての有機オニウムイオンと、アニオンとしての有機又は無機アニオンとを組み合わせることにより得られる比較低融点の特性を有するものを意味する。

【0272】
融点は、通常100℃以下、好ましくは室温(25℃)以下である。

【0273】
イオン液体としては、下記一般式(10)で示され、融点が50℃以下、好ましくは25℃以下であるものを用いることができる。

【0274】
【化4】
JP2017171071A1_000005t.gif

【0275】
(上記一般式(10)中、R3、R4、R5、及びR6は互いに同一若しくは異種の炭素数1~5のアルキル基、またはR’-O-(CH2)n-で表されるアルコキシアルキル基(R’はメチル基又はエチル基を示し、nは1~4の整数である。)を示し、これらR3、R4、R5及びR6のいずれか2個の基が環を形成していても構わない。

【0276】
但し、R3、R4、R5、及びR6の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。

【0277】
Xは窒素原子又はリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。)
炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。

【0278】
R’-O-(CH2)n-で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基又はエトキシメチル基、2-メトキシエチル基又は2-エトキシエチル基、3-メトキシプロピル基又は3-エトキシプロピル基、4-メトキシブチル基又は4-エトキシブチル基等が好ましい。

【0279】
R3、R4、R5及びR6のいずれか2個の基が環を形成している化合物としては、Xに窒素原子を採用した場合には、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウム塩等が好ましい。

【0280】
R3、R4、R5及びR6のいずれか2個の基が環を形成している化合物としては、Xにリン原子を採用した場合には、ペンタメチレンホスフィン(ホスホリナン)環等を有する4級ホスホニウム塩等が好ましい。

【0281】
置換基として、上記R’がメチル基であり、nが2の2-メトキシエチル基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩が好適である。

【0282】
置換基として、メチル基、2つのエチル基、及びアルコキシエチル基を有する下記一般式(11)で示される4級塩も好適に用いることができる。

【0283】
【化5】
JP2017171071A1_000006t.gif

【0284】
(上記一般式(11)中、R’はメチル基又はエチル基を示し、Xは窒素原子又はリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。

【0285】
また、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。)
一般式(10)及び(11)における一価のアニオンYとしては、特に限定されるものではない。

【0286】
一価のアニオンYとしては、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、AlCl4-、NbF6-、HSO4-、ClO4-、CH3SO3-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO2)2N-、Cl-、Br-、I-等のアニオンを用いることが好ましい。

【0287】
一価のアニオンYとしては、非水系有機溶媒中での解離度、安定性及び移動度等を考慮すると、特に、BF4-、PF6-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3-、又はCF3CO2-であることが好適である。

【0288】
上記一般式(10)及び(11)で示される4級塩のうち、好適に用いられる4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩の具体例としては、以下の化合物(12)~(20)が挙げられる(Meはメチル基、Etはエチル基を示す)。

【0289】
4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩としては、特に、低温特性等に優れた蓄電デバイスを得ることを考慮すると、下記式(12)又は(17)で示される4級アンモニウム塩を用いることがより好ましい。

【0290】
4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩としては、粘度が低く、そのため、摺動時の動摩擦係数をより低減できるという点から、下記式(17)で示される4級アンモニウム塩が特に好ましい。

【0291】
【化6】
JP2017171071A1_000007t.gif

【0292】
上記一般式(10)で表される化合物以外のイオン液体を用いても良い。

【0293】
SRT材料(潤滑材)は、基材上に形成された高分子鎖に、潤滑液(液体物質)を膨潤させることにより形成される層である。その高分子鎖に膨潤させる液体物質として、高分子グラフト鎖に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、特にイオン液体が好ましい。

【0294】
例えば、下記一般式(21)に示すイミダゾリウムイオンを含むイオン液体が好ましい。

【0295】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体及びその他の芳香族系カチオンを含むイオン液体を形成するカウンターアニオンとしては、上記一般式(10)、(11)に示す化合物と同様の一価のアニオンを挙げることができる。

【0296】
【化7】
JP2017171071A1_000008t.gif

【0297】
(上記一般式(21)中、R7は炭素数1~4のアルキル基または水素原子であり、特に炭素数1のメチル基が好ましい。

【0298】
また、R8は炭素数10以下のアルキル基(エーテル結合を含んでいてもよい)であり、好ましい例はエチル基である。

【0299】
R9、R10、及びR11は、夫々独立で、炭素数が1から20のアルキル基で酸素原子を含んでもよい。

【0300】
また、R9、R10、及びR11は、水素原子でもよい。)
下記式(22)~(27)に示すその他の芳香族系カチオンを含むイオン液体等が好ましい。

【0301】
【化8】
JP2017171071A1_000009t.gif

【0302】
本発明において、基材に形成された高分子鎖に、液体物質を膨潤させる方法としては、特に限定されないが、例えば、基材上に形成された高分子鎖に、液体物質を塗布して、その後、静置する方法や、高分子鎖を形成した基材を液状物質中に浸漬させる方法等が好ましい。

【0303】
SRT材料(潤滑材)は、高分子鎖が高いグラフト密度でグラフトされているので、低摩擦特性が発現する。

【0304】
SRT材料(潤滑材)は良溶媒中で低摩擦特性が発現するので、潤滑が必要とされる摺動面等の両方に、本発明のSRT材料(潤滑材)を固定又は作製し、そのSRT材料(潤滑材)にグラフトされた高分子鎖を良溶媒によって膨潤又は伸張させることによって、摺動面等を潤滑させることができる。

【0305】
(2) SRT材料
SRT材料は、圧縮弾性率が1MPa以上であり、摩擦係数(μ)が0.1以下である。

【0306】
SRT材料は、厚膜化CPB及びCPB効果を発現する成分からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含むことが好ましい。

【0307】
(2-1)SRT材料の圧縮弾性率及び摩擦係数(μ)
SRT材料は、圧縮弾性率が1MPa程度以上である。圧縮弾性率は10MPa程度以上がより好ましい。

【0308】
SRT材料は、摩擦係数(μ)が0.1以下であり、0.01程度以下が好ましい。

【0309】
本発明のSRT材料は、その発明の概念として、前記圧縮弾性率及び摩擦係数(μ)を満たす場合、必ずしも厚膜化CPBを含む必要が無い。

【0310】
SRT材料の圧縮弾性率及び摩擦係数(μ)は、前記厚膜化CPBを含むSRT材料(潤滑材)を採用することができる。

【0311】
(2-2)SRT材料の成分
SRT材料は、厚膜化CPB及びCPB効果を発現する成分からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を含むことが好ましい
厚膜化CPBは、前記SRT材料(潤滑材)に含まれる厚膜化CPBを採用することができる。

【0312】
CPB効果を発現する成分は、ボトルブラシ、CPB担持複合微粒子、CPB担持ファイバー等が好ましい。

【0313】
ボトルブラシは、1本の主鎖(幹)からグラフト側鎖(枝)を伸ばした分子である櫛形ポリマーの中で、特に高密度くし型ポリマーは、側鎖の排除体積効果により主鎖が伸長したシリンダー型形態をとるため、ボトルブラシ(形状が瓶やフラスコの洗浄に使われるブラシに似ていることから)と呼ばれる。

【0314】
ボトルブラシの合成は、幹ポリマーに側鎖を導入するGrafting-to法、マクロ開始剤(重合活性点を有する幹ポリマー)からモノマーを重合するGrafting-from法、マクロモノマー(片末端に重合性官能基を有するポリマー)を重合するGrafting-through法、に大別される。それら合成には、リビングアニオン重合、開環メタセシス重合(ROMP)、或いは汎用性の高いリビングラジカル重合法(LRP)が有用である(図12)。

【0315】
厚膜化CPBを形成する高分子鎖が、主鎖部分のポリマーから側鎖であるグラフト鎖が延びた構造の、ボトルブラシを形成する場合を説明する。

【0316】
グラフトポリマーを主鎖が中心軸である円柱と捉えた場合(図12)、グラフト効率及びグラフト鎖の長さが長くなるにつれ、グラフトポリマーの側部表面におけるグラフト鎖の密度は低下し、グラフト鎖の構造上の自由度が高くなる。

【0317】
そのグラフトポリマーの側部表面とは、主鎖を中心軸とし、グラフト鎖を直線上に伸ばした状態でグラフト鎖先端を結ぶことでできる円を外周とする円柱としてグラフトポリマーを捉えた場合の円柱の側面である。

【0318】
その円とは、図13で、破線で描かれた円である。

【0319】
側部表面における自由度が高いと、グラフト鎖は自由に折り畳まれ得る。

【0320】
図12の上図では、グラフト鎖が短いため、グラフトポリマーの側部表面でもグラフト鎖の密度が密である。図12の下図では、グラフト鎖が長く、グラフトポリマーの側部表面ではグラフト鎖の密度が非常に低くなっている。

【0321】
ボトルブラシの表面占有率(σ*)は、下記式(1)で表される。

【0322】
グラフト鎖も一定の体積を持っており、夫々のグラフト鎖も円柱と捉えることができる(図13)。

【0323】
グラフト密度はグラフトポリマー側部表面の単位面積におけるグラフト鎖の数を示すため、表面占有率は、グラフト鎖を主鎖から垂直方向に直線上に伸ばした状態で、グラフトポリマー側部表面に対して、グラフト鎖の先端部が占める割合を表す値である。

【0324】
表面占有率は、0から1の値を示し、数値が大きくなる程、グラフト鎖の先端部が側部表面に対して占める割合は大きくなる。そのため、表面占有率は、グラフト鎖の自由度を反映する数値であると考えられる。

【0325】
表面占有率が高いことにより、グラフト鎖の構造上の自由度が制限され、グラフト鎖が主鎖に対して、略垂直方向に延びた状態を維持できると考えられる。

【0326】
グラフト鎖が主鎖に対して、略垂直方向に延びることで、グラフトポリマーの外表側面はグラフト鎖が主鎖に対して垂直に立った構造を取りやすくなり、その構造に特有の性質を示すと推測される。

【0327】
表面占有率(σ*)とは、下記式(1):

【0328】
【化9】
JP2017171071A1_000010t.gif

【0329】
より求められる有効グラフト密度[鎖/nm2]を示す。

【0330】
式(1)中、σは下記式(2):

【0331】
【化10】
JP2017171071A1_000011t.gif

【0332】
(式(2)中、αは、グラフト鎖部分の繰り返し単位の長さである)
より求められる。

【0333】
グラフト鎖部分の単量体1個当たりの体積(v0[nm3])は、下記式(3):

【0334】
【化11】
JP2017171071A1_000012t.gif

【0335】
により導き出される数値である。

【0336】
式(1)について、グラフト鎖部分はビニル系単量体から構成される場合には、グラフト鎖部分の繰返し単位の長さは、0.25nmとなる。

【0337】
そのため、より具体的には、式(1’):

【0338】
【化12】
JP2017171071A1_000013t.gif

【0339】
により導き出される数値である。

【0340】
式(1’)中、σは下記式(2’):

【0341】
【化13】
JP2017171071A1_000014t.gif

【0342】
より求められる。

【0343】
CPB効果を発現するには、表面占有率が0.1以上であることが好ましい。

【0344】
表面占有率の上限は、特に限定されない。表面占有率は、通常、1.0以下である。

【0345】
表面占有率は、例えば、0.1~0.6程度が好ましく、0.1~0.3程度がより好ましい。

【0346】
表面占有率は、例えば、0.3~0.6程度が好ましい。

【0347】
表面占有率は、例えば、0.6~1.0程度が好ましい。

【0348】
CPB担持複合微粒子は、CPBが微粒子表面に結合して形成されるものが好ましい。

【0349】
CPB担持複合微粒子は、重合性官能基を有するモノマーを原料とする高分子グラフト鎖(CPB)が微粒子の表面上に結合基を介して超高密度で結合している(ブラシ状)。

【0350】
微粒子表面上のグラフト鎖の表面占有率は、数%以上の高密度であることが好ましく、より好ましくは5~50%であり、更により好ましくは10~40%である。このような範囲のグラフト密度とすることにより、グラフト鎖が異方的な形態(高伸張形態)をとる。

【0351】
CPB担持複合微粒子の微粒子は、無機物質及び有機物質が好ましい。

【0352】
例えば、シリカ等のケイ素酸化物;
Au、Ag、Pt、Pd等の貴金属;
Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、Cu、V、Sb、In、Hf、Y、Ce、Sc、La、Eu、Ni、Co、Fe等の遷移金属、それらの酸化物又は窒化物等の無機物質;或いは
ポリマー等の有機物質が好ましい。

【0353】
微粒子は、CPB層を備える複合微粒子において、コアとなる部分である。コアとなる部分である微粒子の平均粒径は、当該微粒子表面から超高密度でグラフト重合させるためには、5nm~30μmが好ましく、10nm~10μmがより好ましく、10nm~1μmが更に好ましい。

【0354】
複合微粒子の平均粒径は、10nm~30μmが好ましく、10nm~20μmがより好ましく、15nm~10μmが更に好ましく、20nm~3μmが特に好ましい。

【0355】
当該複合微粒子は、粒子径のばらつきが20%以下である「粒径分布の狭い複合微粒子」であることが好ましい。

【0356】
CPB担持ファイバーは、ファイバー表面にCPBが付与されたもの、あるいはファイバーとボトルブラシやCPB担持複合微粒子との複合化されたもの、等を指す。

【0357】
ファイバーには、コットン、再生セルロース、PET、PVA等の市販繊維、エレクトロスピニングによるナノファイバー、あるいは天然から入手できるセルロースナノファイバーやバクテリアセルロース等を指す。

【0358】
(3) 潤滑材及びSRT材料の産業上の利用可能性
ポリマーブラシ(Polymer brush)は、あらゆる表面の特性制御に有用な方法として、注目されている。

【0359】
近年の表面開始リビングラジカル重合(surface-initiated living radical polymerization (SI-LRP))の開発により、あらゆる固体表面上に高いグラフト密度で精密高分子の合成が可能である。

【0360】
このグラフト密度は、典型的な準希薄ポリマーブラシ(typical semi-dilute polymer brush (SDPB))の密度より1桁以上大きく、CPBの域に達する。

【0361】
[1] Tsujii, Y., Ohno, K., Yamamoto, S., Goto, A. and Fukuda, T., “Structure and Properties of High- Density Polymer Brushes Prepared by Surface- Initiated Living Radical Polymerization,” Adv. Polym. Sci., 197, 2006, 1-45.
これまで、適切な溶剤中で膨潤されたCPBは、優れた潤滑性、圧縮の程度に依存しない超低摩擦性(compression-independent ultra-low frictional force)を示し、よって10-4という低い摩擦係数(frictional coefficient、(μ))を与える。

【0362】
[2] Tsujii, Y., Nomura, A., Okayasu, K., Gao, W., Ohno, K. and Fukuda, T., “AFM studes on microtribology of concentrated polymer brushes in solvents,” J. Phys. Conf. Ser., 184, 2009, 012031.
しかしながら、従来のLRPsで合成されたCPBの厚みは、ラジカル停止反応等のために100nm程度未満に限定され、時折マイクロメーターサイズの硬い粒子が混入すると、潤滑材においてアブレシブ摩耗(abrasive wear)の原因となることがある。

【0363】
後述する実施例では、原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization (ATRP))を用いて、上限500 MPaでの高圧下及び/又はイオン液体溶媒中で、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の濃厚ポリマーブラシ(CPB)を合成した。これは厚膜化CPBである。

【0364】
高圧下において、合成されたPMMAの厚膜化CPBの厚みは、マイクロメーターレベルにまで達することに成功した。これは、従来のATRPでは、実現できなかったレベルである。原子間力顕微鏡(atomic force microscopic)やトライボ試験機(tribometer)を用いて、PMMAのCPB厚膜化フィルムにおける潤滑メカニズムを、マイクロスケール及びマクロスケールの両方で測定した。

【0365】
PMMAのCPB厚膜化フィルムについて、両ケールで得られた摩擦係数(friction coefficient)データは、境界的及び流体力学的潤滑(boundary and hydrodynamic lubrication)を示し、超低摩擦特性(ultralow frictional property)を示した。
【実施例】
【0366】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0367】
本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0368】
<実施例>
今回、高圧下で原子移動ラジカル重合(ATRP、LRPsの一方法)を行い、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のCPBを合成し、CPBの厚みをマイクロメーターレベルにまで劇的に厚くすることができた(厚膜化CPB)。
【実施例】
【0369】
ミクロスケール及びマクロスケールでの潤滑メカニズムを観察するため、合成されたPMMAブラシ(厚膜化PMMA-CPB)間でずり速度(せん断速度、shear velocity)として働く摩擦力及びその摩擦係数(μ)を原子間力顕微鏡(AFM)及びトライボ試験機を用いて計測した。
【実施例】
【0370】
実験内容
(1) PMMAブラシ(厚膜化CPB)の合成
メチルメタクリレート(MMA)のATRP用反応液を下記文献に記載の方法で作成した。シリコン基板(silicon wafer)及びガラスディスク(glass discs)上で、表面開始リビングラジカル重合(SI-ATRP)を60°C、500MPaで行った。
【実施例】
【0371】
[3] Arita, T., Kayama, Y., Ohno, K., Tsujii, Y. and Fukuda, T., “High-pressure atom transfer radical polymerization of methyl methacrylate for well- defined ultrahigh molecular-weight polymers,” Polymer, 49, 2008, 2426-2429.
重合終了後、サンプルを取り出して、ゲル浸透クロマトグラフィー及び偏光解析法(ellipsometry)により、分子量とCPB層の乾燥膜厚(グラフト量)を分析した。
【実施例】
【0372】
具体的には、テフロン製耐圧容器に、メチルメタクリレート(以下MMA)、エチル 2-ブロモ-2-メチルプロピオネート(以下EBIB)、臭化銅(I)(以下Cu(I)Br)、臭化銅(II)(以下Cu(II)Br2)、及び4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル(以下dNbipy)を混合して、(2-ブロモイソブチロキシ)ヘキシルトリエトキシシラン (以下BHE)が表面に固定化されたシリコン基板、或いはガラスディスク存在下、高圧反応装置(HPS-700、シンコーポレーション)を用いて60℃、500MPaでSI-ATRPを行った(図14)。
【実施例】
【0373】
所定時間後に、上記反応溶液から基板を取り出し、テトラヒドロフラン(以下THF)で超音波洗浄し、乾燥させて、基材表面に高分子グラフト鎖が導入されたガラスディスクを得た。
【実施例】
【0374】
(2) 摩擦測定
シリコン基板及びシリカ粒子(半径:5 μm)上で合成されたPMMAのCPBを用いて、そのミクロスケールの摩擦特性を、原子間力顕微鏡(AFM)コロイドプローブ法で測定した。ガラスディスク及びレンズ(直径:10 mm、曲率半径: 7.79 mm)上にグラフトされた同様のサンプルを用いて、そのマクロスケールの摩擦特性を、トライボ試験機を用いて測定した 。
【実施例】
【0375】
(3)圧縮弾性率測定
ナノインデンテーション法、或いはAFMコロイドプローブ法により圧縮弾性率を求めた。
【実施例】
【0376】
ガラスディスク上に形成した厚膜化PMMAブラシ(Mn = 201万、PDI(Mw/Mn) = 1.26、Ld = 913 nm、σ = 0.33鎖/nm2、及びσ* = 0.18)に対して、DEME-TFSIを溶媒として、バーコビッチ圧子によるインデンテーション計測を、Nanomechanics iMicro(センサ:inForce50)を用い行った。
【実施例】
【0377】
測定条件の詳細を以下に記す。
【実施例】
【0378】
測定モード:定ひずみ速度
ひずみ速度:毎秒0.2%
加振周波数:100 Hz
加振振幅:2 nm
表面検知閾値:50 N/m
AFMコロイドプローブ法では、AFMカンチレバーの先端に、直径10μmのシリカプローブ粒子を固定し、JPK instruments社製AFM、或いはセイコーインスツルメント社製AFMを用いて、シリコン基板上に形成した厚膜化CPBs(例:厚膜化PMMAブラシ)に対するフォースカーブ測定を行った。
【実施例】
【0379】
具体的には、シリコン基板上に形成した厚膜化PMMAブラシ(Mn = 276万、PDI(Mw/Mn) = 1.15、Ld = 1245 nm、σ = 0.32鎖/nm2、及びσ*=0.18)に対して、o-ジクロロベンゼンを溶媒として用い、ばね定数(0.57 N/m、3.3 N/m、51 N/m)の異なるカンチレバーを用い、JPK instruments社製AFMにて、フォールカーブを測定した。
【実施例】
【0380】
カンチレバーの変位に対する力 F(N)、及びその斥力/コロイド半径 F/R (N/m)を得た。
【実施例】
【0381】
圧縮弾性率(ヤング率)EはフォースカーブからHertz接触を仮定して算出した。
【実施例】
【0382】
以下の式において、CPBの弾性率Eは、押し込み距離δ、ポアソン比ν、コロイド半径R、そして力Fから算出した。
【実施例】
【0383】
【化14】
JP2017171071A1_000015t.gif
【実施例】
【0384】
なお、ポアソン比は0.5とした。
【実施例】
【0385】
平衡膨潤膜厚(Le)を評価するために、シリコン基板上のポリマーブラシ層の一部を、スクラッチした境界近傍を観察し(AFMイメージング)、段差プロファイルを評価することで、フォースカーブのオフセット補正を行った。
【実施例】
【0386】
その際、ばね定数0.57 N/mのカンチレバーを用いた。
【実施例】
【0387】
(4) 結果と考察
PMMAブラシは、Cu(I)Br及びCu(II)Br2錯体の存在下、60℃、500MPaの高圧でSI-ATRPを行うことにより合成された。
【実施例】
【0388】
図14(Fig.1)は、「PMMAブラシのフィルムの乾燥厚みLd」と「フリーPMMAの平均分子量Mn」をプロットしたものである。フリーPMMAは、シリコンウェーハと同時に、遊離基開始剤(free initiator)により合成されたPMMAである。
【実施例】
【0389】
図14(Fig.1)では、[EBIB]0=0.047mM、[Cu(I)Br]0+[Cu(II)Br2]0=16.85mMである。
【実施例】
【0390】
図14(Fig.1)では、LdとMnとの間で、狭い分布と直線相関が表れ、重合が制御されていることが確認できる。Ldの最大値は2 μmに達した。
【実施例】
【0391】
Cu(II)Br2触媒の配合を増加させるにつれ、PMMAブラシのグラフト密度(σ)で最高値0.35(鎖/nm2)を表した。
【実施例】
【0392】
更に、グラフトPMMAのMnを、シリコン基板から単離するカットオフ実験(“cut-off” experiment)により、その特徴を調べた。
【実施例】
【0393】
分子量に関して、カットオフ実験では、フリーPMMAとグラフトPMMA間で同様の数値が得られた。
【実施例】
【0394】
これらの結果は、マイクロメーターレベルの厚みを持つPMMAのCPBの合成が良好に進んだことを示す。
【実施例】
【0395】
また、表1に示す条件で重合することでも、厚膜化CPBsを得ることが出来る。
【実施例】
【0396】
固定化開始剤として、BHEに換えて、(2-ブロモイソブチリロキシ)プロピルトリエトキシシラン(以下BPE)、(2-ブロモイソブチリロキシ)プロピルトリメトキシシラン (以下BPM)等を使うことができる(表1、Run 1)。
【実施例】
【0397】
また、圧力を400MPaに減じ、アニソール等の溶媒を添加した溶液重合を適用したとしても、類似の特性を有する厚膜化CPBsを得ることが出来る(表1、Run 2)。
【実施例】
【0398】
MMAの代わりに、ヘキシルメタクリレート(以下HMA、)、ラウリルメタクリレート(以下LMA)、合成ラウリルメタクリレート(C12-C13)(以下SLMA、NOF社製ブレンマーSLMA-S)等のモノマーを用いることで、それに対応するグラフト鎖を得ることが出来る(表1、Run 3 及び4)。
【実施例】
【0399】
遊離の低分子開始剤であるEBIBを添加しなくとも重合することができる。例えば、重合時間を長く設定することで、5μm近い厚膜化を達成出来る(表1、Run 5)。
【実施例】
【0400】
イオン液体を溶媒に用いたATRP によっても高膜厚を得ることが出来る。例えば、イオン液体DEME-TFSI(N,N-diethyl N-(2-methoxyethyl)-N-methylammonium bis (trifluoromethyl sulfonylimide))を溶媒とし、塩化銅(I)(以下Cu(I)Cl)、塩化銅(II)(以下Cu(II)Cl2)、100MPaの圧力下、表面開始ATRP法を行うことでも厚膜化CPBsが得ることが出来る(表1、Run 6)。
【実施例】
【0401】
更に、イオン液体を溶媒に用いたATRP において、重合時間を延長する、及び遊離の低分子開始剤を添加しない、といった条件では、更なる高膜厚が期待できる。例えば、イオン液体BMI-PF6 (1-n-butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)を溶媒とし、常圧下、表面開始ATRP法を行うことでも厚膜化CPBsが得られる(表1、Run 7及び8)。
【実施例】
【0402】
同様に、イオン液体中、イオン液体型モノマーを表面開始ATRPすることでも、厚膜化CPBsを得られる。例えば3-((3-(トリエトキシシリル)プロピル)チオ)プロピル-2-ブロモ-2-メチルプロパネート(以下BPTPE)を固定化開始剤、イオン液体DEME-TFSIを溶媒とし、イオン液体モノマーDEMM-TFSI(N,N-diethyl-N- (2-methacryloylethyl) -N-methylammonium bis (trifluoromethyl sulfonyl) imide、CuCl、CuCl2、2,2-ビピリジン(以下bpy)、常圧下で表面開始ATRP法を行うことでも厚膜化CPBsが得られる(表1、Run 9)。
【実施例】
【0403】
重合溶液に二架橋モノマーを添加することで、架橋ブラシが得られる。例えば、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(以下EGDMA)を添加し、高圧表面開始ATRPに供することで、厚膜化架橋CPBsが得られる(表1、Run 10)。この際、遊離の低分子開始剤を添加しないことで、系全体のゲル化を防ぐことができる。得られた架橋CPBをフッ化水素酸で基板から遊離させ、その溶解性を調べたところ、いずれの良溶媒にも不溶であり、架橋の進行が確認された。
【実施例】
【0404】
【表1】
JP2017171071A1_000016t.gif
【実施例】
【0405】
合成されたPMMA ブラシ(厚みLd=950 nm、グラフト密度σ=0.3)の摩擦学的性質(tribological property)は、摩擦力及びその摩擦係数(μ)をミクロスケール及びマクロスケールの両方で、原子間力顕微鏡(AFM)及びトライボ試験機(tribometer)を用いて計測した。
【実施例】
【0406】
ミクロスケールの測定では、図15(a)(Fig.2(a))は、摩擦係数(μ)とFn=20nNのトルエン中でのPMMAブラシのずり速度(shear velocity)(v)をプロットしたものである。図15(a)のデータは、ずり速度(v)の働きによって、境界潤滑及び流体力学的潤滑(boundary lubrication and hydrodynamic lubrication)の2つの領域に分類される。
【実施例】
【0407】
境界潤滑領域(boundary lubrication regime)では、ほぼ同じプロットにおいて、摩擦係数(μ)はずり速度(v)非依存的であった。この領域では、10-4レベルの超低摩擦係数(μ)が観察された。
【実施例】
【0408】
一方、高ずり速度(v)領域(regime of high shear rate)(v>30μm/s)では、ずり速度(v)は摩擦係数(μ)に依存的であり(相関性が有り)、これは流体潤滑(hydrodynamic lubrication)の特徴として知られている。
【実施例】
【0409】
マクロスケールでの計測では、ガラスレンズは回転ディスクへの接触という負荷状態に供された。図15(b)(Fig.2(b))は、摩擦係数(μ)とFnが0.1-4NでのDEME-TFSI(N,N- diethyl- N- (2-methoxyethyl)- N- methylammonium bis (trifluoro methylsulphonyl- imide)、イオン液体溶媒の一種)中での、PMMAブラシの摩擦係数(μ)とv/Fnをプロットしたものである。
【実施例】
【0410】
図15(b)(Fig.2(b))においても、同様の境界潤滑及び流体力学的潤滑領域(boundary lubrication and hydrodynamic lubrication regimes)が観察された。マクロスケール試験においても、境界潤滑領域(boundary lubrication regime)の摩擦係数(μ)は10-3レベルと、非常に小さいレベルであった。
【実施例】
【0411】
トライボ特性(tribological property)と厚みとの関係が詳細に示された。
【実施例】
【0412】
(5) ストライベック曲線に基づく考察
図16に、ストライベック曲線を取得するためのトライボ試験機(Bruker UMT TriboLab)によるボールオンディスク試験の模式図を示す。
【実施例】
【0413】
図17に、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのストライベック曲線(荷重:0.1-4N)を示す。ブラシなしの場合に比べて、高荷重/低速度領域で、摩擦係数の大幅な低下(流体潤滑領域の拡大)が認められる。
【実施例】
【0414】
図18に、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのストライベック曲線(高荷重条件)を示す。よい高い荷重領域では、膨潤したCPB層の高い粘性ゆえにストライベック曲線に肩があることが判明した。これは、摺動機構において振動等の外部刺激が発生した際、母材同士のやきつき等の問題を回避する安全層(バッファー層)として機能することを意味する。柔軟性と強靭性を併せ持つSRT材料の特徴の一つである。
【実施例】
【0415】
図19に、イオン液体(DEME-TFSI)中におけるPDEMM-TFSI(イオン液体型)ブラシのストライベック曲線(荷重:5N)を示す。境界潤滑領域において、10-3程度の低い摩擦係数を有することがわかる。
【実施例】
【0416】
図20に、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜PMMAブラシ及び厚膜PDEMM-TFSI(イオン液体型)ブラシのストライベック曲線のデータ比較を示す。DEME-TFSIは、いずれのブラシ種に対しても良溶媒であり、共通のストライベック曲線となることを示唆する。すなわち、低荷重・高速度域では、同等の流体潤滑特性を、高荷重・低速度域では、SRT材料の一つの特徴としてバッファー層としての機能にも対応して、荷重に依存する境界潤滑特性を示すと理解される。
【実施例】
【0417】
図21に、工業用潤滑油の一種であるポリオールエステル(POE)系潤滑油(3種類:直鎖型及び分岐型)における厚膜化ポリ(合成ラウリルメタクリレート)(PSLMA)(親油性)ブラシのストライベック曲線(荷重:0.1N)を示す。潤滑油として用いられるPOE系に対しても、適切なブラシ種を選定することにより、安定的な流体潤滑が達成された。
【実施例】
【0418】
(6) 圧縮弾性率に基づく考察
図22に、ナノインデンテーション法により得た、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシの圧縮弾性率の計測結果を示す。
【実施例】
【0419】
前記「SRT材料の押し込み量及び圧縮弾性率の測定方法」で説明した「厚膜化PMMAブラシ」を、前記方法で2回計測した結果である。
【実施例】
【0420】
ブラシ表面から深さ約800nmまで、圧縮弾性率はほぼ一定値(約200MPa)を示している。尚、深さ約800nm以上では、硬い基材の影響を受けて、圧縮弾性率は急激に上昇している。
【実施例】
【0421】
図23に、原子間力顕微鏡コロイドプローブ法により得た、イオン液体(DEME-TFSI)中における厚膜化PMMAブラシのフォースカーブ試験結果を示す。本測定において、平均膨潤膜厚Leから最大10%(460 nm)押し込まれていることが分かる。
【実施例】
【0422】
押し込み深さの増加につれ、圧縮弾性率が向上した。膨潤した厚膜PMMA-CPBは押し込み深さが100, 200, 300, 400 nmの時に、それぞれE=0.049、0.44, 1.5, 3.7 MPaの値を示した。
【実施例】
【0423】
更に厚膜化PMMAブラシ(Mn = 165万、PDI(Mw/Mn) = 1.27、Ld = 730 nm、σ = 0.31 鎖/nm2、及びσ*=0.17)に対して、o-ジクロロベンゼン、DEME-TFSI、MEMP-TFSIを溶媒として用い、半径5μmのシリカコロイドをチップ先端に付与したばね定数(0.15 N/m)のカンチレバーを用い、フォールカーブ測定に供した。
【実施例】
【0424】
その結果、いずれの溶媒においても、100nm以上に押し込まれることを確認した。
【実施例】
【0425】
同様に、厚膜化PSLMAブラシ(Mn = 364万、PDI(Mw/Mn) = 1.21、Ld = 1,000 nm、σ = 0.15 鎖/nm2、及びσ*=0.28)に対して、ヘキサデカン、ポリαオレフィン(PAO-05)を溶媒として用い、半径5μmのシリカコロイドをチップ先端に付与したばね定数(0.15 N/m)のカンチレバーを用い、それらフォールカーブに供した。
【実施例】
【0426】
その結果、いずれも100nm以上に押し込まれることを確認した。
【実施例】
【0427】
(7) 膨潤度に対する架橋剤濃度に基づく考察
架橋ブラシは、架橋剤(ジビニルモノマー)を添加して表面開始ATRP法により合成した。重合にあたり、架橋剤添加による重合阻害は起こっていないことを確認した。
【実施例】
【0428】
得られた架橋ブラシについて、常圧条件では数十 nm程度の膜厚であったのに対して、高圧下では膜厚が大幅に増大した。
【実施例】
【0429】
良溶媒(例えば、o-ジクロロベンゼン)中、AFMコロイドプローブ法により、ポリマーブラシ層の膨潤度を測定した。
【実施例】
【0430】
図24に、架橋ブラシの膨潤度に対する架橋剤濃度の影響を示す。添加架橋剤濃度の増加と共に、膨潤度が低下しており、有効に架橋が形成されたことを示唆する。モノマーに対して1 mol%のジビニルモノマーを添加することにより、ポリマーブラシ層は、基板表面から切り出しても、良溶媒には溶解せず、十分に有効な架橋が形成されていることが確認された。
【実施例】
【0431】
(8) 結論
高圧下において、ATRPを採用することにより、非常に厚いPMMAのCPB(厚膜化CPB)を合成することに成功した。合成されたPMMAブラシ(厚膜化PMMA-CPB)の厚みは、マイクロメーターレベルにまで達した。
【実施例】
【0432】
マイクロスケール及びマクロスケールでの摩擦特性(friction property)が計測され、両スケールにおいて超低摩擦係数(ultra-low frictional coefficient)(μ≦10-3)が観察された。
【実施例】
【0433】
ATRPを用いて作製した厚膜化CPBはマクロ系においても、つまり様々な機械要素に影響される実用的な潤滑システムにおいても、有効に機能する。
【実施例】
【0434】
(9) SRT材料(潤滑材)の有用性
本発明の厚膜化CPBを含むSRT材料(潤滑材)は、軸受用途、シール用途やガイド(案内機構)用途として、SRT材料を提供することができる。この厚膜化CPBを含む技術は、柔軟性(押し込み量及び圧縮弾性率が大きい)と超低摩擦性(摩擦係数が小さい)とを備えた摺動部材に繋がる(図2)。
【実施例】
【0435】
本発明は、高圧LRP法をCPB合成に適用することで、CPBの厚膜化(膜厚5μm程度)を達成した。本発明により、マクロ計測による、潤滑面の摩擦係数に及ぼす潤滑材の粘度、平均速度及び垂直荷重の影響を表すCPBのストライベック曲線を得ることができ、これは潤滑機構と関連し、機械設計の基礎となる。
【実施例】
【0436】
本発明の厚膜化CPBは、SRT材料(潤滑材や摺動部材)として社会実装が可能である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
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(In Japanese)【図12】
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(In Japanese)【図13】
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(In Japanese)【図14】
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(In Japanese)【図15】
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(In Japanese)【図16】
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(In Japanese)【図17】
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(In Japanese)【図18】
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(In Japanese)【図19】
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(In Japanese)【図20】
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(In Japanese)【図21】
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(In Japanese)【図22】
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(In Japanese)【図23】
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(In Japanese)【図24】
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