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明細書 :形状記憶合金アクチュエータ制御装置、物理量推定プログラム及びその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-138284 (P2019-138284A)
公開日 令和元年8月22日(2019.8.22)
発明の名称または考案の名称 形状記憶合金アクチュエータ制御装置、物理量推定プログラム及びその方法
国際特許分類 F03G   7/06        (2006.01)
FI F03G 7/06 E
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2018-025058 (P2018-025058)
出願日 平成30年2月15日(2018.2.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトのアドレス:https://shunkosha1.sakura.ne.jp/mm2017/_temp/151920400122TDqWxzseHuA/mm2017.pdf/mm2017.pdf 掲載日:平成29年10月7日 [刊行物等] 日本機械学会 M&M2017材料力学カンファレンス(開催日:平成29年10月8日)
発明者または考案者 【氏名】山本 隆栄
【氏名】佐久間 俊雄
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100123582、【弁理士】、【氏名又は名称】三橋 真二
【識別番号】100114018、【弁理士】、【氏名又は名称】南山 知広
【識別番号】100119987、【弁理士】、【氏名又は名称】伊坪 公一
【識別番号】100160716、【弁理士】、【氏名又は名称】遠藤 力
審査請求 未請求
要約 【課題】形状記憶合金アクチュエータ及び形状記憶合金アクチュエータと接触する部材等の物理特性を専用のセンサを使用することなく検出する。
【解決手段】形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置1であって、形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給する電流供給部と、形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力する抵抗値測定部と、測定抵抗値と目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの抵抗値差の変化量を演算する演算部と、抵抗値差又は変化量に基づいて、電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定する物理量推定部と、推定された物理量を出力する物理量出力部とを有する。
【選択図】図14
特許請求の範囲 【請求項1】
電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置であって、
形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、
前記目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給する電流供給部と、
形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力する抵抗値測定部と、
前記測定抵抗値と前記目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、前記電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの前記抵抗値差の変化量を演算する演算部と、
前記抵抗値差又は前記変化量に基づいて、前記電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定する物理量推定部と、
推定された前記物理量を出力する物理量出力部と、
を有することを特徴とする形状記憶合金アクチュエータ制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記測定抵抗値と前記目標抵抗値との間を示す抵抗値差を演算し、
前記物理量推定部は、前記抵抗値差と、前記電流供給部が電流を供給することによって形状記憶合金内に発生する応力との関係に基づいて、前記応力を前記物理量として推定する、請求項1に記載の形状記憶合金アクチュエータ制御装置。
【請求項3】
前記抵抗値差が所定の閾値より大きい場合に、形状記憶合金が所定の接触部材に接触して歪んでいると判定する判定部を更に有し、
前記演算部は、前記電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの前記抵抗値差の変化量を演算し、
前記物理量推定部は、前記判定部が形状記憶合金が所定の部材に接触して歪んでいると判定した場合に、前記変化量と接触部材の硬度との関係に基づいて、前記硬度を前記物理量として推定する、請求項1に記載の形状記憶合金アクチュエータ制御装置。
【請求項4】
電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置において、
形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、
前記目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給し、
形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力し、
前記測定抵抗値と前記目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、前記電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの前記抵抗値差の変化量を演算し、
前記抵抗値差又は前記変化量に基づいて、前記電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定し、
推定された前記物理量を出力する
処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする物理量推定プログラム。
【請求項5】
電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置において、
形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、
前記目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給し、
形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力し、
前記測定抵抗値と前記目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、前記電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの前記抵抗値差の変化量を演算し、
前記抵抗値差又は前記変化量に基づいて、前記電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定し、
推定された前記物理量を出力する
処理を含む、ことを特徴とする物理量推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金アクチュエータ制御装置、物理量推定プログラム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ti-Ni系合金、Ti-Zr-Ni系合金、Ti-Ni-Cu合金、Ti-Ni-Zn合金及びTi-Ni-Al合金等により形成された形状記憶合金(Shape Memory Alloy、SMA)部材を介して可動部を可動する形状記憶合金アクチュエータが知られる。形状記憶合金アクチュエータは、10mW程度と消費電力が非常に小さいこと、機械的ノイズ及び電気的ノイズが小さいこと、小型化及び軽量化が可能なこと、及び簡便な操作が可能であること等の多くの利点を有する。形状記憶合金アクチュエータは、機械,電気,自動車,宇宙航空,医療など多くの分野での実用化が期待される。例えば、形状記憶合金アクチュエータは、任意の位置に撮像部を配置可能な能動内視鏡に応用可能である。
【0003】
形状記憶合金アクチュエータを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置が知られている。特許文献1には、抵抗値測定部が測定した測定抵抗値と目標抵抗値との間の差を示す抵抗値差に基づいて、形状記憶合金アクチュエータが障害物等により拘束されたか否かを判定する形状記憶合金アクチュエータ制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2017-96144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、形状記憶合金アクチュエータを種々の分野に応用するときに、形状記憶合金アクチュエータ及び形状記憶合金アクチュエータと接触する部材等の物理特性を専用のセンサを使用することなく検出したいとの要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、形状記憶合金アクチュエータ及び形状記憶合金アクチュエータと接触する部材等の物理特性を専用のセンサを使用することなく検出可能な形状記憶合金アクチュエータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置であって、形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給する電流供給部と、形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力する抵抗値測定部と、測定抵抗値と目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの抵抗値差の変化量を演算する演算部と、抵抗値差又は変化量に基づいて、電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定する物理量推定部と、推定された物理量を出力する物理量出力部とを有する。
【0008】
さらに、本発明に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置では、物演算部は、測定抵抗値と目標抵抗値との間を示す抵抗値差を演算し、物理量推定部は、抵抗値差と、電流供給部が電流を供給することによって形状記憶合金内に発生する応力との関係に基づいて、応力を物理量として推定することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置は、抵抗値差が所定の閾値より大きい場合に、形状記憶合金が所定の接触部材に接触して歪んでいると判定する判定部を更に有し、演算部は、電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの抵抗値差の変化量を演算し、物理量推定部は、判定部が形状記憶合金が所定の部材に接触して歪んでいると判定した場合に、変化量と接触部材の硬度との関係に基づいて、硬度を物理量として推定することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る物理量推定プログラムは、電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置において、形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給し、形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力し、測定抵抗値と目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの抵抗値差の変化量を演算し、抵抗値差又は変化量に基づいて、電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定し、推定された物理量を出力する処理をコンピュータに実行させることが好ましい。
【0011】
また、実施形態に係る物理量推定方法は、電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御装置において、形状記憶合金を所定の長さにするための目標抵抗値を設定する目標抵抗設定部と、目標抵抗値に応じた電流を形状記憶合金に供給し、形状記憶合金の抵抗値を測定して測定抵抗値を出力し、測定抵抗値と目標抵抗値との間を示す抵抗値差、又は、電流供給部が電流を供給した後の単位時間当たりの抵抗値差の変化量を演算し、抵抗値差又は変化量に基づいて、電流供給部が電流を供給した後に形状記憶合金に関連する物理量を推定し、推定された物理量を出力する処理を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、形状記憶合金アクチュエータ及び形状記憶合金アクチュエータと接触する部材等の物理特性を専用のセンサを使用することなく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】形状記憶合金アクチュエータの物理量を測定する物理量測定装置を示す図である。
【図2】図1に示す形状記憶合金に印加される電流、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。
【図3】3回に亘って測定された図1に示す形状記憶合金の歪みと目標抵抗値との関係を示す図である。
【図4】図1に示す形状記憶合金ワイヤが歪んだときに形状記憶合金ワイヤを拘束する位置に接触棒材を配置したときの形状記憶合金ワイヤに発生する応力、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。
【図5】目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差を25mΩ以下となるようにしたときの図1に示す形状記憶合金ワイヤに発生する応力、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。
【図6】目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差、及び図1に示す形状記憶合金ワイヤに発生する応力の経時変化を示す図である。
【図7】目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差とび図1に示す形状記憶合金ワイヤに発生する応力との相関関係を示す図である。
【図8】図1に示す接触板材のヤング率を変更したときの目標抵抗値、測定抵抗値、及び目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の経時変化を示す図である。
【図9】図1に示す接触板材のヤング率Eを変更したときの目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差、及び形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力の経時変化を示す図である。
【図10】図1に示す接触板材の材料として採用された材料と、材料のヤング率を示す図である。
【図11】(a)は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と図1に示す接触板材のヤング率との関係を示す図(その1)であり、(b)は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と図1に示す接触板材のヤング率との関係を示す図(その2)である。
【図12】目標抵抗値を変更したときの目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、図1に示す接触板材のヤング率との関係を示す図である。
【図13】第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータを示す図である。
【図14】第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の回路図である。
【図15】図14に示す処理部により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。
【図16】第2実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の回路図である。
【図17】図16に示す処理部により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。
【図18】第2実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の回路図である。
【図19】図18に示す処理部により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、形状記憶合金アクチュエータ制御装置、物理量推定プログラム及びその方法について説明する。ただし、実施形態は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。

【0015】
(実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の概要)
本発明の発明者等は、研鑽及び実験を重ねることで、抵抗値差及び抵抗値差の単位時間当たりの変化量の少なくとも1つと形状記憶合金部材に関連する物理量との相関関係に基づいて、形状記憶合金部材に関連する物理量が推定可能であることを見出した。

【0016】
図1は、形状記憶合金アクチュエータの物理量を測定する物理量測定装置を示す図である。

【0017】
物理量測定システム900は、形状記憶合金ワイヤ901と、ワイヤ支持部902と、ロードセル903と、ウェイト904と、スライドガイド905と、接触板材906と、接触棒材907とを有する。物理量測定システム900は、アクチュエータ908と、位置検出センサ909と、筐体910と、抵抗フィードバック装置911と、制御装置912とを更に有する。

【0018】
形状記憶合金ワイヤ901は、Ti-Ni系合金、Ti-Zr-Ni系合金、Ti-Ni-Cu合金、Ti-Ni-Zn合金及びTi-Ni-Al合金等により形成された線状の部材である。

【0019】
ワイヤ支持部902は形状記憶合金ワイヤ901の上端を支持する導電性の部材であり、ロードセル903は形状記憶合金ワイヤ901に印加される応力を検出するセンサである。ウェイト904は形状記憶合金ワイヤ901の下端に接合される導電性の部材であり、スライドガイド905はウェイト904を上下方向に移動可能に支持する部材である。

【0020】
接触板材906は、例えば「JIS G 4051」においてS45Cで規定される機械構造用炭素鋼鋼材で形成される板状の部材である。接触棒材907は、「JIS G 4051」においてS45Cで規定される機械構造用炭素鋼鋼材で形成され、接触板材906と接触することで形状記憶合金ワイヤ901の伸縮を規制する棒状の部材である。アクチュエータ908は接触棒材907を移動可能に支持する装置であり、位置検出センサ909はウェイト904との間の距離を検出し、検出した距離を示す検出位置信号を制御装置912に出力する。筐体910は形状記憶合金ワイヤ901~位置検出センサ909を収納する。

【0021】
抵抗フィードバック装置911は、ワイヤ支持部902及びウェイト904を介して取得される形状記憶合金ワイヤ901の抵抗値と、制御装置912から入力される目標抵抗値とが一致するように形状記憶合金ワイヤ901に電流を供給する。抵抗フィードバック装置911は、例えば、特許文献1に記載される指示抵抗値設定部10、抵抗値フィードバック部20、電流供給部30及び抵抗値測定部40を有してもよい。

【0022】
制御装置912は、例えばパーソナルコンピュータ等の電子計算機であり、目標抵抗値を抵抗フィードバック装置911に出力する。また、制御装置912は、形状記憶合金ワイヤ901の抵抗値、ロードセル903から入力される形状記憶合金ワイヤ901に印加される応力、及び位置検出センサ909が検出した距離等の物理量が抵抗フィードバック装置911から入力される。制御装置912は、抵抗フィードバック装置911から入力された物理量を記憶する。

【0023】
(形状記憶合金ワイヤ901の抵抗値の制御による位置制御)
図2は、形状記憶合金ワイヤ901に印加される電流、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。図2において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値をΩ単位で示し、右縦軸は電流値をA単位で示す。図2において、白丸印は目標抵抗値を示し、黒丸印は測定抵抗値を示し、ひし形印は形状記憶合金ワイヤ901に印加される電流を示す。

【0024】
形状記憶合金ワイヤ901に印加される電流は、20秒が経過するまで徐々に増加され、20秒に達した後は一定値に維持される。形状記憶合金ワイヤ901の測定抵抗値は、目標抵抗値に応じて形状記憶合金ワイヤ901に印加される電流の増加に応じて、目標抵抗値に一致するように制御される。

【0025】
図3は、3回に亘って測定された形状記憶合金ワイヤ901の歪みと目標抵抗値との関係を示す図である。図3において、横軸は目標抵抗値をΩ単位で示し、縦軸は形状記憶合金ワイヤ901の歪み、すなわち長さの変化量を%単位で示す。図3において、白丸印は第1回目の測定結果を示し、三角印は第2回目の測定結果を示し、四角印は第3回目の測定結果を示す。

【0026】
形状記憶合金ワイヤ901の歪みは、3回のそれぞれの測定時の値が一致することから、目標抵抗値に基づく形状記憶合金ワイヤ901の長さ制御は、再現性が高いことが推察される。また、形状記憶合金ワイヤ901の歪みは、目標抵抗値に応じて略直線的に変化するため、形状記憶合金ワイヤ901の長さは、目標抵抗値に応じて線形制御が可能であることが推察される。

【0027】
(抵抗値差による形状記憶合金ワイヤ901の破損防止制御)
図4は、形状記憶合金ワイヤ901が歪んだときに形状記憶合金ワイヤ901を拘束する位置に接触棒材907を配置したときの形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。図4において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値をΩ単位で示し、右縦軸は応力をMPa単位で示す。図4において、白丸印は目標抵抗値を示し、黒丸印は測定抵抗値を示し、四角印は形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力を示す。

【0028】
一点鎖線で示される6秒経過後において、接触板材906と接触棒材907とが接触することで、形状記憶合金ワイヤ901が拘束されると、目標抵抗値と測定抵抗値とが乖離する共に、形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力が急増する。形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力は、破線で示される許容可能な応力を超えるため、形状記憶合金ワイヤ901は破損する。

【0029】
図5は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差を25mΩ以下となるようにしたときの形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力、並びに目標抵抗値及び測定抵抗値の経時変化を示す図である。図5において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値をΩ単位で示し、右縦軸は応力をMPa単位で示す。図5において、白丸印は目標抵抗値を示し、黒丸印は測定抵抗値を示し、四角印は形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力を示す。例えば、特許文献1に記載される技術を使用することで、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差は所定のしきい値抵抗値以下とすることができる。

【0030】
一点鎖線で示される6秒経過後において、接触板材906と接触棒材907とが接触することで、形状記憶合金ワイヤ901が拘束されると、測定抵抗値が一定値に固定されることに応じて、目標抵抗値は、定抵抗値よりも25mΩ大きい値に固定される。目標抵抗値が定抵抗値よりも25mΩ大きい値に固定されることで、形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力は、破線で示される許容可能な応力を超えず、形状記憶合金ワイヤ901は破損することはない。

【0031】
(抵抗値差による形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力の推定)
図6は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差、及び形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力の経時変化を示す図である。図6において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値差をΩ単位で示し、右縦軸は応力をMPa単位で示す。図6において、二重丸印は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差を示し、四角印は形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力を示す。

【0032】
10秒経過後において、接触板材906と接触棒材907とが接触することで、形状記憶合金ワイヤ901が拘束されると、形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力が急増する。また、形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力が急増すると同時に、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差が急増する。本願発明の発明者等は、図6から目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力との間に相関関係があることを見出した。すなわち、本願発明の発明者等は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力との間に比例関係があることを見出した。

【0033】
図7は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力との相関関係を示す図である。図7において、横軸は抵抗値差をΩ単位で示し、縦軸は応力をMPa単位で示す。図7において、丸印は形状記憶合金ワイヤ901の歪みが1%であるときを示し、三角印は形状記憶合金ワイヤ901の歪みが2%であるときを示し、四角印は形状記憶合金ワイヤ901の歪みが3%であるときを示す。

【0034】
形状記憶合金ワイヤ901の歪みが1%、2%及び3%の何れの場合でも、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差は、形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力に比例して変化する。また、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力との間の比例係数は、形状記憶合金ワイヤ901の歪みが1%、2%及び3%の何れの場合でも同一となる。目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力との間の比例係数は、形状記憶合金ワイヤ901の歪みにかかわらず一定値になるので、発生する応力は、単一の比例係数により抵抗値差から推定することができる。

【0035】
(形状記憶合金ワイヤ901の歪みにより接触する接触部材の硬度の推定)
図8は、接触板材906のヤング率E、すなわち硬度を変更したときの目標抵抗値、測定抵抗値、及び目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の経時変化を示す図である。図8(a)は接触板材906の材料がS45Cであるときの経時変化を示し、図8(b)は接触板材906の材料がポリウレタンであるときの経時変化を示す。S45Cのヤング率Eは200GPaであり、ポリウレタンのヤング率Eは0.2MPaである。また、接触板材906は、一辺が10mmの正方形の表面及び裏面を有し且つ高さが5mmの直方体である。図8(a)及び8(b)において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値をΩ単位で示し、右縦軸は抵抗値差をΩ単位で示す。図8(a)及び8(b)において、白丸印は目標抵抗値を示し、黒丸印は測定抵抗値を示し、二重丸印は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差を示す。

【0036】
接触板材906の材料が比較的硬いS45Cであるとき、10秒経過後において、接触板材906と接触棒材907とが接触すると、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差が急増する。一方、接触板材906の材料が比較的軟らかいポリウレタンであるとき、接触板材906と接触棒材907とが接触した後に、接触板材906が接触棒材907に押下されるため、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差が徐々に増加する。

【0037】
図9は、接触板材906のヤング率Eを変更したときの目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差、及び形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力の経時変化を示す図である。図9(a)は接触板材906の材料がS45Cであるときの経時変化を示し、図9(b)は接触板材906の材料がポリウレタンであるときの経時変化を示す。また、接触板材906は、一辺が10mmの正方形の表面及び裏面を有し且つ高さが5mmの直方体である。図9(a)及び9(b)において、横軸は経過時間を秒単位で示し、左縦軸は抵抗値差をΩ単位で示し、右縦軸は応力をMPa単位で示す。図9(a)及び9(b)において、二重丸印は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差を示し、四角印は形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力を示す。

【0038】
接触板材906の材料が比較的硬いS45Cであるとき、10秒経過後において、接触板材906と接触棒材907とが接触すると、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差、及び形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力が急増する。一方、接触板材906の材料が比較的軟らかいポリウレタンであるとき、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差が徐々に増加する。形状記憶合金ワイヤ901に発生する応力は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差が増加するタイミングから遅れたタイミングで徐々に増加する。

【0039】
本願発明の発明者等は、図8から目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、形状記憶合金ワイヤ901の歪みにより接触する接触板材906の硬度との間に相関関係があることを見出した。すなわち、本願発明の発明者等は、形状記憶合金ワイヤ901が歪んで接触した接触板材906の材料が比較的硬いとき、接触板材906が接触したときに目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量が大きくなることを見出した。また、本願発明の発明者等は、形状記憶合金ワイヤ901が歪んで接触した接触板材906の材料が比較的軟らかいとき、接触板材906が接触したときに目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量が小さくなることを見出した。本願発明の発明者等は、接触板材906の材料としてヤング率Eが異なる複数の材料を採用したときの目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、接触板材906の硬度との間に相関関係を測定した。

【0040】
図10は、接触板材906の材料として採用された材料と、材料のヤング率を示す図であり、図11は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの関係を示す図である。図11(a)は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの関係を示す図(その1)である。図11(b)は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの関係を示す図(その2)である。図11(a)及び11(b)において、横軸は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の増加率、すなわち単位時間当たりの変化量を示し、縦軸は接触板材のヤング率Eを示す。また、図11(a)及び11(b)において、形状記憶合金ワイヤ901の歪みεは2%であり、目標抵抗値Rd,tは25mΩである。また、図11(a)及び11(b)において、標抵抗値と測定抵抗値との抵抗値差の単位時間当たりの変化量は、抵抗値差が10mΩに達した時間から0.04秒後の抵抗差と10mΩとの差として規定された。

【0041】
接触板材906の材料として、S45C、ポリウレタン、天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ふっ素樹脂及び杉が採用された。S45Cのヤング率Eは200GPaであり、ポリウレタンのヤング率Eは0.2MPaであり、天然ゴムのヤング率Eは2.5MPaであり、クロロプレンゴムのヤング率Eは5.7MPaである。ウレタンゴムのヤング率Eは21Paであり、ふっ素樹脂のヤング率Eは550Paであり、杉のヤング率Eは8GPaである。

【0042】
ヤング率Eが0.2MPaから21MPaまでの間では、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の変化率と、形状記憶合金ワイヤ901の歪みにより接触する接触板材906の硬度との間に比例関係があることが推定される。また、ヤング率Eが21MPaから200GPaまでの間では、傾きが急峻であるため明確ではないものの、抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、接触板材906の硬度との間に比例関係があることが推定される。

【0043】
図12は、目標抵抗値を変更したときの目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの関係を示す図である。図12において、横軸は目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量を示し、縦軸は接触板材のヤング率Eを示す。また、図12において、丸印は目標抵抗値が15mΩである場合を示し、三角印は目標抵抗値が25mΩである場合を示し、四角印は目標抵抗値が35mΩである場合を示す。また、図12において、標抵抗値と測定抵抗値との抵抗値差の単位時間当たりの変化量は、抵抗値差が10mΩに達した時間から0.04秒後の抵抗差と10mΩとの差として規定された。

【0044】
目標抵抗値が15mΩ、25mΩ及び35mΩの何れの場合でも、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、接触板材906のヤング率Eとは、比例して変化する。また、抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの間の比例係数は、目標抵抗値が15mΩ、25mΩ及び35mΩの何れの場合でも同一となる。抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触板材906のヤング率Eとの間の比例係数は、目標抵抗値にかかわらず一定値になるので、接触板材906のヤング率Eは、抵抗値差の単位時間当たりの変化量から推定することができる。

【0045】
(第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータの構造及び機能)
図13は、第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータを示す図である。

【0046】
形状記憶合金アクチュエータ100は、形状記憶合金アクチュエータ制御装置1と、一端が固定された形状記憶合金部材101と、一端が形状記憶合金部材101に接続され且つ他端が固定された弾性部材110とを有する。形状記憶合金アクチュエータ制御装置1と、固定された形状記憶合金部材101の両端とは電気的に接続される。形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、形状記憶合金部材101に電流を供給して通電加熱することにより、形状記憶合金部材101の長さを収縮する。また、形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、形状記憶合金部材101への電流の供給を停止して冷却すると共に、弾性部材110の弾性力を形状記憶合金部材101に印加することにより、形状記憶合金部材101の長さを伸張する。

【0047】
(第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の構成及び機能)
図14は、第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置1の回路図である。

【0048】
形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、指示抵抗値設定部10と、抵抗値フィードバック部20と、電流供給部30と、抵抗値測定部40と、制御部50とを有し、電流を印加することによって形状記憶合金部材の長さを制御する。形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、電流供給部30及び抵抗値測定部40が形状記憶合金部材101の両端に接続される。電流供給部30は形状記憶合金部材101に電流を供給し、抵抗値測定部40は形状記憶合金部材101の抵抗値を測定する。抵抗値フィードバック部20は、制御部50から入力される目標抵抗値、及び抵抗値測定部40が測定した測定抵抗値に基づいて、形状記憶合金部材101の長さをフィードバック制御する。

【0049】
指示抵抗値設定部10は、第1ポテンショメータ11と、第2ポテンショメータ12と、第3ポテンショメータ13とを有し、形状記憶合金部材101の所望の長さに対応する指示抵抗値を設定する。

【0050】
第1ポテンショメータ11は指示抵抗値Raimの上限値を規定し、第2ポテンショメータ12は指示抵抗値Raimの下限値を規定する。第3ポテンショメータ13は、第1ポテンショメータ11が規定する指示抵抗値Raimの上限値と第2ポテンショメータ12が規定する指示抵抗値Raimの下限値との間で、指示抵抗値Raimを規定する。

【0051】
抵抗値フィードバック部20は、測定抵抗値反転回路21と、目標抵抗値比較回路22とを有する。測定抵抗値反転回路21は、抵抗値測定部40から入力される測定抵抗値を示す測定抵抗値信号V7を反転して目標抵抗値比較回路22に出力する。目標抵抗値比較回路22は、制御部50から入力される目標抵抗値を示す目標抵抗値信号V1と測定抵抗値信号V7の反転信号-V7を加算し、すなわち目標抵抗値信号V1から測定抵抗値信号V7を減算する。目標抵抗値比較回路22は、目標抵抗値信号V1から測定抵抗値信号V7を減算した信号の反転信号である抵抗差信号V2を出力する。抵抗差信号V2は、目標抵抗値と測定抵抗値との間の抵抗値差を示す信号の反転信号である。抵抗差信号V2は、目標抵抗値比較回路22が有するキャパシタの容量値及び可変抵抗の抵抗値に応じて遅延して出力される。

【0052】
電流供給部30は、電流供給スイッチ31と、フォトダイオード32と、フォトトランジスタ33と、電流供給トランジスタ34とを有する。電流供給スイッチ31は、制御部50から入力される電流供給指示及び供給停止指示に応じてオンオフする。電流供給スイッチ31は、制御部50から電流供給指示が入力されるときにオンし、制御部50から供給停止指示が入力されるときにオフする。フォトダイオード32は、アノードが電源電圧VDDに接続され、カソードが電流供給スイッチ31に接続される。フォトダイオード32は、制御部50から電流供給指示が入力されて電流供給スイッチ31がオンするときに導通して発光する。フォトトランジスタ33は、コレクタが目標抵抗値比較回路22に接続され、エミッタが電流供給トランジスタ34のベースに接続される。フォトトランジスタ33は、フォトダイオード32から光を受光したときに、目標抵抗値信号V1と測定抵抗値信号V7との間の抵抗差に応じて、電流供給トランジスタ34のベースにベース電流を供給する。電流供給トランジスタ34は、コレクタが電源電圧VDDに接続され、エミッタが形状記憶合金部材101の一端に接続される。電流供給トランジスタ34は、制御部50から電流供給指示が入力されて電流供給スイッチ31がオンするときに、形状記憶合金部材101にエミッタ電流を供給する。なお、電流供給トランジスタ34は、電流供給スイッチ31がオフする間、微小電流を形状記憶合金部材101に供給する。電流供給トランジスタ34が電流供給スイッチ31がオフする間、微小電流を形状記憶合金部材101に供給することで、形状記憶合金部材101の両端に電圧が印加される。

【0053】
抵抗値測定部40は、基準抵抗41と、基準抵抗出力回路42と、形状記憶合金抵抗出力回路43と、測定抵抗値信号生成回路44とを有する。基準抵抗41は、基準抵抗値Rcrtを有し、一端が形状記憶合金部材101に接続され、他端が接地される。基準抵抗出力回路42は、基準抵抗41に印加される基準電圧V4が入力され、基準抵抗41の抵抗値を示す基準抵抗信号V5を出力する。形状記憶合金抵抗出力回路43は、形状記憶合金部材101の一端の電圧V3から形状記憶合金部材101の他端の電圧に相当する基準電圧V4を減算して、形状記憶合金部材101の抵抗値Rsmaを示す形状記憶合金抵抗信号V6を出力する。測定抵抗値信号生成回路44は、入力される基準抵抗信号V5及び形状記憶合金抵抗信号V6、並びに不図示の記憶部に記憶される基準抵抗41の抵抗値である基準抵抗値Rcrtから、測定抵抗値を示す測定抵抗値信号V7を生成し、出力する。測定抵抗値信号生成回路44は、V6×Rcrt/V5の演算を実行することにより、測定抵抗値信号V7を生成する。

【0054】
制御部50は、マイクロプロセッサ等の制御回路であり、入出力部51と、記憶部52と、処理部53とを有する。入出力部51は、指示抵抗値設定部10及び抵抗値測定部40から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して記憶部52及び処理部53に出力する。また、入出力部51は、記憶部52及び処理部53から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して抵抗値フィードバック部20及び電流供給部30に出力する。

【0055】
記憶部52は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含み、処理部53での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。記憶部52は、アプリケーションプログラムとして、形状記憶合金アクチュエータの長さを制御する形状記憶合金アクチュエータ制御処理を、処理部53に実行させるための形状記憶合金アクチュエータ制御プログラムを記憶する。形状記憶合金アクチュエータ制御処理は、測定抵抗値及び目標抵抗値の間の抵抗値差と形状記憶合金部材101の拘束に応じて発生する物理量との相関関係に基づいて、形状記憶合金部材101の拘束に応じて発生する物理量を推定する物理量推定処理を含む。形状記憶合金部材101が拘束されたときに発生する物理量は、拘束されたときに発生する形状記憶合金部材101の応力を含む。また、形状記憶合金アクチュエータ制御プログラムは、形状記憶合金部材101が拘束されたときに発生する物理量を推定する物理量推定プログラムを含む。

【0056】
また、記憶部52は、形状記憶合金部材101に電流が供給されてからの経過時間と形状記憶合金部材101の抵抗値との関係を示す抵抗値テーブル521を記憶する。抵抗値テーブル521は、経過時間が長くなるに従って徐々に目標抵抗値が小さくなるように、目標抵抗値と経過時間とを記憶する。

【0057】
また、記憶部52は、形状記憶合金部材101の長さが所望の長さになるように設定される目標抵抗値と測定抵抗値信号V7に対応する測定抵抗値との抵抗値差と、形状記憶合金部材101に印加される応力との相関関係を示す応力テーブル522を記憶する。応力テーブル522は、例えば、物理量測定システム900により測定された抵抗値差と形状記憶合金ワイヤ901に印加される応力との相関関係に基づいて生成されるテーブルである。

【0058】
また、記憶部52は、目標抵抗値及び測定抵抗値との間の抵抗値差の単位時間当たりの変化量と、形状記憶合金部材101が歪んだことにより接触した接触部材の硬度との相関関係を示す硬度テーブル523を記憶する。硬度テーブル523は、例えば、物理量測定システム900により測定された抵抗値差の単位時間当たりの変化労と形状記憶合金ワイヤ901が歪んだことにより接触した接触部材の硬度との相関関係に基づいて生成されるテーブルである。

【0059】
処理部53は記憶部52に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部53は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。

【0060】
処理部53は、目標抵抗値設定部531と、抵抗値差演算部532と、物理量推定部533と、物理量信号出力部534とを有する。これらの各部は、処理部53で実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。

【0061】
図15は、処理部53により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。図15に示す形状記憶合金アクチュエータ制御処理は、予め記憶部52に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部53により形状記憶合金アクチュエータ制御装置1の各要素と協働して実行される。

【0062】
まず、目標抵抗値設定部531は、不図示の上位制御装置から制御開始指示を取得する(S101)。次いで、目標抵抗値設定部531は、電流供給部30に電流供給指示を示す電流供給指示信号を出力する(S102)。電流供給部30に電流供給指示を示す電流供給指示信号が入力されると、電流供給スイッチ31がオンする。電流供給スイッチ31がオンすると、フォトダイオード32は、導通して発光する。フォトダイオード32が導通して発光すると、フォトトランジスタ33は、目標抵抗値信号V1と測定抵抗値信号V7との差に応じて、電流供給トランジスタ34のベースにベース電流を供給する。フォトトランジスタ33が電流供給トランジスタ34のベースにベース電流を供給すると、電流供給トランジスタ34は、形状記憶合金部材101へのエミッタ電流の供給を開始する。

【0063】
次いで、目標抵抗値設定部531は、指示抵抗値設定部10に設定された指示抵抗値を取得する(S103)。次いで、目標抵抗値設定部531は、抵抗値測定部40から出力される測定抵抗値信号V7に対応する測定抵抗値を入出力部51を介して取得する(S104)。次いで、目標抵抗値設定部531は、形状記憶合金部材101に電流を供給した電流供給時間及び抵抗値テーブル521から現在の抵抗値の設定値である目標抵抗値を設定する(S105)。抵抗値テーブル521では、目標抵抗値は、形状記憶合金部材に電流を供給する電流供給時間の経過に応じて徐々に減少するように規定される。目標抵抗値設定部531は、電流供給時間及び抵抗値テーブル521から目標抵抗値を設定することにより、形状記憶合金部材101に電流を供給する電流供給時間の経過に応じて徐々に減少するように目標抵抗値を設定する。目標抵抗値設定部531は、設定した目標抵抗値を示す目標抵抗値信号V7を抵抗値フィードバック部20に出力する。次いで、抵抗値差演算部532は、目標抵抗値設定部531が取得した測定抵抗値と、目標抵抗値設定部531が設定した目標抵抗値との差を示す抵抗値差を演算する(S106)。

【0064】
次いで、物理量推定部533は、S106の処理で演算された抵抗値差と形状記憶合金部材101に印加される応力との相関関係に基づいて、形状記憶合金部材101に印加される応力を推定する(S107)。具体的には、物理量推定部533は、応力テーブル522を参照して、S106の処理で演算された抵抗値差に対応する応力を抽出し、抽出した応力を形状記憶合金部材101に印加される応力として推定する。

【0065】
次いで、物理量信号出力部534は、S107の処理で推定された応力を示す応力信号を不図示の上位制御装置に出力する(S108)。

【0066】
次いで、目標抵抗値設定部531は、目標抵抗値は指示抵抗値と一致するか否かを判定する(S109)。目標抵抗値設定部531によって目標抵抗値は指示抵抗値と一致しないと判定される(S109-NO)と、処理はS103に戻る。以降、目標抵抗値設定部531によって目標抵抗値は指示抵抗値と一致すると判定される(S109-YES)まで、S103~S109の処理は繰り返される。

【0067】
そして、目標抵抗値設定部531によって目標抵抗値は指示抵抗値と一致すると判定される(S108)と、目標抵抗値設定部531、目標抵抗値を現在の値に固定する(S110)。

【0068】
(第1実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の作用効果)
形状記憶合金アクチュエータ制御装置1は、抵抗値差と形状記憶合金部材に印加される応力との相関関係に基づいて形状記憶合金部材に印加される応力を推定できるので、専用のセンサを使用することなく形状記憶合金部材に印加される応力を検出できる。

【0069】
(第2実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の構成及び機能)
図16は、第2実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置2の回路図である。

【0070】
形状記憶合金アクチュエータ制御装置2は、処理部53の代わりに処理部63を有する制御部60が制御部50の代わりに配置されることが、形状記憶合金アクチュエータ制御装置1と相違する。処理部63は、抵抗値差判定部633と、変化量演算部634とを有することが処理部53と相違する。処理部63は、物理量推定部635及び物理量信号出力部636を物理量推定部533及び物理量信号出力部534の代わりに有することが処理部53と相違する。抵抗値差判定部633~物理量信号出力部636以外の形状記憶合金アクチュエータ制御装置2の構成要素は、同一符号が付された形状記憶合金アクチュエータ制御装置1の構成要素と同一の機能及び構成を有するので、ここでは詳細な説明を省略する。

【0071】
図17は、処理部63により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。図17に示す形状記憶合金アクチュエータ制御処理は、予め記憶部52に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部63により形状記憶合金アクチュエータ制御装置2の各要素と協働して実行される。

【0072】
S201~S206の処理は、S101~S106の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。

【0073】
抵抗値差判定部633は、S206の処理で演算された抵抗値差が所定の第1しきい値より大きいか否かする(S207)。第1しきい値は、形状記憶合金部材101が歪んだことにより不図示の接触部材に接触したことを検出するしきい値であり、形状記憶合金部材101が拘束されることで破損するおそれがある抵抗値差よりも小さい値である。抵抗値差判定部633によってS206の処理で演算された抵抗値差が第1しきい値以下であると判定される(S207-YES)と、処理はS211に進む。

【0074】
抵抗値差判定部633によってS206の処理で演算された抵抗値差が第1しきい値より大きいと判定される(S207-NO)と、変化量演算部634は、S206の処理で演算された抵抗値差の単位時間当たりの変化量を演算する(S208)。変化量演算部634は、例えば、S206の処理で演算された抵抗値差と、S206の処理が実行されてから所定の経過時間が経過したときの抵抗値差の差分を、経過時間で演算することで、抵抗値差の単位時間当たりの変化量を演算する。

【0075】
次いで、物理量推定部635は、S208の処理で演算された抵抗値差の単位時間当たりの変化量と形状記憶合金部材101が歪んだことにより接触した接触部材の硬度との相関関係に基づいて、接触部材の硬度を推定する(S209)。具体的には、物理量推定部635は、硬度テーブル523を参照して、S208の処理で演算された抵抗値差の単位時間当たりの変化量に対応する硬度を抽出し、抽出した硬度を形状記憶合金部材101に接触した接触部材の硬度として推定する。

【0076】
次いで、物理量信号出力部636は、S209の処理で推定された硬度を示す応力信号を不図示の上位制御装置に出力する(S210)。S211~S212の処理は、S109~S110の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。

【0077】
(第2実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の作用効果)
形状記憶合金アクチュエータ制御装置2は、抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触部材の硬度との相関関係に基づいて接触部材の硬度を推定できるので、専用のセンサを使用することなく形状記憶合金部材に接触する接触部材の硬度を検出できる。

【0078】
(第3実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の構成及び機能)
図18は、第3実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置3の回路図である。

【0079】
形状記憶合金アクチュエータ制御装置3は、処理部63の代わりに処理部73を有する制御部70が制御部60の代わりに配置されることが、形状記憶合金アクチュエータ制御装置2と相違する。処理部73は、目標抵抗値設定部731、物理量推定部735及び物理量信号出力部736を目標抵抗値設定部531、物理量推定部635及び物理量信号出力部636の代わりに有することが処理部63と相違する。目標抵抗値設定部731、物理量推定部735及び物理量信号出力部736以外の形状記憶合金アクチュエータ制御装置3の構成要素は、同一符号が付された形状記憶合金アクチュエータ制御装置2の構成要素と同一の機能及び構成を有する。したがって、目標抵抗値設定部731、物理量推定部735及び物理量信号出力部736以外の形状記憶合金アクチュエータ制御装置3の構成要素は、ここでは詳細な説明を省略する。

【0080】
図19は、処理部73により実行される形状記憶合金アクチュエータ制御処理のフローチャートである。図19に示す形状記憶合金アクチュエータ制御処理は、予め記憶部52に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部73により形状記憶合金アクチュエータ制御装置3の各要素と協働して実行される。

【0081】
S301~S308の処理は、S101~S108の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。また、S309~S312の処理は、S207~S210の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。

【0082】
目標抵抗値設定部731は、S306の処理で演算された抵抗値差が所定の第2しきい値より大きいか否かする(S313)。第2しきい値は、形状記憶合金部材101が拘束されることで破損するおそれがあることを示すしきい値であり、第1しきい値よりも大きく且つ形状記憶合金部材101が拘束されることで破損するおそれがある抵抗値差よりも小さい値である。目標抵抗値設定部731によってS306の処理で演算された抵抗値差が第2しきい値以下であると判定される(S313-YES)と、処理はS316に進む。

【0083】
目標抵抗値設定部731は、S306の処理で演算された抵抗値差が第2しきい値より大きいと判定する(S313-NO)と、目標抵抗値を現在の目標抵抗値よりも大きい拘束抵抗値に変更する(S314)。次いで、目標抵抗値設定部731は、目標抵抗値を拘束抵抗値に固定する(S315)。拘束抵抗値は、測定抵抗値との間の抵抗値差が第2しきい値よりも小さい所望の値である。

【0084】
目標抵抗値設定部731によってS306の処理で演算された抵抗値差が第2しきい値以下であると判定される(S313-YES)と、処理はS317に進む。S316~S317の処理は、S109~S110の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。

【0085】
(第3実施形態に係る形状記憶合金アクチュエータ制御装置の作用効果)
形状記憶合金アクチュエータ制御装置3は、抵抗値差と形状記憶合金部材に印加される応力との相関関係に基づいて形状記憶合金部材に印加される応力を推定できるので、専用のセンサを使用することなく形状記憶合金部材に印加される応力を検出できる。

【0086】
また、形状記憶合金アクチュエータ制御装置3は、抵抗値差の単位時間当たりの変化量と接触部材の硬度との相関関係に基づいて接触部材の硬度を推定できるので、専用のセンサを使用することなく形状記憶合金部材に接触する接触部材の硬度を検出できる。

【0087】
また、形状記憶合金アクチュエータ制御装置3は、形状記憶合金部材が拘束されたときに、測定抵抗値と目標抵抗値との間の差である抵抗値差がしきい値よりも大きいと判定して、目標抵抗値を増加して、抵抗値差を小さくする。形状記憶合金アクチュエータ制御装置3は、測定抵抗値と目標抵抗値との間の差である抵抗値差がしきい値よりも大きいと判定したときに抵抗値差を小さくすることで、形状記憶合金部材に流れる電流、及び形状記憶合金部材に発生する応力を抑制する。形状記憶合金部材が拘束されたときに、形状記憶合金部材に流れる電流、及び形状記憶合金部材に発生する応力を抑制することで、形状記憶合金部材が破損するおそれを低減する。
【符号の説明】
【0088】
1~3 形状記憶合金アクチュエータ制御装置
10 指示抵抗値設定部
20 抵抗値フィードバック部
30 電流供給部
40 抵抗値測定部
50 制御部
100 形状記憶合金アクチュエータ
101 形状記憶合金部材
531、731 目標抵抗値設定部
532 抵抗値差演算部(演算部)
533、635、735 物理量推定部
534、636、736 物理量信号出力部
633 抵抗値差判定部
634 変化量演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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