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明細書 :発泡樹脂成形品の製造方法、該方法に使用される熱可塑性樹脂組成物および発泡樹脂成形品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-171871 (P2019-171871A)
公開日 令和元年10月10日(2019.10.10)
発明の名称または考案の名称 発泡樹脂成形品の製造方法、該方法に使用される熱可塑性樹脂組成物および発泡樹脂成形品
国際特許分類 B29C  44/00        (2006.01)
B29C  45/00        (2006.01)
FI B29C 44/00 D
B29C 45/00
請求項の数または発明の数 29
出願形態 OL
全頁数 32
出願番号 特願2019-064006 (P2019-064006)
出願日 平成31年3月28日(2019.3.28)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
優先権出願番号 2018062106
優先日 平成30年3月28日(2018.3.28)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】大嶋 正裕
【氏名】小林 めぐみ
【氏名】金子 満晴
【氏名】東中川 圭介
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100132263、【弁理士】、【氏名又は名称】江間 晴彦
審査請求 未請求
テーマコード 4F206
4F214
Fターム 4F206AB02
4F206AB03
4F206AH26
4F206AH42
4F206JA04
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JM13
4F206JN25
4F206JN33
4F206JQ81
4F214AB02
4F214AB03
4F214AH26
4F214AH42
4F214UA08
4F214UB01
4F214UD31
4F214UL13
4F214UL33
4F214UM81
4F214UM90
4F214UW01
要約 【課題】成形ウィンドウ幅がより十分に広い、発泡樹脂成形品の製造方法、当該方法に使用される熱可塑性樹脂組成物および当該方法により製造された発泡樹脂成形品を提供すること。
【解決手段】発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡および繊維化させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法。上記の発泡樹脂成形品の製造方法において使用される、熱可塑性樹脂組成物。発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる発泡樹脂成形品であって、内部において繊維化されている、発泡樹脂成形品。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡および繊維化させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記歪硬化剤は、溶融物の延伸歪みの増加に伴い、歪み抵抗が増加する歪硬化性を前記マトリクス用熱可塑性樹脂に付与する物質である、請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記歪硬化剤は、前記歪硬化性を前記マトリクス用熱可塑性樹脂に付与するとともに、結晶化ピーク温度を3℃以上、上昇させる物質である、請求項1または2に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記歪硬化剤は、長鎖分岐型ポリプロピレン、セルロースナノファイバー、フッ素含有ポリマーおよびアイオノマーからなる群から選択される1種以上の物質である、請求項1~3のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記歪硬化剤の含有量は前記マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1~100重量部である、請求項1~4のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、3~200g/分(230℃)のメルトフローレートを有する、請求項1~5のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、冷却速度10℃/分での結晶化温度Tcpsを90~210℃に有するポリマーである、請求項1~6のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤をさらに含有する、請求項1~7のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
前記結晶核剤はソルビトール系化合物である、請求項8に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
前記結晶核剤の含有量は前記マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01~2重量部である、請求項8または9に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、前記金型内に射出した後、可動型をコアバックさせる、請求項1~10のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物の冷却速度20℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、前記コアバックを、前記熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf-20℃~Tccf+20℃であるときに開始し、これにより発泡樹脂成形品の内部を発泡とともに繊維化させる、請求項1~11のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の冷却速度10℃/分での結晶化温度Tccsにおいて1×10~5×10Paの貯蔵弾性率を有する、請求項1~12のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
前記コアバックの開始時において金型内の熱可塑性樹脂組成物中のセル径が30μm以下である、請求項1~13のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項15】
前記発泡を2~8倍の発泡倍率で行う、請求項1~14のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項16】
前記発泡樹脂成形品が内部において繊維化されており、
前記内部の繊維が、繊維配向方向に対する垂直断面において、10μm以下の平均径および20個/100μm以上の繊維数を有する、請求項1~15のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法において使用される、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項18】
発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる発泡樹脂成形品であって、
内部において繊維化されている、発泡樹脂成形品。
【請求項19】
前記内部の繊維が、繊維配向方向に対する垂直断面において、10μm以下の平均径および20個/100μm以上の繊維数を有する、請求項18に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項20】
前記歪硬化剤は、溶融物の延伸歪みの増加に伴い、歪み抵抗が増加する歪硬化性を前記マトリクス用熱可塑性樹脂に付与する物質である、請求項18または19に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項21】
前記歪硬化剤は、前記歪硬化性を前記マトリクス用熱可塑性樹脂に付与するとともに、結晶化ピーク温度を3℃以上、上昇させる物質である、請求項20に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項22】
前記歪硬化剤は、長鎖分岐型ポリプロピレン、セルロースナノファイバー、フッ素含有ポリマーおよびアイオノマーからなる群から選択される1種以上の物質である、請求項18~21のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
【請求項23】
前記歪硬化剤の含有量は前記マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1~100重量部である、請求項18~22のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
【請求項24】
前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、3~200g/分(230℃)のメルトフローレートを有する、請求項18~23のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
【請求項25】
前記マトリクス用熱可塑性樹脂が、冷却速度10℃/分での結晶化温度Tcpsを90~210℃に有するポリマーである、請求項18~24のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
【請求項26】
前記熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤をさらに含有する、請求項18~25のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
【請求項27】
前記結晶核剤はソルビトール系化合物である、請求項26に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項28】
前記結晶核剤の含有量は前記マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01~2重量部である、請求項26または27に記載の発泡樹脂成形品。
【請求項29】
前記熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の冷却速度10℃/分での結晶化温度Tccsにおいて1×10~5×10Paの貯蔵弾性率を有する、請求項18~28のいずれかに記載の発泡樹脂成形品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形品の製造方法、該方法に使用される熱可塑性樹脂組成物および発泡樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装品および家電の筐体および部品などの分野では、様々な樹脂成形品が使用されている。このような樹脂成形品は、従来では内部が中実のものが主流であったが、最近では成形品の軽量化と消費原料の節約の観点から、内部にセル構造を有する発泡樹脂成形品に置き換わっている。
【0003】
発泡樹脂成形品の製造方法としては、射出成形法に基づく方法が知られている。詳しくは、発泡剤および熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練し、固定型と可動型からなる型内に射出した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性組成物を発泡させつつ成形する(特許文献1,2)。またコアバックを2段階で行うことにより、吸音性を向上させる技術が報告されている(特許文献3)。さらに結晶核剤を含有させてコアバックを行うことにより、成形品内部を繊維化して、吸音性を向上させる技術も報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-299201号公報
【特許文献2】特開2012-20544号公報
【特許文献3】特開2015-116775号公報
【特許文献4】特開2017-177671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者等は、従来の技術においては以下のような成形ウィンドウ幅に関する問題が生じることを見い出した。従来の樹脂組成物は、成形(繊維化)可能な樹脂温度範囲である成形ウィンドウ幅が比較的狭かった。このため、例えば、50mm×70mm寸法などの小型寸法の発泡樹脂成形品を製造する場合には、繊維化は良好に達成されるが、例えば、100mm×100mm寸法以上(例えば500mm×500mm寸法)の中型または大型寸法を有する発泡樹脂成形品を製造する場合には、型内の樹脂に比較的大きな温度分布(温度差)(例えば6℃以上)が生じるため、十分な繊維化を達成することはできなかった。
【0006】
本発明は、成形ウィンドウ幅がより十分に広い、発泡樹脂成形品の製造方法、当該方法に使用される熱可塑性樹脂組成物および当該方法により製造された発泡樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡および繊維化させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法に関する。
【0008】
本発明はまた、上記の発泡樹脂成形品の製造方法において使用される、熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明はまた、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる発泡樹脂成形品であって、内部において繊維化されている、発泡樹脂成形品に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡樹脂成形品の製造方法において、成形ウィンドウ幅はより十分に広い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明で使用される発泡射出成形装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明において、より十分に広いウィンドウ温度幅で繊維化が可能となるメカニズムの一例を説明するためのグラフである。
【図3A】本発明の発泡成形品(繊維質発泡樹脂成形品)のコアバック方向に対する垂直断面の一例を示す概略図である。
【図3B】本発明の実施例で製造される発泡樹脂成形品の平面図であり、金型におけるゲートおよび樹脂温度センサーに対応する位置を合わせて示す概略図である。
【図4A】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間5.6秒)のコアバック方向に対する垂直断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図4B】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間5.6秒)のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図5A】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間6.3秒)のコアバック方向に対する垂直断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図5B】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間6.3秒)のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図6A】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間6.7秒)のコアバック方向に対する垂直断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図6B】実施例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間6.7秒)のコアバック方向に対する平行断面の顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図7】比較例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間5.6秒)のコアバック方向に対する平行断面の全体写真を示す。
【図8】比較例A1で得られた発泡樹脂成形品(CB遅延時間6.2秒)のコアバック方向に対する平行断面の全体写真を示す。
【図9】実施例A1および比較例A1の樹脂組成物における周波数-貯蔵弾性率(G’)の関係を示すグラフである。
【図10】実施例A1および比較例A1の樹脂組成物における周波数-複素粘度(Eta*)の関係を示すグラフである。
【図11A】実施例A1および比較例A1の樹脂組成物における冷却速度-結晶化温度(結晶化開始温度(Ton)、結晶化ピーク温度(Tpc)、および結晶化終了温度(Tend))の関係を示すグラフである。
【図11B】結晶化温度(結晶化開始温度(Ton)、結晶化ピーク温度(Tpc)、および結晶化終了温度(Tend))の説明のためのグラフである。
【図12A】実施例A1および比較例A1の樹脂組成物における結晶化温度(結晶化ピーク温度(Tpc))-半結晶化時間の関係を示すグラフである。
【図12B】半結晶化時間の説明のためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発泡樹脂成形品の製造方法]
本発明の発泡樹脂成形品(以下、単に「成形品」ということがある)の製造方法においては、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡および繊維化させつつ成形する。以下、その中でも特に射出成形法を採用する場合について説明するが、熱可塑性樹脂組成物を単に充填して発泡成形する方法においても、歪硬化剤を用いる限り、本発明の効果が得られることは明らかである。本発明の方法で製造される成形品は内部で繊維化されている。

【0013】
本発明に係る成形品の製造方法を実施するのに適した発泡射出成形装置の一例として、図1に、発泡射出成形装置1の構成の概略全体図を示す。この装置1は、シリンダ11及びスクリュー軸12が備えられたスクリューフィーダ10を有し、該フィーダ10の後端部(図1における右側)近傍に、原料を投入するためのホッパ13が設けられた構造を有している。スクリュー軸12の先端部には、チェックリング14及び円錐形状のヘッド15が設けられ、シリンダ11の先端部は該ヘッド15の形状に呼応して円錐形状に絞られており、その先端にはノズル16が設けられている。シリンダ11におけるホッパ13からノズル16までの間にはガスを供給するための高圧ガス供給装置17が設けられており、シリンダ11内の溶融混練物にガス状の物理発泡剤を供給できるようになっている。

【0014】
シリンダ11の先端側には、金型装置20が配設されている。金型装置20は、固定型21と、該固定型21に対して移動可能とされた可動型22とからなる金型を有すると共に、可動型22を駆動させるための駆動機構(図示しない)を有している。金型装置20の固定型21と可動型22との間には、型締めされたときに成形品の形状となるキャビティ23が形成される。可動型22には、キャビティ23内に射出された熱可塑性樹脂組成物の温度および圧力を測定するための温度圧力センサー24および固定型21と可動型22を冷却するための冷却機構25が設けられている。固定型21にはノズル16が接続されていると共に、該ノズル16の接続部からキャビティ23に連通する通路(コールドランナー)21aが形成されている。

【0015】
本発明に係る成形品の製造方法は、溶融混練工程、射出工程およびコアバック工程を含む。

【0016】
(溶融混練工程)
本工程は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練する工程である。詳しくは、原料、例えば、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂、歪硬化剤およびその他の添加剤等を図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入し、溶融および混練を行う。発泡剤として特に物理発泡剤を用いる場合は、溶融および混練を行いながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤を注入してもよい。

【0017】
マトリクス用熱可塑性樹脂は熱可塑性を有するポリマーである限り特に限定されない。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂は、マトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤などの成形品を構成する全ての材料を含有する熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsにおいて1×10~5×10Pa、特に1×10~1×10Paの貯蔵弾性率を有するように選択されることが好ましい。

【0018】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して10℃/分にて冷却したときの熱流-温度曲線を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製)により求める。この熱流-温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccs(℃)とする。

【0019】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、好ましくは100~220℃であり、より好ましくは100~210℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、さらに好ましくは100~155℃である。

【0020】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率は以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を融点以上の温度に加熱して2℃/分にて冷却するとき、Tccsでの貯蔵弾性率を回転式粘度計(TA Instruments社製)により測定する。

【0021】
マトリクス用熱可塑性樹脂としては、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、90~210℃、好ましくは90~200℃の結晶化温度Tcpsを有し、かつ当該Tcpsにおいて1×10~5×10Pa、好ましくは1×10~1×10Pa、より好ましくは1×10~5×10Paの貯蔵弾性率を有するポリマーが使用されることが望ましい。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、当該マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、さらに好ましくは95~135℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが高すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が高すぎたりすると、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが低すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が低すぎたりすると、セルの合一が進んでセル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。

【0022】
マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、当該熱可塑性樹脂を加熱すること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsと同様の方法により測定することができる。

【0023】
マトリクス用熱可塑性樹脂のTcps(℃)での貯蔵弾性率は、当該熱可塑性樹脂を加熱すること、および貯蔵弾性率の測定温度をTcps(℃)とすること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率と同様の方法により測定することができる。

【0024】
マトリクス用熱可塑性樹脂は、あらゆる種類のポリマーが使用され、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);およびこれらの混合物が使用される。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、Tcps、貯蔵弾性率および組成(種類)等が異なる2種類以上のマトリクス用熱可塑性樹脂が含有されてもよく、その場合、それらの混合樹脂における各マトリクス用熱可塑性樹脂がそれぞれ上記結晶化温度および貯蔵弾性率を有していることが好ましい。好ましいマトリクス用熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)であり、より好ましくはポリオレフィン系樹脂(特にポリプロピレン)である。

【0025】
マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に限定されず、例えば、3~200g/分(230℃)であってもよい。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂のメルトフローレートは好ましくは10~100g/分(230℃)、より好ましくは20~50g/分(230℃)である。

【0026】
本明細書中、MFRは特記しない限り所定温度(230℃)での値であり、JIS K 7210(2.16kg荷重)に基づいて測定された値を用いている。

【0027】
発泡剤としてはマトリクス用熱可塑性樹脂の発泡機能を有するあらゆる物質が使用可能であり、例えば物理発泡剤および化学発泡剤が挙げられる。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは物理発泡剤が好ましい。

【0028】
物理発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂中において、物理的に発泡を起こすものであり、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
化学発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂の分野で従来から化学発泡剤として使用されているあらゆる物質が使用可能である。

【0029】
発泡剤、特に物理発泡剤の含有量は通常、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.02~3.0重量部であり、好ましくは0.06~2.0重量部である。

【0030】
歪硬化剤は、歪硬化性をマトリクス用熱可塑性樹脂(特にマトリクス用熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物)に付与する物質である。歪硬化性とは、溶融物の延伸歪み(伸長変形)の増加に伴い、歪み(変形)抵抗が増加する特性(例えば、溶融粘弾性特性)のことである。このような歪硬化剤を用いることにより、溶融粘弾性の観点から、成形ウィンドウ幅をより十分に広げることができる。詳しくは、熱可塑性組成物がこのような歪硬化性を有する歪硬化剤を含有することにより、溶融物の発泡時において、破泡が適度に抑制されるため、より十分に広い成形ウィンドウ幅(温度幅)において、繊維化が達成される。成形ウィンドウ幅とは、発泡樹脂成形品の製造方法における金型内の熱可塑性樹脂組成物(溶融物)の温度範囲であって、内部の繊維化を達成できる温度範囲のことである。詳しくは、成形ウィンドウ幅は、コアバック開始時の熱可塑性樹脂組成物(溶融物)における温度に関する範囲である。

【0031】
本発明においては、熱可塑性樹脂組成物がこのような歪硬化剤を含有することにより、図10に示すように、熱可塑性樹脂組成物において複素粘度が低周波数域で上がる傾向(周波数が減少するに伴いG’が下がらない傾向)がもたらされ、より広い成形ウィンドウ幅で、より十分な繊維化が達成される。詳しくは、下記数式に示すように、気泡の発生過程において、気泡の半径をRとして、その成長速度をdR/dtとして表現すると、せん断速度γドットは、「(dR/dt)÷R」となる。図2に示すように、気泡が小さいときは、Rは小さいため、γドットは大きくなる。他方、気泡が大きくなると、γドットは小さくなる。そのとき、γドットが小さくなるに従い粘度が高くなると、気泡が大きくなるに従い粘度が高くなり、気泡の成長が適度に抑制される。本発明においてコアバック工程においては、発泡だけでなく、繊維化も行うため、上記のように気泡の成長が適度に抑制されると、より十分な繊維化が達成され、成形ウィンドウ幅が拡大するものと考えられる。歪硬化剤によるこのように十分な繊維化の達成および成形ウィンドウ幅の拡大に関する効果は、従来技術における歪硬化剤による伸長粘度および歪硬化性に基づく単なる発泡性の向上効果とは異質なものである。

【0032】
【数1】
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【0033】
【数2】
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【0034】
歪硬化剤は、上記のような歪硬化性を有する物質であれば、特に限定されない。物質が歪硬化性を有するか否かの判定は、以下の方法により、行うことができる:
当該物質を、使用されるマトリクス用熱可塑性樹脂に対して添加し、樹脂組成物を得る。当該樹脂組成物および溶融張力測定装置を用いて、200℃で、ピストンを降下速度10mm/分にて降下させ、ダイからストランドを吐出させる。ストランドを350mm下のロードセル付きプーリーに掛けて1m/分の速度で引き取り、安定後に40m/分で引き取り速度を増加させたとき、ストランドの破断が起こった物質を「歪硬化性」を有するものと判定する。歪硬化剤(当該物質)は、実際の熱可塑性樹脂組成物において実際に採用される含有量のときに、「歪硬化性」を有すればよく、例えば、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、後述の含有量、好ましくは実施例で採用した含有量(すなわち0.5~30重量部)、特に3~30重量部の含有量のときに、「歪硬化性」を有すればよい。
溶融張力測定装置:
先端に内径1mm、長さ10mmのオリフィスを装着した10mm径のシリンダを有するキャピログラフ(東洋精機製作所製)。

【0035】
このような歪硬化性を有する歪硬化剤として、例えば、長鎖分岐型ポリプロピレン、セルロースナノファイバー、フッ素含有ポリマーおよびアイオノマーが挙げられ、単独で使用されてもよいし、または2種以上組み合わせて使用されてもよい。歪硬化剤は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、長鎖分岐型ポリプロピレン、セルロースナノファイバー、フッ素含有ポリマーからなる群から選択される2種以上の歪硬化剤であることが好ましく、より好ましくは長鎖分岐型ポリプロピレンを含み、さらに好ましくは長鎖分岐型ポリプロピレンを単独で用いる。長鎖分岐型ポリプロピレンを単独で用いる場合には、1種の長鎖分岐型ポリプロピレンを単独で用いる場合、およびMFR等が異なる2種以上の長鎖分岐型ポリプロピレンを組み合わせて用いる場合が包含される。

【0036】
歪硬化剤の中でも、特に、結晶化温度上昇特性を有するものがより好ましく使用される。成形ウィンドウ幅をより一層、十分に広げることができるためである。詳しくは、結晶化温度上昇特性を有する歪硬化剤は、発泡時において、結晶核の生成速度および成長速度(特に生成速度)を高め、結晶化開始温度、結晶化ピーク温度および結晶化終了温度(特に結晶化ピーク温度)を上昇させることができる。このため、結晶化速度が全体として有意に上昇し、成形ウィンドウ幅をより一層、広げることができる。このような結晶化温度上昇特性を有する歪硬化剤は、結晶核の生成速度および成長速度を高める機能を有する観点から、結晶化促進剤とも呼ぶことができる。上記した長鎖分岐型ポリプロピレン、セルロースナノファイバー、フッ素含有ポリマーおよびアイオノマーは結晶化温度上昇特性を有する歪硬化剤である。

【0037】
歪硬化剤が結晶化温度上昇特性を有するか否かの判定は、後述の実験例3の方法において、結晶化ピーク温度(冷却速度20℃/秒)を2℃以上、好ましくは3℃以上、好ましくは5℃以上、上昇させ得るか否かに基づいている。なお、歪硬化剤による結晶化ピーク温度の上昇幅の上限値は特に限定されないが、通常、20℃、特に15℃である。
詳しくは、まず、当該歪硬化剤の有無のみが異なる2種類の熱可塑性樹脂組成物を得る。歪硬化剤を含む熱可塑性樹脂組成物はマトリクス用熱可塑性樹脂および歪硬化剤を含み、さらに結晶核剤を含んでもよい。歪硬化剤を含まない熱可塑性樹脂組成物はマトリクス用熱可塑性樹脂を含み、さらに結晶核剤を含んでもよい。
次いで、高速示差走査熱量計(Flash DSC;METTLER TOLEDO社製)により、結晶化開始温度(Ton)、結晶化温度(結晶化ピーク温度(Tpc))、および結晶化終了温度(Tend))を成形時(例えば射出成形時)の冷却速度にて測定する。歪硬化剤を含む熱可塑性樹脂組成物の結晶化ピーク温度から、歪硬化剤を含まない熱可塑性樹脂組成物の結晶化ピーク温度を減じた値が上記範囲内であれば、当該歪硬化剤は結晶化温度上昇特性を有する。結晶化温度上昇特性を有する歪硬化剤は、実際の熱可塑性樹脂組成物において実際に採用される含有量のときに、結晶化温度上昇特性を有すればよく、例えば、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、後述の含有量、好ましくは実施例で採用した含有量(すなわち0.5~30重量部)、特に3~30重量部の含有量のときに、「結晶化温度上昇特性」を有すればよい。熱可塑性樹脂組成物が結晶核剤を含む場合、結晶核剤の含有量は、実際の熱可塑性樹脂組成物において実際に採用される含有量であり、例えば、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1~1.2重量部であってもよい。結晶化開始温度(Ton)、結晶化温度(結晶化ピーク温度(Tpc))、および結晶化終了温度(Tend))の測定時における冷却速度は、実際の射出成形時における冷却速度であればよく、例えば1℃/秒~100℃/秒(特に20℃/秒)であってもよい。

【0038】
長鎖分岐型ポリプロピレンは、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(以下、単に「ポリプロピレン樹脂(PP)」ということがある)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン共重合体であってもよい。プロピレン共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、ポリプロピレン樹脂(PP)中のコモノマーの含量は、3重量%以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂(PP)は、成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、プロピレン単独重合体が好ましい。

【0039】
ポリプロピレン樹脂(PP)が有する長鎖分岐は、分岐鎖の主鎖を構成する炭素の数が5以上、特に数十以上であって、分子量が90以上、特に数百以上である分子鎖による分岐構造のことであり、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐とは区別される。

【0040】
ポリプロピレン樹脂に長鎖分岐構造を導入する方法として、例えば、高エネルギーイオン化放射線を用いる方法、有機過酸化物を用いる方法、および特定の構造を有するメタロセン触媒を用いて末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合することによって長鎖分岐を形成する方法が挙げられる。

【0041】
ポリプロピレン中に長鎖分岐を有することは、樹脂のレオロジー特性による方法、分子量と粘度との関係を用いて分岐指数g’を算出する方法、13C-NMRを用いる方法などによって定義される。

【0042】
分岐指数g’は、長鎖分岐に関する、直接的な指標として知られている。分岐指数g’は、「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に記載のように、以下の通りである。

【0043】
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度

【0044】
分岐指数g’が1よりも小さな値を取ると、長鎖分岐構造が存在すると判断され、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数g’の値は、小さくなっていく。

【0045】
分岐指数g’は、光散乱計と粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。

【0046】
本発明における分岐指数g’の測定方法は以下の通りである。
[測定方法]
装置:高温3D-GPC PL-GPC220型(Polymer Laboratories社)
検出器:2角度光散乱検出器:PD2040(Precision Detectors社)
示差屈折率計(RI):PL-GPC220型付属
ブリッジ型粘度計(Viscometer):PL-BV400(Polymer Laboratories社)
カラム構成:TSKgel GMHHR-H(S)HTを2本連結+TSKgel GMHHR-M(S)1本
カラムサイズ:内径φ7.8mm×長さ300mm
移動相溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン、酸化防止剤BHT添加
移動相流量:1.0mL/分
カラム温度:150℃
試料濃度:0.5mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.5mL
分岐モデル:Zimm-Stockmayerの式(3官能性ランダム分岐、単分散系)

【0047】
[解析方法]
高温3D-GPCから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)および極限粘度([η])を利用し、以下の文献を参考に分岐指数(g’i)を算出し、その重量平均値を分岐指数(g’)とした。
1)Th. G. Scholte, N. L. J. Meijerink, H. M. Schoffeleers, and A. M. G. Brands, Journal of AppliedPolymer Science, 29, 3763 (1984)
2) B. H. Zimm, W. H. Stockmayer, J. Chem. Phys., 17, 1301 (1949)
3) T. G. Scholte, “Developments in Polymer Characterization”, Vol.4, J. V. Dawkins(ed.), Chapter 1, Applied Science, Essex, 1984

【0048】
ポリマーの分岐指数g’は一般に0~1の範囲の値をとる。直鎖構造のみを有するポリマーの場合、分岐指数g’は1となり、長鎖分岐構造が増加するにつれ、分岐指数g’は0に近づく。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、長鎖分岐型ポリプロピレンの分岐指数g’は0.3以上1.0未満であることが好ましく、より好ましくは0.55~0.98、更に好ましくは0.70~0.96、最も好ましくは0.72~0.95である。

【0049】
13C—NMRは、短鎖分岐構造と長鎖分岐構造を区別することができる。「Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738」に記載されているように、以下の通りである。長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体は、下記構造式に示すような特定の分岐構造を有する。下記構造式において、Ca、Cb、Ccは、分岐炭素に隣接するメチレン炭素を示し、Cbrは、分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、P1、P2、P3は、プロピレン系重合体残基を示す。 P1、P2、P3は、それ自体の中に、下記構造式に記載されたCbrとは、別の分岐炭素(Cbr)を含有することもあり得る。

【0050】
【化1】
JP2019171871A_000004t.gif

【0051】
このような分岐構造は、13C-NMR分析により同定される。各ピークの帰属は、「Macromolecules,Vol.35、No.10.2002年、3839-3842頁」の記載を参考にすることができる。すなわち、43.9~44.1ppm,44.5~44.7ppm及び44.7~44.9ppmに、それぞれ1つ、合計3つのメチレン炭素(Ca、Cb、Cc)が観測され、31.5~31.7ppmにメチン炭素(Cbr)が観測される。上記の31.5~31.7ppmに観測されるメチン炭素を、以下、分岐メチン炭素(Cbr)と略称することがある。分岐メチン炭素Cbrに近接する3つのメチレン炭素が、ジアステレオトピックに非等価に3本に分かれて観測されることが特徴である。

【0052】
13C-NMRで帰属されるこのような分岐鎖は、プロピレン系重合体の主鎖から分岐した炭素数5以上のプロピレン系重合体残基を示し、それと炭素数4以下の分岐とは、分岐炭素のピーク位置が異なることにより、区別できるので、本発明においては、この分岐メチン炭素のピークが確認されることにより、長鎖分岐構造の有無を判断することができる。

【0053】
13C-NMRの測定方法については以下の通りである。
プロピレン系重合体の分岐構造に関して、下記NMR分光計を用い、下記条件で分岐構造の測定および解析を行った。試料470mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン2.6mlに完全に溶解させた後、120℃で加熱した後、測定をおこなった。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定した。他の炭素ピークのケミカルシフトは、これを基準とする。
機器名:Varian製 Unity Inova
フリップ角:90度
パルス繰り返し時間:15.0秒
共鳴周波数:125.7MHz
積算回数:14,400回。

【0054】
長鎖分岐型ポリプロピレンの溶融張力(MT)(230℃)は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、2~25gであることが好ましく、より好ましくは3~20g、更に好ましくは5~16g、最も好ましくは7~13gである。溶融張力(MT)(230℃)は以下の条件で測定された値を用いている。
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダ径:9.55mm
シリンダ押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃

【0055】
MFRが高い等の理由により、溶融張力(MT)を230℃で測定できない場合は、以下に示すように、200℃で測定された溶融張力(MT)が以下の範囲内であることが好ましい。
長鎖分岐型ポリプロピレンの溶融張力(MT)(200℃)は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、2~25gであることが好ましく、より好ましくは0.1~20g、更に好ましくは0.3~15g、最も好ましくは0.7~12gである。溶融張力(MT)(200℃)は以下の条件で測定された値を用いている。
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径1.0mm、長さ10mm
シリンダ径:9.55mm
シリンダ押出速度:10mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:200℃

【0056】
長鎖分岐型ポリプロピレンのMFRは、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、1~80g/10分であることが好ましく、2~70g/10分であることがより好ましい。長鎖分岐型ポリプロピレンのMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック—熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。

【0057】
長鎖分岐型ポリプロピレンは、市販品として入手することもできるし、または公知の方法により製造することもできる。長鎖分岐型ポリプロピレンの市販品として、例えば、「039N」(株式会社カネカ)、「045N」(株式会社カネカ)、「048N」(株式会社カネカ)、「MFX6」(日本ポリプロ株式会社)、「MFX3」(日本ポリプロ株式会社)等が挙げられる。

【0058】
セルロースナノファイバーはセルロースからなるナノ繊維である。ナノ繊維とは直径がナノオーダーの繊維のことである。セルロースナノファイバーは植物から得られる植物繊維をナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維であり、プラスチックの分野でいわゆる補強用繊維として知られているものが使用可能である。

【0059】
セルロースナノファイバーの平均径は通常、1nm以上1000nm未満であり、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは1~500nm、より好ましくは1~100nmである。

【0060】
セルロースナノファイバーの平均長は通常、1~500μmであり、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~50μmである。

【0061】
セルロースナノファイバーの平均径および平均長は顕微鏡写真(SEM)から測定された任意の100本の値の平均値を用いている。

【0062】
セルロースナノファイバーは、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、予めマスターバッチ用熱可塑性樹脂とともに溶融混練、冷却および粉砕されてなるセルロースナノファイバーマスターバッチ(ペレット)の形態で使用されることが好ましい。

【0063】
セルロースナノファイバーマスターバッチの平均粒径は通常、0.1~10mmである。
セルロースナノファイバーマスターバッチの平均粒径は、任意の100個のマスターバッチ粒子を選択し、各粒子における最大径を粒径として測定された値の平均値である。

【0064】
セルロースナノファイバーマスターバッチ中、セルロースナノファイバーはマスターバッチ用熱可塑性樹脂100重量部に対して通常は1~40重量部の量で分散されており、好ましくは1~30重量部、より好ましくは1~20重量部の量で分散されている。

【0065】
セルロースナノファイバーマスターバッチを使用する場合は、マトリクス用熱可塑性樹脂およびマスターバッチ用熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対するセルロースナノファイバー単独の含有量が、後述の歪硬化剤の含有量範囲と同様の範囲内になるように、当該マスターバッチを使用すればよい。マスターバッチ用熱可塑性樹脂は、マトリクス用熱可塑性樹脂と同様の範囲内から選択されればよく、好ましくはマトリクス用熱可塑性樹脂として実際に使用される樹脂と同様の樹脂である。

【0066】
フッ素含有ポリマーはフッ素原子を含有するポリマーであり、好ましくはフッ素原子含有ポリオレフィンが使用される。

【0067】
フッ素含有ポリマーはフッ素含有モノマーをモノマー成分として含有する。フッ素含有モノマーとして、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。

【0068】
フッ素含有ポリマーは、フッ素を含有しないモノマーをモノマー成分として含有してもよいが、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくはフッ素含有モノマーのみをモノマー成分として含有する。

【0069】
フッ素含有ポリマーは、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリヘキサフルオロプロピレン、またはこれらの混合物であることが好ましく、より好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。

【0070】
フッ素含有ポリマーは、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、アクリル変性を施されているものが好ましい。より好ましくは、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンである。アクリル変性とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を共重合成分として含有させるという意味である。

【0071】
フッ素含有ポリマーの分子量は、MFR5g/10分(230℃)のポリプロピレンとの混合物のMFR(230℃)が0.5~4.5g/10分、特に2~4g/10分となるような、分子量であればよく、ベースポリマーの流動性を著しく損なうことがないものが好ましい。上記混合物におけるフッ素含有ポリマーの含有量は全量に対して4重量%である。

【0072】
フッ素含有ポリマーの平均粒径は通常15~500μmであり、見掛密度は0.2~1.0g/mlである。成形品内部の繊維化および成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは平均粒径100~500μm、より好ましくは200~400μmである。

【0073】
フッ素含有ポリマーは、市販品として入手することができる。フッ素含有ポリマーの市販品として、例えば、「メタブレンA-3000」(三菱レイヨン株式会社社;アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。

【0074】
アイオノマーは、カルボキシル基を導入されたポリオレフィン(好ましくはポリエチレン)の分子鎖が、カルボキシル基の一部で金属陽イオンにより架橋されたポリマーである。ポリオレフィンへのカルボキシル基の導入は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を共重合成分として含有させることにより達成することができる。金属陽イオンとして、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属イオン(例えば、Mg2+、Ca2+)、Zn2+が挙げられる。

【0075】
アイオノマーのMFR(190℃)は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、0.1~50g/10分であることが好ましく、1~30g/10分であることがより好ましい。

【0076】
アイオノマーは、市販品として入手することができる。アイオノマーの市販品として、例えば、「ハイミラン1705」(三井・デュポンポリケミカル株式会社)等が挙げられる。

【0077】
歪硬化剤の含有量は通常、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1~100重量部であり、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から好ましい含有量範囲は歪硬化剤の種類に応じて異なるが、例えば、好ましくは1~80重量部であり、より好ましくは15~50重量部である。歪硬化剤は2種以上組み合わせて使用されてよく、その場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。

【0078】
例えば、長鎖分岐型ポリプロピレンの含有量は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは1~80重量部であり、より好ましくは3~70重量部であり、さらに好ましくは5~50重量部、特に好ましくは10~50重量部、よりさらに好ましくは15~50重量部、最も好ましくは25~50重量部である。

【0079】
また例えば、セルロースナノファイバーの含有量は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは0.1~80重量部であり、より好ましくは0.1~50重量部であり、さらに好ましくは0.1~20重量部である。

【0080】
また例えば、フッ素含有ポリマーの含有量は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは0.1~20重量部であり、より好ましくは0.2~10重量部であり、さらに好ましくは0.8~2重量部である。

【0081】
また例えば、アイオノマーの含有量は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、好ましくは0.1~80重量部であり、より好ましくは1~30重量部であり、さらに好ましくは5~20重量部である。

【0082】
熱可塑性樹脂組成物には、結晶核剤等の添加剤をさらに含有させてもよい。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、結晶核剤を含有させることが好ましい。このような結晶核剤を添加することによる成形ウィンドウ幅のさらなる拡大効果は、歪硬化剤の含有量が比較的少ない熱可塑性樹脂組成物に、より一層、有効である。歪硬化剤の含有量を比較的少なくしても、結晶核剤を添加することにより、成形ウィンドウ幅のさらなる拡大効果を確保できるためである。なお、歪硬化剤を含まない樹脂組成物またはポリマーに結晶核剤を添加しても、成形ウィンドウ幅は拡大しない)。

【0083】
結晶核剤とは、熱溶解および冷却することにより、かつ/または溶融混錬およびせん断流動を与えることにより、自己組織化による三次元網目構造を形成し得る有機化合物のことである。このような結晶核剤を、歪硬化剤を含む熱可塑性樹脂に添加して熱溶解および冷却、かつ/または溶融混錬およびせん断流動に供することにより、熱可塑性樹脂の微細で均一な結晶の生成および成長が促進される。これに伴い、結晶化により生成する気泡も微細化されるため、コアバック式発泡射出成形時において当該気泡が起点となり、より一層、微細な繊維化が達成される。

【0084】
結晶核剤としては、自動車部品や家電部品の分野で使用されるあらゆる結晶核剤が使用可能である。成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から有機系結晶核剤が好ましく使用される。有機系結晶核剤の具体例としては、例えば、ソルビトール系化合物、特に芳香族環含有ソルビトール系化合物および脂肪族環含有ソルビトール系化合物など、が挙げられる。結晶核剤としては、ソルビトール系化合物が好ましく、芳香族環含有ソルビトール系化合物がより好ましい。

【0085】
芳香族環含有ソルビトール系化合物の好ましい具体例として、一般式(1)で表されるソルビトール系化合物が挙げられる。

【0086】
【化2】
JP2019171871A_000005t.gif

【0087】
式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子である。RおよびRの、ベンゼン環における結合位置は特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、オルト位、メタ位およびパラ位であってよい。ベンゼン環におけるRおよびRの結合位置は、それぞれ独立して、後述するmが1のときはパラ位が好ましく、mが2のときはメタ位およびパラ位が好ましい。
好ましいRおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)である。

【0088】
は、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数2~4のアルケニル基、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のヒドロキシアルキル基である。
好ましいRはそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは水素原子である。

【0089】
mおよびnはそれぞれ独立して、1~5の整数であり、好ましくは1または2である。mが2以上の整数のとき、2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。nが2以上の整数のとき、2つのRは互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。

【0090】
pは0または1であり、好ましくは1である。

【0091】
芳香族環含有ソルビトール系化合物として、市販のゲルオールMD(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=メチル基(m=n=1でパラ位)、R=水素原子、p=1)、ゲルオールD(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=水素原子、R=水素原子、p=1)、ゲルオールDXR(新日本化学社製)(式(1)において、R=R=メチル基(m=n=2でメタ位およびパラ位)、R=水素原子、p=1)、ゲルオールE-200(新日本化学社製)、Millad NX8000(Milliken Chemical社製)(式(1)において、R=R=プロピル基(m=n=1でパラ位)、R=プロピル基、p=1)、RiKAFAST AC(新日本化学社製)が入手可能である。

【0092】
結晶核剤は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から、予め熱可塑性樹脂とともに溶融混練、冷却および粉砕されてなる結晶核剤マスターバッチ(ペレット)の形態で使用されることが好ましい。結晶核剤マスターバッチ中の結晶核剤の含有量は通常、当該マスターバッチ全量に対して1~40重量%である。

【0093】
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は通常、0.1~10mmである。
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は、任意の100個のマスターバッチ粒子を選択し、各粒子における最大径を粒径として測定された値の平均値である。

【0094】
結晶核剤マスターバッチ中、結晶核剤(特に有機系結晶核剤)はマスターバッチ用熱可塑性樹脂100重量部に対して通常は1~40重量部の量で分散されており、好ましくは1~30重量部、より好ましくは1~20重量部の量で分散されている。

【0095】
結晶核剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂(特にマトリクス用熱可塑性樹脂)100重量部に対して0.01~2重量部であり、好ましくは0.15~1.5重量部、より好ましくは0.1~1重量部、さらに好ましくは0.15~1質量部、特に好ましくは0.25~1重量部、最も好ましくは0.2~0.8重量部である。ここでいう結晶核剤の含有量とは結晶核剤単独の含有量である。結晶核剤マスターバッチを使用する場合は、マトリクス用熱可塑性樹脂およびマスターバッチ用熱可塑性樹脂の合計量100重量部に対する結晶核剤単独の含有量が上記範囲内になるように、当該マスターバッチを使用すればよい。マスターバッチ用熱可塑性樹脂は、マトリクス用熱可塑性樹脂と同様の範囲内から選択されればよく、好ましくはマトリクス用熱可塑性樹脂として実際に使用される樹脂と同様の樹脂である。

【0096】
本工程での溶融混練温度、すなわちシリンダ温度、は熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融する限り特に制限されず、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から好ましくは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf+70~Tccf+140℃であり、より好ましくはTccf+70~Tccf+130℃であり、さらに好ましくはTccf+80~Tccf+130℃、最も好ましくはTccf+90~Tccf+130℃である。成形品内部の気泡形成の観点からは、溶融混錬温度は特に限定されない。

【0097】
(射出工程)
本工程は、溶融混練工程で得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物を金型内に射出する工程である。詳しくは、溶融物を、図1の発泡射出成型装置1のノズル16から固定型21と可動型22からなる金型内のキャビティ23に射出する。図1中、キャビティ23は直方体形状を有しているが、これに限定されるものではなく、目的とする成形品形状に基づく所望の形状を有していればよい。

【0098】
金型温度は、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点からは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf-70~Tccf-20℃が好ましく、より好ましくはTccf-70~Tccf-40℃である。

【0099】
射出速度は特に限定されず、通常20~200mm/秒であり、成形品の繊維化の観点から好ましくは30~150mm/秒である。射出量は、キャビティ23が充満される量である。

【0100】
キャビティ23の厚み方向の最大厚みは通常1~10mmであり、成形品の繊維化の観点から好ましくは1~5mmである。厚み方向とは、後述するコアバック工程における可動型22の移動方向、すなわちコアバック方向と平行な方向を意味する。

【0101】
(コアバック工程)
本工程は、可動型22をコアバックさせることにより、射出工程で射出された溶融物を発泡させる工程である。詳しくは、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を射出後、金型内で保圧し、可動型22をコアバックさせ、発泡を行う。これにより成形品内部に気泡が形成される。コアバックとは、キャビティ23の体積を増大させるために、可動型22を固定型21とは反対方向に移動させることをいう。これにより、キャビティ23内の圧力が低減され、溶融物の発泡が促進される。

【0102】
本工程においては、コアバックを以下に示す比較的広い範囲内の特定のタイミングで行うことにより、発泡とともに繊維化を行うことができる。すなわち、コアバックは、例えば、熱可塑性樹脂組成物の冷却速度20℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、射出された熱可塑性樹脂組成物(溶融物)の温度がTccf-20~Tccf+20℃、好ましくはTccf-10~Tccf+15℃、より好ましくはTccf-10~Tccf+10℃、さらに好ましくはTccf-7~Tccf+7℃の比較的広い範囲内の特定のタイミングで開始する。本発明においては、このような比較的広い範囲内の特定のタイミングでコアバックを開始しても、コアバック初期において、発泡によりセルを十分に形成しつつ、形成されたセルの合一を防止することができる。このため、コアバック初期に十分な数のセルの微分散が達成されるので、その後のコアバックにより、セル壁をコアバック方向に延伸させつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断させることができる。これらの結果として、繊維化が達成されるものと考えられる。コアバック開始温度が低すぎると、コアバック初期においてセルを十分に形成できないので、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。コアバック開始温度が高すぎると、コアバック初期においてセルの合一が進むので、セル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。

【0103】
結晶化温度Tccf(℃)を測定するときの冷却速度Vccfは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を実際に成形(例えば射出成形)するときの冷却速度(例えばシリンダから金型内に射出してコアバックするまでの冷却速度)をv’ccf(℃/秒)としたとき、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から好ましくはv’ccf-10~v’ccf+10℃/秒、より好ましくはv’ccf-5~v’ccf+5℃/秒、最も好ましくはv’ccf/秒である。

【0104】
本発明において、コアバックのタイミングを、比較的遅い冷却速度で測定された結晶化温度に基づいて決定しても、十分な繊維化は達成されない。コアバック初期の十分な数のセルの微分散は、熱可塑性樹脂組成物の結晶化に基づくものと考えられる。そこで、例えば、100℃/分以下の冷却速度で測定された結晶化温度に基づいてコアバックのタイミングを表しても、冷却速度がコアバックを伴う発泡射出成形の実情に全く合っていないために、結晶化は十分に起こらず、結果として繊維化は十分に達成されないものと考えられる。

【0105】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して20℃/秒にて冷却したときの熱流-温度曲線を、高速示差走査熱量計(Flash DSC;METTLER TOLEDO社製)により求める。この熱流-温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccf(℃)とする。

【0106】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、成形品の繊維化の観点から好ましくは80~190℃であり、より好ましくは80~180℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、さらに好ましくは80~135℃である。

【0107】
保圧時において、熱可塑性樹脂組成物の温度を温度圧力センサー24により観測しておくことにより、コアバック開始のタイミングを計ることができる。
保圧の圧力および保圧の時間は、コアバックを上記タイミングで開始できれば特に限定されない。保圧の圧力は通常、10~80MPaであり、好ましくは20~60MPaである。保圧の時間は通常、1~10秒であり、好ましくは2~7秒である。

【0108】
コアバック開始時において、熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、微細繊維化の観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。

【0109】
コアバック開始時における熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、コアバックさせないこと以外、本発明に係る成形品の製造方法と同様の方法により、溶融混練工程および射出工程を実施した後、金型内において熱可塑性樹脂組成物の溶融物をそのまま冷却して得られた試料を用いて測定することができる。詳しくは、上記試料を、コアバック方向に対して垂直方向で切断し、得られた断面の顕微鏡写真を撮影する。当該写真において、スキン層から500μm以上離れた領域において、任意の100個のセルの直径(最大径)を測定し、最大値を求める。

【0110】
コアバックさせる量は所定の発泡倍率が達成される量である。
発泡倍率は通常、1.1~10倍であり、成形品内部のさらなる繊維化および成形ウィンドウ幅のさらなる拡大の観点から好ましくは2~8倍であり、より好ましくは3~8倍であり、さらに好ましくは4~6倍である。

【0111】
コアバックにかける時間は通常、0.1~2秒であり、好ましくは0.2~1.5秒である。

【0112】
本工程において金型温度は、射出工程時と同様の温度範囲内において維持することが好ましい。

【0113】
(冷却工程)
コアバック完了後は、発泡体をそのまま金型内で保持することにより、冷却し、その後、金型を開いて成形品を得ることができる。

【0114】
[発泡樹脂成形品]
本発明の成形品は内部で繊維化されている。繊維化は、形成される繊維がコアバック方向に対して略平行に配向するように達成される。内部とは、成形品表面のスキン層から100μm以上、好ましくは200μm以上離れた領域である。

【0115】
本発明において繊維化とは、セル壁がコアバック方向に延伸されつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断され、繊維が形成されるという意味である。繊維化は「フィブリル化」ともいう。
繊維は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面を示す図3Aに示されるように、繊維状物30だけでなく、セル壁が破断されてなる非環状のセル壁痕31および32を包含するものとし、破断されることなく残存する環状のセル壁33を包含するものではない。本発明において繊維状物30および非環状のセル壁痕31および32は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面において中実であり、中空のものではない。

【0116】
本発明の発泡樹脂成形品は、内部の全てが必ずしも繊維化されていなければならないというわけではなく、例えば、図3Aに示されるように、一部に環状のセル壁33を有することを妨げるものではない。

【0117】
本発明の発泡樹脂成形品は、繊維が、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において10μm以下、特に0.5~10μm、好ましくは1~10μmの平均径を有する。

【0118】
繊維の平均径は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真から算出された値を用いている。詳しくは、当該写真において任意の100個の繊維における繊維径を測定し、それらの平均値を求める。繊維の繊維径は、繊維が、図3Aに示すように、繊維状物30の場合は、最長径d1であり、繊維が非環状セル壁痕31および32の場合は、当該セル壁痕の最大厚みd2、d3である。なお、繊維径を算出するための垂直断面の位置は、発泡樹脂成形品のコアバック方向(繊維配向方向)の長さをT(mm)としたとき、コアバック方向(繊維配向方向)の端面からT/2の位置である。

【0119】
本発明の発泡樹脂成形品は、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維の数が好ましくは20個/100μm以上、特に20~2000個/100μmであり、より好ましくは25~2000個/100μmである。

【0120】
単位面積あたりの繊維の数は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、図3Aに示すように、任意の領域において繊維30,31および32の総数を求め、当該総数を当該領域の面積で除することにより求める。本発明においては、10個の任意の領域における「単位面積あたりの繊維の数」の平均値を用いている。なお、繊維数を算出するための垂直断面の位置は、発泡樹脂成形品のコアバック方向(繊維配向方向)の長さをT(mm)としたとき、コアバック方向(繊維配向方向)の端面からT/2の位置である。
【実施例】
【0121】
<実験例1>
(主剤)
主剤として以下のポリマーを使用した。
・PP1:ポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃;
・PP2:ポリプロピレンペレット(F133A;プライムポリマー社製;MFR3g/10分(230℃)、Tcps124.8℃。
・PP3:ポリプロピレンペレット(NBC03HR;日本ポリプロ社製;MFR32g/10分(230℃)、Tcps124℃。
・PP4:ポリプロピレンペレット(BXZ03HR;日本ポリプロ社製;MFR30g/10分(230℃)、Tcps130℃、タルク18%配合。
【実施例】
【0122】
(歪硬化剤)
歪硬化剤として以下の物質を使用した。
・長鎖分岐型PP1:「039N」(株式会社カネカ;長鎖分岐型ポリプロピレン、MFR60g/10分(230℃)、長鎖分岐あり、分岐指数g’0.75、溶融張力(200℃)1.1g);当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度9.0~11.5℃)を有していた。
・長鎖分岐型PP2:「045N」(株式会社カネカ;長鎖分岐型ポリプロピレン、MFR7g/10分(230℃)、長鎖分岐あり、分岐指数g’0.76、溶融張力(200℃)11.8g);当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度8.5~11.5℃)を有していた。
・長鎖分岐型PP3:「MFX6」(日本ポリプロ株式会社;長鎖分岐型ポリプロピレン、MFR3g/10分(230℃)、長鎖分岐あり分岐指数g’0.91、溶融張力(230℃)14.5g);当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度8.5℃)を有していた。
・アイオノマー1:「ハイミラン1705」(三井・デュポンポリケミカル株式会社;カルボキシル基含有ポリエチレンの金属架橋体、MFR5g/10分(190℃));当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度2.5℃)を有していた。
【実施例】
【0123】
・PTFE1:「メタブレンA-3000」(三菱レイヨン株式会社;ポリテトラフルオロエチレン(アクリル変性)、平均粒子径300μm);当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値(例えば、添加量0.5重量部以上、特に1重量部以上)のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度8℃)を有していた。PTFE1を全量に対して4重量%含む、PTFE1とMFR5g/10分(230℃)のポリプロピレンとの混合物のMFR(230℃)は3g/10分であった。
【実施例】
【0124】
・CNF1:セルロースナノファイバー(平均径100nm、平均長10μm);当該物質は、各実施例でのマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量が各実施例での値(例えば、添加量1重量部以上)のときに、歪硬化性を有し、かつ結晶化温度上昇特性(上昇温度7℃)を有していた。CNF1はマスターバッチの形態で使用した。
【実施例】
【0125】
(セルロースナノファイバーマスターバッチA)
PP1を100重量部およびCNF1を5.0重量部、270℃にて溶融混練、冷却および粉砕して、平均粒径3mmのセルロースナノファイバーマスターバッチAを得た。
セルロースナノファイバーマスターバッチの含有量はマトリクス用熱可塑性樹脂とマスターバッチ用熱可塑性樹脂との合計量100重量部に対して、CNF1単独の含有量が1重量部となるような量であった。
【実施例】
【0126】
(他の添加剤)
・低立体規則性PP1:「エルモーデュS901」(出光興産株式会社;低立体規則性ポリプロピレン、MFR50g/10分(230℃)、長鎖分岐なし);当該物質は短鎖分岐型であり歪硬化性も結晶化温度上昇特性も有さなかった。
【実施例】
【0127】
(結晶核剤マスターバッチA)
PP1を100重量部および結晶核剤としてのゲルオールMD(新日本化学社製、融点247℃)を5.0重量部、170℃にて溶融混練、冷却および粉砕して、平均粒径3mmの結晶核剤マスターバッチAを得た。
【実施例】
【0128】
(結晶核剤マスターバッチB)
PP1の代わりにPP2を用いたこと以外、結晶核剤マスターバッチAと同様の方法により、結晶核剤マスターバッチBを得た。
【実施例】
【0129】
[実施例A1]
(溶融混練工程)
表2に示す上記結晶核剤マスターバッチAおよび歪硬化剤、ならびにマトリクス用熱可塑性樹脂(主剤)としてのPP1をドライブレンドし、図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入した。結晶核剤マスターバッチの含有量はマトリクス用熱可塑性樹脂とマスターバッチ用熱可塑性樹脂との合計量100重量部に対して0.5重量部となるような量であった。歪硬化剤の含有量はマトリクス用熱可塑性樹脂とマスターバッチ用熱可塑性樹脂との合計量100重量部に対して表2に示す量となるような量であった。これらの混合物をシリンダ11内で230℃(=Tccf+127℃)にて溶融および混練しながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤としての窒素ガスをマトリクス用熱可塑性樹脂とマスターバッチ用熱可塑性樹脂との合計量100重量部に対して0.06重量部注入した。得られた熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度TccfおよびTccsを測定したところ、それぞれ103℃および130℃であり、Tccsでの貯蔵弾性率は1×10Paであった。
【実施例】
【0130】
(射出工程)
シリンダ11内の溶融物を、固定型21および可動型22からなる金型間のキャビティ23内に射出した。金型温度は40℃(=Tccf-63℃)であり、射出速度は40mm/秒であり、キャビティの厚みは2mmであった。本工程において、シリンダから金型内に射出してコアバックするまでの冷却速度v’ccf(℃/秒)は20℃/秒であった。このため、冷却速度20℃/sの時の結晶化温度をTccf(℃)としている。
【実施例】
【0131】
(コアバック(CB)工程)
射出後、金型キャビティ内で溶融物を40MPaにて様々な所定時間(CB遅延時間)(5.6~6.7秒間)の保圧を行った後、可動型22を8mmだけ速度20mm/秒にて固定型21の方向とは反対方向にコアバックさせることにより、発泡および繊維化させた。コアバック開始時において、溶融物の温度は94℃(=Tccf-9℃)~107℃(=Tccf+4℃)であり、溶融物中のセル径は20μm以下であった。発泡倍率は5倍であった。本工程において金型は40℃に維持した。CB遅延時間とは、射出完了後、コアバックを開始するまでの時間のことである。
【実施例】
【0132】
(冷却工程)
コアバック後、発泡体をそのまま40℃の金型内で保持することにより、冷却した。その後、金型を開いて図3Bに示す発泡成形品を得た。
【実施例】
【0133】
全てのCB遅延時間で得られた発泡樹脂成形品において、内部での繊維化が一様に達成されていた(表1において「〇」)。ウィンドウ温度幅は13℃であった。CB遅延時間5.6秒、6.3秒および6.7秒で得られた発泡樹脂成形品のコアバック方向に対する垂直断面および平行断面の顕微鏡写真(SEM)を撮影した(それぞれ図4Aおよび図4B(5.6秒)、図5Aおよび図5B(6.3秒)、ならびに図6Aおよび図6B(6.7秒))。得られたいずれの発泡成形品においても、平行断面の顕微鏡写真より、発泡成形品の内部が一様に繊維化されており、繊維がコアバック方向に対して略平行に配向していることを確認した。全ての成形ウィンドウ幅で、概ね同様の断面構造が得られた。特にコアバック温度が高いほど、気泡壁の繊維化が進行していた。コアバック温度の上限値107℃では、気泡壁はほとんど繊維化していた。
【実施例】
【0134】
実施例A1においては、後述の比較例A1と比較して、結晶化の促進や溶融粘性の改良により、成形可能な樹脂温度管理幅(成形ウィンドウ幅)を13℃まで拡大することができた。また広い温度範囲で5倍の発泡成形が可能となった。
【実施例】
【0135】
表2における成形ウィンドウ幅の評価は以下の基準に従った。
◎◎:成形ウィンドウ幅が12.5℃以上であった;
◎:成形ウィンドウ幅が10℃以上であった;
○:成形ウィンドウ幅が6.5℃以上10℃未満であった;
△:成形ウィンドウ幅が6℃以上6.5℃未満であった(実用上問題なし);
×:成形ウィンドウ幅が6℃未満であった。
【実施例】
【0136】
[比較例A1]
歪硬化剤を使用しなかったこと、溶融および混錬温度を210℃としたことおよび保圧を様々な所定時間(CB遅延時間)(5.6~6.2秒間)行ったこと以外、実施例A1と同様の方法により、発泡成形品の製造ならびに繊維化が達成されるウィンドウ温度幅および遅延時間の決定を行った。
【実施例】
【0137】
CB遅延時間5.7~6.1秒で得られた発泡樹脂成形品においては、内部での繊維化が達成されていたが(表1において「〇」)、CB遅延時間5.6または6.2秒で得られた発泡樹脂成形品においては、内部の繊維化は達成されていなかった(表1において「×」)。ウィンドウ温度幅は2.5℃であった。CB遅延時間5.6秒および6.2秒で得られた発泡樹脂成形品のコアバック方向に対する平行断面の全体写真を撮影した(図7(5.6秒)および図8(6.2秒))。
【実施例】
【0138】
【表1】
JP2019171871A_000006t.gif
【実施例】
【0139】
[実施例A2~A7、B1~B2、C1~C2およびD1~D5ならびに比較例A2~A9]
表2に示す主剤、結晶核剤マスターバッチおよび歪硬化剤を用いたこと、歪硬化剤の含有量を表2に示すように変更したこと、溶融および混錬温度を表2に示すように変更したこと、および保圧を様々な所定時間(CB遅延時間)行ったこと以外、実施例A1と同様の方法により、発泡成形品の製造ならびに繊維化が達成されるウィンドウ温度幅および遅延時間の決定を行った。
【実施例】
【0140】
【表2】
JP2019171871A_000007t.gif
【実施例】
【0141】
但し、各実施例/比較例においては、以下の温度条件であった。なお、コアバック工程での金型温度は射出工程での金型温度と同様であった。各実施例のコアバック工程におけるコアバック開始時において、溶融物中のセル径は20μm以下であった。
【実施例】
【0142】
【表3】
JP2019171871A_000008t.gif
【実施例】
【0143】
幾つかの実施例において、成形品内部の繊維の平均径、および繊維の数を測定した。
【実施例】
【0144】
【表4】
JP2019171871A_000009t.gif
【実施例】
【0145】
<実験例2>
実施例(実施例A1)および従来例(比較例A1)の樹脂組成物について、貯蔵弾性率(G’)および複素粘度(Eta*)を、溶融粘弾性(レオメーター)により測定し、図9および図10に示した。180℃の定温で歪1%とし、周波数0.01~100rad/sの範囲で測定した。実施例A1の樹脂組成物では、低周波数の領域で、貯蔵弾性率および複素粘度が上昇した。射出成形工程においては、歪硬化剤により、溶融状態での樹脂の硬さが上昇したものと考えられる。
【実施例】
【0146】
<実験例3>
(結晶化温度の冷却速度依存性)
実施例(実施例A1)および従来例(比較例A1)の樹脂組成物について、結晶化挙動を高速示差走査熱量計(Flash DSC;METTLER TOLEDO社製)により調べた(非等温結晶化)。詳しくは、射出成形工程を想定した冷却速度(1~100℃/秒)において、図11Bに示す結晶化開始温度(Ton)、結晶化ピーク温度(Tpc)、および結晶化終了温度(Tend)を高速示差走査熱量計(Flash DSC;METTLER TOLEDO社製)により測定し、図11Aに示した。冷却速度1~100℃/sでは、結晶化温度が80℃以上となった。LCB-PPは歪硬化剤(長鎖分岐型PP1)のことであり、これの添加によって、結晶化開始温度(Ton)、結晶化ピーク温度(Tpc)、および結晶化終了温度(Tend)等の結晶化温度が上昇した。射出成形工程においては、歪硬化剤により結晶核生成が促進されたものと考えられる。
【実施例】
【0147】
<実験例4>
(各結晶化温度での結晶化速度)
実施例(実施例A1)および従来例(比較例A1)の樹脂組成物について、各結晶化温度での結晶化速度を高速示差走査熱量計(Flash DSC;METTLER TOLEDO社製)により測定した(等温結晶化)。詳しくは、図12Aに示すように、結晶化温度毎に半結晶化時間をプロットした。半結晶化時間とは、図12Bに示すように、結晶化による発熱ピーク面積が半分になる時間のことである。射出成形工程において、結晶化温度80℃以上で歪硬化剤の添加により結晶化速度が増加し、結晶化温度が高いほど差が大きくなった。射出成形工程においては、歪硬化剤により、結晶化速度(特に核生成速度)が上昇したものと考えられる。
【実施例】
【0148】
<実験例5>
発泡樹脂成形品の寸法を600mm×800mm寸法で厚み(コアバック方向)2mmとしたこと、発泡倍率を2倍としたこと、およびCB遅延時間を6秒としたこと以外、実施例A1と同様の方法により、発泡樹脂成形品を製造した。内部の隅々まで、より十分な繊維化が起こっていた。
【実施例】
【0149】
<実験例6>
発泡樹脂成形品の寸法を600mm×800mm寸法で厚み(コアバック方向)2mmとしたこと、発泡倍率を2倍としたこと、およびCB遅延時間を6秒としたこと以外、比較例A1と同様の方法により、発泡樹脂成形品を製造した。内部の半分以上の領域で繊維化が全く起こっていなかった。
【実施例】
【0150】
<その他の物性の測定>
発泡成形品をコアバック方向に対して平行および垂直に切断し、それらの断面の顕微鏡写真を撮影した。
溶融物の結晶化温度TccsおよびTccf、溶融物のTccs(℃)での貯蔵弾性率、マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcps、コアバック開始時における溶融物の温度、コアバック開始時における溶融物の貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物中のセル径、繊維の平均径、繊維の数を前記した方法により測定した。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明に係る成形品の製造方法により製造される成形品は、衝撃吸収材、断熱材、吸音材として有用である。
【符号の説明】
【0152】
1:発泡射出成形装置
10:スクリューフィーダ
11:シリンダ
12:スクリュー軸
13:ホッパ
14:チェックリング
15:円錐形状のヘッド
16:ノズル
17:高圧ガス供給装置
20:金型装置
21:固定型
22:可動型
23:キャビティ
24:温度圧力センサー
25:冷却機構
30:繊維状物
31:32:非環状セル壁痕
33:環状セル壁
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3A】
2
【図3B】
3
【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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