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明細書 :キナーゼ基質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年3月19日(2020.3.19)
発明の名称または考案の名称 キナーゼ基質
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
C07K 7/08
G01N 37/00 102
C12Q 1/48 Z
国際予備審査の請求
全頁数 124
出願番号 特願2019-517627 (P2019-517627)
国際出願番号 PCT/JP2018/017726
国際公開番号 WO2018/207760
国際出願日 平成30年5月8日(2018.5.8)
国際公開日 平成30年11月15日(2018.11.15)
優先権出願番号 2017093250
優先日 平成29年5月9日(2017.5.9)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】石濱 泰
【氏名】杉山 直幸
【氏名】坂本 大
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4H045
Fターム 4B063QA20
4B063QQ27
4B063QQ79
4B063QR07
4B063QR48
4B063QR57
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045EA50
4H045EA60
要約 各キナーゼに対して特異的且つ高感度にリン酸化されるポリペプチドを提供すること、及びキノームをより高い精度で解析可能な、キナーゼ基質のセットを提供することを課題とし、(a)又は(b)のアミノ酸配列:(a)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は(b)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、を含み、且つ対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上であるポリペプチド。
特許請求の範囲 【請求項1】
下記(a)又は(b)のアミノ酸配列:
(a)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は
(b)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
を含み、且つ対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上であるポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が前記(a)のアミノ酸配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a1)のアミノ酸配列:
(a1)配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、及び182のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b1)のアミノ酸配列:
(b1)配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、及び182のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a2)のアミノ酸配列:
(a2)配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、及び187のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b2)のアミノ酸配列:
(b2)配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、及び187のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a3)のアミノ酸配列:
(a3)配列番号249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b3)のアミノ酸配列:
(b3)配列番号249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列におけるアミノ酸変異が、アミノ酸の置換である、請求項1~5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換対象のアミノ酸が、対象キナーゼのコンセンサス配列で特定されるアミノ酸以外のアミノ酸である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換後のアミノ酸が、対象キナーゼのPosition Weight Matrixに基づいて決定されたアミノ酸である、請求項6又は7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換後のアミノ酸が、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、及びシステイン以外のアミノ酸である、請求項6~8のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項10】
構成するアミノ酸数が20以下である、請求項1~9のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のポリペプチドからなる、キナーゼ基質。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のポリペプチド及び固相を含み、且つ前記ポリペプチドが固相に固定されている、キナーゼ基質アレイ。
【請求項13】
請求項11に記載のキナーゼ基質を含有する、キナーゼ活性測定用試薬。
【請求項14】
請求項11に記載のキナーゼ基質及び請求項12に記載のキナーゼ基質アレイからなる群より選択される少なくとも1種を含む、キナーゼ活性測定用キット。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを接触させる工程を含む、キナーゼ活性測定方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを接触させる工程を含む、被検試料のキノーム解析方法。
【請求項17】
請求項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを被検物質の存在下で接触させる工程を含む、被検物質のキナーゼ活性調節能を評価する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼ基質として利用できるポリペプチド等に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内では様々な機能を発現するために情報を伝達する分子機構が存在し、タンパク質の翻訳後修飾、特にタンパク質のリン酸化はそのシグナル伝達において重要な役割を果たしている。細胞内シグナル伝達機構は多数の分子が連携する複雑なネットワークを形成しており、多くの疾患ではタンパク質リン酸化酵素であるプロテインキナーゼの変異や過剰発現による活性化によるシグナル伝達異常が関与している。
【0003】
疾患の進行度や細胞種などにより多様に変化するシグナル伝達系全体を把握し、創薬研究や個別化治療を推進するためには、518種存在するとされるヒトキノーム(ヒトキナーゼ総体)の活性を包括的に捉えることが重要である。このような背景から、シグナル伝達に関与するキナーゼ群の活性を計測する手法が開発され使用されている。キナーゼの活性を計測する一般的な方法として、基質となるタンパク質あるいはペプチドを試料中のキナーゼと反応させ、リン酸化された基質を測定することでキナーゼ活性を計測する方法が用いられている(例えば、特許文献1-4)。リン酸化ペプチド又はタンパク質を検出する手段としては、抗リン酸化抗体を用いたELISA、mobility shift assay、ペプチドアレイ、プロテインアレイ、LC-MSなどがある。
【0004】
しかしながら、これらの方法では細胞抽出物のようなキナーゼ混合試料を使用する場合、基質ペプチドのキナーゼ特異性の低さが問題となり、個々のキナーゼ活性を正確に評価するのは困難である。同様にリン酸化モチーフをターゲットとした抗体も、キナーゼのリン酸化モチーフ自体の特異性が高くないことなら、区別した活性計測が難しいという問題がある。一方、LC-MSを用いたリン酸化プロテオミクスでは一度の分析によって細胞内で起こる大量のリン酸化部位を定量的に解析できるが、どのキナーゼが活性化されたかが不明なため、キナーゼ活性を高精度且つ網羅的に予測するには至っていない。
【0005】
例えば、特許文献2では、セリンスレオニンキナーゼの一種である分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)類に属するErk2、JNK1、p38αの活性測定用の基質ポリペプチドが報告されているが、同一の配列を有するペプチドがErk2、JNK1、p38αの基質となり得る。そのため、これらのペプチドを用いても、Erk2、JNK1、p38のいずれかの活性を測定しているのか判別できない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-236388号公報
【特許文献2】特開2008-289374号公報
【特許文献3】国際公開第2011/030890号
【特許文献4】国際公開第2010/040024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各キナーゼに対して特異的且つ高感度にリン酸化されるポリペプチドを提供することを課題とする。さらに、本発明は、キノームをより高い精度で解析可能な、キナーゼ基質のセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、本発明者らが取得した約400種のキナーゼに関する190,000個超のin vitroキナーゼ-基質間情報に基づいた、PWM (position weighting matrix、以下PWMと略する。)や相乗効果を考慮したFINC(fold-increase、以下FINCと略する。)、更に基質特異性を高めるためにGini係数などを用いることによって、各キナーゼに対して特異的且つ高感度にリン酸化される基質ポリペプチドを設計できるという知見を得た。この知見に基づいて本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、(a)又は(b)のアミノ酸配列:(a)配列番号1~187のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は(b)配列番号1~187のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、を含み、且つ対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上であるポリペプチドであれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0010】
項1. 下記(a)又は(b)のアミノ酸配列:
(a)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は
(b)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
を含み、且つ対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上であるポリペプチド。
【0011】
項2. 前記アミノ酸配列が前記(a)のアミノ酸配列である、項1に記載のポリペプチド。
【0012】
項3. 前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a1)のアミノ酸配列:
(a1)配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、及び182のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b1)のアミノ酸配列:
(b1)配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、及び182のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、項1又は2に記載のポリペプチド。
【0013】
項4. 前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a2)のアミノ酸配列:
(a2)配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、及び187のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b2)のアミノ酸配列:
(b2)配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、及び187のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、項1又は2に記載のポリペプチド。
【0014】
項5. 前記(a)のアミノ酸配列が、下記(a3)のアミノ酸配列:
(a3)配列番号249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、
であり、且つ
前記(b)のアミノ酸配列が、下記(b3)のアミノ酸配列:
(b3)配列番号249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、
である、項1又は2に記載のポリペプチド。
【0015】
項6. 前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列におけるアミノ酸変異が、アミノ酸の置換である、項1~5のいずれかに記載のポリペプチド。
【0016】
項7. 前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換対象のアミノ酸が、対象キナーゼのコンセンサス配列で特定されるアミノ酸以外のアミノ酸である、項6に記載のポリペプチド。
【0017】
項8. 前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換後のアミノ酸が、対象キナーゼのPosition Weight Matrixに基づいて決定されたアミノ酸である、項6又は7に記載のポリペプチド。
【0018】
項9. 前記(b)、(b1)、(b2)、又は(b3)のアミノ酸配列における置換後のアミノ酸が、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、及びシステイン以外のアミノ酸である、項6~8のいずれかに記載のポリペプチド。
【0019】
項10. 構成するアミノ酸数が20以下である、項1~9のいずれかに記載のポリペプチド。
【0020】
項11. 項1~10のいずれかに記載のポリペプチドからなる、キナーゼ基質。
【0021】
項12. 項1~10のいずれかに記載のポリペプチド及び固相を含み、且つ前記ポリペプチドが固相に固定されている、キナーゼ基質アレイ。
【0022】
項13. 項11に記載のキナーゼ基質を含有する、キナーゼ活性測定用試薬。
【0023】
項14. 項11に記載のキナーゼ基質及び項12に記載のキナーゼ基質アレイからなる群より選択される少なくとも1種を含む、キナーゼ活性測定用キット。
【0024】
項15. 項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを接触させる工程を含む、キナーゼ活性測定方法。
【0025】
項16. 項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを接触させる工程を含む、被検試料のキノーム解析方法。
【0026】
項17. 項1~10のいずれかに記載のポリペプチドと被検試料とを被検物質の存在下で接触させる工程を含む、被検物質のキナーゼ活性調節能を評価する方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明のポリペプチドは、各キナーゼに対して特異的且つ高感度にリン酸化される。本発明のポリペプチドを利用することで、従来法では分別して活性を計測することが困難であった、特異性が類似したキナーゼを区別して活性を計測することが可能となる。そのため、測定の対象となる細胞や組織中の複数のキナーゼ活性を迅速且つ一斉に計測することができ、簡便且つ正確に細胞内キノームを解析することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドCK1dtide 1の反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図2】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドCK1dtide 2の反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図3】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドERK2tide 1の反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図4】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドERK2tide 2の反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図5】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドCK2a2tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図6】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドIKKbtideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図7】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドMARK2tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図8】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドMAPKAPK3tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図9】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドJNK1tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図10】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドCDC2tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図11】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドDYRK4tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図12】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドPLK1tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図13】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドMLKtideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図14】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドCAMK2atideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図15】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドNEK6tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図16】実施例2において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドIRAK1tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼ名を示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。
【図17】(A)実施例3の試験1の結果を示す。マトリックスの横側には用いた基質ペプチド及び濃度を示し、上側には用いた細胞抽出物の量を示し、右側には相関係数を示す。Relative peak areaは測定されたリン酸化量の相対値を示す。(B)実施例3の試験1の結果を示す。グラフ上側に用いた基質ペプチドを示し、横軸は用いた細胞抽出物の量を示し、縦軸は測定されたリン酸化量の相対値を示す。(C)実施例3の試験2の結果を示す。グラフ上側に用いた基質ペプチドを示し、横軸は用いた基質ペプチドの量を示し、縦軸は測定されたリン酸化量の相対値を示す。(D)実施例3の試験3の結果を示す。グラフ上側に用いた基質ペプチドを示し、横軸は用いたMAPKを示し、縦軸は測定されたリン酸化量の相対値を示す。グラフの各カラム上にMAPKの使用量を示す。(E)実施例3の試験4の結果を示す。縦軸はATP無添加条件下でのキナーゼ反応後の基質ペプチドの回収率を示し、横軸は用いた基質ペプチドを示す。
【図18】哺乳類で保存されているMAPKの4つの主要なサブファミリー(ERK1/2、p38、JNK、ERK5)のMAPKカスケード、及びそれを抑制する薬剤名及び抑制するカスケード上の位置を示す。
【図19】実施例4の、各阻害薬を作用させた場合の、基質ペプチドのリン酸化変動比のヒートマップを示す。
【図20】実施例4の、各阻害薬を作用させた場合の、基質ペプチドのリン酸化量を示す。グラフ上側に用いた基質ペプチドを示し、横軸は用いたMAPK阻害薬を示し(controlは阻害薬の使用無し)、縦軸は測定されたリン酸化量を示す。
【図21】実施例5において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドErk7tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼを示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。横軸のキナーゼの並び順は、左から、CDC7_ASK、CK2A1、CK2a2、CDK2_CYCE1、ERK7、CDK9_CYCLINK、DYRK1A、DYRK4、DYRK2、DYRK3、HIPK1、HIPK2、HIPK3、HIPK4、ICK、MOK、GSK3b、CDK6_CYCD3、CDK6_CYCLIND1、CDK7_CYCH_MAT1、CDK9_CYCT1、ERK5、CDC2_CycB1、CDK2_CYCA2、CDK5_P25、CDK3_CYCE1、NLK、JNK1、JNK2、JNK3、ERK1、ERK2、P38D、P38G、p38a、P38B、CLK1、CLK3、MAP2K1、MAP2K7、MAP2K2、MAP2K4、MAP3K2、STK33、TAK1、CAMKK1、CAMKK2、ACTR2、HRI、PEK、CK1A、CK1d、CK1E、CK1G1、CK1G2、CK1G3、BMPR1B、ALK2、ALK4、TGFBR1、BARK1、GPRK5、GPRK7、RHOK、BUBR1、PLK1、PLK3、TLK1、TLK2、CHK2、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MAPKAPK5、PKD2、PKD1、PKD3、CAMK1D、CAMK2B、CaMK2a、CAMK2G、CAMK2D、CHK1、LATS1、LATS2、IRAK1、CAMK4、DCLK1、DCLK2、MNK2、PKCG、PKCa、PKCB1、PKCT、PKCH、PKCZ、PKN1、PKN2、PLK4、AURB、AURA、AurC、PAK1、PAK2、PAK3、AKT1、AKT2、AKT3、SGK1、SGK2、SGK3、CGK2、PKG1B、PKG1A、PKACa、PKACB、PRKX、MSK1、MSK2、RSK1、RSK2、RSK4、RSK3、P70S6K、DAPK1、NDR1、NDR2、ROCK1、ROCK2、P70S6KB、PIM2、PIM1、PIM3、PAK5、PAK4、PAK6、BRSK2、AMPKA1_B1_G1、AMPKA2_B1_G1、NUAK1、NUAK2、MELK、MARK2、MARK1、MARK4、MARK3、QIK、NIM1、SIK、TSSK1、TSSK2、SKMLCK、COT、PHKG1、IKKA、IKKb、IKKE、TBK1、NEK2、NEK6、NEK7、MLK2、MLK1、MLK3、NEK9、TTBK1、MAP3K1、GCK、MST1、MST2、HGK、MINK、KHS1、TNIK、MST3、MST4、YSK1、PHKG2、TAO2、ZAK、NEK4、SGK496、ULK3、LIMK1、WNK1、WNK2、WNK3、TAO1の順である。
【図22】実施例5において、各種組換えキナーゼに対するポリペプチドPLK3tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたキナーゼを示し、縦軸は各組換えキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。横軸のキナーゼの並び順は図21と同じである。
【図23】実施例7において、各種組換えチロシンキナーゼに対するポリペプチドTYRO3tideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたチロシンキナーゼを示し、縦軸は各組換えチロシンキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。横軸のキナーゼの並び順は、左から、ABL1、ABL2、ACK、TNK1、ALK、LTK、AXL、MER、TYRO3、CTK、DDR2、EGFR、ERBB4、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、FAK、PYK2、FER、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、IGF1R、INSR、IRR、JAK1、JAK2、JAK3、LIMK1、MET、RON、TAK1、MUSK、FLT3、FMS、KIT、PDGFRA、PDGFRB、RET、ROS、BLK、BRK、FGR、FRK、FYN、HCK、LCK、LYNA、LYNB、SRC、SRM、YES、SYK、ZAP70、BMX、BTK、ITK、TEC、TXK、TIE2、TRKA、TRKB、TRKC、FLT1、FLT4、KDR、WEE1である。
【図24】実施例7において、各種組換えチロシンキナーゼに対するポリペプチドEGFRtideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたチロシンキナーゼを示し、縦軸は各組換えチロシンキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。横軸のキナーゼの並び順は図23と同じである。
【図25】実施例7において、各種組換えチロシンキナーゼに対するポリペプチドFERtideの反応性を調べた結果を示す。横軸は試験に用いたチロシンキナーゼを示し、縦軸は各組換えチロシンキナーゼによりリン酸化されたポリペプチド量の相対値を示す。横軸のキナーゼの並び順は図23と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書におけるアミノ酸の略表記は一文字表記を用い、アミノ酸配列は左側をN末端側として記載する。

【0030】
1.ポリペプチド
本発明は、その一態様において、(a)又は(b)のアミノ酸配列:(a)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は(b)配列番号1~187及び249~251のいずれかに示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列、を含み、且つ対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上であるポリペプチド(本明細書において、「本発明のポリペプチド」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0031】
アミノ酸配列(a)及び(b)において、配列番号1~187及び249~251は、それぞれ別々のキナーゼ(対象キナーゼ)に対して特異的な反応性を示す(即ち、それぞれ別々のキナーゼ(対象キナーゼ)により特異的にリン酸化される)アミノ酸配列である。これらのアミノ酸配列が特異的な反応性を示す対象キナーゼは、後述の実施例1-2の表78~82のとおりである。例えば、配列番号176はCK2a2に対して特異的な反応性を示す。配列番号1~187はセリン/スレオニンキナーゼに対して特異的な反応性を示すアミノ酸配列であり、配列番号249-~251はチロシンキナーゼに対して特異的な反応性を示すアミノ酸配列である。

【0032】
アミノ酸配列(a)及び(b)において、配列番号1~187及び249~251の中でも、対象キナーゼに対してより特異的な反応性を示すという観点から、好ましくは配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、182等が挙げられ、より好ましくは配列番号13、32、149、171、176、182等が挙げられ、さらに好ましくは配列番号32、149、171、176等が挙げられる。

【0033】
また、同様の観点から別の好ましい例としては、好ましくは配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、187等が挙げられ、より好ましくは配列番号1、12、15、32、50、63、64、77、78、82、83、95、103、108、131、146、149、161、187等が挙げられ、さらに好ましくは配列番号15、64、77、78、95、131、146、149、161等が挙げられ、よりさらに好ましくは配列番号64、95、161等が挙げられ、特に好ましくは配列番号64、95等が挙げられる。

【0034】
さらに、同様の観点からさらに別の好ましい例としては、好ましくは配列番号249~251等が挙げられる。

【0035】
アミノ酸配列(a)及び(b)の中でも、特異性、感度等の観点から、アミノ酸配列(a)が好ましい。

【0036】
アミノ酸配列(b)において、置換などを生じたアミノ酸の「1又は数個」とは、対象キナーゼに対する特異的な反応性が著しく損なわれない限り特に制限されないが、例えば1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個、よりさらに好ましくは1個である。

【0037】
アミノ酸配列(b)におけるアミノ酸変異は、アミノ酸の置換、欠失、付加、及び挿入のいずれでもよいが、好ましくは置換である。

【0038】
アミノ酸配列(b)における置換対象のアミノ酸は、特異性、感度等の観点から、対象キナーゼのコンセンサス配列で特定されるアミノ酸以外のアミノ酸であることが好ましい。対象キナーゼの「コンセンサス配列」は、後述の実施例1-1の表1~14に記載のコンセンサス配列である。例えば、対象キナーゼがCK2a2である場合、そのコンセンサス配列には、「......SD.E.E.」、「......SD.E...」、「......SE.E...」、及び「......SD.D...」がある。なお、「.」は任意の一アミノ酸を示す。このようにコンセンサス配列が複数個ある場合は、いずれを選択してもよいが、表1~14に示されるFINCがより高いコンセンサス配列を選択することが望ましい。対象キナーゼがCK2a2である場合の最もFINC(Fold Increase)が高いコンセンサス配列(......SD.E.E.)は配列番号176に含まれている。配列番号176の場合、「対象キナーゼのコンセンサス配列で特定されるアミノ酸」とは、配列番号176のN末端から6番目のアミノ酸(S)、7番目のアミノ酸(D)、9番目のアミノ酸(E)、及び10番目のアミノ酸(E)である。配列番号176における置換対象のアミノ酸は、それ以外のアミノ酸(配列番号176のN末端から1~5、8、10~11番目のアミノ酸)から選択される。

【0039】
アミノ酸配列(b)における置換後のアミノ酸は、特異性、感度等の観点から、対象キナーゼのPWMに基づいて決定されたアミノ酸であることが好ましい。対象キナーゼの「PWM」は、後述の実施例1-1の表15~77に記載される。「PWMに基づいて決定」とは、まず、置換対象アミノ酸のPWM中の位置を特定、具体的には、PWM中の「0」の位置は配列番号1~187のN末端から6番目のアミノ酸(リン酸化対象アミノ酸:S)に対応すること、該アミノ酸のN末端側の位置はPWM中で「-」で示されること、及び該アミノ酸のC末端側の位置はPWM中で「+」で示されることに基づいて、置換対象アミノ酸のPWM中の位置を特定し、次に特定されたPWM中の位置におけるスコアがより高いアミノ酸(好ましくはスコアが正の値のアミノ酸、より好ましくはスコア上位5アミノ酸)を「置換後のアミノ酸」として決定することにより行われる。例えば、配列番号176のN末端側から1番目のアミノ酸の場合、E以外でPWMスコアが高いアミノ酸は、K, R, A, Dとなる。

【0040】
本発明の好ましい一態様においては、アミノ酸配列(b)における置換後のアミノ酸は、特異性、感度等の観点から、後述の実施例1-2の表78~82に記載されるアミノ酸配列中、括弧内のアミノ酸から選択される。例えば、対象キナーゼがCK2a2である場合、対応するアミノ酸配列(配列番号176)のN末端側から1番目のアミノ酸(E)を置換する場合の置換後のアミノ酸はK、R、A、及びDから選択され、2番目のアミノ酸(Q)を置換する場合の置換後のアミノ酸は、D及びEから選択され、3番目のアミノ酸(D)を置換する場合の置換後のアミノ酸は、A、E、及びGから選択され、4番目のアミノ酸(E)を置換する場合の置換後のアミノ酸は、D及びVから選択され、5番目のアミノ酸(W)を置換する場合の置換後のアミノ酸はDであり、8番目のアミノ酸(D)を置換する場合の置換後のアミノ酸は、E及びGから選択され、10番目のアミノ酸(E)を置換する場合の置換後のアミノ酸は、G、D、及びAから選択される。

【0041】
本発明の好ましい一態様においては、アミノ酸配列(b)における置換は、保存的置換であってもよい。保存的置換とは、アミノ酸残基が類似の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換技術にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。

【0042】
特異性、感度等の観点から、置換後のアミノ酸の選択枝からは、好ましくはセリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、及びシステインは除外される。

【0043】
本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列(a)又は(b)のみからなるポリペプチドであってもよいし、アミノ酸配列(a)又は(b)を含む、換言すれば「アミノ酸配列(a)又は(b)」と「他のアミノ酸配列」とからなるポリペプチドであってもよい。後者の場合、本発明の好ましい一態様においては、本発明のポリペプチドは、アミノ酸配列(a)のC末端にアルギニンが付加されてなるアミノ酸配列又はアミノ酸配列(b)のC末端にアルギニンが付加されてなるアミノ酸配列を含むことが好ましい。

【0044】
本発明のポリペプチドを構成するアミノ酸の数は、特に制限されないが、例えば50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは15以下である。

【0045】
本発明のポリペプチドは、対象キナーゼによるリン酸化反応が著しく阻害されない限りにおいて、必要に応じて適当なリンカーを介して、各種タグ(例えばビオチンタグ、Hisタグ、FLAGタグ、Haloタグ、MBPタグ、HAタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ等)が付加されたものも包含する。

【0046】
本発明のポリペプチドは、対象キナーゼによるリン酸化反応が著しく阻害されない限りにおいて、末端のアミノ酸が化学修飾されたものも包含する。

【0047】
本発明のポリペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)であるもの、等も包含する。本発明のポリペプチドは、C末端がアミド(-CONH2)であるものが好ましい。

【0048】
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。

【0049】
さらに、本発明のポリペプチドは、N末端のアミノ酸のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など、好ましくはアセチル基)で保護されているもの、なども包含する。

【0050】
本発明のポリペプチドは、対象キナーゼによる本発明のポリペプチドのリン酸化反応が著しく阻害されない限りにおいて、末端以外のアミノ酸が、化学修飾されたものも包含するが、好ましくは、本発明のポリペプチドは末端以外のアミノ酸は化学修飾されていない。この場合の化学修飾としては、例えばカルボキシル基のアミド化、エステル化等; 保護基によるアミノ基の保護等が挙げられる。エステル化、保護基については、上記した末端の化学修飾と同様である。

【0051】
本発明のポリペプチドは、酸または塩基との塩の形態も包含する。塩は、特に限定されず、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。例えば酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩; アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩等が挙げられる。また、塩基性塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩; カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。

【0052】
本発明のポリペプチドは、溶媒和物の形態も包含する。溶媒は、特に限定されず、例えば水、エタノール、グリセロール、酢酸等が挙げられる。

【0053】
本発明のオリゴペプチドは、そのアミノ酸配列に応じて、公知のペプチド合成法に従って製造することができる。

【0054】
本発明のオリゴペプチドは、対象キナーゼに対して特異的な反応性を示す(即ち、対象キナーゼにより特異的にリン酸化される)。より具体的には、本発明のオリゴペプチドは、対象キナーゼに対する反応性が他のキナーゼに対する反応性の2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、よりさらに好ましくは50倍以上、よりさらに好ましくは100倍以上である。反応性は後述の実施例2、5、又は7の方法で評価することができる。

【0055】
「他のキナーゼ」とは、対象キナーゼ以外のキナーゼ(配列番号1~187についてはセリン/スレオニンキナーゼ(好ましくは全セリン/スレオニンキナーゼの30%以上、50%以上、70%以上、又は90%以上のセリン/スレオニンキナーゼ)、配列番号249~251についてはチロシンキナーゼ(好ましくは全チロシンキナーゼの30%以上、50%以上、70%以上、又は90%以上のチロシンキナーゼ))である限り特に制限されない。

【0056】
一実施形態において(例えば配列番号1~187について、特に配列番号1、13、18、21、23、32、33、78、149、169、171、172、176、及び182について)、「他のキナーゼ」は、好ましくはIKKb、CK2a2、CK1d、PLK1、ALK2、WNK3、IRAK1、NEK6、MLK1、MST3、TSSK1、MARK2、CaMK2a、MAPKAPK3、PKD3、ROCK1、PHKG2、PKCa、LATS1、PIM1、PAK2、AurC、RSK1、AKT1、PKACa、CAMKK1、GSK3b、CDC2、JNK1、p38a、ERK2、MAP3K2、及びDYRK4から対象キナーゼを除いてなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは2種、5種、10種、20種、30種、全種)である。

【0057】
別の実施形態において(例えば配列番号1~187について、特に配列番号1、12、15、32、39、50、62、63、64、73、77、78、82、83、95、100、103、105、108、130、131、137、142、146、149、161、176、及び187について)、「他のキナーゼ」は、好ましくはCDC7_ASK、CK2A1、CK2a2、CDK2_CYCE1、ERK7、CDK9_CYCLINK、DYRK1A、DYRK4、DYRK2、DYRK3、HIPK1、HIPK2、HIPK3、HIPK4、ICK、MOK、GSK3b、CDK6_CYCD3、CDK6_CYCLIND1、CDK7_CYCH_MAT1、CDK9_CYCT1、ERK5、CDC2_CycB1、CDK2_CYCA2、CDK5_P25、CDK3_CYCE1、NLK、JNK1、JNK2、JNK3、ERK1、ERK2、P38D、P38G、p38a、P38B、CLK1、CLK3、MAP2K1、MAP2K7、MAP2K2、MAP2K4、MAP3K2、STK33、TAK1、CAMKK1、CAMKK2、ACTR2、HRI、PEK、CK1A、CK1d、CK1E、CK1G1、CK1G2、CK1G3、BMPR1B、ALK2、ALK4、TGFBR1、BARK1、GPRK5、GPRK7、RHOK、BUBR1、PLK1、PLK3、TLK1、TLK2、CHK2、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MAPKAPK5、PKD2、PKD1、PKD3、CAMK1D、CAMK2B、CaMK2a、CAMK2G、CAMK2D、CHK1、LATS1、LATS2、IRAK1、CAMK4、DCLK1、DCLK2、MNK2、PKCG、PKCa、PKCB1、PKCT、PKCH、PKCZ、PKN1、PKN2、PLK4、AURB、AURA、AurC、PAK1、PAK2、PAK3、AKT1、AKT2、AKT3、SGK1、SGK2、SGK3、CGK2、PKG1B、PKG1A、PKACa、PKACB、PRKX、MSK1、MSK2、RSK1、RSK2、RSK4、RSK3、P70S6K、DAPK1、NDR1、NDR2、ROCK1、ROCK2、P70S6KB、PIM2、PIM1、PIM3、PAK5、PAK4、PAK6、BRSK2、AMPKA1_B1_G1、AMPKA2_B1_G1、NUAK1、NUAK2、MELK、MARK2、MARK1、MARK4、MARK3、QIK、NIM1、SIK、TSSK1、TSSK2、SKMLCK、COT、PHKG1、IKKA、IKKb、IKKE、TBK1、NEK2、NEK6、NEK7、MLK2、MLK1、MLK3、NEK9、TTBK1、MAP3K1、GCK、MST1、MST2、HGK、MINK、KHS1、TNIK、MST3、MST4、YSK1、PHKG2、TAO2、ZAK、NEK4、SGK496、ULK3、LIMK1、WNK1、WNK2、WNK3、及びTAO1から対象キナーゼを除いてなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは2種、5種、10種、20種、30種、50種、70種、100種、150種、全種)である。

【0058】
さらに別の実施形態において(例えば配列番号249~251について)、「他のキナーゼ」は、好ましくはABL1、ABL2、ACK、TNK1、ALK、LTK、AXL、MER、TYRO3、CTK、DDR2、EGFR、ERBB4、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、FAK、PYK2、FER、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、IGF1R、INSR、IRR、JAK1、JAK2、JAK3、LIMK1、MET、RON、TAK1、MUSK、FLT3、FMS、KIT、PDGFRA、PDGFRB、RET、ROS、BLK、BRK、FGR、FRK、FYN、HCK、LCK、LYNA、LYNB、SRC、SRM、YES、SYK、ZAP70、BMX、BTK、ITK、TEC、TXK、TIE2、TRKA、TRKB、TRKC、FLT1、FLT4、KDR、及びWEE1から対象キナーゼを除いてなる群より選択される少なくとも1種(好ましくは2種、5種、10種、20種、30種、50種、70種、全種)である。

【0059】
2.キナーゼ活性測定方法、キノーム解析方法
本発明は、その一態様において、本発明のポリペプチドと被検試料とを接触させる工程、を含む、キナーゼ活性測定方法又は被検試料のキノーム解析方法(本明細書において、「本発明の測定方法」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0060】
被検試料は、キナーゼを含み得る試料である限り特に制限さない。被検試料は、例えば細胞試料又は生物から採取された組織試料(以下、これらを総称して「生物試料」と示す。)の抽出物又はその精製物; 体液又は体液由来の試料; キナーゼの精製物等を採用することができる。本発明のポリペプチドは対象キナーゼに対して特異的に修飾されるものであるので、複数のキナーゼを含む被検試料の測定に適している。この観点から、被検試料は生物試料の抽出物又はその精製物や、体液又は体液由来の試料、更には複数のキナーゼ精製物を含む組成物等であることが好ましい。

【0061】
被検試料の由来する生物は、キナーゼを含み得る生物である限り特に制限されず、例えばヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ等の種々の哺乳類動物が挙げられる。これらの中でも、ヒトが好ましい。

【0062】
組織試料としては、特に制限されず、例えば上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織等の試料が挙げられる。

【0063】
生物試料は、例えば血液細胞、造血幹細胞・前駆細胞、配偶子(精子、卵子)、線維芽細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、神経細胞、肝細胞、ケラチン生成細胞、筋細胞、表皮細胞、内分泌細胞、ES細胞、iPS細胞、組織幹細胞、がん細胞(例えば腎臓がん細胞、白血病細胞、食道がん細胞、胃がん細胞、大腸がん細胞、肝臓がん細胞、すい臓がん細胞、肺がん細胞、前立腺がん細胞、皮膚がん細胞、乳がん細胞、子宮頚がん細胞等)等を含む。

【0064】
生物試料の抽出物は、生物試料中の細胞膜又は核膜破壊物である限り、特に制限されない。細胞膜又は核膜の破壊は、生物試料に対して可溶化処理を施すことによって得られる。可溶化処理は、生物試料に対して、可溶化処理用の緩衝液(以下、「可溶化剤」という)中で超音波処理、ピペットでの吸引攪拌などを施すことなどによって行なうことができる。

【0065】
可溶化剤は、細胞膜又は核膜を破壊する物質を含有する緩衝液である。可溶化剤は、キナーゼの変性又は分解を阻害する物質などをさらに含有してもよい。

【0066】
細胞膜又は核膜を破壊する物質としては、例えば、界面活性剤、カオトロピック剤などが挙げられるが、特に限定されない。界面活性剤は、測定対象のキナーゼの活性を阻害しない範囲で用いることができる。界面活性剤としては、例えば、ノニデットP-40(NP-40)、トリトンX-100〔ダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)の登録商標〕などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;デオキシコール酸、CHAPSなどが挙げられる。細胞膜又は核膜を破壊する物質は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。可溶化剤における細胞膜又は核膜を破壊する物質の濃度は、通常、0.1~2 w/v%である。

【0067】
キナーゼの変性又は分解を阻害する物質としては、例えば、プロテアーゼインヒビターなどが挙げられるが、特に限定されない。プロテアーゼインヒビターとしては、例えば、EDTA、EGTAなどのメタロプロテアーゼインヒビター;PMSF、トリプシンインヒビター、キモトリプシンなどのセリンプロテアーゼインヒビター;ヨードアセトアミド、E-64などのシステインプロテアーゼインヒビターなどが挙げられるが、特に限定されない。これらのキナーゼの変性又は分解を阻害する物質は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。可溶化剤における前記キナーゼの変性又は分解を阻害する物質の濃度は、通常、EDTA、EGTAおよびPMSFの場合、0.5~10mMである。

【0068】
生物試料の抽出物の精製は、公知の方法に従って、又は準じて行うことができる。例えば、不溶物の除去や、キナーゼの濃縮等が挙げられる。キナーゼの濃縮方法としては、特に制限されないが、例えばキナーゼに対する抗体を用いた免疫沈降法等が挙げられる。

【0069】
体液としては、例えば全血、血清、血漿、唾液、髄液、関節液、尿、組織液、汗、涙、唾液などが挙げられる。体液由来の試料としては、体液から調製される試料である限り特に制限されず、例えば体液から、該体液に含まれるキナーゼを濃縮、精製などして得られる試料などが挙げられる。

【0070】
本発明のポリペプチドは対象キナーゼに対して特異的に修飾されるものであるので、複数のキナーゼを含む被検試料の測定に適している。この観点から、本発明の方法に用いる本発明のポリペプチドは、好ましくは2種、5種、10種、20種、50種、100種、150種、187種の対象キナーゼに対応する複数種のポリペプチドであることが好ましい。複数種の対象キナーゼに対応する複数種のポリペプチドを使う場合、多種のキナーゼの活性測定を、特異的に、かつ同時におこなうことが可能になる。

【0071】
被検試料と本発明のポリペプチドとの接触は、キナーゼがその酵素作用によって本発明のポリペプチドを修飾し得る条件下である限り特に制限されない。該接触は、通常は、ATP、ATP標識物、ATP誘導体等の存在下、緩衝液中で行われる。

【0072】
緩衝液としては、キナーゼの活性を発揮できるpH(通常、6~8、好ましくは7~7.8)を維持できる緩衝液が好適に用いられ、例えばHEPES緩衝液、Tris塩酸緩衝液等が用いられる。緩衝液は、必要に応じて、キナーゼの活性の発揮に必要な金属イオン、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン等を含有する。

【0073】
ATP標識物としては、特に制限されないが、例えばATPを構成するリン原子を放射性同位元素(例えば32P)に置き換えてなる、放射性同位体ATP標識物が挙げられる。

【0074】
ATP誘導体としては、特に制限されないが、例えば特開2002-335997号公報に開示されるATP-γS(アデノシン-5'-(γ-チオ)-三リン酸塩)、特開2015-192635号公報に開示されるATPのγ位にジニトロフェニル(DNP)基が連結されてなるDNP基連結ATP誘導体等が挙げられる。

【0075】
上記した接触により、被検試料のキナーゼの活性に応じて、本発明のポリペプチドのが、キナーゼの酵素作用に基づいて修飾される。修飾の態様は、接触の条件によって異なり、例えばATPを用いた場合であれば修飾はリン酸基の付加であり、放射性同位体ATP標識物を用いた場合であれば修飾は放射性同位元素標識リン酸基の付加であり、ATP-γSを用いた場合であれば修飾はチオリン酸基の付加であり、DNP基連結ATP誘導体を用いた場合であればDNP基連結リン酸基の付加である。

【0076】
本発明の測定方法では、上記修飾の量(=修飾物の量)を測定することにより、キナーゼ活性を測定することができる。換言すれば、上記修飾の量の定量値を、キナーゼ活性値とすることができる。

【0077】
上記修飾の量の測定は、本発明のポリペプチドが1種であるか複数であるか、修飾の態様等に応じて、公知の方法に従って、又は準じて行うことができる。測定は、例えばリン酸基やDNP基連結リン酸基等が付加されたペプチドに対する抗体との反応; チオリン酸基への結合部位(例えばアルキルハライド、マレイミド、アジリジン部位等)を有する蛍光物質、ビオチン、酵素等との反応、各種物質(例えば蛍光物質、ビオチン、酵素等)に対する抗体との反応、酵素作用に基づく発光反応・検出、蛍光検出、放射線検出、クロマトグラフィー、質量分析等を単独で、或いは適宜組み合わせて行うことができる。

【0078】
3.キナーゼ基質(アレイ)、キナーゼ活性測定用試薬(又はキット)
本発明は、その一態様において、本発明のポリペプチドからなるキナーゼ基質(本明細書において、「本発明の基質」と示すこともある。)、本発明のポリペプチド及び固相を含み、且つ本発明のポリペプチドが固相に固定されている、キナーゼ基質アレイ(本明細書において、「本発明の基質アレイ」と示すこともある。)、本発明の基質を含有するキナーゼ活性測定用試薬(本明細書において、「本発明の試薬」と示すこともある。)、及び本発明の基質及び本発明の基質アレイからなる群より選択される少なくとも1種を含む、キナーゼ活性測定用キット(本明細書において、「本発明のキット」と示すこともある。)に関する。以下、これらについて説明する。

【0079】
本発明の基質アレイにおける固相は、本発明のポリペプチドを固定可能なものである限り特に制限されない。固相としては、例えばガラス、ポリジメチルシロキサン、金などの基板が挙げられる。基板の形状は、平板なもの、ピラーを並べたもの、ウェルを並べたものなど、これまでに報告されたいずれの基板にも適用可能である。これらの基板上にガラスではシランカップリング剤や、表面を多糖などでコートすることにより、ポリジメチルシロキサンでは、表面を多糖などでコートしたり、表面をプラズマなどで修飾することで、また、金ではチオール誘導体で修飾することにより、アミノ基、カルボキシル基などの官能基を導入する。これに架橋剤などを用いたり、末端カルボシキシル基を活性エステル化したり、ホルミル基やマレイミド基を導入後、ペプチド末端をシステイン残基として反応させることにより本発明のポリペプチドを固定化することができる。

【0080】
本発明のポリペプチドは対象キナーゼに対して特異的に修飾されるものであるので、複数のキナーゼを含む被検試料の測定に適している。この観点から、本発明の基質アレイが含む本発明のポリペプチドは、好ましくは2種、5種、10種、20種、50種、100種、150種、187種の対象キナーゼに対応する複数種のポリペプチドであることが好ましい。複数種の対象キナーゼに対応する複数種のポリペプチドを使う場合、多種のキナーゼの活性測定を、特異的に、かつ同時におこなうことが可能になる。

【0081】
本発明の試薬は、本発明の基質からなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。その他の成分としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。

【0082】
本発明の試薬における本発明の基質の含有量は、特に制限されないが、例えば0.0001~100質量%とすることができる。

【0083】
本発明のキットは、本発明の基質及び本発明の基質アレイからなる群より選択される少なくとも1種のみからなるものであってもよいし、又は必要に応じてこれに加えて、本発明の測定方法の実施に用いられ得る器具、試薬などが含まれていてもよい。

【0084】
器具としては、例えば試験管、マイクロタイタープレート、アガロース粒子、ラテックス粒子、精製用カラム、エポキシコーティングスライドガラス、金コロイドコーティングスライドガラスなどが挙げられる。

【0085】
試薬としては、例えばATP、ATP標識物、ATP誘導体、緩衝液、リン酸基やDNP基連結リン酸基等が付加されたペプチドに対する抗体、チオリン酸基への結合部位を有する物質(例えば蛍光物質、ビオチン、酵素等)、各種物質(例えば蛍光物質、ビオチン、酵素等)に対する抗体、各種酵素の発光検出試薬、キナーゼ活性を有する陽性対照試料、キナーゼ活性を有しない陰性対照試料等が挙げられる。

【0086】
4.被検物質のキナーゼ活性調節能を評価する方法
本発明は、その一態様において、本発明のポリペプチドと被検試料とを被検物質の存在下で接触させる工程を含む、被検物質のキナーゼ活性調節能を評価する方法(本明細書において、「本発明の評価方法」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。

【0087】
本発明のポリペプチド及び被検試料は上記「2.キナーゼ活性測定方法、キノーム解析方法」で説明した通りである。

【0088】
被検物質としては、天然に存在する化合物又は人工に作られた化合物を問わず広く使用することができる。また、精製された化合物に限らず、多種の化合物を混合した組成物や、動植物の抽出液も使用することができる。化合物には、低分子化合物に限らず、タンパク質、核酸、多糖類等の高分子化合物も包含される。被検物質は、被検試料中のキナーゼ活性を間接的に調節し得る物質(例えば、キナーゼのカスケード途中のタンパク質や酵素等を阻害する物質等)、被検試料中のキナーゼの活性を直接的に調節し得る物質(例えばキナーゼの機能を阻害する物質等)であり得る。

【0089】
本発明の評価方法は、より具体的には、上記工程を含む方法により得られたキナーゼ活性の値(被検値)が、被検物質の非存在下で同様に測定されたキナーゼ活性の値(対照値)と異なる場合に、被検物質を、キナーゼ活性調節能を有すると評価する工程を含む。より具体的には、本発明の評価方法は、被検値が対照値よりも高い(例えば、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍)場合には、被検物質を、キナーゼ活性亢進能を有すると評価する工程、及び/又は被検値が対照値よりも低い(例えば、1/2、1/5、1/10、1/20、1/50、1/100)場合には、被検物質を、キナーゼ活性抑制能を有すると評価する工程を含む。

【0090】
本発明の評価方法は、創薬標的探索、薬剤感受性予測、副作用予測、薬剤スクリーニング等に利用することができる。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
実施例1.キナーゼ基質ペプチドの設計1
実施例1-1.基質コンセンサス配列の抽出とPWMの作製
Hela細胞抽出物を脱リン酸化処理した後、ATPと金属イオンの存在下で各ヒトキナーゼ組換え体と個別に反応させた。トリプシン消化後に酸化金属クロマトグラフィーによりリン酸化ペプチドを濃縮後、LC-MS測定によってリン酸化ペプチドの配列と修飾部位の同定を行った。こうして得られた約400種のキナーゼに関する190,000個超のin vitroキナーゼ-基質間情報を利用して、以下の手順で基質コンセンサス配列の抽出及びPWMの作製を行った。
【実施例】
【0093】
各キナーゼの基質コンセンサス配列の抽出にはmotif-x(ULR:http://motif-x.med.harvard.edu/)(参考文献1:D. Schwartz and S. P. Gygi, Nat. Biotechnol. 23, 1391 (2005).)を使用し、各設定値はwidth = 13、occurrence = 10、significance=0.000001、background = IPI Human Proteomeとした。各コンセンサス配列に対するfold increaseは以下の式を用いて算出した。
【実施例】
【0094】
【数1】
JP2018207760A1_000002t.gif
【実施例】
【0095】
各キナーゼに対して抽出されたコンセンサス配列とそのFINCを表1~14に示す。表1~14中、Motifが各キナーゼに対するコンセンサス配列(左側がN末端側)であり、「.」は任意の一アミノ酸を示し、FINCはバックグラウンド配列に対する濃縮の程度を示す。
【実施例】
【0096】
【表1】
JP2018207760A1_000003t.gif
【実施例】
【0097】
【表2】
JP2018207760A1_000004t.gif
【実施例】
【0098】
【表3】
JP2018207760A1_000005t.gif
【実施例】
【0099】
【表4】
JP2018207760A1_000006t.gif
【実施例】
【0100】
【表5】
JP2018207760A1_000007t.gif
【実施例】
【0101】
【表6】
JP2018207760A1_000008t.gif
【実施例】
【0102】
【表7】
JP2018207760A1_000009t.gif
【実施例】
【0103】
【表8】
JP2018207760A1_000010t.gif
【実施例】
【0104】
【表9】
JP2018207760A1_000011t.gif
【実施例】
【0105】
【表10】
JP2018207760A1_000012t.gif
【実施例】
【0106】
【表11】
JP2018207760A1_000013t.gif
【実施例】
【0107】
【表12】
JP2018207760A1_000014t.gif
【実施例】
【0108】
【表13】
JP2018207760A1_000015t.gif
【実施例】
【0109】
【表14】
JP2018207760A1_000016t.gif
【実施例】
【0110】
各キナーゼ基質のPWMはWassermanらの報告(参考文献2:W. W. Wasserman and A. Sandelin, Nat. Rev. Genet. 5, 276 (2004).)を参考に作製した。まず、基質群における配列i番目におけるアミノ酸bの出現確率p(b,i)を以下の式を用いて算出した。
【実施例】
【0111】
【数2】
JP2018207760A1_000017t.gif
【実施例】
【0112】
ここでfb,iは配列i番目におけるアミノ酸bの出現数、Nは全配列数、c(b)はアミノ酸bの擬似カウント (pseudocount)、p(b)はヒトプロテオームにおけるアミノ酸bの出現確率を示す。続いてp(b)をバックグラウンドとし、アミノ酸出現確率比のlog2値wb,iを求めPWMを作製した。
【実施例】
【0113】
【数3】
JP2018207760A1_000018t.gif
【実施例】
【0114】
各キナーゼに対して作製されたPWMを表15~77に示す。
【実施例】
【0115】
【表15】
JP2018207760A1_000019t.gif
【実施例】
【0116】
【表16】
JP2018207760A1_000020t.gif
【実施例】
【0117】
【表17】
JP2018207760A1_000021t.gif
【実施例】
【0118】
【表18】
JP2018207760A1_000022t.gif
【実施例】
【0119】
【表19】
JP2018207760A1_000023t.gif
【実施例】
【0120】
【表20】
JP2018207760A1_000024t.gif
【実施例】
【0121】
【表21】
JP2018207760A1_000025t.gif
【実施例】
【0122】
【表22】
JP2018207760A1_000026t.gif
【実施例】
【0123】
【表23】
JP2018207760A1_000027t.gif
【実施例】
【0124】
【表24】
JP2018207760A1_000028t.gif
【実施例】
【0125】
【表25】
JP2018207760A1_000029t.gif
【実施例】
【0126】
【表26】
JP2018207760A1_000030t.gif
【実施例】
【0127】
【表27】
JP2018207760A1_000031t.gif
【実施例】
【0128】
【表28】
JP2018207760A1_000032t.gif
【実施例】
【0129】
【表29】
JP2018207760A1_000033t.gif
【実施例】
【0130】
【表30】
JP2018207760A1_000034t.gif
【実施例】
【0131】
【表31】
JP2018207760A1_000035t.gif
【実施例】
【0132】
【表32】
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【実施例】
【0133】
【表33】
JP2018207760A1_000037t.gif
【実施例】
【0134】
【表34】
JP2018207760A1_000038t.gif
【実施例】
【0135】
【表35】
JP2018207760A1_000039t.gif
【実施例】
【0136】
【表36】
JP2018207760A1_000040t.gif
【実施例】
【0137】
【表37】
JP2018207760A1_000041t.gif
【実施例】
【0138】
【表38】
JP2018207760A1_000042t.gif
【実施例】
【0139】
【表39】
JP2018207760A1_000043t.gif
【実施例】
【0140】
【表40】
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【実施例】
【0141】
【表41】
JP2018207760A1_000045t.gif
【実施例】
【0142】
【表42】
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【実施例】
【0143】
【表43】
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【実施例】
【0144】
【表44】
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【実施例】
【0145】
【表45】
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【実施例】
【0146】
【表46】
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【実施例】
【0147】
【表47】
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【実施例】
【0148】
【表48】
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【実施例】
【0149】
【表49】
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【実施例】
【0150】
【表50】
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【実施例】
【0151】
【表51】
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【実施例】
【0152】
【表52】
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【実施例】
【0153】
【表53】
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【実施例】
【0154】
【表54】
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【実施例】
【0155】
【表55】
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【実施例】
【0156】
【表56】
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【実施例】
【0157】
【表57】
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【実施例】
【0158】
【表58】
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【実施例】
【0159】
【表59】
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【実施例】
【0160】
【表60】
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【実施例】
【0161】
【表61】
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【実施例】
【0162】
【表62】
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【実施例】
【0163】
【表63】
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【実施例】
【0164】
【表64】
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【実施例】
【0165】
【表65】
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【実施例】
【0166】
【表66】
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【実施例】
【0167】
【表67】
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【実施例】
【0168】
【表68】
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【実施例】
【0169】
【表69】
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【実施例】
【0170】
【表70】
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【実施例】
【0171】
【表71】
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【実施例】
【0172】
【表72】
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【実施例】
【0173】
【表73】
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【実施例】
【0174】
【表74】
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【実施例】
【0175】
【表75】
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【実施例】
【0176】
【表76】
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【実施例】
【0177】
【表77】
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【実施例】
【0178】
実施例1-2.基質ペプチド配列の設計
コンセンサス配列およびPWMを使用して、以下の手順で基質ペプチド候補群を設計した。(1)ペプチドの長さはアミノ酸12残基とし、phosphoacceptor(セリンまたはチロシン)はN末端より6番目の位置とした。(2)C末端アミノ酸はアルギニンで固定した。(3)抽出された中でfold increase最大値をとるコンセンサス配列に位置するアミノ酸を固定した。(4)残りの部位はそれぞれPWMにおいてスコア上位5アミノ酸を使用した。(5)いずれの過程においても、phosphoacceptor以外の部位に、セリン、スレオニン、チロシン、メチオニン、システインは使用しなかった。得られた基質ペプチド候補群に対し、各キナーゼのPWMとの一致度(PWMスコア)を以下の式を用いて計算した。
【実施例】
【0179】
【数4】
JP2018207760A1_000082t.gif
【実施例】
【0180】
ここで、qiはペプチドq におけるi番目のアミノ酸を示す。ただし、本研究ではphosphoacceptorに位置するアミノ酸はPWMスコアの計算に使用しなかった。その後、標的キナーゼに対するPWMスコアが最大値をとる候補のみを抽出した。キナーゼ選択性の指標として、Graczyk らの報告(参考文献3:P. P. Graczyk, J. Med. Chem. 50, 5773 (2007).)を参考にPWMスコアにおけるgini係数を算出し、gini係数が0.8以上となるペプチド配列をキナーゼ特異的基質ペプチドと定めた。
【実施例】
【0181】
得られた基質ペプチド配列からC末端のアルギニンが除かれてなる配列を表78~82に示す。表78~82のアミノ酸配列(左側がN末端側)中、「-」は、アミノ酸配列中の各アミノ酸の区切りを示し、配列番号は、括弧外のアミノ酸の配列が設計された基質ペプチド配列の配列番号を示す。なお、括弧内のアミノ酸はPWMスコアが正値で、かつgini係数が0.8以上のアミノ酸であり、括弧外のアミノ酸が、当該括弧内のアミノ酸のいずれかに置きかえられていてもよいことを示す。
【実施例】
【0182】
【表78】
JP2018207760A1_000083t.gif
【実施例】
【0183】
【表79】
JP2018207760A1_000084t.gif
【実施例】
【0184】
【表80】
JP2018207760A1_000085t.gif
【実施例】
【0185】
【表81】
JP2018207760A1_000086t.gif
【実施例】
【0186】
【表82】
JP2018207760A1_000087t.gif
【実施例】
【0187】
実施例2.設計された基質キナーゼペプチドの特異性の評価1
実施例1で設計された基質ペプチド配列のC末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化され、且つC末端のカルボキシル基がアミド化されてなるポリペプチドを合成した。合成したポリペプチドの一部について、対象キナーゼ及び基質ペプチド配列(C末に付加されたアルギニンを除いてなる配列)を表83に示す。
【実施例】
【0188】
【表83】
JP2018207760A1_000088t.gif
【実施例】
【0189】
得られたポリペプチドをキナーゼ基質として用い、各種ヒト組換えキナーゼ(IKKb、CK2a2、CK1d、PLK1、ALK2、WNK3、IRAK1、NEK6、MLK1、MST3、TSSK1、MARK2、CaMK2a、MAPKAPK3、PKD3、ROCK1、PHKG2、PKCa、LATS1、PIM1、PAK2、AurC、RSK1、AKT1、PKACa、CAMKK1、GSK3b、CDC2、JNK1、p38a、ERK2、MAP3K2、及びDYRK4)に対する反応性を調べた。具体的には以下のようにして行った。
【実施例】
【0190】
基質ペプチド混合物(それぞれ10 pmol)に対し、1 mM ATP、10 mM MgCl2を含む25 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)32 μL中で組換えキナーゼ溶液(200 ng / μL)0.5 μLを添加し、37℃で3時間反応させた。1% トリフルオロ酢酸50 μLを添加しキナーゼ反応を停止し、SDB-XC StageTipにより脱塩精製した。得られた試料中のリン酸化ポリペプチドを、インターフェースにエレクトロスプレーイオン化法を用いた液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によりにより定量した。分析用カラムには先端を尖らせたフューズドシリカキャピラリー(長さ15 cm、内径100 μm)にReproSil-Pur C18-AQ(粒子径3 μm、Dr. Maisch)を充填した自家製スプレーヤー一体型カラム(参考文献4:Y. Ishihama, J. Rappsilber, J. S. Andersen, and M. Mann, J. Chromatogr. A 979, 233 (2002).)を用い、オートサンプラーにはHTC-PAL(CTC Analytics)、液体クロマトグラフにはUltimate3000 RSLCnano(Thermo Fisher Scientific)を用いた。移動相Aに0.5% 酢酸、移動相Bに80% アセトニトリル、0.5% 酢酸を使用し、流速500 nL / minにて移動相B 5% → 40%(20分)のグラジエント条件を用いた。質量分析計には、Q Exactive、Finnigan LTQ(Thermo Fisher Scientific)またはTripleTOF 5600+(Sciex)を使用し、Data Dependent Acquisition(DDA)モードにてMS/MSスペクトルを取得した。得られたMS/MSスペクトルに対してMascot v2.5による自動データベース検索を行った。データベースには基質ペプチド名とその配列をFASTAフォーマットにて記載したファイルを用いた。定量解析にはSkyline(参考文献5:B. Schilling, M. J. Rardin, B. X. MacLean, a. M. Zawadzka, B. E. Frewen, M. P. Cusack, D. J. Sorensen, M. S. Bereman, E. Jing, C. C. Wu, E. Verdin, C. R. Kahn, M. J. MacCoss, and B. W. Gibson, Mol. Cell. Proteomics 11, 202 (2012).)を使用し、LC-MS/MS測定より得られた生データ及びMascotより得られた同定結果を取り込んだ後、ペプチドの抽出イオンクロマトグラムにおけるピーク面積を算出した。1つのペプチドが複数の電荷状態で検出されている場合、最もシグナル強度の大きい電荷状態のスペクトルのみを解析に使用した。一部の測定でペプチドが同定されなかった場合は、m/z および保持時間をもとに手動でピークの同定を行い、ピーク面積を算出した。
【実施例】
【0191】
キナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量(ピーク面積)を図1~16に示す。図1~16より、実施例1の手法で設計された基質ペプチド配列を含むポリペプチドは、対象キナーゼに対して特異的にリン酸化されることが実験的に示された。従って配列番号1から187は、基質コンセンサス配列を有し、基質コンセンサス配列以外のアミノ酸のPWMスコアが正値かつ、gini係数が0.8以上の基準で設計したペプチド配列から、実際にキナーゼ活性値が2倍以上になることが関連付けられる。
【実施例】
【0192】
実施例3.基質ペプチドを用いた細胞内キナーゼ活性計測
実施例2で示されたように、実施例1の手法で設計された基質ペプチドは対象キナーゼに対する特異性を有していることから、細胞抽出物のようなキナーゼ混合試料中であっても、標的キナーゼ特異的に酵素活性を計測することが可能である。そこで、本実施例では、基質ペプチドと細胞抽出物を用いたキナーゼ活性計測における定量性、選択性およびペプチドの回収率について評価した。具体的には次のようにして行った。
【実施例】
【0193】
<材料の調製>
まず、実施例1で設計された基質ペプチド配列のC末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化され、且つC末端のカルボキシル基がアミド化されてなるポリペプチド、及びこれらの修飾が無いポリペプチドを合成した。合成したポリペプチドの一部について、対象キナーゼ及び基質ペプチド配列(C末に付加されたアルギニンを除いてなる配列)を表84に示す。表84中、TSSKtide1、LATStide3及びRSKtide2以外のポリペプチドは、全て、C末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化されたポリペプチドである。
【実施例】
【0194】
【表84】
JP2018207760A1_000089t.gif
【実施例】
【0195】
次に、本実施例で用いる細胞抽出物を次のようにして調製した。HeLa細胞は、Dulbecco's Modified Eagle Medium(10% ウシ胎児由来血清、カナマイシン含有)中、37℃、5% CO2 条件下で培養した。HeLa細胞を16時間低血清培地(0.1% ウシ胎児由来血清、カナマイシン含有)中で、血清飢餓状態においた。その後、キナーゼ阻害薬処理群には培地中の薬物濃度が10 μMとなるように各阻害薬のDMSO (dimethyl sulfoxide)溶液を添加し、対照試料にはDMSOのみを同量加え、20分間浸透させた。続いて、PBSで溶解したEGFを培地中濃度が150 ng / mLになるよう加え、15分間インキュベートした後、スクレイパーを用いて細胞を回収した。HeLa 細胞ペレットを細胞破砕液 (10 mM リン酸緩衝液pH 7.0、0.5% NP-40、1 mM EDTA、 5 mM EGTA、10 mM MgCl2、50 mM β-glycerophosphate、 1 mM Na3VO4、 2 mM dithiothreitol、 1% protease inhibitor cocktail) にて氷上で懸濁した。4℃、10,000 g にて15 分間遠心を行った後、上清を細胞抽出物として使用した。細胞抽出物中の総タンパク質濃度はBCA法(BSA standard)にて定量した。
【実施例】
【0196】
<試験1>
前述の基質ペプチド群(それぞれ50 pmol)とHeLa細胞抽出物(0、0.3、1、3、10、30 μg)によるリン酸化反応を行い、その定量性を評価した。具体的には、次の様にして行った。基質ペプチド混合物(それぞれ50 pmol)に対し、5 mM ATP、10 mM MgCl2、0.1 mM dithiothreitol、1% protease inhibitor cocktail、1% phosphatase inhibitor cocktailを含む25 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)25 μL中で細胞抽出物を添加し、25℃で45分間反応させた。反応後、1% トリフルオロ酢酸50 μLを添加しキナーゼ反応を停止した。キナーゼ反応後にSDB-XCおよびSCX Empore Disk(GL Sciences)を装着したStageTip(参考文献6:J. Rappsilber, Y. Ishihama, and M. Mann, Anal. Chem. 75, 663 (2003).)によって界面活性剤を除去した後、SDB-XC StageTipにより脱塩精製した。得られた試料中のリン酸化ポリペプチドを、実施例2と同様にしてLC-MSにより定量した。
【実施例】
【0197】
結果を図17A及び図17Bに示す。LC-MSによるリン酸化体の定量値は、細胞抽出物量に対して高い直線性を有し、基質ペプチドを用いて細胞抽出物由来キナーゼの活性を定量的に計測することに成功した(図17A、図17B)。
【実施例】
【0198】
<試験2>
HeLa細胞抽出物10 μgをマトリックスとして使用し、マトリックス存在下における組換えキナーゼ(0、1、3、10、30、100 ng)に対する定量性を調べた。具体的には、キナーゼ反応液に組換えキナーゼ(CK2a2)を添加する以外は、試験1と同様にして行った。
【実施例】
【0199】
結果を図17Cに示す。細胞抽出物存在下において感度の低下は見られるものの、非存在下と同様の直線性を維持していることが確認できた。
【実施例】
【0200】
<試験3>
細胞抽出物内におけるキナーゼ選択性を確認するため、ERK2のみに反応するよう設計された基質ペプチドに対し、細胞抽出物存在下においてMAPK3種(ERK2、p38a、JNK1)の組換え体を個別に反応させた。具体的には、キナーゼ反応液に前記MAPK3種を添加する以外は、試験1と同様にして行った。
【実施例】
【0201】
結果を図17Dに示す。ERK2の基質ペプチドは、ERK2特異的に、その添加量に応じてリン酸化が亢進することを確認した。
【実施例】
【0202】
以上の試験1~3の結果より、細胞抽出物のような複数種のキナーゼ混合試料中であっても、標的キナーゼの活性を定量的に計測できることが示唆された。
【実施例】
【0203】
<試験4>
HeLa細胞抽出物との反応時における基質ペプチドの安定性を調べるために、ATP無添加条件下における非リン酸化ペプチドの回収率を測定した。3種のペプチドを使用し、両末端未修飾のペプチドと、N末端アセチル化とC末端アミド化を行ったペプチドを比較した結果、両末端修飾ペプチドにおいて回収率向上が確認された(図17E)。これは反応時における基質ペプチド両末端の電荷が除去されたことにより、エンドプロテアーゼによる分解が抑えられたためと考えられた。
【実施例】
【0204】
実施例4.基質ペプチドを用いたMAPKパスウェイ変動評価
哺乳類で保存されているMAPKの中には、ERK1/2、p38、JNK、ERK5という4つの主要なサブファミリーが存在しており、独自のMAPKカスケードを形成している(図18)(参考文献7:M. Cargnello and P. P. Roux, Microbiol. Mol. Biol. Rev. 75, 50 (2011).)。これらMAPKパスウェイ群はそれぞれ異なる細胞機能を担っており、例えば、Raf-MEK1/2-ERK1/2パスウェイは細胞の増殖や成長に関係し、MEK3/6-p38パスウェイはストレスや免疫応答に関わっている。したがって、それぞれのMAPKカスケードを区別して評価することは創薬研究において重要である。本実施例では、基質ペプチドのキナーゼ特異性を活かし、各MAPKパスウェイ阻害薬が細胞内キナーゼ活性へ与える影響を調べた。具体的には以下の様にして行った。
【実施例】
【0205】
実施例1で設計された基質ペプチド配列のC末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化され、且つC末端のカルボキシル基がアミド化されてなるポリペプチドを合成した。合成したポリペプチドの一部について、対象キナーゼ及び基質ペプチド配列(C末に付加されたアルギニンを除いてなる配列)を表85に示す。
【実施例】
【0206】
【表85】
JP2018207760A1_000090t.gif
【実施例】
【0207】
キナーゼ阻害薬には、selumetinib(MEK1阻害薬)、SB202190(p38a/b阻害薬)、SP600125(JNK阻害薬)、XMD8-92(ERK5阻害薬)を用いた。細胞試料には、各阻害薬を処理した後EGF刺激を行う以外は実施例3と同様にして得られたHeLa細胞抽出物を使用し、セリン/スレオニンキナーゼ33種とMAPKパスウェイ上キナーゼ群を含む75キナーゼを対象とした基質ペプチド混合物による細胞内キナーゼ活性計測を行った。測定の結果、得られた基質ペプチドのリン酸化変動比をヒートマップにて図19に示した。リン酸化変動比は各阻害薬特有のプロファイルを示し、MAPK阻害薬によるキナーゼ群への影響を区別して評価可能であった。
【実施例】
【0208】
これらの結果が妥当なものであるか検証するため、各MAPKパスウェイに位置するキナーゼに着目し解析を進めた。MEK1の下流にはERK1/2、さらにその下流にはRSKが存在することが知られており、selumetinibによるMEK1阻害により、ERK1およびRSK2基質ペプチドのリン酸化量減少を確認することができた(図20)。
【実施例】
【0209】
MEK阻害薬処理HeLa細胞において、ERK1/2およびRSK活性が低下することは、過去のリン酸化プロテオーム解析の結果(参考文献8:C. Pan, J. V Olsen, H. Daub, and M. Mann, Mol. Cell. Proteomics 8, 2796 (2009).)と一致しており、本分析法の妥当性を裏付ける結果となった。また、本実験ではp38a/bを標的とする基質ペプチドのリン酸化体は検出できなかったものの、SB202190処理(p38a/b阻害)試料において、p38a/bの下流に位置するMAPKAPK基質ペプチドのリン酸化量が減少しており(図20)、確かにMAPK阻害薬が細胞内キナーゼ群に与える影響を評価可能であるということが分かった。
【実施例】
【0210】
実施例5.設計された基質キナーゼペプチドの特異性の評価2
実施例1で設計された基質ペプチド配列のC末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化され、且つC末端のカルボキシル基がアミド化されてなるポリペプチドを合成した。対象キナーゼ、基質ペプチド配列(C末に付加されたアルギニンを除いてなる配列)、配列番号、及びGini係数を表86に示す。
【実施例】
【0211】
得られたポリペプチドをキナーゼ基質として用い、各種ヒト組換えキナーゼ(CDC7_ASK、CK2A1、CK2a2、CDK2_CYCE1、ERK7、CDK9_CYCLINK、DYRK1A、DYRK4、DYRK2、DYRK3、HIPK1、HIPK2、HIPK3、HIPK4、ICK、MOK、GSK3b、CDK6_CYCD3、CDK6_CYCLIND1、CDK7_CYCH_MAT1、CDK9_CYCT1、ERK5、CDC2_CycB1、CDK2_CYCA2、CDK5_P25、CDK3_CYCE1、NLK、JNK1、JNK2、JNK3、ERK1、ERK2、P38D、P38G、p38a、P38B、CLK1、CLK3、MAP2K1、MAP2K7、MAP2K2、MAP2K4、MAP3K2、STK33、TAK1、CAMKK1、CAMKK2、ACTR2、HRI、PEK、CK1A、CK1d、CK1E、CK1G1、CK1G2、CK1G3、BMPR1B、ALK2、ALK4、TGFBR1、BARK1、GPRK5、GPRK7、RHOK、BUBR1、PLK1、PLK3、TLK1、TLK2、CHK2、MAPKAPK2、MAPKAPK3、MAPKAPK5、PKD2、PKD1、PKD3、CAMK1D、CAMK2B、CaMK2a、CAMK2G、CAMK2D、CHK1、LATS1、LATS2、IRAK1、CAMK4、DCLK1、DCLK2、MNK2、PKCG、PKCa、PKCB1、PKCT、PKCH、PKCZ、PKN1、PKN2、PLK4、AURB、AURA、AurC、PAK1、PAK2、PAK3、AKT1、AKT2、AKT3、SGK1、SGK2、SGK3、CGK2、PKG1B、PKG1A、PKACa、PKACB、PRKX、MSK1、MSK2、RSK1、RSK2、RSK4、RSK3、P70S6K、DAPK1、NDR1、NDR2、ROCK1、ROCK2、P70S6KB、PIM2、PIM1、PIM3、PAK5、PAK4、PAK6、BRSK2、AMPKA1_B1_G1、AMPKA2_B1_G1、NUAK1、NUAK2、MELK、MARK2、MARK1、MARK4、MARK3、QIK、NIM1、SIK、TSSK1、TSSK2、SKMLCK、COT、PHKG1、IKKA、IKKb、IKKE、TBK1、NEK2、NEK6、NEK7、MLK2、MLK1、MLK3、NEK9、TTBK1、MAP3K1、GCK、MST1、MST2、HGK、MINK、KHS1、TNIK、MST3、MST4、YSK1、PHKG2、TAO2、ZAK、NEK4、SGK496、ULK3、LIMK1、WNK1、WNK2、WNK3、及びTAO1)に対する反応性を調べた。具体的には実施例2と同様にして行った。
【実施例】
【0212】
キナーゼ基質の、各キナーゼによるリン酸化量の総和に対する対象キナーゼによるリン酸化量(リン酸化量:対象キナーゼ/全キナーゼ合計)、及び各キナーゼによるリン酸化量を多い順に並べた際の対象キナーゼによるリン酸化量の順位(対象キナーゼの順位を表86に示す。また、対象キナーゼがPLK3であるキナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量を図21に示し、対象キナーゼがERK7であるキナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量を図22に示す。表86及び図21~22より、実施例1の手法で設計された基質ペプチド配列を含むポリペプチドは、対象キナーゼに対して特異的にリン酸化されることが実験的に示された。
【実施例】
【0213】
【表86】
JP2018207760A1_000091t.gif
【実施例】
【0214】
実施例6.キナーゼ基質ペプチドの設計2
実施例1-1で作製したコンセンサス配列およびPWMを使用して(使用したPWMを表87に示す。)、実施例1-2と同様にして、基質ペプチド候補群を設計した。
【実施例】
【0215】
【表87】
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【実施例】
【0216】
得られた基質ペプチド配列からC末端のアルギニンが除かれてなる配列について、一部を表88に示す。表88のアミノ酸配列(左側がN末端側)中、「-」は、アミノ酸配列中の各アミノ酸の区切りを示し、配列番号は、括弧外のアミノ酸の配列が設計された基質ペプチド配列の配列番号を示す。なお、括弧内のアミノ酸はPWMスコアが正値で、かつgini係数が0.8以上のアミノ酸であり、括弧外のアミノ酸が、当該括弧内のアミノ酸のいずれかに置きかえられていてもよいことを示す。
【実施例】
【0217】
【表88】
JP2018207760A1_000093t.gif
【実施例】
【0218】
実施例7.設計された基質キナーゼペプチドの特異性の評価3
実施例6で設計された
基質ペプチド配列のC末端にアルギニンが付加され、N末端のアミノ基がアセチル化され、且つC末端のカルボキシル基がアミド化されてなるポリペプチドを合成した。合成したポリペプチドの一部について、対象キナーゼ、基質ペプチド配列(C末に付加されたアルギニンを除いてなる配列)、及び配列番号を表89に示す。
【実施例】
【0219】
【表89】
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【実施例】
【0220】
得られたポリペプチドをキナーゼ基質として用い、各種ヒトチロシン組換えキナーゼ(ABL1、ABL2、ACK、TNK1、ALK、LTK、AXL、MER、TYRO3、CTK、DDR2、EGFR、ERBB4、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、FAK、PYK2、FER、FES、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、IGF1R、INSR、IRR、JAK1、JAK2、JAK3、LIMK1、MET、RON、TAK1、MUSK、FLT3、FMS、KIT、PDGFRA、PDGFRB、RET、ROS、BLK、BRK、FGR、FRK、FYN、HCK、LCK、LYNA、LYNB、SRC、SRM、YES、SYK、ZAP70、BMX、BTK、ITK、TEC、TXK、TIE2、TRKA、TRKB、TRKC、FLT1、FLT4、KDR、及びWEE1)に対する反応性を調べた。具体的には実施例2と同様にして行った。
【実施例】
【0221】
対象キナーゼがTYRO3であるキナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量を図23に示し、対象キナーゼがEGFRであるキナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量を図24に示し、対象キナーゼがFERであるキナーゼ基質の、各組換えキナーゼによるリン酸化量を図25に示す。図23~25より、実施例6の手法で設計された基質ペプチド配列を含むポリペプチドは、対象チロシンキナーゼに対して特異的にリン酸化されることが実験的に示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24