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明細書 :ジカウイルス感染症治療用医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-076280 (P2018-076280A)
公開日 平成30年5月17日(2018.5.17)
発明の名称または考案の名称 ジカウイルス感染症治療用医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/7056      (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
FI A61K 31/7056
A61P 31/14
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2017-108007 (P2017-108007)
出願日 平成29年5月31日(2017.5.31)
優先権出願番号 2016211655
優先日 平成28年10月28日(2016.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】小林 隆志
【氏名】神山 長慶
【氏名】相馬 颯介
【氏名】飛▲騨▼野 真也
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
要約 【課題】ジカウイルス感染症の治療及び/又は予防に有効な手段を提供すること。
【解決手段】リバビリンを含有する、ジカウイルス感染症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
リバビリンを含有する、ジカウイルス感染症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
経口投与形態又は静脈注射形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
ジカウイルス感染症の治療に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
現在、諸外国では蚊によって媒介されるジカウイルスが流行している。これに伴い新生児の小頭症患者が増加している。妊婦のジカウイルス感染と新生児の小頭症が関与することが近年明らかになってきた。しかし、ジカウイルスに対する有効な治療薬やワクチンは未だ開発されていない。小頭症患者を減らすためにもジカウイルス感染者の早期治療を実施し、感染拡大を防ぐことが求められている。
【0003】
一方、1-β-D-リボフラノシル-1、2、4-トリアゾール-3-カルボキサミド(リバビリン)は、核酸構造類似化合物であり、現在インターフェロンα-2αとの併用によりC型肝炎の治療に用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-51898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような現状の下、ジカウイルス感染症の治療及び/又は予防に有効な手段を提供することが1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、C型肝炎ウイルスの治療薬として知られるリバビリンがジカウイルスの増殖抑制又は感染抑制に有効であることを見出した。斯かる知見に基づき、更なる研究を重ねた結果、下記に代表される発明が提供される。
【0007】
項1.
リバビリンを含有する、ジカウイルス感染症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
項2.
経口投与形態である、項1に記載の医薬組成物。
項3.
ジカウイルスに感染している又はジカウイルスに感染していることが疑われる被検体にリバビリンを投与することを含む、ジカウイルス感染の治療方法。
項4.
ジカウイルス感染症の予防及び/又は治療用医薬組成物を製造するためのリバビリンの使用。
【発明の効果】
【0008】
ジカウイルス感染症の有効な治療及び/又は予防手段が提供される。一実施形態において、副作用が軽減された安全性の高いジカウイルス感染症の治療及び/又は治療手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】リバビリンによるジカウイルス増殖抑制能をプラーク形成に基づいて評価した結果を示す。(A)はウイルス力価が0、0.001、及び0.01の場合の結果であり、(B)はウイルス力価が0、0.1、及び1の場合の結果である。(C)はプラーク数を相対的に評価した結果である。
【図2】ganciclovirによるジカウイルス増殖抑制能をプラーク形成に基づいて評価した結果を示す。(A)はプラークの形成を撮影した写真であり、(B)はプラーク数を相対的に評価した結果である。
【図3】リバビリンによるジカウイルス増殖抑制能の濃度異存性及び安全性を評価した結果を示す。
【図4】蚊の幼虫由来の細胞を用いてリバビリンによるジカウイルス増殖抑制能を評価した結果を示す。
【図5】蚊の幼虫由来の細胞を用いてリバビリンによるジカウイルス増殖抑制能を評価した結果を示す。
【図6】ジカウイルス感染に高感受性の遺伝子改変マウスを用いてリバビリンによるジカウイルス増殖抑制能を評価した結果を示す。
【図7】リバビリンのジカウイルス増殖抑制効果をVero細胞を用いて評価した結果を示す。
【図8】リバビリンのジカウイルス増殖抑制効果をヒト神経芽細胞腫の細胞を用いて評価した結果を示す。
【図9】ジカウイルスによるアポトーシス及び細胞死に対するリバビリンの抑制効果を評価した結果を示す。
【図10】ジカウイルスによるウイルス血症の発現に対するリバビリンの抑制効果を評価した結果を示す。
【図11】ジカウイルスが感染したマウスの生存率に対するリバビリンの影響を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ジカウイルス感染症の治療及び/又は予防用の医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物とも称する)は、有効成分としてリバビリンを含むことが好ましい。リバビリンは、公知の化合物であり、その入手方法としては、市販品を用いてもよく、また公知の方法に基づき製造してもよい。

【0011】
本発明の医薬組成物は、ジカウイルスに感染した被検体、または感染する(した)恐れのある被検体に投与するものである。一般に、感染患者は、発熱、頭痛、眼球結膜充血、皮疹、筋痛、及び関節痛等の症状を示す。よって、本発明の医薬組成物はリバビリンの他に、これらの症状の対症療法薬を配合してもよい。

【0012】
そのような対症療法薬としては、例えば、次を挙げることができる:アスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、エテンザミド、サリチルアミド、イブプロフェン、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛薬;カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等の中枢神経興奮薬;ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素等の鎮静剤、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸カルビノキサミン、メキタジン、酒石酸アリメマジン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸トリプロリジン等の抗ヒスタミン薬;塩化リゾチーム、ブロメライン、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム等の抗炎症薬;ベラドンナ(総)アルカロイド、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、臭化水素スコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化チメピジウム、ピレンゼピン等の抗アセチルコリン剤;セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、ポピドンヨード、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、チモール、ヨウ素・ヨウ化カリウム、フェノール、塩酸クロルヘキシジン、クレオソート、塩化ベンゼトニウム等の殺菌消毒剤;塩酸ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、リドカイン、塩酸リドカイン、オキセサゼイン等の局所麻酔剤;ビタミンA、肝油、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、アスコルビン酸カルシウム、ビタミンD、ビタミンE、コハク酸トコフェノールカルシウム等のビタミン剤;パントテン酸、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、パンテチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、グルクロン酸、グルクロノラクトン、アミノエチルスルホン酸、ビオチン、γ-オリザノール等の代謝性成分;地黄、ケイヒ、ゴオウ、ショウキョウ、マオウ、カンゾウ、キョウニン、ハンゲ、シャゼンソウ、サイコ、ブクリョウ、シンイ等の生薬およびこれらの抽出物(エキス、チンキ等)等。対症療法薬は、本発明の医薬組成物に、単一成分を配合してもよく、2種以上のものを組み合わせて配合してもよい。

【0013】
本発明の医薬組成物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口的に投与する製剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、トローチ剤、及びゼリー剤等を挙げることができる。また、非経口的に投与する製剤としては、注射剤、硬膏剤、酒精剤、エキス剤、坐剤、懸濁剤、チンキ剤、軟膏剤、パップ剤、点鼻剤、吸入剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等を挙げることができる。本発明の医薬組成物をうがい薬、のどスプレーや洗口液に配合してもよい。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与製剤が好ましく、より好ましくは錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、トローチ剤、及びゼリー剤等の固形製剤である。

【0014】
これらの製剤は、当業者に公知慣用の製造方法により製造でき、また、このような種々の剤形の医薬製剤を調製するには、所望により添加物を配合することが可能である。該添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、乳化剤、及び安定化剤等を挙げることができる。これらの添加物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0015】
本発明の医薬組成物の患者への投与量は、患者の性別、年齢、体重、症状、投与方法、投与回数、投与時期等を考慮して適宜決定される。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、患者に経口投与されることが好ましく、その際のリバビリンの投与量は、例えば、1~30mg/kg/日、好ましくは5~20mg/kg/日とすることができる。投与回数は特に制限されず、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回とすることができる。投与期間は特に制限されず、例えば、症状が緩和又は消失するまで継続することができ、例えば、3ヶ月、2カ月、1カ月、3週間、2週間、1週間、5日間、4日間、3日間、又は2日間とすることができる。投与期間中に投与量を変更してもよい。例えば、初回の投与量(リバビリン)を高く設定し(例えば、15~50mg/kg、好ましくは20~40mg/kg)、2回目移行の投与量を段階的(例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は1月毎)に下げることが可能である。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、患者に静脈注射によって投与されること好ましい。静脈投与の場合の投与量、投与頻度、及び投与期間は、上記に例示した経口投与の場合と同じであっても、異なっても良い。

【0016】
本発明の医薬組成物は、本発明に係る複数の成分を含む単一の製剤として製造し、これを投与してもよいし、また本発明に係る各成分を分けて別個の製剤とし、それら製剤を同時または順次投与可能としたキット製剤としてもよい。

【0017】
一実施形態において、本発明の医薬組成物をジカウイルスに感染していることが疑われる被検体に投与することによってジカウイルス感染症の予防が図られる。ジカウイルスに感染していることが疑われる被検体とは、例えば、ジカウイルス感染症が流行している地域に訪れたヒト、又はそのようなヒト若しくはジカウイルス感染症を発症しているヒトに接触したヒトを挙げることができる。予防を目的とした本発明の医薬組成物の投与は、ヒトがジカウイルス感染が流行している地域を訪れた時又はヒトがジカ熱ウイルスを発症しているヒトと接触した時から一定期間内に行うことが好ましい。一定期間とは、例えば、2カ月、1カ月、3週間、2週間、1週間、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日であり得る。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0019】
試験例1. ribavirinのジカウイルス増殖抑制能(Vero細胞)
Vero細胞はアフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来する細胞株であり、ウイルス増殖抑制に重要な役割を持つI型インターフェロン遺伝子のクラスターが欠損しているため、ウイルス感染に対して非常に感受性が高い細胞株である。プラークアッセイはウイルスの力価を計測するために有効な手技である。dishに付着しているVero細胞にウイルスを感染させ、その上からメチルセルロースを重層する。これにより、感染細胞から放出されたウイルスが、遠くの細胞に感染するのを防止できる。1つの細胞に感染したウイルスは隣接した細胞にのみ感染し、初感染細胞から同心円上に感染細胞が広がる。この部分のVero細胞は死滅し、剥がれることでプラーク状を呈する。このプラークの個数を数えることで、plaque forming unit(PFU)を算出し、ウイルス力価を求めることができる。
【実施例】
【0020】
Vero細胞を12well plateに2×105/wellずつ播種した。翌日、ジカウイルスをmultiplicity of infection (MOI) 0、0.001、0.01、0.1、及び1の5段階のウイルス力価で感染させた(MOIは、細胞1個に対するウイルスの数を表す)。感染1時間後、2%メチルセルロースを重層し、ribavirinを0、10、100、及び1000μg/ml の4段階の濃度で添加した。感染4日後、プラーク数を数えることで、plaque forming unit (PFU)を算出し、ウイルス力価を求め、ribavirinのウイルスの増殖抑制効果を評価した。
【実施例】
【0021】
ribavirinを作用させていないジカウイルス感染Vero細胞では、MOIが高くなるにしたがって、多くのプラーク形成が観察された(図1(A)及び(B))。一方で、ribavirinを作用させた場合には、ribavirinの濃度依存的にプラーク形成が抑制された(図1(A)及び(B))。図1(C)は、各MOIにおけるribavirin未添加群でのプラーク数に対するribavirin添加群でのプラーク数の割合を示したグラフである。ribavirinを添加した群では、その濃度依存的にプラーク形成が抑制され、1000μg/mlのribavirinを作用させた場合には、MOIの値が高くてもほとんどプラークが形成されないことが判明した。以上の結果より、ribavirinは哺乳類細胞であるVero細胞内でのジカウイルスの増殖を抑制し、その効果は濃度依存的に高くなることが明らかになった。
【実施例】
【0022】
試験例2:gancicloviのジカウイルス増殖抑制能
試験例1におけるribavirin をganciclovirに変更した以外は、試験例1と同様の試験を行った。但し、ジカウイルスはMOI 0、0.1、及び1の3段階のウイルス力価で感染させ、ganciclovirは0、0.5、1、及び2μMの4段階の濃度で添加した。ganciclovirはサイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルス感染症に対する治療薬として使用されており、DNAポリメラーゼ阻害作用を有している。
【実施例】
【0023】
各MOIにおいて、ganciclovirの濃度に関係せず、ほぼ同数のプラーク形成が観察された(図2(A))。また、いずれの濃度のganciclovirにもプラーク形成の抑制作用は認められなかった。以上の結果より、ganciclovirはVero細胞内でのジカウイルスの増殖抑制能を有さないことが明らかになった。
【実施例】
【0024】
試験例3:濃度異存性及び安全性の評価
Vero細胞を12well plateに2×105/wellずつ播種した。翌日、Vero細胞にジカウイルス(ZIKV)をMOI 1のウイルス力価で感染させた。感染1時間後、ribavirinを0、7.8、15.6、31.3、62.5、125、250、500、750、1000、1500、及び2000μg/mlの12段階の濃度で添加した。感染4日後、各wellを倒立顕微鏡下で撮影し、Vero細胞の生死を評価した。
【実施例】
【0025】
図3に示すとおり、ribavirin濃度が125μg/ml以下のwellではVero細胞が死滅し、剥がれていることが確認された。一方で、ribavirin濃度が250μg/ml以上のwellではVero細胞が生存し、dishに付着していた。ribavirin濃度が2000μg/mlの場合も、Vero細胞は生存していた。これらの結果から、ribavirinは100μg/mlでプラークアッセイによるウイルス増殖抑制効果を示し、250μg/mlで細胞死を抑制できることが明らかになった。また、ribavirin濃度を高くしても、Vero細胞の生存に悪影響を及ぼさなかったことより、ribavirinの安全性が高いことが示唆された。
【実施例】
【0026】
試験例4:リバビリンのジカウイルス増殖抑制能(C6/36細胞:RT-PCR)
C6/36細胞はヒトスジシマカの孵化幼虫由来の細胞株であり、蚊媒介性ウイルスの増殖実験に有用である。C6/36細胞を12well plateに2×10/wellずつ播種した。翌日、C6/36細胞にジカウイルスをMOI 0.001のウイルス力価で感染させた。感染1時間後、ribavirinを0、10、100、及び1000μg/mlの4段階の濃度で添加した。感染4日後、C6/36細胞をTORIZOLにて回収しRNAを抽出した。抽出したRNAに対して逆転写反応を行い、cDNAを得た。このcDNAに対してジカウイルスに特異的な塩基配列を認識するプライマーを用いてreal-time RT-PCRを実施した。また、インターナルコントロールとして、C6/36細胞の40S ribosomal protein S17に対するプライマーを使用した。
【実施例】
【0027】
図4に示すとおり、ribavirinを10μg/ml濃度で作用させると、作用させない場合に比べ、そのジカウイルス量は1/8程度にまで低くなることが判明した。また、100μg/ml又は1000μg/ml濃度で作用させると、ほぼ完全にジカウイルスは検出されなかった。これらの結果から、ribavirinはC6/36細胞内でのジカウイルスの増殖を抑制した。その効果は濃度依存的に高くなることが明らかになった。これは、ribavirinがベクターである蚊の細胞内においてもジカウイルス増殖の抑制能を有することを示す。
【実施例】
【0028】
試験例5:リバビリンのジカウイルス増殖抑制能(C6/36細胞:RT-PCR)
試験例4にてC6/36細胞から抽出したRNAに対してジカウイルスに特異的な塩基配列を認識するプライマーを用いてRT-PCRを実施した。PCR後のサンプルをアガロースゲルで電気泳動し、バンドの有無、濃さを評価した。
【実施例】
【0029】
図5に示すとおり、ribavirinの濃度依存的に検出されるバンドの濃さが薄くなることが確認された。この結果から、試験例4と同様に、ribavirinがベクターである蚊の細胞内においてもジカウイルス増殖の抑制能を有することが示された。
【実施例】
【0030】
試験例6:ribavirinのジカウイルス感染防御能(in vivo)
マウスはジカウイルスに対する感受性が低く、高力価のウイルスを接種しても感染は成立しないが、ウイルス感染防御に重要なI型インターフェロン受容体を欠損した遺伝子改変マウスはジカウイルス感染に高感受性であることが報告されている(Lazear et al., Cell Host Microbe. 2016 May 11;19(5):720-30)。そこで、I型インターフェロンの受容体の下流でそのシグナルを伝達するのに必須であるSTAT1の欠損マウスを作製し、それがジカウイルス感染に高感受性であることを確認した。
【実施例】
【0031】
6匹のSTAT1欠損マウスに1×10PFUのジカウイルスを皮下投与した。感染当日3匹にはribavirinを1個体あたり25mg腹腔内投与した。一方残りの3匹にはviecleとして等量のPBSを腹腔内投与した。感染2日後採血を行い、血清中のウイルスRNAをRT-PCR法にて解析した。
【実施例】
【0032】
血清サンプルに対してジカウイルスの有する塩基配列を特異的に検出するprimerを用いてRT-PCR解析を実施し、ウイルス血症の有無を確認した。その結果、ribavirin非投与群では3匹中3匹の個体でバンドが検出されたが、ribavirin投与群では3匹中3匹の個体でバンドが検出されなかった(図6)。この結果から、ribavirinは生体レベルでジカウイルスによるウイルス血症を抑制することが明らかになった。
【実施例】
【0033】
試験例7
Vero細胞にジカウイルスをMOI 5×10-5のウイルス力価で感染させた。感染1時間後、ribavirinを0、10、20、40、80μg/mlの濃度で作用させた。4日後、定量的RT-PCR解析を実施し、ribavirinのウイルス増殖抑制効果を評価した。結果を図7に示す。棒グラフは3つの独立した実験の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(*: P<0.05、**: P<0.01)。図7に示されるとおり、ribavirinは20μg/mlで有意にVero細胞内でのジカウイルスの増殖を抑制した。また、80μg/mlでジカウイルスの増殖をほぼ完全に抑制した。【0034】
試験例8
ヒト神経芽細胞腫の細胞株であるSH-SY5Y細胞にジカウイルスをMOI 5×10-4のウイルス力価で感染させた。感染1時間後、ribavirinを0、10、20、40、80μg/mlの濃度で作用させた。4日後、定量的RT-PCR解析を実施し、ribavirinのウイルスの増殖抑制効果を評価した。結果を図8に示す。棒グラフは3つの独立した実験の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す(**: P<0.01)。図8に示されるとおり、ribavirinは10μg/mlで有意にSH-SY5Y細胞内でのジカウイルスの増殖を抑制した。また、20μg/mlでその増殖をほぼ完全に抑制した。【0035】
試験例9
Vero細胞にジカウイルスをMOI 5×10-3のウイルス力価で感染させた。感染1時間後、ribavirinを図9に示す各濃度で作用させた。4日後、FACS解析により、アポトーシス細胞および死細胞の割合を測定した(図9)。Anexin V陽性はアポトーシス細胞を、Zombie red陽性は死細胞を表す。図9に示されるとおり、ribavirinは濃度依存的にジカウイルスによるアポトーシス及び細胞死を抑制した。250μg/ml以上の濃度の ribavirinはジカウイルス感染によるVero細胞の細胞死をほぼ完全に抑制した。また2000μg/mlの高濃度ribavirinを作用させても、細胞毒性は確認されなかった。アポトーシス細胞の割合は125μg/mlのribavirinを作用させた場合に最も高くなったが、より高濃度のribavirinを作用させるとその割合は低下した。
【実施例】
【0036】
試験例10
STAT1欠損マウスに1.0×10PFUのジカウイルスを皮下投与により感染させた。感染当日より3日連続で(感染後0、1、2日後)15mgのribavirinを腹腔内投与した(n=5)。対照群(n=5)には同量のPBSを投与した。血清からRNAを精製し、RT-PCR解析により、ウイルス血症を評価した。結果を図10に示す(、ribavirin(-): ribavirin非投与群、ribavirin (+): ribavirin投与群、 N: 陰性対照、P:陽性対照)。ここで、陰性対照は、RNase-free WaterをサンプルとしてZIKVゲノムに対するPrimerでRT-PCRを実施したものであり、陽性対照は、ウイルス希釈液から精製したRNAをサンプルにとしてZIKVゲノムに対するPrimerでRT-PCRを実施したものである。感染後6日目以降はサンプル数が減少しているが、これは個体の死亡によるものである。ribavirin非投与群では感染後2日でウイルス血症が確認され、感染後4日目まで強いウイルス血症が継続した。感染後5日目からはウイルス血症は消退するが、感染後8日目までに全個体が死に至る。ribavirin投与群では感染後4日目までウイルス血症の抑制が確認された。しかし、感染後5日目からはウイルス血症が確認されるようになり、感染後8日目までに全て死に至った。この結果から、感染初期におけるribavirinの投与はウイルス血症を抑制することができることが明らかになった。
【実施例】
【0037】
試験例11
STAT1欠損マウスにジカウイルスを1匹あたり1.0×10PFU皮下投与により感染させた。感染当日より連日10mgのribavirinを腹腔内投与した(n=5)。対照群(n=5)には同量のPBSを投与した。その後、生存率を解析した。結果を図11に示す(rib (-): ribavirin非投与群、rib(+):ribavirin投与群、**: P<0.01)。図11に示されるとおり、ribavirin非投与群では感染後7日目までに全個体が死に至った。一方、ribavirin投与群では感染後9日目までに全個体が死に至ったものの、その生存期間は非投与群に比べて有意に延長することが明らかになった。【0038】
試験例10及び11の結果から、ジカウイルスによる感染初期だけでなく、継続して一定濃度のリバビリンを投与することにより、ジカウイルスに感染した被検体の延命に望ましいと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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