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明細書 :電子スピン共鳴測定装置、共振器及び電子スピン共鳴を測定する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-060697 (P2019-060697A)
公開日 平成31年4月18日(2019.4.18)
発明の名称または考案の名称 電子スピン共鳴測定装置、共振器及び電子スピン共鳴を測定する方法
国際特許分類 G01N  24/10        (2006.01)
G01N  24/00        (2006.01)
G01R  33/60        (2006.01)
G01N  22/00        (2006.01)
H01P   7/06        (2006.01)
H01P   1/217       (2006.01)
FI G01N 24/10 510A
G01N 24/00 560A
G01R 33/60
G01N 22/00 J
G01N 24/10 510L
H01P 7/06
H01P 1/217
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-184933 (P2017-184933)
出願日 平成29年9月26日(2017.9.26)
発明者または考案者 【氏名】小林 正
【氏名】上田 徹
【氏名】原 孝文
出願人 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100123582、【弁理士】、【氏名又は名称】三橋 真二
【識別番号】100114018、【弁理士】、【氏名又は名称】南山 知広
【識別番号】100180806、【弁理士】、【氏名又は名称】三浦 剛
【識別番号】100135976、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 哲夫
審査請求 未請求
テーマコード 5J006
Fターム 5J006HC01
5J006HC13
5J006HD03
5J006PB02
要約 【課題】試料を安定に試料台上に保持して電子スピン共鳴を測定できる共振器を提供する。
【解決手段】共振器は、鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、円筒空洞内に中心軸の伸びる向きとに静磁場を生成する静磁場生成部と、円筒空洞の上底の外側に配置され中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平なコイル群1と、円筒空洞の下底の外側に配置され中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平なコイル群2を有し、コイル群1及び第コイル群2に流れる電流を制御して、円筒空洞内の静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から円筒空洞と接続し、円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管を備え、円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、
前記円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、
前記円筒空洞内に前記中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、
前記円筒空洞における一方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、
前記円筒空洞における他方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、
を有し、前記第1のコイル群及び前記第2のコイル群に流れる電流を制御して、前記円筒空洞内の前記静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、
前記中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から前記円筒空洞と接続し、前記円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、
を備え、前記円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能な共振器と、
マイクロ波を生成して、前記導波管に導波するマイクロ波生成部と、
前記共振部から出力され前記導波管を介して伝搬されるマイクロ波を電気信号に変換し、前記電気信号を増幅して出力する増幅部と、
前記静磁場の大きさ及び前記マイクロ波の周波数と、前記増幅部から出力された前記電気信号とに基づいて、前記静磁場の大きさ、及び、前記マイクロ波の周波数と、前記試料に含まれる不対電子の電子スピン共鳴が生じる磁気共鳴との関係を求める解析部と、
を備える電子スピン共鳴測定装置。
【請求項2】
前記第1のコイル群は、第1コイルと、第2コイルと、第3コイルとを有し、
前記第2のコイル群は、第4コイルと、第5コイルと、第6コイルとを有し、
前記第1コイル及び前記第4コイルは、電流が流れることにより磁場を生成して、前記円筒空洞内の前記中心軸の伸びる方向と直交する平面内における第1方向の磁場勾配を生成させ、
前記第2コイル及び前記第5コイルは、電流が流れることにより磁場を生成して、前記円筒空洞内の前記中心軸の伸びる方向と直交する平面内における前記第1方向と直交する第2方向の磁場勾配を生成させ、
前記第3コイル及び前記第6コイルは、電流が流れることにより磁場を生成して、前記円筒空洞内の前記中心軸の伸びる方向の磁場勾配を生成させる請求項1に記載の電子スピン共鳴測定装置。
【請求項3】
前記第1コイルと前記第2コイルと前記第3コイルは、実質的に同一平面上に配置され、前記第4コイルと前記第5コイルと前記第6コイルは、実質的に同一平面上に配置される請求項2に記載の電子スピン共鳴測定装置。
【請求項4】
前記試料台は、前記円筒部の側部から前記円筒空洞の外部へ取り出し可能である請求項1~3の何れか一項に記載の電子スピン共鳴測定装置。
【請求項5】
鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、
前記円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、
前記円筒空洞内に前記中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、
前記円筒空洞における一方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、
前記円筒空洞における他方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、
を有し、前記第1のコイル群及び前記第2のコイル群に流れる電流を制御して、前記円筒空洞内の前記静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、
前記中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から前記円筒空洞と接続し、前記円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、
を備え、前記円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能な共振器。
【請求項6】
鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、
前記円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、
前記円筒空洞内に前記中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、
前記円筒空洞における一方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、
前記円筒空洞における他方の底の外側に配置され、前記中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、
を有し、前記第1のコイル群及び前記第2のコイル群に流れる電流を制御して、前記円筒空洞内の前記静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、
前記中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から前記円筒空洞と接続し、前記円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、
を備え、前記円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能な共振器を、前記円筒空洞の前記中心軸が鉛直方向と直交する向きに伸びるように配置し、且つ、前記試料台の前記載置面を、鉛直方向と直交する向きに配置した状態で、前記導波管にマイクロ波を導波することと、
前記共振部から出力され前記導波管を介して伝搬されるマイクロ波を電気信号に変換し、前記電気信号を増幅して出力することと、
前記静磁場の大きさ及び前記マイクロ波の周波数と、前記増幅部から出力された前記電気信号とに基づいて、前記静磁場の大きさ、及び、前記マイクロ波の周波数と、前記試料に含まれる不対電子の電子スピン共鳴が生じる磁気共鳴との関係を求めることと、
を含む電子スピン共鳴を測定する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子スピン共鳴測定装置、共振器及び電子スピン共鳴を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子スピン共鳴測定装置を用いて、磁場中に置かれた試料にマイクロ波を照射して不対電子が共鳴時にスピン反転を起こし、エネルギーを吸収することにより得られるESRスペクトルの測定が行われている。
【0003】
測定されたESRスペクトルに基づいて、不対電子を有する試料の構造等に関する情報が得られる。
【0004】
誘電損失の大きい試料を測定する場合には、円筒TMモードで共振する共振器を用いて、電子スピン共鳴測定が行われている。
【0005】
この測定では、試料台の載置面に配置された試料は、円筒空洞の上方から円筒空洞内へ挿入されて、共振器内に保持される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
試料は、試料台の載置面上に鉛直方向に伸ばされた状態で、電子スピン共鳴が測定される。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-3444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
試料台の載置面に載置された試料が生体試料の場合、試料は多くの水分を含むので載置面から試料の水分がこぼれて共振器内を汚染したり、試料が載置面から剥がれ落ちたりして、試料台上に試料を安定して保持することができないおそれがあった。
【0009】
試料が試料台上に安定に保持されないと、電子スピン共鳴の測定にも影響を与える場合がある。
【0010】
本明細書では、試料を試料台上に安定に保持して電子スピン共鳴を測定できる電子スピン共鳴測定装置、共振器及び電子スピン共鳴を測定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示する電子スピン共鳴測定装置によれば、鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、円筒空洞内に中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、円筒空洞における一方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、円筒空洞における他方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、を有し、第1のコイル群及び第2のコイル群に流れる電流を制御して、円筒空洞内の静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から円筒空洞と接続し、円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、を備え、円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能な共振器と、マイクロ波を生成して、導波管に導波するマイクロ波生成部と、共振部から出力され導波管を介して伝搬されるマイクロ波を電気信号に変換し、電気信号を増幅して出力する増幅部と、静磁場の大きさ及びマイクロ波の周波数と、増幅部から出力された電気信号とに基づいて、静磁場の大きさ、及び、マイクロ波の周波数と、試料に含まれる不対電子の電子スピン共鳴が生じる磁気共鳴との関係を求める解析部と、を備える。
【0012】
また、本明細書に開示する円筒TMモードで共振可能な共振器によれば、鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、円筒空洞内に中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、円筒空洞における一方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、円筒空洞における他方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、を有し、第1のコイル群及び第2のコイル群に流れる電流を制御して、円筒空洞内の静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から円筒空洞と接続し、円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、を備え、円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能である。
【0013】
更に、本明細書に開示する電子スピン共鳴を測定する方法によれば、鉛直方向と直交する方向に伸びる中心軸を有する円筒空洞を有する円筒部と、円筒空洞内に配置され、試料が載置され鉛直方向と直交する載置面を有する試料台と、円筒空洞内に中心軸の伸びる向きと一致する方向に静磁場を生成する静磁場生成部と、円筒空洞における一方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群と、円筒空洞における他方の底の外側に配置され、中心軸の伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第2のコイル群と、を有し、第1のコイル群及び第2のコイル群に流れる電流を制御して、円筒空洞内の静磁場の3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能な勾配磁場生成部と、中心軸の伸びる方向と直交するように伸びて鉛直方向から円筒空洞と接続し、円筒空洞内にマイクロ波を導波する導波管と、を備え、円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能な共振器を、円筒空洞の中心軸が鉛直方向と直交する向きに伸びるように配置し、且つ、試料台の載置面を、鉛直方向と直交する向きに配置した状態で、導波管にマイクロ波を導波することと、共振部から出力され導波管を介して伝搬されるマイクロ波を電気信号に変換し、電気信号を増幅して出力することと、静磁場の大きさ及びマイクロ波の周波数と、増幅部から出力された電気信号とに基づいて、静磁場の大きさ、及び、マイクロ波の周波数と、試料に含まれる不対電子の電子スピン共鳴が生じる磁気共鳴との関係を求めることと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
上述した本明細書に開示する電子スピン共鳴測定装置によれば、試料を試料台上に安定に保持して電子スピン共鳴を測定できる。
【0015】
また、上述した本明細書に開示する共振器によれば、試料を試料台上に安定に保持して電子スピン共鳴を測定できる。
【0016】
更に、上述した本明細書に開示する電子スピン共鳴を測定する方法によれば、試料を試料台上に安定に保持して電子スピン共鳴を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に開示する電子スピン共鳴測定装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本明細書に開示する共振器の一実施形態の正面図である。
【図3】本明細書に開示する共振器の一実施形態の要部を示す側面図である。
【図4】TM110モードの磁束密度分布を説明する図である。
【図5】第1のコイル群を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書で開示する電子スピン共鳴測定装置の好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。

【0019】
図1は、本明細書に開示する電子スピン共鳴測定装置の一実施形態を示す図である。図2は、本明細書に開示する共振器の一実施形態の正面図である。図3は、本明細書に開示する共振器の一実施形態の要部を示す側面図である。

【0020】
本実施形態の電子スピン共鳴測定装置10は、円筒TMモードで共振可能な共振器20を用いて、試料の電子スピン共鳴スペクトル及電子スピン共鳴イメージングスペクトルを測定する。

【0021】
共振器20は、鉛直方向Mと直交する載置面22aを有する試料台22を有するので、生体試料等の水分を含む試料30を、試料台22上に安定して保持することができる。本明細書では、鉛直方向は、重力の向きを意味する。

【0022】
また、電子スピン共鳴測定装置10は、水溶液や生体試料等の誘電損失の大きな試料の電子スピン共鳴及び電子スピン共鳴イメージングの測定が可能な円筒TMモード、特に円筒TM110モードで共振可能な共振器20を有するので、上述した水分を含む試料30を測定するのに好適である。

【0023】
電子スピン共鳴測定装置10は、マイクロ波生成装置11と、単向器12と、マイクロ波増幅器13と、減衰器14と、サーキュレータ15と、位相器16と、増幅装置17と、解析装置18と、共振器20を備える。

【0024】
マイクロ波生成装置11は、所定の範囲の周波数のマイクロ波を生成して単向器12に出力する。マイクロ波生成装置11は、例えば、Lバンド又はXバンドのマイクロ波を生成可能であることが好ましい。1~2cm程度の寸法を有する試料30を測定する観点からは、波長の短いXバンドのマイクロ波を用いて、電子スピン共鳴を測定することが好ましい。

【0025】
単向器12は、マイクロ波生成装置11が出力したマイクロ波の内、前進波を透過させてマイクロ波増幅器13へ出力する。単向器12は、後進波がマイクロ波生成装置11へ伝搬することを防止する。

【0026】
マイクロ波増幅器13は、単向器12から入力したマイクロ波を増幅して、メインアームMA及びリファレンスアームRAへ出力する。メインアームMA及びリファレンスアームRAへ出力するマイクロ波の出力は同じでも良いし、異なっていてもよい。本実施形態では、マイクロ波増幅器13は、単向器12から入力したマイクロ波の内の7割をメインアームMAへ出力して、3割をリファレンスアームRAへ出力する。メインアームMAへ出力されたマイクロ波は、減衰器14へ入力する。また、リファレンスアームRAへ出力されたマイクロ波は、位相器16へ入力する。

【0027】
減衰器14は、マイクロ波増幅器13から入力したマイクロ波を所定の割合で減衰して、サーキュレータ15へ出力する。

【0028】
サーキュレータ15は、減衰器14から入力したマイクロ波を導波管27へ導波する。導波管27は、円筒空洞21aの中心軸Lの伸びる方向と直交するように伸びて円筒空洞21aと接続する。導波管27は、サーキュレータ15から伝搬されたマイクロ波を、円筒空洞21a内に導波する。例えば、導波管27の一部にツイスト導波管を用いてもよい。また、導波管27は、共振器20から出力されるマイクロ波を導波してサーキュレータ15へ伝搬する。サーキュレータ15は、導波管27から導波されたマイクロ波を増幅装置17の第1入力端子RFへ出力する。

【0029】
位相器16は、マイクロ波増幅器13から入力したマイクロ波の位相を調整して、増幅装置17の第2入力端子LOへ出力する。メインアームMAとリファレンスアームRAの導波路長は異なるので、位相器16は、リファレンスアームRAを導波して第2入力端子LOへ出力されるマイクロ波の位相を、メインアームMAを導波して第1入力端子RFへ出力されるマイクロ波の位相と同じになるように調整する。

【0030】
増幅装置17は、メインアームMA及びリファレンスアームRAから入力したマイクロ波を電気信号に変化し、電気信号を増幅して、解析装置18へ出力する。ホモダイン方式の増幅装置17の場合には、増幅装置17は、第1入力端子RF及び第2入力端子LOから入力したマイクロ波を差動増幅した信号を生成して、解析装置18へ出力する。また、QIFM(Quadrature Intermediate Frequency Mixer)方式の増幅装置17の場合には、増幅装置17は、第1入力端子RF及び第2入力端子LOから入力したマイクロ波に基づいて、ESR実部スペクトル信号及びESR虚部スペクトル信号を生成し、増幅した信号を、解析装置18へ出力する。

【0031】
解析装置18は、円筒空洞21a内の磁束密度(静磁場と透磁率との積)の大きさ及びマイクロ波の周波数と、増幅装置17から入力した電気信号に基づいて、磁束密度の大きさ、及び、マイクロ波の周波数と、試料30に含まれる不対電子の電子スピン共鳴が生じる磁気共鳴条件により、ESRスペクトルを求める。例えば、解析装置18は、ホモダイン検波の場合、第1入力端子RF及び第2入力端子LOから入力したマイクロ波を差動増幅した信号に基づいて、ESR吸収スペクトル又はESR分散スペクトルを求める。また、解析装置18は、QIFM方式の場合、ESR実部スペクトル信号及びESR虚部スペクトル信号に基づいて、ESR実部スペクトルとESR虚部スペクトルから得られるベクトルのノルムに相当する磁場掃引ESRパワースペクトルを得て、ホモダイン検波で得られる吸収スペクトルより確度の高いESR強度を求めることができ、且つ、位相回転・整合でESR吸収及び分散スペクトルが求められる。また、解析装置18を用いて、電子スピン共鳴測定装置10の各部を制御するようにしてもよい。電子スピン共鳴イメージング像の取得の場合でも、同様の処理を行う。

【0032】
電子スピン共鳴測定装置10は、マイクロ波生成装置11が生成する周波数を一定にして、試料30に印加する磁束密度の大きさを掃引して、電子スピン共鳴を測定する。

【0033】
次に、共振器20について、以下に説明する。

【0034】
共振器20は、円筒空洞内でマイクロ波を円筒TMモードで共振可能である。

【0035】
共振器20は、円筒部21と、試料台22と、静磁場生成部23と、勾配磁場生成部26と、導波管27と、結合器28を有する。

【0036】
円筒部21は、鉛直方向Mと直交する方向に伸びる中心軸Lを有する円筒空洞21aを有する。円筒空洞21aは、円形の第1底21c及び第2底21dを有する円筒形状の空間である。円筒部21は、例えば、金属により形成される。円筒部21は、導波管27からマイクロ波が導波されることにより、円筒TMモードの定在波を円筒空洞21a内に生成可能である。本実施形態では、中心軸Lは、3次元直角座標系SのZ軸と平行な方向に伸びる。

【0037】
図4は、共振状態において、円筒空洞21a内に形成されるTM110モードの磁束密度分布B1を示す。

【0038】
試料台22は、円筒空洞21a内に配置され、鉛直方向Mと直交する載置面22aを有する。載置面22aは、鉛直方向Mと直交するので、載置面22aに載置された試料は、安定に円筒空洞21a内に保持される。従って、生体試料のような水分を含む試料を、載置面22aに安定して載置して、電子スピン共鳴の測定を行うことができる。載置面22aは、上方が開放された升型の部分を有していて、この升型の部分に試料を保持するようにしてもよい。この場合、升型の部分の底面が、鉛直方向Mと直交する。

【0039】
載置面22aは、円筒空洞21aの中心軸Lが伸びる向きと平行であることが好ましい。特に、円筒空洞21aの中心軸Lを含むように、試料台22が円筒空洞21内に配置されることが好ましい。

【0040】
本明細書では、載置面22aが鉛直方向Mと直交することは、載置面22a上に載置された試料が重力により滑り落ちない程度の角度を、載置面22aが鉛直方向Mに対して有することを意味する。例えば、載置面22aは、鉛直方向Mに対して±10度の範囲以内で傾いていてもよい。本実施形態では、載置面22aは、3次元直角座標系SのXZ平面と平行な面である。

【0041】
また、本明細書では、上述した中心軸Lが鉛直方向Mと直交する方向に伸びることは、円筒空洞21aの中心軸Lが伸びる向きと平行な載置面22aが鉛直方向Mと直交することに対して許容される角度と同程度に、中心軸Lが鉛直方向Mと直交する方向に対して傾斜することが許容される。

【0042】
円筒部21は、側部に開口部21bを有する。試料台22は、開口部21b内を移動することにより、円筒部21の側部から円筒空洞21aの外部へ取り出し可能である。

【0043】
増幅装置17が、ロックインアンプを有する場合には、ロックインアンプと同期して静磁場を変調する変調磁場を生成する変調コイル(図示せず)を、円筒空洞21a内に配置してもよい。変調コイルは、円筒空洞21a内において、円筒空洞21aの中心軸Lの伸びる方向の中央で中心軸Lと直交する面内に1つ配置してもよい。また、2つの変調コイルを、円筒空洞21a内において、円筒空洞21aの中心軸Lの伸びる方向に間隔をあけて、中心軸Lと直交する面内に配置してもよい。

【0044】
静磁場生成部23は、円筒空洞21a内に中心軸Lの向きと一致する方向に磁束密度(静磁場と透磁率との積)Bを生成する。磁束密度Bの向きは、TM110モードの磁束密度B1の向きと直交する。静磁場生成部23は、第1電磁石23a及び第2電磁石23bを有する。第1電磁石23a及び第2電磁石23bは、円筒部21を挟んで対向するように配置される。第1電磁石23a及び第2電磁石23bに流す電流値を変化させることにより、円筒空洞21a内に生成される磁束密度Bの大きさが制御される。

【0045】
勾配磁場生成部26は、第1のコイル群24及び第2のコイル群25を有する。勾配磁場生成部26は、第1のコイル群24及び第2のコイル群25に流れる電流を制御して、静磁場生成部23により生成された円筒空洞21a内の磁束密度Bの3次元方向の磁場勾配を生成させることが可能である。

【0046】
第1のコイル群24は、円筒空洞21aの中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)における第1の側(例えばZ軸方向の原点側)に配置され、中心軸Lの伸びる方向と直交する面方向に扁平な形状を有する。本実施形態では、第1のコイル群24は、3次元直角座標系SのXY平面の面方向に扁平な形状を有する。

【0047】
また、第2のコイル群25は、円筒空洞21aの中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)における第2の側(例えばZ軸方向のプラス側)に配置され、中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)と直交する面方向に扁平な形状を有する。本実施形態では、第2のコイル群25は、3次元直角座標系SのXY平面の面方向に扁平な形状を有する。

【0048】
図2に示すように、第1のコイル群24及び第2のコイル群25は、円筒部21を挟んで対向するように配置される。第1のコイル群24は、第1底21cの外側に配置され、第2のコイル群25は、第2底21dの外側に配置される。

【0049】
第1のコイル群24は、xコイル24aとyコイル24bとzコイル24cを有する。xコイル24aとyコイル24bとzコイル24cは、電気絶縁性の第1筐体24d内に収容される。第2のコイル群25は、xコイル25aとyコイル25bとzコイル25cを有する。xコイル25aとyコイル25bとzコイル25cは、電気絶縁性の第2筐体25d内に収容される。

【0050】
xコイル24a及びxコイル25aは、電流が流れることにより磁束密度勾配を生成して、円筒空洞21a内の中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)と直交する平面(XY平面)内におけるX軸方向の磁束密度勾配(一般に、磁場勾配とも呼ばれている)を生成させる。

【0051】
yコイル24b及びyコイル25bは、電流が流れることにより磁束密度勾配を生成して、円筒空洞21a内の中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)と直交する平面(XY平面)内におけるX軸と直交するY軸方向の磁束密度勾配を生成させる。

【0052】
zコイル24c及びzコイル25cは、アンチヘルムホルツコイルを形成し、電流が流れることにより磁束密度を生成して、円筒空洞21a内の中心軸Lの伸びる方向(Z軸方向)の磁束密度勾配を生成させる。

【0053】
電子スピン共鳴測定装置10は、静磁場生成部23により、円筒空洞21a内に中心軸Lの向きと一致する方向(Z軸方向)に所定の大きさの磁束密度を生成した状態で、勾配磁場生成部26を用いて、静磁場生成部23により生成された円筒空洞21a内の磁束密度に勾配を形成する。電子スピン共鳴測定装置10は、円筒空洞21a内の磁束密度に勾配を生成した状態で、電子スピン共鳴を測定することにより、試料30の3次元的なESRイメージングスペクトルを測定する。

【0054】
勾配磁場生成部26を用いて形成される円筒空洞21a内における磁束密度の勾配の大きいことが、試料30の3次元的なESRイメージング画像の分解能を高める観点から好ましい。

【0055】
そして、Z軸方向と直交する面方向に扁平な形状を有する第1のコイル群24と第2のコイル群25との間隔の狭いことが、すなわち、TM110モード共振器の幅(軸長ともいう)が小さいことが、円筒空洞21a内における磁束密度の勾配を大きくする観点から好ましい。

【0056】
本実施形態では、xコイル24aとyコイル24bとzコイル24cは、実質的に同一平面上に配置される。また、xコイル25aと、yコイル25bと、zコイル25cは、実質的に同一平面上に配置される。

【0057】
TM110モード共振器を作製する時に、軸長を短くすることで、xコイル24aとxコイル25aとの間隔を近づけると共に、yコイル24bとyコイル25bとの間隔を近づけ且つzコイル24cとzコイル25cとの間隔を近づけることができる。しかし、その場合は、試料サイズが小さくなってしまう。そこで、第1のコイル群24を同一平面上に配置し、かつ、第2のコイル群25も同一平面上に配置することで、試料を配置する空間を確保すると共に、第1のコイル群24及び第2のコイル群25に流す電流値と、円筒空洞21a内の磁束密度の勾配の状態との関係を計算することを容易にできる。

【0058】
具体的には、図5に示すように、xコイル24a及びxコイル25aは、X軸方向に伸びる8の字コイルであり、直列に接続されている。yコイル24b及びyコイル25bは、Y軸方向に伸びる8の字コイルであり、直列に接続されている。また、zコイル24c及びzコイル25cは、アンチヘルムホルツコイルであり、直列に接続されている。

【0059】
第1のコイル群24では、xコイル24aとyコイル24bとは、互いのコイルが重ならず、実質的に同一平面内に配置されることが好ましい。zコイル24cは、内部にxコイル24a及びyコイル24bを囲むように配置される。zコイル24cは、xコイル24a及びyコイル24bと重ならない状態で、xコイル24a及びyコイル24bと実質的に同一平面内に配置されることが好ましい。即ち、xコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cは、実質的に同一平面内に配置されることが好ましい。本明細書では、複数のコイルが実質的に同一平面上に配置されることは、コイルの厚さ程度の幅の空間内に複数のコイルが位置しており、全体として扁平な形状を形成することをいう。

【0060】
図2及び図5では、xコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cは、1重のコイルにより示されているが、導線が複数巻回して形成されていてもよい。この場合、xコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cの厚さは、導線が複数巻回されている状態の厚さをいう。

【0061】
また、図2では、説明を分かり易くするために、xコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cは、Z軸方向において、重ならないように示されているが、上述したように各コイルは、実質的に同一平面上に配置される。

【0062】
第2のコイル群25は、第1のコイル群24と同様の構成を有する。上述した第1のコイル群24のxコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cに対する説明は、第2のコイル群25のxコイル25a及びyコイル25b及びzコイル25cに対して、適宜適用される。

【0063】
第1筐体24d内には、電流が流れることによりジュール熱を発生するxコイル24a及びyコイル24b及びzコイル24cを冷却するための冷却水が流れる水冷管(図示せず)が配置される。同様に、第2筐体25d内には、電流が流れることによりジュール熱を発生するxコイル25a及びyコイル25b及びzコイル25cを冷却するための冷却水が流れる水冷管(図示せず)が配置される。これにより、これらのコイル群は熱損傷から守られ、かつ円筒空洞21a内の温度の上昇による共振周波数の変動が防止される。

【0064】
結合器28は、導波管27から伝搬したマイクロ波と共振器20とを同調させて、円筒空洞21a内に定在波を生成するために使用される。結合器28により反射が最小になるように調整される。

【0065】
結合器28として、例えば、アイリス(虹彩、調整孔、小穴)、ループ、プローブを用いることができる。

【0066】
本実施形態では、結合器28として、アイリスを用いている。結合器28は、小穴(図示せず)を用いて、導波管27と円筒空洞21aを結合しており、ネジの付いた棒を回して、円筒空洞21a内へ注入されるマイクロ波電力を調整して、臨界結合、すなわち円筒空洞21aはアイリスにより反射が最小になるように調節される。円筒空洞21a内では、共鳴条件を満たした時、マイクロ波エネルギーの授受が起こり、それにともないマイクロ波の反射成分中に低周波成分の磁場変調周波数が現れる。これはマイクロ波搬送波周波数と共に、サーキュレータ15を通して、増幅装置17中のミキサー(混合器;ホモダイン検波時は、例えばマジックティーミキサーを使用、Quadrature Detection時には、例えばQIFMミキサーを使用)に導かれる。

【0067】
上述した電子スピン共鳴測定装置10を、円筒空洞21aの中心軸Lが鉛直方向Mと直交する向きに伸びるように配置し、且つ、試料台22の載置面22aを、鉛直方向Mと直交する向きに配置した状態で、導波管27にマイクロ波を導波して、電子スピン共鳴を測定できる。

【0068】
上述した本実施形態の電子スピン共鳴測定装置によれば、試料を試料台上に安定して保持できるので、生体試料のような水分を含む試料でも安定して電子スピン共鳴を測定できる。

【0069】
本発明では、上述した実施形態の電子スピン共鳴測定装置、共振器及び電子スピン共鳴を測定する方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 電子スピン共鳴測定装置
11 マイクロ波生成装置
12 単向器
13 マイクロ波増幅器
14 減衰器
15 サーキュレータ
16 位相器
17 増幅装置
18 解析装置
20 共振器
21 円筒部
21a 円筒空洞
21b 開口部
21c 第1底
21d 第2底
22 試料台
22a 載置面
23 静磁場生成部
23a 第1電磁石
23b 第2電磁石
24 第1のコイル群
24a xコイル(第1コイル)
24b yコイル(第2コイル)
24c zコイル(第3コイル)
24d 第1筐体
25 第2のコイル群
25a xコイル(第4コイル)
25b yコイル(第5コイル)
25c zコイル(第6コイル)
25d 第2筐体
26 勾配磁場生成部
27 導波管
28 結合器
30 試料
L 中心軸
M 鉛直方向
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4