TOP > 国内特許検索 > フォトニック結晶の作製方法 > 明細書

明細書 :フォトニック結晶の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3376411号 (P3376411)
公開番号 特開2001-091777 (P2001-091777A)
登録日 平成14年12月6日(2002.12.6)
発行日 平成15年2月10日(2003.2.10)
公開日 平成13年4月6日(2001.4.6)
発明の名称または考案の名称 フォトニック結晶の作製方法
国際特許分類 G02B  6/13      
G02B  6/12      
G02F  1/355     
G02F  1/361     
FI G02F 1/355
G02F 1/361
G02B 6/12
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願平11-263750 (P1999-263750)
出願日 平成11年9月17日(1999.9.17)
審査請求日 平成12年3月29日(2000.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】長谷 正司
【氏名】江頭 満
【氏名】新谷 紀雄
審査官 【審査官】福島 浩司
参考文献・文献 特開 平10-281988(JP,A)
特開2000-284136(JP,A)
特表 平10-503288(JP,A)
国際公開99/19754(WO,A1)
調査した分野 G02B 6/13
G02B 6/12
G02F 1/355
G02F 1/361
特許請求の範囲 【請求項1】
光の波長程度の間隔で開けられた複数の円筒状の孔を持つ鋳型に対して結晶形成物質をキャスティングして、鋳型の前記孔に対応した複数の突起が形成された結晶体を作製する方法において、金属板にレーザー光を照射し、2次元の周期的な間隔で格子状に配列され、かつ間隔が光の波長程度である複数の円筒状の孔を開けることにより金属製の鋳型を作製し、この鋳型を用いて液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子を注型硬化させてその後鋳型から脱離するか、あるいは注型硬化後に鋳型の金属を酸で溶解することにより、硬化した高分子を取り出すことを特徴とするフォトニック結晶の作製方法。

【請求項2】
請求項1記載のフォトニック結晶の作製方法であって、2次元周期的な間隔で格子状に配列され、かつ、格子の間隔が光の波長程度であり、さらに、間隔の2次元周期性の一部が欠けている複数の円筒状の孔を持つ鋳型に、液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子を注型硬化させてその後鋳型から脱離するか、あるいは注型硬化後に鋳型の金属を酸で溶解することにより、硬化した高分子を取り出すことを特徴とするフォトニック結晶の作製方法。

【請求項3】
請求項1または2のフォトニック結晶の作製方法により作製されたフォトニック結晶を金属で被覆することを特徴とするフォトニック結晶の作製方法。

【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかのフォトニック結晶の作製方法によって作製されたフォトニック結晶。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、フォトニック結晶作製方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、短時間で容易に大量生産をも可能とする新しいフォトニック結晶の作製方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術とその課題】誘電率に光の波長程度の周期性を持つ構造体として、その誘電率や周期性に応じて特定の波長の光を遮断する性質をもつフォトニック結晶は、ガス検知システム、微小3次元光回路、非線型光学デバイス、高性能発光デバイスなどの材料として、幅広い分野への応用が期待されている。しかし、このようなフォトニック結晶の作製は、光の波長程度の周期性を持つ微細な構造とすることが必要であることから実際的に容易ではなく、実際にも非常に手間が掛かることから、フォトニック結晶の各種工業分野への応用が妨げられていた。このため、より実用的で、実際的にフォトニック結晶の大量生産が可能となるような作製方法の実現が望まれてきた。

【0003】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、短時間で容易にフォトニック結晶の大量生産が可能となる新しいフォトニック結晶作製方法を提供することを課題としている。

【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、光の波長程度の間隔で開けられた複数の円筒状の孔を持つ鋳型に対して結晶形成物質をキャスティングして、鋳型の前記孔に対応した複数の突起が形成された結晶体を作製する方法において、金属板にレーザー光を照射し、2次元の周期的な間隔で格子状に配列され、かつ間隔が光の波長程度である複数の円筒状の孔を開けることにより金属製の鋳型を作製し、この鋳型を用いて液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子を注型硬化させてその後鋳型から脱離するか、あるいは注型硬化後に鋳型の金属を酸で溶解することにより、硬化した高分子を取り出すことを特徴とするフォトニック結晶の作製方法を提供する。また、この出願の発明は、第2には、2次元周期的な間隔で格子状に配列され、かつ、格子の間隔が光の波長程度であり、さらに、間隔の2次元周期性の一部が欠けている複数の円筒状の孔を持つ鋳型に、液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子を注型硬化させてその後鋳型から脱離するか、あるいは注型硬化後に鋳型の金属を酸で溶解することにより、硬化した高分子を取り出すことを特徴とする方法を、また第3には、上記のフォトニック結晶の作製方法により作製されたフォトニック結晶を金属で被覆することを特徴とするフォトニック結晶の作製方法も提供する。

【0005】
そして、この出願の発明は、第4には、上記のフォトニック結晶の作製方法によって作製されたフォトニック結晶を提供する。

【0006】
【発明実施の形態】この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。この出願の発明のフォトニック結晶作製方法は、光の波長程度の微細な間隔で並んだ円筒状の孔を持つ鋳型を用いて、キャスティングによりフォトニック結晶を作製するものである。例えば、金属板に光の波長程度の間隔で並んだ円筒状の孔を掘って鋳型とし、円筒状の孔に液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子を流し込んで成型し、液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子が硬化した後、鋳型から脱離する。あるいは硬化後に、鋳型の金属板を酸で溶かすことにより硬化した高分子を取り出す。鋳型から取り出された硬化した高分子は、不要な部分を切り取られ、フォトニック結晶として成型される。作製されたフォトニック結晶は複数の柱から構成され、この柱は原則的には2次元周期的な格子構造を持つ。

【0007】
具体的には、例えば図1に示したように、光の波長程度の微細な間隔で並んでいる円筒状の孔(1)を持つ鋳型(2)を容器(3)中に配置し、液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子(4)を流し込んで成型する。ただし、円筒状の孔(1)は、鋳型(2)を貫通していない。液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子(4)の硬化後、鋳型(2)と容器(3)を取り去ることで、フォトニック結晶(5)が作製される。同様に、光の波長程度の微細な間隔で並んだ、円筒状の孔(6)を持つ鋳型(7)を容器(8)中に配置し、液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子(9)を流し込んで成型してもよい。ただし、円筒状の孔(6)は、鋳型(7)を貫通している。液状高分子あるいは粒子を分散させた液状高分子(9)の硬化後、鋳型(7)と容器(8)を取り去ることでも、フォトニック結晶(5)が作製される。

【0008】
鋳型の円筒状の孔は、原則的には2次元周期的に掘られる。円筒状の孔の空間的な周期は、作製されるフォトニック結晶による制御の対象となる光の波長程度に適宜設定される。孔の直径は波長の数分の1程度、また、孔の深さは孔の直径の10倍以上に設定される。鋳型は、例えば、金属板にレーザー光を照射し円筒状の孔を掘ることにより作製される。

【0009】
この出願の発明のフォトニック結晶を構成する柱は、前述の通り、原則的には2次元周期的な格子構造を持つものであるが、欠陥を導入することも可能である。例えば、図2に示すように、フォトニック結晶を構成する正方格子状に配列する柱の内の1列を欠落させることにより、この柱の欠落した部分にだけ、特定の波長の光を透過させることが可能となる。フォトニック結晶を構成する柱の材質、直径、長さ、配列格子の形状、欠陥の形状を制御することにより、透過させる光の波長を制御することが可能である。配列の欠陥を導入したフォトニック結晶を作製する場合には、鋳型の作製において、配列の欠陥に相当する部分には孔を掘らない。

【0010】
図3は、キャスティングにより作製したフォトニック結晶(10)を金属(11)で被覆したものを示す概略図である。金属(11)の被覆層の厚みを光の侵入長よりも大きくすることで、金属(11)のみで作製されたフォトニック結晶と同等な光学的性質を持つフォトニック結晶を作製することが可能となる。フォトニック結晶を構成する柱の材質、直径、長さ、配列格子の形状の設定により、様々な性質を持つフォトニック結晶が作製される。さらには、任意の欠陥を導入することにより、部分的に特定の波長の光を透過させることも可能となる。

【0011】
さらに、この出願の発明のフォトニック結晶作製方法により作製される欠陥を導入したフォトニック結晶を用いて、ガスの検知および定量が可能となる。フォトニック結晶により検知対象となるガスが強く吸収する波長の光のみを連続光から抽出し、この抽出光をガスサンプルに照射し透過光強度を測定することにより、ガスの定量分析を行うことが可能となり、ガス検知システムへの応用が可能である。

【0012】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。

【0013】
【実施例】実施例1
この出願の発明のフォトニック結晶作製方法により、フォトニック結晶を作製した。まず、絞ったNd:YAGレーザー光を銅板表面に垂直に照射して、孔を掘り、鋳型を作製した。レーザーの波長は532nm(2次高調波)、パルス幅は13ns、1パルスあたりのエネルギーは0.7mJ、繰り返し周期は300Hzであり、1つの穴を掘るのに999パルスのレーザー照射を行った。孔の総数は688個であった。

【0014】
次いで、銅板を容器に配置し、容器に液状のエポキシ樹脂を流し込んだ。その後、容器を真空装置内に入れ真空引きし、孔中にエポキシ樹脂を注入した。真空装置から取り出して温度を上昇させエポキシ樹脂を熱硬化した。その後、硬化したエポキシ樹脂を容器から取り出して、硝酸に浸して銅のみを溶解し、エポキシ樹脂のみを抽出した。さらに、硬化したエポキシ樹脂の不要部分を切り取り、フォトニック結晶として成型した。

【0015】
図4は、作製されたフォトニック結晶を示す電子顕微鏡写真である。(a)は真上から、(b)は上方45度から、(c)は真横から撮影したものである。結晶を構成する柱はエポキシ樹脂であり、柱の直径は48μm、長さは500μmであった。これらの柱は、2次元の蜂の巣型格子状に垂直に配列し、格子定数は100μmであった。

【0016】
実施例2
図5(a)、(b)はそれぞれ、フォトニック結晶と、その材料であるエポキシ樹脂のシート(0.75mm厚)の光透過スペクトルである。フォトニック結晶を構成する柱は、2次元の蜂の巣型格子状に配列されており、これらの柱の直径は48μm、長さは500μm、格子定数は100μm、柱の総数は480本である。

【0017】
入射した光の進行方向は柱に対して垂直であり、光の電界は柱に平行である。図5(a)では、波数が39、56、75、94、110cm-1付近に透過率の減少が見られる。一方、図5(b)では、この波数域で特に変化が見られない。従って、(a)で見られる透過率の減少は、エポキシ樹脂固有の性質ではなく、エポキシ樹脂製の柱を2次元の蜂の巣型格子状に配列した結果によるものであると考えられる。ゆえに、この前記のフォトニック結晶作製方法により、フォトニック結晶を作製可能であることが証明された。

【0018】
実施例3
図6はフォトニック結晶を用いたガス検知システムの例を示したものである。検知対象となるガスが強い吸収を示す特定の波長の光(12)を、欠陥を導入したフォトニック結晶(13)を用いて連続光(14)から抽出する。その際、フォトニック結晶(13)の欠陥部分以外を透過する光は、遮蔽板(15)を使って遮蔽する。特定の波長の光(12)を検出対象となるガスを含む気体(16)に照射し、透過光(17)の強度を光検出器(18)を使って測定する。同時に、連続光(14)をフォトニック結晶(13)を通過させずに、気体(16)に直接照射し、透過光(19)の強度を別の光検出器(20)を使って測定し、光検出器(18)の結果との比を取ることで、ガス濃度を定量評価することが可能となる。本システムでは、連続光(14)として自然光を想定している。よって、測定状況が異なっても、連続光(14)のスペクトル分布は不変で強度のみが変化するため、透過光(17)と透過光(19)の強度の比から、ガス濃度の定量評価が可能となる。

【0019】
さらに、図7は、図6と同様に、フォトニック結晶を用いたガス検知システムの例を示したものである。検知対象となるガスのみが強い吸収を示す特定の波長の光(21)を、欠陥を導入したフォトニック結晶(22)を用いて連続光(23)から抽出する。その際、フォトニック結晶(22)の欠陥部分以外を透過する光は、遮蔽板(24)を使って遮蔽する。特定の波長の光(21)を検知対象となるガスを含む気体(25)で満たした容器(26)に照射し、透過光(27)の強度を光検出器(28)を使って測定する。かつ、特定の波長の光(21)を容器(29)に照射し、透過光(30)の強度を別の光検出器(31)を使って測定し、光検出器(28)の結果との比を取ることで、ガス濃度を定量評価することが可能となる。ただし、容器(29)は、内部が真空であるか、または、検知対象となるガスを含有しない気体で満たされている。このシステムにおいては、連続光(23)は、検知対象となるガスのみが強い吸収を示す特定の波長を含有していれば、どのような光であってもよい。

【0020】
たとえば、この出願の発明のフォトニック結晶作製方法によれば、フォトニック結晶を構成する柱の材質、直径、長さ、配列格子の形状、欠陥の形状を制御することにより、検知対象であるガスの種類に応じて透過させる光の波長を設定することが可能である。また、単体のフォトニック結晶においても、複数の線欠陥を導入することで、複数種のガスに対応可能である。

【0021】
このガス検知システムの構成は、従来の分光計を用いたガス検知システムよりも簡便である。また、欠陥を導入したフォトニック結晶は、取り出す光の線幅が非常に狭いことから、検知対象であるガスの吸収波長に近い吸収波長を持つ異種のガスの存在による検出誤差を受けにくいという利点も有することから、精度の高い定量測定が可能となる。

【0022】
【発明の効果】この出願の発明により、キャスティングによるフォトニック結晶の作製に成功した。この出願の発明により、短時間で容易にフォトニック結晶の大量生産が可能となる。また、この出願の発明によれば、精度の高い定量測定が可能となるガス検知システムが実現される。

【0023】
この出願の発明により作製されるフォトニック結晶は、ガス検知システムへの応用以外にも、微小3次元光回路、非線型光学デバイス、高性能発光デバイスなどの広い分野への応用が期待される。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図1】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図4】
5
【図7】
6