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明細書 :化合物、発光材料および有機発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月19日(2020.3.19)
発明の名称または考案の名称 化合物、発光材料および有機発光素子
国際特許分類 C07D 401/10        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C07D 401/10 CSP
H05B 33/14 B
C09K 11/06 640
国際予備審査の請求
全頁数 71
出願番号 特願2019-517620 (P2019-517620)
国際出願番号 PCT/JP2018/017704
国際公開番号 WO2018/207750
国際出願日 平成30年5月8日(2018.5.8)
国際公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
優先権出願番号 2017092244
優先日 平成29年5月8日(2017.5.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】梶 弘典
【氏名】和田 啓幹
【氏名】久保 勝誠
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 3K107
4C063
Fターム 3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB08
3K107CC24
3K107CC45
3K107DD59
3K107DD66
3K107FF19
3K107FF20
3K107GG06
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC43
4C063DD16
4C063EE10
要約 下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、塗布法により膜形成できる、耐熱性に優れた発光材料である。R1およびR2は脂肪族基であり、少なくとも一方が多環脂肪族基である。A1~A5はNまたはC-R3(R3は水素原子または置換基)であり、A1~A5の少なくとも1つはC-R3(R3がドナー性基)である。A6~A8はNまたはC-R4であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、A6~A8の少なくとも1つはNである。Dはドナー性連結基である。
JP2018207750A1_000050t.gif
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物。
【化1】
JP2018207750A1_000046t.gif
[一般式(1a)および(1b)において、R1およびR2は各々独立に脂肪族基を表し、少なくとも一方は多環脂肪族基を表す。A1~A5は各々独立にNまたはC-R3を表し、R3は水素原子または置換基を表す。ただし、A1~A5の少なくとも1つはC-R3であって、R3がドナー性基である。A6~A8は各々独立にNまたはC-R4を表し、R4は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、A6~A8の少なくとも1つはNである。一般式(1b)において、Dはドナー性連結基を表す。分子内に存在する2つのR1、R2、A1~A8は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記多環脂肪族基が籠形脂肪族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1とR2がともに多環脂肪族基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
少なくとも1つのR3が、下記一般式(2)で表される構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【化2】
JP2018207750A1_000047t.gif
[一般式(2)において、R11~R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。*は結合位置を表す。]
【請求項5】
前記一般式(2)で表される構造が下記一般式(3)~(7)のいずれかで表される構造を有する、請求項4に記載の化合物。
【化3-1】
JP2018207750A1_000048t.gif
【化3-2】
JP2018207750A1_000049t.gif
[一般式(3)~(7)において、R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R59、R71~R80は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R54とR59、R55とR59、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R75とR76、R76とR77、R77とR78、R79とR80は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。*は結合位置を表す。]
【請求項6】
2がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、A1とA3がともにNであることはなく、A3がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるときA2とA4がともにNであることはなく、A4がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるときA3とA5がともにNであることはない、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1~A5がすべてC-R3である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
6~A8がすべてNである、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
炭素原子、窒素原子および水素原子のみからなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位の差ΔEstが0.3eV以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物からなる遅延蛍光体。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
【請求項14】
有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記化合物を発光層に含む請求項13または14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記発光層がホスト材料を含む請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
遅延蛍光を放射する請求項13~16のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項18】
CIE-XYZ表色系における色度座標xが0.16以下で、yが0.22以下である光を発光する請求項13~17のいずれか1項に記載の有機発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
無機原子を含まない有機発光材料は、分子設計の自由度が高いため、特性を多様に制御することができる。また、自然界に無尽蔵に存在する炭素原子や水素原子、窒素原子等から構成されるため、原料コストが安価であるなどの利点を有している。このため、無機原子を含まない有機発光材料が注目を集めている。
こうした有機発光材料を用いて発光素子の発光層を形成する場合、真空蒸着法を用いることが一般的である。しかし、真空蒸着法には大掛かりな真空蒸着設備が必要であり、真空蒸着を行うと基板以外にも蒸着粒子が付着して、その分の原料が無駄になってしまう。このため、真空蒸着法で発光素子を製造すると、製造コストが高くなってしまうという問題がある。また、特に、大型ディスプレイに適用される大面積の発光層を形成する場合には、全体に亘って膜厚を均一に制御することが難しいため、膜厚が不均一な不良品が出て歩留まりが低くなってしまうという問題もある。
そこで、簡易な設備で効率よく成膜を行うことができ、また、大面積の発光層を形成する場合であっても、その全体に亘って容易に膜厚を制御できる成膜法として、塗布法を発光素子の製造工程に導入する検討がなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2015-072915号公報
【特許文献2】特開2009-158535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、有機発光材料を塗布法により成膜するには、有機発光材料の溶液を調製して、これを基板の上に塗布し、乾燥する必要がある。しかしながら、これまでに提案されている有機発光材料は、有機溶媒に対する溶解性が低かったり、塗膜を乾燥する過程で膜中に微結晶が生じたりするため、塗布法により成膜することができないものが多い。そのため、有機発光材料で発光層を形成しようとすると、真空蒸着法のようなドライプロセスに依らざるを得ないことが多く、上記のようなコストや歩止まりの問題が避けられないのが現状である。
また、これまでに提案されている有機発光材料は、耐熱性が良好でないものが多く、夏場の車内など、高温状態下に置かれることがある有機発光素子(例えば、カーナビゲーションシステムや、ヘッドアップディスプレイ、または、屋外広告用ディスプレイに適用される有機発光素子。有機白色照明等)に使用するには安定性の点で問題があるものもある。
このように、従来提案されている有機発光材料は、塗布適性や耐熱性といった、実用性の面で必ずしも満足が行くものではなかった。
【0005】
そこで本発明者らは、有機溶媒に溶解させることにより容易に塗布法で膜形成をすることが可能であり、なおかつ耐熱性にも優れている新たな発光材料を提供することを目的として鋭意検討を進めた。さらに、塗布法を用いて効率よく製造することができ、実用性が高い有機発光素子を提供することも目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有する化合物が、発光性を有するとともに、塗布法による膜形成が可能で、しかも、耐熱性にも優れていることを見出し、以下に記載する本発明を提供するに至った。
【0007】
[1] 下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物。
【化1】
JP2018207750A1_000003t.gif
[一般式(1a)および(1b)において、R1およびR2は各々独立に脂肪族基を表し、少なくとも一方は多環脂肪族基を表す。A1~A5は各々独立にNまたはC-R3を表し、R3は水素原子または置換基を表す。ただし、A1~A5の少なくとも1つはC-R3であって、R3がドナー性基である。A6~A8は各々独立にNまたはC-R4を表し、R4は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、A6~A8の少なくとも1つはNである。一般式(1b)において、Dはドナー性連結基を表す。分子内に存在する2つのR1、R2、A1~A8は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
[2] 前記多環脂肪族基が籠形脂肪族基である、[1]に記載の化合物。
[3] R1とR2がともに多環脂肪族基である、[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 少なくとも1つのR3が、下記一般式(2)で表される構造を有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
【化2】
JP2018207750A1_000004t.gif
[一般式(2)において、R11~R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。*は結合位置を表す。]
[5] 前記一般式(2)で表される構造が下記一般式(3)~(7)のいずれかで表される構造を有する、[4]に記載の化合物。
【化3-1】
JP2018207750A1_000005t.gif
【化3-2】
JP2018207750A1_000006t.gif
[一般式(3)~(7)において、R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R59、R71~R80は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R54とR59、R55とR59、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R75とR76、R76とR77、R77とR78、R79とR80は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。*は結合位置を表す。]
[6] A2がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、A1とA3がともにNであることはなく、A3がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるときA2とA4がともにNであることはなく、A4がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるときA3とA5がともにNであることはない、[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] A1~A5がすべてC-R3である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の化合物。
[8] A6~A8がすべてNである、[1]~[7]のいずれか1項に記載の化合物。
[9] 炭素原子、窒素原子および水素原子のみからなる、[1]~[8]のいずれか1項に記載の化合物。
[10] 最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位の差ΔEstが0.3eV以下である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物。
[11] [1]~[10]のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
[12] [1]~[10]のいずれか1項に記載の化合物からなる遅延蛍光体。
[13] [1]~[10]のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
[14] 有機エレクトロルミネッセンス素子である[13]に記載の有機発光素子。
[15] 前記化合物を発光層に含む[13]または[14]に記載の有機発光素子。
[16] 前記発光層がホスト材料を含む[15]に記載の有機発光素子。
[17] 遅延蛍光を放射する[13]~[14]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[18] CIE-XYZ表色系における色度座標xが0.16以下で、yが0.22以下である光を発光する[13]~[17]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、発光性を有する化合物であって、有機溶媒に溶解させることにより容易に塗布法で膜形成をすることが可能であり、耐熱性にも優れている。そのため、本発明の化合物は、実用性が高く、発光材料として有用である。本発明の化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、塗布法を用いて効率よく製造することができ、また発光材料の耐熱性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
【図2】化合物2と化合物H1、H3~H5の薄膜の発光スペクトルである。
【図3】化合物2のドーピング濃度とフォトルミネッセンス量子収率φPLの関係を示すグラフである。
【図4】化合物1と化合物H3の薄膜および化合物H3のみからなる薄膜の発光スペクトルである。
【図5】化合物1と化合物H3の薄膜の発光の過渡減衰曲線である。
【図6】化合物1と化合物H3の薄膜を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
【図7】化合物1と化合物H3の共蒸着膜を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度-電圧-輝度特性を示すグラフである。
【図8】化合物1と化合物H3の共蒸着膜を発光層に用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率-電流密度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて1Hであってもよいし、一部または全部が2H(デューテリウムD)であってもよい。

【0011】
[一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物]
本発明の発光材料は、下記一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物からなることを特徴とする。
【化4】
JP2018207750A1_000007t.gif

【0012】
一般式(1a)および(1b)のそれぞれにおいて、A1~A5は各々独立にNまたはC-R3を表し、R3は水素原子または置換基を表す。ただし、A1~A5の少なくとも1つはC-R3であって、R3がドナー性基である。C-R3(ただしR3はドナー性基)であるものは、A1~A5のうちの1つであってもよいし、2つ以上であってもよいが、1~3つであることが好ましく、1つまたは2つであることがより好ましく、1つであることがさらに好ましい。また、A1~A5のうちでは、A2~A4の少なくとも1つがC-R3(ただしR3はドナー性基)であることが好ましく、少なくともA3がC-R3(ただしR3はドナー性基)であることがより好ましい。A1~A5のうちの2つ以上がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、複数のドナー性基は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(1b)において、分子内に存在する2つのA1~A5は互いに同一であっても異なっていてもよい。

【0013】
本発明における「ドナー性基」とは、ドナー性基が結合している原子群に対して電子を供与する基であることを意味する。例えば、ハメットのσp値が負である置換基の中から選択することができる。
ここで、「ハメットのσp値」は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
log(k/k0) = ρσp
または
log(K/K0) = ρσp
における置換基に特有な定数(σp)である。上式において、kは置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、k0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、Kは置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、K0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。本発明における「ハメットのσp値」に関する説明と各置換基の数値については、Hansch,C.et.al.,Chem.Rev.,91,165-195(1991)のσp値に関する記載を参照することができる。

【0014】
ドナー性基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、およびリン原子からなる群より選択されるヘテロ原子で結合する電子供与性の置換基や、電子供与性を示すアリール基を採用することが好ましい。電子供与性を示すアリール基は、通常は置換アリール基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、およびリン原子からなる群より選択されるヘテロ原子で結合する電子供与性の置換基で置換されたアリール基であることが好ましい。
また、ドナー性基は、置換もしくは無置換のジアリールアミノ構造を含むことが好ましく、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基で置換されたアリール基であることがより好ましい。ここで、「ジアリールアミノ構造」とは、ジアリールアミノ基と、ジアリールアミノ基のアリール基同士が単結合または連結基で連結して複素環を形成している複素芳香環構造の両方を意味することとする。ジアリールアミノ構造の各アリール基を構成する芳香環、および、ジアリールアミノ基で置換されたアリール基の各アリール基(ジアリールアミノ基の各アリール基とジアリールアミノ基で置換されているアリール基)を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。ジアリールアミノ構造およびジアリールアミノ基で置換されたアリール基の各アリール基を構成する芳香環の炭素数は、6~22であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~14であることがさらに好ましく、6~10であることがさらにより好ましい。各アリール基の具体例として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を挙げることができる。ジアリールアミノ構造およびジアリールアミノ基で置換されたアリール基が置換基を有する場合の置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR11~R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。ジアリールアミノ構造が上記の複素芳香環構造である場合のアリール基同士を連結する連結基の説明と好ましい範囲については、下記の一般式(2)のR15とR16が互いに結合して連結基を形成している場合の連結基の説明と好ましい範囲を参照することができる。

【0015】
ドナー性基は、下記の一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【化5】
JP2018207750A1_000008t.gif

【0016】
一般式(2)において、R11~R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。一般式(2)において、R11~R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R11~R20のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。R11~R20のうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を表す。
11~R20がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数1~20のアリール置換アミノ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数7~21のアリールアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数1~20のアリール置換アミノ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、一般式(1a)または一般式(1b)に存在する1つのR3を単結合に変えた基である。

【0017】
11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。

【0018】
一般式(2)で表される基の中では、R15とR16が互いに結合していないもの、R15とR16が互いに単結合で結合しているもの、または、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成しているものが好ましい。R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成している場合、R15とR16が互いに結合した結果として形成される環状構造は6員環となる。R15とR16が互いに結合して形成される連結基の具体例として、-O-、-S-、-N(R91)-または-C(R92)(R93)-で表される連結基が挙げられる。ここにおいて、R91~R93は各々独立に水素原子または置換基を表す。R91がとりうる置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基を例示することができる。R92およびR93がとりうる置換基としては、各々独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数1~20のアリール置換アミノ基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~20のアルキルアミド基、炭素数7~21のアリールアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基等を例示することができる。

【0019】
一般式(2)で表される基の好ましい例として、下記一般式(3)~(7)のいずれかで表される基を挙げることができる。
【化6-1】
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【化6-2】
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【0020】
一般式(3)~(7)において、R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R59、R71~R80は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11~R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。R21~R24、R27~R38、R41~R48、R51~R59、R71~R80は、各々独立に上記一般式(3)~(7)のいずれかで表される基であることも好ましい。*は結合位置を表す。一般式(7)のR79およびR80は置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。また、一般式(7)のR79およびR80は置換もしくは無置換のアリール基であることも好ましく、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~10の置換もしくは無置換のアリール基であることがさらに好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。さらに、一般式(7)のR79およびR80が置換もしくは無置換のアリール基であるとき、そのアリール基同士が互いに結合して環状構造を形成していることも好ましい。一般式(3)~(7)における置換基の数は特に制限されない。すべてが無置換(すなわち水素原子)である場合も好ましい。また、一般式(3)~(7)のそれぞれにおいて置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。一般式(3)~(7)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(3)であればR22~R24、R27~R29のいずれかであることが好ましく、R23およびR28の少なくとも1つであることがより好ましく、一般式(4)であればR32~R37のいずれかであることが好ましく、一般式(5)であればR42~R47のいずれかであることが好ましく、一般式(6)であればR52、R53、R56、R57、R59のいずれかであることが好ましく、一般式(7)であればR72~R77、R79、R80のいずれかであることが好ましい。

【0021】
一般式(3)~(7)において、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R54とR59、R55とR59、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R75とR76、R76とR77、R77とR78、R79とR80は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造の説明と好ましい例については、上記の一般式(2)において、R11とR12等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。

【0022】
一般式(6)で表される基には、特に下記一般式(6’)で表される基が好ましく包含される。
【化7】
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【0023】
一般式(6’)において、R51~R58、R61~R65は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R54とR61、R55とR65は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。*は結合位置を表す。

【0024】
1~A5のうち、C-R3(ただしR3はドナー性基)であるものの他は、NまたはC-R3であって、R3が水素原子またはドナー性基以外の置換基である。ここでのR3は水素原子であることが好ましい。R3がドナー性基以外の置換基であるとき、その置換基はσp値が1以下のものであることが好ましく、0.5以下のものであることがより好ましく、0.2以下のものであることがさらに好ましい。A1~A5のうちNであるものの数は、0であっても1~4つであってもよいが、0~2つであることが好ましく、0または1つであることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。すなわち、A1~A5はすべてC-R3であることが好ましい。
また、A1~A5は下記条件Iを満たすことが好ましい。これにより、ドナー性基と、そのドナー性基が結合している原子の両隣か片隣の炭素原子に結合しているR3との間の立体相互作用により、分子の立体構造にねじれを生じさせることができる。
(条件I)
2がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、A1とA3がともにNであることはなく、A3がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、A2とA4がともにNであることはなく、A4がC-R3(ただしR3はドナー性基)であるとき、A3とA5がともにNであることはない。

【0025】
一般式(1a)および(1b)のそれぞれにおいて、A6~A8は各々独立にNまたはC-R4を表し、R4は水素原子またはアルキル基を表す。ただし、A6~A8の少なくとも1つはNである。Nであるものは、A6~A8のうちの1つまたは2つであってもよいし、A6~A8のすべてがNであってもよいが、A6~A8のすべてがNであることが好ましい。A6~A8のうちの1つまたは2つがNであるとき、その残りはC-R4である。R4におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。好ましい炭素数は1~20であり、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~6である。例えば、メチル基、エチル基などを例示することができる。A6~A8のうちの2つがC-R4であるとき、その2つのR4は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、一般式(1b)において、分子内に存在する2つのA6~A8は互いに同一であっても異なっていてもよい。

【0026】
一般式(1a)および(1b)のそれぞれにおいて、R1およびR2は各々独立に脂肪族基を表し、少なくとも一方は多環脂肪族基を表す。一般式(1b)において、分子内に存在する2つのR1、R2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明における「脂肪族基」とは、非芳香族性の炭素化合物であって、環状構造を有するものであっても、環状構造を有しないものであってもよい。また、脂肪族基は、脂肪族炭化水素から水素原子を1つ除いた脂肪族炭化水素基であってもよいし、脂肪族炭化水素基の炭素原子や水素原子がヘテロ原子で置き換わったヘテロ脂肪族基であってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。ヘテロ脂肪族基を構成するヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、およびリン原子等を挙げることができ、窒素原子であることが好ましい。
本発明における「多環脂肪族基」とは、脂肪族基のうち、脂肪族多環構造を有するもののことをいい、「脂肪族多環構造」とは、2以上の脂環が互いに2以上の原子を共有して縮合した構造のことをいう。多環脂肪族基を構成する脂肪族多環構造は、一般式(1a)または一般式(1b)におけるA6~A8を有する6員環の炭素原子へ単結合で結合していてもよく、アルキレン基等の2価の脂肪族基を介して連結していてもよいが、A6~A8を有する6員環の炭素原子へ単結合で結合していることが好ましい。また、多環脂肪族基が有する脂肪族多環構造は、1つであっても、2つ以上であってもよい。多環脂肪族基が2つ以上の脂肪族多環構造を有する場合、複数の脂肪族多環構造は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、この場合、隣り合う脂肪族多環構造同士は単結合で結合していてもよく、アルキレン基等の2価の脂肪族基で連結していてもよい。
多環脂肪族基を構成する脂肪族多環構造として、縮合環構造、橋かけ環構造または籠型構造を挙げることができる。脂肪族多環構造を構成する各単環の環員数は、3~8であることが好ましく、4~7であることがより好ましく、5または6であることがさらに好ましい。脂肪族多環構造を構成する環の数は2~10であることが好ましく、2~6であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましい。これらの中で、好ましい脂肪族多環構造は、籠型構造、または、縮合環構造もしくは橋かけ環構造を有するビシクロ環およびトリシクロ環であり、より好ましい脂肪族多環構造は籠型構造である。多環脂肪族基は、籠型構造を有し、その籠型構造を構成するいずれかの炭素原子がA6~A8を有する6員環の炭素原子へ単結合で結合した構造を有する籠型脂肪族基であることが特に好ましい。籠型構造を有する脂環の具体例として、アダマンタン、キュバン、キュネアン、カルフェン、フラーレン(C60、C70、C84等)を挙げることができ、アダマンタンであることが好ましい。アダマンタンを有する多環脂肪族基(アダマンチル基)は、1-アダマンチル基であっても、2-アダマンチル基であってもよいが、1-アダマンチル基であることが好ましい。また、ここで挙げた脂肪族多環構造の具体例は置換基で置換されていてもよい。この置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11~R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができ、それらの中で、芳香環を含まない置換基であることが好ましい。

【0027】
1およびR2のうち、多環脂肪族基であるものは、R1およびR2の一方であってもよいし、R1およびR2の両方であってもよいが、R1およびR2の両方が多環脂肪族基であることが好ましい。R1およびR2の両方が多環脂肪族基であるとき、それらの多環脂肪族基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
1およびR2の一方が多環脂肪族基であるとき、他方が表す脂肪族基は、直鎖状、分枝状、単環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状の脂肪鎖と、単環である脂環が連結した構造を有していてもよい。R1およびR2の他方が表す脂肪族基の好ましい炭素数は1~85であり、より好ましくは1~40であり、さらに好ましくは1~20である。脂肪族基の具体例として、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基等を挙げることができる。また、ここで挙げた脂肪族基の具体例は置換基で置換されていてもよい。この置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11~R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができ、それらの中で、芳香環を含まない置換基であることが好ましい。

【0028】
一般式(1b)において、Dはドナー性連結基を表す。
本発明における「ドナー性連結基」とは、一般式(1b)の括弧で括られた構成単位の2つを互いに連結する2価の基であって、そのドナー性連結基が結合している原子群に対して電子を供与するもののことを意味する。ドナー性連結基の例として、2つのドナー性基が互いに連結した構造を有する2価の基を挙げることができる。ドナー性基の説明と好ましい範囲については、上記のR3における「ドナー性基」の説明と好ましい範囲を参照することができる。2つのドナー性基が互いに連結した構造を有する2価の基として、例えば上記の一般式(2)で表される基のR11~R19のいずれかを連結位置とするか、またはR15とR16が互いに結合して形成した環状構造における、水素原子と置換可能な位置を連結位置として、2つの一般式(2)で表される基が互いに連結した構造を有する2価の基を挙げることができる。ここで、2つの一般式(2)で表される基は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、2つの一般式(2)で表される基は単結合で連結していてもよいし、スピロ結合で連結していてもよいし、フェニレン基等のアリーレン基やアルキレン基等の連結基を介して連結していてもよい。ドナー性連結基の好ましい例として、下記一般式(7a)で表される基を挙げることができる。一般式(7a)のR71~R78の説明については、一般式(7)のR71~R78についての説明を参照することができる。ドナー性連結基内に存在する2つのR71~R78は互いに同一であっても異なっていてもよい。

【0029】
【化8】
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【0030】
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、炭素原子、窒素原子および水素原子のみからなる化合物とすることが可能である。例えば、フッ素原子、リン原子、硫黄原子等の分子に極性を生じやすい原子を化合物が含むと、有機溶媒に対する化合物の溶解性が低くなることがあるが、化合物が炭素原子、窒素原子および水素原子のみから構成されていると、有機溶媒に対して良好な溶解性を示し、塗布法を用いて、その化合物の膜をより容易に成膜しやすくなる場合がある。

【0031】
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、最低励起一重項エネルギー準位S1と最低励起三重項エネルギー準位T1の差ΔEstが小さい化合物であることが好ましい。具体的には、ΔEstは0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.05eV以下であることがさらにより好ましい。なお、ここでいうΔEstは、 Q. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 136, 18070 (2014)の18077頁に記載の手法により、同文献の式(15)から求められる。

【0032】
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物として、以下の構造を有する化合物を例示することができる。ただし、本発明において用いることができる一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。

【0033】
【化9-1】
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【化9-2】
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【0034】
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1a)がとりうる最も小さな分子量であり、好ましくは一般式(1a)がとりうる最も小さな分子量よりも20多い分子量以上である。
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、分子量によらず優れた塗布適性を有しており、塗布法により容易に成膜することができる。

【0035】
本発明を応用して、分子内に一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1a)のR1~R4のいずれか、または、一般式(1b)のR1~R4、Dのいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。

【0036】
一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(11)または(12)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化10】
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【0037】
一般式(11)または(12)において、Qは一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より好ましくは1~15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基としては、例えば-X11-L11-で表される構造を有するものを採用することができる。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(11)または(12)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1a)または一般式(1b)の構造のR1~R3のいずれか、一般式(2)のR11~R20のいずれか、一般式(3)の構造のR21~R24、R27~R30のいずれか、一般式(4)の構造のR31~R38のいずれか、一般式(5)の構造のR41~R48のいずれか、一般式(6)の構造のR51~R59のいずれか、一般式(6’)の構造のR51~R58、R61~R65のいずれか、一般式(7)の構造のR71~R80のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
一般式(11)または(12)で表される構造は、本発明の効果を過度に損なわないように決定することが好ましい。

【0038】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記一般式(13)~(16)で表される構造を挙げることができる。
【化11】
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【0039】
これらの式(13)~(16)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1a)の構造のR1~R4のいずれか、または、一般式(1b)のR1~R4、Dのいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化12】
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【0040】
分子内に一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を含む重合体は、一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。ここで、2種以上とは、一般式(1a)で表される構造を有する繰り返し単位が2種以上である場合、一般式(1b)で表される構造を有する繰り返し単位が2種以上である場合、一般式(1a)で表される構造を有する繰り返し単位が1種以上と一般式(1b)で表される構造を有する繰り返し単位が1種以上の全てを含む。一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。

【0041】
[一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物の合成方法]
一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は新規化合物である。既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。
具体的には、例えば下記のスキームにしたがって一般式(1a)で表される化合物を合成することができる。
【化13】
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【0042】
上記スキームにおいて、D'はドナー性基を表し、Hは水素原子を表し、R1およびR2は各々独立に脂肪族基を表し、少なくとも一方は多環脂肪族基を表す。Z1~Z5は各々独立にNまたはC-R3’を表し、R3’は水素原子または置換基を表す。ただし、Z1~Z5の少なくとも1つはC-R3’であって、R3’がハロゲン原子である。ドナー性基、A7~A8、R1、R2が表す基については、上記の一般式(1a)の対応する説明と好ましい範囲を参照することができる。R3’におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、例えば臭素原子を採用することができる。R3’におけるハロゲン原子以外の置換基の説明については、一般式(1a)のR3におけるドナー性基以外の置換基の説明を参照することができる。
また、一般式(1b)で表される化合物は、上記のスキームにおけるD’-Hの代わりに、H-D-H(Dはドナー性連結基を表し、Hは水素原子を表す)を用いることにより合成することができる。Dの説明と好ましい範囲、具体例については、上記の一般式(1b)の対応する説明と好ましい範囲を参照することができる。
反応条件の詳細や手順については、後述の実施例を参照することができる。

【0043】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、発光性を有し、特に良好な青色光を発光することができるため、有機発光素子の発光材料として有用である。本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を発光材料として用いることにより、良好な青色光を発光する有機発光素子を容易に実現することができる。例えば、CIE-XYZ表色系における色度座標xが0.23以下でyが0.23以下、好ましくはxが0.20以下でyが0.20以下、より好ましくはxが0.15以下でyが0.20以下、さらにより好ましくはxが0.15以下でyが0.15以下、特に好ましくはxが0.15以下でyが0.13以下である光を発光しうる化合物を提供することが可能である。このため、本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。
また、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1a)または一般式(1b)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。

【0044】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項-三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の逆項間交差機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。

【0045】
さらに、本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、真空蒸着法による成膜が可能であるとともに、溶媒に容易に溶解して塗布法によっても成膜することができ、いずれの成膜方法を用いた場合でも、上記のような優れた発光特性を発現する。また、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物の成膜方法として塗布法を採用した場合には、大掛かりな成膜装置を用いずに、その化合物の有機膜を均一な膜厚で効率よく塗布形成することができるため、有機発光素子の製造効率を各段に向上させることができる。また、さらに、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、熱安定性が高く、実用面においても優れている。そのため、この化合物を含む有機発光素子は、高温環境下においても安定な発光性能が得られ、例えばカーナビゲーションシステムや、ヘッドアップディスプレイの表示素子、車載照明、屋外用ディスプレイとして効果的に用いることができる。

【0046】
本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。

【0047】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。

【0048】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23-ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.(ohms per square)以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10~1000nm、好ましくは10~200nmの範囲で選ばれる。

【0049】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/ sq.(ohms per square)以下が好ましく、膜厚は通常10nm~5μm、好ましくは50~200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。

【0050】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料とホスト材料を含む層である。ただし、発光材料を単独で発光層に使用しても良い。発光材料としては、一般式(1a)または一般式(1b)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、ホスト材料を用いる場合としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1~99.9重量%とすることができる。上限値は、例えば50重量%未満、20重量%以下、10重量%以下にしてもよい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。

【0051】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。

【0052】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。

【0053】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。

【0054】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。

【0055】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。

【0056】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。

【0057】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。

【0058】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。

【0059】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R1~R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3~5の整数を表す。

【0060】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。

【0061】
【化14】
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【0062】
【化15】
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【0063】
【化16】
JP2018207750A1_000021t.gif

【0064】
【化17】
JP2018207750A1_000022t.gif

【0065】
【化18】
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【0066】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0067】
【化19】
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【0068】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0069】
【化20】
JP2018207750A1_000025t.gif

【0070】
【化21-1】
JP2018207750A1_000026t.gif
【化21-2】
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【0071】
【化22】
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【0072】
【化23】
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【0073】
【化24】
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【0074】
【化25】
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【0075】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0076】
【化26】
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【0077】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0078】
【化27】
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【0079】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0080】
【化28】
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【0081】
【化29】
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【0082】
【化30】
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【0083】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。

【0084】
【化31】
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【0085】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。

【0086】
【化32】
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【0087】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。

【0088】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1a)または一般式(1b)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0089】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、蛍光燐光分光光度計((株)堀場製作所社製:Fluoromax-4P)、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)社製:Quantaurus-Tau C11367-01)、窒素クライオスタット(オックスフォード・インストゥルメンツ社製:OptistatDN2)、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)社製:C9920-02)、外部量子効率測定装置(浜松ホトニクス(株)社製:C9920-12)およびソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)を用いて行い、CIE色度座標の測定は、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)社製:C9920-02)および、外部量子効率測定装置(浜松ホトニクス(株)社製:C9920-12)を用いて行い、熱特性の評価は、差動型示差熱天秤(ネッチ・ジャパン(株)社製:TG-DTA2000SEα)および、示唆走査熱量測定装置(メトラー・トレド(株)社製:DSC1)を用いて行った。また、以下において「即時蛍光」とは、発光の過渡減衰曲線において発光寿命が50ns以下である蛍光であり、「遅延蛍光」とは、発光の過渡減衰曲線において発光寿命が0.2μs以上である蛍光である。
【実施例】
【0090】
(合成例)
以下の手順にしたがって、化合物1~3を合成した。
【化33】
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【実施例】
【0091】
Ar雰囲気下で、4-ブロモベンゾイルクロライド(1.72g、7.84mmol)および1-アダマンタンカルボニトリル(2.50g、15.5mmol)を10mLの超脱水塩化メチレンに溶解し、氷浴中で0~5℃で30分間撹拌した。得られた溶液に塩化アンチモン(V)溶液(塩化メチレン中1.0M)(8.5mL、8.5mmol)を滴下し、ゆっくりと室温まで温めた。反応混合物を室温で1時間撹拌し続け、45℃で38時間還流した。その後、室温まで冷却し、緑白色固体を濾過し、塩化メチレンで洗浄した。次いで、28%アンモニア溶液(0~5℃)55mLにゆっくり加え、氷浴中で30分間撹拌した。混合物を室温に温めて16.5時間撹拌し、得られた白色固体をろ過し、蒸留水で洗浄した。乾燥後、固体をトルエンに溶解し、熱濾過を2回行った。濾液を蒸発させた後、少量のアセトンで洗浄し、2,4-ジ(アダマンタン-1-イル)-6-(4-ブロモフェニル)-1,3,5-トリアジン1.10g(2.18mmol、収率28.1%)を白色固体として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3), δ(ppm) : 8.47 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 2.08-2.13 (m, 18H), 1.79-1.84 (m, 12H).
【実施例】
【0092】
【化34】
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【実施例】
【0093】
9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン(211mg、1.01mmol)、2,4-ジ(アダマンタン-1-イル)-6-(4-ブロモフェニル)-1,3,5-トリアジン(456mg、0.30mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(NaOtBu、255mg、2.66mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(XP
hos、26.0mg、54.5μmol)および酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2,8.4mg、37.4μmol)を超脱水トルエン(10.0mL)に溶解し、110℃で3.5時間攪拌した。室温に冷却後、有機層をクロロホルム/塩水で抽出した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。次いで、溶離剤としてクロロホルムを用いて粗製物をシリカゲルを通してろ過し残留触媒を除去した。溶媒を除去した後、少量のクロロホルムに溶解し、貧溶媒としてアセトンを添加することにより沈殿精製して、化合物を中程度の収率(451mg、79%)の白色固体として得た。
同様にして、化合物2を収率82.1%、化合物3を収率82.0%で得た。
化合物1:
1H NMR (800 MHz, CDCl3), δ(ppm) : 8.84-8.86 (m, 2H), 7.46-748 (m, 4H), 6.93-6.97 (m, 4H), 6.33-6.34 (m, 2H) 2.16 (18H), 1.83 (12H) 1.72 (s, 6H).
13C-NMR (201 MHz, CDCl3), δ(ppm) : 184.35, 169.70, 144.67, 140.64, 136.86, 131.38, 131.33, 130.11, 126.37, 125.29, 120.71, 114.13, 41.29, 40.67, 36.82, 36.01, 31.30, 28.55.
APCI-MS (m/z): [M+H]+ calcd. for C44H49N4, 633.3957; found, 633.3976.
Elemental analysis calcd. (%) for C44H48N4: C, 83.50; H, 7.70; N, 8.89; found: C, 83.50; H, 7.64; N, 8.85.
化合物2:
1H NMR (800 MHz, CD2Cl2), δ(ppm) : 8.93-8.95 (m, 2H), 7.85 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.65-7.67 (m, 2H), 7.43 (d, J = 7.5 Hz, 2H) 7.41 (td, J = 7.4 Hz, 0.96 Hz, 2H), 7.30 (td, J = 7.4 Hz, 0.96 Hz, 2H) 6.93 (ddd, J = 8.5 , 7.0, 1.5 Hz, 2H) 6.57-6.59 (m, 2H) 6.44 (dd, J = 8.6 Hz, 0.88 Hz, 2H) 6.38 (dd, J = 7.8 Hz, 0.80 Hz) 2.19 (d, J = 2.9 Hz, 12H), 2.16 (m, 6H) 1.84-1.88 (m, 12H).
13C-NMR (201 MHz, CD2Cl2), δ(ppm) : 184.14, 169.39, 156.25, 144.11, 140.80, 138.95, 136.95, 131.17, 131.04, 128.06, 127.41, 127.24, 126.99, 125.23, 124.51, 120.29, 119.74, 114.48, 56.48, 41.03, 40.36, 36.50, 28.43.
APCI-MS (m/z): [M+H]+ calcd. for C54H51N4, 755.4114; found, 755.4103.
Elemental analysis calcd. (%) for C54H50N4: C, 86.07; H, 6.74; N, 7.35; found: C, 85.90; H, 6.68; N, 7.41.
化合物3:
1H NMR (800 MHz, CD2Cl2), δ(ppm) : 8.74-8.76 (m, 2H), 7.25-7.30 (6H), 7.22-7.23 (m, 2H), 7.03-7.06 (m, 2H), 7.01-7.03 (m, 4H), 6.87-6.90 (m, 4H), 6.48 (m, 2H), 2.13-2.14 (18H), 1.81-1.85 (m, 12H).
13C-NMR (201 MHz, CD2Cl2), δ(ppm) : 184.04, 169.35, 146.21, 143.92, 141.61, 136.63, 130.96, 130.59, 130.03, 129.73, 129.33, 127.31, 126.57, 126.01, 120.01, 113.84, 56.43, 40.97, 40.32, 36.48, 28.40.
APCI-MS (m/z): [M+H]+ calcd. for C54H53N4, 757.4270; found, 755.4280.
Elemental analysis calcd. (%) for C54H52N4: C, 85.77; H, 6.97; N, 7.33; found: C, 85.68; H, 6.92; N, 7.40.
【実施例】
【0094】
(評価1) 化合物1~3のトルエン溶液の調製と評価、および、化合物1~3と化合物H5を用いた有機フォトルミネッセンス素子の塗布法による作製と評価
合成例で合成した化合物1~3の各化合物について、ガラス転移温度Tgおよび熱分解温度Tdを測定した結果を表1に示す。ここで、熱分解温度Tdは、TGA曲線で重量が5%減少したときの温度である。
また、化合物1~3の各化合物について、10-5mol/Lのトルエン溶液を調製した。
さらに、石英基板上に、スピンコート法により、化合物1~3のいずれかと化合物H5とを10重量%の重量比で混合した10mg/mLクロロホルム溶液を滴下し、1000rpmの回転数で30秒間回転させることで溶媒を乾燥させ、各薄膜を作製し、有機フォトルミネッセンス素子とした。
調製した化合物1~3の各トルエン溶液、および、化合物1~3のいずれかと化合物H5からなる各薄膜に、330nm励起光を照射し、その発光極大波長を測定した。また、各トルエン溶液について、Arバブリングを行う前と後で、それぞれ、369nm、379nm、350nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)を測定し、各薄膜について、窒素気流下で、302nm、303nm、280nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
また、比較として、下記の比較化合物Aのガラス転移温度Tgおよび熱分解温度Tdを同じ条件で測定した。また、比較化合物Aのトルエン溶液(濃度10-5mol/L)の383nm励起光による発光極大波長を測定した。その結果も表1に示す。
【実施例】
【0095】
【化35】
JP2018207750A1_000041t.gif
【実施例】
【0096】
【表1】
JP2018207750A1_000042t.gif
【実施例】
【0097】
表1に示すように、化合物1~3の各トルエン溶液、および、化合物1~3のいずれかと化合物H5からなる各薄膜は、いずれも高いPL量子収率を有していた。また、化合物1~3は、比較化合物Aに比べて高いガラス転移温度Tgと熱分解温度Tdを有しており、熱安定性に優れていることがわかった。
【実施例】
【0098】
(評価2) 化合物2と各種ホスト化合物を用いた有機フォトルミネッセンス素子の塗布法による作製と評価
石英基板上に、スピンコート法により、化合物2と表2に示すホスト化合物とを化合物2の濃度が10~100重量%となるように調製した10mg/mLクロロホルム溶液を滴下し、1000rpmの回転数で30秒間回転させることで溶媒を乾燥させ、各薄膜を作製し、有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物2の濃度を10重量%とした各薄膜の発光スペクトルを図2に示し、フォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)およびCIE色度座標(x,y)を表2に示す。各薄膜における化合物2のドーピング濃度のPL量子収率と関係を図3に示す。ここで、発光スペクトル、PL量子収率およびCIE色度座標の測定に用いた励起光の波長は、化合物H1をホスト化合物に用いた薄膜で297nm、化合物H2をホスト化合物に用いた薄膜で287nm、化合物H3をホスト化合物に用いた薄膜で280nm、化合物H4をホスト化合物に用いた薄膜で273nm、化合物H5をホスト化合物に用いた薄膜で280nmである。図2中に示した「化合物H1」、「化合物H3」~「化合物H5」は、その化合物をホスト化合物に用い、10重量%の化合物2を含む薄膜であることを表し、図3中に示した「化合物H1」~「化合物H5」は、その化合物をホスト化合物に用い、化合物2の濃度を変えた薄膜であることを表す。
【実施例】
【0099】
【表2】
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【実施例】
【0100】
表2に示すように、各薄膜は、いずれも高いPL量子収率を有しており、特に化合物H3~H5をホスト化合物に用いた各薄膜で、高いPL量子収率を得ることができた。また、各薄膜からCIE色度座標が(x≦0.16、y≦0.22)である良好な青色光を観測することができ、特に化合物H1~H3をホスト化合物に用いた各薄膜で、CIE色度座標が(x≦0.16、y≦0.13)である極めて良好な青色光を観測することができた。
【実施例】
【0101】
(評価3) 化合物1と化合物H3を用いた有機フォトルミネッセンス素子の塗布法による作製と評価
石英基板上に、スピンコート法により、化合物1と化合物H3とを10重量%の重量比で混合した10mg/mLクロロホルム溶液を滴下し、1000rpmの回転数で30秒間回転させることで溶媒を乾燥させ、各薄膜を作製し、有機フォトルミネッセンス素子とした。
また、これとは別に、上記溶液をキャスト法にて石英基板上に塗布真空乾燥することにより、化合物1の濃度が10重量%であるキャスト膜を形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物1と化合物H3の薄膜(キャスト膜)の300nm励起光による発光特性を評価した。キャスト膜の発光スペクトル、および比較として化合物H3のみを蒸着した薄膜の発光スペクトルを図4に示す。図4中に示した「10wt%化合物1:化合物H3」は、化合物1と化合物H3のキャスト膜であることを表し、「化合物H3」は、化合物H3のみを蒸着した薄膜であることを表す。
化合物1と化合物H3のキャスト膜は、PL量子収率が93%、CIE色度座標(x,y)が(0.15,0.18)であり、良好な発光特性を有した。このことから、化合物1は、塗布法によって、優れた発光層として成膜できることがわかった。
また、化合物1と化合物H3のスピンコート膜について、200K、220K、240K、260K、280Kまたは300Kで測定した発光の過渡減衰曲線を図5に示す。なお、発光の検出波長は457nmである。300Kで測定した発光寿命は、即時蛍光で14.5ns、遅延蛍光で9.1μsであり、PL量子収率は、即時蛍光で62.2%、遅延蛍光で30.8%、これらの合計で93%であった。これらの測定結果から、化合物1が熱活性型の遅延蛍光材料であることを確認することができた。
【実施例】
【0102】
(評価4) 発光層を塗布法で成膜した有機エレクトロルミネッセンス素子の評価
膜厚50nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各膜をスピンコート法にて積層した。まず、ITO上に、50質量%のPEDOT:PSS(へレウス社製:CH8000)の水溶液を滴下し、500rpmで1秒間、4000rpmで10秒間、500rpmで1秒間の条件でスピンコートを順に行った後、150℃で10分間熱処理することにより、厚さ45nmのPEDOT:PSS膜を形成した。次に、PEDOT:PSS膜の上に、10質量%のPVK(ポリ(9-ビニルカルバゾール):シグマアルトリッチ社製、重量平均分子量~110万)の1,2-ジクロロベンゼン溶液を滴下し、2000rpmで30秒間スピンコートした後、120℃で10分間熱処理することにより、厚さ15nmのPVK膜を形成した。次に、PVK膜の上に、化合物1と化合物H3を質量比で10:90、合計濃度で10mg/mLとなるように溶解したトルエン溶液を滴下し、2200rpmで30秒間スピンコートした後、100℃で10分間熱処理することにより、化合物1の濃度が10質量%である膜を厚さ35nmに形成して発光層とした。
次に、発光層の上に、真空度10-4Pa未満の真空蒸着法により、化合物H4を5nmの厚さに形成した後、TPBiを50nmの厚さに形成し、その上に、Liqを1nmの厚さに形成した。続いて、真空度10-4Pa未満の真空蒸着法により、Alを80nmの厚さに蒸着して陰極を形成した。
以上の工程により、ITO(50nm)/PEDOT:PSS(45nm)/PVK(15nm)/10質量%化合物1、化合物H3(35nm)/化合物H4(5nm)/TPBi(50nm)/Liq(1nm)/Al(80nm)(ただし、「/」は層の境界を表し、かっこ内の数値は膜厚を表す)の層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図6に示す。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率EQEMAXが22.1%、100cd/m2での外部量子効率が13.9%、CIE色度座標(x,y)が(0.15,0.19)であり、高い発光効率と、非常に良好な青色発光を実現することができた。
【実施例】
【0103】
(評価5) 発光層を真空蒸着法で成膜した有機エレクトロルミネッセンス素子の評価
膜厚50nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度10-4Pa未満で積層した。まず、ITO上に、厚さ60nmのTAPCを形成し、その上に厚さ10nmの化合物H2を形成した。続いて、化合物1と化合物H3を異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は10質量%とした。次に、発光層の上に、化合物H5を10nmの厚さに形成し、その上に、BmPyPhBを30nmの厚さに形成した。続いて、Liqを1nmの厚さに形成し、その上に、Alを80nmの厚さに蒸着して陰極を形成した。
以上の工程により、ITO(50nm)/TAPC(60nm)/化合物H2(10nm)/10質量%化合物1、化合物H3(20nm)/化合物H5(10nm)/BmPyPhB(30nm)/Liq(1nm)/Al(80nm)(ただし、「/」は層の境界を表し、かっこ内の数値は膜厚を表す)の層構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(素子1)を得た。
また、これとは別に、発光層における化合物1の濃度を20質量%としたこと以外は、素子1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(素子2)を作製し、さらに、化合物H3の代わりにmCBPを用いて発光層を形成したこと以外は、素子1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(素子3)を作製した。各素子の素子構成を以下に示す。
素子2:ITO(50nm)/TAPC(60nm)/化合物H2(10nm)/20質量%化合物1、化合物H3(20nm)/化合物H5(10nm)/BmPyPhB(30nm)/Liq(1nm)/Al(80nm)
素子3:ITO(50nm)/TAPC(60nm)/化合物H2(10nm)/10質量%化合物1、mCBP(20nm)/化合物H5(10nm)/BmPyPhB(30nm)/Liq(1nm)/Al(80nm)
製造した素子1の電流密度-電圧-輝度特性を図7に示し、外部量子効率EQE-電流密度特性を図8に示す。素子1は、発光極大波長λMAXが459nm、CIE色度座標(x,y)が(0.15,0.16)、最大輝度LMAXが2882cdm-2、最大外部量子効率EQEMAXが23.8%であった。また、素子2は、発光極大波長λMAXが465nm、CIE色度座標(x,y)が(0.15,0.19)、最大輝度LMAXが5281cdm-2、最大外部量子効率EQEMAXが22.3%であった。素子3は、発光極大波長λMAXが472nm、CIE色度座標(x,y)が(0.16,0.24)、最大輝度LMAXが6975cdm-2、最大外部量子効率EQEMAXが19.9%であった。
上記のように、素子1~3は、いずれも高い外部量子効率を有していた。特に、素子1は、最大外部量子効率EQEMAXが高く、また、CIE色度座標のyが0.16以下の深い青色発光を実現することができた。また、化合物1の濃度を高くした素子2、および、ホスト材料を汎用的なmCBPに変更した素子3では、高い外部量子効率を維持しながら、高輝度(素子2で5281cdm-2、素子3で6975cdm-2)を達成することができた。
【実施例】
【0104】
【化36-1】
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【化36-2】
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【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の化合物は、塗布法により容易に成膜することができ、また、熱安定性が高く、発光材料として有用である。このため、本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子用の発光材料として実用的に用いることができる。よって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0106】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7