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明細書 :ペプチド及びその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-002073 (P2020-002073A)
公開日 令和2年1月9日(2020.1.9)
発明の名称または考案の名称 ペプチド及びその利用
国際特許分類 C07K   7/08        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/569       (2006.01)
FI C07K 7/08 ZNA
C07K 7/06
C07K 14/00
G01N 33/53 N
G01N 33/569 F
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-123612 (P2018-123612)
出願日 平成30年6月28日(2018.6.28)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
発明者または考案者 【氏名】赤田 純子
【氏名】山岡 吉生
【氏名】村上 和成
【氏名】塩田 星児
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045EA50
4H045EA52
4H045FA10
要約 【課題】本発明は、より正確且つ簡便なピロリ菌感染の有無等の把握に有用なペプチド及びその利用を提供することを目的とする。
【解決手段】配列番号1(Xaa-Xaa-Xaa-Glu-Pro-Ile-Tyr-Ala-Xaa-Val-Xaa-Lys-Lys-Xaa)で表されるアミノ酸配列を含み、アミノ酸残基数が33以下である、ペプチド。ここで、Xaaは、それぞれ同じアミノ酸であっても異なるアミノ酸であってもよく、それぞれ独立して、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン及びチロシンからなる群より選択されるいずれかであればよい。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、アミノ酸残基数が33以下である、ペプチド。
【請求項2】
配列番号1で表されるアミノ酸配列が、次の(1)~(6)の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載のペプチド、
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギン、セリンまたはプロリン、
(3)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギンまたはアラニン、
(6)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシンまたはバリン。
【請求項3】
配列番号1で表されるアミノ酸配列が、前記(1)~(6)の特徴を有する、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1で表されるアミノ酸配列が、次の(1’)~(6’)または(1’’)~(6’’)の特徴を有する、請求項1~3のいずれかに記載のペプチド、
(1’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaがアスパラギン、
(2’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(3’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギン、及び
(6’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシン、
(1’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、プロリン、
(3’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、グルタミン酸、
(4’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミン、
(5’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アラニン、及び
(6’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、バリン。
【請求項5】
配列番号1で表されるアミノ酸配列が、配列番号2~7からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1~4のいずれかに記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号8~12からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載するペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載するペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用キット。
【請求項9】
採取された血清または尿と項1~6のいずれかに記載するペプチドとを接触させる工程を含む、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体を検出または定量する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、例えば、長い慢性感染を経て胃癌を誘発することが知られており、また、抗ピロリ菌剤も知られている(特許文献1)。
【0003】
従来、ピロリ菌感染の有無を判定するための検査として、抗体検査、尿素呼気試験、鏡検法等の複数の検査方法が知られている。例えば、抗体検査においては、ELISA(Enzyme Linked ImmunoSorbent Assay)法や、ラテックス凝集免疫比濁法等が利用されている。これらの方法は、主に抗原抗体反応を利用するものであるが、S/N比が低い、ピロリ菌感染の陽性と陰性とを識別するカットオフ値の設定が難しく偽陰性や偽陽性の問題が生じ易い、といった問題がある。また、このような検査は、各種機関にて行われていることが想定されるところ、正確な結果を得る等の観点から、簡便に検査できることが望ましい。
【0004】
このことから、ピロリ菌感染の有無等をより正確且つ簡便に把握することができる技術を提供することは重要である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2008/32817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より正確且つ簡便なピロリ菌感染の有無等の把握に有用なペプチド及びその利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、特定の配列を備えるペプチドが、抗ピロリ菌抗体に高い反応性を示すことを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、アミノ酸残基数が33以下である、ペプチド。
項2.配列番号1で表されるアミノ酸配列が、次の(1)~(6)の少なくとも1つの特徴を有する、項1に記載のペプチド、
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギン、セリンまたはプロリン、
(3)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギンまたはアラニン、
(6)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシンまたはバリン。
項3.配列番号1で表されるアミノ酸配列が、前記(1)~(6)の特徴を有する、項1または2に記載のペプチド。
項4.配列番号1で表されるアミノ酸配列が、次の(1’)~(6’)または(1’’)~(6’’)の特徴を有する、項1~3のいずれかに記載のペプチド、
(1’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaがアスパラギン、
(2’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(3’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギン、及び
(6’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシン、
(1’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、プロリン、
(3’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、グルタミン酸、
(4’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミン、
(5’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アラニン、及び
(6’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、バリン。
項5.配列番号1で表されるアミノ酸配列が、配列番号2~7からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなる、項1~4のいずれかに記載のペプチド。
項6.配列番号8~12からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列を含む、項1~5のいずれかに記載のペプチド。
項7.項1~6のいずれかに記載するペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用組成物。
項8.項1~6のいずれかに記載するペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用キット。
項9.採取された血清または尿と項1~6のいずれかに記載するペプチドとを接触させる工程を含む、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体を検出または定量する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ピロリ菌感染の有無等をより正確且つ簡便に把握することができる。特に、本発明のペプチドを用いることにより、血清中や尿中の抗ピロリ菌抗体を、より正確且つ簡便に検出、定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、各種ペプチドの抗ピロリ菌抗体への反応性を調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、アミノ酸残基数が33以下である、ペプチドを提供する。

【0011】
該ペプチドのアミノ酸残基数は、この限りにおいて制限されないが、好ましくは14~33である。

【0012】
配列番号1で表されるアミノ酸配列は、次の通りである。
Xaa-Xaa-Xaa-Glu-Pro-Ile-Tyr-Ala-Xaa-Val-Xaa-Lys-Lys-Xaa

【0013】
配列番号1で表されるアミノ酸配列において6箇所に存在する「Xaa」は、それぞれ同じアミノ酸であっても異なるアミノ酸であってもよく、それぞれ独立して、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、アルギニン(Arg)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)及びチロシン(Tyr)からなる群より選択されるいずれかであればよい。

【0014】
この限りにおいて制限されないが、好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列として、次の(1)~(6)の少なくとも1つの特徴を有するものが例示される。
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギン、セリンまたはプロリン、
(3)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギンまたはアラニン、
(6)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシンまたはバリン。

【0015】
また、この限りにおいて制限されないが、より好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列として、前記(1)~(6)の特徴を有するものが例示される。

【0016】
また、この限りにおいて制限されないが、更に好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列として、次の(1’)~(6’)または(1’’)~(6’’)の特徴を有するものが例示される。
(1’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaがアスパラギン、
(2’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(3’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、トレオニン、グルタミン酸またはアラニン、
(4’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミンまたはリシン、
(5’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アスパラギン、及び
(6’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、リシン;
(1’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から1番目のXaaが、アスパラギンまたはセリン、
(2’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から2番目のXaaが、プロリン、
(3’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から3番目のXaaが、グルタミン酸、
(4’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から4番目のXaaが、グルタミン、
(5’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から5番目のXaaが、アラニン、及び
(6’’)配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端から6番目のXaaが、バリン。

【0017】
また、この限りにおいて制限されないが、特に好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列として、配列番号2~7からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列が例示される。

【0018】
本発明のペプチドにおいて、配列番号1で表されるアミノ酸配列は、1回のみ含まれていても良く、2回含まれていても良い。

【0019】
本発明のペプチドにおいて、配列番号1で表されるアミノ酸配列以外を構成するアミノ酸は、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、これらのアミノ酸はそれぞれ独立して、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、アルギニン(Arg)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)及びチロシン(Tyr)からなる群より選択されるいずれであってもよい。

【0020】
本発明のペプチドにおいて、配列番号1で表されるアミノ酸配列以外を構成するアミノ酸は、配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端側に存在していてもよく、C末端側に存在していてもよく、N末端側とC末端側の両方にそれぞれ存在していてもよい。また、本発明のペプチドにおいて、配列番号1で表されるアミノ酸配列が2回含まれる場合、配列番号1で表されるアミノ酸配列以外を構成するアミノ酸は、更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列番号1で表されるアミノ酸配列の間に存在してもよい。N末端側、C末端側に存在するアミノ酸残基の数、また、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列番号1で表されるアミノ酸配列の間に存在するアミノ酸残基の数は制限されない。

【0021】
本発明のペプチドを制限するものではないが、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含みアミノ酸残基数が33以下であるペプチドとして、好ましくは、配列番号2~7からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列を1回または2回含むペプチド、配列番号8~12からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列を1回含むペプチドが例示される。

【0022】
本発明のペプチドは、配列番号2~7からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、配列番号8~12からなる群より選択される少なくとも1種で表されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。

【0023】
本発明のペプチドは、そのアミノ酸配列またはそれをコードする塩基配列の情報を基に周知の遺伝子工学的手法や化学合成法等によって作製できる。例えば、本発明のペプチドは、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入し、該ベクターが組み込まれた形質転換体を培養したのち、所望のペプチドを取得することにより作製することができる。化学合成法としては、液相法や固相法等によるペプチド合成法が包含される。

【0024】
本発明のペプチドによれば、抗ピロリ菌抗体をより正確に認識することができる。本発明のペプチドによれば、抗ピロリ菌抗体を簡単に認識することができる。特に、胃癌誘導に重要な役割を果たすと考えられている主要な病原因子の一つであり、且つ、主要な抗原蛋白質として、ピロリ菌のCagA蛋白質が知られているところ、本発明のペプチドによれば、抗ピロリ菌CagA抗体をより正確に認識することができる。このことから、本発明のペプチドによれば、ピロリ菌感染の有無等をより正確且つ簡便に把握することができる。また、このことから、本発明のペプチドによれば、抗ピロリ菌抗体のより正確かつ簡便な特異的検出、定量等が可能である。

【0025】
また、本発明は、本発明の前記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。

【0026】
本発明のポリヌクレオチドも、従来公知の遺伝子工学的手法や化学合成法等を用いて作製できる。例えば、本発明のペプチドをコードするアミノ酸の配列情報やヌクレオチドの配列情報に基づいて、従来公知の化学的DNA合成法により所望のポリヌクレオチドを作製、取得すればよい。また、例えば、所望のポリヌクレオチドを有する微生物をはじめ適当な起源から定法に従ってcDNAライブラリーを作製し、該ライブラリーから、適切なプローブ等を用いて、所望のポリヌクレオチドを取得すればよい。

【0027】
本発明のポリヌクレオチドの状態は特に制限されず、例えば、単離されたもの、ベクター内に組み込まれたものであってもよい。この場合、ベクターの構造、由来、用途等は制限されない。例えば、ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス等)のいずれであってもよく、また、クローニング用ベクター、発現用ベクターのいずれであってもよい。ベクターは、必要に応じて、エンハンサー、プロモーター、制限酵素切断部位、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、薬剤耐性遺伝子、Green Fluorescent Protein(GFP)等のマーカー遺伝等の塩基配列が接続されていてもよい。また、ベクターとの関係や目的に応じて宿主細胞を適宜選択すればよく、宿主細胞として、大腸菌、放線菌等の原核細胞や、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞等の真核細胞といった各種細胞が例示される。

【0028】
このことから、更に、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞、前記前記ポリヌクレオチドを含む形質転換を提供する。形質転換体はベクターを宿主細胞に導入して得られ、その方法も特に制限されず、従来公知の一般的な方法に従い行えばよい。例えば、従来公知の標準的な実験室マニュアルに記載される方法に従って行うことができ、塩化カルシウム法、塩化ルビジウム法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム等のカチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、ファージ等による感染等が例示される。

【0029】
これらは、本発明の前記ペプチドの簡便な発現に有用である。

【0030】
本発明はまた、本発明のペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用組成物を提供する。

【0031】
本発明のペプチドは、前述の通りである。従来、ピロリ菌検査では、採取が簡便等である点から、試料として血清や尿が頻用されているところ、本発明のペプチドは、このような血清中や尿中の抗ピロリ菌抗体の検出または定量に有用である。

【0032】
本発明の抗ピロリ菌抗体検出または定量用組成物には、本発明のペプチド以外に、緩衝液、抗ピロリ菌抗体を認識するために使用される従来公知の抗原等が必要に応じて含まれていても良い。

【0033】
本発明はまた、本発明のペプチドを含有する、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体検出または定量用キットを提供する。

【0034】
本発明のペプチドは、前述の通りである。

【0035】
本発明のキットには、本発明のペプチド以外に、免疫学的検出または定量に用いられ得る、2次抗体、検量線用コントロールペプチド、検量線用コントロール抗体、マスキング剤、ブロッキング剤、標識酵素等の標識剤、基質、反応停止剤、緩衝液、分子量マーカー、マイクロビーズやマイクロプレート等の固相、使用説明書等が必要に応じて含まれていても良い。

【0036】
本発明の抗ピロリ菌抗体検出または定量用組成物やキットによれば、一層容易に、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体の検出または定量が可能になる。

【0037】
本発明はまた、採取された血清または尿と本発明のペプチドとを接触させる工程を含む、血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体を検出または定量する方法を提供する。

【0038】
採取された血清または尿は、例えば、ヒト由来であっても、非ヒト哺乳動物由来であってもよく、その由来は問わない。

【0039】
血清または尿と本発明のペプチドとの接触方法は、これらが接触する限り、制限されない。例えば、接触方法として、ELISA(Enzyme Linked ImmunoSorbent Assay)法、ラテックス凝集免疫比濁法等の従来公知の抗原抗体反応を利用する免疫学的方法に従う接触方法が例示される。このことから、本発明の方法は、ELISA法、ラテックス凝集免疫比濁法等の従来公知の抗原抗体反応を利用する免疫学的方法において使用されるといえ、好ましくはELISA法、ラテックス凝集免疫比濁法等において使用される。ELISA法、ラテックス凝集免疫比濁法等の免疫学的方法は従来公知であるため、これらの従来公知の手順に従い、本発明のペプチドを用いて血清中または尿中の抗ピロリ菌抗体を検出または定量する方法を実施すればよい。

【0040】
本発明の方法によれば、抗ピロリ菌抗体をより正確かつ簡便に検出または定量することができる。特に、胃癌誘導に重要な役割を果たすと考えられている主要な病原因子の一つであり、且つ、主要な抗原蛋白質としてピロリ菌のCagA蛋白質が知られているところ、本発明の方法によれば、抗ピロリ菌CagA抗体をより正確かつ簡便に検出または定量することができる。本発明を制限するものではないが、本発明は、例えば、所謂、アジアに多いABD型CagAに対する抗体(抗ピロリ菌ABD型CagA抗体)の認識にも有用である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0042】
試験例1
1.ペプチドの作製
ペプチドの合成を外注することにより、合計87種のペプチド(各ペプチドのアミノ酸残基数19~20)を合成した。
【実施例】
【0043】
2.反応の手順
2-1.ペプチド及び検量線用抗体の準備
合成したペプチドを1nmol/μLの濃度でDMSO(Dimethyl sulfoxide)に溶解後、9倍量のPBSを添加して、ペプチド濃度100pmol/μLとなるように希釈し、ペプチドストック液として凍結保存した。PBSの組成は次の通りである。0.35g NaHPO、1.28g NaHPO及び8g NaCl含有の1L水溶液(pH7.4)。
【実施例】
【0044】
抗体検出の検量線用には、ピロリ菌感染患者由来の抗原蛋白質CagAを認識することが既に知られているペプチド(配列番号13、対照ペプチドと記載する)を用いた。外注にて、抗対照ペプチドウサギポリクロ—ナル抗体を作成し、対照ペプチドカラムにて、抗体のアフィニティー精製を行った。精製した対照ペプチド抗体は50%グリセロール/PBSにて1mg/mLに調整した。
【実施例】
【0045】
2-2.試料の準備
本試験例では試料として血清を用いた。具体的には、倫理審査を経て、同一被験者から胃内視鏡下で採取された胃生検試料を用いて、ピロリ菌の培養と組織染色を行った。培養下でピロリ菌株の分離ができたか組織染色下でピロリ菌が確認されたか、または、これらの両方が可能であった場合にHp(+)(Positive試料)とした。どちらも出来なかった場合をHp(-)とした。最終的に、Hp(+)ヒト血清62試料、Hp(-)ヒト血清128試料を本試験において用いた(合計190試料)。
【実施例】
【0046】
なお、培養したピロリ菌株の病原因子CagA遺伝子のタイピングを行うと、Hp(+)ヒト血清のうち、2試料はCagA遺伝子欠損株感染者由来であり、2試料は西洋型であり、これら以外の試料はアジア型であった。後述の図1中、Positive試料において○はCagA遺伝子欠損株、□はAB型CagA株(西洋型)、△はABC型CagA株(西洋型)、●はABD型CagA株(アジア型)である。
【実施例】
【0047】
また、Hp(-)ヒト血清は初診(除菌治療前、Negative試料)と再診(除菌後、Eradicated試料)の2グループに分類し、それぞれNegative57試料とEradicate71試料であった。
【実施例】
【0048】
2-3.ペプチド固定化ELISAプレートの作成
前述のようにして調製したペプチドストック液を、50mM炭酸緩衝液(Na2CO3-NaHCO3 buffer (pH 9.6))にて10倍希釈し(0.1pmol/μL)、得られた溶液を、96ウエルのELISAプレート(Immobilizer-Amino Plate & Modules (Nunc Cat.#436013))にそれぞれ100μLずつ分注した(10pmol/ウエル)。抗体検出の検量線用には、同様に対照ペプチド(0.1pmol/μL)を6ウエルに分注した。陰性コントロールとしてBSA50μg/wellを、2次抗体の陽性コントロールとして、ヒトIgG抗体10pmol/ウエルを分注した。分注後、ELISAプレートを遮光し、4℃にて一晩振盪しながら、ペプチドをプレートに固定させた。
【実施例】
【0049】
2-4.ELISAによる抗体検出及び定量
前記2-3においてペプチドを固定したプレートの溶液を捨て、300μLの0.1%Tween20添加PBS(PBS-0.1T)にて各ウエルを3回洗浄した。各ウエルに100μLマスキング溶液(100mMエタノールアミンを50mM炭酸緩衝液に溶解)を添加し、室温で1時間緩やかに振盪してマスキングを行った。300μL PBS-0.1Tにて各ウエルを3回洗浄後、100μLブロッキング溶液(2%牛血清アルブミンをPBSに溶解)を各ウエルに添加して、1時間振盪した。次に、ブロッキング溶液を捨て、各ウェルに100μL血清液(前述のようにして準備した血清をブロッキング液で200倍希釈)を加え、5分間強く振盪した後、2時間室温にて緩やかに振盪した。続いて血清液を捨て、300μL PBS-0.1Tにて5回洗浄後、100μL二次抗体液(西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体をブロッキング液にて4000倍希釈)を添加し、1時間緩やかに振盪した。二次抗体を捨て、300μL PBS-0.1Tにて5回洗浄後、ペルオキシダーゼ基質であるTMB溶液を各ウエルに100μLずつ添加し、暗下で5分間反応させて青色に発色させた後、1規定塩酸を100μL添加して、反応を停止させた。黄色の反応液はプレートリーダーを用い、450nmの波長で抗体量を測定し、検量線と照らし合わせて定量した。
【実施例】
【0050】
検量線用には、対照ペプチド(0.1pmol/μL)を固定したウエルを用い、精製対照ペプチド抗体(1mg/mL)の希釈系列を1次抗体として用い、抗ウサギIgG二次抗体を用いた。その他の操作は同様に行った。
【実施例】
【0051】
3.結果
3-1.代表的な血清を用いた全ペプチドELISAの結果
前述のように分類した3つのグループ(Negative試料、Positive試料、Eradicated試料)において、まず各グループのうち9~10個の血清を用いて、全ペプチドに対するELISA解析を行った。その結果、Negative試料に対しPositive試料で有意に(p<0.01)高い反応が17種のペプチドで認められた。また、Positive試料に対し、Eradicated試料で有意に(p<0.01)低い反応が11種のペプチドで認められた。
【実施例】
【0052】
3-2.選択したペプチドを用いた全ての血清のELISAの結果
前記3-1において最も高い反応が認められた3種ペプチド(それぞれ配列番号8、9及び14のペプチド)について、全ての血清(Positive 62試料、Negative 57試料、Eradicate 71試料)を用いたELISA解析を行った。
【実施例】
【0053】
また、既に小児血清で反応を認めた2種のペプチド(それぞれ配列番号13及び15のペプチド)及び本試験で作製したペプチド(配列番号16のペプチド)についても同様に解析した。
【実施例】
【0054】
その結果、配列番号8または9のペプチドでは、Negative試料に対してもEradicated試料に対しても、Positive試料において極めて有意に高い反応が再現された(図1)。また、これらのペプチドは、Positive試料の中でも、CagA遺伝子欠損株の感染者(〇)に対しては反応しなかった。
【実施例】
【0055】
これに対し、配列番号8と配列番号9以外のペプチドにおいては、望ましい結果は得られず、具体的には、配列番号8と配列番号9以外のペプチドのPositive試料への反応性はやや弱いか、一部の血清のみに反応性を示すだけであった。特に、図1から理解できる通り、配列番号8と配列番号9以外のペプチドの中でPositive試料に対して比較的高い反応性を示した配列番号16のペプチドでも、Negative試料とPositive試料の間に有意差はなかった。
【実施例】
【0056】
これらのことから、配列番号8、9で表されるペプチドは、ピロリ菌CagAの特異的検出や定量に非常に有用であることが分かった。また、特に、配列番号8、9で表されるペプチドを用いた場合は、Negative試料に対してもEradicated試料に対しても、Positive試料で極めて有意に高い反応が再現されたことから、バックグラウンドが低くS/N比の小さな、抗ピロリ菌抗体のより正確かつ簡便な特異的検出または定量が可能であることが分かった。このように、配列番号8、9で表されるペプチドを用いることにより、抗ピロリ菌抗体の検出や定量を一層高感度化することができ、また、より簡便に行うことができることが分かった。このことから、これらのペプチドによれば、ピロリ菌感染の有無等をより正確且つ簡便に把握することができることが理解できる。
【実施例】
【0057】
試験例2
1.手順
前記試験例1において得られた配列番号8、9のペプチドにおいて、共通する配列が認められた。そこで、これらのアミノ酸配列のどの部分が抗体との反応に重要であるのかについて検討した。具体的には、前記配列番号8、9のペプチドのアミノ酸配列に基づいて、更に複数種のペプチドを作製した。これらのペプチドの作製は、前記試験例と同様に外注した。作製したペプチドについて、前述と同様の手順にて、抗原抗体反応を行った。
【実施例】
【0058】
本試験例では、配列番号8~12及び17~22で表される各ペプチドを用いた。
【実施例】
【0059】
2.結果
結果を表1に示す。
【実施例】
【0060】
【表1】
JP2020002073A_000002t.gif
【実施例】
【0061】
表1には、各試料に対する前記ペプチドの反応性(ng/mL以上)と、前記ペプチドに0.5ng/mL以上の反応性を示した試料の数(括弧内は全14試料に対する割合)を示す。
【実施例】
【0062】
その結果、配列番号8のペプチド、配列番号9のペプチドのうち、AGQAT配列を有するがEPIYA配列を欠く配列番号19のペプチドでは、抗体との反応性が著しく低下した。また、AGQAT配列を有さずEPIYAも欠く配列番号17、21、22のペプチドでも、抗体との反応性が著しく低下した。また、配列番号8、9のペプチドにおいて、EPIYAに比較的近いC末端のアミノ酸を欠く配列番号18及び20のペプチドにおいても、反応性がやや低くなった。
【実施例】
【0063】
一方、配列番号10~12のペプチドでは、配列番号8、9のペプチドと同様に、高い反応が得られた。より具体的には、配列番号8~11のペプチドは、試験した14種全てのPositive試料に対して高い反応性を示し、配列番号12のペプチドは、試験したPositive試料うち1試料を除き、高い反応性を示した。
【実施例】
【0064】
次いで、前記試験例1において配列番号8及び9のペプチドと高い反応性を示した血清を提供した被験者のピロリ菌CagA遺伝子のアミノ酸配列を解析したところ、一例として、配列番号4~7に示す配列が認められた。配列番号8及び9と配列番号4~7には、次の下線で示す通り共通する配列が存在することが分かった。また、配列番号10及び11のペプチドにおいても、同様の共通する配列が存在することが分かった。
【実施例】
【0065】
NNTEPIYAKKKAGQAT(配列番号8)
AGQATSPEEPIYAKKV(配列番号9)
NNEEPIYAKKK(配列番号4)
NNEEPIYAKKK(配列番号5)
SPEEPIYAKKV(配列番号6)
NPEEPIYAKKV(配列番号7)
NGLKNNTEPIYAQVNKKKA(配列番号10)
SPEEPIYAKKVSAKID(配列番号11)
【実施例】
【0066】
これらのことから、ピロリ菌感染特異的反応性を示すペプチドとして、該共通する配列が重要であることが分かった。
図面
【図1】
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