TOP > 国内特許検索 > 胚の評価方法 > 明細書

明細書 :胚の評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-170235 (P2019-170235A)
公開日 令和元年10月10日(2019.10.10)
発明の名称または考案の名称 胚の評価方法
国際特許分類 C12Q   1/06        (2006.01)
C12N   5/073       (2010.01)
FI C12Q 1/06
C12N 5/073
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2018-061684 (P2018-061684)
出願日 平成30年3月28日(2018.3.28)
発明者または考案者 【氏名】西田 欣広
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ61
4B063QQ83
4B063QX10
4B065AA90X
4B065BA25
要約 【課題】新たな胚の評価方法を提供する。
【解決手段】胚の評価方法であって:(1)評価対象の胚の培養液又はその処理物における、メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、トリエタノールアミン、スクロース、5-アミノ吉草酸、リビトール、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン、アセチルグリシン、ニコチン酸及び2-ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選択される少なくとも一種のマーカーの量mを測定する工程;及び(2)前記マーカーについての基準値mと、前記工程(1)において測定された値mとを、同一マーカー間においてそれぞれ比較する工程を含み、少なくとも一種の前記マーカーに関し、以下の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す、方法:
(a)メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、5-アミノ吉草酸、リビトール、アセチルグリシン及び2-ヒドロキシイソ酪酸については、前記mが、前記mよりも低いこと;(b)トリエタノールアミン、スクロース、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン及びニコチン酸については、前記mが、前記mよりも高いこと。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
胚の評価方法であって:
(1)評価対象の胚の培養液又はその処理物における、
メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、トリエタノールアミン、スクロース、5-アミノ吉草酸、リビトール、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン、アセチルグリシン、ニコチン酸及び2-ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選択される少なくとも一種のマーカー
の量mを測定する工程;及び
(2)前記マーカーについての基準値mと、前記工程(1)において測定された値mとを、同一マーカー間においてそれぞれ比較する工程を含み、
少なくとも一種の前記マーカーに関し、以下の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す、方法:
(a)メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、5-アミノ吉草酸、リビトール、アセチルグリシン及び2-ヒドロキシイソ酪酸については、前記mが、前記mよりも低いこと
(b)トリエタノールアミン、スクロース、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン及びニコチン酸については、前記mが、前記mよりも高いこと。
【請求項2】
体外受精又は胚移植のために用いられる胚の評価方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(1)において使用する、胚の培養液の処理物が、胚の培養液を、タンパク質を除去する工程を少なくとも含む方法により処理することにより得られうるものである、請求項1又は2に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、胚の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊治療として行われる体外受精又は胚移植等に用いられる良好胚のスクリーニング方法として、形態学的評価方法が主に実施されている。
【0003】
しかし、形態学的評価方法では観察者の主観的判断が入り込む余地が大きいという問題がある。また、胚の形態が必ずしもその胚の発生能や着床能を反映しているとは限らないという問題もある(非特許文献1)。
【0004】
そこで、胚の染色体構成を調べる着床前遺伝子スクリーニング(Preimplantation Genetic Screening; PGS)が日本産科婦人科学会主導の下、特別臨床研究として実施されている。しかし、この評価を行うためには胚の一部を採取する必要があることや、遺伝情報を取り扱うことに起因する倫理的問題等も指摘されており、幅広く臨床応用されるには至っていない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】The Istanbul consensus workshop on embryo assessment: proceedings of an expert meeting. Hum Reprod. 2011; 26: pp. 1270-1283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新たな胚の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、胚培養液をBligh-Dyer法で処理したのち、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて有機酸代謝物475種及び脂肪酸代謝物50種を網羅的に一括解析できることを見出した。多変量解析の手法を用いて解析したところ、良好胚と不良胚との間には、これらのうち14種の一次代謝物において有意差があることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0008】
項1.
胚の評価方法であって:
(1)評価対象の胚の培養液又はその処理物における、
メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、トリエタノールアミン、スクロース、5-アミノ吉草酸、リビトール、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン、アセチルグリシン、ニコチン酸及び2-ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選択される少なくとも一種のマーカー
の量mを測定する工程;及び
(2)前記マーカーについての基準値mと、前記工程(1)において測定された値mとを、同一マーカー間においてそれぞれ比較する工程を含み、
少なくとも一種の前記マーカーに関し、以下の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す、方法:
(a)メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、5-アミノ吉草酸、リビトール、アセチルグリシン及び2-ヒドロキシイソ酪酸については、前記mが、前記mよりも低いこと
(b)トリエタノールアミン、スクロース、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン及びニコチン酸については、前記mが、前記mよりも高いこと。
項2.
体外受精又は胚移植のために用いられる胚の評価方法である、項1に記載の方法。
項3.
前記工程(1)において使用する、胚の培養液の処理物が、胚の培養液を、タンパク質を除去する工程を少なくとも含む方法により処理することにより得られうるものである、項1又は2に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、胚を傷つけることなく、かつ主観を排しつつ、胚の質を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】メサコン酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【図2】ピロガロールについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図3】キシリトールについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図4】2-ヒドロキシイソカプロン酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【図5】カテコールについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図6】トリエタノールアミンについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図7】スクロースについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図8】5-アミノ吉草酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【図9】リビトールについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図10】グリセロール2-リン酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【図11】リボノラクトンについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図12】アセチルグリシンについての実施例における解析結果を示す図面である。
【図13】ニコチン酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【図14】2-ヒドロキシイソ酪酸についての実施例における解析結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
胚の培養液又はその処理物
本発明の評価方法において、被検体としては、胚の培養液をそのまま用いることもできるし、何らかの処理を経たうえで用いてもよい。胚の培養液を、タンパク質を除去する工程を少なくとも含む方法により処理することにより得られうるものを被検体として用いることが好ましい。この場合、マーカーを測定する際に、有利である。具体的には、マーカーの測定に際しては、測定機器の微細な構造中を被検体が通過することとなるところ、被検体のタンパク質濃度が一定量以下であれば目詰まり等が生じにくく、好ましい。

【0012】
胚の培養液の処理方法のうち、タンパク質を除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、Bligh & Dyer法等を用いることができる。Bligh & Dyer法とは、水層(上層)と有機層(下層)との二層分配により中間層(境界面)に含まれるタンパク質画分等を除去することができる方法して汎用されている。具体的には、胚の培養液又はその処理物にクロロホルム、メタノール及び水を一定の比率で加えてボルテックスし,遠心分離を行う。遠心後は2層に分離し、上層の水層に有機酸のほとんどが、下層のクロロホルムとメタノールとを含む有機溶媒層に脂質分子のほとんどがそれぞれ回収される。

【0013】
被検体として用いる胚の由来は特に限定されないが、好ましくはヒトである。

【0014】
被検体として用いる胚は、好ましくは、移植用の体外受精胚である。

【0015】
マーカー
本発明では、メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、トリエタノールアミン、スクロース、5-アミノ吉草酸、リビトール、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン、アセチルグリシン、ニコチン酸及び2-ヒドロキシイソ酪酸からなる群より選択される少なくとも一種のマーカーを用いる。

【0016】
本発明では、メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸及びカテコールからなる群より選択される少なくとも一種のマーカーを用いることが好ましい。

【0017】
本発明では、少なくとも一種の前記マーカーに関し、被検体における量mが、基準となる量mと比較した場合に、以下の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。
基準(a)メサコン酸、ピロガロール、キシリトール、2-ヒドロキシイソカプロン酸、カテコール、5-アミノ吉草酸、リビトール、アセチルグリシン及び2-ヒドロキシイソ酪酸については、前記mが、前記mよりも低いこと
基準(b)トリエタノールアミン、スクロース、グリセロール2-リン酸、リボノラクトン及びニコチン酸については、前記mが、前記mよりも高いこと

【0018】
本発明では、好ましくは、2~4種の前記マーカーに関し、上記の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。

【0019】
本発明では、より好ましくは、5~8種の前記マーカーに関し、上記の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。

【0020】
本発明では、さらに好ましくは、6~9種の前記マーカーに関し、上記の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。

【0021】
本発明では、さらにより好ましくは、10~13種の前記マーカーに関し、上記の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。

【0022】
本発明では、もっとも好ましくは、全種の前記マーカーに関し、上記の基準が満たされるときに、評価対象胚が良好胚であることを示す。

【0023】
マーカー量mの測定
マーカー量mの測定は、特に限定されず、任意の方法により行うことができる。例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS/MS)を用いて行うこともできる。

【0024】
ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて行う場合、特に限定されないが、例えば、GC-MS/MS-TQ8040(SHIMADZU社)又はその同等品等を用い、さらに必要に応じてMRM(多重反応モニタリング)モードで行うことができる。

【0025】
マーカー量mの単位は特に限定されず、同マーカーについての基準値mと対比可能なものであればよい。

【0026】
例えば、GC-MS/MSで得られたピークを抽出し、積算した面積(保持時間×質量数=RT_m/z)を、マーカー量mとしてもよい。この算出は、解析ソフトウェアで行うことができる。

【0027】
基準値mの設定
あるマーカーについての基準値mは、他の評価方法により良好胚であると判断される胚における同マーカーの量を基準として設定される。
他の評価方法としては、形態学的評価方法を使用することができ、例えば、Veeck分類及びGardner分類等を使用できる。特に、初期胚(受精後3日目頃まで)に対してはVeeck分類が、胚盤胞(受精後5日目頃の着床期付近まで発育が進んだ胚)に対してはGardner分類が、それぞれ特に好ましく用いられる。

【0028】
良好胚
本発明において、良好胚とは、好ましくは、体外受精又は胚移植のために用いられる胚として良好な胚を指し、より好ましくは着床率(妊娠率)が高く、その後の流産率が低い胚を指す。

【0029】
本発明において、良好胚とは、さらに好ましくは、Veeck分類のグレードが2以上であり、及び/又はGardner分類のスコアが3(胚盤胞)以上の胚を指す。

【0030】
本発明の方法は、必要に応じて、公知の良好胚の評価方法、例えば、形態学的評価方法、と組み合わせて用いることができる。

【0031】
スクリーニング方法
本発明の方法は、良好胚のスクリーニング方法とすることができる。本発明のスクリーニング方法においては、本発明の評価方法に基づいて良好胚をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法においては、特に限定されないが、本発明の評価方法を利用して第一スクリーニングを行い、公知の良好胚の評価方法、例えば、形態学的評価方法、を利用して第二次スクリーニングを行うこともできる。必要に応じて、公知の良好胚の評価方法第一スクリーニングを行い、本発明の評価方法を利用して第二次スクリーニングを行うこともできる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
試料の採取
体外受精を行った患者の胚培養を、インフォームドコンセントを得たうえで、専用の培養シャーレ(ニプロ株式会社、ART Culture Dish)を用い、70μlドロップによる単一胚培養で行った。採卵翌日(受精1日目)の受精確認後より培養を開始し、受精6日目の胚培養終了後に各ドロップから50μlをサンプルチューブに回収した。そののち、ただちに凍結保存(-80℃)を行った。なお、培養法は培養液交換を行わない継続培養とした。
【実施例】
【0034】
測定
凍結サンプルを融解後、Bligh-Dyer法(生体材料からの脂質抽出法)で処理し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS/MS)(SHIMADZU、GCMS-TQ8040)により一次代謝産物を一括測定した。
【実施例】
【0035】
解析
市販の多変量解析ソフト(UMETRICS、SIMCA)を用いてGS-MS/MSで解析可能な有機酸代謝物475種および脂肪酸代謝物50種の一括解析を行った。良好胚と不良胚との間に有意差が見られた14種の一次代謝物についての結果を、表1及び図1~14に示す。
【実施例】
【0036】
【表1】
JP2019170235A_000002t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13